説明

高齢者向け眼鏡

【課題】
近視矯正用のレンズを光軸のやや下側から下を除き、軽量化を図った老眼鏡において、レンズを一層眼球へ接近させることによって、レンズの素材から除去できるガラスの量を多くして一層の軽量化を図ることである。
【解決手段】
一端と他端とを左右の耳掛け蔓に連結されるレンズ枠の中央部に鼻当て具を設け、そのレンズ枠を鼻当て具の位置から耳掛け蔓の方向へ向かうに伴って後方へ向けて屈曲させる一方、視力矯正用のレンズを光軸のやや下側において略水平に切除して上縁を厚く下縁を薄く形成し、そのレンズを前記レンズ枠の顔面側に取り付けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視用に矯正されたレンズを用い、そのレンズの下部を大きく切除して、レンズの下方から近距離の書物を裸眼で見ることができるようにした老眼鏡の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、近視の人は遠方を見るために矯正された眼鏡を用いるが、近視の人は高齢に至っても新聞や書物を裸眼で見ることのできる人が少なくない。そこで、レンズの下部を大きく切除して、レンズの下側から近距離のものを裸眼で見るのに有利な構成をもつ近距離直視用の近視用眼鏡が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、レンズの下部を削除した老眼鏡では、裸眼で見ることのできる範囲を拡げるにはレンズの下面が光軸の至近距離まで削除させるのが好ましいが、当然に遠くを見る近視用の視野が狭まる。
【0004】
この近視用の視野が狭まる傾向を最小限にするためには、図2で示すように、左右のレンズを顔の輪郭に沿わせて中央部が角度θ°だけ前方に出るように(以下、単に鼻高の角度という)傾斜させるのが好ましい(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、レンズを鼻高の角度に設定,しようとすると、レンズの外端部と耳との距離が近くなってしまい、市販されている標準の耳かけ用の蔓の利用が難しくなる。
【特許文献1】特公平8−7334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、眼鏡のレンズ枠や耳掛け用の蔓などの従来から慣用されている長さや形状を大きく変更することなく、レンズを眼球に接近させて保持するレンズ枠を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一端と他端とを左右の耳掛け蔓に連結されるレンズ枠の中央部に鼻当て具を設け、そのレンズ枠を鼻当て具の位置から耳掛け蔓の方向へ向かうに伴って後方へ向けて屈曲させる一方、視力矯正用の凹レンズを光軸のやや下側において略水平に切除して上縁を厚く下縁を薄く形成し、そのレンズを前記レンズ枠の顔面側に取り付けたことを最も主要な特徴とする。
【0008】
そして詳しくは、前記レンズ枠は断面円形の線材で線材の直径は、1.0ミリメートルから1.5ミリメートルの範囲内であることが望ましく、前記レンズ枠とレンズとは、個々のレンズの上部2カ所において着脱可能に結着されていることが望ましく、前記レンズ枠には中央部に鼻当て具を支持する逆U字形の支持金具と、前記レンズを支持するためのナット金具とが溶接されていることが望ましく、前記視力矯正用の凹レンズを光軸のやや下側とは、1.0ミリメートルから2.5ミリメートルの範囲内の下側において略水平に切除することが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る高齢者向け眼鏡によれば、レンズがレンズ枠の顔面側に支持されるので、レンズを従来に比して一層、眼球に接近させて支持することができ、近視レンズの下部を一層大きく切除することが可能となり、レンズを通して見ることのできる視界を狭めることなく、裸眼で見ることのできる下方の視野を拡げることができる。
【0010】
また、眼鏡がレンズを下にして机上におかれたときでも、眼鏡がレンズ枠とレンズの下縁とによって支えられるため、レンズの球面と机との接触が下縁部だけに止まり、レンズの視野となる球面の部分を傷つけることがなくなる。
【0011】
さらに、レンズ枠の製造に際しては、既存の耳掛け蔓、あるいはその蔓を製造するための線材である素材を流用あるいは転用できるので、新しい眼鏡を生産するに際して新たな設備投資が最少で足りる。
【0012】
レンズ枠には中央部に鼻当て具を支持する逆U字形の支持金具と、前記レンズを支持するためのナット金具とが溶接されているとレンズとレンズ枠とが接触することもなく軽くて強固な眼鏡となる。などの効果がある。
【実施例1】
【0013】
以下、図面によって、本願発明の実施例を説明する。図1中、10は本願発明の実施である高齢者向け眼鏡である。高齢者向け眼鏡10はレンズ支持枠12を有し、そのレンズ支持枠12はステンレス材を主としチタンやタングステンなど軽量で強い材料で作られた細い線材を、所要の形状に成形して、必要に応じて表面にメッキ処理をして作られている。
【0014】
前記レンズ支持枠12には、従来のレンズ支持枠と同様に、両端部に耳掛け蔓14との連結金具12aと、中央部に鼻当て具12bとが溶着されている。なお、これらの金具と耳掛け蔓14とは、従来から慣用されているものと大差がないので、詳細な説明は省略する。
【0015】
20はレンズであり、近視矯正用の凹レンズである。レンズ20は、図5で示すように、一般的な近視矯正用のレンズ30の光軸32より1.5ミリメートル下側の部分を、水平に切り取った形状をしており、その下縁20aの隅角部20cをデサイン上の必要に応じて円弧状に面取りしてある。
【0016】
なお、一般に近視矯正用のレンズ及び近乱視矯正用のレンズにはレンズの表面と裏面が球面に近似した特殊な非球面曲面が使用され、かつ屈折率の大きい樹脂材を用いてレンズの厚みを極力薄くして収差を生じないように工夫しているが、この発明とは直接的な関係がないので、明細書中では特に差し支えない限り単に球面として説明する。
【0017】
レンズ20は上記のように、光軸のやや下方で水平に切除されているから、レンズ素材の焦点位置より下方の肉厚の大きい部分が切除されて、下縁が薄いレンズとなっている。そして、厚肉の大きい部分が残された上縁20bの近傍に水平方向に2個のボルト孔20d、20dが穿設され、後述するビス16によって前記レンズ支持枠12に螺着してあるので、レンズ20は焦点のやや下側から下が切除され軽量化されているにも拘わらず、取り付け強度の低下が回避されている。
【0018】
前記レンズ支持枠12とレンズ20との連結は、図3で示すように、レンズ支持枠12の顔面側に前記ボルト孔20d、20dに対応する位置に、補強ボス12cを肉盛りしてねじ孔12dを設ける一方、予め、ビス16にクッション材18aや緩み止めワッシャ18bを嵌めておき、それを前記レンズ20に設けたボルト孔20dを通してねじ孔12dへねじ込んで固定する。ビス16とねじ孔12dとは底当てして止まるようクッション材18aや緩み止めワッシャ18bを加味してビス16の長さを1本ずつ調節する事が大切である。クッション材18aや緩み止めワッシャ18bは
硬質透明樹脂製にすると違和感が無い。
【0019】
かくて、組み立てられた高齢者向け眼鏡10は、従来の老眼用眼鏡と同様に、凹レンズ20を光軸の僅かに下方の位置で水平に下部を切除するとともに、鼻当て具12bから連結金具12aへかけて後方へ傾斜させて支持しているから、下側を切除したとき顔面の側方下側から遠方が視野に入る現象を回避できるものであるにも拘わらず、近視矯正用のレンズ20を、レンズ支持枠12の顔面側に取り付けるから顔面と眼球との距離が接近し、前記レンズの傾斜が少なくても、前記顔面の側方下側から遠方が視野に入る現象を回避できる。
【0020】
また、高齢者向け眼鏡10の不使用時には、耳掛け蔓14を従来と同様に、顔面側に折り畳むから、耳掛け蔓14を下にして机上に置いたときに、レンズ20の球面を傷付けることがない上に、レンズ20側を下にして机上に置いたときも、前記レンズ支持枠12とレンズ20の上縁20bが机上に接し、光軸32付近が机上に接してレンズ20の球面に傷の付くおそれがなくなる。
【0021】
レンズ枠の線材は太すぎると目障りであり、細すぎると剛性を欠く。目障りと言ったが瞳孔より細い線なら少し暗くなるだけで不自由なく見えるのである。金網を目に近づけて景色を見たのと同じと考えて差し支えない。だからと言って、わざわざ、目の前にレンズ枠を持ってくることはないが、従来のレンズ枠のように見えなくなるような事はない。個々のレンズの上部2カ所において着脱可能に結着しておく事で十分な強度が得られ7年間緩み無く実用に耐えている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の一実施例である老眼鏡の正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】図1中のIII−III拡大断面図である。
【図4】図2中のIV−IV拡大断面図である。
【図5】従来のレンズと本発明のレンズとを対比して示すレンズの正面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 高齢者向け眼鏡
12 レンズ支持枠
12a 連結金具
12b 鼻当て具
12c 補強ボス
12d ねじ孔
14 耳掛け蔓
16 ビス
18a クッション材
18b 緩み止めワッシャ
20 レンズ
20a 下縁
20b 上縁
20c 隅角部
20d ボルト孔
30 近視矯正用のレンズ
32 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端と他端とを左右の耳掛け蔓に連結されるレンズ枠の中央部に鼻当て具を設け、そのレンズ枠を鼻当て具の位置から耳掛け蔓の方向へ向かうに伴って後方へ向けて屈曲させる一方、視力矯正用の凹レンズを光軸のやや下側において略水平に切除して上縁を厚く下縁を薄く形成し、そのレンズを前記レンズ枠の顔面側に取り付けてなる高齢者向け眼鏡。
【請求項2】
請求項1において、前記レンズ枠は断面円形の線材である高齢者向け眼鏡。
【請求項3】
請求項2において、断面円形の線材の直径は、1.0ミリメートルから1.5ミリメートルの範囲内である高齢者向け眼鏡。
【請求項4】
請求項1において、前記レンズ枠とレンズとは、個々のレンズの上部2カ所において着脱可能に結着されている高齢者向け眼鏡。
【請求項5】
請求項1において、前記レンズ枠には中央部に鼻当て具を支持する逆U字形の支持金具と、前記レンズを支持するためのナット金具とが溶接されている高齢者向け眼鏡。
【請求項6】
請求項1において、視力矯正用の凹レンズを光軸のやや下側とは、1.0ミリメートルから2.5ミリメートルの範囲内の下側において略水平に切除した高齢者向け眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−75463(P2009−75463A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245967(P2007−245967)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(303048444)有限会社SGG研究所 (22)
【Fターム(参考)】