説明

高駆動力、高燃焼速度のガス生成体推進剤及びこれを内蔵するシートベルトプリテンショナ

高駆動力、高いガス生成速度を必要とする自動車のシートベルトプリテンショナ及びその他の適切な用途に用いる、好ましくは5−アミノテトラゾール(5−AT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、酸化剤、ナノアルミニウム等の超精密金属粉末の燃焼速度促進剤の混合物からなる燃料を有するガス生成組成。また、これらの組成の作成方法と、これらを組み込んだシートベルトプリテンショナ等の装置。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、ガス生成組成、それらの製造方法、及びそれらを内蔵する装置に関し、より詳細には、自動車のシートベルトプリテンショナやその他の適切な用途に用いられる高駆動力、高燃焼速度のガス生成組成に関する。
【0002】
自動車の安全規制システムに用いられるガス生成組成は、幾つかの重要な推進剤の基準を満たさなければならない。これらの用途では、高い質量流量を有するガスを生成する組成、高い熱安定性を有する組成、過度に有害なガスを含まない又は過度の固体微粒子を含まない燃焼生成物を生じるような組成が要求される。推進剤及びそれらの燃焼生成物の毒性を減らすことに関心が高まっており、その結果、アジド系推進剤(以前はこれが標準エアバッグガス生成体であった)は、毒性が低く且つより良い性能を有するパイロテクニック系製剤へと、次第に置換されている。
【0003】
パイロテクニックガス生成体組成は、通常、炭化水素類、テトラゾール類、ニトラミン類、グアニジン類、ジシアンジアミド、その他のNHO含有化合物等の、一又は複数の個別の燃料源の不均一なブレンドから構成される。分量を変更して比較的良性な燃焼生成物、特にN2、H2O及びCO2を有する所望のガス生成物を作りだす際には、それらは金属酸化物、硝酸塩、過塩素酸等の一又は複数の酸化剤と混合される。このような組成は、燃焼速度を上げる燃焼速度触媒、機械的性質を向上させるバインダ、及び処理性を容易にする処理助剤を含んでいても良い。
【0004】
エアバッグ、プリテンショナ及び類似の用途では、一般に、毒性のない燃焼生成物、高い熱安定性及び耐久性、並びに全体的に小型で経済的なアセンブリが要求されている。しかしながら、シーベルトプリテンショナ等の用途に関連する設計基準は、エアバッグに関連する設計基準とは幾つかの点で異なっている。プリテンショナにおける推進剤に関し主に要求される事項は、高駆動力と、低い圧力指数を有する高燃焼速度である。プリテンショナのピストンは、非常にすばやく(一般には7ミリ秒未満で)効率的に作動されなければならないので、ガス生成体は、より高い燃焼温度を必要としがちな高エネルギー出力を生じなければならない。一般的に、エアバッグの用途においては、燃焼温度を下げることが望まれるが、これはシートベルトプリテンショナ等の用途ではそれほど重要な制約ではない。なぜなら、得られる燃焼性生物は、自動車の乗員が吸いこむ環境に放出されるよりは、むしろ、プリテンショナのハウジング内部に多く閉じこめられるからであり、またシーベルトプリテンショナにおけるガス生成体の燃焼により生じる多大な熱は、プリテンショナを作動する際に運動エネルギーに変換されるからである。
【0005】
単一塩基推進剤は、プリテンショナガス生成体組成における標準的な推進剤であるが、熱安定性が低いという欠点および高率の一酸化炭素燃焼生成物の欠点が考えられる。従って、プリテンショナ等の用途で用いるために、ガス生成体組成を改良する必要がある。
【0006】
自動車のエアバッグでは、高エネルギークリーン燃焼推進剤の原料として、5−アミノテトラゾール(5−AT)を用いることが知られており、さらにこれを、燃焼触媒としての酸化鉄、及びスラグ形成剤とともに用いることが知られている。A. Helmy and W. Tong, Thermal Decomposition of 5 Amino Tetrazole Propellant, 36th AIAA / ASME / SAE / ASEE Joint Propulsion Conference and Exhibit, AIAA Publication No. 2000-3330は、参照することにより本明細書に含まれるものとする。
【0007】
ヨシダの米国特許No.5,883,330は、アゾジカルボンアミド(ADCA)、酸化剤、及び好ましくは0.2から10wt%の燃焼触媒から本質的に構成されるガス生成体組成を開示している。
【0008】
米国特許No.6,019,861は、15から30wt%の燃料であって場合によりADCA又はシュウ酸アンモニウムが付加された5−ATを含む燃料と、35から80wt%の相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)酸化剤と、好ましくは0.5から7wtの、不可欠とされているが不特定な目的のための、2から100ミクロン粒子サイズのシリコン粉末とを含むガス生成組成を開示している。
【0009】
Burns等の米国特許No.6,074,502は、好ましくは9から27wt%の5−AT等の主要燃料と、1から15wt%のADCA及びヒドラゾジカルボンアミドを含む第2燃料と、55から85wt%のPSAN酸化剤と、0から10wt%の、アルカリ金属を含む様々な可能性から選択した任意の燃焼速度調整剤とを含むガス生成組成を開示している。
【0010】
米国特許No.6,361,630も、具体例において、好ましくは15から35wt%の5−AT又はADCA等の有機燃料と、無機塩酸化剤と、金属有機冷却剤と、また任意に、1wt%の酸化鉄等の燃焼速度調整剤とを含む非アジド窒素の使用を開示している。
【0011】
Wheatley等の米国特許出願公開No.2003/0015266は、硝酸アゾジホルムアミジン燃料、硝酸銀及び硝酸カリウムの共溶解物、5−アミノテトラゾール等の補助燃料、及び「分解反応を促進させる燃焼触媒としての、更には主要の推進剤又はガス生成体の点火を容易にする燃焼助剤としての粉末金属又は金属酸化物」の好適な使用を開示している。但し、金属又は金属酸化物の粉末は、「鉄、アルミニウム、銅、ボロン、マグネシウム、マンガン、シリカ、チタン、コバルト、ジルコニウム、ハフニウム、及びタングステンに基づくもの」を含むとあり、特に好適な例として、NANOCAT(登録商標)が挙げられている。これは、平均粒子サイズ2nm、比表面積密度約250mg、並びに、かさ密度2から約5wt%を有する超精密酸化鉄材料である。さらにWheatleyは、好ましくは平均粒子サイズ40ミクロンを有するグラファイト粉末の形で、0.5wt%から1.5wt%である、任意の点火加速剤(アクセルレイター)/増補剤(オーグメンター)/促進剤(エンハンサー)を開示している。
【0012】
最後に、ナノアルミニウムが、高圧ロケットで用いられる推進剤(通常、ニ塩基推進剤)の燃料速度促進剤として知られている。例えば、M. M. Mench, C. L. Yeh, and K. K. Kuo, Propellant burning rate enhancement and thermal behavior of ultra0fine aluminum powders (Alex), Proceedings of the 29th International Annual Conference of ICT, Karlsruhe, Federal Republic of Germany, pp. 30/1 to 30/15 (1998)。
【0013】
【特許文献1】U.S. Patent No. 5,883,330
【特許文献2】U.S. Patent No. 6,019,861
【特許文献3】U.S. Patent No. 6,074,502
【特許文献4】U.S. Patent No.6,361,630
【特許文献5】U.S. Patent App. Pub. No. 2003 / 0015266
【非特許文献1】A. Helmy and W. Tong, Thermal Decomposition of 5 Amino Tetrazole Propellant, 36th AIAA / ASME / SAE / ASEE Joint Propulsion Conference and Exhibit, AIAA Publication No. 2000-3330
【非特許文献2】M. M. Mench, C. L. Yeh, and K. K. Kuo, Propellant burning rate enhancement and thermal behavior of ultra0fine aluminum powders (Alex), Proceedings of the 29th International Annual Conference of ICT, Karlsruhe, Federal Republic of Germany, pp. 30/1 to 30/15 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前述の文献における燃焼速度及び相対的に低い駆動力は、プリテンショナの性能に関して要求される事項にあまりそぐわない。更に、前述の文献はいずれも、5−AT、ADCA、及びナノアルミニウム等の超精密金属粉末の固溶体から構成される燃料を採用している推進剤を開示していない。
【0015】
一般に、前述の教示に照らし、高駆動力、高燃焼速度、高ガス収率、低い圧力指数、高い熱安定性、及びクリーン燃焼生成物が有益に組み合わさっており、且つ製造コストが低いガス生成体への必要性は存続している。従って、低コストであって、性能がより予測可能であり、シートベルトプリテンショナ等の用途にさらに適合する、ガス生成組成並びにそれから製造される安全装置の必要性は引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のガス生成体は、5−AT、ADCA、及びナノアルミニウム等の超精密金属粉末からなる燃料源と、酸化剤と、バインダとから本質的に構成される。燃料源は、好ましくは、5−AT、ADCA、及びナノアルミニウム粉末の三元固溶体からなり、ガス生成体は、好ましくは、過酸化カリウム(KClO)、過酸化アンモニウム(NHClO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、又はこれらの混合物等の無機酸化剤、又は硝酸グアニジン等の有機酸化剤を含む。さらにバインダ金属も、好ましくは非常に低い濃度で含まれる。
【0017】
本発明の燃料は、高駆動力、低い圧力指数を有する高燃焼速度、高ガス収率、高い熱安定性が可能となる。この燃料に酸化剤及びバインダを組み込むことにより、高い質量流量、高い火炎温度、高い比熱比、及び高駆動力が可能となり、得られるガス生成体がシートベルトプリテンショナに関し要求される事項を満たすことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここに記載される本発明の好適な実施形態は、シートベルトプリテンショナ装置に用いるために設計されている。好適な実施形態におけるガス生成体は、5−AT、ADCA、及び超精密アルミニウム粉末からなる燃料源と、酸化剤と、バインダとから本質的に構成される。燃料源は、好ましくは、5−AT、ADCA、及びナノアルミニウム粉末の三元固溶体からなり、ガス生成体は、好ましくは、過酸化カリウム、過酸化アンモニウム、硝酸ナトリウム、又はこれらの混合物等の無機酸化剤、又は硝酸グアニジン等の有機酸化剤を含む。イソブチレンゴム、NIPOL(登録商標)ゴム、又はイソプレンゴム等のバインダ金属(好ましくは炭化水素系)も、非常に低い濃度で含まれる。
【0019】
酸化剤は特に限定されず、この分野で従来使用されているものから選択できる。好ましくは、酸素バランスが高いものであり、例えば、硝酸塩、酸化物、過塩素酸塩等である。また、アルミニウムの代わりに、ボロン微粉末のような適切に細かい粒子サイズ(ナノメータまたはミクロン範囲)のその他の特定の金属が、適切な火炎拡散促進剤や燃焼速度触媒としての機能を果たすことができる。
【0020】
本発明における各々の重要な構成要素について、通常許容し得る範囲を表1で説明する。しかしながら、処理の制御やその他通常考えられる目的のために、更なる添加剤も本発明の範囲に含まれることは、当業者も認識しているであろう。
【0021】
【表1】

【0022】
5−AT及びADCA触媒が互いに固溶体を形成することに留意されたい。これは、それらの自動点火温度が非常に近いためであり、有益である。
【0023】
表2は、本発明に係る様々な推進剤組成を示す。
【0024】
【表2】

【0025】
表2の実施例は、次のように作成された。まず、5−AT(97%min.純度、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemical Co.より入手)、ADCA(平均粒子サイズ2.0から2.4μ、コネチカット州ミドルベリのCrompton Corp. より入手)、及びナノアルミニウム粉末(粒子サイズ.09から5μ、カリフォルニア州アービンのTechnanogy Corp又はニュージャージ州サウスプレインフィールドのHummel Crontonより入手可能)の三元混合物の夫々の所要量を、担体溶媒(好ましくは酢酸エチル又はアセトン)に加えた。好ましくはナノアルミニウム粉末を最後に加える。そして高せん断ブレンダーで15分間撹拌した。そして、得られた固溶体をオーブン乾燥させ、スパチュラで乾燥粉末にした。或いは(好ましくはコスト効率の良い処理として)、担体溶媒中のスラリーとして用いることもできる。
【0026】
次に、所定量のゴムバインダ(NIPOL(登録商標)AR53L−アクリロニトリル<10ppm、ケンタッキー州ルイビルのZeon Chemicalsから入手)を、瓶中のアセトンへ加え(その他の混合可能な担体溶媒を用いてもよい)、完全に溶解するまでジャーミル(jar mill)で回転させた。そして、所定量の作成済み三元固溶体を秤量し、2ガロンの高せん断ミキサーへ加えた。その後、所定量の溶解バインダもミキサーに加え、これを5分間作動させた。
【0027】
次に、実施例1から3、5及び6用の酸化剤(KClO、99%min.純度、オハイオ州コロンバスのCFS Chemicalから入手)を、実施例2以外では、7ミクロン粒子サイズにすりつぶした。実施例2では、酸化剤をすりつぶさないままにした。実施例4の酸化剤(50%NaNO、99%min.純度、ウィスコンシン州コロンバスのColumbus Chemical Co.から入手。これを50%NHClOと混合、98.5%min.純度、GFS Chemicalから入手)もすりつぶさないままにした。次に、各実施例における酸化剤を溶媒/三元固溶体/バインダ混合物に加え、更に20分間ミキサーを作動させた。そしてミキサーを止め、回転翼と容器をこすって、原料の全てを混合物内に含めるようにした。次に、混合しながら、その混合物が球状粒子を形成するまで(通常、直径0.2から2mmの範囲)、ミキサーに負圧を加えた。そして、推進剤混合物を、オーブン(約70℃)内のステンレススティール容器で完全に乾燥させた。得られた乾燥推進剤混合物をオーブンから取り出し、ふるいにかけて、種々のカット(種々の粒子サイズ範囲)に選別した。
【0028】
前述のフォーミュラや処理についてのその他多くの適切な変更や代替は、当業者には容易に明らかとなるであろう。例えば、得られるガス状生成物、燃焼速度、及び推進剤の性能を適切なプリテンショナ性能仕様の範囲内で調整するように、三元固体燃焼の酸化剤に対する比を変えることができることは認識されているであろう。別の実施例としては、固体推進剤を使用して通常行われるように、特定の用途に合わせて所望の圧力対時間燃焼性能を生じるよう推進剤における粒子の形状を変えることができる。
【0029】
実施例1から6における組成について、夫々、10ccの閉じた爆発物試験を行った。その結果を図1から6に示す(説明を行う該当の実施例の番号が、各図面の上部に記載されている)。これらの試験に用いられた10ccの閉じた爆発物は、マルチパート(multi-part)円筒型ステンレス鋼固定物であり、その本体には固定体積の中央孔が開けられており、本体の側面には変換器ポートを、本体の両端部には「0」−リング溝を、また爆発物の底部を閉じるために用いる固体ベースを有している。対象の推進剤を含んで組み立てた特定のマイクロガス発生器(MGG)を支持するために、試験を行うパートに特化したアダプタを爆発物の上部に配置した。試験を行うために、MGGをアダプタに設置し、爆発物とともに組み立てた。そして、これを水圧ラム中加圧下で、イニシエータにより推進剤が燃えるまで保持した。得られたデータを変換器から電荷増幅器、そしてオシロスコープに伝えた。図1から6に反映されたデータから、各々の実施例が、プリテンショナ仕様における推進剤の性能に関し要求される事項を満足すると判断した。詳細には、酸化剤としてKClOを用いる実施例が全てにおいて良い性能を示し、要求されるプリテンショナピーク圧を達成するのに通常必要とされる3インチ/秒の燃焼速度を満足すると判断した。同様に、KClO(実施例4と同様)の代わりにNHClO/NaNOの共酸化剤を用いても、プリテンショナにふさわしい推進剤を生じると判断した。また更に、より高い酸素バランスを提供し、且つ非常に低毒性の流出物が求められている用途に合うような、非常に低毒性の燃焼性生物を生じると判断した。他方、この酸化剤は、好ましくは密閉シールされた推進剤で採用されており、これに対しKClOはあまり環境に敏感ではなく、非密閉(圧着(crimped))MGGsでの使用にふさわしいことがわかっている。
【0030】
ADCA及び5−ATは熱分解問題(A. Helmy and W. Tong, Thermal Decomposition of 5 Amino Tetrazole Propellant, 36th AIAA / ASME / SAE / ASEE Joint Propulsion Conference and Exhibit, AIAA Publication No. 2000-3330; 及び U.S. Pat. No. 6,475,312 to Burns et al.を参照)が考えられていたが、本発明の前述の実施例を試験して、高い熱安定性を示すことがわかった。これらの組成は、107℃で408時間まで分解せず、このような暴露後も、性能の損失や質量損失はみられなかった。この点について、図7は、実施例5のガス生成体に対する0時間と408時間での性能を示している。その他の実施例を同様に試験して、図8で実施例6について示されるように、類似のエイジング性能を示すことがわかった。エイジングの研究に対して、ベースラインを決定するために、複数のパートを前述の10cc爆発装置で試験した。そして、その他のユニットを107℃の環境室へ設置し、その後、最後のユニットが107℃で408時間完了するまで、3日ごとに複数のユニットを取り外して試験燃焼させた。
【0031】
夫々の実施例に対して、駆動力、火炎温度、ガス生成物及び比熱比を、インディアンヘッドにある米国海軍兵器センターにより作られた推進剤評価コード(PEP)を用いて算出した。駆動力は、10cc閉じた爆発物試験の圧力−時間結果に基づく計算からも評価した。
【0032】
【表3】

【0033】
これら並びにその他の計算及び試験から、実施例1における三元固溶体の相対的構成が最も高い可能性がある駆動力を示したが、実施例2及び3は非常に高い燃焼速度(ピーク圧まで3m秒)を示すという点で有利であると判断した。
【0034】
また、三元固溶体は、シートベルトプリテンショナに使うエネルギーを十分に有するために、少なくとも約1wt%の5−ATを含まなければならないと判断した。表3からわかるように、三元固溶体が3wt%の5−ATのみを含む実施例5では、628J/gの駆動力が生じる。にもかかわらず、5−ATを完全に除く場合は、得られる駆動力はほんの約500J/gである。他方、5−ATの含有可能量は、燃焼化学量論及びその推進剤エネルギー出力への効果により限定される。ADCA量があまりにも減少(三元固体の約5wt%以下)しすぎる場合は、生じるガス量の減少により、引き起こされる駆動力は劇的に減少すると判断した。
【0035】
実施例におけるナノアルミニウムは、燃焼速度触媒、火炎伝播促進剤及び火炎温度向上剤として機能する。この点に関して、ナノアルミニウム量があまりにも減少(三元固体の約0.01wt%以下)しすぎる場合は、火炎拡散及び燃焼速度は不都合なほどに減少する。
【0036】
本発明に用いた5−ATを無水物で記載したが、ここに教示したものは水和物も包含することは明白であろう。更に本発明の5−AT及びADCAを、ある種のその他の変形物で置換してもよいことを当業者は認識しているであろう。例えば、硝酸ADCA等の適当な関連化学物質、又は他の発泡剤を、適当にフォーミュラを変更して、本発明のADCAの代わりに用いることもできる。従って、前述の実施例は本発明における使用を例示し記載しているが、これらは、本明細書におけるある特定の好適な実施例に記載された発明に制限されるべきものではない。前述の教示及び関連技術分野における技術及び/又は知識に見合った変形及び変更は、本発明の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】10ccの閉じた爆発物で試験した本発明の実施形態についての圧力対時間のグラフである。
【図2】10ccの閉じた爆発物で試験した本発明の他の実施形態についての圧力対時間のグラフである。
【図3】10ccの閉じた爆発物で試験した本発明の他の実施形態についての圧力対時間のグラフである。
【図4】10ccの閉じた爆発物で試験した本発明の他の実施形態についての圧力対時間のグラフである。
【図5】10ccの閉じた爆発物で試験した本発明の他の実施形態についての圧力対時間のグラフである。
【図6】10ccの閉じた爆発物で試験した本発明の他の実施形態についての圧力対時間のグラフである。
【図7】10ccの閉じた爆発物で0時間と408時間のエイジング試験を受けた本発明の一の実施形態についての圧力対時間のグラフである。
【図8】10ccの閉じた爆発物で0時間と408時間のエイジング試験を受けた本発明の他の実施形態についての圧力対時間のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)本質的に、5−AT、発泡剤、及び超精密金属粉末の燃焼速度促進剤からなる燃料と、
b)酸化剤と、
c)バインダと、
を有することを特徴とするガス生成組成。
【請求項2】
更に付加的な処理補助添加剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成。
【請求項3】
前記発泡剤はADCAからなり、前記燃料は三元固溶体からなることを特徴とする請求項1に記載の組成。
【請求項4】
前記超精密金属粉末は、サブミクロン粒子サイズを有するナノアルミニウムからなることを特徴とする請求項3に記載の組成。
【請求項5】
前記燃料は、前記組成の10から80wt%からなり、前記酸化剤は前記組成の20から80wt%からなり、前記バインダは前記組成の1から10wt%からなり、前記燃料は、1から90wt%の5−ATと、5から95wt%のADCAと、0.01から10wt%の超精密金属粉末からなることを特徴とする請求項3に記載の組成。
【請求項6】
前記超精密金属粉末は、サブミクロン粒子サイズを有するナノアルミニウムからなり、前記燃料の1から5wt%からなることを特徴とする請求項5に記載の組成。
【請求項7】
前記酸化剤は、本質的に、KClO、NHClO及びNaNOからなるグループから選択した、一又は複数の化学物質からなることを特徴とする請求項6に記載の組成。
【請求項8】
a)本質的に5−AT、発泡剤、及び超精密金属粉末の燃焼速度促進剤からなる燃料と、
b)酸化剤と、
c)バインダと、を含むガス生成体組成を含むことを特徴とするシートベルトプリテンショナ。
【請求項9】
前記発泡剤はADCAであり、前記燃料は三元固溶体であり、前記超精密金属粉末は、サブミクロン粒子サイズを有するナノアルミニウムであることを特徴とする請求項8に記載のプリテンショナ。
【請求項10】
前記燃料は、前記組成の10から80wt%からなり、前記酸化剤は前記組成の20から80wt%からなり、前記バインダは前記組成の1から10wt%からなり、前記燃料は、1から90wt%の5−ATと、5から95wt%のADCAと、サブミクロン粒子サイズを有する1から5wt%のナノアルミニウムからなることを特徴とする請求項9に記載のプリテンショナ。
【請求項11】
前記酸化剤は本質的にKClOからなり、前記プリテンショナは圧着された点火装置を含んでいることを特徴とする請求項10に記載のプリテンショナ。
【請求項12】
前記酸化剤は本質的にNHClOとNaNOとの混合物からなり、前記プリテンショナは密閉シールされた点火装置を含んでいることを特徴とする請求項10に記載のプリテンショナ。
【請求項13】
a)本質的に5−AT、発泡剤、及び超精密金属粉末の燃焼速度促進剤からなる三元固溶体を形成する工程と、
b)前記三元固溶体を酸化剤と混合する工程と、
c)前記三元固溶体をバインダと混合する工程と、
を備えることを特徴とするガス生成組成の作成方法。
【請求項14】
前記発泡剤がADCAであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バインダが予め硬化されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程c)は、前記工程b)の前に行われることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記バインダはNipol(登録商標)であり、前記酸化剤はKClOであり、前記組成は、非密閉シール点火装置を有するシートベルトプリテンショナにおける推進剤として用いられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記工程b)及び/又はc)は、実質的に直径0.2から2mmの範囲の球状粒子が形成されるまで、前記三元固溶体、酸化剤及びバインダの混合物に負圧を加えることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記三元固溶体は、前記得られた組成の10から80wt%からなり、前記酸化剤は前記得られた組成の20から80wt%からなり、前記バインダは前記得られた組成の1から10wt%からなり、前記三元固溶体は、1から90wt%の5−ATと、5から95wt%のADCAと、サブミクロン粒子サイズを有する1から5wt%のナノアルミニウムからなり、前記酸化剤は、本質的に、KClO、NHClO及びNaNOからなるグループから選択した、一又は複数の化学物質からなり、前記バインダは炭化水素系であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記三元固溶体をスラリーで作成する工程を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に5−AT、発泡剤、及び超精密金属粉末の燃焼速度促進剤からなる燃料と、
酸化剤と、
バインダと、
を有するガス生成組成であって、
前記酸化剤はADCAからなり、前記ガス生成組成は高熱安定であることを特徴とするガス生成組成。
【請求項2】
更に付加的な処理補助添加剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成。
【請求項3】
前記ガス生成組成は107℃で408時間まで実質的に分解せず、前記燃料は三元固溶体からなることを特徴とする請求項1に記載の組成。
【請求項4】
前記超精密金属粉末は、サブミクロン粒子サイズを有するナノアルミニウムからなることを特徴とする請求項3に記載の組成。
【請求項5】
前記燃料は、前記組成の10から80wt%からなり、前記酸化剤は前記組成の20から80wt%からなり、前記バインダは前記組成の1から10wt%からなり、前記燃料は、1から90wt%の5−ATと、5から95wt%のADCAと、0.01から10wt%の超精密金属粉末からなることを特徴とする請求項3に記載の組成。
【請求項6】
前記超精密金属粉末は、サブミクロン粒子サイズを有するナノアルミニウムからなり、前記燃料の1から5wt%からなることを特徴とする請求項5に記載の組成。
【請求項7】
前記酸化剤は、本質的に、KClO、NHClO及びNaNOからなるグループから選択した、一又は複数の化学物質からなることを特徴とする請求項6に記載の組成。
【請求項8】
本質的に5−AT、発泡剤、及び超精密金属粉末の燃焼速度促進剤からなる燃料と、
酸化剤と、
バインダと、を含むガス生成体組成を含むことを特徴とするシートベルトプリテンショナ。
【請求項9】
前記発泡剤はADCAであり、前記燃料は三元固溶体であり、前記超精密金属粉末は、サブミクロン粒子サイズを有するナノアルミニウムであることを特徴とする請求項8に記載のプリテンショナ。
【請求項10】
前記燃料は、前記組成の10から80wt%からなり、前記酸化剤は前記組成の20から80wt%からなり、前記バインダは前記組成の1から10wt%からなり、前記燃料は、1から90wt%の5−ATと、5から95wt%のADCAと、サブミクロン粒子サイズを有する1から5wt%のナノアルミニウムからなることを特徴とする請求項9に記載のプリテンショナ。
【請求項11】
前記酸化剤は本質的にKClOからなり、前記プリテンショナは圧着された点火装置を含んでいることを特徴とする請求項10に記載のプリテンショナ。
【請求項12】
前記酸化剤は本質的にNHClOとNaNOとの混合物からなり、前記プリテンショナは密閉シールされた点火装置を含んでいることを特徴とする請求項10に記載のプリテンショナ。
【請求項13】
本質的に5−AT、発泡剤、及び超精密金属粉末の燃焼速度促進剤からなる三元固溶体を形成する工程と、
前記三元固溶体を酸化剤と混合する工程と、
前記三元固溶体をバインダと混合する工程と、
を備えるガス生成組成の作成方法であって、
前記酸化剤はADCAからなり、前記ガス生成組成は高熱安定であることを特徴とする作成方法。
【請求項14】
前記ガス生成組成は、107℃で408時間まで実質的に分解しないことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バインダが予め硬化されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記工程c)は、前記工程b)の前に行われることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記バインダはNipol(登録商標)であり、前記酸化剤はKClOであり、前記組成は、非密閉シール点火装置を有するシートベルトプリテンショナにおける推進剤として用いられることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記工程b)及び/又はc)は、実質的に直径0.2から2mmの範囲の球状粒子が形成されるまで、前記三元固溶体、酸化剤及びバインダの混合物に負圧を加えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記三元固溶体は、前記得られた組成の10から80wt%からなり、前記酸化剤は前記得られた組成の20から80wt%からなり、前記バインダは前記得られた組成の1から10wt%からなり、前記三元固溶体は、1から90wt%の5−ATと、5から95wt%のADCAと、サブミクロン粒子サイズを有する1から5wt%のナノアルミニウムからなり、前記酸化剤は、本質的に、KClO、NHClO及びNaNOからなるグループから選択した、一又は複数の化学物質からなり、前記バインダは炭化水素系であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記三元固溶体をスラリーで作成する工程を更に備えることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−520315(P2006−520315A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506696(P2006−506696)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050235
【国際公開番号】WO2004/080921
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(503157294)スペシャル デヴァイシス,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SPECIAL DEVICES, INC.
【住所又は居所原語表記】14370 White Sage Road, Moorpark, CA 93021, United States of America
【Fターム(参考)】