説明

魚体計測メジャー

【課題】計測時の魚体を自然な姿勢に延ばして精度の高い計測を行うことができるとともに、計測時あるいは撮影時の魚体から失われる水分を低減して、魚が弱りにくく損傷しにくくした魚体計測メジャーを提供する。
【解決手段】魚体の長さを計測するための魚体計測メジャーにおいて、内側に気体が充填されるとともに、表面側に前記魚体を横たえる載置面を有するクッション状のメジャー本体と、載置面に載置される前記魚体の長さ方向に沿って付された目盛り部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、釣り上げた魚の魚体の長さを計測するための魚体計測メジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
釣りの愛好家の間では、釣果を示す1つの指標として、釣り上げた魚の魚体の長さを計測することが行われている。
【0003】
計測は、一般に、釣り上げた魚の魚体を、直接、地面や船内の平らな部分に横たえ、魚体の長さ方向に沿って、巻き尺を直線状に引き延ばし、魚体の頭部先端から尾鰭部後端までの長さを測り、目盛りを読み取ることで行われる。
【0004】
また、巻き尺を使用する代わりに、ボートを漕ぐためのオールや、魚を釣るための釣竿に目盛りを付し(例えば、特許文献1参照)、これらのオールや釣竿を横にして、これと平行になるように、魚体の頭部と尾鰭部とを両手で持った状態で長さを測るものもある。
【0005】
さらに、長方形のプラスチック製のトレイの長手方向に目盛りを付し、トレイ上に魚体を横たえて長さを測るものも知られている。
【0006】
なお、魚体の長さを計測するのに加えて、魚体とともに目盛りを写真に写し込むこともよく行われている。また、食用に供さない魚、例えば、ブラックバス等については、長さの計測後、あるいはこれに加えて撮影後に、逃がすことも頻繁に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−3164278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の巻き尺、オール、釣竿、トレイを使用した計測では、計測を行う場所によっては、計測自体がしにくくて正確な計測が困難であるとともに、魚体を直接地面や船内に置くことによって、魚を損傷したり弱らせたりするという問題があった。また、釣り方や釣り場の状況によっては、携帯が困難なものもあり、さらに、いずれも水面上での使用ができないという問題もある。
【0009】
すなわち、魚体を、直接、地面に横たえて巻き尺で計測する場合には、地面に凹凸があるために、巻き尺を直線状に延ばしたり、魚体を自然な姿勢で延ばしたりすることが難しく、このため魚体の長さを正確に計測することができない。
【0010】
また、目盛りの付いたオールや釣竿を使用する場合には、魚体の頭部と尾鰭部とを両手で支持するため、特に魚体が大きい場合には、頭部と尾鰭部との間の腹部が下に垂れ下がって魚体全体を自然な姿勢に延ばすことができないため、正確な計測が困難であり、また、両手がふさがるために、自身での写真撮影ができないという問題もある。
【0011】
また、例えば、目盛りの付いたオールや釣竿を地面や船内に置いて計測したとしても、巻き尺を用いて計測する場合と同様に、魚体を直接地面や船内におくことになるため、魚を損傷したり弱らせたりするという問題もある。
さらに、目盛りの付いたオールは、船を用いない岸からの釣りの場合には、携帯する事ができない。
【0012】
また、目盛りの付いたトレイは、プラスチック製で硬質の素材を用いており、折り畳んだり巻き取ったりできないために形状が大きく、釣り場を頻繁に移動する必要がある岸からの釣りでは、携帯が困難であるという問題がある。
【0013】
さらに、巻き尺、オール、釣竿のいずれを使用して計測する場合も、釣った魚の魚体に付着する水分を保持することができないために、計測中あるいは撮影中にどんどん魚が弱っていったり、損傷したりするおそれがある。
【0014】
加えて、河川や湖、池、沼などに胴長靴(ウェーダー)を用いて水中に入り込んで釣りをする場合は、巻き尺、オール、釣竿、トレイのいずれを使用しても、水面上で魚体を真っ直ぐに安定させることができないため、正確な計測をすることはできない。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、計測時の魚体を自然な姿勢に延ばして精度の高い計測を行うことができるとともに、計測時あるいは撮影時の魚体から失われる水分を低減して、魚が弱りにくく損傷しにくく、携帯しやすいように小さくまとめることができ、水面上でも計測することができる魚体計測メジャーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、魚体の長さを計測するための魚体計測メジャーにおいて、シート状部材で囲まれた内側に気体が充填されることにより、接地面が下面側に形成され、魚体が載置される載置面が上面側に形成された板状、クッション状のメジャー本体と、前記載置面に載置される前記魚体の長さ方向に沿って付された目盛り部と、を備える、ことを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る魚体計測メジャーにおいて、前記メジャー本体は、前記内側に対して前記気体の出し入れが可能な給排気口を有する、ことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る魚体計測メジャーにおいて、前記メジャー本体は、前記内側から前記気体を抜いた際に、シート状に変形して折り畳み又は巻き取り可能となる、ことを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に係る魚体計測メジャーにおいて、前記メジャー本体は、前記載置面に載置される魚体の長さ方向に沿って延びる谷部を有する、ことを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る魚体計測メジャーにおいて、前記メジャー本体の前記谷部を横切るように前記載置面に立設された基準壁を備える、ことを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る魚体計測メジャーにおいて、前記目盛り部は、前記基準壁をゼロ点として付されている、ことを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る魚体計測メジャーにおいて、前記谷部は、前記基準壁から遠い側よりも前記基準壁から近い側が低く構成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、メジャー本体は、魚体の計測に際し、下面側の接地面を地面等に接触させ、上面側の載置面に魚体を横たえることができるので、魚体を直接、地面等に横たえる場合と比較して、魚体の損傷を低減することができる。また、メジャー本体は、気体の充填によりクッション性を確保することができるので、載置面に横たえられた魚を軟らかく受け止めることができる。このことによっても魚体の損傷を低減することができる。また、載置面に魚体を横たえると、凹凸のある地面等に横たえる場合と比較して、魚体は自然な姿勢で延びる。このため、魚体の長さを高い精度で計測することができる。
また、板状のメジャー本体の上面側に載置面が形成されているので、魚体に付着した水分を奪いにくく、魚体の損傷を抑制したり、魚が弱らないようにすることができる。なお、載置面を構成する部材として、例えば、浮き輪や浮袋を作成する際に使用する塩化ビニールシート、布状の部材、ゴムシート等、水分をはじく素材を用いれば、一層、魚体に付着した水分を奪いにくく、魚体の損傷を抑制したり、魚が弱らないようにしたりすることができる。さらに、メジャー本体は、内側に気体が充填されるので、水面に浮かせての使用が可能、つまり、水面に浮かせた状態で魚体の長さを計測することができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、メジャー本体は、給排気口を介して、例えば、空気を入れることにより、メジャーとしての使用が可能となり、一方、給排気口から空気を抜くことにより、潰してシート状にすることができる。
【0024】
請求項3の発明によれば、内側の気体を抜いてシート状にしたメジャー本体は、折り畳んだり巻き取ったりすることができるので、持ち運びに便宜である。
【0025】
請求項4の発明によれば、載置面に魚体を載置する際に、魚体の長さ方向を谷部が延びる方向に合わせることにより、魚体の姿勢を自然に近い安定した姿勢とすることができるので、計測精度を高めることができる。また、谷部に水が溜まるので、魚体の損傷を抑制したり、魚が弱らないようにしたりすることができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、載置面に載置する魚体の頭部先端を、基準壁に合わせることにより、魚体の頭部先端の位置を精度よく位置決めすることができるので、魚体の全長を正確に計測することができる。
【0027】
請求項6の発明によれば、ゼロ点と魚体の頭部先端が一致するので、計測は、魚体の尾鰭部後端の目盛りを読み取るだけで行うことができる。
【0028】
請求項7の発明によれば、谷部は、基準壁から遠い側よりも近い側が低く構成されているので、魚体の長さ方向を谷部に沿って合わせて載置した際に、さらに、魚体を谷部に沿って基準壁に向かって簡単に移動させて魚体の頭部先端を基準壁に当てることができるので、計測作業を一層、簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1〜図3は、実施形態1を説明する図であり、図1は魚体計測メジャー1を説明する模式図であって、(A)は平面図、(B)は右側面図、(C)は正面図、(D)は背面図である。
【0030】
【図2】魚体計測メジャー1の空気室の構造を説明する図である。
【0031】
【図3】(A)〜(D)は魚体計測メジャー1の折り畳みを説明する図である。
【0032】
【図4】実施形態2の魚体計測メジャー2を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は右側面図である。
【0033】
【図5】魚体計測メジャー1に、空気逆止弁の無い給排気口14Aを追加した例を説明する図である。
【0034】
【図6】魚体計測メジャー1の、面ファスナに代えて、ホック31a,31bを取り付けた例を説明する図であり、(A)は平面図、(B)は巻いた状態の斜視図である。
【0035】
【図7】さらに他の魚体計測メジャー3を説明する図である。
【0036】
【図8】(A)〜(C)は、形状が異なる谷部11c,11f,11gを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を適用した実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同一又は類似の構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
<実施形態1>
【0038】
図1〜図8を参照して本発明を適用した実施形態1に係る魚体計測メジャー1について説明する。
【0039】
図1は、魚体計測メジャー1を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は右側面図、(C)は正面図、(D)は背面図である。なお、以下では、説明の便宜上、(A),(B)中に矢印で示す前後左右上下が、魚体計測メジャー1の前後左右上下に対応するものとして説明する。また、適宜、前後方向を長さ方向、左右方向を幅方向(魚体Fの高さ方向)、上下方向を厚さ方向として説明する。
【0040】
魚体計測メジャー1は、図1に示すように、メジャー本体10と、目盛り部20とを備えて構成されている。
【0041】
メジャー本体10は、全体として板状、クッション状に構成されている。ここで、板状とは、シート状ではなく、適度な厚みを有する立体形状のことをいい、また、クッション状とは、その表面が、金属や硬質のプラスチックの表面とは異なり、弾性を有することをいう。また、図1では、メジャー本体10の平面図に現れる形状が長方形である場合を例示しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、正方形、円形、楕円形等、魚体を有効に載置できる載置面を確保できれば、他の任意の形状とすることが可能である。
【0042】
図1に例示する魚体計測メジャー1では、メジャー本体10は、シート状部材の内側に空気(気体)を充填させることで、前後方向に長い長方形状の板状に構成されている。メジャー本体10は、上面側に魚体Fが載置される載置面11を有し、下面側に地面等に接触する接地面11dを有している。ここで、シート状部材とは、袋状に形成して内側に空気を充填した際に、空気が抜けない薄手の部材のことをいい、例えば、浮き輪や浮袋を作成する際に使用する塩化ビニールシート、布状の部材、ゴムシートがあげられる。
【0043】
メジャー本体10の接地面11dは、略平坦に形成され、載置面11は、傾斜面状に形成されている。ここで、略平坦とは、例えば、メジャー本体10を、平坦な地面に接地面11dが接触するようにして置いた際に、接地面11dが平坦になるということである。ここで、上述のように、メジャー本体10は、クッション状に形成されているので、例えば、接地面11dが、凹凸のある地面等に接触する場合には、接地面11dは、その凹凸を適度吸収して、凹凸の影響が、載置面11側に及ばないようにすることができる。このため、後述するように魚体Fの長さの計測の精度を高めることができる。
【0044】
メジャー本体10の載置面11は、左右方向の略中央に位置して前後方向に延びる谷部11cを境に、左載置面11aと右載置面11bとに分かれている。つまり、左載置面11aと右載置面11bとの間には、前後方向に延びる谷部11cが形成されている。左載置面11aは、左端側が高く(下面11dからの厚さが厚く)、右端側となる谷部11c側が低く(下面11dからの厚さが薄く)なるように形成されている。同様に、右載置面11bは、右端側が高く(下面11dからの厚さが厚く)、左端側となる谷部11c側が低く(下面11dからの厚さが薄く)なるように形成されている。左載置面11aは、左端側から谷部11cに向かって緩やかに高さが低くなる傾斜面に形成され、右載置面11bは、右端側から谷部11cに向かって緩やかに高さが低くなる傾斜面に形成されている。なお、本実施形態においては、谷部11cの高さ(下面11dからの厚さ)は、前後方向の位置が異なっても同じになるように形成されている。つまり、谷部11cは、同じ高さで左右方向に延びている。
【0045】
後述するように、魚体Fは、計測のために載置面11に載置される際に、その長さ方向が、谷部11cと一致するように載置される。
【0046】
メジャー本体10の前端には、基準壁12が設けられている。基準壁12は、左右方向に長い長板状に形成されている。基準壁12は、メジャー本体10と同じ素材、すなわち、シート状部材によって形成されていて、内側には、空気(気体)が充填されている。基準壁12は、載置面11の谷部11cに交差するように配置されており、また、載置面11から上方に突出するように設けられている。この基準壁12は、後端側に位置する面が、基準面12aとなる。この基準面12aは、後述する目盛り部20の基準、つまりゼロ点となり、図1(A)に示すように、魚体Fの長さを計測する際に、魚体Fの頭部先端Faを当接させる面となる。これにより、計測精度を向上させることができる。
【0047】
メジャー本体10の後端には、後壁13が設けられている。後壁13は、左右方向に長い長板状に形成されている。後壁13は、メジャー本体10と同じ素材、すなわち、シート状部材によって形成されていて、内側には、空気(気体)が充填されている。後壁13は、載置面11の谷部11cに交差するように配置されており、また、載置面11から上方に突出するように設けられている。
【0048】
このように、谷部11cは、左側と右側とがそれぞれ左載置面11aと右載置面11bとに挟まれ、さらに、前側と後側とが基準壁12、後壁13とによって囲まれているので、水を蓄えることが可能となる。これにより、例えば、釣り上げた魚の魚体Fの長さを計測する際に、魚体Fから落ちた水を谷部11cに貯めることができるため、魚体Fの乾燥を防いで、魚を弱りにくくすることができる。
【0049】
なお、後壁13は、前側の基準壁12とは異なり、魚体Fの頭部先端Faを当接させる必要がなく、谷部11cに水を貯められれば十分であるため、基準壁12よりも低く形成されている。また、後壁13を例えば、基準壁12と同等の高さに形成して、後壁13の壁面13aを基準面として使用することも可能である。ただし、この場合には、壁面13aが、後述する目盛り部20の切りの良い目盛り21(図1(A)の例では、80cm)に対応するようにしておくとよい。
【0050】
基準壁12には、図1に示すように、左端側に栓(給排気口)14が設けてある。栓14には、基準壁12あるいは基準壁12を介してメジャー本体10、後壁13の内側に一端、注入した空気が抜けないように逆止弁(不図示)が取り付けられている。なお、この逆止弁は、栓14を外側から指で摘んで変形させることにより、空気の排出が可能となる。栓14は、図示例のように、左端側(又は右端側)に設けることで、後述するように、魚体計測メジャー1から空気を抜いて巻き取る際に邪魔になりにくく、さらに、魚体計測メジャー1を巻き取った後にさらに空気を抜いて、巻き取りを小径にすることができる。
【0051】
基準壁12には、また、図1に示すように、左右方向の略中央に、ループ状の係止具17が設けられている。この係止具17は、ナスカン、カラビナ、フック等を引っ掛けて使用することにより、魚体計測メジャー1が風に飛ばされるのを防止したり、また、川での立ち込み釣りや、フローターでの釣りのときなどに、魚体計測メジャー1を水面に浮かせて使用する際に流されるのを防止したりすることができる。なお、係止具17は、例えば、軟質のビニール等の変形可能な材質で構成するとよい。これにより、後述するように、携帯に際して、魚体計測メジャー1を巻き取るときに、際に、内側に巻き込まれて変形するため、邪魔になりにくい。係止具17は、基準壁12の左右方向の略中央に設けられているので、例えば、係止具17にナスカン等を介してロープ等に連結した状態で、魚体計測メジャー1を流れのある水面に浮かせた状態で使用する場合でも、安定した状態で使用することができる。
【0052】
基準壁12には、図1に示すように、右端側に、上述の係止具17と同様、ループ状の係止具17aが設けてある。この係止具17aは、後述するように、魚体計測メジャー1から空気を抜いて巻き取った際に、筒状の一方の端部から突出するため、この係止具17aに、ナスカン、カラビナ、フック等を引っ掛けて、道具入れようのバッグやズボンのベルト通しなどにぶら下げて便利に使用することができる。また、魚が釣れたらすぐに取り出して使用することができる。
【0053】
後壁13には、面ファスナの一方側15(例えば、凸側)が取り付けられている。面ファスナの他方側(例えば、凹側:不図示)は、メジャー本体10の下面11dに取り付けられていて、後述するように、メジャー本体10等から空気を抜いて、巻き取った際に、他方側に、一方側15を係合させることで、メジャー本体10の巻き取り状態を保持することができる。
【0054】
図2は、魚体計測メジャー1の空気室の構造を説明する図である。図示例では、魚体計測メジャー1は、4つの空気室Aa,Ab,Ac,Adによって構成されている。このうち空気室Aaは、メジャー本体10の左載置面11aと下面11dとの間に形成された空気室であり、また、空気室Abは、メジャー本体10の右載置面11bと下面11dとの間に形成された空気室であり、これら空気室Aa,Abは、谷部11cの位置に対応する隔壁F2によって隔てられている。また、空気室Acは、基準壁12に対応する空気室であり、上述の空気室Aa,Abとは隔壁F1によって隔てられている。さらに、空気室Adは、後壁13に対応する空気室であり、上述の空気室Aa,Abとは隔壁F3によって隔てられている。隔壁F1には、ゲート(空気孔)G1が穿設され、また、隔壁F2にはゲートG2が穿設され、さらに、隔壁F3には、ゲートG3,G4が穿設されている。栓14から空気室Acに注入された空気は、ゲートG1,G2を介して、空気室Aa及び空気室Abに注入される。さらに、空気室Aaに注入された空気はゲートG3を介して、また、空気室Abに注入された空気はゲートG4を介して、それぞれ空気室Adに注入される。このように、栓14を介して空気室Acに注入された空気は、各ゲートG1〜G4を介して、空気室Aa,Ab,Adに注入される。つまり、栓14を介して、空気が魚体計測メジャー1の内側全体に充填される。
【0055】
メジャー本体10の載置面11(左載置面11a及び右載置面11b)には、図1(A)に示すように、目盛り部20が設けられている。図示例では、目盛り部20は、基準壁12の基準面12aをゼロ点として、谷部11cに沿って10cm間隔で付された目盛り線21と、この目盛り線21の間に付された5cm間隔の目盛り線22とを有しており、さらに、これらの間に付された、例えば、1mm間隔の目盛り線(不図示)を有している。これら10cm、5cm、1mm間隔の目盛り線21,22は、載置面11の左右方向の全幅にわたって設けられている。なお、これら10cm、5cm、1mm間隔の目盛り線21,22は、必ずしも、載置面11の左右方向の全幅にわたって設ける必要はないが、上述のように全幅にわたって設けておけば、例えば、計測の対象となる尾鰭部後端Fbの位置が、谷部11cから左右方向に大きく外れている場合であっても、高い精度の計測が可能となる。10cm間隔の目盛り線の横には、1、2……7の数字が付されており、これらは10、20…70cmを表している。このように、目盛り部20は、魚体Fの頭部先端Faが当接される基準面12aをゼロ点として、谷部11cに沿って後方に延びるように設けられているので、魚体Fの長さの計測を高い精度で行うことができる。
【0056】
なお、目盛り部20は、さらに、載置面11の左右方向にも5cm間隔で目盛り線23を設けるようにしてもよい。この目盛り線23には、谷部11cをゼロ点として左側及び右側に行くほど数値が大きくなる数字(図示例では、5cmを表す5、10cmを表す10)が付されており、魚体Fの長さを計測するのと同時に、魚体Fの高さを計測できるようになっている。ただし、この目盛り線23を設ける場合であっても、1mm間隔とした場合には、載置面11の前面が1mm角の方眼状になってしまい、写真撮影時に背景が煩雑になるおそれがあるため、例えば、5cm間隔とすることが好ましい。この目盛り線23は、魚体Fの正確な高さを計測するものではなく、あくまでも魚体Fの高さを大まかに知るためのものである。目盛り線23は、省略するようにしてもよい。
【0057】
図3(A)〜(D)は魚体計測メジャー1の折り畳みを説明する図である。なお、ここでいう折り畳みには、巻き取りも含むものとする。
【0058】
空気が充填された状態の魚体計測メジャー1を折り畳むには、まず、栓14を外して、空気室Aa〜Adの空気を抜き、全体をシート状に潰す。次に、(A),(B)に示すように、谷部11cを基準としてメジャー本体10を矢印R1方向に谷折りして2つ折りにする。つづいて、(B)に示すように、基準壁12側から矢印R2方向に順に巻き込んでいく。巻き終えたら、(C),(D)に示すように、栓14からさらに空気を抜いて、巻きを小径にして、最後に、面ファスナの一方側15を他方側(不図示)にくっつけて、巻込みを終了する。これにより、魚体計測メジャー1は、小さくまとめられ、場所を取らずに、携帯に便宜になる。
【0059】
以上説明した魚体計測メジャー1は、以下のような効果、すなわち、
(1)魚体Fの計測に際し、下面側の接地面11dを地面等に接触させ、上面側の載置面11に魚体Fを横たえることができるので、魚体Fを直接、地面等に横たえる場合と比較して、魚体Fの損傷を低減することができる。
(2)気体の充填によりクッション性を確保することができるので、載置面11に横たえられた魚体Fを軟らかく受け止めることができる。このことによっても魚体Fの損傷を低減することができる。
(3)空気(気体)を充填することにより、板状になるため、載置面11に魚体Fを横たえると、凹凸のある地面等に横たえる場合と比較して、魚体Fは自然な姿勢で延びる。このため、魚体の長さを高い精度で計測することができる。
(4)載置面11のうちの、谷部11cに水が溜まるので、魚体の損傷を抑制したり、魚が弱らないようにしたりすることができる。
(5)内側に気体が充填されるので、水面に浮かせての使用が可能、つまり、水面に浮かせた状態で魚体Fの長さを計測することができる。
(6)栓14を介して、空気の出し入れができるので、空気を充填した際には、メジャーとしての使用が可能となり、一方、栓14から空気を抜くことにより、潰してシート状にすることができる。
(7)さらに、潰してシート状にできるので、これを折り畳んだり、巻き取ったりすることが可能となり、携帯に便宜である。
(8)載置面11に魚体Fを載置する際に、魚体Fの長さ方向を谷部11cが延びる方向に合わせることにより、魚体Fの姿勢を自然に近い安定した姿勢とすることができるので、計測精度を高めることができる。
(9)載置面11に載置する魚体Fの頭部先端Faを、基準壁12の基準面12aに合わせることにより、魚体Fの頭部先端Faの位置を精度よく位置決めすることができるので、魚体Fの全長を正確に計測することができる。
(10)目盛り部20のゼロ点を、基準面12aに合わせて設定することにより、魚体Fの頭部先端Faを基準面12aに当接させるだけで、ゼロ点に合わせることができるので、計測は、魚体の尾鰭部後端Fbの目盛りを読み取るだけで行うことができる。
という効果を奏することができる。
<実施形態2>
【0060】
図4は、実施形態2の魚体計測メジャー2を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は右側面図である。
【0061】
本実施形態の魚体計測メジャー2は、上述の実施形態1の魚体計測メジャー1に対して、さらに、左側壁18、右側壁19を追加したものである。
【0062】
左側壁18は、左載置面11aの左端に、前後方向の全長にわたって設けられていて、左載置面11aから上方に突出するように設けられている。同様に、右側壁19は、右載置面11bの右端に、前後方向の全長にわたって設けられていて、右載置面11bから上方に突出するように設けられている。すなわち、左載置面11aと右載置面11bとからなる載置面11全体は、その四方を基準壁12、後壁13、左側壁18、右側壁19で囲まれている。このため、載置面11上の全体にわたって水を貯めることが可能となり、適宜な量の水を貯めることで、計測時の魚体Fの劣化、すなわち、魚体Fが損傷したり、魚が弱ったりすることを防止することができる。
【0063】
図5は、魚体計測メジャー1に、空気逆止弁の無い栓(給排気口)14Aを追加した例を説明する図である。このような栓14Aを設けることにより、魚体計測メジャー1から空気を抜く際に、栓14Aを外すことにより、短時間で、しかも確実に空気を抜くことができる。なお、栓14Aは、例えば、図示のように後壁13の右端部、又は左端部に設けることにより、魚体計測メジャー1を折り畳んで、巻き取った後にも、巻き状態の魚体計測メジャー1から突出されるため、巻き取り後の操作が容易となる。
【0064】
図6は、魚体計測メジャー1の、面ファスナに代えて、ホック31a,31bを取り付けた例を説明する図であり、(A)は平面図、(B)は巻いた状態の斜視図である。
【0065】
このように、面ファスナに代えて、ホック31a,31bを設け、魚体計測メジャー1の巻き取り後に、ホック31aをホック31bに係合させることで、巻き取り状態を維持するようにしてもよい。
【0066】
図7は、さらに他の魚体計測メジャー3を説明する図である。上述の実施形態1の魚体計測メジャー1では、前後方向に延びる谷部11cは、その高さが前後方向の位置にかかわらず略一定となるように構成されていが、図7に示す魚体計測メジャー3では、谷部11eの高さについて、基準壁12側の高さh1が低く、後壁13側の高さh2が高くなるように構成されている。これにより、魚体Fを、その長さ方向が谷部11eに沿うようにして載置面11に載置した場合に、魚体Fは、高くなっている後壁13側よりも、低くなっている基準壁12側に移動させやすいので、魚体Fの頭部先端Fa(図1参照)を基準壁12の基準面12aに当接させやすい。すなわち、魚体Fの長さの計測時に、魚体Fの位置決めが行いやすい。
【0067】
図8(A)〜(C)は、形状が異なる谷部11c(11e),11f,11gを説明する図である。なお、これらの図は、谷部の延びる方向(前後方向)に直交する平面で切ったときの断面を示している。
【0068】
(A)に示す谷部11c,11eは、上述の魚体計測メジャー1,3で説明した谷部の形状であり、左載置面11aと右載置面11bとが屈曲状態(角度の広い「V」字形)に交差している。
【0069】
(B)に示す谷部11fは、左載置面11aと右載置面11bとが上方に向かって凹状の屈曲状態(角度の広い「U」字形)に交差している。
【0070】
(C)に示す谷部11gは、上方に向かって凸状に湾曲した左載置面11aと同じく上方に向かって凸状に湾曲した右載置面11bとが交差して形成されている。
【0071】
このように、谷部の形状については、種々のものが可能である。すなわち、谷部としては、左載置面11aのうちの谷部に隣接して前後方向に延びる領域、及び右載置面11bのうちの谷部に隣接して前後方向に延びる領域に対して、これらの領域よりも低くなった部分として定義することができる。したがって、例えば、(C)に示すように、左載置面11a及び右載置面11bは、谷部から遠い領域については、谷部よりも低くなっていることも可能である。
【0072】
上述の実施形態1,2では、メジャー本体10、目盛り部20の外に、基準壁12、後壁13、谷部11c等を備えた魚体計測メジャー1,3を例に説明したが、本発明に係る魚体計測メジャーは、基本的な構成としては、内側に空気(気体)を充填することで板状、クッション状となるメジャー本体10と、このメジャー本体10の載置面11に付した目盛り部20とを備えていれば十分である。この構成により、上述の効果(1)〜(10)のうち、(1)〜(7)を奏することができる。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3 魚体計測メジャー
10 メジャー本体
11 載置面
11a 左載置面
11b 右載置面
11c,11e,11f,11g 谷部
11d 接地面
12 基準壁
14 栓(給排気口)
20 目盛り部
F 魚体
Fa 頭部先端
Fb 尾鰭部後端



【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚体の長さを計測するための魚体計測メジャーにおいて、
シート状部材で囲まれた内側に気体が充填されることにより、接地面が下面側に形成され、魚体が載置される載置面が上面側に形成された板状、クッション状のメジャー本体と、
前記載置面に載置される前記魚体の長さ方向に沿って付された目盛り部と、を備える、
ことを特徴とする魚体計測メジャー。
【請求項2】
前記メジャー本体は、前記内側に対して前記気体の出し入れが可能な給排気口を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の魚体計測メジャー。
【請求項3】
前記メジャー本体は、前記内側から前記気体を抜いた際に、シート状に変形して折り畳み又は巻き取り可能となる、
ことを特徴とする請求項2に記載の魚体計測メジャー。
【請求項4】
前記メジャー本体は、前記載置面に載置される魚体の長さ方向に沿って延びる谷部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の魚体計測メジャー。
【請求項5】
前記メジャー本体の前記谷部を横切るように前記載置面に立設された基準壁を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の魚体計測メジャー。
【請求項6】
前記目盛り部は、前記基準壁をゼロ点として付されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の魚体計測メジャー。
【請求項7】
前記谷部は、前記基準壁から遠い側よりも前記基準壁から近い側が低く構成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の魚体計測メジャー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220414(P2012−220414A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88290(P2011−88290)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(511092077)パイ・クリエイティブ・ワークス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】