説明

魚介類の処理方法

【課題】魚介類の処理方法であって、該方法により処理された魚介類を加熱調理する場合の歩留まりの低減が抑制され、かつ、該方法により処理した後に加熱処理した魚介類の食感に優れた方法を提供する。
【解決手段】油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂加工澱粉を用いることを特徴とする魚介類の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エビ類、イカ類、タコ類、牡蠣等の魚介類は、フライ類、フリッター類、お好み焼き、たこ焼き、冷凍ピラフなど多種多様な加工食品に使用される食材である。このような加工食品の製造では、加熱調理により魚介類から水分が失われ、歩留まりの低下や、魚介類の弾力感やジューシーな食感が損なわれるといった現象が生じ問題となっている。
【0003】
この問題を解決する方法として、生のむき海老100重量部に対し、カルシウム製剤0.01〜1重量部と食塩0.1〜3重量部とを配合した後、加熱処理を行うことを特徴とする海老の加熱処理方法(特許文献1参照)、ムキエビをカルシウム塩水溶液に浸漬し、次いで重合リン酸塩水溶液に浸漬した後、加熱処理し、凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥ムキエビの製造方法(特許文献2参照)、剥きエビに低温糊化澱粉と乾燥卵白からなる打ち粉を付着させた後これをボイルすることを特徴とする被膜付エビの製法(特許文献3参照)、などが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記技術は、加熱調理における歩留まりおよび加熱調理後の魚介類の食感の点で必ずしも満足することができないのが実状である。
【0005】
【特許文献1】特開平9−98746号公報
【特許文献2】特開2001−128649号公報
【特許文献3】特開平10−257869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、魚介類の処理方法であって、該方法により処理された魚介類を加熱調理する場合の歩留まりの低減が抑制され、かつ、該方法により処理した後に加熱処理した魚介類の食感に優れた方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂加工澱粉を用いて魚介類を処理すると、該魚介類を加熱調理した場合の歩留まりの低下が改善され、かつ、加熱調理された魚介類の食感が優れたものであることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂加工澱粉を用いることを特徴とする魚介類の処理方法、
(2)魚介類がエビ類又は貝類であることを特徴とする上記(1)記載の処理方法、
からなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の魚介類の処理方法により処理された魚介類は、加熱調理による歩留まりの低下が改善されている。
本発明の魚介類の処理方法により処理された魚介類は、加熱調理後の食感に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる油脂加工澱粉は、好ましくは澱粉に油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを添加し、均一に混合した後必要に応じて乾燥し、さらに熟成することにより得られる。
【0011】
油脂加工澱粉の製造に使用される原料澱粉としては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、或いはこれらの澱粉にエステル化処理した加工澱粉(例えば、酢酸澱粉など)、エーテル化処理した加工澱粉(例えば、ヒドロキシプロピル澱粉など)、架橋処理した加工澱粉(例えば、リン酸架橋澱粉など)、酸化処理した加工澱粉(例えば、ジアルデヒド澱粉など)、酸処理した加工澱粉、湿熱処理した加工澱粉、更にエステル化、エーテル化、架橋などの処理を2以上組み合わせて施した加工澱粉などが挙げられる。これら澱粉は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、好ましいのはリン酸架橋タピオカ澱粉である。
【0012】
油脂加工澱粉に添加される油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、カポック油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油およびハイオレイックヒマワリ油などの植物油脂、牛脂、ラード、魚油および乳脂などの動物油脂、さらにこれら動植物油脂を分別、水素添加またはエステル交換したもの、並びに中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などが挙げられ、好ましくは大豆サラダ油、サフラワー油、ヒマワリ油またはコーンサラダ油などである。また、上記食用油脂の一部または全部の代替品として油分を多く含む穀粉、例えば生大豆粉などを用いてもよい。
【0013】
油脂加工澱粉に添加されるグリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、例えばグリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、好ましくはグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルである。その構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖状の飽和または不飽和脂肪酸が挙げられ、好ましくは炭素数16〜18の直鎖状の飽和または不飽和脂肪酸である。
【0014】
上記グリセリン有機酸脂肪酸エステル(別称:有機酸モノグリセライド)は、通常グリセリンモノ脂肪酸エステル(別称:モノグリセライド)と有機酸若しくは有機酸の酸無水物との反応、またはグリセリンと有機酸と脂肪酸との反応により得ることができる。例えば、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。即ち、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これにジアセチル酒石酸の酸無水物を加え、温度120℃前後で約90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との比率はモル比で1/1〜1/2が好ましい。さらに、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換する方が好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルとジアセチル酒石酸の酸無水物との反応物は、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの他に、ジアセチル酒石酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル、その他を含む混合物である。
【0015】
本発明において、澱粉に油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを添加する方法としては、例えば油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルをそれぞれ別々に澱粉に添加する方法、或いは予め油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを混合した混合物(以下、油脂組成物という。)を澱粉に添加する方法などが挙げられ、好ましくは油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを混合して約50〜90℃に加熱し、グリセリン有機酸脂肪酸エステルを油脂に溶解した油脂組成物を澱粉に添加する方法である。
【0016】
澱粉に対する油脂組成物の添加量は、澱粉100質量部に対して約0.003〜10質量部、好ましくは約0.05〜5.0質量部、より好ましくは約0.1〜1.0質量部である。また油脂組成物中の油脂とグリセリン有機酸脂肪酸エステルとの割合(油脂/グリセリン有機酸脂肪酸エステル)は、約1/99〜99/1(W/W)の範囲を示すことができ、好ましくは約60/40〜20/80(W/W)の範囲である。
【0017】
澱粉と油脂組成物とを混合し、乾燥する方法は特に限定されないが、例えば平衡水分を保った澱粉、または水分を約20〜40質量%に調整した澱粉を流動層乾燥機中で流動状態とし、そこに油脂組成物を噴霧し乾燥する方法、水分を約50質量%程度に調整した澱粉のケーキに油脂組成物を添加し、混合、分散させた後、例えば棚式通風乾燥機などを用いて乾燥し粉末を得る方法、並びに水分を約60〜70質量%に調整したスラリー状の澱粉に油脂組成物を添加、混合し、その後噴霧乾燥機あるいはドラムドライヤーなどを用いて乾燥し粉末を得る方法などが挙げられる。いずれにせよ、澱粉粒が破壊されない状態で澱粉の表面に油脂組成物が吸着される方法であれば、どのような方法であっても良い。
【0018】
油脂組成物が吸着された澱粉は、次に熟成される。熟成は乾燥工程をそのまま延長し、継続してもよいが、高温で処理することにより比較的短時間で行うことができる。熟成は、通常加熱下例えば棚段式通風乾燥機を用いて、約30〜180℃、好ましくは約30〜140℃の温度範囲で行われる。熟成を120℃以上で行う場合には、澱粉がデキストリン化しないよう注意が必要である。熟成に要する時間は、澱粉に対する油脂組成物の吸着量、熟成温度、熟成装置の熱効率などにより異なるが、例えば水分約35%に調整したコーンスターチ100質量部に油脂組成物を約0.1質量部添加して混合し、室温で約20時間乾燥した澱粉では、約60℃で約5時間程度、或いは約140℃で約1時間程度である。
【0019】
熟成終了後、得られた加工澱粉を好ましくは水分約8〜18質量%、更に好ましくは約10〜14質量%となるように調湿し、本発明に係る油脂加工澱粉を得る。
【0020】
前記油脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどの食品用乳化剤を加えることができる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの外、グリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが含まれる。またレシチンとしては、大豆レシチンおよび卵黄レシチンなど油分を含む液状レシチン、液状レシチンから油分を除き乾燥した粉末レシチン、液状レシチンを分別精製した分別レシチン並びにレシチンを酵素で処理した酵素分解レシチンおよび酵素処理レシチンなどが挙げられる。さらに、油脂組成物には、必要に応じてトコフェロール、アスコルビン酸パルミチン酸エステルまたは茶抽出物などの酸化防止剤を加えてもよい。
【0021】
本発明で言うところの魚介類としては特に限定されず、例えばタイ、アマダイ、カレイ、ヒラメ、タラ、キス、アンコウ、カワハギ、フグ、ホッケ、サヨリ、カサゴ、グチ、スズキ、カマス等の白身魚、サワラ、サバ、アジ、イワシ、カツオ、マグロ等の赤身魚、青身魚、ホタテ貝、アサリ、シジミ、ハマグリ、牡蠣等の貝類、エビ類、イカ類、カニ類等の甲殻類、タコ類等が挙げられる。
【0022】
油脂加工澱粉を魚介類に用いる方法としては特に制限はなく、例えば油脂加工澱粉を含有する溶液に魚介類を浸漬する方法、油脂加工澱粉を粉末のまま魚介類に添加する方法などが挙げられる。
【0023】
前者の方法において、溶液100質量%中の油脂加工澱粉の含有量としては、約0.1〜10.0質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは約0.2〜2.0質量%の範囲である。また、後者の方法では、例えば粉末状の油脂加工澱粉を含有する打ち粉を調製し、該打ち粉を魚介類の表面に付着させることができる。この際、打ち粉100質量%中の油脂加工澱粉の含有量としては、約40〜100質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは約80〜100質量%の範囲である。
【0024】
油脂加工澱粉は、必要に応じて、通常魚介類の加工に用いられている原材料を油脂加工澱粉と配合して用いることができる。
【0025】
このような材料としては、例えば、粉末卵白、カゼインナトリウムまたはホエー蛋白質などの動物性蛋白質、分離大豆蛋白または小麦グルテンなどの植物性蛋白質、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉またはワキシーコーンスターチなどの澱粉、アラビアガム、アルギン酸及び/又はその塩、カシアガム、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グアーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、トラガントガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチンまたはローカストビーンガムなどの増粘安定剤、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウムまたはメタリン酸ナトリウムなどの重合リン酸塩、重曹、クエン酸Na等のアルカリ剤、グルタミン酸ナトリウム、核酸系調味料(例えば5’−イノシン酸二ナトリウム、5’−ウリジル酸二ナトリウム等)または甘味料(例えばショ糖、アスパルテーム等)などが挙げられ、これらは必要に応じて適宜用いることができる。
【0026】
油脂加工澱粉を用いて処理された魚介類は、例えばボイル(茹でる)、スチーム(蒸す)、焼く、油ちょう(揚げる)、加圧加熱処理、乾燥及びスモークなどの方法により加熱処理される。
【0027】
本発明の処理が施された魚介類を用いて調理される食品としては、例えばフライ類、フリッター類、お好み焼き、たこ焼き、グラタン、チャーハン、パテ類などが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[リン酸架橋タピオカ澱粉の作製]
水180Lにトリメタリン酸ナトリウム2kgおよび炭酸ナトリウム3kgを溶解し、タピオカ澱粉100kgを懸濁させた後、さらに炭酸ナトリウムを加えpHを10.2に調整した。50℃で6時間攪拌下反応させた後、500Lの水を加えて希釈し、5質量%塩酸溶液でpH7.0に中和した。続いて、脱水、水洗および乾燥した後、リン酸架橋タピオカ澱粉100kgを得た。
【0030】
[油脂加工澱粉(試作品A)の作製]
サフラワー油50質量%とグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW−10;理研ビタミン社製)50質量%からなる油脂組成物を60℃に加温・溶解した。上述した方法により得たリン酸架橋タピオカ澱粉の水分を12.5%に調湿したもの100質量部に対して前記油脂組成物0.5質量部を添加し、高速攪拌混合機(レーディゲミキサーFM130D;松坂技研社製)で10分間混合した。得られた混合物をトレーに広げて機内温度60℃の棚段式通風乾燥機で水分約12.0%まで乾燥し、乾燥物を粉砕し、得られた粉末をポリ袋に詰めて60℃で2週間熟成し、油脂加工澱粉(試作品A)を得た。
【0031】
[油脂加工澱粉(試作品B)の作製]
油脂加工澱粉(試作品A)の作製において、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをグリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB−10;理研ビタミン社製)に替えたこと以外は、該油脂加工澱粉(試作品A)の作製と同様に実施し油脂加工澱粉(試作品B)を得た。
【0032】
[油脂加工澱粉(試作品C)の作製]
油脂加工澱粉(試作品A)の作製において、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをグリセリンクエン酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムK−30;理研ビタミン社製)に替えたこと以外は、該油脂加工澱粉(試作品A)の作製と同様に実施し油脂加工澱粉(試作品C)を得た。
【0033】
[油脂加工澱粉(試作品D)の作製]
油脂加工澱粉(試作品A)の作製において、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをグリセリン脂肪酸エステル(商品名:エマルジーOL−100H;モノエステル含量約90質量%以上、理研ビタミン社製)に替えたこと以外は、該油脂加工澱粉(試作品A)の作製と同様に実施し油脂加工澱粉(試作品D)を得た。
【0034】
[油脂加工澱粉(試作品E)の作製]
油脂加工澱粉(試作品A)の作製において、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをグリセリン脂肪酸エステル(商品名:エマルジーOL−200V;理研ビタミン社製)に替えたこと以外は、該油脂加工澱粉(試作品A)の作製と同様に実施し油脂加工澱粉(試作品E)を得た。
【0035】
[油脂加工澱粉(試作品F)の作製]
油脂加工澱粉(試作品A)の作製において、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをレシチン(商品名:レシオンP;高純度品、理研ビタミン社製)に替えたこと以外は、該油脂加工澱粉(試作品A)の作製と同様に実施し油脂加工澱粉(試作品F)を得た。
【0036】
[実施例1]
油脂加工澱粉(試作品A)450g、重曹(重炭酸ナトリウム:旭硝子社製)40gおよびキサンタンガム(商品名:グリンステッド キサンタンガムJ;ダニスコジャパン社製)10gを1L容ポリ袋に入れ、これを3分間手で振って混合した。得られた混合物6gと5℃に冷却した水184gとを混合し、高速度ミキサー(型式:MX−45;愛豊鉄工社製)を用いて3分間攪拌し、浸漬液を調製した。続いて、頭部、殻、尻尾および背わたを取り除いたバナメイエビ200gを、冷蔵庫(庫内温度4℃)内で上記浸漬液200gに8時間浸漬した。その後、バナメイエビを浸漬液から取り出し、100℃で3分間スチーム加熱処理し、エビ加工品(実施品1)を得た。
【0037】
[実施例2]
実施例1の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品B)450gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、エビ加工品(実施品2)を得た。
【0038】
[実施例3]
実施例1の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品C)450gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、エビ加工品(実施品3)を得た。
【0039】
[比較例1]
実施例1の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品D)450gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、エビ加工品(比較品1)を得た。
【0040】
[比較例2]
実施例1の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品E)450gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、エビ加工品(比較品2)を得た。
【0041】
[比較例3]
実施例1の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品F)450gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、エビ加工品(比較品3)を得た。
【0042】
[試験例1]エビ加工品の歩留まりの評価試験
実施例1〜3および比較例1〜3に記載の方法を実施する際、浸漬液に浸漬する前のバナメイエビの重量および作製されたエビ加工品(実施品1〜3および比較品1〜3)の重量を各々測定し、以下の計算式に基づいて歩留まり(%)を求めた。なお、重量の測定では、予めバナメイエビおよびエビ加工品の表面に付着した水分をろ紙でふき取った。この測定の結果を表1に示した。
【0043】
【数1】

【0044】
【表1】

【0045】
本発明に係る実施例1〜3の方法は、比較例1〜3の方法に比べ、スチーム加熱処理によりエビ加工品を製造する場合の歩留まりの点で優れていた。
【0046】
[試験例2]エビ加工品の食感の評価試験
エビ加工品(実施品1〜3および比較品1〜3)について、下記表2に示す評価基準に従い10名のパネラーで食感について評価試験を行った。結果はそれぞれ10名の評点の平均値として求めた。結果を表3に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
本発明に係る実施例により得られたエビ加工品(実施品1〜3)は、比較例のエビ加工品(比較品1〜3)に比べ食感の点で優れていた。
【0050】
[実施例4]
(1)油脂加工澱粉(試作品A)450g、微粉パン粉(ヒマワリ14メッシュ;武蔵野フーズ社製)40g、キサンタンガム(商品名:グリンステッド キサンタンガムJ;ダニスコジャパン社製)10gを1L容ポリ袋に入れ、これを3分間手で振って混合して混合物を調製した。
(2)市販の広島産の牡蠣の剥き身(約15g/1個)の表面の水分をろ紙で軽くふき取り、この剥き身の表面全体に(1)で得た混合物を打ち粉としてまぶした。
(3)約10℃の冷水450質量部に市販のバッターミックス(商品名:W−976バッターミックス;理研ビタミン社製)100質量部を加え、家庭用ミキサー(型式:MX−X103;松下電器社製)を用いて5分間攪拌・混合し、バッター液を調製した。
(4)打ち粉をまぶした牡蠣の剥き身の表面全体にバッター液を付け、さらに電極パン粉(ライオンフーズ社製)を付け、これを冷凍庫(庫内温度約−18℃)に約12時間保存した。
(5)電極パン粉を付けて保存した牡蠣の剥き身を、175℃の菜種油で4分間フライした後、これを金属製の網の上に取り室温下で5分間冷まして牡蠣フライ(実施品4)を得た。
【0051】
[実施例5]
実施例4の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品B)450gを使用したこと以外は、実施例4と同様に実施し、牡蠣フライ(実施品5)を得た。
【0052】
[比較例4]
実施例4の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品D)450gを使用したこと以外は、実施例4と同様に実施し、牡蠣フライ(比較品4)を得た。
【0053】
[比較例5]
実施例4の油脂加工澱粉(試作品A)450gに替えて油脂加工澱粉(試作品F)450gを使用したこと以外は、実施例4と同様に実施し、牡蠣フライ(比較品5)を得た。
【0054】
[試験例3]牡蠣フライの歩留まりの評価試験
実施例4および5並びに比較例4および5に記載の方法を実施する際、電極パン粉を付けて冷凍庫に約12時間保存した牡蠣の剥き身の重量および該牡蠣の剥き身をフライして得られた牡蠣フライ(実施品4および5並びに比較品4および5)の重量を各々測定し、以下の計算式に基づいて歩留まり(%)を求めた。結果を表4に示した。
【0055】
【数2】

【0056】
【表4】

【0057】
本発明に係る実施例4および5の方法は、比較例4および5の方法に比べ、牡蠣フライを製造する場合の歩留まりの点で優れていた。
【0058】
[試験例3]牡蠣フライのジューシー感の評価試験
牡蠣フライ(実施例4および5および比較例4および5)について、下記表5に示す評価基準に従い10名のパネラーで食感について評価試験を行った。結果はそれぞれ10名の評点の平均値として求めた。結果を表6に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
本発明に係る実施例4および5の方法により得られた牡蠣フライは、比較例4および5の方法のものに比べ、ジューシー感の点で優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂加工澱粉を用いることを特徴とする魚介類の処理方法。
【請求項2】
魚介類がエビ類又は貝類であることを特徴とする請求項1記載の処理方法。