説明

魚拓を転写した陶板の製造方法

【課題】本発明は、魚拓を陶板の生地に転写して焼成することにより色褪せず、かつ装飾性の優れた陶板を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、和紙、あるいは布に魚姿を墨によって転写する工程と、前記和紙、あるいは布に転写された魚拓を、スキャナーによって読み取り電子化処理する工程と、前記電子化処理した映像を修正し、色分けしフィルムに出力し、該フィルムを印刷用の版に焼き付ける工程と、前記印刷用の版によって転写用プリントを印刷する工程と、素焼き生地に釉がけして焼成した陶板の生地に、前記転写用プリントを転写して焼成する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚拓を転写した陶板の製造方法に関する。詳しくは魚拓を陶板の生地に転写して焼き上げる魚拓を転写した陶板の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
魚拓は、魚の表面を拭いた後、背びれ等の形を整え、魚の表面に墨を塗り、その上に和紙を当てがい、これをこすることにより魚の表面の墨を和紙に転写し、適宜色を塗ることにより魚拓を製作している。
【0003】
しかし和紙に転写する魚拓では、長期間保存すると、変色したり、臭気が残存し虫が付きやすくなる。また、墨が滲んできたりするために美観を損ねることがある。
そこで前記和紙に転写する魚拓の改善策として、例えば図3に示すような魚拓が出願されている。これは釣り人がガラス101に、魚拓(魚の形状に対応した画像)に転写された魚の画像を施したい場合においては、魚拓に転写された画像を原画紙に転写し、透過部と、非透過部とからなる原画紙を作成し、刻設の際に、被刻設面を部分的に覆い、その覆った部分が刻設されないようにするためのレジスト画像幕102を原画紙の透過部に対応する部分の形状に光硬化剤樹脂の露光により形成し、サンドプラスト加工により魚拓に転写された魚の画像と同じ画像をガラス101に刻設することができる(特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−211000号公報(要約書、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記ガラスの表面に魚拓を刻設するものでは、魚拓を原画紙に転写する原画作成工程と、レジスト画像膜の製造工程、魚拓の刻設工程が必要となる。特にレジスト画像膜の製造工程では、光硬化性樹脂を用い、かつそれを充填する設備が必要であり、外部から光が進入しない暗室が必要となるなど、特殊技能と特殊な設備を必要とし、非常に煩雑な作業を強いられる問題がある。
【0006】
また、魚拓の刻設はガラス板をサンドブラストによって行うことによりサンドブラスト機などの設備を必要とし、刻設した後に彩色を施すなどの作業を必要とし魚拓を完成するまでに煩雑な工程を必要とすることから結果的のコスト高となる問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、魚拓を陶板の生地に転写して焼成することにより色褪せず、かつ装飾性の優れた陶板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る魚拓を転写した陶板の製造方法は、和紙、あるいは布に魚姿を墨によって転写する工程と、前記和紙、あるいは布に転写された魚拓を、スキャナーによって読み取り電子化処理する工程と、前記電子化処理した映像を修正し、色分けしフィルムに出力し、該フィルムを印刷用の版に焼き付ける工程と、前記印刷用の版によって転写用プリントを印刷する工程と、素焼き生地に釉がけして焼成した陶板の生地に、前記転写用プリントを転写して焼成する工程を備える。
【0009】
ここで、墨によって魚を和紙、あるいは布に転写したものを、スキャナーで読み取り電子化処理を行うことにより、古来からの墨による魚拓の良さをそのまま画像として処理することができ、デジタル化した画像の修正・色分けなどを容易に行うことが可能となる。
また、陶板の生地に転写して高温で焼き上げることにより、色落ち・劣化しにくく室内外に長期間の展示が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の魚拓を転写した陶板の製造方法によれば、和紙に転写する魚拓に比べて劣化することが少なく、長期の保存が可能となる。また、外光による紫外線や湿気などによって色褪せることが少ない。
また、和紙や布などに転写された魚拓をスキャナーによって読み取り、デジタル映像化することによりパソコン上での修正が非常に容易に行うことができる。
【0011】
いっぽう、陶板にシルクスクリーン印刷によって印刷された魚拓を転写する事により、鱗や輪郭が確実に転写され、和紙などの魚拓を忠実に再現することが可能となる。
また、有田焼などの陶板により魚拓を製造することにより、室内の壁掛けや衝立・テーブル・建造物(橋、壁、家屋など)への埋め込みなどインテリア装飾品として活用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1に、本発明を適用した魚拓を転写した陶板の製造方法の工程の一例を示すブロック説明図である。
【0013】
ここで示すように、まず、和紙に魚を転写する工程として、魚に直接墨を塗り、布や紙に写し取る「直接法」と、魚に布や紙を載せて、上から墨などで色をつける「間接法」がある。一般に「直接法」は簡便だが細かい表現には向いていない。いっぽう、「間接法」は技術的には難しい面もあるが、色の使い分けが可能なことから本実施例では「間接法」を採用する。
【0014】
この間接法の工程概要は、(1)魚を安置する。(2)布や紙を魚に密着させる。(3)墨を吸わせたタンポなどで魚をなぞり、魚体を写し取っていく。(4)魚拓を魚から剥がして完成。
なお、前記工程の前に、最初魚体の魚拓面を塩で洗浄し、水や洗剤等で洗い落とすことにより表面のぬめりや汚れを落とし、次いで、吸湿紙等により水分を十分にとり、魚体の鰭を広げて糊張り等により形状を整え、必要に応じ、口、えら及び腹部へ綿等を詰めたうえ、軽く鱗起させ、墨付けを行う。
【0015】
このようにして布や和紙に魚体を写しとった後に、読取画像処理工程を行う。この読取画像処理工程では、例えば前記布や和紙に転写された魚の画像をスキャナーによって読み取る。そして読み取った魚拓の画像を、ディスプレイ上に映し出し、画像処理された魚拓のキズなどを修正し、その後色分けしてフィルムに出力する。
【0016】
なお、スキャナーとは、紙から図形や写真を読み取って、画像データとしてパソコンに転送する装置のことであり、読み取り対象の紙などに光を当て、反射光CCDなどで読み取ってデジタルデータに変換されるために、データ化された画像の修正や色付けなどが非常に容易に行うことが可能となる。
【0017】
そして転写版作成工程において、前記フィルムをシルクスクリーン印刷用の版に焼付け、その後色別に陶磁器用の絵具(インク)で印刷して転写プリントを完成させる。
ここでいうシルクスクリーン印刷とは、絹・ナイロン・テトロンなどの繊維あるいはステンレススティールの針金などで織ったスクリーンの目を利用します。まず、スクリーンを枠に張り、四方を引っ張り緊張させて固定し、その上に手工芸又は光工学的(写真的)方法で版膜(レジスト)を作って必要な画線以外の目を塞いで版を作ります。
次に、枠内に印刷インクを入れ、スキージと呼ぶヘラ状のゴム板でスクリーンの内面を加圧・移動します。するとインクは版膜のない部分のスクリーンを透過して版の下に置かれた被印刷物面に押し出されて印刷が行われることになる。このシルクスクリーン印刷では、ガラス、陶板、プラスチック、合成樹脂、金属、布等、ほとんどどのような素材にも印刷ができるので紙以外の印刷する必要がある場合によく利用される。
【0018】
いっぽう、陶板の作成工程において、有田焼などの陶磁器の原料となる陶土を魚体の大きさに合せて引き伸ばして板状に形成する。そしてこの魚体の大きさに合わせた陶板の生地(土)を窯に入れて焼成する(素焼き)。このようにして焼成されたこの素焼き生地の釉がけをして再び窯によって焼成する(太白)。
【0019】
次に、魚拓の転写工程おいて、前記太白の陶板の生地に前記転写版作成工程において作成した転写プリントを貼り付けて約800度以上の高温で焼付け焼成し、前記素焼き生地に魚拓が焼き付けられた陶板を完成させる。
なお、陶板とは、陶磁器の原料となる陶土を板状に引き伸ばして、焼成することにより素焼きの生地を作成し、この生地の上に直接に絵の具によって絵を描いたり、あるいは写真を転写して高温で焼き付けたりするものである。このようにして作成される陶板は、直射日光や風雨にさらされても変質、変色、退色しにくく、半永久的に保存できる点に特徴がある。
【0020】
そして図2に示すように、前記魚拓が転写された陶板1を額縁2にセットして、壁などにかけることにより、装飾陶板と同様に光沢のある、色彩が非常に綺麗な魚拓を表現することが可能となる。
【0021】
以上の構成よりなる本発明の魚拓を転写した陶板の製造方法では、釣った魚を一般的に行われている墨によって和紙に魚を転写し、この和紙に転写した魚拓を高精度スキャナーで読み取ることによりデジタル映像化される。
【0022】
そしてディスプレイによってデジタル映像化された魚拓の色付け・修正処理を行って製版用のフィルムとして出力する。これらの一連の作業はパソコン・スキャナーなどのPC機器によって容易、かつスピディーに行うことが可能となる。
【0023】
次に、前記フィルムをシルクスクリーン印刷用の版に焼付け、その後色別に陶磁器用の絵具(インク)で印刷して転写プリントを作成することにより、例えば有田焼の陶板生地に魚拓を転写して高温で焼き上げることにより本発明の魚拓の陶板を作成することが可能となる。
【0024】
また、約800度以上の高温で焼成された陶板では、転写された魚拓が紫外線によって色落ちしにくく、かつ湿気や高温などの条件下においても劣化しにくく魚拓の半永久的な保存が可能となる。したがって、室内の装飾の他に、屋外の壁面や塀などへ埋め込むなど、従来の和紙でできなかった活用方法が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した魚拓を転写した陶板の製造方法の工程の一例を示すブロック説明図である。
【図2】本発明を適用した魚拓を転写した陶板の使用例を示す説明図である。
【図3】従来の魚拓の作成方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 陶板
2 額縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
和紙、あるいは布に魚姿を墨によって転写する工程と、
前記和紙、あるいは布に転写された魚拓を、スキャナーによって読み取り電子化処理する工程と、
前記電子化処理した映像を修正し、色分けしフィルムに出力し、該フィルムを印刷用の版に焼き付ける工程と、
前記印刷用の版によって転写用プリントを印刷する工程と、
素焼き生地に釉がけして焼成した陶板の生地に、前記転写用プリントを転写して焼成する工程を備える
ことを特徴とする魚拓を転写した陶板の製造方法。
【請求項2】
前記フィルムをシルク用印刷用の版に焼き付ける
ことを特徴とする請求項1記載の魚拓を転写した陶板の製造方法。
【請求項3】
前記陶板に額縁を設ける
ことを特徴とする請求項1または2記載の魚拓を転写した陶板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−45781(P2009−45781A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212339(P2007−212339)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(504237382)株式会社 アリタ (1)
【Fターム(参考)】