説明

魚釣用リール

【課題】手の指先をスイッチ操作子からスプールのフランジに素早く移動させて、的確なサミング操作を行なうことができる魚釣用リールを提供。
【解決手段】手を載せる上面6aを有するリール本体5と、リール本体5の前部に設けられ、釣糸35が巻き付けられるスプール34と、釣糸35を巻き取る方向にスプール34を回転させるモータ44と、リール本体5の上面に設けられ、手の指先で人為的に操作することでスプール34の回転を制御するスイッチ操作子63と、を備えている。スプール34は、少なくとも一方のフランジ37bがリール本体5の外に露出するようにリール本体5の前部に配置されている。スイッチ操作子63は、スプール34よりも後方にずれて位置するとともに、スプール34よりもリール本体5の上方に向けて突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより駆動されるスプールを備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、氷結した湖の上で行うワカサギの穴釣りやボート釣り等においては、短い釣竿を取り付けた電動リールが用いられている。この種の電動リールは、氷上に据え付けた台の上あるいは船べりの上に置かれており、釣人は、電動リールを手で握って操作することで、釣糸に取り付けた仕掛けを水中に沈めたり、仕掛けに掛かったワカサギを水中から引き上げている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたワカサギ釣り用の電動リールは、釣人が手で把持する外筒を備えている。外筒の前端部に短い釣竿とスプールが支持されている。スプールは、外筒の上面から上方に突出しており、このスプールから繰り出された釣糸が釣竿の先端のガイドに導かれている。
【0004】
外筒は、スプールと一体に回転する回転軸と、回転軸上の歯車と噛み合うウォームと、このウォームを駆動するモータとを内蔵している。モータを動作させるためのスイッチが外筒の上面に配置されている。スイッチは、スプールの背後に位置している。釣人が手の指先でスイッチを操作すると、モータのトルクがウォームおよび歯車を介してスプールに伝わり、スプールが釣糸を巻き取る方向に回転するようになっている。
【0005】
さらに、外筒の前端部の下面にプッシャが設けられている。プッシャは、外筒を台の上に置いた時に回転軸を押し上げて、歯車とウォームとの噛み合いを解除する。これにより、スプールがフリーとなり、スプールに巻き付けられた釣糸が重りにより引っ張られて、仕掛けが水中に沈むようになっている。
【0006】
特許文献1に開示された電動リールを用いて魚釣を行うに当っては、外筒を台の上に置いてスプールをフリーの状態とし、仕掛けを水中に落とし込む。仕掛けが狙った水深に達したところで、釣糸をスプールのフックに引っ掛け、釣糸の繰り出しを停止させる。
【0007】
この状態で、釣人は外筒を台の上に置いた状態であたりを待ち、あたりが来た時に外筒を手で持ち上げるとともに、手の指先でスイッチを操作する。この操作により、スプールがモータからのトルクを受けて釣糸を巻き取る方向に回転し、水中の仕掛けが引き上げられる。
【特許文献1】特開2000−4726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示された電動リールでは、スプールをフリーにして仕掛けを水中に落とし込んでいる最中、あるいはモータによりスプールを回転させて釣糸をスプールに巻き取っている最中に、手の指先をスプールの上端に位置するフランジに押し付けてスプールの回転速度を調節する、いわゆるサミング操作を行なうことがある。
【0009】
従来の電動リールによると、スプールは外筒の上面に支持されて、外筒の上面から上方に飛び出ているため、スプールの上端に位置するフランジと外筒の上面との間に大きな段差が生じている。
【0010】
このような構成では、外筒を握っている手の指あるいはスイッチに添えている手の指をスプールのフランジに移し変える時に、手の指先を外筒の上面又はスイッチから離して上方に大きく移動させなくてはならない。そのため、手の指先を素早くフランジに移すことができなくなり、サミング操作に遅れが生じるといった不具合がある。
【0011】
本発明の目的は、手の指先をスイッチ操作子からスプールのフランジに素早く移動させて、的確なサミング操作を行なうことができ、使い勝手が向上する魚釣用リールを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る魚釣用リールは、
載置面の上に置かれる接地部と、手を載せる上面と、を有するリール本体と、
上記リール本体の前部に設けられ、釣糸が巻き付けられる釣糸巻回胴部と、この釣糸巻回胴部を間に挟んで向かい合う一対のフランジと、を有するスプールと、
上記釣糸を巻き取る方向に上記スプールを回転させるモータと、
上記リール本体の上面に設けられ、手の指先で人為的に操作することで上記スプールの回転を制御するスイッチ操作子と、を具備している。
上記スプールは、少なくとも一方のフランジが上記リール本体の外に露出するように上記リール本体の前部に配置され、上記スイッチ操作子は、上記スプールよりも後方にずれて位置するとともに、上記スプールよりも上記リール本体の上方に向けて突出していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スイッチ操作子に添えている手の指先を前方にずらすだけで、この手の指先がスプールのフランジに届く。そのため、実際に釣りをしている時に、手の指先を素早くフランジに移動させて的確なタイミングでサミング操作に移行することができ、魚釣用リールの操作性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図12に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、例えば氷結した湖面1に穴2を開けてワカサギを釣る、いわゆる穴釣りでは、氷結した湖面1の上に釣用の台3を据え付けている。台3は、載置面としての平坦な上面3aを有している。釣人は、台3の上面3aの上に魚釣用リール4を置くとともに、この魚釣用リール4を右手H又は左手Hで掴んで操作することによりワカサギを吊り上げる。
【0016】
図1ないし図3に示すように、魚釣用リール4は、リール本体5を備えている。リール本体5は、その外郭を構成する筐体6を有している。筐体6は、例えばABS樹脂、ポリカーボーネートのような合成樹脂材料により形成されている。
【0017】
筐体6は、長軸Lと短軸Sとを有する偏平な箱形であり、釣人が右手H又は左手Hで掴むことができる程度の大きさを有している。筐体6の長軸Lは、筐体6の前後方向に延びている。筐体6の短軸Sは、筐体6の幅方向に延びている。
【0018】
図2に示すように、筐体6は、ロアケース7とトップカバー8とで構成されている。ロアケース7は、底壁9と、底壁9の左右の側縁から起立する側壁10a,10bと、底壁9の前端から立ち上がる前壁11と、底壁9の後端から立ち上がる後壁12とを有している。トップカバー8は、底壁9と向かい合うようにロアケース7に被せられている。トップカバー8の外周縁は、側壁10a,10bの上縁、前壁11の上縁および後壁12の上縁に連続している。
【0019】
トップカバー8は、ねじ止めあるいは嵌め込み等の手段によりロアケース7に固定されて、ロアケース7との間にモータ収容室13を規定している。さらに、ロアケース7の底壁9にバッテリ収容部14が形成されている。バッテリ収容部14は、モータ収容室13内に張り出すとともに、ロアケース7の下方に開口する凹みで構成されている。バッテリ収容部14の開口端は、取り外し可能なバッテリカバー15で閉じられている。
【0020】
筐体6は、一対の脚16a,16bを有している。脚16a,16bは、例えば筐体6よりも柔らかいゴム状弾性体で形成されている。脚16a,16bは、ロアケース7の底壁9に固定されているとともに、リール本体5の前後方向に互いに離れている。脚16a,16bは、リール本体5を台3の上に置いた時に、台3の上面3aに接触する接地部として機能する。
【0021】
図2および図3に示すように、トップカバー8は、筐体6の上面6aを構成している。上面6aは、釣人が魚釣用リール4を操作する際に右手H又は左手Hを載せる部分であって、リール本体5の上方に露出している。上面6aは、第1の領域17および第2の領域18を有している。
【0022】
第1の領域17は、釣人がリール本体5を右手H又は左手Hで掴んだ時に、手の平Pを受ける部分であり、筐体6の前後方向に沿う中間部19よりも後方に位置している。第2の領域18は、釣人がリール本体5を右手H又は左手Hで掴んだ時に、人指し指H2および中指H3を受ける部分であり、筐体6の中間部19よりも前方に位置している。
【0023】
第1の領域17は、筐体6の後端から筐体6の中間部19の方向に進むに従い上向きに傾斜するとともに、筐体6の上方に凸となるように筐体6の前後方向に沿って滑らかな円弧を描いて湾曲する曲面となっている。さらに、図4に示すように、第1の領域17は、筐体6の上方に凸となるように筐体6の左右方向に沿って滑らかな円弧を描いて湾曲する曲面となっている。
【0024】
第2の領域18は、筐体6の中間部19から筐体6の前方に進むに従い下向きに傾斜するとともに、筐体6の上方に凸となるように筐体6の前後方向に沿って滑らかな円弧を描いて湾曲する曲面となっている。
【0025】
このことから、第1の領域17と第2の領域18との間の境界に位置する中間部19は、上面6aの中で筐体6の上方に最も張り出す頂部20を含んでいる。頂部20は、筐体6の中間部19において筐体6の左右方向に沿う中央部に位置している。
【0026】
言い換えると、筐体6の上面6aは、頂部20に向けて滑らかな円弧を描いて盛り上がっている。よって、本実施の形態の筐体6は、例えばポータブルコンピュータ用の代表的なポインティングデバイスであるマウスのような外観形状を有している。
【0027】
トップカバー8は、円形の開口部21を有している。開口部21は、第2の領域18の前半部分の中央部に位置している。第2の領域18のうち開口部21の左側に位置する部分は、第1の指置き部22aとなっている。同様に、第2の領域18のうち開口部21の右側に位置する部分は、第2の指置き部22bとなっている。第1および第2の指置き部22a,22bは、開口部21を間に挟んで筐体6の左右方向に振り分けられている。
【0028】
第1の指置き部22aは、リール本体5の上面6aに右手Hが載せられた場合に、右手Hの人指し指H2を受け止める。第2の指置き部22bは、リール本体5の上面6aに右手Hが載せられた場合に、右手Hの中指H3を受け止める。さらに、第1の指置き部22aは、リール本体5の上面6aに左手Hが載せられた場合に、左手Hの中指H3を受け止める。第2の指置き部22bは、リール本体5の上面6aに左手Hが載せられた場合に、左手Hの人指し指H2を受け止める
図5に左側の第1の指置き部22aを代表して示すように、第1の指置き部22aの前端は、下向きに湾曲されてロアケース7の前壁11の上端と向かい合っている。第1の指置き部22aの前端と前壁11の上端との間に隙間23が形成されている。
【0029】
したがって、例えば右手Hの人指し指H2で第1の指置き部22aを下向きに押圧すると、トップカバー8が有する可撓性により、第1の指置き部22aが隙間23の分だけ沈み込むように弾性変形する。第1の指置き部22aの押圧を解除すると、第1の指置き部22aが元の位置に弾性的に復帰する。この結果、第1の指置き部22aの前端と前壁11の上端との間に再び隙間23が生じるようになっている。
【0030】
上記のような隙間23は、図示を省略するが第2の指置き部22bの前端と前壁11の上端との間にも形成されている。よって、例えば右手Hの中指H3で第2の指置き部22bを下向きに押圧すると、第2の指置き部22bが隙間23の分だけ沈み込むように弾性変形する。
【0031】
図4に示すように、筐体6の側壁10a,10bは、夫々側面24a,24bを有している。側面24a,24bは、筐体6の左側方および右側方に露出している。筐体6の側面24a,24bの下部に夫々凹部25a,25bが形成されている。凹部25a,25bは、筐体6の前後方向に延びるとともに、その下端が底壁9に連続している。
【0032】
筐体6の左側の凹部25aは、例えば筐体6を右手Hで掴んだ時に、右手Hの親指H1を差し入れるためのものであり、側面24aよりも筐体6の内側に向けて凹んでいる。筐体6の右側の凹部25bは、例えば筐体6を右手Hで掴んだ時に、右手Hの薬指H4および小指H5を差し入れるためのものであり、側面24bよりも筐体6の内側に向けて凹んでいる。
【0033】
図2および図3に示すように、筐体6のロアケース7の前端部に合成樹脂製の支持台26がねじ止めされている。支持台26は、竿受け部27とスプール受け部28とを備えている。
【0034】
竿受け部27は、筐体6の左右方向に沿う中央部に位置している。竿受け部27は、筐体6の前方に向けて開口する支持孔29を有するとともに、釣糸ガイド30を支持している。釣糸ガイド30は、竿受け部27の上方に突出するように垂直に起立する待機位置と、この待機位置から筐体6の後方に倒れ込む動作位置との間で回動可能であり、常に待機位置に保持されている。
【0035】
支持台26のスプール受け部28は、トップカバー8の開口部21の下方において水平に配置されている。スプール受け部28の外周縁部に円筒状の起立壁31が形成されている。起立壁31の上端は、開口部21を取り囲むようにトップカバー8の下面に突き当たって、トップカバー8とスプール受け部28との間を結んでいる。
【0036】
図2に示すように、ロアケース7の底壁9にスプール軸33が支持されている。スプール軸33は、底壁9から垂直に起立するとともに、スプール受け部28を貫通してスプール受け部28の上に突出している。
【0037】
スプール軸33の上部に合成樹脂又は金属製のスプール34が回転可能に支持されている。スプール34は、リール本体5の前部において、リール本体5の左右方向の中央部に位置している。
【0038】
スプール34は、釣糸35が巻き付けられる釣糸巻回胴部36と、一対のフランジ37a,37bとを備えており、垂直なスプール軸33を中心に回転するようになっている。フランジ37a,37bは、釣糸巻回胴部36と同軸の円盤状をなすとともに、釣糸巻回胴部36を間に挟んで上下方向に向かい合っている。一方のフランジ37aは、他のフランジ37bよりも大径であり、この大径なフランジ37aがスプール受け部28の上面の上に置かれている。
【0039】
スプール軸33は、釣糸巻回胴部36を同軸状に貫通して他方のフランジ37bの上に突出している。スプール軸33の上端に袋ナット38がねじ込まれている。袋ナット38は、スプール受け部28との間でスプール34を挟み込んでおり、これによりスプール34がリール本体5の前部に回転自在に支持されている。
【0040】
スプール34は、トップカバー8の開口部21の内側に位置している。スプール34の上端に位置する他方のフランジ37bは、開口部21を通じて筐体6の第2の領域18に露出しているとともに、筐体6の上面6aから僅かに突出している。
【0041】
図3に示すように、第2の領域18の第1および第2の指置き部22a,22bは、スプール34の左側および右側に振り分けられている。そのため、第1および第2の指置き部22a,22bに人指し指H2および中指H3を載せた時に、スプール34は、人指し指H2と中指H3との間に位置される。
【0042】
さらに、図2および図6に示すように、第1および第2の指置き部22a,22bは、魚釣用リール4を側方から見た時に、リール本体5の前方に進むに従い下向きに傾斜している。このため、スプール34のフランジ37bは、第1および第2の指置き部22a,22bの上方に張り出している。
【0043】
図1および図2に示すように、竿受け部27の支持孔29に釣竿40が嵌め込まれている。釣竿40は、例えば全長が15cm程度の短いものでよく、リール本体5の前端から前方に向けて水平に突き出ている。
【0044】
釣竿40の外周面に複数の釣糸ガイド41が取り付けられている。釣糸ガイド41は、釣竿40の長手方向に間隔を存して一列に並んでいる。スプール34から繰り出された釣糸35は、リール本体5の釣糸ガイド30から釣竿40の釣糸ガイド41を経由して釣竿40の先端に導かれた後、釣竿40の先端から湖面1に開けた穴2を通じて水中に沈むようになっている。
【0045】
なお、釣糸35の先端部には、重りあるいは撚りもどしのようなストッパ42(図11に示す)が取り付けられている。ストッパ42は、釣竿40の釣糸ガイド41を通過可能であり、かつ魚釣用リール4の釣糸ガイド30は通過できないような大きさを有している。
【0046】
本実施の形態の魚釣用リール4は、好ましい例としてリール本体5に釣竿40を装着しているが、この釣竿40は必須の構成要素ではない。例えばリール本体5から釣竿を省略してもよいし、釣竿40をリール本体以外の場所、例えば台3に取り付けてもよい。
【0047】
図2に示すように、筐体6のモータ収容室13にモータ44が収容されている。モータ44は、ステータおよびロータを収容するモータハウジング45と、モータハウジング45の前端から突出する金属製の出力軸46とを有している。モータ44は、出力軸46を筐体6の前後方向に沿わせた横置きの姿勢でスプール34の後方に設置されている。
【0048】
モータ44の出力軸46は、スプール軸33の直後に位置するとともに、このスプール軸33と直交するような位置関係を保っている。出力軸46の前端部は、スプール34の一方のフランジ37aの下方に位置している。
【0049】
出力軸46の外周上に円筒状のトルク伝達部材47が同軸状に取り付けられている。トルク伝達部材47は、例えばスプール34よりも柔らかい合成樹脂又はゴム状弾性体により形成されている。トルク伝達部材47の外周面は、スプール34のフランジ37aの下面に接している。
【0050】
図2に示すように、モータ44のモータハウジング45は、ピボット軸48を有している。ピボット軸48は、モータハウシング45の後端に位置するとともに、出力軸46と直交するように筐体6の左右方向に沿って水平に延びている。ピボット軸48は、ロアケース7の軸受部49に支持されている。
【0051】
モータ44は、ピボット軸48を支点として、第1の位置と第2の位置との間で回動可能となっている。第1の位置では、図2に示すようにモータ44の出力軸46が筐体6の前後方向に沿って水平に延びており、トルク伝達部材47の外周面がスプール34のフランジ37aの下面に当接している。この当接により、モータ44の出力軸46とスプール34との間が機械的に接続されるとともに、フランジ37aとトルク伝達部材47との当接部分に摩擦抵抗が付与される。
【0052】
この結果、摩擦抵抗の存在によりスプール34の自由な回転が阻止される。さらに、モータ44が駆動されると、出力軸46のトルクがトルク伝達部材47を介してスプール34に伝わり、スプール34が釣糸35を巻き取る方向に回転する。
【0053】
一方、第2の位置では、図10に示すようにモータ44の出力軸46が前下がりとなって、トルク伝達部材47の外周面がスプール34のフランジ37aの下面から離れている。これにより、モータ44の出力軸46とスプール34との機械的な接続が解除され、トルク伝達部材47とスプール34との間に摩擦抵抗が付与されることはない。よって、スプール34は、自由な回転が許容されるフリーな状態に移行する。
【0054】
モータ44は、引っ張りコイルスプリング50を介して常に第1の位置に向けて弾性的に付勢されている。したがって、モータ44が第1の位置にある限り、トルク伝達部材47の外周面がスプール34のフランジ37aの下面に弾性的に押し付けられている。
【0055】
筐体6のバッテリ収容部14にモータ44の駆動用電源となる二本の乾電池52a,52bが収容されている。図12に示すように、乾電池52a,52bの正極に夫々正側電源ライン53a,53bが接続されている。正側電源ライン53a,53bは、正側共通電源ライン54を介してモータ44の正側端子に接続されている。
【0056】
乾電池52a,52bの負極に夫々負側電源ライン55a,55bが接続されている。負側電源ライン55a,55bは、負側共通電源ライン56を介してモータ44の負極端子に接続されている。そのため、各電源ライン53a,53b,54,55a,55b,56は、モータ44を乾電池52a,52bに並列に接続する一つの電源回路57を構成している。
【0057】
図12に示すように、正側電源ライン53a,53bと正側共通電源ライン54との間に常開形の連続巻きスイッチ58が接続されている。一方の正側電源ライン53aと正側共通電源ライン54との間に常開形の第1の一時巻きスイッチ59aが接続されている。同様に、他方の正側電源ライン53bと正側共通電源ライン54との間に常開形の第2の一時巻きスイッチ59bが接続されている。
【0058】
連続巻きスイッチ58は、筐体6の内部に収容されている。第1の一時巻きスイッチ59aは、筐体6の第1の指置き部22aの下方に配置されて、第1の指置き部22aによって開閉操作される。第2の一時巻きスイッチ59bは、筐体6の第2の指置き部22bの下方に配置されて、第2の指置き部22bによって開閉操作される。
【0059】
したがって、弾性変形が可能な第1および第2の指置き部22a,22bは、第1および第2の一時巻きスイッチ59a,59bを個別に操作する機能を兼ねている。
【0060】
正側共通電源ライン54に常閉形の船べり停止スイッチ60が配置されている。船べり停止スイッチ60は、筐体6の前端に位置する釣糸ガイド30と対向している。船べり停止スイッチ60は、釣糸ガイド30が待機位置から動作位置に回動された時に、釣糸ガイド30によって開方向に操作される。
【0061】
負側共通電源ライン56に常開形のメインスイッチ61が配置されている。メインスイッチ61は、筐体6の底壁9の下方に露出されて釣人が手の指先で操作し得るようになっている。そのため、本実施の形態では、メインスイッチ61を閉じた状態で連続巻きスイッチ58又は第1および第2の一時巻きスイッチ59a,59bを閉じると、乾電池52a,52bからモータ44に電流が流れ、モータ44が回転する。
【0062】
モータ44のトルクは、出力軸46からトルク伝達部材47に伝わる。トルク伝達部材47は、引っ張りコイルスプリング50の付勢力によりスプール34のフランジ37aの下面に押し付けられているので、トルク伝達部材47とフランジ37aとの間の接触部分に生じる摩擦力によりモータ44のトルクがスプール34に伝わる。
【0063】
この結果、連続巻きスイッチ58、第1の一時巻きスイッチ59aおよび第2の一時巻きスイッチ59bのいずれを閉じた場合でも、スプール34はモータ44のトルクを受けて釣糸35を巻き取る方向に回転する。
【0064】
図2および図7に示すように、筐体6の中間部19に合成樹脂製の切り換えレバー63が配置されている。切り換えレバー63は、釣人が右手H又は左手Hの指先で人為的に操作するスイッチ操作子の一例である。切り換えレバー63は、軸部63a、指掛け用の舌片部64、およびカム部65を備えている。
【0065】
図2に示すように、軸部63aは、筐体6の前後方向に水平に延びているとともに、スプール受け部28の後端に形成されたブラケット66と起立壁31との間に回動可能に支持されている。軸部63aは、モータ44の出力軸46およびトルク伝達部材47の真上に位置している。
【0066】
図2および図7に示すように、舌片部64は、筐体6の中間部19とスプール34との間に位置するとともに、トップカバー8に開けたスリット67を貫通して筐体6の上面6aの上に突出している。図6に示すように、舌片部64の指を載せる上端は、スプール34の上端に位置するフランジ37bよりも高さhだけ上方に位置している。さらに、舌片部64は、釣人が筐体6の上面6aに右手Hを載せた時に、人指し指H2の付け根と中指H3の付け根とで規定されるV形の隙間68に位置するようになっている。
【0067】
本実施の形態では、筐体6の上面6aのうち切り換えレバー63が位置する部分は、スプール34の上端に位置するフランジ37bと同じ高さ位置、又はフランジ37bよりも僅かに上方に位置している。
【0068】
カム部65は、外周縁部70、第1のカムノーズ71および第2のカムノーズ72を備えている。外周縁部70は、舌片部64に対して軸部63aを間に挟んだ反対側に位置するとともに、軸部63aを中心とする円弧を描くように湾曲している。外周縁部70は、トルク伝達部材47の外周面との間に僅かな隙間を存してトルク伝達部材47と向かい合っている。
【0069】
第1のカムノーズ71は、外周縁部70の一端に位置している。第1のカムノーズ71は、連続巻きスイッチ58と向かい合うように、外周縁部の一端から軸部63aの径方向外側に向けて突出している。
【0070】
第2のカムノーズ72は、外周縁部70の他端に位置している。第2のカムノーズ72は、軸部63aを中心とする円弧を描くように湾曲しているとともに、外周縁部70よりも軸部63aの径方向外側に僅かに張り出している。外周縁部70と第2のカムノーズ72との境界部分には、トルク伝達部材47の外周面に沿うように湾曲する段差73が形成されている。
【0071】
切り換えレバー63は、軸部63aを支点として第1ないし第3の切り換え位置P1,P2,P3のいずれかの位置に選択的に回動操作される。図7は、切り換えレバー63が第1の切り換え位置P1に回動された状態を開示している。第1の切り換え位置P1では、切り換えレバー63の舌片部64が垂直に起立するとともに、カム部65の段差73がトルク伝達部材47の外周面に突き当たっている。
【0072】
この時、段差73は、トルク伝達部材47に対し単に上方から接しているだけであり、トルク伝達部材47は、引っ張りコイルスプリング50の付勢力を受けてスプール34のフランジ37aに弾性的に押し付けられている。そのため、スプール34は、フランジ37aとトルク伝達部材47との間の接触部分に生じる摩擦抵抗により自由な回転が阻止されている。
【0073】
さらに、第1の切り換え位置P1では、第1のカムノーズ71が連続巻きスイッチ58から離れている。よって、連続巻きスイッチ58は開状態を維持している。
【0074】
図8は、切り換えレバー63が第2の切り換え位置P2に回動された状態を開示している。第2の切り換え位置P2では、切り換えレバー63の舌片部64が筐体6の左側に倒されて、トルク伝達部材47の外周面とカム部65の外周縁部70との接触位置が相対的に変化している。この時、トルク伝達部材47は、引っ張りコイルスプリング50の付勢力を受けてスプール34のフランジ37aに弾性的に押し付けられている。
【0075】
さらに、第2の切り換え位置P2では、切り換えレバー63の第1のカムノーズ71が連続巻きスイッチ58に接触し、第1のカムノーズ71によって連続巻きスイッチ58が閉じられる。したがって、メインスイッチ61が閉じている時に、切り換えレバー63を指先で第2の切り換え位置P2に保持しておけば、乾電池52a,52bからモータ44に電流が流れて、スプール34が釣糸35を巻き取る方向に連続して回転される。
【0076】
図9は、切り換えレバー63が第3の切り換え位置P3に移動された状態を開示している。第3の切り換え位置P3では、切り換えレバー63の舌片部64が筐体6の右側に倒されて、第1のカムノーズ71が連続巻きスイッチ58から上方に離脱している。そのため、連続巻きスイッチ58が閉状態から開状態に移行し、モータ44に対する電流の供給が断たれる。
【0077】
それとともに、切り換えレバー63の回動に伴い、第2のカムノーズ72がトルク伝達部材47の外周面に乗り上げ、トルク伝達部材47を強制的に押し下げる。これにより、モータ44がピボット軸48を支点に第1の位置から第2の位置に向けて回動し、トルク伝達部材47がスプール34のフランジ37aから離脱する。よって、フランジ37aに作用する摩擦力が失われるので、スプール34の自由な回転が許容され、スプール34からの釣糸35の繰り出しが可能となる。
【0078】
切り換えレバー63が第3の切り換え位置P3にある時に、例えば右手Hの人指し指H2で第1の指置き部22aを押し下げて第1の一時巻きスイッチ59aを閉じると、乾電池52a,52bからモータ44に電流が流れて、トルク伝達部材47が図9の矢印方向に回転する。
【0079】
この回転により、トルク伝達部材47と第2のカムノーズ72との間の接触部分に生じる摩擦力により、切り換えレバー63が軸部63aを中心に図9の時計周り方向に回転する。よって、切り換えレバー63が第3の切り換え位置P3から第1の切り換え位置P1に自動的に復帰し、トルク伝達部材47の外周面がスプール34のフランジ37aの下面に再び接触する。
【0080】
この結果、第1又は第2の一時巻きスイッチ59a,59bが閉じている限り、スプール34が釣糸35を巻き取る方向に回転する。
【0081】
魚釣用リール4を用いて例えばワカサギを釣るに当たっては、リール本体5に釣竿40を装着し、かつ釣糸35に仕掛けをセットした後、メインスイッチ61を閉じる。次に、魚釣用リール4を釣場に設置された台3の上に置き、筐体6の上面6aに例えば右手Hを添えるように宛がう。
【0082】
具体的には、上面6aの第1の領域17に右手Hの手の平Pを当てるとともに、人指し指H2および中指H3を夫々第1および第2の指置き部22a,22bの上に載せる。さらに、親指H1を筐体6の左側の凹部25aに差し入れるとともに、薬指H4および小指H5を筐体6の右側の凹部25bに差し入れ、右手Hで筐体6を全体的に包み込むように把持する。
【0083】
次に、例えば人指し指H2で切り換えレバー63を第3の切り換え位置P3に回動させる。この回動により、カム部65の第2のカムノーズ72によってトルク伝達部材47が押し下げられ、トルク伝達部材47がスプール34のフランジ37aから離脱する。
【0084】
この結果、スプール34がフリーとなり、スプール34に巻き付けられた釣糸35が仕掛けにより引っ張られてスプール34から繰り出されるとともに、仕掛けが湖面1に開けた穴2から水中に沈降される。
【0085】
仕掛けが狙った水深に達したところで、例えば人指し指H2で切り換えレバー63を第3の切り換え位置P3から第1の切り換え位置P1に戻す。これにより、引っ張りコイルスプリング50の付勢力によりトルク伝達部材47がスプール34のフランジ37aに押し付けられ、スプール34の自由な回転が制限される。この結果、スプール34からの釣糸35の繰り出しが停止されるので、このままの状態であたりを待つ。
【0086】
この時、人指し指H2又は中指H3でトップカバー8の第1の指置き部22a又は第2の指置き部22bを押し下げると、第1の一時巻きスイッチ59a又は第2の一時巻きスイッチ59bが閉じる。そのため、第1の指置き部22a又は第2の指置き部22bを押し下げている限り、スプール34が釣糸35を巻き取る方向に回転するので、釣糸35の弛みを除去することができる。
【0087】
あたりを待つ時、釣人は台3の上に置かれた魚釣用リール4のリール本体5を右手Hで握ったまま、例えばポータブルコンピュータ用のマウスを操作するようにリール本体5を左右に動かしたり、あるいはリール本体5を上下に振るように動かしてリール本体5で台3の上面3aを叩き、水中の仕掛けを動かすことによりワカサギを誘う。
【0088】
あたりが来たら、右手Hで把持したリール本体5を持ち上げて合わせる。仕掛けにワカサギが掛かった段階で、例えば人指し指H2で切り換えレバー63を第1の切り換え位置P1から第2の切り換え位置P2に回動させ、切り換えレバー63の第1のカムノーズ71で連続巻きスイッチ58を閉じる。あるいは、人指し指H2又は中指H3でトップカバー8の第1の指置き部22a又は第2の指置き部22bを押し続けて、第1の一時巻きスイッチ59a又は第2の一時巻きスイッチ59bを閉じる。
【0089】
この結果、スプール34がモータ44を介して釣糸35を巻き取る方向(図の矢印方向)に回転(正転)し、水中の仕掛けが次第に引き上げられる。
【0090】
釣糸35をスプール34に巻き取っている時に、釣糸35の先端側に位置する重りや撚り戻しのようなストッパ42が魚釣用リール4の直前に達すると、図11に示すように、ストッパ42が待機位置に保持された釣糸ガイド30を通過できずに、この釣糸ガイド30に引っ掛かる。
【0091】
このため、釣糸ガイド30が釣糸35の巻き取り動作に追従して待機位置から動作位置に向けて倒れ込む。釣糸ガイド30が動作位置に達すると、この釣糸ガイド30によって船べり停止スイッチ60が開かれ、モータ44に対する電流の供給が断たれる。この結果、釣糸35の巻き取りが停止され、仕掛けはスプール34に巻き込まれることなく魚釣用リール4の直前で停止する。
【0092】
仕掛けがスプール34の直前で停止したり、あるいは釣人が仕掛けの引き上げを確認したら、例えば人指し指H2で切り換えレバー63を第2の切り換え位置P2から第1の切り換え位置P1に回動させ、スプール34の自由な回転を制限する。最後に仕掛けを手で摘み上げて、仕掛けに掛かったワカサギを取り出す。
【0093】
このような本発明の第1の実施の形態によれば、モータ44を介して釣糸35を巻き取る方向にスプール34を回転させる操作およびスプール34の自由な回転を許容したり、スプール34の自由な回転を阻止する操作を、一つの切り換えレバー63を回動させることで実行できる。
【0094】
この際、切り換えレバー63の舌片部64は、リール本体5の上面6aにおいてスプール34の直後に位置するとともに、スプール34の上端に位置するフランジ37bよりも上方に飛び出ている。このため、切り換えレバー63を右手Hの指先で第3の切り換え位置P3に回動させて、スプール34から釣糸35を繰り出している最中に、仕掛けの沈降速度を遅くしたり、スプール34の空回りを防止する必要が生じた時には、図6に矢印で示すように、切り換えレバー63の舌片部64に添えていた右手Hの指先を単に前方にずらすだけで、この指先がスプール34のフランジ37bに届く。
【0095】
同様に、切り換えレバー63を右手Hの指先で第2の切り換え位置P2に回動させて、釣糸35を巻き取る方向にスプール34を回転させている最中に、例えば仕掛けに掛かったワカサギの口切れを防止するためスプール34の回転を遅くする必要が生じた時には、切り換えレバー63の舌片部64に添えていた右手Hの指先を単に前方にずらすだけで、この指先がスプール34のフランジ37bに届く。
【0096】
このため、指先の移動範囲が少なくて済み、釣糸35の繰り出し時、および巻き取り時のいずれにおいても、手の指先を素早く切り換えレバー63からフランジ37bに移動させて、的確なタイミングでサミング操作に移行することができる。すなわち、手の指先でスプール34の回転を規制することで、仕掛けの沈下速度や引き上げ速度を自由に調節することができる。
【0097】
したがって、切り換えレバー63の回動操作およびサミング操作を連続した一つの動作で素早く行うことができ、魚釣用リール4の操作性が格段に向上する。
【0098】
さらに、上記構成の魚釣用リール4によると、リール本体5の筐体6の上面6aの第1の領域17は、筐体6の後端から切り換えレバー63に向けて滑らかな円弧を描いて上向きに傾斜している。そのため、釣人が右手H又は左手Hを魚釣用リール4の後方から差し出して、指を前方に向けた状態で手の平Pを上面6aの第1の領域17に宛がった時に、手首が不自然な姿勢に持ち上がったり、折れ曲がることはない。
【0099】
すなわち、手の平Pが第1の領域17の傾斜に合うように前方(指の方向)に上向きに傾斜した状態となって、手の平Pを筐体6の上面6aで自然に受け止めることができる。これにより、指の付け根が前方に上向きとなって、上面6aに対し指を動かす余裕(空間)を確保することができる。よって、人指し指H2および中指H3を上下に動かし易くなり、切り換えレバー63、第1の指置き部22aおよび第2の指置き部22bの操作性が良好となる。
【0100】
それとともに、切り換えレバー63又は第1および第2の指置き部22a,22bに添えていた指先をスプール34のフランジ34bに移動させる際の操作性も良好となり、使い易い魚釣用リール4を提供できる。
【0101】
さらに、魚釣用リール4を手の平Pをその前方の指の方向が上向きとなるように宛がって把持できるため、この魚釣用リール4をしっかりと支えることができる。そのため、魚釣用リール4を水の中に落としてしまうといった不具合を回避できる。
【0102】
加えて、トップカバー8の第1および第2の指置き部22a,22bは、前方に進むに従い下向きに傾斜している。このため、第1および第2の指置き部22a,22bに人指し指H2および中指H3を宛がうことで、リール本体5の前部を台3の上面3aにしっかりと押さえ付けることができる。この結果、リール本体5を安定した姿勢で把持することができ、リール本体5を台3の上で左右に動かしたり、上下に振る操作をポータブルコンピュータ用のマウスと同じような感覚で容易に行なうことができる。
【0103】
したがって、魚釣用リール4の操作性が良好となり、あたりに対して素早い対応が可能となる。
【0104】
さらに、筐体6の左右の側面24a,24bに形成された凹部25a,25bに親指H1、薬指H4および小指H5dを差し入れることで、筐体6を右手H又は左手Hで確実に掴むことができる。
【0105】
特に筐体6を台3の上から持ち上げようとした場合に、凹部25a,25bに親指H1、薬指H4および小指H5dが引っ掛かるので、魚釣用リール4が右手H又は左手Hから脱落し難くなり、素早い手の動きに対しても無理なく対応することができる。
【0106】
本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0107】
例えばスイッチ操作子は、左右に動かすレバーに限らず、前後に動かすレバーとしてもよい。それとともに、スイッチ操作子は、回動操作の他、スライド操作するものや、上下に押圧操作するものであってもよい。
【0108】
図13は、本発明の第2の実施の形態を開示している。この第2の実施の形態は、スプール34の姿勢に関する事項が上記第1の実施の形態と相違しており、それ以外の魚釣用リール4の基本的な構成は第1の実施の形態と同様である。そのため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0109】
図13に示すように、スプール34は、そのスプール軸33を水平にした横置きの姿勢でリール本体5の前部に回転自在に支持されている。スプール軸33は、リール本体5の左右方向に沿って延びている。スプール34は、釣糸巻回胴部36を間に挟んで向かい合う一対のフランジ80(一方のみを図示)を有している。フランジ80は、釣糸巻回胴部36と同軸の円盤状をなしており、その外周縁の上部がトップカバー8の開口部21からリール本体5の外に突出している。
【0110】
詳しく述べると、フランジ80の外周縁の上部は、筐体6の上面6aの頂部20と同等の高さあるいは頂部20よりも少しだけ低い位置において、開口部21から筐体6の第2の領域18に露出している。
【0111】
さらに、切り換えレバー63の舌片部64は、スプール34よりも後方にずれた位置で筐体6の上面6aの上に突出している。舌片部64の上端は、スプール34のフランジ80の外周縁の上部よりも高さhだけ上方に位置している。
【0112】
このような構成によると、舌片部64の上端に指先を添えてスプール34から釣糸35を繰り出している最中に、仕掛けの沈降速度を遅くしたり、スプール34の空回りを防止する必要が生じた時には、図13に矢印で示すように、舌片部64に添えていた指先を単に前方にずらすだけで、この指先がフランジ80の外周縁の上部に届く。
【0113】
同様に、切り換えレバー63を指先で第2の切り換え位置P2に回動させて、釣糸35を巻き取る方向にスプール34を回転させている最中に、例えば仕掛けに掛かったワカサギの口切れを防止するためスプール34の回転を遅くする必要が生じた時には、舌片部64に添えていた指先を単に前方にずらすだけで、この指先がフランジ80の外周縁の上部に届く。
【0114】
このため、上記第1の実施の形態と同様に、釣糸35の繰り出し時、および巻き取り時のいずれにおいても、手の指先を素早く切り換えレバー63からフランジ80に移動させて、的確なタイミングでサミング操作に移行することができる。
【0115】
本発明に係る魚釣用リールにおいて、スプールの左右両側に位置する第1および第2の一時巻きスイッチは必須の構成要素ではなく、適宜省略することができる。
【0116】
さらに、上記第1の実施の形態では、リール本体の底壁に脚を設けて、これら脚を台の上面に接触させているが、脚を省略してリール本体の底壁を台の上面に直に接触させ、この底壁を接地部として利用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施の形態において、魚釣用リールを台の上に置いて使用している状態を示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る魚釣用リールの断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る魚釣用リールの平面図。
【図4】図1のF4-F4線に沿う魚釣用リールの断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態において、トップカバーの第1の指置き部と第1の一時巻きスイッチとの位置関係を示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態において、切り換えレバーの舌片部に宛がった人指し指をリールのフランジに移動させる時の様子を示す魚釣用リールの側面図。
【図7】本発明の第1の実施の形態において、切り換えレバーが第1の切り換え位置に回動された状態を図6のF7-F7線に沿って示す断面図。
【図8】本発明の第1の実施の形態において、切り換えレバーが第2の切り換え位置に回動された状態を示す断面図。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、切り換えレバーが第3の切り換え位置に回動された状態を示す断面図。
【図10】本発明の第1の実施の形態において、切り換えレバーによりトルク伝達部材が押し下げられて、トルク伝達部材がスプールから切り離された状態を示す魚釣用リールの断面図。
【図11】本発明の第1の実施の形態において、リール本体の前端に位置する釣糸ガイドに釣糸上のストッパが引っ掛かった状態を示す魚釣用リールの断面図。
【図12】本発明の第1の実施の形態において、モータの駆動系統を示す回路図。
【図13】本発明の第2の実施の形態において、スプールの周りを破断して示す魚釣用リールの側面図。
【符号の説明】
【0118】
3a…載置面(上面)、5…リール本体、6a…上面、16a,16b…接地部(脚)、34…スプール、35…釣糸、36…釣糸巻回胴部、37a,37b,80…フランジ、44…モータ、63…スイッチ操作子(切り換えレバー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面の上に置かれる接地部と、手を載せる上面と、を有するリール本体と、
上記リール本体の前部に設けられ、釣糸が巻き付けられる釣糸巻回胴部と、この釣糸巻回胴部を間に挟んで向かい合う一対のフランジと、を有するスプールと、
上記釣糸を巻き取る方向に上記スプールを回転させるモータと、
上記リール本体の上面に設けられ、手の指先で人為的に操作することで上記スプールの回転を制御するスイッチ操作子と、を具備する魚釣用リールであって、
上記スプールは、少なくとも一方のフランジが上記リール本体の外に露出するように上記リール本体の前部に配置され、上記スイッチ操作子は、上記スプールよりも上記リール本体の後方にずれて位置するとともに、上記スプールよりも上記リール本体の上方に向けて突出していることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
請求項1の記載において、上記リール本体の上面は、上記リール本体の後端から上記スイッチ操作子の方向に進むに従い上向きに傾斜する第1の領域を有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項3】
請求項2の記載において、上記リール本体の上面は、上記スイッチ操作子から上記リール本体の前方に進むに従い下向きに傾斜する第2の領域を含み、この第2の領域は、上記スプールの左側および右側に振り分けられた第1および第2の指置き部を有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項4】
請求項3の記載において、上記リール本体の上面は、上記第1の領域と上記第2の領域との間の境界に位置する中間部を有し、この中間部は、上記リール本体の上面のうち上記リール本体の上方に最も突出する頂部を含むとともに、上記スイッチ操作子は、上記頂部と上記スプールとの間に位置することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項の記載において、上記リール本体の上面のうち上記スイッチ操作子が位置する部分は、上記スプールの上端と同じ高さ位置又は上記スプールの上端よりも上方に位置することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項の記載において、上記リール本体は、左右の側面を有し、これら左右の側面に夫々指掛け用の凹部が形成されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項7】
請求項1の記載において、上記スイッチ操作子は、上記スプールを上記モータにより上記釣糸を巻き取る方向に回転させる位置と、上記スプールの自由な回転を許容する位置と、に切り換え操作が可能であることを特徴とする魚釣用リール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−68788(P2010−68788A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243265(P2008−243265)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】