高靱性のコンクリート成型板、コンクリート成型品の製造方法、高靱性のコンクリート踏板、コンクリート踏板の製造方法
【課題】高靱性で、耐衝撃・耐曲げの効果を高め、プレストレスを導入せず、かつ強制ミキサを使用することなく製造できる。
【解決手段】「セメント 800kg/m3 以上」、「径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3 」、細骨材、混和剤に水を加えて、コンクリート材料を構成する。コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し、型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填する。プレストレスを導入せずに、固化・脱型して、コンクリート製の踏板10を構成する。
【解決手段】「セメント 800kg/m3 以上」、「径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3 」、細骨材、混和剤に水を加えて、コンクリート材料を構成する。コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し、型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填する。プレストレスを導入せずに、固化・脱型して、コンクリート製の踏板10を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広の階段用踏板に最適で、かつ強制練りセメントミキサを使うことなく、通常の重力式の練りセメントミキサを用いて簡易に製造できる、高靱性のコンクリート踏板、及びその製造方法に関する。また、階段用踏板に限定されず、同趣旨で汎用の高靱性のコンクリート成型板及びその製造方法に適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
階段状に並べたPCa踏板(セメント成型品)の両端を鋼板製のささら桁で挟んだ場合、曲げ強度の観点から通常は、階段巾(踏板の巾)は、1.0m程度が一般に使用されていた。幅広の型の階段では、1.8m〜3.0mの踏み板を使いたい場合には、従来の踏板を使用することはできなかった。
【0003】
(1)従来の技術1
特許文献1では、複数個の踏板の巾に対応した型枠にPC鋼棒を配置してストレスを導入して、長さ1.8m〜3.0mの踏み板を実現していた。この場合、長い凹部内を仕切板で区切って、複数個の踏板の巾に対応した型枠を形成して、仕切板を貫通してPC鋼棒を配置して、凹部内にコンクリートを充填していた。
【0004】
この場合、プレストレス(緊張力)の導入のためには、専用の設備が必要であり、製造工場が限定され、簡易には適用できなかった。また、所望の強度性能を発揮するためには適切なプレストレスの管理が必要であった。また、経済的に生産するためには、一度に大量の踏板を製造する必要があり、少量生産(例えば、100本程度の生産には不向きであった。また、PC鋼棒を切った後の表面処理工程も必要であり、簡易には生産できなかった。
【0005】
(2)従来の技術2
また、従来から繊維補強コンクリート踏板として、以下の表1のような配合のビニロン先鋭補強コンクリートも使用されていた。この場合、ビニロン繊維は、直径=0.66mm、長さ=30mm、体積=0.010cm3/本 である。繊維混入率はコンクリート1m3中の繊維の本数で、繊維混入率0.6%の場合の繊維本数は約58万5千本になる。
【表1】
【0006】
従来のビニロンを使ったコンクリート踏板では、求める曲げ靱性(ねばり)が低く、ひび割れが集中して、ひび割れが生じた場合には、ひび割れ巾が大きく目立つものになっていた。これは、ビニロン繊維の繊維形が太く、長いためにコンクリリート中に混入できる繊維の本数を多くできないことによると考えられる。
【0007】
(3)従来の技術3
また、ビニロン繊維を初めとした有機または無機の繊維を直径0.005〜1.0mm、長さ2〜30mmとした水硬性塑性物で曲げ強度、破壊エネルギー及び靱性を向上させた提案がなされていた(特許文献2)。この提案では、圧縮強度130Mpa以上、曲げ強度20Mpa以上を達成できる可能性がある旨の記載のある(特許文献2、段落番号0009)。
【0008】
また、ビニロン繊維を初めとした有機質繊維の直径0.01〜1.0mm、長さ2〜30mmとした高強度モルタルで、の提案もなされていた(特許文献3)。この提案では、圧縮強度200Mpa以上、曲げ強度/圧縮強度の比が、1/4 〜 1/7 にできる可能性がある旨の記載のある(特許文献3、段落番号0019)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−264222号公報
【特許文献2】特開2001−181004号公報
【特許文献3】特開2002−193655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、従来の技術1〜3では、重力式のセメントミキサを使用して、簡易に少量生産でき、かつ充分な曲げ強度、衝撃に耐える強度を確保することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、セメントの配合量を増加させ、かつ従来コンクリート成型品で使用されるビニロン性繊維より、太さが充分に細く、かつ長さが充分に短い繊維を、大量に投入したので、前記問題点を解決した。
【0012】
すなわち、この発明は、水、セメント、細骨材、混和剤を含み、プレストレスを導入せずに、以下のような調合で製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート成型板である。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【0013】
また、他の発明は、以下のような手順で製造することを特徴とするコンクリート成型品の製造方法である。
(1) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(2) 前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(3) 次ぎに、所定の型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填して、
(4) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【0014】
また、他の発明は、長さ方向の両端に、取付用ねじ穴を形成し、水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下のような調合で、プレストレスを導入せずに製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート踏板である。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【0015】
さらに、以下のような手順で製造することを特徴とする高靱性のコンクリート踏板の製造方法である。
(1) 長さ方向の両端部にナットの開口を臨ませ、該開口に対応して、長さ方向の全長に亘る構造鉄筋を埋設して型枠を構成する。
(2) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(3) 次ぎに、前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(4) 次ぎに、前記型枠内に、前記撹拌コンクリート材料を充填して、
(5) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【0016】
前記におけるセメントとは、通常の型枠成型品に使用する水硬性材料を指す。
【0017】
また、前記において、ビニロン繊維の径は0.08〜0.2mmとしたが、0.08mm以下では繊維の強度が不足し、0.2mm以上では、繊維の投入量に比して繊維の補強効果期待できない。
【0018】
また、ビニロン繊維の長さは10〜15mmとしたが、10mm以下では繊維の連結効果が期待できず、10mm以上ではファイバーボールが生じやすく製造時に不具合が生じる。
【0019】
また、ビニロン繊維の配合比率は、0.5〜3.0Vol.%/m3 としたが、0.5以下では補強効果が得られず、3.0以上では繊維が混ざらない不都合があり、2%程度が最適と考えられる。
【0020】
また、高靱性のコンクリート成型板は、階段用踏板に最適であるが、ささら桁などにも適用できる。とりわけ、外力などによる曲げや衝撃発生する用途に有効である。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、従来に比して、ビニロン繊維を細くかつ短くして、かつ混合比率を高めたので、プレストレスを導入することなく、コンクリート成型板の曲げ靱性を高めて、ひび割れに強い製品を構成できる。すなわち、強度に影響が無い程度のひび割れが入っても、初期のひび割れが分散して、ひび割れ巾を小さくできるので、ひび割れを目立たなくできる。したがって、幅広の階段用踏板に最適なコンクリート成型板を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施例の踏板で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を表す
【図2】この発明の実施例の踏板を使用した鉄骨階段の一部を表す。
【図3】この発明の実施例の踏板を使用した鉄骨階段の組立を表す。
【図4】曲げ試験の試験体を表し、(a)は本願踏板の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は比較例のプレストレスコンクリート踏板の正面図、(d)は同じく側面図である。
【図5】曲げ試験の試験方法を説明する図である。
【図6】曲げ試験の結果を表す荷重−たわみグラフである。
【図7】曲げ試験の結果を表す荷重−たわみグラフである。
【図8】衝撃試験の試験体を表し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】衝撃試験の方法を表し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1) 「セメント 800kg/m3 以上」、「径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3 」、細骨材、混和剤に水を加えて、コンクリート材料を構成する。
(2) コンクリート材料を、(強制的ミキサではなく)重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成する。
(3) 次ぎに、製造予定の製品に合わせた型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填する。
(4) この際、プレストレスを導入せずに撹拌コンクリート材料を所定の養生をして固化させる。脱型して、この発明のコンクリート製品を製造する。
(5) このコンクリート製品は高靱性であり、耐衝撃・耐曲げに効果が求められる製品に有効で、特に、ささら桁に固定するコンクリート製の踏板に適する。
【実施例1】
【0024】
次ぎに、実施例について説明する。
【0025】
1.調合
【0026】
(1)ビニロン繊維(クラレ製「RECS100×12」)
直径=0.1.mm、長さ=12mm、体積=0.000094247m3/本
繊維混入率はコンクリート1m3中の繊維の本数で、繊維混入率2.0%の場合の繊維本数は約2億1220万8千本になる。したがって、本数で、前記従来技術2に比して、363倍となる。
【0027】
(2)コンクリート(セメント)の調合は、下記表2による。
【表2】
【0028】
2.製造方法
【0029】
(1)踏製造用の型枠は、踏板基部1と上方凸部2とからなる踏板10を形成できる形状となっている。踏板基部1は、踏板巾=2500mm、踏板厚さ=80mm、踏面寸法=300mmで形成され、上方凸部2は、踏板基部1で、蹴込み側に踏板上面から高さ=80mm、奥行き=40mmで形成されている。
型枠内で、踏板基部形成部分に、巾方向の全長に亘るインサートナット4を配置する。インサートナット4は、連結鉄筋5の両端にナット6を夫々固定して構成し、連結鉄筋5は、Φ19mmの丸棒を使用した。また、型枠の上方凸部形成部分に、巾方向にD10の異形鉄筋8を配置する(図1)。
【0030】
(2)重量式のセメントミキサ内に、セメント、水、細骨材を入れて、所定の撹拌をする。適宜時間経過後に、セメントミキサ内に、撹拌しながら徐々にビニロン繊維を投入する。
【0031】
セメントミキサ内に適宜混和剤を投入して、更に混練して撹拌コンクリート材料を完成させる。
【0032】
(3)続いて、セメントミキサを操作して、型枠内に撹拌コンクリート材料を充填する。所定の養生後に脱型して、コンクリート製の踏板10を完成する(図1)。
【0033】
3.踏板10の使用
【0034】
この踏板10、10は、従来の踏板と同様に、階段状に配置して、両端を鋼板製のささら桁12、12で挟み、ささら桁12側から踏板10のインサートナット4のナット6にボルト14、14を緊結して、鉄骨階段20を構成する(図2、図3)。図3中、17は巾木、16は踊り場で、例えば踊り場デッキプレート上に配筋をしてコンクリートを打設して構成する。
【0035】
4.性能比較実験A(調合)
【0036】
(1)表3、表4のように調合内容を変えて、調合NO.1〜5、上記表2の調合の本件実施例の調合、前記従来の技術2の調合、を比較した。
【0037】
(2)表5、表6のように、本件実施例の調合は、製造時の不具合が無く、良好となる。とりわけ、調合の違いによる混錬性と、こて仕上げ性とについて、考察する。
【0038】
本願の特徴である繊維の細いビニロン繊維を均一にコンクリート中に分散させるためには、基材となるモルタル(水及びセメント)に粘性を持たせる必要があった。粘性がないとビニロン繊維同士が絡まってボール状(いわゆる「ファイバーボール」)になり、繊維補強コンクリートの特性が出せないことになる。
【0039】
この場合、粘性を出すには以下のような工夫をする必要がある。
(a) 材料の粒子を小さくする。例えば、目の細かい砂や、フライアッシュやシリカヒュームなどの微細混和材料を使用する。
(b) 増粘剤を添加する。この場合には、材料コストアップ、材料種類の増加による生産性低下が生じる。
【0040】
一方、粘性が出ると以下のような新たな問題が生じる。
(a) 普及率の高い傾胴式ミキサ(重力式ミキサ)やコンクリートミキサ車(重力式ミキサ)で混練ができなくなる。これは、強制撹拌しなければ、ファイバーボールが発生するからである。したがって、強制撹拌形式のミキサを備える必要があり、生産工場が限定される。
(b) コンクリート打設面をこて仕上げをする場合に、粘性が高いと綺麗に仕上がらないことになる。したがって、外観品質の低下し、表面(打設面)を仕上げる新たな工程が生じ、仕上げ時間が増加することになる。
【0041】
そこで、本願発明では、混練性とコテ仕上げ性を兼ね備えた調合を実現できた。
【0042】
すなわち、ファイバーボールができず、こて仕上げにより容易に打設面の仕上げができ、工程に影響が少なく、かつ新たな添加剤・添加材などの新たな材料の追加を不要して、最低限の粘性を実現した。また、細骨材はどの製造工場でも入手可能な「天然砂」とし、単位セメント量を増やして、モルタルに粘性を持たせることができた。コンクリート材料自体は、第二の従来技術(表2)で使用した材料と同様として、画期的な効果を実現した。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0043】
5.性能比較B(曲げ耐力)
【0044】
(1) 図4に示すように、同一外形の本願発明の踏板10の試験体(図4(a)(b))、従来のプレストレスコンクリート踏板30(図4(c)(d))を比較する。各試験体10、30は階段巾2500mmで形成する。
本願発明の踏板10の試験体10は、前記実施例の構造と同一である。
プレストレスコンクリート踏板30の試験体30は、インサートナットとしてφ16異形鉄筋(本願発明はφ19丸棒)を使用した。また、試験体30は踏板本体及び上方凸部内に、φ3.2の鉄筋からなる溶接金網を埋設した点で、試験体10と異なる。また、試験体30はφ2.9のPC撚り線を埋設してプレストレスを導入した(図4(c)(d))。
【0045】
(2) 図5に示すように、両端に支持側板32、32に固定した両試験体10、30に、中央部に支点ビーム33を載せ、支点ビーム33の中央に10tの荷重をかけて、試験体10、30の中央の撓みを変位計で測定した。
【0046】
(3) 両試験体10の 「荷重(kg)−撓み(cm)曲線」を図6に示す。
【0047】
(4) プレストレストコンクリート踏板の場合と比較すると、試験体10(本願発明の踏板10)は、初亀裂発生荷重は劣るものの、亀裂(ひび割れ)発生後の曲げ靭性は遜色なく、破壊される最大荷重ではプレストレスコンクリート踏板を上回った。
【0048】
(5) 試験体10では、階段巾を2500mm(連結鉄筋5をφ19)としたが、階段巾を2500mm(連結鉄筋5をφ16)と階段巾を1200mm(連結鉄筋5をφ19)についても同様の曲げ耐力試験をおこなった。その際の、荷重−たわみ曲線を2500mm(連結鉄筋5をφ19)の場合と併せて、図7に示した。
建築基準法施行令の規定から階段踏み段の積載荷重について、巾1200mmで想定している事務所階段の場合の曲げ強度の値2900N/m2、および巾2500mmで想定している店舗・映画館等の階段の値3500N/m2 から計算するとそれぞれ初亀裂発生時でも2.4倍以上の安全率を有する結果となった。更に最大荷重時で計算すると8.6倍以上の安全率を有し、充分な耐力を保有していることがわかった(表7)。
また、本願発明の試験体10の調合で2500mmの巾広の踏板でも建築基準法の荷重を充分に満足し得る耐力を有している。
【表7】
【0049】
6.性能比較C(耐衝撃性)
【0050】
(1)前記実施例の調合による踏板に対して重錘落下法による衝撃試験を行い、耐衝撃性能を検証した。
【0051】
(2)試験体
【0052】
本願発明の踏板10は、前記実施例の配合で、図8に示すような形状で、有効幅を1200mmとし、両端に厚さ9mmの鋼板からなる側板35、35を固定した。なお、有効幅を1200mmの場合、上方凸部の異形鉄筋8を省略してある。
比較例1は、表1の配合の第2の従来技術のビニロン繊維踏板で、形状は本願発明の踏板10の試験体10と同一形状とした(図8参照)。
また、比較例2は、前記実施例と同一のコンクリートの配合で、但し、ビニロン繊維を除いたプレーンな配合である。形状は本願発明の踏板10の試験体10と同一である(図8参照)。
【表8】
【0053】
(3)試験方法
【0054】
試験は、重錘落下法による衝撃試験とし、図9に示すように、試験体10の中央部に重さ10kgのなす型重りを自由落下させた。落下高さを10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、100cm、2mと徐々にあげて、初期亀裂、初亀裂が発生する高さを調べた。2m以降は、落下高さを上げずに、重りを落下させる回数を増やし、繰り返し試験体が破壊するまで落下を繰り返した。
【0055】
(4)10kgの鉄製の重りを試験体(踏板)上に落下させ、初亀裂が発生する高さと、高さ2mからの落下を繰り返して、踏板が破壊に至る回数を比較した(表8)。表8によれば、本願発明の踏板10と比較例1の試験体(従来例2の踏板)との比較では、初亀裂発生高さ、破壊までの落下回数とも比較例1を上回った。
本願発明の調合による試験体10では、踏板に衝撃を受けた際に、ひび割れを分散する効果が認められた。数度の衝撃を受けても構造が維持され、落下物などにより踏み段がダメージを受けた場合でも、踏板の機能を充分に果たすことができることがわかった。
【符号の説明】
【0056】
1 踏板基部
2 上方凸部
4 インサートナット
5 連結鉄筋(インサートナット)
6 ナット(インサートナット)
8 異形鉄筋
10 踏板(試験体)
12 ささら桁
14 ボルト
20 鉄骨階段
30 比較例の踏板(試験体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広の階段用踏板に最適で、かつ強制練りセメントミキサを使うことなく、通常の重力式の練りセメントミキサを用いて簡易に製造できる、高靱性のコンクリート踏板、及びその製造方法に関する。また、階段用踏板に限定されず、同趣旨で汎用の高靱性のコンクリート成型板及びその製造方法に適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
階段状に並べたPCa踏板(セメント成型品)の両端を鋼板製のささら桁で挟んだ場合、曲げ強度の観点から通常は、階段巾(踏板の巾)は、1.0m程度が一般に使用されていた。幅広の型の階段では、1.8m〜3.0mの踏み板を使いたい場合には、従来の踏板を使用することはできなかった。
【0003】
(1)従来の技術1
特許文献1では、複数個の踏板の巾に対応した型枠にPC鋼棒を配置してストレスを導入して、長さ1.8m〜3.0mの踏み板を実現していた。この場合、長い凹部内を仕切板で区切って、複数個の踏板の巾に対応した型枠を形成して、仕切板を貫通してPC鋼棒を配置して、凹部内にコンクリートを充填していた。
【0004】
この場合、プレストレス(緊張力)の導入のためには、専用の設備が必要であり、製造工場が限定され、簡易には適用できなかった。また、所望の強度性能を発揮するためには適切なプレストレスの管理が必要であった。また、経済的に生産するためには、一度に大量の踏板を製造する必要があり、少量生産(例えば、100本程度の生産には不向きであった。また、PC鋼棒を切った後の表面処理工程も必要であり、簡易には生産できなかった。
【0005】
(2)従来の技術2
また、従来から繊維補強コンクリート踏板として、以下の表1のような配合のビニロン先鋭補強コンクリートも使用されていた。この場合、ビニロン繊維は、直径=0.66mm、長さ=30mm、体積=0.010cm3/本 である。繊維混入率はコンクリート1m3中の繊維の本数で、繊維混入率0.6%の場合の繊維本数は約58万5千本になる。
【表1】
【0006】
従来のビニロンを使ったコンクリート踏板では、求める曲げ靱性(ねばり)が低く、ひび割れが集中して、ひび割れが生じた場合には、ひび割れ巾が大きく目立つものになっていた。これは、ビニロン繊維の繊維形が太く、長いためにコンクリリート中に混入できる繊維の本数を多くできないことによると考えられる。
【0007】
(3)従来の技術3
また、ビニロン繊維を初めとした有機または無機の繊維を直径0.005〜1.0mm、長さ2〜30mmとした水硬性塑性物で曲げ強度、破壊エネルギー及び靱性を向上させた提案がなされていた(特許文献2)。この提案では、圧縮強度130Mpa以上、曲げ強度20Mpa以上を達成できる可能性がある旨の記載のある(特許文献2、段落番号0009)。
【0008】
また、ビニロン繊維を初めとした有機質繊維の直径0.01〜1.0mm、長さ2〜30mmとした高強度モルタルで、の提案もなされていた(特許文献3)。この提案では、圧縮強度200Mpa以上、曲げ強度/圧縮強度の比が、1/4 〜 1/7 にできる可能性がある旨の記載のある(特許文献3、段落番号0019)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−264222号公報
【特許文献2】特開2001−181004号公報
【特許文献3】特開2002−193655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、従来の技術1〜3では、重力式のセメントミキサを使用して、簡易に少量生産でき、かつ充分な曲げ強度、衝撃に耐える強度を確保することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、セメントの配合量を増加させ、かつ従来コンクリート成型品で使用されるビニロン性繊維より、太さが充分に細く、かつ長さが充分に短い繊維を、大量に投入したので、前記問題点を解決した。
【0012】
すなわち、この発明は、水、セメント、細骨材、混和剤を含み、プレストレスを導入せずに、以下のような調合で製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート成型板である。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【0013】
また、他の発明は、以下のような手順で製造することを特徴とするコンクリート成型品の製造方法である。
(1) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(2) 前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(3) 次ぎに、所定の型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填して、
(4) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【0014】
また、他の発明は、長さ方向の両端に、取付用ねじ穴を形成し、水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下のような調合で、プレストレスを導入せずに製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート踏板である。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【0015】
さらに、以下のような手順で製造することを特徴とする高靱性のコンクリート踏板の製造方法である。
(1) 長さ方向の両端部にナットの開口を臨ませ、該開口に対応して、長さ方向の全長に亘る構造鉄筋を埋設して型枠を構成する。
(2) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(3) 次ぎに、前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(4) 次ぎに、前記型枠内に、前記撹拌コンクリート材料を充填して、
(5) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【0016】
前記におけるセメントとは、通常の型枠成型品に使用する水硬性材料を指す。
【0017】
また、前記において、ビニロン繊維の径は0.08〜0.2mmとしたが、0.08mm以下では繊維の強度が不足し、0.2mm以上では、繊維の投入量に比して繊維の補強効果期待できない。
【0018】
また、ビニロン繊維の長さは10〜15mmとしたが、10mm以下では繊維の連結効果が期待できず、10mm以上ではファイバーボールが生じやすく製造時に不具合が生じる。
【0019】
また、ビニロン繊維の配合比率は、0.5〜3.0Vol.%/m3 としたが、0.5以下では補強効果が得られず、3.0以上では繊維が混ざらない不都合があり、2%程度が最適と考えられる。
【0020】
また、高靱性のコンクリート成型板は、階段用踏板に最適であるが、ささら桁などにも適用できる。とりわけ、外力などによる曲げや衝撃発生する用途に有効である。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、従来に比して、ビニロン繊維を細くかつ短くして、かつ混合比率を高めたので、プレストレスを導入することなく、コンクリート成型板の曲げ靱性を高めて、ひび割れに強い製品を構成できる。すなわち、強度に影響が無い程度のひび割れが入っても、初期のひび割れが分散して、ひび割れ巾を小さくできるので、ひび割れを目立たなくできる。したがって、幅広の階段用踏板に最適なコンクリート成型板を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施例の踏板で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を表す
【図2】この発明の実施例の踏板を使用した鉄骨階段の一部を表す。
【図3】この発明の実施例の踏板を使用した鉄骨階段の組立を表す。
【図4】曲げ試験の試験体を表し、(a)は本願踏板の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は比較例のプレストレスコンクリート踏板の正面図、(d)は同じく側面図である。
【図5】曲げ試験の試験方法を説明する図である。
【図6】曲げ試験の結果を表す荷重−たわみグラフである。
【図7】曲げ試験の結果を表す荷重−たわみグラフである。
【図8】衝撃試験の試験体を表し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】衝撃試験の方法を表し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1) 「セメント 800kg/m3 以上」、「径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3 」、細骨材、混和剤に水を加えて、コンクリート材料を構成する。
(2) コンクリート材料を、(強制的ミキサではなく)重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成する。
(3) 次ぎに、製造予定の製品に合わせた型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填する。
(4) この際、プレストレスを導入せずに撹拌コンクリート材料を所定の養生をして固化させる。脱型して、この発明のコンクリート製品を製造する。
(5) このコンクリート製品は高靱性であり、耐衝撃・耐曲げに効果が求められる製品に有効で、特に、ささら桁に固定するコンクリート製の踏板に適する。
【実施例1】
【0024】
次ぎに、実施例について説明する。
【0025】
1.調合
【0026】
(1)ビニロン繊維(クラレ製「RECS100×12」)
直径=0.1.mm、長さ=12mm、体積=0.000094247m3/本
繊維混入率はコンクリート1m3中の繊維の本数で、繊維混入率2.0%の場合の繊維本数は約2億1220万8千本になる。したがって、本数で、前記従来技術2に比して、363倍となる。
【0027】
(2)コンクリート(セメント)の調合は、下記表2による。
【表2】
【0028】
2.製造方法
【0029】
(1)踏製造用の型枠は、踏板基部1と上方凸部2とからなる踏板10を形成できる形状となっている。踏板基部1は、踏板巾=2500mm、踏板厚さ=80mm、踏面寸法=300mmで形成され、上方凸部2は、踏板基部1で、蹴込み側に踏板上面から高さ=80mm、奥行き=40mmで形成されている。
型枠内で、踏板基部形成部分に、巾方向の全長に亘るインサートナット4を配置する。インサートナット4は、連結鉄筋5の両端にナット6を夫々固定して構成し、連結鉄筋5は、Φ19mmの丸棒を使用した。また、型枠の上方凸部形成部分に、巾方向にD10の異形鉄筋8を配置する(図1)。
【0030】
(2)重量式のセメントミキサ内に、セメント、水、細骨材を入れて、所定の撹拌をする。適宜時間経過後に、セメントミキサ内に、撹拌しながら徐々にビニロン繊維を投入する。
【0031】
セメントミキサ内に適宜混和剤を投入して、更に混練して撹拌コンクリート材料を完成させる。
【0032】
(3)続いて、セメントミキサを操作して、型枠内に撹拌コンクリート材料を充填する。所定の養生後に脱型して、コンクリート製の踏板10を完成する(図1)。
【0033】
3.踏板10の使用
【0034】
この踏板10、10は、従来の踏板と同様に、階段状に配置して、両端を鋼板製のささら桁12、12で挟み、ささら桁12側から踏板10のインサートナット4のナット6にボルト14、14を緊結して、鉄骨階段20を構成する(図2、図3)。図3中、17は巾木、16は踊り場で、例えば踊り場デッキプレート上に配筋をしてコンクリートを打設して構成する。
【0035】
4.性能比較実験A(調合)
【0036】
(1)表3、表4のように調合内容を変えて、調合NO.1〜5、上記表2の調合の本件実施例の調合、前記従来の技術2の調合、を比較した。
【0037】
(2)表5、表6のように、本件実施例の調合は、製造時の不具合が無く、良好となる。とりわけ、調合の違いによる混錬性と、こて仕上げ性とについて、考察する。
【0038】
本願の特徴である繊維の細いビニロン繊維を均一にコンクリート中に分散させるためには、基材となるモルタル(水及びセメント)に粘性を持たせる必要があった。粘性がないとビニロン繊維同士が絡まってボール状(いわゆる「ファイバーボール」)になり、繊維補強コンクリートの特性が出せないことになる。
【0039】
この場合、粘性を出すには以下のような工夫をする必要がある。
(a) 材料の粒子を小さくする。例えば、目の細かい砂や、フライアッシュやシリカヒュームなどの微細混和材料を使用する。
(b) 増粘剤を添加する。この場合には、材料コストアップ、材料種類の増加による生産性低下が生じる。
【0040】
一方、粘性が出ると以下のような新たな問題が生じる。
(a) 普及率の高い傾胴式ミキサ(重力式ミキサ)やコンクリートミキサ車(重力式ミキサ)で混練ができなくなる。これは、強制撹拌しなければ、ファイバーボールが発生するからである。したがって、強制撹拌形式のミキサを備える必要があり、生産工場が限定される。
(b) コンクリート打設面をこて仕上げをする場合に、粘性が高いと綺麗に仕上がらないことになる。したがって、外観品質の低下し、表面(打設面)を仕上げる新たな工程が生じ、仕上げ時間が増加することになる。
【0041】
そこで、本願発明では、混練性とコテ仕上げ性を兼ね備えた調合を実現できた。
【0042】
すなわち、ファイバーボールができず、こて仕上げにより容易に打設面の仕上げができ、工程に影響が少なく、かつ新たな添加剤・添加材などの新たな材料の追加を不要して、最低限の粘性を実現した。また、細骨材はどの製造工場でも入手可能な「天然砂」とし、単位セメント量を増やして、モルタルに粘性を持たせることができた。コンクリート材料自体は、第二の従来技術(表2)で使用した材料と同様として、画期的な効果を実現した。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0043】
5.性能比較B(曲げ耐力)
【0044】
(1) 図4に示すように、同一外形の本願発明の踏板10の試験体(図4(a)(b))、従来のプレストレスコンクリート踏板30(図4(c)(d))を比較する。各試験体10、30は階段巾2500mmで形成する。
本願発明の踏板10の試験体10は、前記実施例の構造と同一である。
プレストレスコンクリート踏板30の試験体30は、インサートナットとしてφ16異形鉄筋(本願発明はφ19丸棒)を使用した。また、試験体30は踏板本体及び上方凸部内に、φ3.2の鉄筋からなる溶接金網を埋設した点で、試験体10と異なる。また、試験体30はφ2.9のPC撚り線を埋設してプレストレスを導入した(図4(c)(d))。
【0045】
(2) 図5に示すように、両端に支持側板32、32に固定した両試験体10、30に、中央部に支点ビーム33を載せ、支点ビーム33の中央に10tの荷重をかけて、試験体10、30の中央の撓みを変位計で測定した。
【0046】
(3) 両試験体10の 「荷重(kg)−撓み(cm)曲線」を図6に示す。
【0047】
(4) プレストレストコンクリート踏板の場合と比較すると、試験体10(本願発明の踏板10)は、初亀裂発生荷重は劣るものの、亀裂(ひび割れ)発生後の曲げ靭性は遜色なく、破壊される最大荷重ではプレストレスコンクリート踏板を上回った。
【0048】
(5) 試験体10では、階段巾を2500mm(連結鉄筋5をφ19)としたが、階段巾を2500mm(連結鉄筋5をφ16)と階段巾を1200mm(連結鉄筋5をφ19)についても同様の曲げ耐力試験をおこなった。その際の、荷重−たわみ曲線を2500mm(連結鉄筋5をφ19)の場合と併せて、図7に示した。
建築基準法施行令の規定から階段踏み段の積載荷重について、巾1200mmで想定している事務所階段の場合の曲げ強度の値2900N/m2、および巾2500mmで想定している店舗・映画館等の階段の値3500N/m2 から計算するとそれぞれ初亀裂発生時でも2.4倍以上の安全率を有する結果となった。更に最大荷重時で計算すると8.6倍以上の安全率を有し、充分な耐力を保有していることがわかった(表7)。
また、本願発明の試験体10の調合で2500mmの巾広の踏板でも建築基準法の荷重を充分に満足し得る耐力を有している。
【表7】
【0049】
6.性能比較C(耐衝撃性)
【0050】
(1)前記実施例の調合による踏板に対して重錘落下法による衝撃試験を行い、耐衝撃性能を検証した。
【0051】
(2)試験体
【0052】
本願発明の踏板10は、前記実施例の配合で、図8に示すような形状で、有効幅を1200mmとし、両端に厚さ9mmの鋼板からなる側板35、35を固定した。なお、有効幅を1200mmの場合、上方凸部の異形鉄筋8を省略してある。
比較例1は、表1の配合の第2の従来技術のビニロン繊維踏板で、形状は本願発明の踏板10の試験体10と同一形状とした(図8参照)。
また、比較例2は、前記実施例と同一のコンクリートの配合で、但し、ビニロン繊維を除いたプレーンな配合である。形状は本願発明の踏板10の試験体10と同一である(図8参照)。
【表8】
【0053】
(3)試験方法
【0054】
試験は、重錘落下法による衝撃試験とし、図9に示すように、試験体10の中央部に重さ10kgのなす型重りを自由落下させた。落下高さを10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、100cm、2mと徐々にあげて、初期亀裂、初亀裂が発生する高さを調べた。2m以降は、落下高さを上げずに、重りを落下させる回数を増やし、繰り返し試験体が破壊するまで落下を繰り返した。
【0055】
(4)10kgの鉄製の重りを試験体(踏板)上に落下させ、初亀裂が発生する高さと、高さ2mからの落下を繰り返して、踏板が破壊に至る回数を比較した(表8)。表8によれば、本願発明の踏板10と比較例1の試験体(従来例2の踏板)との比較では、初亀裂発生高さ、破壊までの落下回数とも比較例1を上回った。
本願発明の調合による試験体10では、踏板に衝撃を受けた際に、ひび割れを分散する効果が認められた。数度の衝撃を受けても構造が維持され、落下物などにより踏み段がダメージを受けた場合でも、踏板の機能を充分に果たすことができることがわかった。
【符号の説明】
【0056】
1 踏板基部
2 上方凸部
4 インサートナット
5 連結鉄筋(インサートナット)
6 ナット(インサートナット)
8 異形鉄筋
10 踏板(試験体)
12 ささら桁
14 ボルト
20 鉄骨階段
30 比較例の踏板(試験体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、セメント、細骨材、混和剤を含み、プレストレスを導入せずに、以下のような調合で製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート成型板。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【請求項2】
以下のような手順で製造することを特徴とするコンクリート成型品の製造方法。
(1) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(2) 前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(3) 次ぎに、所定の型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填して、
(4) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【請求項3】
長さ方向の両端に、取付用ねじ穴を形成し、水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下のような調合で、プレストレスを導入せずに製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート踏板。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【請求項4】
以下のような手順で製造することを特徴とする高靱性のコンクリート踏板の製造方法。
(1) 長さ方向の両端部にナットの開口を臨ませ、該開口に対応して、長さ方向の全長に亘る構造鉄筋を埋設して型枠を構成する。
(2) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(3) 次ぎに、前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(4) 次ぎに、前記型枠内に、前記撹拌コンクリート材料を充填して、
(5) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【請求項1】
水、セメント、細骨材、混和剤を含み、プレストレスを導入せずに、以下のような調合で製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート成型板。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【請求項2】
以下のような手順で製造することを特徴とするコンクリート成型品の製造方法。
(1) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(2) 前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(3) 次ぎに、所定の型枠内に、撹拌コンクリート材料を充填して、
(4) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【請求項3】
長さ方向の両端に、取付用ねじ穴を形成し、水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下のような調合で、プレストレスを導入せずに製造したことを特徴とする高靱性のコンクリート踏板。
(1) セメント 800kg/m3 以上
(2) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
【請求項4】
以下のような手順で製造することを特徴とする高靱性のコンクリート踏板の製造方法。
(1) 長さ方向の両端部にナットの開口を臨ませ、該開口に対応して、長さ方向の全長に亘る構造鉄筋を埋設して型枠を構成する。
(2) 水、セメント、細骨材、混和剤を含み以下(a)(b)のような調合で、コンクリート材料を構成する。
(a) セメント 800kg/m3 以上
(b) 径0.08〜0.2mm、長さ10〜15mmのビニロン系樹脂繊維を0.5〜3Vol.%/m3
(3) 次ぎに、前記コンクリート材料を、重力式のミキサに投入して撹拌コンクリート材料を形成し
(4) 次ぎに、前記型枠内に、前記撹拌コンクリート材料を充填して、
(5) 次ぎに、プレストレスを導入せずに、所定の養生をして、脱型する。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−32674(P2011−32674A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177948(P2009−177948)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年7月20日 社団法人日本建築学会発行の「2009年度大会(東北) 学術講演梗概集 建築デザイン発表梗概集」(DVD−ROM)に発表
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(390010065)株式会社横森製作所 (11)
【出願人】(596169613)株式会社 三和キャストン (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年7月20日 社団法人日本建築学会発行の「2009年度大会(東北) 学術講演梗概集 建築デザイン発表梗概集」(DVD−ROM)に発表
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(390010065)株式会社横森製作所 (11)
【出願人】(596169613)株式会社 三和キャストン (2)
【Fターム(参考)】
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