説明

魚類由来の不凍タンパク質

【課題】
不凍タンパク質を容易に入手可能な魚種から採取し、不凍タンパク質の利用促進を図る。
【課題解決手段】
日本国内、日本近海水域、あるいは該水域と同等気候域の水域に生息する魚種、特に、ギスカジカ属、ツマグロカジカ属、ヨコスジカジカ属、サラサカジカ属、ワカサギ属、シシャモ属、カラフトシシャモ属、ホッケ属、メバル属、ニシン属、マコガレイ属、クロガレイ属、サメガレイ属、ソウハチ属、ババガレイ属、シュムシュガレイ属、ヌマガレイ属、イシガレイ属、ムシガレイ属、マダラ属、スケトウダラ属、イカナゴ属、シワイカナゴ属、マアジ属、シチロウウオ属、ニシキギンポ属、オキカズナギ属、ナガガジ属、ドロギンポ属、ムロランギンポ属から選ばれた魚種から不凍タンパク質を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本国内またはその周辺の水域に生息する魚類であって、ギスカジカ属(Myoxocephalus)、ツマグロカジカ属(Gymnocanthus)、ヨコスジカジカ属(Hemilepidotus)、サラサカジカ属(Furcina)、ワカサギ属(Hypomesus)、シシャモ属(Spirinchus)、カラフトシシャモ属(Mallotus)、ホッケ属(Pleurogrammus)、メバル属(Sebastes)、ニシン属(Clupea)、マコガレイ属(Limanda)、クロガレイ属(Liopsetta)、サメガレイ属(Clidoderma)、ソウハチ属(Cleisthenes)、ババガレイ属(Microstomus)、シュムシュガレイ属(Lepidopsetta)、ヌマガレイ属(Platichthys)、イシガレイ属(Kareius)、ムシガレイ属(Eopsetta)、マダラ属(Gadus)、スケトウダラ属(Theragra)、イカナゴ属(Ammodytes)、シワイカナゴ属(Hypoptychus)、マアジ属(Trachurus)、シチロウウオ属(Brachyopsis)、ニシキギンポ属(Pholis)、オキカズナギ属(Opisthocentrus)、ナガガジ属(Zoarces)、ドロギンポ属(Ascoldia)、またはムロランギンポ属(Pholidapus)に属する魚種、さらに具体的には、ギスカジカ(Myoxocephalus stelleri Tilesius)、ツマグロカジカ(Gymnocanthus herzensteini Jordan et Starks)、トゲカジカ(Myoxocephalus polyacanthocephalus (Pallas))、ナメヨコスジカジカ(Hemilepidotus jordani Bean)、キヌカジカ(Furcina osimae Jordan et Starks)、チカ(Hypomesus pretiosus japonicus (Brevoort))、イシカリワカサギ(Hypomesus olidus (Dallas))、シシャモ(Spirinchus lanceolatus (Hikita))、カラフトシシャモ(Mallotus villosus (Muller))、キタノホッケ(Pleurogrammus monopterygius (Pallas))、ヤナギノマイ(Sebastes steindachneri Hilgendorf)、ニシン(Clupea pallasii Valenciennes)、マガレイ(Limanda herzensteini Jordan et Snyder)、スナガレイ(Limanda punctatissima (Steindachner))、クロガシラガレイ(Limanda schrenki Schmidt)、コガネガレイ(Limanda aspera (Pallas))、クロガレイ(Liopsetta obscura (Herzenstein))、サメガレイ(Clidoderma asperrimum (Temminck et Schlegel))、ソウハチ(Cleisthenes pinetorum herzensteini (Schmidt))、ババガレイ(Microctomus achne (Jordan et Starks))、アサバガレイ(Lepidopsetta mochigarei Snyder)、ヌマガレイ(Platichthys stellatus (Pallas))、イシガレイ(Kareius bicoloratus (Basilewsky))、ムシガレイ(Eopsetta grigorjewi (Herzenstein))、マダラ(Gadus macrocephalus Tilesius)、スケトウダラ(Theragra chalcogramma (Pallas))、イカナゴ(Ammodytes personatus Girard)、シワイカナゴ(Hypoptychus dybowskii Steindachner)、マアジ(Trachurus japonicus (Temminck et Schlegel))、シチロウウオ(Brachyopsis rostratus (Tilesius))、ニシキギンポ(Pholis picta (Kner))、ガジ(Opisthocentrus ocellatus (Tilesius))、ナガガジ(Zoarces elongatus Kner)、ドロギンポ(Ascoldia variegata knipowitschi Soldatov)、またはムロランギンポ(Pholidapous dybowskii (Steindachner))に属する魚種から不凍タンパク質を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで北極海や南極海、北米沖などで漁獲される魚類の組織液(血液)から、凍結寸前状態において組織液中に生成する無数の小さい氷結晶の表面に特異的に結合しダイヤモンド型に変形することで凍結を阻害し、その結果としてこのタンパク質を含む水溶液の見かけの凝固点を降下させる働きをもつ不凍タンパク質(Anti freeze Protein、略称AFP)とよばれるタンパク質がみつかっている。その魚類とは、タラ(タイセイヨウダラ、英名:Atlantic cod (Gadus morhua Linneaeus))、カレイ(プセウドプレウロネクテス アメリカヌス、英名:Winter flounder (Pseudopleuronectes americanus (Walbaum)))、ニシン(タイセイヨウニシン、英名:Atlantic herring (Clupea harengus Linnaeus))、キュウリウオ(キュウリウオ、英名:Rainbow smelt (Osmerus mordax dentex Steindachner))、カジカ(ミオクソケファルススコルピウス、英名:Shorthorn Sculpin (Myoxocephalus scorpius (Linnaeus)、マクロゾアルケルスアメリカヌス(Macrozoarces americanus (Block et Schneider))、ミオクソケファルスオクトデケンスピノスス、英名:Longhorn Sculpin (Myoxocephalus octodecemspinosus (Mitchill))、ヘミトリプテルス アメリカヌス、英名:Athlantic sea raven (Hemitripterus americanus (Gmelin)))などである(Fletcher, G.L., Hew, C.L., and Davies, P.L. Annu. Rev. Physiol. (2001) 63, 359-390.)。このように、不凍タンパク質は限られた魚種について見いだされているにすぎず、また上記の魚種の殆どは日本では得られない種類であり、地球上に存在する2万種類以上もの膨大な魚種について不凍タンパク質の存在が十分に探索されているとはいい難い。
【0003】
一方、不凍タンパク質は魚類以外にもニンジンやダイコン、キャベツなどの冬野菜および甲虫や蛾の幼虫の体液にも存在することが知られている。植物から抽出される不凍タンパク質は魚類由来のものにくらべて氷結晶結合能力が著しく弱い。不凍タンパク質は氷の再結晶化を妨げるはたらきがあるため例えばアイスクリームなどに混入することによりその品質を持続させると考えられる。より効率的に再結晶化を妨げるためにはより強力な氷結晶結合能を有する不凍タンパク質を混入する必要があるが、能力の弱い植物由来のものでは効果が期待できない。これに対して、魚類由来の不凍タンパク質には充分な効果が期待できる。しかし、現在まで不凍タンパク質が見いだされている魚種は、極緯度地方あるいは寒帯域に生息する魚種がほとんどであり、温帯域である日本近海で大量に漁獲され、あるいは食品スーパーなどで大量に販売・廃棄される魚種から不凍タンパク質を分離、精製し、この不凍タンパク質を利用することが望まれていた。
また、魚類由来の不凍タンパク質の精製物を冷凍食品などに用いる場合には、精製物に魚特有の臭いが付着することを防止する必要があるが、このための魚体の保管方法や精製法についての研究はほとんど進んでいない。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、日本近海等で大量に漁獲され、あるいは食品スーパーなどで大量に販売・廃棄される魚種から新たな不凍タンパク質を見いだすことであり、また、これらから不凍タンパク質を大量に生産するとともに、魚臭の付着を防止して、その利用の促進を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況において、本発明者は、日本、あるいは日本周辺で漁獲される魚種の体液成分について鋭意研究を行っていたところ、意外にも温帯域である日本あるいは日本周辺で漁獲される魚種であっても、特に冬季に漁獲されるものの中には、不凍タンパク質を有するものがあることを初めて見いだした。本発明者はこれまでに不凍タンパク質の存在が報告された例の無い魚種であるギスカジカ、ツマグロカジカ、トゲカジカ、ナメヨコスジカジカ、キヌカジカ、チカ、イシカリワカサギ、シシャモ、キタノホッケ、ヤナギノマイ、ニシン、マガレイ、スナガレイ、クロガシラガレイ、コガネガレイ、クロガレイ、サメガレイ、ソウハチ、ババガレイ、アサバガレイ、ヌマガレイ、イシガレイ、ムシガレイ、マダラ、スケトウダラ、イカナゴ、シワイカナゴ、マアジ、シチロウウオ、ニシキギンポ、ガジ、ナガガジ、ドロギンポ、ムロランギンポ等の様々な魚種の組織液および筋肉をすりつぶした液、および食品スーパーなどで乾製品として売られているスケトウダラ、コマイ、シシャモ、カラフトシシャモ、ニシン、イカナゴ、コガネガレイ、ウルメイワシなどの魚肉乾製品を粉砕して水を加えた液のなかに、ダイヤモンド型の氷結晶を生成する成分があることを確認して、本発明を完成させるに至ったものである。なかでもワカサギは淡水魚であり、ダイヤモンド型氷結晶を生成する不凍タンパク質が淡水魚に見出された例はこれまでに報告が無いものである。また、さらに、魚類由来の不凍タンパク質の問題点である魚臭の付着についても、新しい精製法を確立して、該問題点を解消したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
(1)ツマグロカジカ属(Gymnocanthus)、ヨコスジカジカ属(Hemilepidotus)、サラサカジカ属(Furcina)、ワカサギ属(Hypomesus)、シシャモ属(Spirinchus)、カラフトシシャモ属(Mallotus)、ホッケ属(Pleurogrammus)、メバル属(Sebastes)、マコガレイ属(Limanda)、クロガレイ属(Liopsetta)、サメガレイ属(Clidoderma)、ソウハチ属(Cleisthenes)、ババガレイ属(Microstomus)、シュムシュガレイ属(Lepidopsetta)、ヌマガレイ属(Platichthys)、イシガレイ属(Kareius)、ムシガレイ属(Eopsetta)、スケトウダラ属(Theragra)、イカナゴ属(Ammodytes)、シワイカナゴ属(Hypoptychus)、マアジ属(Trachurus)、シチロウウオ属(Brachyopsis)、ニシキギンポ属(Pholis)、オキカズナギ属(Opisthocentrus)、ナガガジ属(Zoarces)、ドロギンポ属(Ascoldia)、またはムロランギンポ属(Pholidapus)に属する魚種の魚体から、凍結を阻害する機能を有するタンパク質を回収することを特徴とする、凍結を阻害する機能を有するタンパク質の製造方法。
(2)ギスカジカ(Myoxocephalus stelleri Tilesius)、ツマグロカジカ(Gymnocanthus herzensteini Jordan et Starks)、トゲカジカ(Myoxocephalus polyacanthocephalus (Pallas))、ナメヨコスジカジカ(Hemilepidotus jordani Bean)、キヌカジカ(Furcina osimae Jordan et Starks)、チカ(Hypomesus pretiosus japonicus (Brevoort))、イシカリワカサギ(Hypomesus olidus (Dallas))、シシャモ(Spirinchus lanceolatus (Hikita))、カラフトシシャモ(Mallotus villosus (Muller))、キタノホッケ(Pleurogrammus monopterygius (Pallas))、ヤナギノマイ(Sebastes steindachneri Hilgendorf)、ニシン(Clupea pallasii Valenciennes)、マガレイ(Limanda herzensteini Jordan et Snyder)、スナガレイ(Limanda punctatissima (Steindachner))、クロガシラガレイ(Limanda schrenki Schmidt)、コガネガレイ(Limanda aspera (Pallas))、クロガレイ(Liopsetta obscura (Herzenstein))、サメガレイ(Clidoderma asperrimum (Temminck et Schlegel))、ソウハチ(Cleisthenes pinetorum herzensteini (Schmidt))、ババガレイ(Microctomus achne (Jordan et Starks))、アサバガレイ(Lepidopsetta mochigarei Snyder)、ヌマガレイ(Platichthys stellatus (Pallas))、イシガレイ(Kareius bicoloratus (Basilewsky))、ムシガレイ(Eopsetta grigorjewi (Herzenstein))、マダラ(Gadus macrocephalus Tilesius)、スケトウダラ(Theragra chalcogramma (Pallas))、イカナゴ(Ammodytes personatus Girard)、シワイカナゴ(Hypoptychus dybowskii Steindachner)、マアジ(Trachurus japonicus (Temminck et Schlegel))、シチロウウオ(Brachyopsis rostratus (Tilesius))、ニシキギンポ(Pholis picta (Kner))、ガジ(Opisthocentrus ocellatus (Tilesius))、ナガガジ(Zoarces elongatus Kner)、ドロギンポ(Ascoldia variegata knipowitschi Soldatov)、またはムロランギンポ(Pholidapous dybowskii (Steindachner))に属する魚種の魚体から、凍結を阻害する機能を有するタンパク質を回収することを特徴とする、凍結を阻害する機能を有するタンパク質の製造方法。
(3)魚体乾物から凍結を阻害する機能を有するタンパク質を回収することを特徴とする、上記(1)または(2)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
不凍タンパク質は、上記したとおり、例えばアイスクリーム、冷凍食品等における氷晶の成長による食味劣化、組織破壊を防止し、また、氷スラリーを使用する冷熱供給システムあるいは冷熱蓄熱等において、氷の再結晶による配管系の閉塞を解消し得る有効な添加剤として期待されているものである。さらに卵子や精子、移植臓器等の低温長期保存冷凍保存においても有望な物質である。
しかし、現状では、効力の大きい不凍タンパク質は、極地方に生息する特定の魚種にしか見いだされていないため、大量には生産し得ずその有効利用が妨げられていた。これに対して、本発明の新たな不凍タンパク質は、日本国内、日本近海水域、該水域と同等気候の水域に生息する魚種から生産できるので、容易に得られるものであり、不凍タンパク質についての利用促進あるいは不凍タンパク質の応用研究の発展に大いに寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
北極、南極あるいはその近海などの局地や深海に生息する魚類の体液は、温度がマイナス2℃程度まで下がっても凍結しない。これに対して普通の魚の体液はマイナス0.8℃で凍結する。なお、海水はマイナス1.9℃で凍結する。
北極、南極等に生息する魚類の体液の不凍性は、これら魚類が自ら生産する不凍タンパク質あるいは不凍糖蛋白質(AFGP)に起因するものであることが明らかになっている。このうち不凍タンパク質には、4つのタイプのタンパク質があり、それぞれ分子量約3,000−4,500のAFPI、分子量約20,000のAFPII、分子量約7,000のAFPIII、および分子量約11,000のAFPIVに分類されている。AFGPの分子量は2,200から33,000の間である。精製されたタンパク質がAFGPであるか否かはシッフ試薬などを用いることで容易に確認することが出来る。不凍タンパク質は各々、タンパク質のアミノ酸組成およびその高次構造において差異があり、また、同一タイプに分類されているものであっても、魚種によりタンパク質のアミノ酸配列および高次構造はそれぞれ相違する。
一方、不凍タンパク質の機能について述べると、通常の場合、氷晶は、水溶液中において氷核が表れると、まず扁平な六角の板状に成長する。板状平面に対し垂直方向への成長は、板状平面方向に対する成長に比べ100倍程度遅い。これに対して、水溶液中に不凍タンパク質が存在すると円盤平面方向への氷晶の成長は阻止され、最初に形成された板状体を基底面として、この基底面に対して垂直方向に、順次、より小さい板状体が積み重ねられていき、最終的にはピラミッドを二つ重ねたバイピラミッド型の氷晶にゆっくりと成長していく。
【0009】
したがって、注目する魚種検体から採取した水溶液中に不凍タンパク質が存在している場合に限り、検体液を零度C以下にした場合、その検体液中には図1A,Bに示すようなバイピラミダル氷結晶、結晶学的には六方両錐体(図1A)や偏四角面体(図1B)と呼ばれる氷結晶が顕微鏡下に観測される。不凍タンパク質が有する氷結晶上の12枚の氷層平面に特異的に結合する能力の結果として、このようなバイピラミダル型氷結晶が生成する。零度C以下の凍結温度域において、微視的には、検体液中の不凍タンパク質が互いに結びつかない無数のバイピラミダル氷結晶を生成している。このことが、巨視的には、検体の非凍結現象(不凍活性)として観測される。この現象は、浸透圧計(オスモメーター)を用いることにより検体液の凝固点降下あるいは温度ヒステリシスとして定量化することもできる。凝固点降下の測定法を用いて不凍タンパク質の存在を見出しその活性を評価する為には、高純度の精製不凍タンパク質水溶液を得る必要がある。これに対してバイピラミダル氷結晶観測による不凍活性評価法は、不凍タンパク質さえ存在していれば、たとえ検体液に多量の不純物、共雑タンパク質、イオンなどが混在していても観測される。また、不凍タンパク質の濃度が0.1mM以上であれば濃度によらずバイピラミダル氷結晶が観測される。したがって、検体すなわち注目する魚種が不凍タンパク質を有するかいなかを評価する為のもっとも簡便で迅速な手法は、検体液のバイピラミダル氷結晶を観測することということができる。
【0010】
本発明の不凍タンパク質の採取源とした魚種においては、凍結温度においていずれも、その血液、すり身、あるいは乾物の検体液中にバイピラミダル氷結晶の存在が確認されている。
本発明において、日本国内またはその周辺の水域に生息する多様な魚種から不凍タンパク質を見いだしたことは画期的なものであって、この結果からみて、北半球、南半球を問わず、少なくとも上記水域と同等な気候を有する水域において生息するものにおいては不凍タンパク質を生体内で合成する能力を有する魚種があるという蓋然性は極めて高い。本発明の魚種の漁獲時期は10月下旬から5月上旬が望ましく、冬季12月から4月上旬が特に好ましい。これらの魚種から不凍タンパク質を得るには、例えば、本発明の魚種の血液、魚肉のすり身および乾製品の水性抽出液から、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の通常のタンパク質の分離精製手段を適宜組み合わせて行うことができる。
【0011】
一般的には、魚体中のタンパク質は魚体の死後直ちに酵素等によって分解され、能力を失ってしまう場合が多いと考えられるため、不凍タンパク質が、食品スーパー等で売られているような死後長時間を経過した魚体からでも精製できることは驚くべきことである。本発明において、食品スーパー等で売られている魚体からでも充分に不凍タンパク質が精製できるという事実を見出し、さらに、加熱、洗浄、乾燥などの処理を経た魚体乾物の製品からでさえも、不凍タンパク質を精製できることを見出したことも、また非常に画期的と言える。これらの事実は、魚類由来の不凍タンパク質が非常に高い安定性を有することに基づいており、このまれな性質のために、不凍タンパク質を魚体すり身あるいは魚体乾物粉砕物の懸濁液から精製する工程において、高温の加熱処理を適用することができる。
魚の放つ不快な臭いは、頭部と腹部にある臓器およびそれらの内容物の時間経過に伴う腐敗と、魚肉それ自体が固有に有する臭いに起因している。したがって、不凍タンパク質精製の原材料となる魚体においては、基本的には、これの頭部と腹部を早期に取り除いておくことが望ましい。この腹部と頭部を除去後の魚体は、これを冷蔵して保管する以外にも、乾燥させて保管することが可能である。この乾燥には、不凍タンパク質を濃縮する効果や、細菌の繁殖を抑制する効果があり、また、保管する際の魚体重量を軽減するなどの点で有益である。また、乾燥は、室温における保管を可能にするため、貯蔵、輸送、海外への輸出などの点で有益である。
【0012】
本発明においては、上記通常用いられているタンパク質の分離精製法を適用して不凍タンパク質を得てもよいが、魚臭がなく食品添加物として好適な不凍タンパク質を得るためには、1)魚体すり身あるいは魚体乾物の懸濁液を調製する工程、2)魚体すり身あるいは魚体乾物の懸濁液を遠心分離し、上澄液を得る工程、3)上澄液を熱処理する工程、4)3)により生じた沈殿物を遠心分離により除去して不凍タンパク質を含有する上澄液を得る工程、5)及び4で得られた上澄液から不凍タンパク質を回収する工程を順次含む、不凍タンパク質の精製法を用いるのが有効である。
すなわち、1)の工程においては魚肉をすり身にし、あるいは魚体乾物をハサミなどで細かく切断した後にミキサーなどにより粉砕し、これに対して水、あるいは重炭酸アンモニウムあるいはリン酸水素ナトリウム等の水溶液を加え魚肉の懸濁液とする。これにより、不凍タンパク質は、水性液中に溶出される。魚肉すり身は、魚肉を細切りにした後ミキサーにかけて得てもよいが、常法によりすり身製造機により擂潰して得てもよい。2)の工程においては、上記すり身懸濁液あるいは魚体乾物粉砕物の懸濁液を遠心分離し、不凍タンパク質を含有する上澄液を得る。遠心分離の条件は、3,000から12,000回転/分で、5分間から60分間である。
【0013】
この後、3)の工程として、上記工程で得られた上澄液を加熱処理するが、加熱処理は、魚体およびすり身特有の臭いに対して、これを効果的に除去あるいは減少させるとともに、不凍タンパク質以外の共雑タンパク質を熱変性させ沈殿させるものである。このため加熱処理で設定する温度は、目的精製物である不凍タンパク質を変性・沈殿させないのであれば、100度C以下の温度域で高ければ高いほど良いと言える。ギスカジカ、トゲカジカ、ツマグロカジカ、ナメヨコスジカジカ、キヌカジカの不凍タンパク質は特に熱に強いため、これらのすり身懸濁液に対しては、90度Cの加熱処理を10分間行うことでニオイのない不凍タンパク質成分を得ることができた。これらの魚種を用いる場合には70度Cから98度Cの温度範囲で10分間から30分間の加熱処理が好ましい。
【0014】
一方、チカ、イシカリワカサギ、シシャモ、キタノホッケ、ヤナギノマイ、ニシン、マガレイ、スナガレイ、クロガシラガレイ、コガネガレイ、クロガレイ、サメガレイ、ソウハチ、ババガレイ、アサバガレイ、ヌマガレイ、イシガレイ、マダラ、スケトウダラ、イカナゴ、シワイカナゴ、マアジ、シチロウウオ、ニシキギンポ、ガジ、ナガガジ、ドロギンポ、ムランギンポについては、50度Cから70度Cの範囲で、10分間から30分間の熱処理工程を行ったが、この温度でも魚の臭いが除去された60%以上もの純度の不凍タンパク質精製標品を得ることができた。この純度の不凍タンパク質精製標品は用途によっては充分な品質といえる。
4)の工程においては、上記加熱処理した上澄液を遠心し、沈殿した共雑タンパク質を除去する。得られた不凍タンパク質を高濃度で含有する上澄み液は、そのままの形態で後記する用途に用いてもよいが、好ましくは、凍結乾燥により乾燥粉末とする。
【0015】
本発明の不凍タンパク質は、前述したように、不凍タンパク質には氷の再結晶化を妨げるはたらきがあるため、上記各魚種から得られた不凍タンパク質がAFPI〜IVのどのタイプの不凍タンパク質に分類されるか否かに関わらず、氷の再結晶化防止剤ないしは凍結阻害剤として使用でき、例えばアイスクリームあるいは冷凍食品などに混入することによりその品質を持続させるために使用できる。また、この品質維持効果は、食肉、野菜、細胞(卵子や精子)、組織、臓器などを長期凍結保存する際にも同様に期待できる。さらに、近年、エネルギー密度が大きい氷スラリーを熱媒体として使用する冷熱供給システムあるいは冷熱蓄熱等が提案されているが、これらにおいては、氷の再結晶による配管系の閉塞の問題があり、本発明の不凍タンパク質は氷の再結晶化を有効に防ぐものであるから、この問題を解決するために有望な手段となりうる。このほか不凍蛋白質をコードする遺伝子を植物体に組み込むことにより、その植物に耐寒性を持たせることも応用技術として期待できる。

以下、本発明の実施例を示すが、本発明は特にこれにより限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
実施例1
〈不凍タンパク質存在の確認〉
(1)検体試料
不凍タンパク質の採取源として使用した魚種は以下のとおりである。

ギスカジカ(Myoxocephalus stelleri Tilesius、英名Frog Sculpin):
利尻島沿岸で漁獲。
ツマグロカジカ(Gymnocanthus herzensteini Jordan et Starks、英名Black edged sculpin): 利尻島沿岸で漁獲。
トゲカジカ(Myoxocephalus polyacanthocephalus (Pallas)、英名Great Sculpin):北海道 札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別I藤富水産、及び北海道野付漁業協同組合より購入。
チカ(Hypomesus pretiosus japonicus (Brevoort)):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別I藤富水産、及び北海道野付漁業協同組合より購入。
ナガガジ(Zoarces elongatus Kner、英名Notched-fin eelpout):
北海道野付漁業協同組合より購入。
イシカリワカサギ(Hypomesus olidus (Dallas)、英名Freshwater smelt):
札幌市北区茨戸公園茨戸川ワカサギ釣り場より購入。
【0017】
マガレイ(Limanda herzensteini Jordan et Snyder、英名Brown Sole):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
スナガレイ(Limanda punctatissima (Steindachner)、英名Longsnout flounder):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
クロガレイ(Liopsetta obscura (Herzenstein)、英名Black plaice):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
サメガレイ(Clidodema asperrimum (Temminck et Schlegel)、英名Roughscale sole):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
ソウハチ(Cleisthenes pinetorum herzensteini (Schmidt)、英名Pointhead flounder):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
【0018】
ババガレイ(Microstomus achne (Jordan et Starks)、英名Slime flounder):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
アサバカレイ(Lepidopsetta mochigarei Snyder、英名Dusky Sole):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
ムシガレイ(Eopsetta grigorjewi (Herzenstein)、英名Shothole halibut):
北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
マダラ(Gadus macrocephalus Tilesius、英名Pacific cod):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
ナメヨコスジカジカ(Hemilepidotus jordani Bean、英名Yellow Sculpin):
北海道様似町の沿岸で漁獲。
シワイカナゴ(Hypoptychus dybowskii Steindachner、英名Naked sand lance):
北海道利尻島沿岸で漁獲。
ドロギンポ(Ascoldia variegata knipowitschi Soldatov):
北海道様似町の沿岸で漁獲
【0019】
スケトウダラ(Theragra chalcogramma (Pallas)、英名Walleye Pollock):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
キタノホッケ(Pleurogrammus monopterygius (Pallas)、英名Atka mackerel):
北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
ヤナギノマイ(Sebastes steindachneri Hilgendorf):
北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
ニシン(Clupea pallasii Valenciennes、英名California herring):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
シシャモ(Spirinchus lanceolatus (Hikita)、英名Sishamo Smelt):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入、及び北海道鵡川町の沿岸で漁獲。
クロガシラガレイ(Limanda schrenki Schmidt、英名Cresthead flounder):
北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
ヌマガレイ(Platichthys stellatus (Pallas)、英名Starry flounder):
北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
【0020】
コガネガレイ(Limanda aspera (Pallas)、英名Yellow fin sole):
北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
イシガレイ(Kareius bicoloratus (Basilewsky)、英名Stone flounder):
北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入、及び北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
キヌカジカ(Furcina osimae Jordan et Starks、英名Silk Sculpin):
北海道苫小牧の沿岸で漁獲。
イカナゴ(Ammodytes personatus Girard、英名Japanese sand lance):
北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
ムロランギンポ(Pholidapous dybowskii (Steindachner)、英名Dybowsky’s gunnel):北海道石狩湾の沿岸で漁獲。
シチロウウオ(Brachyopsis rostratus (Tilesius)、英名Longsnout poacher):北海道野付湾で漁獲。
ニシキギンポ(Pholis picta (Kner)、英名Painted gunnel):北海道野付湾で漁獲。
ガジ(Opisthocentrus ocellatus (Tilesius)、英名Redspotted gunnel):北海道野付湾で漁獲。
カラフトシシャモ(Mallotus villosus (Muller)、英名Atlantic capelin): 北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
マアジ(Trachurus japonicus (Temminck et Schlegel、英名Yellowfin horse mackerel)):北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1藤富水産より購入。
【0021】
不凍タンパク質の採取源として使用した魚体乾物の製品は以下のとおりである。
スケトウダラ(商品名:むしりたら、製造元:大東食品)北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1より購入。
シシャモ(商品名:国内産姫シシャモ、製造元:大丸水産)北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1より購入。
イカナゴ(商品名:おおなご薫製、製造元:藤水)北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1より購入。
コガネガレイ(商品名:ロール黄金かれい、製造元:大東食品)北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1より購入。
ウルメイワシ(商品名:うるめ煮干、製造元:かね七)北海道札幌市厚別区厚別西4条2丁目752番地318カウボーイ(CowBoy)厚別1より購入。
【0022】
(2)バイピラミダル氷結晶の観察
a)上記各魚種のうちの鮮魚について、鰓(エラ)部をこじ開けて肝臓、小腸などの器官を傷つけないよう薬匙(さじ)等で抑えながら、頭部側に見える三角形様の赤黒い心臓部に注意深く容量5mlの注射器につけた注射針をさし込み血液を採取した。血液の採取量の合計はギスカジカ、ツマグロカジカ及びチカの各魚種において、各々150mlであり、また、トゲカジカにおいて420ml、キタノホッケ、ニシンにおいて30mlであった。また、マガレイ、スナガレイ、クロガレイ、サメガレイ、ババガレイ、アサバガレイ、クロガシラガレイ、ヌマガレイ、コガネガレイ、イシガレイ、ムシガレイにおいて各々20ml、マダラ、スケトウダラにおいて35ml、ナメヨコスジカジカ、キヌカジカ、ナガガジ、ドロギンポ、ムロランギンポにおいては25mlであった。これらを以下(b)及び実施例2の試験に用いた。また、上記以外の鮮魚のイシカリワカサギ、ヤナギノマイ、ソウハチ、シシャモ、カラフトシシャモ、シワイカナゴ、イカナゴ、シチロウウオ、ニシキギンポ、ガジについて、皮、骨、内臓を除いた魚肉部分を包丁により切り出し細かく切り刻んだ後ミキサーにかけて粉砕したものをすり身とした。すり身20mlに対して0.1M硫酸アンモニウム水溶液(ph7.9)を等量(20ml)加えて懸濁した。さらに、スケトウダラ、シシャモ、イカナゴ、コガネガレイ、ウルメイワシ、マアジの魚体乾製品について、ハサミを用いて1cm程度に切り刻んだ後、ミキサーにかけて粉砕し、粉砕物重量20gに対して20mlの0.1M硫酸アンモニウム水溶液(pH7.9)を加えて良く混合し、これを4度C下で一晩静置したものを乾物の懸濁液とした。こうして得られた血液、すり身懸濁液、および乾物懸濁液を以下(b)及び実施例2の試験に用いた。
【0023】
なお、注目する検体液が不凍タンパク質を含むか否かの評価は、わずか1ulの液に対しても低温顕微鏡下でのバイピラミダル氷結晶観察実験をすることで行い得る。
b)上記のように採取した各魚種の血液それぞれ1ulをライカ社製DMLB100型顕微鏡(Leica DMLB 100 photomicroscope)の直径16mmのカバーガラス上に滴下した。これをそのままもう1枚の直径12.5mmのカバーガラスによりはさみ、これをDMLB100型顕微鏡のステージ部に設置した冷却箱内にセットした。冷却箱の上下には直径1mmの光取り入れ穴をあけ、顕微鏡光源からの光は下側の穴から箱内を通り上側の穴を抜けてレンズに入光させるようにした。この上下の穴により規程される光軸上に検体液をセットすることで、光軸上にある検体液中の物質を顕微鏡観察することができる。検体液がセットされた冷却箱の中の温度は、リンカム社製LK600温度制御装置(LK600 温度コントローラー)により+/-0.1度Cの誤差で制御される。室温下で検体液をセットした後、温度制御装置により冷却箱内の温度を毎秒0.2度Cでマイナス22度Cまで下降させた。およそマイナス1.4度Cからマイナス2.2度Cの間の温度のどこかで検体液の全体が凍結する。凍結の後に毎秒0.1度Cで冷却箱内温度を上昇させ零度Cで上昇を停止し、そのまま1秒−10秒程度の間、零度Cを維持していると凍結が溶け、無数のきれつの入った氷結晶状態を経たのちに、数えられる程度の氷結晶つぶが水中に浮かんだものが観測された。その瞬間に、冷却箱内の温度をマイナス0.1度C−マイナス1.0度C程度に下降させて止め、氷結晶の形状を観察した。観察結果を図2−図8に示す。試験に使用した魚種のいずれにおいてもバイピラミダル型の氷晶が観察され、これら魚種は、いずれも不凍タンパク質を有することを確認した。また、魚肉すり身懸濁液1μl、および乾物懸濁液1μlを用いて同様の試験を行ったが、これらの試験においても、すべての魚種について、バイピラミダル型の氷晶が観察された。
【0024】
実施例2
〈不凍タンパク質の分離精製1〉
a)不凍タンパク質の精製
実施例1の(2)a)と同様にしてギスカジカから血液30mlをプラスチック試験管に採取した。プラスチック試験管内に採取したギスカジカ血液30mlを4度Cの冷蔵チャンバー内に一晩放置し血球成分だけを凝血・沈殿(一般にクロッテイング(clotting)操作と呼ぶ)させた。血液30ml中およそ半分(15ml)が血球として沈殿し、上澄みの血清15mlだけを分取した。このとき濃縮遠心機を用いて3000回転、15分間の遠心操作を行い血球と血清の分離能を向上した。このとき、分取した15mlの血清にバイピラミダル氷結晶を観測し不凍タンパク質の存在を確認した。この15mlの血清を内径2.5cm高さ96cm(容量475ml)のSephadexG-50ゲルカラムクロマトグラフィーによりゲル濾過した。溶出液として0.1Mの硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)を用いた。図9に、血清のゲル濾過分画に対する280nm紫外吸収パターンを示す。試験管1本あたりに10mlずつのゲル濾過分画を得た。つぎにそれらを凍結乾燥した。
【0025】
各分画の凍結乾燥物に対して0.5から2mlの0.1Mの硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)を加えた後、各々に対してバイピラミダル氷結晶の観測をおこない、不凍タンパク質が含まれている10番から24番までの分画(図9の影をつけた部分:Antifreeze Active Fractions)を次の精製ステップに用いた。10番から24番までの分画を約45mlの硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)に溶解したものに対して、ミリポア社のAmiconセントリプレップを用いて不凍タンパク質を含む分子量3万以下のタンパク質水溶液約40mlを得た。これに対して0.1M硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)で平衡化したファルマシア社製DEAEセファロースCL-6B陰イオン交換樹脂5mlを加え、濃縮遠心機により3000回転で1分間遠心して、この陰イオン樹脂に対して非結合性をもつ不凍タンパク質水溶液約40mlを得た。この水溶液に対して0.1M硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)で平衡化したファルマシア社製CMセファロースCL-6B陽イオン交換樹脂5mlを加え、濃縮遠心機により3000回転で1分間遠心して、この陽イオン交換樹脂に対しても非結合性をもつ不凍タンパク質水溶液を得た。
【0026】
この試料を凍結乾燥した後に少量の0.1M硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)で溶解し、ODS(C8)カラムを用いた逆相HPLCクロマトグラフィーで分画した。HPLC経路内とカラムの平衡化は0.1%のトリフルオロ酢酸水溶液(A液)を用いて行い、溶出は0.1%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル(B液)を用いた。B液の濃度勾配を毎分1%の直線的上昇に設定し1ml/minの送液速度に設定した。図10にこの逆相HPLCのパターンを示す。図10に観測された各ピークを集め凍結乾燥した後に、各々を少量の0.1M硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)で溶解しバイピラミダル氷結晶生成の有無を検査した。その結果、AFP1は、図1Bで示される偏四角面体の氷結晶を生成し、一方AFP2は図1Aで示される六方両錐体の氷結晶を生成することが判明した。こうして、AFP1とAFP2の記号を付した2つのピーク分画の凍結乾燥物を精製不凍タンパク質粉末として取得した。
これら2つが異なる不凍タンパク質であることは、以下に示す電気泳動によっても確かめられた。
【0027】
b)ゲル電気泳動
ギスカジカ由来AFP1とAFP2についてのSDSゲル電気泳動を行った。AFP1及びAFPの分子量は数千−5万程度と予想されるため、タンパク質を分離良く泳動するために、ゲル中のSDS濃度として16%を選んだ。電気泳動に用いた試薬の組成は下記のとおりである。
分離ゲル (10 ml)
2.0 ml 水
5.4 ml 30%ポリアクリルアミド + 0.8%ビスアクリルアミド
2.5 ml 1.5M トリス塩酸 (pH=8.8)
120 μl 10%ドデシル硫酸ナトリウム溶液
70 μl 10%過硫酸アンモニウム溶液
15.0 μl N, N,N',N'-テトラメチレンジアミン溶液
濃縮ゲル (5 ml)
3.17 ml 水
500 μl 30%ポリアクリルアミド + 0.8%ビスアクリルアミド30%
1.25 ml 0.5M トリス塩酸 (pH=6.8)
50 μl 10% ドデシル硫酸ナトリウム溶液
30 μl 10%過硫酸アンモニウム溶液
7.5 μl N, N,N',N'-テトラメチレンジアミン溶液
【0028】
分子量マーカー(図11、Marker1)としてはGIBCO社製たんぱく質分子量スタンダード低分子量用を用いたほか、同類たんぱく質とのサイズ比較のために2量体型不凍タンパク質RD3(分子量14kDa、Marker2)、1量体型不凍タンパク質RD3Nl(6.5kDa、 Marker3)、ニワトリ卵白リゾチーム(分子量14.3kDa、Marker4)、不凍糖たんぱく質(3kDa、Marker4)を用いた。マーカー以外のたんぱく質は全て7ulの0.1M硫酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)で溶解し、これに7ulのbuffer液(0.065M Tris-HCl (pH=6.8), 2% SDS, 10% Sucrose, 5% β-mercapthoethanol, 0.001% BPB染色試薬)を加えた後に95度Cで5分間煮沸して、電気泳動試料とした。これを日本エイドー社製ミニスラブゲル電気泳動装置を用いて100Vの定電圧下にて2時間の電気泳動を行った。その結果を図11に示す。図に示されるように、AFP1は分子量約11kDa、AFP2は分子量3−6kDaの不凍タンパク質であった。これらの分子量からみると、AFP1は上記のタイプIV(AFPIV)、AFP2は、タイプI(AFPI)に属するものと推定される。
【0029】
実施例3
〈不凍タンパク質の分離精製2〉
実施例1の(2)に記述した手順に従って、チカのすり身の懸濁液40mlを調製した。これをプラスチック試験管に入れ、10,000回転で15分間遠心して、約20mlの上澄み液を得た。この上澄み液のタンパク質濃度は約25mg/mlであった。この上澄み液の入っているプラスチック試験管を70度Cの温浴に10分間浸すことで加熱処理をおこなった。温浴からプラスチック試験管を取り出した後、直ちに砕いた氷に突き入れて急冷した。その後に、この試料を18,000回転で30分間遠心して、約15mlの上澄み液を得た。この上澄み液のタンパク質濃度は約6.6mg/mlであった。図12に、この上澄み液に対するSDSゲル電気泳動の結果(図12A)とグルカラムクロマトグラフィーの紫外吸収パターン(図12B)を示す。SDSゲル電気泳動は図9と同一条件で行い、グルカラムクロマトグラフィーは200μlの試料溶液をAmersham Pharmacia Biotech Sepharose 6 HR10/30カラムにより0.2ml/分で溶出することで行った。図12Aの電気泳動図の最右レーンに示されるAFP3(分子量約17kDa)、AFP4、AFP5(分子量約14kDa)はいずれも図1Aの形状のバイピラミダル氷結晶を生成するチカ由来の不凍タンパク質であった。これらの分子量から見ると、チカ由来不凍タンパク質はいずれもタイプII型に属するものと推定される。これらAFP3、AFP4、AFP5に相当するゲルクロマトグラフィーの分画が図12Bの矢印の範囲で示した部分である。この部分の吸収ピーク強度をのこりの部分と比較することから、70度Cで10分間の加熱処理後の遠心上清を得ることで、約62%の精製度でチカ由来不凍タンパク質が精製できることが示された。
【0030】
ギスカジカから得た魚肉すり身懸濁液についても上記と同様に加熱処理工程を含む不凍タンパク質の分離精製及びゲル電気泳動を行ったが、この場合においては主としてタイプIと思われる不凍タンパク質が得られた。この不凍タンパク質は、90度Cの加熱によっても得られることができた。
【0031】
実施例4
{不凍タンパク質の分離精製3}
実施例1の(2)に記述した手順に従って、シシャモ乾物の懸濁液40mlをプラスチック試験管に採取した。これに0.4mlの99.5%酢酸を加えて良く混合し、4度Cで1時間放置して。この操作により生成した酸性沈殿物を、18,000回転で30分間遠心することにより除去し、約35mlの上澄み液を得た。これに対して0.5mlの1M水酸化ナトリウム水溶液を加えて良く混合し、4度Cで1時間放置した。この操作により生成した塩基性沈殿物を18,000回転で30分間遠心することにより除去し、約32mlの上澄み液を得た。この液に対して上記と同様に加熱処理工程を含む不凍タンパク質の分離精製を行いタイプIIと思われる不凍タンパク質が得られた。
【0032】
実施例5
{不凍タンパク質の分離精製4}
実施例1の(2)に記述した手順に従って、ナガガジのすり身の懸濁液40mlを調製した。これをプラスチック試験管に入れ、6,000回転で30分間遠心して、約20mlの上澄み液を得た。この上澄み液を、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH=3.7)に対して透析し、共雑タンパク質を凝集させた。これを12,000回転で30分間遠心して取り除き、上澄み液を得た。この上澄み液に対して陽イオン交換クロマトグラフィーを行い、1mlずつの溶出液を280nmの吸収を検出しながらフラクションコレクターにより回収した。陽イオン交換クロマトグラフィーにはAmersham Pharmacia BiotechのFPLCシステムとBIO-RADのHigh-Sカラムを用いた。50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH=3.7)を用いてカラムの平衡化と上澄み液の取り込みをおこない溶出は流速1ml/分で0〜0.5Mの塩化ナトリウムの直線勾配をかけることで行った。ここまでの操作は全て4度Cで行った。次に、280nmの吸収の観測された試料液をTOSOのHPLCシステムとODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィーにより精製した。0.1%のトリフルオロ酢酸を用いてカラムの平衡化と試料液の取り込みを行い、溶出にはアセトニトリルの直線勾配を用いた。溶出試料の吸光度は214nmと280nmで検出し、単一のタンパク質を含む溶出液フラクションを得た後にこれを凍結乾燥した。この凍結乾燥粉末を0.1Mの重炭酸アンモニウム水溶液に溶解し、そのバイピラミダル氷結晶の観測をおこなうことで不凍タンパク質であることを確認した。この不凍タンパク質の試料をAspaginylendopeptidaseおよびTrypsinで消化し、それぞれについて得られたペプチド断片を再び逆相クロマトグラフィーで回収した。これらのペプチド断片について、Applied Biosystems社製の491Protein Sequencerと785A Programmable Absorbace Detector、及び140C Microgradient Systemから構成されるアミノ酸配列解析装置を用いることにより、アミノ酸配列を決定した。その結果、ナガガジは、互いによく似た配列をもち、65,66および67残基からなる3種のタンパク質を発現する。
これら3種の各不凍タンパク質のアミノ酸配列およびその遺伝子のCDS領域の塩基配列を配列表の配列番号1〜6に示す。これらの塩基配列は、既に塩基配列が明らかにされているマクロゾアルケルスアメリカヌス由来のタイプIII型不凍タンパク質と約75〜90%の相同性を示した。このようにして、タイプIII型の不凍タンパク質がナガガジのすり身から精製されることが示された。
【0033】
本発明において使用する魚種の血液、すり身、あるいは乾物懸濁液に対して、実施例1の方法で示した精製法を適用して、SDS電気泳動上で単一バンドになるまでの精製を行い、下記魚種についてタイプI〜IVまでの不凍タンパク質種類の同定をおこなった結果を以下に示す。
a)タイプI型
ギスカジカ、ツマグロカジカ、トゲカジカ、ナメヨコスジカジカ、
キヌカジカ、マガレイ、スナガレイ、クロガシラガレイ、コガネガレイ、
クロガレイ、サメガレイ、ソウハチ、ババガレイ、
アサバガレイ、ヌマガレイ、イシガレイ、ムシガレイ
b)タイプII型
チカ、イシカリワカサギ、シシャモ、カラフトシシャモ、ニシン、
マアジ、シチロウウオ
c)タイプIII型
ナガガジ、ドロギンポ、ムロランギンポ、ニシキギンポ、ガジ
d)タイプIV型
ギスカジカ、ツマグロカジカ、トゲカジカ、ナメヨコスジカジカ、
キヌカジカ
(注.これらはタイプI型とIV型を両方発現している)
e)AFGP
マダラ、スケトウダラ
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】バイピラミッド型氷結晶の形状を示す模式図である。
【図2】ギスカジカ、トゲカジカ、ツマグロカジカ、チカ、イシカリワカサギ、及びナガガジの血液において観察されたバイピラミッド型氷結晶の顕微鏡写真である。
【図3】マガレイ、クロガレイ、スナガレイ、アサバガレイ、サメガレイ、及びソウハチの血液において観察されたバイピラミッド型氷結晶の顕微鏡写真である。
【図4】スケトウダラ、キタノホッケ、ヤナギノマイ、ニシン、シシャモ、及びクロガシラガレイの血液、あるいはすり身懸濁液において観察されたバイピラミッド型氷結晶の顕微鏡写真である。
【図5】ヌマガレイ、コガネガレイ、イシガレイ、キヌカジカ、イカナゴ、及びムロランギンポの血液、あるいはすり身懸濁液において観察されたバイピラミッド型氷結晶の顕微鏡写真である。
【図6】マダラ、ババガレイ、ナメヨコスジカジカ、ドロギンポ、シワイカナゴ、及びムシガレイの血液、あるいはすり身懸濁液において観察されたバイピラミッド型氷結晶の顕微鏡写真である。
【図7】ニシキギンポ、ガジ、シチロウウオ、カラフトシシャモのすり身懸濁液において観察されたバイピラミッド型氷結晶の顕微鏡写真である。
【図8】ウルメイワシ、アジ、スケトウダラ、シシャモ、コガネガレイの乾製品破砕物の懸濁液において観察されたバイピラミッド型氷結晶の顕微鏡写真である。
【図9】ギスカジカ血清のゲル濾過分画に対し280nm紫外線を照射した場合の吸収パターンを示す図である。
【図10】上記ゲル濾過分画の10番から20番についての、逆相HPLCクロマトグラフィーの溶出パターンを示す図である。
【図11】この逆相HPLCクロマトグラフィーにより得られた分画AFP1とAFP2についてのSDSゲル電気泳動の結果を示す図である。
【図12】A.チカのすり身懸濁液に対して70度Cで10分間の加熱処理前と処理後の遠心上澄についてのSDSゲル電気泳動の結果を示す図である。B.70度Cで10分間の加熱処理後の試料溶液に対するゲルクロマトグラフィーの溶出パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツマグロカジカ属(Gymnocanthus)、ヨコスジカジカ属(Hemilepidotus)、サラサカジカ属(Furcina)、ワカサギ属(Hypomesus)、シシャモ属(Spirinchus)、カラフトシシャモ属(Mallotus)、ホッケ属(Pleurogrammus)、メバル属(Sebastes)、ニシン属(Clupea)、マコガレイ属(Limanda)、クロガレイ属(Liopsetta)、サメガレイ属(Clidoderma)、ソウハチ属(Cleisthenes)、ババガレイ属(Microstomus)、シュムシュガレイ属(Lepidopsetta)、ヌマガレイ属(Platichthys)、イシガレイ属(Kareius)、ムシガレイ属(Eopsetta)、スケトウダラ属(Theragra)、イカナゴ属(Ammodytes)、シワイカナゴ属(Hypoptychus)、マアジ属(Trachurus)、シチロウウオ属(Brachyopsis)、ニシキギンポ属(Pholis)、オキカズナギ属(Opisthocentrus)、ナガガジ属(Zoarces)、ドロギンポ属(Ascoldia)、またはムロランギンポ属(Pholidapus)に属する魚種の魚体から、凍結を阻害する機能を有するタンパク質を回収することを特徴とする、凍結を阻害する機能を有するタンパク質の製造方法。
【請求項2】
タンパク質の採取源が、ギスカジカ(Myoxocephalus stelleri Tilesius),ツマグロカジカ(Gymnocanthus herzensteini Jordan et Starks)、トゲカジカ(Myoxocephalus polyacanthocephalus (Pallas))、ナメヨコスジカジカ(Hemilepidotus jordani Bean)、キヌカジカ(Furcina osimae Jordan et Starks)、チカ(Hypomesus pretiosus japonicus (Brevoort))、イシカリワカサギ(Hypomesus olidus (Dallas))、シシャモ(Spirinchus lanceolatus (Hikita))、カラフトシシャモ(Mallotus villosus (Muller))、キタノホッケ(Pleurogrammus monopterygius (Pallas))、ヤナギノマイ(Sebastes steindachneri Hilgendorf)、ニシン(Clupea pallasii Valenciennes)、マガレイ(Limanda herzensteini Jordan et Snyder)、スナガレイ(Limanda punctatissima (Steindachner))、クロガシラガレイ(Limanda schrenki Schmidt)、コガネガレイ(Limanda aspera (Pallas))、クロガレイ(Liopsetta obscura (Herzenstein))、サメガレイ(Clidoderma asperrimum (Temminck et Schlegel))、ソウハチ(Cleisthenes pinetorum herzensteini (Schmidt))、ババガレイ(Microctomus achne (Jordan et Starks))、アサバガレイ(Lepidopsetta mochigarei Snyder)、ヌマガレイ(Platichthys stellatus (Pallas))、イシガレイ(Kareius bicoloratus (Basilewsky))、ムシガレイ(Eopsetta grigorjewi (Herzenstein))、マダラ(Gadus macrocephalus Tilesius)、スケトウダラ(Theragra chalcogramma (Pallas))、イカナゴ(Ammodytes personatus Girard)、シワイカナゴ(Hypoptychus dybowskii Steindachner)、マアジ(Trachurus japonicus (Temminck et Schlegel))、シチロウウオ(Brachyopsis rostratus (Tilesius))、ニシキギンポ(Pholis picta (Kner))、ガジ(Opisthocentrus ocellatus (Tilesius))、ナガガジ(Zoarces elongatus Kner)、ドロギンポ(Ascoldia variegata knipowitschi Soldatov)、またはムロランギンポ(Pholidapous dybowskii (Steindachner))に属する魚種の魚体から、凍結を阻害する機能を有するタンパクシツを回収することを特徴とする、凍結を阻害する機能を有するタンパク質の製造方法。
【請求項3】
魚体乾物から凍結を阻害する機能を有するタンパク質を回収することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−112813(P2007−112813A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5316(P2007−5316)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【分割の表示】特願2002−320425(P2002−320425)の分割
【原出願日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】