説明

髪切鋏

【課題】 一本の髪を生え際から切除することができる鋏を課題とする。
【解決手段】
本発明は、鋏の下刃部材方をコ字状となるように凹部を設けたコ字状プレート1として、コ字状の凹部側辺には刃先を有しており、その刃先の刃線に対して垂直方向へ平行に髪を誘導するための空隙を有している。コ字状凹部に収まる添設部材2をコ字状プレート1に添設することにより、コ字状の凹部に沿う形となるL字状ラインの空隙6が形成され、その空隙端部は略Y字状の空隙端部7となることを特徴としている。
また、添設部材2はコ字状プレート1板厚よりも薄くすることにより、両プレートの板厚差による段差2aを有している。
さらに、下刃部材方ハンドル部8と上刃部材方ハンドル部9との間にはバネ等の弾性体10が介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一本の髪を生え際から簡単且つ確実に切除できる鋏の発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、整髪や化粧をしている時などに、傷んだ髪や白髪を見つけた場合には、毛抜きなどを用いて抜くか、或いは指で選り分けて摘み出してから小型の鋏で切除するのが一般的であった。
また、白髪の場合には毛染めにより目立たないようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−66282号公報
【特許文献2】特開2006−326247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、髪を無理に抜くことは毛根にダメージを与えることとなり、抜いた毛根からは新たに髪が生えてこなくなる恐れもある。
また、抜いた髪の毛根だけでなく、周囲の健全な毛根細胞にもダメージが及ぶことがあり、特に白髪の場合には、以前に白髪を抜いた同じ箇所から再び白髪が見つかることがよくある。
これは、周囲の毛根細胞にもダメージが及んだことにより、健全な黒髪が白髪に変化するためと考えられているので、抜くことは簡単で手間もかからないが最良の方法とは言えない。
【0005】
また、白髪の場合は毛染めにより目立たなくする方法もある。
しかし、白髪の割合が多い場合には有効ではあるが、白髪の本数がまだ少ない出始めの頃などは、染める手間や髪が傷むことなどを考えると躊躇われる。
【0006】
これらを鑑みると、鋏で切除することが他の髪や毛根にも影響がないので最良の方法であると思われる。しかし、鋏で髪を一本だけ切除する場合には、他の髪も鋏の刃元まで複数本入り込んでくるために困難な作業となる。
これは、鋏を開いたときの刃先部刃線の形状が、刃元まで容易に髪が進入できるV字形となっていることに原因がある。
【0007】
また、できる限り生え際から切除したいと思うが、生え際に近くなるほど、髪が密集しているので鋏刃部の開き加減を極力小さくしなければ他の髪まで一緒に切除してしまうこととなり、神経をつかう困難な作業となる。
特に一人で鏡を見ながら行なう場合には、左右の感覚が非常に掴み辛くて時間と根気を要することとなる。
【0008】
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、切除したい髪だけを鋏の刃先部刃線に対して垂直方向へ平行に設けた一定間隔の空隙を設けて、L字状ラインの空隙とすることにより、他の髪が刃先の交差する刃元まで進入するのを防ぐことができ、独りでも安全で且つ容易に切除することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決する本発明の髪切鋏は、把持部とハンドル部を有する一対の上刃部材方と下刃部材方とが支軸部材により軸支されてなる鋏において、下刃部材方刃先部の刃線に対して垂直方向へ平行に一定間隔の空隙を有しており、その空隙は上刃部材方先端部と交差する箇所よりも延長した空隙ライン上において、空隙ラインに角度を設けることによりL字状ラインの空隙となり、下刃部材方刃先部の刃線に対して略垂直方向となる空隙ラインの端部は、空隙幅が空隙端部にかけて徐々に広がる略Y字状の形状となることを特徴とする。
【0010】
また、第2の課題解決手段は、L字状ラインの空隙を設けるために下刃部材方刃先部の刃線に対して垂直方向へ平行に設けられる添設部材が上刃部材方と摺接しないことを特徴とする。
【0011】
さらに、第3の課題解決手段は、上刃部材方ハンドル部と下刃部材方ハンドル部の間にはバネ部材等の弾性体が介在することを特徴とする。
【0012】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。
上刃部材方と下刃部材方の両刃先部が交差する刃元まで切除したい髪を誘導する際には、下刃部材方刃先部の刃線に対して垂直方向へ平行に設けられた一定間隔の空隙のラインに角度を設けることにより、他の髪が刃元まで進入するのを防ぐことができ、空隙端部を略Y字状とすることにより、髪を空隙に取り込みやすくできる。
【0013】
また、第2の課題解決手段による作用は、上刃部材方の開閉時において、空隙を設けるために下刃部材方に固着される添設部材と上刃部材方とが摺接しないことにより、上刃部材方刃先部の損傷を防ぐとともに、両刃先部の交差にも支障を及ぼすことがなく、髪を確実に切除することができる。
【0014】
さらに、第3の課題解決手段による作用は、上刃部材方ハンドル部と下刃部材方ハンドル部の間にバネ部材等の弾性体が介在することによって、開閉操作が容易となるだけでなく、上刃部材方先端部が下刃部材方に固着された添設部材面から突出しないので安全なものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、切除したい髪だけを略Y字状の空隙端部によって容易に空隙に取り入れることができ、下刃部材方刃先部の刃線に対して垂直方向へ平行に設けられた一定間隔の空隙は、上刃部材方先端部と交差する箇所よりも延長した空隙ライン上において、空隙ラインに角度を設けることによって、他の髪が上刃部材方と下刃部材方の両刃先部が交差する刃元まで進入するのを防ぐことができるので、他の髪も一緒に切除してしまうことがない。
【0016】
また、空隙を形成するために下刃部材方に固着される添設部材は上刃部材方と摺接しないことにより、上刃部材方の刃先部を損傷することもなく、下刃部材方刃先部との交差にも支障を来たさないので、髪を確実に切除することができる。
【0017】
さらに、従来は鋏刃部の開き加減を最小限にする必要があり、鋏把持部の握り加減に神経を使ったが、下刃部材方ハンドル部と上刃部材方ハンドル部との間にバネ等の弾性体を介在させることにより、開閉操作が容易となるだけでなく、上刃部材方先端部が下刃部材方プレート面から突出することがないので安全なものとなる。
【0018】
これらの効果によって、切除したい髪だけを生え際から安全で且つ容易に切除できる鋏が開発された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る髪切鋏が開いている状態での全体平面図
【図2】本発明の実施の形態に係る髪切鋏が開いている状態での全体斜視図
【図3】本発明の実施の形態に係る髪切鋏が開いている状態での要部透視平面図
【図4】本発明の図3に示すA−A線での横断面図
【図5】本発明の図3に示すB−B線での縦断面図
【図6】本発明の実施例に係る髪切鋏の下刃部材方プレート部平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図5に示すように、鋏の下刃部材方1はプレートをコ字状となるように凹部が欠切されたプレートからなり、その形状寸法については上刃部材方3の形状寸法を考慮して決めることとなるが、下刃部材方1となるプレートの形状寸法を先に決めてから上刃部材方3の寸法を決めてもよい。
【0022】
コ字状となる凹部を形成する前のプレート寸法を決める際には、上刃部材方3を支軸孔4にピン部材などの支軸部材で回転自在に枢着した状態において、上刃部材方3の開閉時にコ字状凹部を含めたコ字状プレート1面から上刃部材方3の先端部が左右に突出しない範囲で上下の辺となる横方向の辺長を決めることとなる。
【0023】
側辺部となる縦方向の辺長については、上刃部材方3が閉じている状態において、角度を設けた空隙ラインを形成するためのプレート面の範囲を考慮して、上刃部材方3先端部よりも先端部方の位置がコ字状プレート1の先端部方となる下辺側の位置となり、支軸部4方の上辺側については支軸孔4に支障しないように、支軸孔4よりも上方(ハンドル部方)が上辺側の位置となり、この辺にはハンドル部8が固着される。
【0024】
上記により全体の寸法を決めたプレートは、コ字状の凹部となる箇所を形成してコ字状プレート1にする。
【0025】
コ字状凹部の上刃部材方3先端部方となる辺は、上刃部材方3先端部及び刃先部3aと交差しない位置とする必要があるので、上刃部材方3が閉じている状態において、上刃部材方3先端部よりも先端方に位置することとなり、辺長については支軸部4からコ字状プレート1の先端部方となる辺に対して略垂直方向へのラインと略垂直に交差する箇所までとなる。
【0026】
コ字状凹部の支軸部方の辺1gについては、支軸部4からコ字状プレート1の先端部方となる辺に対して略垂直方向へのラインと、支軸部4方の上刃部材方刃先部3aとが交差する位置から支軸孔4までの範囲で支軸孔4に支障しない位置とし、辺長については支軸部4からコ字状プレート1の先端部方となる辺に対して略垂直方向へのラインと略垂直に交差する箇所までとなる。
【0027】
コ字状凹部側辺部1aについては、支軸部4からコ字状プレート1の先端部方となる辺に対して略垂直方向へのラインの一部区間となり、その区間は、コ字状凹部の上刃部材方3先端部方となる辺とライン1aとの交点からコ字状凹部の支軸部方の辺1gとライン1aとの交点までとなる。
この辺1aには研削加工などにより刃先部を形成する。
【0028】
コ字状の凹部に収まる添設部材2は、上刃部材方3との摺接を避けるために、コ字状プレート1板厚よりも薄いプレートを用いる。
【0029】
添設部材2はコ字状の凹部に収まる矩形状のプレートとなるが、コ字状凹部の二辺に沿う形で髪を誘導するための空隙を設ける幅を考慮して、空隙幅分小さい寸法としなければならない。
【0030】
添設部材2をコ字状プレート凹部側辺刃先部1aの刃線に対して垂直方向へ平行に髪を誘導するための空隙間隔を設けるとともに、コ字状凹部の上刃部材方3先端部方となる辺に対しても同様の空隙間隔を設けることによりL字状ラインの空隙6が形成される。
【0031】
コ字状凹部の側辺1aに対して略垂直方向となる空隙ラインの端部は髪の取込口となるので、コ字状プレート1と添設部材2の上刃部材方3先端部方の外側となる空隙端部に位置する両プレート角部1k、2kをあらかじめ面取り削成等しておくことにより、空隙の間隔が徐々に広がる略Y字状の空隙端部7となるので、髪をL字状ラインの空隙6に取り込むのが容易となる。
【0032】
L字状ラインの空隙6を形成した状態において、添設部材2はコ字状プレート凹部支軸部方の辺1gに添着して一体化させる際には、コ字状プレート1の上刃部材方3側裏面と、添設部材2の上刃部材方3側裏面となる二つの面を同一面とすることにより、コ字状プレート1の上刃部材方3側の面と、添設部材2の上刃部材方3側の面には両プレートの板厚差による段差2aができることになる。
【0033】
この段差2aにより添設部材2と上刃部材方3との摺接を避けることができるので、上刃部材方刃先部3aが添設部材2と摺接することによって刃先部3aを損傷することなく、コ字状プレート1凹部刃先部1aとの交差にも支障を来たさないものとなる。
【0034】
また、上刃部材方3が開いている状態において、下刃部材方ハンドル部8と上刃部材方ハンドル部9の間にバネ部材等の弾性体10を介在させることにより常時上刃部材方3が開いた状態とすることができる。
これによって、鋏の開閉操作の手間がひとつ省けるので使いやすいものとなるうえ、上刃部材方3先端部が添設部材2面から突出した状態となることもないので安全なものとなる。
【0035】
さらに、上刃部材方3が開いている状態において、上刃部材方刃先部3aを有していない側のコ字状プレート1面に突起部5を設けることにより、上刃部材方3先端部が添設部材2面から突出するのを確実に防ぐことができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【0037】
図6に示すように、例えば、上刃部材方3の寸法が支軸部4から上刃部材方3先端部まで20mm、上刃部材方3先端部から支軸部4方向に上刃部材方刃先部3a刃線長が12mmの場合について、コ字状プレート1となるプレート全体の寸法の決め方について説明する。
【0038】
下刃部材方1には、板厚1.2mmの金属製プレートを用いて支軸孔4となる孔を設ける。
【0039】
支軸孔4からコ字状凹部側辺となるライン1aを引いておき、上刃部材方3を支軸孔4にピン部材などの支軸部材で回転自在に枢着した状態において、上刃部材方刃先部3aの支軸孔4方とライン1aとが交差する時の上刃部材方3の位置が本発明の鋏が開いているときの状態となる。
【0040】
鋏が開いているときの状態において、コ字状凹部側辺となるライン1aに対して上刃部材方3側に垂直方向へ平行するラインよりも上刃部材方3が突出しない位置がコ字状プレート全体のコ字状凹部側の辺1bとなる。
【0041】
本実施例の場合は、支軸孔4からコ字状凹部側辺となるライン1aに対して上刃部材方3側に垂直方向へ平行して9mm離れた位置が上刃部材方3との接線となるので、コ字状凹部側辺となるライン1aに対して垂直方向へ平行に10mm離れた位置のライン1bが上刃部材方3の開いた状態においても上刃部材方3がライン1bより突出しない位置となるので、この位置でのラインがコ字状プレート1全体のコ字状凹部側の辺1bとする。
【0042】
同様に支軸孔4からコ字状凹部側辺となるライン1aに対して反対側にも垂直方向へ平行に10mm離れた位置のラインがコ字状プレート全体のもう一方の辺1cとなる。
なお、この辺1cの位置は上刃部材方3が閉じている状態において、コ字状凹部側辺となるライン1aに対して垂直方向へ平行にとる間隔は側辺1cよりも上刃部材方3が突出しない範囲であればよいので10mm以下としてもよい。
【0043】
コ字状プレート1全体の先端部方となる辺1dについては、角度を設けた空隙ラインを形成するプレート面の範囲を確保するために、上刃部材方3を支軸孔4にピン部材などの支軸部材で回転自在に枢着した状態において、支軸部4からコ字状凹部側辺となるライン1aと上刃部材方3先端部が交差する位置よりも延長したライン1a上において、さらに先端部方の位置となる。
【0044】
本実施例では、ライン1aと上刃部材方3先端部が交差する位置から、更に先端部方へ延長したライン1a上において10mm離れた位置として、ライン1aに対して垂直方向ラインがコ字状プレート全体の上刃部材方3先端部方の辺1dとなり、辺長は左右それぞれ10mmで20mmとなる。
【0045】
コ字状プレート1全体の支軸部4方の辺1eについては支軸孔4に支障しないように考慮する必要があるので、コ字状凹部側辺となるライン1aを支軸孔4より上刃部材方ハンドル部8方に延長したライン上において、支軸孔4から10mm離れた位置の垂直方向ラインがコ字状プレート1全体の支軸部4方の辺1eとなり、辺長はコ字状プレート全体の上刃部材方3先端部方の辺1dと同様に20mmとしておく。
【0046】
以上でコ字状凹部を形成する前のプレート全体となる寸法を横幅20mmと縦幅40mmと決めることができる。
【0047】
コ字状凹部の下辺1fは、上刃部材方3の開閉時において、上刃部材方3先端部及び刃先部3aと交差しない位置としなければならないので、支軸部4からコ字状凹部側辺となるライン1aと上刃部材方3先端部と交差する箇所よりも先端方の位置としなければならない。
【0048】
本実施例では上刃部材方3先端部とコ字状凹部側辺となるライン1aが交差する位置からライン1a上において、先端方へ2mm離れた位置をコ字状凹部の下辺1fの位置とし、ライン1aに対して垂直方向へ上刃部材方刃先部3aと反対側となる側辺1b方向へのラインがコ字状凹部の上刃部材方3の先端部方の辺1fとなり、辺長は10mmとなる。
【0049】
コ字状凹部の上辺1gについては、ライン1aと支軸部4方の上刃部材方刃先部3aとが交差する位置から支軸孔4までの範囲となるので、本実施例ではコ字状凹部の下辺1fに対して垂直方向へ平行に14mm離れた位置をコ字状凹部の上辺1gとし、辺長は10mmとなる。
【0050】
コ字状凹部の上辺1gと下辺1fの辺長はそれぞれ10mm、コ字状凹部側辺1aの辺長は14mmとなり、コ字状凹部の側辺1aには上刃部材方刃先部3aと交差するための刃先を研削加工する。
【0051】
図3〜5に示すように、コ字状凹部にL字状ラインの空隙6を形成するための添設部材2として、コ字状プレートよりも薄い板厚1mmの金属製プレートを用いる。
【0052】
コ字状凹部の寸法は、上下辺1g、1fの辺長がそれぞれ10mm、側辺部1aの辺長が14mmの矩形状となるので、添設部材2は髪を誘導するための空隙幅0.2mmを考慮して横幅9.8mm、縦幅13.8mmの矩形状に形成する。
【0053】
髪を誘導するための空隙幅を本実施例では、仮に0.2mmとしているが、髪の太さについては人により個人差もあり、一般的には凡そ0.1mmとされている。
空隙に髪を誘導するためには、これ以上の空隙幅が必要となるが、空隙幅が広くなりすぎると他の髪も空隙に進入しやすくなるので、空隙ラインの延長等を考慮して適宜決めるものとする。
【0054】
コ字状凹部の下辺1fに沿う形に形成される空隙の端部は髪の取込口となるので、コ字状プレート1と添設部材2の間に形成される空隙ラインの空隙端部に位置する両プレート角部1k、2kをあらかじめ面取り削成等しておく。
【0055】
これにより空隙の間隔が空隙ライン端部にかけて徐々に広がる略Y字状の空隙端部7となり、髪をL字状ラインの空隙6に取り込むのが容易となる。
【0056】
添設部材2をコ字状プレート凹部側辺方1aに形成された刃先の刃線に対して、垂直方向へ平行となるように0.2mmの空隙幅をとり、コ字状凹部の下辺1fに対しても同様に0.2mmの空隙幅をとることによりL字状ラインの空隙6が形成される。
【0057】
添設部材2をコ字状プレート1に固着する際には、コ字状プレート上刃部材方3側の裏面と、添設部材2の上刃部材方3側の裏面とを同一面とすることにより、コ字状プレート1の上刃部材方3側の面と、添設部材2の上刃部材方3側の面には両プレートの板厚差により段差2aができることになる。
【0058】
この段差2aにより添設部材2と上刃部材方3との摺接を避けることができ、上刃部材方刃先部3aが添設部材2と摺接することによって刃先部を損傷することもなく、コ字状プレート刃先部1aとの交差にも支障を来たさないので、髪を確実に切除することができる。
【0059】
L字状ラインの空隙6を形成した状態において、添設部材2はコ字状プレート凹部の上辺1gに溶接等の方法により固着してコ字状プレート1と一体化させる。
【0060】
コ字状プレート1の先端部方となる辺1dの両端角には面取りを施し、支軸方の辺1eについては下刃部材方ハンドル部8の取り付けに合わせるように形成する。
【0061】
図1に示すように、ハンドル部9を有した上刃部材方3をコ字状プレート1の支軸孔4にピン部材などの支軸部材で回転自在に枢着した状態において、下刃部材方ハンドル部8をコ字状プレートの辺1eに溶接などの方法によりコ字状プレート1に固着する際には、上刃部材方3の開閉時における上刃部材方ハンドル部9との位置関係を考慮して、両刃先部の交差が不十分とならないように下刃部材方ハンドル部8の位置及び取り付け角度を決める必要がある。
【0062】
本実施例では図6に示すように、コ字状プレート凹部支軸部方の辺のライン1pとコ字状プレート全体の縦長辺となるライン1bとが交差する箇所から、コ字状凹部側の角部から4mm内側の箇所とを結ぶラインで欠切し、反対側の角部については、コ字状プレート凹部支軸部方の辺のライン1pとコ字状プレート全体の縦長辺1cとが交差する箇所から、コ字状凹部側の反対側の角部より9mm内側の箇所とを結ぶラインで欠切する。
【0063】
図1〜3に示すように上刃部材方3が開いている状態において、添設部材2面から上刃部材方3が突出するのを防ぐために、上刃部材方刃先部3aを有していない側のコ字状プレート1面に突起部5を設ける。
【0064】
上刃部材方3が開いている状態において、上刃部材方ハンドル部9と下刃部材方ハンドル部8の間に介在させるバネ部材などの弾性体10を取り付ける位置を決める。
なお、バネ部材などの弾性体10を取り付けた後の上刃部材方刃先部3aは常時開いている状態となる。
【0065】
本発明は以上のような構成で、これを使用するときには切除したい髪を摘んでから略Y字状の空隙端部7から摘んでいる髪を空隙に取り込み、L字状ラインの空隙6に沿ってコ字状プレート刃先部1aと上刃部材方刃先部3aが交差する刃元付近まで髪を誘導する。
そして、摘まんでいる髪に沿って生え際近くにコ字状プレート1面を近づけてから把持部11、12を握れば髪が一本だけ切除することができる。
【0066】
以上、発明を実施するための形態及び実施例を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、プレートの形状寸法、材質、或いはハンドル部との位置関係、空隙幅、空隙ライン形状、支軸部の位置などの範囲はこれに限定されるものではない。
【0067】
また、例えば、下刃部材方1となるプレートは、切断機などによりL字状或いはJ字状に切り込みを施して空隙ラインを形成したプレートを下刃部材方1として用いることなども考えられる。
【0068】
さらに、用途も髪を切るだけの目的とするものに限られず、例えば、医療分野などで縫合の糸を切る場合などに用いれば、鋏の刃先で誤って他の部位を傷つける恐れもなく、安全で且つ確実に結び目付近から切ることができ、他の分野での利用も考えられる。
【符号の説明】
【0069】
1.コ字状プレート(下刃部材方)
1a.コ字状プレート方刃先部(下刃部材方刃先部、コ字状凹部側辺部)
2.添設部材
2a.段差
3.上刃部材方
3a.上刃部材方刃先部
4.支軸部、支軸孔
5.突起部
6.L字状ラインの空隙
7.略Y字状の空隙端部
8.コ字状プレート方ハンドル部(下刃部材方ハンドル部)
9.上刃部材方ハンドル部
10.弾性体(バネ部材)
11.コ字状プレート方把持部(下刃部材方把持部)
12.上刃部材方把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部とハンドル部を有する一対の上刃部材方と下刃部材方とが支軸部材により軸支されてなる鋏において、下刃部材方刃先部の刃線に対して垂直方向へ平行に一定間隔の空隙を有することを特徴とする髪切鋏。
【請求項2】
前記下刃部材方刃先部の刃線に対して垂直方向へ平行に設けられた一定間隔の空隙は、上刃部材方先端部と交差する箇所よりも延長した空隙ライン上において、空隙ラインに角度を設けることにより、L字状ラインの空隙となることを特徴とする請求項1に記載の髪切鋏。
【請求項3】
前記L字状ラインの空隙において、下刃部材方刃先部の刃線に対して略垂直方向となる空隙ラインの端部は、空隙幅が空隙端部にかけて徐々に広がる略Y字状の形状となることを特徴とする請求項1及び2に記載の髪切鋏。
【請求項4】
前記L字状ラインの空隙を設けるために下刃部材方刃先部の刃線に対して垂直方向へ平行に設けられる添設部材は、上刃部材方と摺接しないことを特徴とする請求項1及び2に記載の髪切鋏。
【請求項5】
上刃部材方ハンドル部と下刃部材方ハンドル部の間にバネ部材等の弾性体が介在することを特徴とする請求項1及び至4に記載の髪切鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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