鮮度保持具
【課題】 吸着体に含浸させた鮮度保持液が外力の作用等で滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持できるようにする。
【解決手段】 鮮度保持液を含浸状態で保持した吸着体2をカバー3により外側から覆う。カバー3を構成する内側フィルム体4と外側フィルム体5は、気体の透過を許すが、液体の透過は規制する不織布状の材料により形成する。内側フィルム体4と外側フィルム体5の間には空気層6を設ける。これにより、吸着体2内の鮮度保持液の一部が強制的な外力等の作用で、内側フィルム体4を仮に透過しても、このときの鮮度保持液を空気層6内に捕捉して溜める。また、内側フィルム体4には、気体に対して高い不透過性を有する被覆層7を積層化して設け、被覆層7の幅寸法aに従って鮮度保持液の揮散速度を調整する。
【解決手段】 鮮度保持液を含浸状態で保持した吸着体2をカバー3により外側から覆う。カバー3を構成する内側フィルム体4と外側フィルム体5は、気体の透過を許すが、液体の透過は規制する不織布状の材料により形成する。内側フィルム体4と外側フィルム体5の間には空気層6を設ける。これにより、吸着体2内の鮮度保持液の一部が強制的な外力等の作用で、内側フィルム体4を仮に透過しても、このときの鮮度保持液を空気層6内に捕捉して溜める。また、内側フィルム体4には、気体に対して高い不透過性を有する被覆層7を積層化して設け、被覆層7の幅寸法aに従って鮮度保持液の揮散速度を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食料品、菓子等の食品類を長期に保存し、その鮮度を保持するのに好適に用いられる鮮度保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品またはその他の被保存物の鮮度を保つために、鮮度保持具を用いることは知られている。そして、このような鮮度保持具は、例えば食料品、菓子類等の食品包装体内に、一個または複数個挿入して用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の従来技術による鮮度保持具は、例えばエチルアルコール等を主成分とする揮発性の鮮度保持液を吸着体に含浸させることにより構成され、この吸着体は、例えば天然パルプ材等を用いて長方形状をなす小型の平板片として形成されるものである。
【0004】
また、このような吸着体を外側から覆うフィルム状カバーは、吸着体の側方に張出すスカート部を有し、このスカート部には、前記鮮度保持液が吸着体から徐々に外部へと揮散するように揮散用開口を設ける構成としている。そして、前記吸着体内の鮮度保持液は、カバーのスカート部から前記揮散用開口を介して食品包装体内に徐々に揮散する。
【0005】
これにより、鮮度保持液は、食品包装体内の空間(ヘッドスペース)を揮発した気体(ガス化雰囲気)で満たすと共に、親水性のある食品に対しては表層側に吸着され、例えばカビ等の微生物の増殖を抑制するものである。
【0006】
【特許文献1】特許第3159691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術の鮮度保持具では、吸着体を外側から覆うフィルム状カバーに揮散用開口を設け、この揮散用開口を通じて吸着体内の鮮度保持液が、食品包装体内へと徐々に揮散するようにしている。しかし、消費者等のユーザーにとっては、このような揮散用開口がカバーの破れ(破断、損傷による開口)と誤解することがあり、さらなる改良が要望されている。
【0008】
また、例えば菓子類等の食品包装体内に鮮度保持具を挿入して用いる場合に、複数個の食品包装体を積み重ねた状態で運搬、搬送すると、その途中等で鮮度保持具に大きな外力が作用することがある。そして、吸着体内に含浸させた鮮度保持液は、外力の作用を受けると、前記揮散用開口から液体状態のまま外部に滲み出す虞れがある。
【0009】
このように、鮮度保持液が液体状態のまま、食品包装体内に滲み出してしまうと、吸着体内の鮮度保持液が菓子類(食品)の方へと早期に吸い取られることがあり、これにより鮮度保持具としての寿命が低下し、且つ、食品の味を悪くしたり、食品の形状を損傷させるという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、吸着体に含浸させた鮮度保持液が外力の作用等で滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持できると共に、商品価値を高めることができるようにした鮮度保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために本発明は、食品またはその他の被保存物の鮮度を保持するために揮発性の鮮度保持液が含浸して吸着される吸着体と、該吸着体を外側から覆うフィルム状カバーとからなる鮮度保持具に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記フィルム状カバーを、気体が透過するのを許し液体が透過するのを規制する気体透過性材料を用いて形成された内側と外側の少なくとも2枚のフィルム体により構成し、かつ前記フィルム状カバーには、前記内側フィルム体と外側フィルム体とを互いに重ね合せることにより両者の間に空気層を設ける構成としたことにある。
【0013】
また、請求項2の発明によると、前記内側フィルム体と外側フィルム体とのうち一方のフィルム体に、または前記内側フィルム体と外側フィルム体の両方のフィルム体には、前記鮮度保持液が吸着体から外部に揮散するのを調整する揮散調整部を設ける構成としている。
【0014】
また、請求項3の発明によると、前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体よりも小さな面積をもって形成された被覆層により構成している。
【0015】
また、請求項4の発明によると、前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体に形成された複数の被覆層によって構成し、前記鮮度保持液は、これらの被覆層の間から外側に向けて揮散する構成としている。
【0016】
さらに、請求項5の発明によると、前記内側フィルム体と外側フィルム体とは、微細な繊維を網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料により構成している。
【発明の効果】
【0017】
上述の如く、請求項1の発明によれば、吸着体を外側から覆うフィルム状カバーを、気体が透過するのを許し液体が透過するのを規制する気体透過性材料により形成された内側と外側の少なくとも2枚のフィルム体により構成し、これらの内側フィルム体,外側フィルム体間には、空気層を介在させる構成としているので、吸着体に含浸させた鮮度保持液から揮発しガス化した気体は、内側フィルム体と外側フィルム体とを透過して外部へと揮散することができる。これにより、従来技術のように、揮散用開口等を特別に設けることなく、鮮度保持液を外部に揮散させることができ、食品等に対する鮮度保持効果を発揮することができる。
【0018】
また、吸着体内に含浸させた鮮度保持液の一部が、強制的な外力等の作用により内側フィルム体を仮に透過したとしても、内側フィルム体と外側フィルム体と間には空気層を形成しているので、このときの鮮度保持液を空気層内に捕捉して溜めることができ、鮮度保持液が液体状態のまま外部に滲み出すのを、内側フィルム体と空気層と外側フィルム体とによって2重、3重に防ぐことができる。
【0019】
従って、吸着体に含浸させた鮮度保持液が外力の作用等で外部に滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができると共に、鮮度保持具としての商品価値を高めることができる。
【0020】
また、請求項2の発明によれば、内側フィルム体と外側フィルム体のうちいずれか一方または両方のフィルム体には、鮮度保持液が吸着体から外部に揮散するのを調整する揮散調整部を設ける構成としている。これにより、吸着体に含浸させた鮮度保持液から揮発しガス化した気体が、内側フィルム体と外側フィルム体とを透過して外部に揮散するときの速度を、揮散調整部によって適正に保つことができ、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができる。
【0021】
また、請求項3の発明では、前記揮散調整部を、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体よりも小さい面積をもって形成された被覆層により構成しているので、該被覆層によって内側フィルム体と外側フィルム体の一方または両方を部分的に覆うことができ、鮮度保持液の揮散速度を被覆層の面積に応じて調整することができる。そして、このような揮散調整部となる不透過性の被覆層は、例えば接着、貼り付け、または塗布等の手段を用いて内側フィルム体と外側フィルム体の一方または両方に積層化するように一体化して設けることができる。
【0022】
また、請求項4の発明は、不透過性の材料からなる被覆層を内側フィルム体と外側フィルム体の一方または両方に複数設ける構成としているので、例えば複数の吐出口が並列に設けられた吐出ノズル等を用いて、不透過性の樹脂材料を加熱溶融状態で各吐出口から前記フィルム体に塗布することにより、当該フィルム体に帯状の被覆層を縞模様をなすように積層化して形成することができ、鮮度保持具としての仕上がり具合を向上させ、商品価値を高めることができる。そして、この場合には、吸着体に含浸させた鮮度保持液を縞模様をなす各被覆層の間から外側に向けて揮散させ、その揮散速度を調整することができる。
【0023】
さらに、請求項5の発明によると、内側フィルム体と外側フィルム体とは、微細な繊維を網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料により構成しているため、ガス化した鮮度保持液の蒸気(気体)を、不織布状に形成した内側フィルム体と外側フィルム体とを透過させ、外部へと揮散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態による鮮度保持具を、食品保存のために用いた場合を例に挙げ添付図面に従って詳細に説明する。
【0025】
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示し、本実施の形態の形態では、内側フィルム体に被覆層を設けた場合を例に挙げて説明する。
【0026】
図中、1は本実施の形態で採用した鮮度保持具を示し、該鮮度保持具1は、後述の吸着体2と、吸着体2を外側から封止するように覆う後述のフィルム状カバー3とにより大略構成されている。
【0027】
2は鮮度保持液が含浸状態で吸着される吸着体で、該吸着体2は、例えば特殊処理高吸着性ヴァージンパルプ材等を用いて、図2〜図5に示すように長方形の平板状に形成され、その長さは、例えば20〜60mm程度で、幅寸法が15〜40mm程度となり、厚さ寸法は2mm程度となっている。
【0028】
そして、吸着体2内には、例えばエチルアルコール等を主成分とする揮発性の鮮度保持液が含浸され、この鮮度保持液は、吸着体2の外側面から徐々に揮発することにより後述の内側フィルム体4,外側フィルム体5を介して外部へと揮散される。これによって、例えば菓子類等の食品包装体(図示せず)内は、ガス化した鮮度保持液の蒸気(気体)で満たされ、鮮度保持効果が得られるものである。
【0029】
3は吸着体2を外側から覆うフィルム状カバーを示し、該カバー3は、後述する上,下それぞれ2枚の内側フィルム体4,外側フィルム体5を用いて構成される。そして、これらの内側フィルム体4と外側フィルム体5は、吸着体2を上,下両側から挟んだ状態で、後述の封止部8により4辺が連続的に封止される。これにより、カバー3は、吸着体2を外側から完全に封止状態で包み込むものである。
【0030】
4,5はカバー3を構成する内側フィルム体,外側フィルム体で、該内側フィルム体4と外側フィルム体5とは、例えば図5に示すように上,下2枚の組をなして設けられ、吸着体2を上,下両側からサンドイッチ状に挟むと共に、その4辺に後述の封止部8を形成することにより、吸着体2をカバー3として外側から包み込むものである。
【0031】
そして、内側フィルム体4と外側フィルム体5とは、それぞれ吸着体2よりも大きい寸法をもって長方形状をなす薄いシートとして形成され、吸着体2から側方(例えば、前,後方向と左,右方向)に張り出す外縁部側は、後述の封止部8により上,下方向で密封(熱シール)されるものである。また、内側フィルム体4と外側フィルム体5は、封止部8に該当する以外の部分では単に重ね合わされているだけであり、両者の間には後述の空気層6が形成されている。
【0032】
ここで、内側フィルム体4と外側フィルム体5は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)または塩化ビニル等の合成樹脂からなる微細な繊維を、網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料を用いて構成されている。
【0033】
そして、内側フィルム体4,外側フィルム体5は、その内,外を気体が透過するのを許し、液体が透過するのを規制する性質を有している。即ち、内側フィルム体4と外側フィルム体5は、気体に対する透過性を有するものの、液体に対しては高い不透過性を有するものである。
【0034】
6は内側フィルム体4と外側フィルム体5との間に形成された空気層で、この空気層6は、内側フィルム体4,外側フィルム体5の外縁部側を後述の封止部8により封止した状態で、液体の透過を規制する密閉空間(液密空間)として形成される。そして、この空気層6は、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が液体状態で滲み出すのを、内側フィルム体4,外側フィルム体5と共に2重、3重に遮断する機能を有している。
【0035】
7は鮮度保持液の揮散速度を調整する揮散調整部としての被覆層で、該被覆層7は、内側フィルム体4と外側フィルム体5のうち吸着体2と直に接触する内側フィルム体4に積層化して設けられている。そして、この被覆層7は、気体(揮発してガス化した鮮度保持液)に対し高い不透過性を有する合成樹脂材料を用いて形成され、図2、図4に示す幅寸法a1 をもって内側フィルム体4を、その内面側から部分的に覆うものである。
【0036】
この場合、被覆層7は、例えば図6に示すように予め形成したフィルム状シートからなる被覆層素材7′を、接着、貼り付け等の手段を用いて内側フィルム体4に被せるように一体化して形成すればよい。また、後述の如く塗布等の手段(図7参照)を用いて形成してもよいものである。そして、被覆層7は、例えば内側フィルム体4と長さ寸法が等しく、幅寸法a1 が内側フィルム体4よりも小さい短冊形状に形成されている。
【0037】
これにより、吸着体2に含浸された鮮度保持液が揮発(気化)して内側フィルム体4を透過するときの通路面積は、例えば図2に示す寸法b1 (幅寸法a1 の両側)の部分に制限されるため、鮮度保持液の揮散速度は、被覆層7の幅寸法a1 を増減するに応じて調整されるものである。
【0038】
8,8,…は各内側フィルム体4,外側フィルム体5の外縁部側に形成された封止部で、これらの封止部8は、図3〜図5に示すように吸着体2を上,下両側から挟んだ2組の内側フィルム体4,外側フィルム体5を、その外縁側に位置する4辺で封止することにより形成されている。この場合、封止部8は、例えば食品に対して安全な糊剤、または熱圧着(熱シール)等の手段を用いて形成される。そして、合計4辺からなる封止部8は、各内側フィルム体4,外側フィルム体5の外縁部側を密封するようにシールし、例えば吸着体2内の鮮度保持液が封止部8の位置から外部に漏れたり、揮散したりするのを阻止するものである。
【0039】
また、合計4辺からなる封止部8は、吸着体2に含浸された鮮度保持液がガス化(気化)した状態で内側フィルム体4を透過するときの通路面積を、例えば図2に示すように被覆層7(幅寸法a1 )と各封止部8との間に位置する寸法b1 の部分に制限するものである。
【0040】
第1の実施の形態による鮮度保持具1は上述の如き構成を有するもので、次に、その鮮度保持動作について説明する。
【0041】
まず、鮮度保持具1の吸着体2内に含浸させた鮮度保持液は、カバー3内で徐々に揮発し、ガス化した鮮度保持液の揮発成分(気体)が内側フィルム体4と外側フィルム体5を透過して外部に揮散される。
【0042】
この場合、カバー3内でガス化した鮮度保持液の揮発成分が、内側フィルム体4と外側フィルム体5をそのまま気体状態で透過してしまうと、鮮度保持液の揮散速度が過度に速くなり、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に対する鮮度を保持する期間、寿命が短くなる可能性が生じる。
【0043】
しかし、カバー3を構成する内側フィルム体4には、気体に対して高い不透過性を有する被覆層7を内面側に積層化して設けている。これにより、鮮度保持液の揮発成分(気体)が内側フィルム体4を透過するときの通路面積を、図2に例示した被覆層7(幅寸法a1 )と各封止部8との間の寸法b1の部分に制限することができ、被覆層7の幅寸法a1 に従って鮮度保持液の揮散速度を調整することができる。
【0044】
また、カバー3を構成する内側フィルム体4と外側フィルム体5は、気体の透過を許すが、液体の透過は規制する不織布状のフィルム材料により形成しているので、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が、液体状態のままカバー3の外部に滲み出すのを防ぐことができる。しかし、カバー3の外側から吸着体2に強制的な外力(例えば、圧縮方向の荷重)等が作用した場合には、吸着体2内に含浸させた鮮度保持液の一部が、強制的な外力等の作用で内側フィルム体4を透過してしまう可能性はある。
【0045】
そこで、第1の実施の形態では、カバー3を構成する内側フィルム体4と外側フィルム体5との間に空気層6を介在させる構成としている。これにより、吸着体2内の鮮度保持液の一部が強制的な外力等の作用で内側フィルム体4を仮に透過したとしても、このときの鮮度保持液を空気層6内に捕捉して溜めることができ、鮮度保持液が液体状態のままカバー3の外部に滲み出すのを、内側フィルム体4と空気層6と外側フィルム体5とによって2重、3重に防ぐことができる。
【0046】
従って、第1の実施の形態によれば、上述の如き構成を採用することにより、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が、強制的な外力の作用等で外部に滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができると共に、鮮度保持具としての商品価値を高めることができる。
【0047】
しかも、内側フィルム体4と外側フィルム体5のうち吸着体2に接触する内側フィルム体4には、鮮度保持液が吸着体2から外部に揮散するのを調整する不透過性の被覆層7を形成しているので、例えば被覆層7の幅寸法a1 等に応じて鮮度保持液の揮散速度を適正に調整することができ、食品等の鮮度保持効果を安定させることができる。
【0048】
また、第1の実施の形態で採用した鮮度保持具1のカバー3は、吸着体2を外側から完全に包み込んだ状態で4辺の封止部8により封止する構造であるから、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に吸着体2が直に接触することはなく、吸着体2内の鮮度保持液が食品の方に吸い取られる等の不具合を解消でき、鮮度保持具1としての寿命を延ばすことができる。
【0049】
なお、前記第1の実施の形態では、例えば図6に示すように予め形成したフィルム状シート(被覆層素材7′)を、接着、貼り付け等の手段で内側フィルム体4に積層化して被覆層7を形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図7に示す第1の変形例のように、被覆層7の素材となる不透過性の樹脂材料を噴霧ノズル11等で塗布する構成としてもよいものである。
【0050】
この場合、噴霧ノズル11は、加熱溶融状態の樹脂材料を内側フィルム体4に向けて矢示Z方向に噴霧しつつ、図7中の矢示X方向と矢示Y方向とに連続的に移動することにより、短冊形状をなす被覆層7を内側フィルム体4に積層化して形成するものである。
【0051】
次に、図8ないし図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、鮮度保持具21を吸着体2とフィルム状カバー22とにより構成し、このカバー22を、内側と外側の2枚のフィルム体23,24により構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0052】
ここで、内側フィルム体23,外側フィルム体24は、第1の実施の形態で述べた内側フィルム体4,外側フィルム体5(例えば、図4参照)に対して約2倍の寸法(幅寸法)に形成され、その中間部23A,24AをU字状に折曲げて吸着体2を外側から包み込む構成としている。このため、内側フィルム体23と外側フィルム体24は、中間部23A,24Aを除いた3辺の位置にのみ封止部8が形成され、これにより、カバー22は、吸着体2を外側から完全に封止状態で包み込むものである。
【0053】
また、内側フィルム体23に積層化された不透過性の被覆層25,25は、第1の実施の形態で述べた被覆層7とほぼ同様に形成されている。しかし、この場合は、内側フィルム体23,外側フィルム体24の中間部23A,24Aに封止部等を設ける必要がないため、被覆層25の幅寸法a2 は、第1の実施の形態で述べた被覆層7の幅寸法a1 よりも僅かに大きく形成されている(a2 >a1 )。
【0054】
そして、図9に例示するように、被覆層25(幅寸法a2 )と封止部8との間の寸法b2 ′と、被覆層25(幅寸法a2 )と中間部24A(23A)との間の寸法b2 とを、第1の実施の形態で述べた寸法b1 とそれぞれ等しい寸法に設定することにより、第1の実施の形態とほぼ同様な揮散速度を確保できるものである。
【0055】
かくして、このように構成される第2の実施の形態にあっても、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができるが、特に本実施の形態では、内側フィルム体23,外側フィルム体24からなる内,外2枚のフィルム体によってカバー22を構成でき、カバー22の構造を簡略化することができる。
【0056】
次に、図11および図12は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、揮散調整部としての被覆層を外側フィルム体に積層化して設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
図中、31は第3の実施の形態で採用した鮮度保持具で、該鮮度保持具31は、第1の実施の形態で述べた鮮度保持具1と同様に、吸着体2と、内側フィルム体4、外側フィルム体5等からなるフィルム状カバー3とにより構成されている。しかし、この場合の鮮度保持具31は、後述の被覆層32を外側フィルム体5に設けている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0058】
32は揮散調整部としての被覆層で、該被覆層32は、第1の実施の形態で述べた被覆層7と同様に気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料により形成されている。しかし、この場合の被覆層32は、内側フィルム体4ではなく、外側フィルム体5に積層化して設けられている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0059】
即ち、被覆層32は、図11に示す如く幅寸法a3 をもって外側フィルム5の内側面を部分的に覆う構成となっている。そして、吸着体2に含浸された鮮度保持液が揮発(気化)して外側フィルム体5を透過するときの通路面積は、例えば図11に示すように被覆層32(幅寸法a3 )と各封止部8との間に位置する寸法b3 の部分に制限される。これにより、鮮度保持液の揮散速度は、被覆層32の面積を増減するに応じて調整されるものである。なお、この場合の幅寸法a3 は、第1の実施の形態で述べた幅寸法a1 に等しい寸法でよく、寸法b3 は、第1の実施の形態で述べた寸法b1 に等しい寸法でよい。
【0060】
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、外側フィルム体5の内側面に被覆層32を設けることにより、第1の実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0061】
次に、図13および図14は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、揮散調整部としての被覆層を内側フィルム体と外側フィルム体の両方に積層化して設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
図中、41は本実施の形態で採用した鮮度保持具で、該鮮度保持具41は、第1の実施の形態で述べた鮮度保持具1と同様に、吸着体2と、内側フィルム体4、外側フィルム体5等からなるフィルム状カバー3とにより構成されている。しかし、この場合の鮮度保持具41は、後述の被覆層42,43を内側フィルム体4,外側フィルム体5に設けている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0063】
42は揮散調整部としての被覆層で、該被覆層42は、第1の実施の形態で述べた被覆層7と同様に、気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料を内側フィルム体4に積層化することにより形成されている。しかし、この場合の被覆層42は、図13に示すように、その幅寸法a4 が第1の実施の形態で述べた被覆層7(幅寸法a1 )よりも小さく形成されている。このため、被覆層42と封止部8との間の寸法b4 は、第1の実施の形態で述べた寸法b1 よりも大きい寸法に設定されるものである。
【0064】
43は外側フィルム体5に設けられた揮散調整部としての被覆層で、該被覆層43は、前述した内側フィルム体4の被覆層42と同様に気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料により形成されている。そして、この場合の被覆層43は、図13に示す如く内側フィルム体4の被覆層42と同様に、幅寸法a4 をもって外側フィルム5の内側面を部分的に覆う構成となっている。
【0065】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、揮散調整部としての被覆層42,43を設けることにより、第1の実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、内側フィルム体4に被覆層42を設けると共に、外側フィルム体5には被覆層43を設け、該被覆層42,43の幅寸法a4 を第1の実施の形態で述べた被覆層7(幅寸法a1 )よりも小さく形成し、被覆層42,43と封止部8との間の寸法b4 を大きくする構成としている。
【0066】
これにより、フィルム状カバー3内で吸着体2から揮発(気化)したガスは、内側フィルム体4を透過するときの通路面積が被覆層42(幅寸法a4 )により封止部8との間の寸法b4 の範囲に制限され、その後は内側フィルム体4、外側フィルム体5間の空気層6に到達した状態で、外側フィルム体5を透過するときの通路面積が被覆層43(幅寸法a4 )によって封止部8との間の寸法b4 の範囲に制限される。
【0067】
このため、フィルム状カバー3内における鮮度保持液のガス(気体)濃度は、内側フィルム体4の内側が最も高い濃度となり、外側の空気層6内は中間の濃度となり、外側フィルム体5の外側が低い濃度となるように設定できる。そして、鮮度保持液の揮散速度は、内側フィルム体4の被覆層42と、外側フィルム体5の被覆層43との両方によって調整され、被覆層42,43の一方または両方の面積を適宜に増減することにより、その揮散速度を調整することができるものである。
【0068】
次に、図15ないし図17は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、内側フィルム体に積層化して設ける不透過性の被覆層を塗布手段により、例えば縞模様をなすように帯状の被覆層として複数個設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0069】
図中、51は第5の実施の形態で採用した鮮度保持具で、該鮮度保持具51は、第1の実施の形態で述べた鮮度保持具1と同様に、吸着体2と、内側フィルム体4、外側フィルム体5等からなるフィルム状カバー3とにより構成されている。しかし、この場合の鮮度保持具51は、後述の被覆層52を内側フィルム体4に帯状をなして複数個設けている点で第1の実施の形態とは異なるものである。
【0070】
52,52,…は揮散調整部としての被覆層で、該各被覆層52は、第1の実施の形態で述べた被覆層7と同様に、気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料を内側フィルム体4に積層化することにより形成されている。しかし、この場合の被覆層52は、後述の吐出ノズル54を用いて加熱溶融状態の樹脂材料を内側フィルム体4に塗布することにより、内側フィルム体4の表面(内側面)に縞模様をなして複数個設けられている。
【0071】
即ち、各被覆層52は、内側フィルム体4上を帯状をなして直線状に延び、各被覆層52の間は、同じく帯状をなして延びる気体の透過部53,53,…となっている。そして、吸着体2に含浸された鮮度保持液が揮発(気化)して内側フィルム体4を透過するときの通路面積は、これらの透過部53の合計面積となり、鮮度保持液の揮散速度は、各被覆層52(透過部53)の合計面積を増減するに応じて調整されるものである。
【0072】
54は被覆層52を形成する塗布手段としての吐出ノズルで、該吐出ノズル54は、例えば図16に示すようにT−dieノズルと呼ばれる塗布具を用いて構成され、その先端側には小さなスリット状をなす複数の吐出口54A,54A,…が一列に並べるように一定の間隔をもって形成されている。ここで、吐出ノズル54は、例えば押出機(図示せず)から加熱溶融状態の樹脂材料が供給されると、この樹脂材料を各吐出口54Aから吐出する。
【0073】
そして、吐出ノズル54の各吐出口54Aから吐出された樹脂材料は、内側フィルム体4の表面側に縞模様をなす複数の薄膜層となって塗布される。これにより、内側フィルム体4には、複数の帯状をなす被覆層52が直線状に延びて形成され、これらの被覆層52は、その積層化部位で内側フィルム体4に気体に対する不透過性を与えるものである。
【0074】
かくして、このように構成される第5の実施の形態でも、内側フィルム体4の内側面に複数の被覆層52を設けることにより、第1の実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、複数の吐出口54Aが並列に設けられた吐出ノズル54を用いて、不透過性の樹脂材料を加熱溶融状態で各吐出口54Aから内側フィルム体4に塗布する構成としている。
【0075】
このため、内側フィルム体4には帯状の被覆層52を縞模様をなすように積層化して形成することができ、鮮度保持具としての仕上がり具合を向上させ、商品価値を高めることができる。そして、吸着体2に含浸させた鮮度保持液を縞模様なす各被覆層52の間から透過部53等を介して外側へと揮散でき、その揮散速度を調整することができる。
【0076】
なお、前記第5の実施の形態では、帯状の被覆層52を内側フィルム体4の長さ方向に直線状に延ばして形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図18に示す第2の変形例のように、ジグザグ模様なすように複数の被覆層52′を内側フィルム体4に形成する構成としてもよい。また、例えば図19に示す第3の変形例のように、水玉模様をなす複数の被覆層52″を内側フィルム体4に形成する構成としてもよいものである。そして、この点は、前記第2,第3,第4の実施の形態についても同様である。
【0077】
また、前記第1の実施の形態では、吸着体2と内側フィルム体4と外側フィルム体5を長方形状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば吸着体は三角形、正方形、台形、五角形等の多角形状をなす平板体または円柱体等により形成してもよく、フィルム体は吸着体よりも大なる寸法をもって形成すればよいものである。そして、この点は第2〜第5の実施の形態についても同様である。
【0078】
また、フィルム状カバーを構成する内側フィルム体と外側フィルム体とは、予め袋状にそれぞれ形成された2枚の袋体を用いて構成してもよい。そして、この場合は、2枚の袋体を2重封筒のように内,外で重ね合わせておき、内側の袋体内に吸着体を挿入した状態で、内,外の袋体の開口側を封止する構成としてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態による鮮度保持具を斜め上方からみた斜視図である。
【図2】図1の鮮度保持具を上側からみた平面図である。
【図3】鮮度保持具を図1中の矢示 III−III 方向から拡大してみた縦断面図である。
【図4】鮮度保持具を図1中の矢示IV−IV方向から拡大してみた横断面図である。
【図5】吸着体を内側フィルム体と外側フィルム体とで包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図6】不透過性の被覆層を内側フィルム体に貼り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図7】第1の変形例による被覆層を内側フィルム体に塗布する状態を示す分解斜視図である。
【図8】第2の実施の形態による鮮度保持具を斜め上方からみた斜視図である。
【図9】図8の鮮度保持具を上側からみた平面図である。
【図10】第2の実施の形態による鮮度保持具を図8中の矢示X−X方向から拡大してみた断面図である。
【図11】第3の実施の形態による鮮度保持具を示す図4と同様位置での断面図である。
【図12】図11中の吸着体を内側フィルム体と外側フィルム体とで包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図13】第4の実施の形態による鮮度保持具を示す図4と同様位置での断面図である。
【図14】図13中の吸着体を内側フィルム体と外側フィルム体とで包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図15】第5の実施の形態による鮮度保持具を示す平面図である。
【図16】吐出ノズルを用いて内側フィルム体に被覆層を塗布している状態を示す斜視図である。
【図17】第5の実施の形態による鮮度保持具を図15中の矢示XVII−XVII方向から拡大してみた断面図である。
【図18】第2の変形例による被覆層を内側フィルム体に形成した状態を示す平面図である。
【図19】第3の変形例による被覆層を内側フィルム体に形成した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0080】
1,21,31,41,51 鮮度保持具
2 吸着体
3,22 フィルム状カバー
4,23 内側フィルム体
5,24 外側フィルム体
6 空気層
7,25,32,42,43,52,52′,52″ 被覆層(揮散調整部)
8 封止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食料品、菓子等の食品類を長期に保存し、その鮮度を保持するのに好適に用いられる鮮度保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品またはその他の被保存物の鮮度を保つために、鮮度保持具を用いることは知られている。そして、このような鮮度保持具は、例えば食料品、菓子類等の食品包装体内に、一個または複数個挿入して用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の従来技術による鮮度保持具は、例えばエチルアルコール等を主成分とする揮発性の鮮度保持液を吸着体に含浸させることにより構成され、この吸着体は、例えば天然パルプ材等を用いて長方形状をなす小型の平板片として形成されるものである。
【0004】
また、このような吸着体を外側から覆うフィルム状カバーは、吸着体の側方に張出すスカート部を有し、このスカート部には、前記鮮度保持液が吸着体から徐々に外部へと揮散するように揮散用開口を設ける構成としている。そして、前記吸着体内の鮮度保持液は、カバーのスカート部から前記揮散用開口を介して食品包装体内に徐々に揮散する。
【0005】
これにより、鮮度保持液は、食品包装体内の空間(ヘッドスペース)を揮発した気体(ガス化雰囲気)で満たすと共に、親水性のある食品に対しては表層側に吸着され、例えばカビ等の微生物の増殖を抑制するものである。
【0006】
【特許文献1】特許第3159691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術の鮮度保持具では、吸着体を外側から覆うフィルム状カバーに揮散用開口を設け、この揮散用開口を通じて吸着体内の鮮度保持液が、食品包装体内へと徐々に揮散するようにしている。しかし、消費者等のユーザーにとっては、このような揮散用開口がカバーの破れ(破断、損傷による開口)と誤解することがあり、さらなる改良が要望されている。
【0008】
また、例えば菓子類等の食品包装体内に鮮度保持具を挿入して用いる場合に、複数個の食品包装体を積み重ねた状態で運搬、搬送すると、その途中等で鮮度保持具に大きな外力が作用することがある。そして、吸着体内に含浸させた鮮度保持液は、外力の作用を受けると、前記揮散用開口から液体状態のまま外部に滲み出す虞れがある。
【0009】
このように、鮮度保持液が液体状態のまま、食品包装体内に滲み出してしまうと、吸着体内の鮮度保持液が菓子類(食品)の方へと早期に吸い取られることがあり、これにより鮮度保持具としての寿命が低下し、且つ、食品の味を悪くしたり、食品の形状を損傷させるという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、吸着体に含浸させた鮮度保持液が外力の作用等で滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持できると共に、商品価値を高めることができるようにした鮮度保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために本発明は、食品またはその他の被保存物の鮮度を保持するために揮発性の鮮度保持液が含浸して吸着される吸着体と、該吸着体を外側から覆うフィルム状カバーとからなる鮮度保持具に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記フィルム状カバーを、気体が透過するのを許し液体が透過するのを規制する気体透過性材料を用いて形成された内側と外側の少なくとも2枚のフィルム体により構成し、かつ前記フィルム状カバーには、前記内側フィルム体と外側フィルム体とを互いに重ね合せることにより両者の間に空気層を設ける構成としたことにある。
【0013】
また、請求項2の発明によると、前記内側フィルム体と外側フィルム体とのうち一方のフィルム体に、または前記内側フィルム体と外側フィルム体の両方のフィルム体には、前記鮮度保持液が吸着体から外部に揮散するのを調整する揮散調整部を設ける構成としている。
【0014】
また、請求項3の発明によると、前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体よりも小さな面積をもって形成された被覆層により構成している。
【0015】
また、請求項4の発明によると、前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体に形成された複数の被覆層によって構成し、前記鮮度保持液は、これらの被覆層の間から外側に向けて揮散する構成としている。
【0016】
さらに、請求項5の発明によると、前記内側フィルム体と外側フィルム体とは、微細な繊維を網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料により構成している。
【発明の効果】
【0017】
上述の如く、請求項1の発明によれば、吸着体を外側から覆うフィルム状カバーを、気体が透過するのを許し液体が透過するのを規制する気体透過性材料により形成された内側と外側の少なくとも2枚のフィルム体により構成し、これらの内側フィルム体,外側フィルム体間には、空気層を介在させる構成としているので、吸着体に含浸させた鮮度保持液から揮発しガス化した気体は、内側フィルム体と外側フィルム体とを透過して外部へと揮散することができる。これにより、従来技術のように、揮散用開口等を特別に設けることなく、鮮度保持液を外部に揮散させることができ、食品等に対する鮮度保持効果を発揮することができる。
【0018】
また、吸着体内に含浸させた鮮度保持液の一部が、強制的な外力等の作用により内側フィルム体を仮に透過したとしても、内側フィルム体と外側フィルム体と間には空気層を形成しているので、このときの鮮度保持液を空気層内に捕捉して溜めることができ、鮮度保持液が液体状態のまま外部に滲み出すのを、内側フィルム体と空気層と外側フィルム体とによって2重、3重に防ぐことができる。
【0019】
従って、吸着体に含浸させた鮮度保持液が外力の作用等で外部に滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができると共に、鮮度保持具としての商品価値を高めることができる。
【0020】
また、請求項2の発明によれば、内側フィルム体と外側フィルム体のうちいずれか一方または両方のフィルム体には、鮮度保持液が吸着体から外部に揮散するのを調整する揮散調整部を設ける構成としている。これにより、吸着体に含浸させた鮮度保持液から揮発しガス化した気体が、内側フィルム体と外側フィルム体とを透過して外部に揮散するときの速度を、揮散調整部によって適正に保つことができ、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができる。
【0021】
また、請求項3の発明では、前記揮散調整部を、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体よりも小さい面積をもって形成された被覆層により構成しているので、該被覆層によって内側フィルム体と外側フィルム体の一方または両方を部分的に覆うことができ、鮮度保持液の揮散速度を被覆層の面積に応じて調整することができる。そして、このような揮散調整部となる不透過性の被覆層は、例えば接着、貼り付け、または塗布等の手段を用いて内側フィルム体と外側フィルム体の一方または両方に積層化するように一体化して設けることができる。
【0022】
また、請求項4の発明は、不透過性の材料からなる被覆層を内側フィルム体と外側フィルム体の一方または両方に複数設ける構成としているので、例えば複数の吐出口が並列に設けられた吐出ノズル等を用いて、不透過性の樹脂材料を加熱溶融状態で各吐出口から前記フィルム体に塗布することにより、当該フィルム体に帯状の被覆層を縞模様をなすように積層化して形成することができ、鮮度保持具としての仕上がり具合を向上させ、商品価値を高めることができる。そして、この場合には、吸着体に含浸させた鮮度保持液を縞模様をなす各被覆層の間から外側に向けて揮散させ、その揮散速度を調整することができる。
【0023】
さらに、請求項5の発明によると、内側フィルム体と外側フィルム体とは、微細な繊維を網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料により構成しているため、ガス化した鮮度保持液の蒸気(気体)を、不織布状に形成した内側フィルム体と外側フィルム体とを透過させ、外部へと揮散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態による鮮度保持具を、食品保存のために用いた場合を例に挙げ添付図面に従って詳細に説明する。
【0025】
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示し、本実施の形態の形態では、内側フィルム体に被覆層を設けた場合を例に挙げて説明する。
【0026】
図中、1は本実施の形態で採用した鮮度保持具を示し、該鮮度保持具1は、後述の吸着体2と、吸着体2を外側から封止するように覆う後述のフィルム状カバー3とにより大略構成されている。
【0027】
2は鮮度保持液が含浸状態で吸着される吸着体で、該吸着体2は、例えば特殊処理高吸着性ヴァージンパルプ材等を用いて、図2〜図5に示すように長方形の平板状に形成され、その長さは、例えば20〜60mm程度で、幅寸法が15〜40mm程度となり、厚さ寸法は2mm程度となっている。
【0028】
そして、吸着体2内には、例えばエチルアルコール等を主成分とする揮発性の鮮度保持液が含浸され、この鮮度保持液は、吸着体2の外側面から徐々に揮発することにより後述の内側フィルム体4,外側フィルム体5を介して外部へと揮散される。これによって、例えば菓子類等の食品包装体(図示せず)内は、ガス化した鮮度保持液の蒸気(気体)で満たされ、鮮度保持効果が得られるものである。
【0029】
3は吸着体2を外側から覆うフィルム状カバーを示し、該カバー3は、後述する上,下それぞれ2枚の内側フィルム体4,外側フィルム体5を用いて構成される。そして、これらの内側フィルム体4と外側フィルム体5は、吸着体2を上,下両側から挟んだ状態で、後述の封止部8により4辺が連続的に封止される。これにより、カバー3は、吸着体2を外側から完全に封止状態で包み込むものである。
【0030】
4,5はカバー3を構成する内側フィルム体,外側フィルム体で、該内側フィルム体4と外側フィルム体5とは、例えば図5に示すように上,下2枚の組をなして設けられ、吸着体2を上,下両側からサンドイッチ状に挟むと共に、その4辺に後述の封止部8を形成することにより、吸着体2をカバー3として外側から包み込むものである。
【0031】
そして、内側フィルム体4と外側フィルム体5とは、それぞれ吸着体2よりも大きい寸法をもって長方形状をなす薄いシートとして形成され、吸着体2から側方(例えば、前,後方向と左,右方向)に張り出す外縁部側は、後述の封止部8により上,下方向で密封(熱シール)されるものである。また、内側フィルム体4と外側フィルム体5は、封止部8に該当する以外の部分では単に重ね合わされているだけであり、両者の間には後述の空気層6が形成されている。
【0032】
ここで、内側フィルム体4と外側フィルム体5は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)または塩化ビニル等の合成樹脂からなる微細な繊維を、網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料を用いて構成されている。
【0033】
そして、内側フィルム体4,外側フィルム体5は、その内,外を気体が透過するのを許し、液体が透過するのを規制する性質を有している。即ち、内側フィルム体4と外側フィルム体5は、気体に対する透過性を有するものの、液体に対しては高い不透過性を有するものである。
【0034】
6は内側フィルム体4と外側フィルム体5との間に形成された空気層で、この空気層6は、内側フィルム体4,外側フィルム体5の外縁部側を後述の封止部8により封止した状態で、液体の透過を規制する密閉空間(液密空間)として形成される。そして、この空気層6は、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が液体状態で滲み出すのを、内側フィルム体4,外側フィルム体5と共に2重、3重に遮断する機能を有している。
【0035】
7は鮮度保持液の揮散速度を調整する揮散調整部としての被覆層で、該被覆層7は、内側フィルム体4と外側フィルム体5のうち吸着体2と直に接触する内側フィルム体4に積層化して設けられている。そして、この被覆層7は、気体(揮発してガス化した鮮度保持液)に対し高い不透過性を有する合成樹脂材料を用いて形成され、図2、図4に示す幅寸法a1 をもって内側フィルム体4を、その内面側から部分的に覆うものである。
【0036】
この場合、被覆層7は、例えば図6に示すように予め形成したフィルム状シートからなる被覆層素材7′を、接着、貼り付け等の手段を用いて内側フィルム体4に被せるように一体化して形成すればよい。また、後述の如く塗布等の手段(図7参照)を用いて形成してもよいものである。そして、被覆層7は、例えば内側フィルム体4と長さ寸法が等しく、幅寸法a1 が内側フィルム体4よりも小さい短冊形状に形成されている。
【0037】
これにより、吸着体2に含浸された鮮度保持液が揮発(気化)して内側フィルム体4を透過するときの通路面積は、例えば図2に示す寸法b1 (幅寸法a1 の両側)の部分に制限されるため、鮮度保持液の揮散速度は、被覆層7の幅寸法a1 を増減するに応じて調整されるものである。
【0038】
8,8,…は各内側フィルム体4,外側フィルム体5の外縁部側に形成された封止部で、これらの封止部8は、図3〜図5に示すように吸着体2を上,下両側から挟んだ2組の内側フィルム体4,外側フィルム体5を、その外縁側に位置する4辺で封止することにより形成されている。この場合、封止部8は、例えば食品に対して安全な糊剤、または熱圧着(熱シール)等の手段を用いて形成される。そして、合計4辺からなる封止部8は、各内側フィルム体4,外側フィルム体5の外縁部側を密封するようにシールし、例えば吸着体2内の鮮度保持液が封止部8の位置から外部に漏れたり、揮散したりするのを阻止するものである。
【0039】
また、合計4辺からなる封止部8は、吸着体2に含浸された鮮度保持液がガス化(気化)した状態で内側フィルム体4を透過するときの通路面積を、例えば図2に示すように被覆層7(幅寸法a1 )と各封止部8との間に位置する寸法b1 の部分に制限するものである。
【0040】
第1の実施の形態による鮮度保持具1は上述の如き構成を有するもので、次に、その鮮度保持動作について説明する。
【0041】
まず、鮮度保持具1の吸着体2内に含浸させた鮮度保持液は、カバー3内で徐々に揮発し、ガス化した鮮度保持液の揮発成分(気体)が内側フィルム体4と外側フィルム体5を透過して外部に揮散される。
【0042】
この場合、カバー3内でガス化した鮮度保持液の揮発成分が、内側フィルム体4と外側フィルム体5をそのまま気体状態で透過してしまうと、鮮度保持液の揮散速度が過度に速くなり、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に対する鮮度を保持する期間、寿命が短くなる可能性が生じる。
【0043】
しかし、カバー3を構成する内側フィルム体4には、気体に対して高い不透過性を有する被覆層7を内面側に積層化して設けている。これにより、鮮度保持液の揮発成分(気体)が内側フィルム体4を透過するときの通路面積を、図2に例示した被覆層7(幅寸法a1 )と各封止部8との間の寸法b1の部分に制限することができ、被覆層7の幅寸法a1 に従って鮮度保持液の揮散速度を調整することができる。
【0044】
また、カバー3を構成する内側フィルム体4と外側フィルム体5は、気体の透過を許すが、液体の透過は規制する不織布状のフィルム材料により形成しているので、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が、液体状態のままカバー3の外部に滲み出すのを防ぐことができる。しかし、カバー3の外側から吸着体2に強制的な外力(例えば、圧縮方向の荷重)等が作用した場合には、吸着体2内に含浸させた鮮度保持液の一部が、強制的な外力等の作用で内側フィルム体4を透過してしまう可能性はある。
【0045】
そこで、第1の実施の形態では、カバー3を構成する内側フィルム体4と外側フィルム体5との間に空気層6を介在させる構成としている。これにより、吸着体2内の鮮度保持液の一部が強制的な外力等の作用で内側フィルム体4を仮に透過したとしても、このときの鮮度保持液を空気層6内に捕捉して溜めることができ、鮮度保持液が液体状態のままカバー3の外部に滲み出すのを、内側フィルム体4と空気層6と外側フィルム体5とによって2重、3重に防ぐことができる。
【0046】
従って、第1の実施の形態によれば、上述の如き構成を採用することにより、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が、強制的な外力の作用等で外部に滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができると共に、鮮度保持具としての商品価値を高めることができる。
【0047】
しかも、内側フィルム体4と外側フィルム体5のうち吸着体2に接触する内側フィルム体4には、鮮度保持液が吸着体2から外部に揮散するのを調整する不透過性の被覆層7を形成しているので、例えば被覆層7の幅寸法a1 等に応じて鮮度保持液の揮散速度を適正に調整することができ、食品等の鮮度保持効果を安定させることができる。
【0048】
また、第1の実施の形態で採用した鮮度保持具1のカバー3は、吸着体2を外側から完全に包み込んだ状態で4辺の封止部8により封止する構造であるから、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に吸着体2が直に接触することはなく、吸着体2内の鮮度保持液が食品の方に吸い取られる等の不具合を解消でき、鮮度保持具1としての寿命を延ばすことができる。
【0049】
なお、前記第1の実施の形態では、例えば図6に示すように予め形成したフィルム状シート(被覆層素材7′)を、接着、貼り付け等の手段で内側フィルム体4に積層化して被覆層7を形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図7に示す第1の変形例のように、被覆層7の素材となる不透過性の樹脂材料を噴霧ノズル11等で塗布する構成としてもよいものである。
【0050】
この場合、噴霧ノズル11は、加熱溶融状態の樹脂材料を内側フィルム体4に向けて矢示Z方向に噴霧しつつ、図7中の矢示X方向と矢示Y方向とに連続的に移動することにより、短冊形状をなす被覆層7を内側フィルム体4に積層化して形成するものである。
【0051】
次に、図8ないし図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、鮮度保持具21を吸着体2とフィルム状カバー22とにより構成し、このカバー22を、内側と外側の2枚のフィルム体23,24により構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0052】
ここで、内側フィルム体23,外側フィルム体24は、第1の実施の形態で述べた内側フィルム体4,外側フィルム体5(例えば、図4参照)に対して約2倍の寸法(幅寸法)に形成され、その中間部23A,24AをU字状に折曲げて吸着体2を外側から包み込む構成としている。このため、内側フィルム体23と外側フィルム体24は、中間部23A,24Aを除いた3辺の位置にのみ封止部8が形成され、これにより、カバー22は、吸着体2を外側から完全に封止状態で包み込むものである。
【0053】
また、内側フィルム体23に積層化された不透過性の被覆層25,25は、第1の実施の形態で述べた被覆層7とほぼ同様に形成されている。しかし、この場合は、内側フィルム体23,外側フィルム体24の中間部23A,24Aに封止部等を設ける必要がないため、被覆層25の幅寸法a2 は、第1の実施の形態で述べた被覆層7の幅寸法a1 よりも僅かに大きく形成されている(a2 >a1 )。
【0054】
そして、図9に例示するように、被覆層25(幅寸法a2 )と封止部8との間の寸法b2 ′と、被覆層25(幅寸法a2 )と中間部24A(23A)との間の寸法b2 とを、第1の実施の形態で述べた寸法b1 とそれぞれ等しい寸法に設定することにより、第1の実施の形態とほぼ同様な揮散速度を確保できるものである。
【0055】
かくして、このように構成される第2の実施の形態にあっても、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができるが、特に本実施の形態では、内側フィルム体23,外側フィルム体24からなる内,外2枚のフィルム体によってカバー22を構成でき、カバー22の構造を簡略化することができる。
【0056】
次に、図11および図12は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、揮散調整部としての被覆層を外側フィルム体に積層化して設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
図中、31は第3の実施の形態で採用した鮮度保持具で、該鮮度保持具31は、第1の実施の形態で述べた鮮度保持具1と同様に、吸着体2と、内側フィルム体4、外側フィルム体5等からなるフィルム状カバー3とにより構成されている。しかし、この場合の鮮度保持具31は、後述の被覆層32を外側フィルム体5に設けている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0058】
32は揮散調整部としての被覆層で、該被覆層32は、第1の実施の形態で述べた被覆層7と同様に気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料により形成されている。しかし、この場合の被覆層32は、内側フィルム体4ではなく、外側フィルム体5に積層化して設けられている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0059】
即ち、被覆層32は、図11に示す如く幅寸法a3 をもって外側フィルム5の内側面を部分的に覆う構成となっている。そして、吸着体2に含浸された鮮度保持液が揮発(気化)して外側フィルム体5を透過するときの通路面積は、例えば図11に示すように被覆層32(幅寸法a3 )と各封止部8との間に位置する寸法b3 の部分に制限される。これにより、鮮度保持液の揮散速度は、被覆層32の面積を増減するに応じて調整されるものである。なお、この場合の幅寸法a3 は、第1の実施の形態で述べた幅寸法a1 に等しい寸法でよく、寸法b3 は、第1の実施の形態で述べた寸法b1 に等しい寸法でよい。
【0060】
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、外側フィルム体5の内側面に被覆層32を設けることにより、第1の実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0061】
次に、図13および図14は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、揮散調整部としての被覆層を内側フィルム体と外側フィルム体の両方に積層化して設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
図中、41は本実施の形態で採用した鮮度保持具で、該鮮度保持具41は、第1の実施の形態で述べた鮮度保持具1と同様に、吸着体2と、内側フィルム体4、外側フィルム体5等からなるフィルム状カバー3とにより構成されている。しかし、この場合の鮮度保持具41は、後述の被覆層42,43を内側フィルム体4,外側フィルム体5に設けている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0063】
42は揮散調整部としての被覆層で、該被覆層42は、第1の実施の形態で述べた被覆層7と同様に、気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料を内側フィルム体4に積層化することにより形成されている。しかし、この場合の被覆層42は、図13に示すように、その幅寸法a4 が第1の実施の形態で述べた被覆層7(幅寸法a1 )よりも小さく形成されている。このため、被覆層42と封止部8との間の寸法b4 は、第1の実施の形態で述べた寸法b1 よりも大きい寸法に設定されるものである。
【0064】
43は外側フィルム体5に設けられた揮散調整部としての被覆層で、該被覆層43は、前述した内側フィルム体4の被覆層42と同様に気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料により形成されている。そして、この場合の被覆層43は、図13に示す如く内側フィルム体4の被覆層42と同様に、幅寸法a4 をもって外側フィルム5の内側面を部分的に覆う構成となっている。
【0065】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、揮散調整部としての被覆層42,43を設けることにより、第1の実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、内側フィルム体4に被覆層42を設けると共に、外側フィルム体5には被覆層43を設け、該被覆層42,43の幅寸法a4 を第1の実施の形態で述べた被覆層7(幅寸法a1 )よりも小さく形成し、被覆層42,43と封止部8との間の寸法b4 を大きくする構成としている。
【0066】
これにより、フィルム状カバー3内で吸着体2から揮発(気化)したガスは、内側フィルム体4を透過するときの通路面積が被覆層42(幅寸法a4 )により封止部8との間の寸法b4 の範囲に制限され、その後は内側フィルム体4、外側フィルム体5間の空気層6に到達した状態で、外側フィルム体5を透過するときの通路面積が被覆層43(幅寸法a4 )によって封止部8との間の寸法b4 の範囲に制限される。
【0067】
このため、フィルム状カバー3内における鮮度保持液のガス(気体)濃度は、内側フィルム体4の内側が最も高い濃度となり、外側の空気層6内は中間の濃度となり、外側フィルム体5の外側が低い濃度となるように設定できる。そして、鮮度保持液の揮散速度は、内側フィルム体4の被覆層42と、外側フィルム体5の被覆層43との両方によって調整され、被覆層42,43の一方または両方の面積を適宜に増減することにより、その揮散速度を調整することができるものである。
【0068】
次に、図15ないし図17は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、内側フィルム体に積層化して設ける不透過性の被覆層を塗布手段により、例えば縞模様をなすように帯状の被覆層として複数個設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0069】
図中、51は第5の実施の形態で採用した鮮度保持具で、該鮮度保持具51は、第1の実施の形態で述べた鮮度保持具1と同様に、吸着体2と、内側フィルム体4、外側フィルム体5等からなるフィルム状カバー3とにより構成されている。しかし、この場合の鮮度保持具51は、後述の被覆層52を内側フィルム体4に帯状をなして複数個設けている点で第1の実施の形態とは異なるものである。
【0070】
52,52,…は揮散調整部としての被覆層で、該各被覆層52は、第1の実施の形態で述べた被覆層7と同様に、気体に対して高い不透過性を有する合成樹脂材料を内側フィルム体4に積層化することにより形成されている。しかし、この場合の被覆層52は、後述の吐出ノズル54を用いて加熱溶融状態の樹脂材料を内側フィルム体4に塗布することにより、内側フィルム体4の表面(内側面)に縞模様をなして複数個設けられている。
【0071】
即ち、各被覆層52は、内側フィルム体4上を帯状をなして直線状に延び、各被覆層52の間は、同じく帯状をなして延びる気体の透過部53,53,…となっている。そして、吸着体2に含浸された鮮度保持液が揮発(気化)して内側フィルム体4を透過するときの通路面積は、これらの透過部53の合計面積となり、鮮度保持液の揮散速度は、各被覆層52(透過部53)の合計面積を増減するに応じて調整されるものである。
【0072】
54は被覆層52を形成する塗布手段としての吐出ノズルで、該吐出ノズル54は、例えば図16に示すようにT−dieノズルと呼ばれる塗布具を用いて構成され、その先端側には小さなスリット状をなす複数の吐出口54A,54A,…が一列に並べるように一定の間隔をもって形成されている。ここで、吐出ノズル54は、例えば押出機(図示せず)から加熱溶融状態の樹脂材料が供給されると、この樹脂材料を各吐出口54Aから吐出する。
【0073】
そして、吐出ノズル54の各吐出口54Aから吐出された樹脂材料は、内側フィルム体4の表面側に縞模様をなす複数の薄膜層となって塗布される。これにより、内側フィルム体4には、複数の帯状をなす被覆層52が直線状に延びて形成され、これらの被覆層52は、その積層化部位で内側フィルム体4に気体に対する不透過性を与えるものである。
【0074】
かくして、このように構成される第5の実施の形態でも、内側フィルム体4の内側面に複数の被覆層52を設けることにより、第1の実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、複数の吐出口54Aが並列に設けられた吐出ノズル54を用いて、不透過性の樹脂材料を加熱溶融状態で各吐出口54Aから内側フィルム体4に塗布する構成としている。
【0075】
このため、内側フィルム体4には帯状の被覆層52を縞模様をなすように積層化して形成することができ、鮮度保持具としての仕上がり具合を向上させ、商品価値を高めることができる。そして、吸着体2に含浸させた鮮度保持液を縞模様なす各被覆層52の間から透過部53等を介して外側へと揮散でき、その揮散速度を調整することができる。
【0076】
なお、前記第5の実施の形態では、帯状の被覆層52を内側フィルム体4の長さ方向に直線状に延ばして形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図18に示す第2の変形例のように、ジグザグ模様なすように複数の被覆層52′を内側フィルム体4に形成する構成としてもよい。また、例えば図19に示す第3の変形例のように、水玉模様をなす複数の被覆層52″を内側フィルム体4に形成する構成としてもよいものである。そして、この点は、前記第2,第3,第4の実施の形態についても同様である。
【0077】
また、前記第1の実施の形態では、吸着体2と内側フィルム体4と外側フィルム体5を長方形状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば吸着体は三角形、正方形、台形、五角形等の多角形状をなす平板体または円柱体等により形成してもよく、フィルム体は吸着体よりも大なる寸法をもって形成すればよいものである。そして、この点は第2〜第5の実施の形態についても同様である。
【0078】
また、フィルム状カバーを構成する内側フィルム体と外側フィルム体とは、予め袋状にそれぞれ形成された2枚の袋体を用いて構成してもよい。そして、この場合は、2枚の袋体を2重封筒のように内,外で重ね合わせておき、内側の袋体内に吸着体を挿入した状態で、内,外の袋体の開口側を封止する構成としてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態による鮮度保持具を斜め上方からみた斜視図である。
【図2】図1の鮮度保持具を上側からみた平面図である。
【図3】鮮度保持具を図1中の矢示 III−III 方向から拡大してみた縦断面図である。
【図4】鮮度保持具を図1中の矢示IV−IV方向から拡大してみた横断面図である。
【図5】吸着体を内側フィルム体と外側フィルム体とで包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図6】不透過性の被覆層を内側フィルム体に貼り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図7】第1の変形例による被覆層を内側フィルム体に塗布する状態を示す分解斜視図である。
【図8】第2の実施の形態による鮮度保持具を斜め上方からみた斜視図である。
【図9】図8の鮮度保持具を上側からみた平面図である。
【図10】第2の実施の形態による鮮度保持具を図8中の矢示X−X方向から拡大してみた断面図である。
【図11】第3の実施の形態による鮮度保持具を示す図4と同様位置での断面図である。
【図12】図11中の吸着体を内側フィルム体と外側フィルム体とで包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図13】第4の実施の形態による鮮度保持具を示す図4と同様位置での断面図である。
【図14】図13中の吸着体を内側フィルム体と外側フィルム体とで包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図15】第5の実施の形態による鮮度保持具を示す平面図である。
【図16】吐出ノズルを用いて内側フィルム体に被覆層を塗布している状態を示す斜視図である。
【図17】第5の実施の形態による鮮度保持具を図15中の矢示XVII−XVII方向から拡大してみた断面図である。
【図18】第2の変形例による被覆層を内側フィルム体に形成した状態を示す平面図である。
【図19】第3の変形例による被覆層を内側フィルム体に形成した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0080】
1,21,31,41,51 鮮度保持具
2 吸着体
3,22 フィルム状カバー
4,23 内側フィルム体
5,24 外側フィルム体
6 空気層
7,25,32,42,43,52,52′,52″ 被覆層(揮散調整部)
8 封止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品またはその他の被保存物の鮮度を保持するために揮発性の鮮度保持液が含浸して吸着される吸着体と、該吸着体を外側から覆うフィルム状カバーとからなる鮮度保持具において、
前記フィルム状カバーは、気体が透過するのを許し液体が透過するのを規制する気体透過性材料を用いて形成された内側と外側の少なくとも2枚のフィルム体により構成し、
かつ前記フィルム状カバーには、前記内側フィルム体と外側フィルム体を互いに重ね合わせることにより両者の間に空気層を設ける構成としたことを特徴とする鮮度保持具。
【請求項2】
前記内側フィルム体と外側フィルム体とのうち一方のフィルム体に、または前記内側フィルム体と外側フィルム体の両方のフィルム体には、前記鮮度保持液が吸着体から外部に揮散するのを調整する揮散調整部を設けてなる請求項1に記載の鮮度保持具。
【請求項3】
前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体よりも小さな面積をもって形成された被覆層により構成してなる請求項2に記載の鮮度保持具。
【請求項4】
前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体に形成された複数の被覆層により構成し、前記鮮度保持液は、これらの被覆層の間から外側に向けて揮散する構成としてなる請求項2に記載の鮮度保持具。
【請求項5】
前記内側フィルム体と外側フィルム体とは、微細な繊維を網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料により構成してなる請求項1,2,3または4に記載の鮮度保持具。
【請求項1】
食品またはその他の被保存物の鮮度を保持するために揮発性の鮮度保持液が含浸して吸着される吸着体と、該吸着体を外側から覆うフィルム状カバーとからなる鮮度保持具において、
前記フィルム状カバーは、気体が透過するのを許し液体が透過するのを規制する気体透過性材料を用いて形成された内側と外側の少なくとも2枚のフィルム体により構成し、
かつ前記フィルム状カバーには、前記内側フィルム体と外側フィルム体を互いに重ね合わせることにより両者の間に空気層を設ける構成としたことを特徴とする鮮度保持具。
【請求項2】
前記内側フィルム体と外側フィルム体とのうち一方のフィルム体に、または前記内側フィルム体と外側フィルム体の両方のフィルム体には、前記鮮度保持液が吸着体から外部に揮散するのを調整する揮散調整部を設けてなる請求項1に記載の鮮度保持具。
【請求項3】
前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体よりも小さな面積をもって形成された被覆層により構成してなる請求項2に記載の鮮度保持具。
【請求項4】
前記揮散調整部は、気体に対する不透過性が高い材料により前記フィルム体に形成された複数の被覆層により構成し、前記鮮度保持液は、これらの被覆層の間から外側に向けて揮散する構成としてなる請求項2に記載の鮮度保持具。
【請求項5】
前記内側フィルム体と外側フィルム体とは、微細な繊維を網目状に編んで不織布状に形成した気体透過性のフィルム材料により構成してなる請求項1,2,3または4に記載の鮮度保持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−118826(P2009−118826A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299204(P2007−299204)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(500025019)株式会社フレテック (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(500025019)株式会社フレテック (5)
【Fターム(参考)】
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