説明

鳥類の細胞のマーカーの組み合わせ

本発明は、StX細胞、幹細胞または生殖細胞を対象とした、表現型にしたがった細胞の特徴付けを可能とする、鳥類の細胞のマーカーの新規な組み合わせに関するものである。また、本発明は、前記マーカーを用いて鳥類の細胞を特徴付ける方法、ならびに、本発明の方法によって細胞を特徴付ける、鳥類の細胞の培養方法にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、StX細胞、幹細胞または生殖細胞を対象とした、表現型にしたがった細胞の特徴付けを可能とする、鳥類の細胞のマーカーの新規な組み合わせに関するものである。また、本発明は、前記マーカーを用いて鳥類の細胞を特徴付ける方法、ならびに、本発明の方法によって細胞を特徴付ける、鳥類の細胞の培養方法にも関するものである。
【0002】
本発明の目的は、胚性、生殖性あるいは成体性のいずれであれ、幹細胞の生殖能力、特に鳥類の幹細胞の生殖能力を正または負に定義、修飾、制御するためのマーカーとして利用することのできる遺伝子の独自の組み合わせを同定し、利用することである。
【背景技術】
【0003】
幹細胞は、胚または成体に由来する多能性細胞であり、該多能性細胞は、自己再生能力を有し、また、特化した分化細胞を生み出す能力を有している。換言すれば、幹細胞は、培養によって無限に分裂する能力および娘細胞を生み出す能力を有する非ガン性の細胞であり、該娘細胞は、自身の元となる母細胞と同じ増殖能力および分化能力を有している。
【0004】
さまざまなクラスの幹細胞が、胚または成体といったそれらの由来と、体細胞組織または生殖組織といったそれらの組織的由来にしたがって単離されている。マウスの胚性幹細胞(MESC)は、胚の中に再導入されたとき、生殖系を導く能力を有することが示されている。この生殖能力を制御する分子メカニズムは完全には特定されていない。
【0005】
幹細胞は、該細胞が組織の維持と再生を保証するインビボと、該細胞を所定の培養条件で維持することのできるインビトロの両方で自己再生するという素晴らしい特性を有する細胞である。
【0006】
幹細胞の組織的由来およびそれらの分化能力に応じて、胚に由来する多能性細胞である胚性幹細胞(ESC)、生殖幹細胞(EGC)、および組織に由来する体性幹細胞または成体幹細胞(ASC)に区別される。体性幹細胞または成体幹細胞は、インビトロおよびインビボの両方において、それらの分化能力に一定の可塑性を有している。
【0007】
胚性幹細胞(ESC)
MESC細胞
胚性幹細胞(ESC細胞)は80年代にマウスで単離、同定され(Martin,1981、Evans&Kaufman.,1981)、それらの単離は、それ以前に胚性癌腫細胞(すなわちEC細胞)を用いて行われてきた、一連の多くの研究の一環をなしている(Chambers&Smith,2004参照)。これらマウスのESC細胞(MESC)は、記載されているさまざまな手順(Robertson,1987、Hogan et al.,1994)にしたがって、129/SVマウスの胚盤胞をインビトロで培養することで得られた。原腸形成前のマウスの胚盤胞は、50から100個の細胞からなる内部細胞塊すなわちICMを有しており、該ICMの分子の特徴付けはまだ進行中である。これらの細胞の生物学的宿命は、インビボとインビトロで同一ではない。
【0008】
インビボでは、胚盤葉上層の細胞は胚組織を生じさせ、生殖細胞が、胚体外外胚葉による誘導の下、近位胚盤葉上層で形成される。こうして、さまざまな因子およびサイトカインの影響下で、生殖細胞はニッチにおいて現れる。この誘導の原因となる複雑な分子メカニズムはマウスにおいて特定されはじめたばかりである(Saitou et al.,2003)。
【0009】
インビトロでは、胚盤胞の培養により、該胚盤胞の孵化、適切な培養条件においてMESC細胞を生み出すICMの細胞の付着および増殖が得られる。これらインビトロでの培養条件は、とりわけ、培地にLIFファミリーの少なくとも一つのサイトカインを添加することによって、以降、比較的良好に特定され、標準化されている(Yoshida et al.,1994)。また、シグナル伝達の新しい経路も、MESC細胞の多能性の表現型の維持に関与すると考えられる(Dani et al.,1998)。MESC細胞の多能性を制御する分子メカニズムに関して非常に多くの研究が公開されている。このモデルにおいて、さまざまな分子アプローチおよび機能的アプローチによって、oct−3/4遺伝子(Niwa et al.,2000、Niwa et al.,2002)、nanog遺伝子(Chambers et al.,2003、Mitsui et al.,2003)、およびstat3遺伝子(Niwa et al.,1998、Matsuda et al.,1999)の、鍵となる役割が明らかになった。総意の概要によると、LIFとBMPが有糸分裂シグナルの中心にあるとされ、Oct/nanogおよびstat3遺伝子は、ES細胞の増殖−分化のバランスの調節因子およびエフェクターとされている(Ying et al.,2003、Chambers et al.,2004)。下流エフェクターの一つは、STAT3によって直接調節されるc−mycプロトオンコジーンである(Cartwright et al.,2005)。nanogの発現レベルを制御していると考えられる(Lin et al.,2005)P53タンパク質のようなその他のアクターも関与している。OCT−3/4タンパク質は、SOX−2および/またはSOX−3のようなHMGファミリーのタンパク質との結合によって、該OCT−3/4タンパク質の固有のプロモーターのレベルで自身の転写を制御する(Okomura et al.,2005)。特に、マウスの生殖系でのOct−3/4遺伝子の発現の制限は、GCNFの抑制作用下にある(Furhmann et al.,2001)。Irh−1受容体に関しては、胚盤葉上層の細胞におけるように、発生のより早い段階での維持に関与している(Gu et al.,2005)。少なくともマウスにおいては、生殖能力はとりわけ、このoct−3/4遺伝子の発現が生殖系にとって不可欠であっても、強いレベルのGCNFと、比較的弱いレベルのOCT−3/4を必要とすると考えられる(Kehler et al.,2004)。さまざまなシグナル伝達ネットワークのアクター間で多くの相互作用が存在することは、MESC細胞の多能性の維持を理解するために未だ完全には解明されていない一つの事実である。
【0010】
また、MESC細胞の確立の成功は、用いるマウスの株にも依存し、129SVの遺伝的背景からは確立が容易であることに注目すべきであろう。この限界の分子的な特定に関する記録はない。
【0011】
PESC細胞とHESC細胞
霊長類では、はじめて猿のESC細胞(PESC)が、マディソン大学(WS)のJ.Thomsonによって胚盤胞から単離された(Thomson et al.,1995)。それ以降、その他の研究所もさまざまな種から猿の新しい細胞系を単離してきている。生化学的特徴のレベル(AP、テロメラーゼ、表面抗原など)と同時に、多能性の維持に関与する遺伝子のレベルでの、これらの細胞の特徴付けもまた、多くの研究発表の対象となってきた。
【0012】
ヒトにおいては、ESC細胞(HESC)が胚盤胞の培養によってインビトロで得られた(Thomson et al.,1998)。これらの細胞は、MESC細胞と多くの共通点を有しているが、同時に、さまざまな成長因子に対する感受性など、大きな違いも有している。
【0013】
PESC細胞およびHESC細胞の多能性の維持に関与するメカニズムにおいては、マウスで同定された遺伝子も関与していると考えられるが、状況はより複雑である。たとえば、LIFおよびJak/stat経路の活性化に対するPESC細胞およびHESC細胞の感受性は、マウス細胞の感受性ほど決定的ではないと考えられている(Raz et al.,1999、Sumi et al.,2004、Humphrey et al.,2004)。したがって、これらの細胞はこの単一のサイトカインのみに依存しているわけではなく、このことが増殖シグナルの分析をより複雑にしている。霊長類のESC細胞において、oct−3/4、nanogおよびstat3という主要なアクター、並びに、rex1、foxD3などのようなその他のアクターの発現が見られても、これらの遺伝子の役割はそれほど決定的ではなく、別の経路の存在が考えられる。
【0014】
CESC細胞
ニワトリの胚性幹細胞(CESC)は、ステージXのニワトリの胚盤葉細胞を培養することによって単離された(Pain et al.,1996、仏国特許出願公開第94/12598号明細書)。これらCESC細胞は、体細胞性および生殖性のコロニー形成を含む、胚性幹細胞(ESC)のあらゆる特徴を有している。しかし、この生殖性のコロニー形成は、マウスのES細胞とは逆に、インビトロでの数代の継代培養の後の維持が難しいと考えられる。CES細胞の採取段階および培養段階では、ニワトリの胚は、既に50000から60000個の細胞で構成される胞胚だと考えられ、該胞胚は、二つの胚葉、すなわち胚盤葉上層と胚盤葉下層で組織されている。細胞の三次元分布と配置という形態的な基準だけでは、さまざまな細胞の亜型、とりわけ生殖能力を有する細胞の亜型を確実に、特異的に同定することができない(Petitte et al.,1990、Carsience et al.,1993、Thoraval et al.,1994)。非常に早期(Eg&KのステージIII−IV)のニワトリの胚でVASAタンパク質についての陽性細胞が検出されたことで、ニワトリにおける生殖系の前成説が提示された。細胞は、マウスで観察される誘導モデル(Extavour et al.,2003、Saitou et al.,2002)よりもショウジョウバエのモデルにより近いモデルにおいて、胚の最初の分裂後すぐに生殖系における特徴を与えられる(Tsukenawa et al.,2000)。これらの細胞は、連続する分裂の過程で、ステージXまで存続することになる。
【0015】
ニワトリのCESC細胞について、ニワトリの胚における生殖系の多能性と出現の維持に関わる遺伝子に関する利用可能なデータはない。その他の種で同定されている大半の遺伝子の発現プロファイルならびにその調節はまったく分かっていない。
【0016】
成体幹細胞(ASC細胞)
インビトロおよびインビボでの自己再生と分化の特性を有する細胞が組織から単離され、ASC「成体幹細胞」(Adult Stem Cells)と呼ばれている(Wagers and Weissman,2004)。これらの細胞は、主に哺乳類であるさまざまな種において、さまざまな組織、とりわけ造血組織(HSC、 Hemopoietic Stem Cells、造血幹細胞)および神経組織(NSC、 Neural Stem Cells、神経幹細胞)から単離された。非常に多くの文献がこれらの細胞を説明し、特徴付けることを目的としている(Shizuru et al.,2005、Mayhall et al.,2004参照)。幹細胞の特性を部分的に有するその他の多くの細胞型が同定された。
−間葉細胞(MSC)(Hamada et al.,2005)、
−筋衛星細胞(Charge and Rudnicki,2004、Seale et al.,2004)、
−多能性前駆細胞「MAPC」(Jiang et al.,2002)、
−中胚葉性血管芽細胞(Cossu and Bianco,2003、Minasi et al,2002)、
を挙げることができる。
【0017】
観察された該細胞の高い分化の可塑性によって、成体幹細胞を、背景、場所、そして該細胞が受けるシグナルにしたがって分化の決定論を変えることのできる細胞として見なすことが可能となる(Lakshmipathy,2005、Galli et al.,2000)。少なくともインビトロでESC細胞とASC細胞の間に存在する関連性は、限定された分化の過程の連続として現れうる。実際、分化のとある特定の経路において、ESC細胞から、完全に分化した配列をインビトロで再産生することができる。分化経路の誘導というこれらの複雑なメカニズムの制御は、これらの細胞の決定論を理解する上で大きな重要性を有する。
【0018】
生殖幹細胞(EGC細胞)と生殖能力
原腸形成段階の前に得られる胚に直接由来するESC細胞とは異なり、生殖性の胚性幹細胞(EGC細胞)は、胚内で既に形成されている生殖隆起から得られるものであり、該隆起は生殖性の前駆細胞がコロニー形成したものである。生殖系の出現の過程で、かつ種にしたがって、前駆細胞は胚のさまざまな領域における特徴を与えられる。もっともよく研究され、分子レベルでもっともよく解明されはじめている例は、マウスの生殖系の例である。
【0019】
マウスのEG細胞(MEGC)はMESC細胞との多くの共通性を有しているが、主要な差異の一つは、特定の遺伝子のエピジェネティックな状態に関するものである(Shiota et al.,2002,Reik et al.2001、Tada et al.,1998)。エピジェネティックな状態とは、DNAおよびヒストンのような関連タンパク質の直接的な修飾の程度を意味する。この状態は、ユークロマチン、または転写的に不活性のヘテロクロマチンドメインに対応するDNAの転写活性の大半を決定する。この状態を、とりわけdnmt遺伝子のような特定のメチル基転移酵素を修飾および制御するために、多くの分子が介入するが、ESC細胞に対する、かつ発生の過程における、該分子の効果が研究されはじめている(Gaudet et al.,2004、Biniszkiewicz et al.,2002、Hattori et al.,2002)。
【0020】
生殖能力とは、機能的な性細胞の分化した前駆細胞を産生する細胞の能力を意味する。始原生殖細胞は雄性細胞(精原細胞)または雌性細胞(卵母細胞)を生み出し、該細胞はそれぞれ成熟した精子と成熟した卵母細胞を生み出す能力がある。
【0021】
この生殖能力はインビボまたはインビトロで観察することができる。
【0022】
インビボでは、種にしたがって、生殖細胞は、組織およびニッチ内の周辺細胞による誘導プロセスにしたがって特徴を与えられる。もっとも研究されている例はキイロショウジョウバエと線虫C.elegansの例であり、これらは多くの突然変異体が得られている種である。このプロセスは、初めての誘導モデルが提案されたものであるマウスにおいては分子レベルで記載され始めている(Saitou et al.,2002、Ohinata et al.,2005)。該モデルは、生殖細胞が特徴を与えられる特異的なニッチという概念を利用している。誘導は、oct−3/4、blimp−1、stellaマーカー、fragilisマーカーなどのような鍵遺伝子の転写レベルを修飾するBMP−4因子およびBMP−8因子を介して周辺細胞によって制御される。
【0023】
その他の種では、生殖系への特徴の付与は母親由来の構成要素の影響を強く受ける。RNA結合タンパク質はこのとき、分節していない胚において特定の構成要素(タンパク質およびRNA)の勾配を確立する上で主要な役割を果たすことになるのだが、該RNA結合タンパク質は、胚の所定の位置における生殖細胞の同一性を誘導する能力を有するこれらのタンパク質および/またはメッセンジャーRNAの「隔離(sequestration)」を誘導するものでもある。この区画化に関与する遺伝子は、キイロショウジョウバエやC.elegansのようなモデル生物で特に研究され始めている(Extavour et al.,2003、Blackwell,2004)。この決定論におけるさまざまな遺伝子の記載、数および関与性は、とりわけ科学雑誌およびhttp://germonline.igh.cnrs.fr/index.phpのようなさまざまなアクセス可能なサイトを通して記録されている。
【0024】
インビトロでは、最近の例によって、生殖能力のある細胞へのマウスの胚性幹細胞(MESC)の分化条件を部分的に再現することが可能であることが示されている。この過程は、実験的には成長因子と特定の三次元的な条件に依存している。MESCから生殖細胞を得るための、BMP−4因子およびBMP−8因子、ならびに、エストロゲンやFSHのようなホルモンが発見されている(Hubner et al.,2003、Geijsen et al.,2004)。
【0025】
とりわけ、ウイルスを複製するため、あるいは、異種タンパク質の産生、場合によってはワクチンを産生するための、鳥類の細胞、ステージX(StX)の胚盤葉細胞、幹細胞、または生殖細胞のさまざまな培養方法が知られている。これらの方法は特に、以下の特許出願および特許に記載されている。すなわち、国際公開第03/043415号パンフレット、国際公開第2005/007840号パンフレット、国際公開第03/076601号パンフレット、国際公開第01/85938号パンフレット、国際公開第96/12793号パンフレット、欧州特許第1149899号明細書、米国特許出願公開第2002/192815号明細書または米国特許第6500668号明細書である。
【特許文献1】仏国特許出願公開第94/12598号明細書
【特許文献2】国際公開第03/043415号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
以上のさまざまな形状の細胞を分化させるさまざまな手段が知られている。しかし、使用がより簡単でより効果的な、さまざまな細胞の表現型を特徴付ける技術を利用できるようにすることが重要である。
【0027】
複数の遺伝子がニワトリの胚性幹細胞(CESC)あるいはニワトリの生殖幹細胞(CEGC)で発現するものとして同定されている。これらさまざまなアクターの相対的な発現レベルを比較することによって、これらの細胞それぞれの分子プロファイルと、CESC細胞の確かな生殖能力を得るために必要な修飾とを規定する、特異的かつ新規の組み合わせを提案することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明によるマーカーの組み合わせと方法によって、とりわけ、鳥類の細胞系の良好なトレーサビリティを保証することが可能となるだけではなく、培養された細胞系の時間経過後の良好な安定性を保証することも可能となる。
−幹細胞とは、インビトロで自己再生する能力を有し、特化した分化細胞を生み出す能力を有するあらゆる細胞を意味する。
−生殖細胞とは、前駆細胞または雄性あるいは雌性の性分化した細胞を生み出す能力を有するあらゆる細胞を意味する。
−「StX細胞」とも呼ばれるステージXの胚盤葉細胞とは、産卵されたばかりの受精卵から胚を分離することで得られ、発生段階がEG&K(Eyal Giladi & Kovak,1976)の表にしたがったステージXに対応する、胚盤葉細胞を意味する。
−DNAチップとは、高濃度で担体(ガラス片、ナイロン膜など)に置かれた遺伝子の集合、遺伝子断片の集合、オリゴヌクレオチドの集合を意味する。
−減数分裂とは、二倍体細胞の遺伝物質を半数体レベルになるまで減らす生物学的プロセスを意味する。このプロセスは少なくとも一回の細胞分裂を伴う。
−機能的な性細胞とは、一組の染色体をもう一方の半数体細胞に融合するか、または与えることで、受精の際に、胚で発生する能力を有する2倍体細胞である卵を形成する能力を有する半数体細胞を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
したがって、本発明はStX型の鳥類の細胞、幹細胞または生殖細胞を特徴付けることを可能にするマーカーの組み合わせに関するものであり、該組み合わせは、
a. 1P06、2contig58、60S−L14、ATM、ブルーム症候群、BTEB4、CD9、CHDヘリカーゼ、Clock、cwf16(FLJ10374)、CXCR4、Dnmt2、enx1(ho−zeste2)、eomes、EWS、FGF−4、GATA−5、HOJ−1、N−AGN6Pデアセチラーゼ、N−Cor1、NF2、p53、pml、rbm6、SA−2、SA−3、SARA、SCYE1、SEF、sf−1、SnoN、SOCS13、SSB−1、TC87479、T細胞 APP 2C、TGF−beta2、WD40/FYVE−dタンパク質2、WD−RP3、Zan75、ZPCという遺伝子およびこれらの組み合わせから選択される、StX細胞で好適に発現する標的遺伝子の、少なくとも一つのマーカー、ならびに/または、
b. 1P06、1P08−A09、アクチビンRIIB、アスタシン、Claudin−3、dapper−1、Dorfin、FPPシンターゼ(fps)、GalNAc−T3、gcnf、HSPb7、IRX4、LMX、pax−6、Slc38a2、sox−3、tra1 gp96、wnt−10a、wnt−11という遺伝子およびこれらの組み合わせから選択される、幹細胞で好適に発現する標的遺伝子の、少なくとも一つのマーカー、ならびに/または、
c. アディポネクチン、BMP−2IK、bruno like、CD34、CDK5アクチベーター1、dkk1、dkk3、DMRT1、emx2、エンドグリン、FAST−1、FGF R、FLJ00188、flk−1、gata−4、gcl、LHX9、NOSタイプIII、plzf、PRL−R box1l、PTEN、SAMSN−1、slug、smad3、Smarcd3、sox−9、Strat8、TACC2、TC95408、TC97694、TGF RII、TGF RIII、tie2、tie−2、TR−alpha、VE−カドヘリン、vera、Wisp−1という遺伝子およびこれらの組み合わせから選択される、生殖細胞で好適に発現する標的遺伝子の、少なくとも一つのマーカー、
を含んでいる。
【0030】
StX細胞、幹細胞および生殖細胞で好適に発現する標的遺伝子のリストは、PCRによって該標的遺伝子を単離するために用いたプライマーとともに、それぞれ図1〜図3に示している。
【0031】
本発明による組み合わせが、同一のグループあるいは前もって規定された異なる二つのグループから選択される少なくとも二つのマーカー(StX細胞、幹細胞または生殖細胞で発現する遺伝子のマーカー)を含むことが理解される。
【0032】
好ましくは、StX細胞で好適に発現する遺伝子のマーカーは、1P06、ATM、CXCR4、eomes、FGF−4、GATA−5、NF2、SOCS13、SSB−1、TC87479、T細胞APP2C、TGF−beta2、WD−RP3、ZPCという遺伝子のマーカー、およびこれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、本発明による組み合わせはZPC遺伝子のマーカーを少なくとも一つ含む。
【0033】
本発明のもう一つの好ましい実施態様によると、幹細胞で好適に発現する遺伝子のマーカーは、1P06、アクチビンRIIB、アスタシン、Claudin−3、dapper−1、FPPシンターゼ(fps)、GalNAc−T3、gcnf、LMX、pax−6、tra1、gp96、wnt−10aという遺伝子のマーカー、およびこれらの組み合わせから選択される。より好適には、本発明による組み合わせは1P06遺伝子およびtra−1遺伝子のマーカーを少なくとも一つ含む。
【0034】
本発明の更なるもう一つの実施態様によると、生殖細胞で好適に発現する遺伝子のマーカーは、アディポネクチン、DMRT1、エンドグリン、FAST−1、FGF R、FLJ00188、gata−4、LHX9、plzf、PRL−R box1l、PTEN、Strat8、TGF RIII、Wisp−1という遺伝子のマーカー、およびこれらの組み合わせから選択される。より好適には、組み合わせはdmrt−1遺伝子およびvasa遺伝子のマーカーを少なくとも一つ含む。
【0035】
本発明の好ましい実施態様によると、組み合わせは、1P06、tra−1、FPPシンターゼ、アスタシン、GalnacT3、lmx、gcnf、eomes、id2、FGF−4、ZPC、gata−5、dmrt−1、lrh−1、ptenという遺伝子のマーカーの組み合わせを含む。
【0036】
「マーカー」とは、本発明によると、本発明による細胞、すなわち鳥類の細胞における標的遺伝子の発現を同定すること、かつ場合によって定量化することを可能にする、生物学的、化学的または物理的なあらゆる手段を意味する。このようなマーカーは当業者には良く知られている。その組成は特に、標的遺伝子および該標的遺伝子の発現を検出する方法によって決まる。とりわけ、抗体/抗原の結合体を利用する方法が挙げられ、当該結合体において、抗体は抗原と特異的に結合し、該抗原は、上記の同定される遺伝子の発現産物、すなわち、mRNAもしくはcDNAもしくはポリペプチド、またはこれらの断片で構成される。また、前記遺伝子によって発現するmRNAもしくは対応するcDNAまたはそれらの断片に特異的にハイブリダイズすることのできる核酸断片を挙げることができる。
【0037】
当然、さまざまなタイプのマーカーを本発明による組み合わせに組み込むことができる。
【0038】
有利には、本発明によるマーカーは、RNAまたはcDNA、すなわち上記で特定した標的遺伝子の発現産物とハイブリダイズする能力を有する核酸配列である。
【0039】
これらの核酸配列のうち、図1〜図3で特定されているプライマーの特定の配列を挙げることができる。
【0040】
本発明のより具体的な実施態様によると、マーカーの組み合わせは同一の担体、好ましくは標準的な担体上にまとめられる。当業者であればこれらさまざまな担体を知っており、該担体のサイズは、マーカーのタイプと、一つまたは複数の標的遺伝子の発現を検出するために用いることのできる装置のタイプにしたがって変わる。
【0041】
有利には、本発明によるマーカーの組み合わせは鋳型DNAの形であり、好ましくは標準的な形で、標的遺伝子とハイブリダイズすることができる核酸断片が置かれる担体を含む。このような担体のサイズは、用いる調製技術および検出技術にしたがって変わってもよい。また、小さなサイズのこのような担体はDNAチップとも呼ばれる。
【0042】
有利には、本発明によるマーカーの組み合わせは、DNAチップ上に置かれる。本発明によるマーカーの組み合わせを含むDNAチップもまた、本発明の一部をなす。
【0043】
本発明の具体的な実施態様によると、マーカーの組み合わせはさらに、二つのグループの細胞、すなわち、StX細胞と幹細胞、幹細胞と生殖細胞、生殖細胞とStX細胞で発現する遺伝子のマーカーを少なくとも一つ含むことができる。
【0044】
このような遺伝子はそれぞれ、対応する「プライマー」と共に図4〜図6で特定されている。
【0045】
「発現産物」とマーカーとの相互作用を検出する手段は当業者には良く知られている。学術研究機関、またはDNAチップの調製手段および利用手段(読み取り機器、シグナル処理ソフトウェア、データベースなど)を市販している企業に関するような、DNAチップの調製および利用に関する多くの科学的刊行物の参考文献は、とりわけwww.gene−chips.com、www.deathstramic.com/science/biology/chips.html、またはhttp://cmgm.stanford.edu/pbrown/mguide/index.htmlといったウェブサイトに示されており、該サイトの内容および引用した参考文献の内容は、本発明に参照により組み込まれる。
【0046】
また、本発明は、鳥類の細胞を特徴付ける方法であって、前記で定義される、および実施例で定義されるマーカーの組み合わせを用いた、前記細胞内で発現する遺伝子の発現の分析と、分析された細胞の表現型の特徴付けとを含む方法にも関するものである。遺伝子の発現を分析する具体的な方法は、前記で定義される、および実施例で定義される本発明による組み合わせで用いられるマーカーによって決まるものである。
【0047】
また、本発明は、適切な培地での細胞の培養と、前記で定義される、および実施例で定義される本発明によるマーカーの組み合わせを用いる、本発明による方法を用いる該細胞の特徴付けとを含む、鳥類の細胞の培養方法にも関するものである。有利には、本発明による培養方法はまた、StX細胞、幹細胞および生殖細胞から選択された細胞を単離する過程も含んでいる。
【0048】
また、本発明は、StX細胞から生殖細胞を得るための、鳥類の細胞の培養方法にも関するものである。本発明による方法は、不活性化された支持細胞層「フィーダー」が添加されることなく、適切な培地においてStX細胞が培養されるため、このような形質転換が不可能な先行技術の方法とは区別される。
【0049】
本発明者らは、「フィーダー」の添加という通常の技術が幹細胞を得るために必要であるのに対し、このような「フィーダー」を添加しないことによって、まったく予期しないことに、生殖型の細胞を得ることが可能となることを確認することができた。
【0050】
「フィーダー」の特徴は当業者には良く知られており、とりわけ、Robertson et al.,1987、karagenc et al.,2000に記載されているが、これらの内容は本発明に参照により組み込まれる。
【0051】
生殖型であって胚性幹細胞ではない細胞の特徴付けは、本発明によるマーカーの組み合わせを用いる本発明による特徴付けの方法を利用することで実施した。
【0052】
本発明のその他の特徴は、以下に示す実施例を読むことで明らかになるものである。
【0053】
図1:StX細胞で発現する遺伝子の表。
図2:幹細胞で発現する遺伝子の表。
図3:生殖細胞で発現する遺伝子の表。
図4:StX細胞および幹細胞で発現する遺伝子の表。
図5:幹細胞および生殖細胞で発現する遺伝子の表。
図6:生殖細胞およびステージXの細胞で発現する遺伝子の表。
図7:GF58細胞の成長曲線。
図8:GF58細胞におけるいくつかの遺伝子の発現レベル(p7)。
図9:性腺で観察されたレベル(=1)と比較した、p3g画分とp4g画分における遺伝子発現の分析。>1という比率は、遺伝子が、胚の性腺全体におけるよりも試験した画分においてより多く発現したこと、またその逆であることを示している。
図10:試験した遺伝子クラスの分類。
図11:分化誘導過程における、クラス1遺伝子の発現レベルの変動。
図12:分化誘導過程における、クラス2遺伝子の発現レベルの変動。
図13:分化誘導過程における、クラス3遺伝子の発現レベルの変動。
図14:ステージXの胚盤葉細胞、CESC細胞およびCEGC細胞間の、発現プロファイルの比較。
図15:CESC細胞、ステージXの胚盤葉細胞およびCEGC細胞間の発現プロファイルの比較。
図16:CEGC細胞、ステージXの胚盤葉細胞およびCESC細胞間の発現プロファイルの比較。
図17:ニワトリのnanog遺伝子のタンパク質配列とcDNA配列。
図18:ニワトリのgcnf遺伝子のタンパク質配列とcDNA配列。
【実施例1】
【0054】
実施例1:インビトロでの胚性幹細胞の取得
ニワトリの胚性幹細胞を孵化卵からインビトロで得た。インビトロで増殖中の胚性幹細胞の集団を得るために二つのアプローチを用いた。
【0055】
第一の態様として、先行研究に記載されている条件と同様の条件で細胞を得た(Pain et al.,1996)。簡単に説明すると、インキュベートしていない孵化卵を洗浄し、破壊した。卵黄を卵白から分離し、パスツールピペットまたはCarscience et al.,1993に記載されているような紙のリングを用いて胚を採取した。こうして得られた細胞を、ウシ胎児血清、アミノ酸、およびサイトカインのような細胞の増殖に必要な要素、ならびに成長因子を含んだ増殖培地の中にある不活性化した支持細胞層上に置いた。
【0056】
本発明のもう一つの態様では、細胞は、細菌培養の用途に用いられる、処理していないプラスチックの細胞培養箱に直接播種されている。このもう一つの態様の場合、細胞は軽い撹拌にかけられる。数日の懸濁後に、増殖した幹細胞の集合体が形成される。
【0057】
数日後、胚性幹細胞は小さくまとまった塊を形成し、該塊を、タンパク質分解酵素によって分離し、インビトロでの増幅のために新しい培養箱に播種した。
【0058】
数回の継代後、培養物はより均質になり、主な細胞型はニワトリの胚性幹細胞(CESC)であった。これらCESC細胞は、前述したさまざまなマーカー、とりわけ、アルカリホスファターゼ活性、内因性のテロメラーゼ活性、および特異的抗体に対する反応性の有無(Pain et al.,1996)によって特徴付けした。
【0059】
培養で得られたCESC細胞を特徴付けるために、電子顕微鏡での観察を行った。該観察は、単離された細胞が表面に非常に多くの微絨毛を有することを示したのだが、これはCESC細胞についてはいまだかつて提示および記載されたことがないことである。また、該観察は、細胞が塊になるとすぐ、あるいは、その他の均質または不均質な細胞(フィーダー細胞)と相互作用するとすぐに、前記微絨毛が消失することを示した。また、電子顕微鏡によって認識されたさまざまな構造および超微細構造が、重要な代謝(リボソーム、網状組織、多くのミトコンドリア)と、重要な核小体が存在することによる強い転写活性とを示すことを示した。これらCESC細胞が平均で7μm〜15μmのサイズであり、多かれ少なかれ球状の平均が4μm〜8μmのサイズの比較的均質の核を有することが示された。細胞が特に強く結び付いているため、塊状の細胞の細胞間隙は非常に狭かった。
【実施例2】
【0060】
実施例2:インビトロでの生殖細胞の取得
鳥において、生殖細胞の決定論の分子アクターは未だ同定されていない。この決定論は依然として比較的記録の少ないプロセスである。産卵時の胚の発生段階は、Eyal Giladi & Kovak(1976)によって提案された発生の表によるとステージIX〜XIである。このステージで、胚は既に推定40000〜60000個の細胞を有し、二つの葉層、すなわち胚盤葉上層と胚盤葉下層で構成されている。この段階では、vasa遺伝子についての陽性細胞の存在(Tsukenawa et al.,2000)は、生殖細胞が既に決定されていることを示している。さまざまな刊行物が、ニワトリの胚の生殖隆起の細胞を培養することによる、生殖幹細胞(EG)のインビトロでの取得を記載している。とりわけ、発生のおよそ5〜6日目に対応する、Hamburger&Hamilton(1951)によって提案された発生の表によるステージ28の胚に基づいた、Ha et al.,2002、Park et al.,2003の研究を挙げることができる。
【0061】
本発明のもう一つの態様では、胚細胞は実施例1で説明したように採取されるが、該細胞は、支持細胞層を有さない培養箱に播種される。培養箱は、前もって、卵白溶液、または血清アルブミンのような血清タンパク質が豊富なその他の溶液を用いて、少なくとも1時間またはそれ以上処理した。この卵白溶液は直接採取した卵白またはPBSで希釈した卵白とすることができる。好ましくは、5倍から10倍希釈した溶液を用いる。したがってこの溶液は、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド、オボムチンおよびリゾチームのような、卵のアルブミンからなる主成分と、より少量のその他の成分を含んでいる。また、精製したオボアルブミン溶液またはコンアルブミン溶液も用いることができる。
【0062】
本発明の態様では、ステージIX〜XIIIの胚盤葉細胞を、「vasa」陽性の生殖細胞の増殖を促進する培養条件下で培養箱に播種する。そして、不活性化した支持細胞層「フィーダー」を添加することなく、細胞の接着を促進し、分化を促進しないことを目的として、細胞外基質と同等の「コーティング」を実現するために、培養箱を血清で処理した。数日後、細胞巣が現れたのだが、該細胞の増殖は遅かった。このプロセスは持続し、GF58と呼ばれる細胞は少なくとも200日間、増殖し続けた。この増殖は、特に遅くはあったが、いくつかの小さな細胞巣の形で続いた。細胞を分離することが難しいため、継代は困難である。(希少な)各継代において個別に細胞を計数することが不可能だと考えられたため、細胞の継代時に、希釈係数に基づいて成長「曲線」を作成した(図7)。
【0063】
これらの細胞は特徴的な形態を有し、大きな核を有する接着性の扁平上皮細胞巣の中心で、小さな塊に増殖した。巣のサイズは非常にゆっくり拡大した。
【0064】
細胞を「フィーダー」の存在下に戻すためのテストは壊滅的なものであり、細胞がこの環境に耐えられなかった。培地にBMP−4、FGF−4を添加する試験は増殖に対してマイナスの影響は有さず、大きな形態的変化ももたらさなかった。弱い刺激が観察された。
【0065】
7継代目(培養79日後)では、細胞は強い外因性のアルカリホスファターゼ活性を有し、SSEA−1抗体およびEMA−1抗体に対して陽性であった。同じ7継代目で、いくつかの細胞を採取し、分子レベルでの分析を行った。結果(図8)は、1P06遺伝子、gcnf遺伝子およびvasa遺伝子の発現プロファイルが、CESC細胞よりも性腺のプロファイルに近かったことを示している。
【0066】
この非常に重要な結果は、ステージXの胚盤葉細胞の培養によって得られた、培養80日後のvasa陽性の生殖細胞を維持するという考えを支持している。これらの細胞はインビトロで維持される生殖細胞である。
【実施例3】
【0067】
実施例3:胚の性腺の細胞選別による生殖細胞の取得
分子分析に利用可能な量の精製した生殖細胞を得るために、FACSによる選別アプローチを開始した。選別アプローチは、膜タンパク質、すなわちABCトランスポーターBcrp1/ABCG2の受容体の存在に依存するものであり、その発現は最初に、造血幹細胞で同定されている(Goodell et al.,1997)。この分子は造血幹細胞のマーカーとして記載されている。この分子は、解毒という生理学的役割を保証すると考えられ、ヘキストが細胞に導入されたとき、該薬品を細胞外に運ぶ能動輸送の役割を負っている。この特性は幹細胞に特異的であると考えられ、現状では、さまざまな組織における細胞選別の際の特徴付けにしたがって「SP細胞」すなわち「side population」を同定するために利用されている(Zhou et al.,2001)。興味深いことに、マウスの生殖細胞がこの特性を有すると考えられている(Lassalle et al.,2004)。
【0068】
最初のアプローチで、bcrp1メッセンジャーの発現レベルは、CESC幹細胞よりもニワトリの生殖細胞でより高かった(以下参照)。したがって、この遺伝子は、ニワトリにおける幹細胞と生殖細胞を同定するための補助的なマーカーとなる。
【0069】
CESC細胞とニワトリの生殖細胞におけるマーカーとしてのこの分子の役割をテストするため、ニワトリの胚の性腺の分画試験を行った。発生の15日〜21日目の男性胚の性腺を、胚を切除した後に採取し、氷の中に置いた。20mMのHepes(pH7.2)、1.2mMのMgSO・7HO、1.3mMのCaCl・2HO、6.6mMのピルビン酸ナトリウム、0.05%の乳酸塩、および1%のペニシリン−ストレプトマイシン抗生物質混合物を含有する、1×HBSS完全培地(GIBCO、品番14175−046)に性腺を置いた。単細胞の懸濁液が得られるまで18G1/2次いで20G1/2のニードルに連続して通すことによって、性腺を機械的に分離し、そして該懸濁液を100μMのナイロン膜(Falcon352360)で濾過し、トリパンブルーを用いた細胞計数によって計算し、そして4℃、400gで10分間、遠心分離した。沈渣物はHBSS完全培地に戻した。
【0070】
細胞の一部(10〜2×10個の細胞)をHBSS完全培地において、それぞれ最終濃度が75μg/mlおよび200nM/mlのベラパミル(V4629、SIGMA)または薬品Ko143(Lassalle et al.,2004、Allen et al.,2002)による処理に付した。細胞を20分間、37.5℃、7.5%COのインキュベーターに置いた。このインキュベーションの後、細胞を1×PBSで洗浄し、400gで10分間遠心分離し、そして沈渣物を1mlのHBSS完全培地に戻した。ベラパミルまたはKo143で処理していない対照の細胞を氷の中に置いた。
【0071】
ベラパミルで処理した細胞、Ko143で処理した細胞、そして処理していない細胞を、1〜2×10細胞/mlの濃度でHBSS完全培地に戻し、最終濃度が5μg/mlのヘキスト33342(品番B2261、Sigma)と共に、37.5℃、7.5%COのインキュベーター内で45分間インキュベートした。このインキュベーションの後、細胞を1×PBSで洗浄し、400gで10分間遠心分離し、そして沈渣物を、0.5%のSVFを添加した1mlのHBSS完全培地に戻した。それから全体を氷の中に置いた。2μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウムをその場で添加し、その後FACS分析を行った。
【0072】
FACSにおける分類のプロファイルは、さまざまな薬品の存在下または不存在下でのさまざまな細胞集団の存在を示している。そこで、二つの主要な集団、p3g(R1)とp4g(R2)を規定することができる。p3gと呼ばれる集団は、abcg2のチャネルを阻害することで知られている薬品、とりわけKo143の作用に対して最も感受性が高い。
【0073】
p3g集団およびp4g集団をFACSによって選別し、これらの細胞のRNAをQ−PCRで分析した(図9)。試験したいくつかの遺伝子について、p3g画分を生殖細胞に富むものとして同定することができる。なぜなら、この画分のみがbcrp−1(abcg2)に富んでおり、逆に、p4g画分は、支持細胞に特徴的なマーカーであるdmrt−1およびgata−4が豊富であることにより区別されるからである。
【0074】
この亜集団p3gでより多く発現する生殖細胞のマーカーの検出は、精製した生殖細胞を得るためのこの濃縮法の利点を確証するものである。
【実施例4】
【0075】
実施例4:鳥類の胚性幹細胞(CESC)の多能性に関与する遺伝子の同定
CES細胞の多能性の維持に関与する遺伝子を同定するためには、さまざまな相補的なスクリーニング戦略によって、転写レベルでCESC細胞を特徴付けることが可能である。アプローチのうち、発現ライブラリーのディファレンシャルスクリーニング、データバンクのインシリコでのスクリーニング、ニワトリの特異的DNAチップのスクリーニング、およびSAGEライブラリーのスクリーニングを挙げることができる。これらさまざまなアプローチを用いて、候補となる遺伝子のリストを決定した。これらの遺伝子の発現レベルを半定量PCRおよび定量PCRのアプローチでテストした。テストした800の異なる遺伝子はさまざまなクラスに分類された(図10)。
【0076】
RNA−Easyキット(Qiagen、品番74104)を用いて増殖中のCESC細胞からメッセンジャー(mRNA)を抽出した。カラムでの調製後、リボヌクレアーゼを含まない50ulの水にRNAを回収し、滴定し、そして−80℃のエタノール内に沈殿させた状態で保存した。oligodTプライマーを用いた逆転写反応を、増殖中の未分化CESC細胞に由来する2μgの全RNAで、逆転写酵素Superscript II(Invitrogen、Carlsbad)を用いて、42℃で1時間にわたって3’で行った。RT産物をミリポア水で100倍に希釈し、Mx3500P(Stratagene)機器を用いてプレート上で定量PCR反応を開始した。水中の25μlの反応混合物は、希釈した2μlのRT産物、12.5μlのMix Quantitect SYBRGreen(Qiagen、品番204245)、10pMの各プライマーを含む。15分間の変性の後、混合物を、95℃で30秒の変性過程と、55℃で30秒のハイブリダイゼーション過程と、72℃で30秒の伸張過程とから構成されるサイクルに40回かけた。各遺伝子について独立した二つまたは三つの試験を行い、平均を発現の相対値として記録した。
【0077】
定量PCRで得られたデータを有効であるとするため、二つの補完的な方法、すなわち融解曲線と、内部標準法によるPCRの効率の計算を用いた。この後者の分析によって、各DNA分子が各PCRサイクルで確かに特異的に増幅されたかどうか評価することが可能となる。融解曲線は、増幅が終わった時点の、試験管内にある異なる性質のアンプリコンの数を示し、該融解曲線によって、単一のアンプリコンが形成されるべき、用いたプライマー対の特異性をテストすることを可能にする。また、この曲線によって、プライマーが遺伝子の二つのエクソンから選択されていれば、ゲノムDNAによる偶発的な汚染を検出することも可能となる。この曲線は、定量PCRの40サイクルの最後に、95℃で1分間の変性と、55℃で1分間のハイブリダイゼーション、および55℃から95℃への温度の上昇を含む最後のサイクルと、0.2秒ごとの蛍光の読み取りによって行った。こうして、55℃で、PCRの40サイクルの間に増幅されたDNA断片はハイブリダイズし、測定された蛍光性は最大となる。極めて漸次的に温度を上げていき、DNA二本鎖が分離する温度をかなり正確に測定したのだが、前記分離は、蛍光色素が二本鎖DNAにしか組み込まれないため、蛍光性の降下を引き起こすものである。この温度はアンプリコンのサイズと塩基組成に応じて決定される。非特異的な産物が存在すると、蛍光性の降下は、それぞれアンプリコンに対応している2つの水平域を示すことになる。単一の水平域を呈するプライマー対と実験のみを有効であるとした。同時に、2ugのRNAについて逆転写(RT)反応を行うことで、前述の条件にしたがったPCRの効果を有効であるとした。このRT産物の一連の連続希釈を行い、定量PCR機器(Stratagene、MXP3500)と共に提供されている分析ソフトウェアによって提示されたデータ表に任意の量を当てはめた。各希釈について、試験すべきプライマー対を用いて定量PCRを行い、PCRの特定のサイクルで、アンプリコンの指数関数的な増幅が開始された。各希釈について得られたこのCt値によって、直線Y=aX+bを得ることが可能となり、該直線において、Yは所与の地点についてのCtの値であり、Xは各希釈についての物質の初期量であり、そしてaは直線の傾きを表している。このとき、PCRの効率Eは式E=10(1/−a)で与えられる。この効率は、プライマー対とPCRの条件が有効であるとするためには、1.8と2.2の間に含まれなければならない。2という値が100%の増幅に対応している。
【0078】
さまざまな遺伝子の発現レベルの変動を比較できるようにするためには、これらのレベルを、サンプル間および実験条件間で恒常的に発現する遺伝子の発現レベルと比較することが必要である。行った実験の大半で選択した遺伝子はRS17遺伝子(X07257)、すなわちリボソームタンパク質をコードする遺伝子である。実際、この遺伝子の発現レベルは、調べたさまざまな細胞の状態に応じてほとんど変化しないか、まったく変化しないことが明らかとなった。二つのCt値の間で観察された差異は、対象となる遺伝子の発現レベルの変化を示したが、該差異は当初の物質の量における変動に由来するものではない。相対レベルの計算は、D=2^((CtX1−CtX2)/(CtR1−CtR2))という式で与えられ、該式において、
CtX1は細胞型1についての遺伝子XのCtを表し、
CtX2は細胞型2についての遺伝子XのCtを表し、
CtR1は細胞型1についての対照RS17遺伝子のCtを表し、
CtR2は細胞型2についての対照RS17遺伝子のCtを表している。
【0079】
胚線維芽細胞における発現レベルとの比較による遺伝子の相対的発現レベルは、発現の強さによって遺伝子の3つのカテゴリを明らかにした。非常に高いレベルで過剰発現した遺伝子を同定することができ、該遺伝子の、胚線維芽細胞に対する相対的発現レベルは100倍を超える。これらの遺伝子はCESC細胞に「特異的」であると考えることができる。相対的発現レベルが10と100の間に含まれる遺伝子のクラスには、現状では12の遺伝子が含まれる。最後に、胚線維芽細胞と比較して相対的発現レベルが2〜10倍の間に含まれる遺伝子のクラスを区別することができる。
【実施例5】
【0080】
実施例5:CESC細胞の分化過程における遺伝子発現の追跡調査
スクリーニングの過程で同定された遺伝子の中には、CESC細胞に特異的な発現を示すと考えられるものがある。胚線維芽細胞、CESC細胞、およびCEGC細胞の間における発現の差異は、遺伝子の発現レベルが細胞型によって変動することを示している。また、CESC細胞の分化過程における発現レベルの変動を特徴付けることが不可欠であると考えられる。
【0081】
誘導動態の実験を、とりわけ、10−7Mのレチノイン酸のような誘導物質の存在下または不存在下で、成長因子もサイトカインも有さない分化培地に細胞を播種することで行った。刺激した細胞をさまざまな時間に採取し、遺伝子の発現レベルを前述のように(実施例4参照)QRT−PCRによって分析した。特定の遺伝子の発現の変動を分析したところ、遺伝子によって異なる動態が明らかになった。
【0082】
発現レベルの変動動態にしたがって、大きな3つのクラスの遺伝子を区別することができる。クラス1では、発現レベルが誘導前に最大となり、培地にレチノイン酸を添加すると急速に降下する遺伝子が見られる(図11)。このクラスでは、sox−2、cripto、AP、eomes、oct−6、gcnf、sox−3、1P06、GTT3、RARg2、BMP−8、gata−4などの遺伝子が見られる。
【0083】
クラス2では、fFGF−8、nanog、nodal、cdx−2、RARb1、RARa、piwi、TERT遺伝子などのような、分化誘導後4時間と8時間の間に最良の発現に達する遺伝子が見られる(図12)。
【0084】
クラス3では、分化誘導開始後24時間から最良の誘導が得られる遺伝子、特に、piwi、p53、TERT、RXRa、Oct−2、RARb、gata−2、pax−6遺伝子などの遺伝子が見られる(図13)。
【0085】
また、これらの連続的な変動と誘導において、変動が逆のcripto/nodal遺伝子とFGF−8/BMP−8遺伝子のような、特定のこれらアクターの変動速度も注目すべきものである。
【実施例6】
【0086】
実施例6:ステージIX−XIIの胚盤葉細胞で発現する遺伝子の同定
ステージXI−XIIの胚盤葉細胞を先行研究に記載されているように採取した(Pain et al.,1996、仏国特許第)。胚の調製と広範囲の洗浄の後でも残留卵黄があることを考え、これら胚盤葉細胞の沈渣物からのRNAの二重調製法を行った。細胞の沈渣物を冷凍し、まず、およそ1×10個の細胞に対して5mlの割合でTrizol(Tri Reagent(Invitrogen cat 15596−018))を用いた方法によってRNAを抽出した。ピペットによる均質化の後、混合物を4℃、400gで10分間遠心分離し、そして1mlの溶液あたり200μlのクロロホルムを添加した。全体を乳化し、室温で上澄みを静かに移し取り、この操作を数回繰り返した。混合物を4℃、400gで15分間遠心分離し、水相を新たな試験管に移した。混合物mlあたり500μlのイソプロパノールを添加した。それから、全体を、4℃、400gで15分間遠心分離することで沈殿させ、沈渣物を70℃のエタノールで洗浄し、乾燥させ、そしてQuiagenキットのRNA抽出キットの、200μl〜400μlの溶解緩衝液に回収した。このRNAの調製/精製の第二の過程を製造者の指示にしたがって続けた。この二重の抽出によって、遺伝子の発現レベルのQRT−PCRによる分析における最も良好な再現性の結果が得られた。
【0087】
QRT−PCRによる検出条件は先述した条件と同じである(実施例4参照)。
【0088】
ステージXの胚盤葉細胞における遺伝子の相対的発現レベルは、特定の遺伝子も、胚線維芽細胞と比較してこの胚盤葉細胞で非常に強く発現することを示している。
【実施例7】
【0089】
実施例7:鳥類の生殖細胞(CGSC)の生理に関与する遺伝子の同定
ニワトリの生殖細胞の出現および維持に関与する遺伝子を同定するために、CESC細胞に対して用いたスクリーニング戦略を、ニワトリの胚の性腺細胞にも適用した。
【0090】
CESC細胞の遺伝子の研究に対して用いたアプローチと同様に、遺伝子の発現レベルを鳥類の生殖細胞で分析した。これらの細胞で発現した遺伝子のリストによって、これらの細胞で非常に強く発現した遺伝子(相対的な過剰発現の割合は100を超える)と、相対的発現レベルが100と10の間に含まれる遺伝子を明らかにすることができた。ほとんどの遺伝子が、2と10の間に含まれる比率の、より穏やかな発現を示した。
【実施例8】
【0091】
実施例8:さまざまな細胞型の間における遺伝子発現の比較分析
CESC細胞、CEGC細胞およびステージIX−XIIの胚盤葉細胞の間における相対的発現レベルを比較することで、さまざまな細胞型の特徴的なマーカー遺伝子として現れる遺伝子のさまざまなリストが得られた(素点を添付書類に示している)。
【0092】
8.1 ステージIX−XIIの胚盤葉細胞
さまざまな発現プロファイルの先行結果を組み合わせることで、各細胞型に固有の発現の組み合わせを決定することができる。ステージXの胚盤葉細胞とCESC細胞の発現レベルをインビトロで比較すると、ステージXの胚盤葉細胞は、
−fgf−8、fgf−b2、fgf−4、wnt−14のような成長因子、
−smad−9、cis−1、smad−7、id2、smad−4のようなシグナル伝達アクター、
−sf−1、gata−5、sox−9、sox−2のような転写因子、
−WD40、WDRP−3、abcg2輸送体のような構造遺伝子、
−N−myc2、poz−3、atmのような調節遺伝子、
−T細胞APP2Cホスファターゼ、ssb−1、nf−2のようなあまり特徴付けされていないその他の遺伝子、
−この発生段階で非常に特異的に現れるzpc遺伝子、
を過剰発現した(図14)。
【0093】
ステージXの胚盤葉細胞と胚の性腺細胞CEGCの同様の比較は、
−fgf−8、fgf−4、wnt−3a、wnt−11、tgf−b2のような成長因子、
−id2、smad−9、socs−1、cis−1、smad−7のようなシグナル伝達アクター、
−eomes、sox−3、sox−2、1P06、gata−2、gata−5、pax−6、fbx−15b、sox−9のような転写因子、
−WD40、claudin−1、アスタシン、WDRP−3、abcg2のような構造遺伝子、
−atm、N−myc−2、poz−2、poz−3のような調節遺伝子、
−ens−1、T細胞APP2Cホスファターゼ、TC893、nf−2、ssb−1、TC823のようなあまり特徴付けされていないその他の遺伝子、
−この発生段階で非常に特異的に現れるzpc遺伝子、
の過剰発現を示した(図14)。
【0094】
このように、ステージXを最も良く定義できる組み合わせは、二つの状況の間で最もよく発現する、
−_fgf−4、tgf−b2、
−id−2、smad−7、smad−9、snoN、SOCS13、
−Cxcr−4、
−gata−5、N−Cor1、
−atm、ブルーム症候群、enx−1、rad54b、rbm6、ssb−1、
−nf−2、N−myc2、pml、T細胞APP2C、WDRP−3、
−cpe1738、cwf16、TC82325、TC87、zan75、
−Zpc、
という遺伝子を含んでいる。
【0095】
ステージXの胚盤葉細胞については、fgf−4因子とfgf−8因子、id−2遺伝子、SOCS13遺伝子、細胞内シグナル伝達に作用するsnoNを含むsmadファミリーのさまざまなメンバーのような、多くのシグナル伝達アクターが存在することに注目することができる。強いものであっても、これらのアクターの存在は完全には特異的ではない。
【0096】
8.2 CESC細胞
同様に、ステージXの胚盤葉細胞と比べて、CESC細胞は、
−wnt−10、bmp−5、dapper−1のような成長因子、
−brap、TGF−RIIのようなシグナル伝達アクター、
−gcnf、TR−a、pax−6、1P06、irx−4のような転写因子、
−エメリン、アスタシン、claudin−3、LAMPレクチン、svap−1、dorfinのような構造遺伝子、
−tra−1、ch−tog、musashiのようなマーカー遺伝子、
−FTTシンターゼ、CG182、maturase K、RNAシクラーゼ、FMRPI182のようなあまり特徴付けされていないその他の遺伝子、
を過剰発現する(図15)。
【0097】
また、胚の性腺細胞CEGCと比べて、CESC細胞は
−wnt−3a、wnt−10、fgf−8、bmp−8、wnt−11、fgf−4、dapper−2のような成長因子、
−RIIアクチビン、brapのようなシグナル伝達アクター、
−nanog、eomes、sox−3、1P06、pax−6、gcnf、sox−2、gata−2、fbx−15b、irx−4のような転写因子、
−アスタシン、claudin−3、claudin−1のような構造遺伝子、
−tra−1、ens−1のようなマーカー遺伝子、
−TC896、maturase K、RNAシクラーゼ、FMRPI182のようなあまり特徴付けされていないその他の遺伝子、
を過剰発現する(図15)。
【0098】
このように、増殖中のCESC細胞を最も良く定義できる組み合わせは、
−wnt−10a、wnt−11、dapper−1、
−1P06、pax−6、gcnf、irx−4、sox−3、
−アスタシン、claudin−3、
−tra−1、
−1P08−A09、slc38a、FMRPI182、
という遺伝子を含む。
【0099】
増殖中のCESC細胞については、これらの細胞に特徴的なリストのうち、転写因子の割合が多いことに言及することができる。とりわけ、この研究の過程ではじめて、ニワトリにおいて、nanog、1P06(oct−3/4、下記参照)およびgcnfという遺伝子が単離され、クローニングされ、そして研究された。
【0100】
また、maturase、発現が増殖に関連しており機能の分からないFMRPI182遺伝子、slc38−2遺伝子(おそらく溶質輸送体ファミリーのメンバーである)、1P08−A09遺伝子のような新たな遺伝子も同定された。
【0101】
8.3 CEGC細胞
胚の性腺細胞は、全組織の利用ストック(上記参照)を用いたところ、ステージXの胚盤葉細胞と比べて、
−bmp−5、dkk−3のような成長因子、
−エンドグリン受容体、TGF−RII、FGF−R、pten、wisp−1、smad−3、FGF−R、smarcd−3のようなシグナル伝達アクター、
−pax−2のような転写因子、
−エメリン、VE−カドヘリン−2、HSPb7のような構造遺伝子、
−tie−2、piwi、musashiのようなマーカー遺伝子、
−CGI182、samsn−1、flj00188のようなあまり特徴付けされていないその他の遺伝子、
という遺伝子を過剰発現した(図16)。
【0102】
また、増殖中のCESC細胞と比べると、胚の性腺細胞は
−wnt−14、bmp−5、dkk−3のような成長因子、
−エンドグリン受容体、RPL−Rbox1、wisp−1、pten、cis−1、smad−7、smad−9、smad−4、TGF−RII、c−ski、smarcd−3のようなシグナル伝達アクター、
−Ihx−9、sf−1、gata−4、pax−2、dax−1、sox−9のような転写因子、
−abcg−2、VE−カドヘリン−2のような構造遺伝子
−tie−2、dmrt−1、piwiのようなマーカー遺伝子、
−TC95、KHKoc−1、flj00188、tep12、samsn−1のようなあまり特徴付けされていないその他の遺伝子、
−vasa、piwiのような生殖細胞のマーカー遺伝子、
という遺伝子を過剰発現した(図16)。
【0103】
このように、胚の性腺のCEGC細胞を最も良く定義できる組み合わせは、
−BMP−2IK、BMP−5、dkk3、
−エンドグリン、FGF−R、TGF−RII、Wisp−1、
−Gata−4、Ihx−9、
−Rab40B、smad3、smarcd3、
−TC95408、TC97694、FLJ00188、
−tie2、tob、
という遺伝子を含む。
【0104】
これらの組み合わせは単なる指標でしかなく、単一の細胞型に非常に特異的に現れる遺伝子はほとんどない。
【0105】
同定された遺伝子の中には、deadend、vasa、wisp−1、tep12などのような、発現プロファイルが生殖組織に限定される、その他の種における相同体を有するものがある。ステージXの胚盤葉細胞とCEGC細胞(生殖能力を有する二つの細胞型)の間で共通する発現プロファイルを比較すると、発現が弱く、さらにはCESC細胞ではほとんどない遺伝子の組み合わせを同定することができる。生殖細胞マーカーのこの消失またはこの大きな減少は、ステージXの胚盤葉細胞を培養した結果と考えることができる。しかし、生殖能力の必要条件および/または十分条件でのこれらの遺伝子の発現に関しては、いかなる指摘もできない。遺伝子は、
−wnt−14、
−Brinp、cis−1、c−ski、prl−Rbox1l、pten、sef、smad−4、smad−5、
−Abcg2、clock、dmrt−1、lfng、morf、
−Dax−1、pax−2、sf−1、sox−9、
−Deadend、poz−3、slug、Ve−カドヘリン−2、
−Emx−2、fragilis4、TC136、tep12、tsc−22、
−Tudor、vasa、
である。
【0106】
同様に、発現レベルで変動があっても、ステージXの胚盤葉細胞に関するものを除き、CESC細胞とCEGC細胞に共通する遺伝子がある。これらの遺伝子とは、
−cripto、BRAP、TGF RIII、
−CGI82、ch−tog、ddx−25、Dorfin、エメリン、
−ERCC−2、KHKoc1、LAMPレクチン、
−maturase、musashi、piwi、SAMSN−1、SVAP−1、TC86990、
−TR−alpha、
である。
【0107】
また、CEGC細胞に関するものを除き、CESC細胞とステージXの胚盤葉細胞の間で共通して発現する遺伝子について同一の分析を行った。これらの遺伝子とは、
−nodal、wnt−3a、wnt−11、
−Ras like、
−drg−1、ens−1、ews−1、
−Eomes、Fbx15b、gata−2、jsd3、pax−6、sox−2、sox−3、
−Ddx−28、Mago、ネスチン、POZ2、
−Arg NmethylASE、PP2447、RNAシクラーゼ、
−A14TS、CES−c32、TC893、トランスリン、
−Claudin−1、syntaxin 16、WD40、WDFYP−2、である。
【0108】
一つまたはその他の状況で過剰発現したさまざまな遺伝子を分析することによって、インビトロでの多能性の維持、インビボおよびインビトロでの生殖能力の制御、そして特定の遺伝子の発現レベルに対する培養条件の影響についてさまざまなモデルを提案することが可能となる。
【0109】
細胞骨格
CESC細胞の形態形成の維持を保証する細胞骨格の遺伝子のレベルでは、限られた数の遺伝子のみが、有用で重要な発現の差異を示した。とりわけ、WDモチーフを有する遺伝子、すなわち細胞骨格レベルでのタンパク質間の相互作用に関与するモチーフがCEGCよりもCESC細胞でより多く発現するWDRP−2遺伝子(TC190198)である。WD−40遺伝子(TC189537)はステージIX−XIIの胚盤葉細胞にかなり特異的であると考えられる。ベータ・カテニン遺伝子が二つの系で強く発現することに注目すべきであり、このことは、該遺伝子の調節がタンパク質レベルで実際に行われることを示唆している。逆に、「ギャップ結合」と細胞間の強力な関連の維持に関与するClaudin−1遺伝子(TC189974)はCESC細胞で強く発現した。この観察結果は、電子顕微鏡によって行った、細胞内結合が特に重要でありうまく構造化されていたCESC細胞の分析と合致するものである。また、細胞の移動と、周囲との潜在的な相互作用を可能にする、細胞の細胞外基質の制御に介入するメタロプロテアーゼという酵素であるアスタシン(TC221952)も検出された。
【0110】
成長因子
CESC細胞とGESC細胞は、さまざまなレベルで、成長因子とサイトカインの大きなファミリーのさまざまなメンバーを発現した。また、TGF/BMPファミリー、FGFファミリー、チロシンキナーゼ受容体因子のファミリー、シグナルがgp130という経路によって伝達されるサイトカインのファミリー、およびwntファミリーの多くの成長因子が、CESC細胞あるいはGESC細胞で特異的に発現した。
【0111】
試験したさまざまなアクターのうち、CESC細胞はCEGC細胞よりもかなり強くnodal、FGF−8、wnt−3a、wnt−10a、BMP−8およびFGF−4といった因子を発現した。該CEGC細胞はとりわけ、wnt−14、TGF−b2およびBMP−5因子の過剰発現を特徴としている。
【0112】
マウスとヒトのES細胞について言及されているように(Besser,2004、Vallier et al.,2004)、nodalの発現が多能性の複雑な調節全体に関与していることに注目すべきである。
【0113】
cripto遺伝子はGESC細胞とCESC細胞で同時に発見されたものであるが、不可欠なエレメントかつヒトのES細胞の「痕跡」として言及されている(Bhattacharya et al.,2004)。
【0114】
マウスにおいては、FGF−8の発現は、PGCが移動後に性腺に達しているとき、PGCの増殖に関与した(Kawase et al.,2004)。CESC細胞でのFGF−8の強い発現は、これらの細胞のPGCの「性質」を表す良好な指標となりうるものだが、GESC細胞よりもずっと高いレベルの発現は、この因子の活性化経路が脱制御された兆候であると考えられる。同様に、FGF−4は、GESC細胞よりもCESC細胞でおよそ5倍発現した。FGF−4がマウスにおいてOct−3/4転写因子の最適な標的として同定されており(Dailey et al.,1994、Ambrosetti et al.,2000)、インビトロおよびインビボの両方で、MESC細胞において不可欠なアクターである(Yuan et al.,1995、Feldman et al.,1995、Wilder et al.,1997)ことに注目すべきである。
【0115】
また、二つのBMP因子の状況も、とりわけMESC細胞の多能性の制御(Ying et al.,2001)と、インビトロ(Hubner et al.,2003、Geijsen et al.,2004)およびインビボでの(Saitou et al.,2002)マウスの生殖細胞の出現と維持に、BMP−4因子とBMP−8因子が強く関与していることを特徴としている。マウスにおける機能の消失によってBMP−4の発現が消滅することにより、中胚葉の派生物が形成されなくなるため胚が早期(発生の8〜9日目)に死亡する(Winnier et al.,1995)。これらの胚では、いかなるPGCも検出されない(Lawson et al.,1999)。この不在はBMP−8で補うことができる。BMP−4自身は胚盤葉上層からの早期の誘導に必要である。BMP−8b遺伝子の発現を消滅させると、生殖細胞の増殖の減少と、減数分裂を開始する細胞の減少という結果になる(Zhao et al.,1996、Zhao et al.,1998)。
【0116】
sdf−1遺伝子については、この因子のメッセンジャーの発現はその受容体であるCXCR4の発現と相関があり、該受容体もまた、組織全体において陽性細胞が同定されていなくとも、性腺で特異的に検出される。CESC細胞は生殖細胞の誘導を保証する因子または受容体を発現するこの特性は有していなかった。なぜなら、ゼブラフィッシュ(Doitsidou et al.,2002、Knaut et al.,2003)、マウス(Ara et al.,2003)、より近年ではニワトリ(Stebler et al.,2004)において示されているように、これら二つのアクターは、生殖細胞の移動の制御に強く関与するからである。したがって、CESC細胞でたとえばCXCR4受容体を発現させてCESC細胞の向性を変更することで、より効果的に性腺をコロニー形成させることが可能である。ステージIX−XIIの胚盤葉細胞におけるCXCR−4の強い発現は、早期胚内での細胞移動の制御における重要な要素である。
【0117】
もう一つの重要なアクターはdeadend遺伝子であり、該遺伝子は生殖性のこのコロニー形成プロセスに関与し(Weidinger et al.,2003)、該遺伝子のter突然変異は生殖細胞の発生を危険にさらすものである(Youngren et al.,2005)。この遺伝子はCESC細胞よりも性腺細胞で多く発現する。
【0118】
試験したその他の因子および受容体の発現レベルは、CESC細胞あるいはGESC細胞にはそれほど特異的ではない。
【0119】
膜受容体
TGFb/BMPおよびFGFに対する受容体のメッセンジャーが、CEFを含む、試験した細胞型の全体で検出された。これらの変動の生理学的重要性が知られていないとき、検出されたRNAのレベルがタンパク質レベルの良好な指標であれば、第一にシグナル伝達の実際の欠如がこれらの受容体レベルで観察されるとは考えられない。しかし、CESC細胞におけるアクチビンIIB(U31223)受容体の強い発現が観察され、該発現はおそらく、これらの細胞におけるnodalとcriptoの強い発現と関係している。
【0120】
CEGC細胞では、CESC細胞と比べて高い割合で、FGF−R(U48395)、TGF−RII(AF202991)およびTGF−RIII(L01121)という受容体が発現した。チロシンキナーゼ受容体ファミリーのさまざまな遺伝子の発現プロファイルは、分析した遺伝子の数が網羅的でなくても、あまり変化するとは考えられない。
【0121】
注目すべきことに、SCFに対する受容体であるc−kitの発現レベルはCESC細胞では非常に弱く、このことは胚の性腺細胞で観察された発現と対照的である。しかし、生殖系の維持におけるSCFの重要性も証明されている。このc−kitのレベルは、c−kit受容体がその他の多くの組織(造血組織、神経細胞など)で発現しても、細胞の生殖性の性質の良好な指標であると考えられる。
【0122】
LIFのシグナル伝達経路においては、LIF−R受容体とgp130タンパク質の発現が見つかり、これらはまた、線維芽細胞でも検出された(Duong et al.,2002、Geissen et al.,1998)。鳥類のLIF因子は近年クローニングされたものであるが(Horiuchi et al.,2004)、この因子は線維芽細胞でのみ検出され、このことは、他の種におけるこのサイトカインの産生に合致しており、また、CESC細胞が、用いた培養条件ではオートクリン産生しないことを示唆している。
【0123】
シグナル伝達
シグナル伝達経路においては、チロシンキナーゼ受容体とTGFb/BMP受容体の活性化経路およびgp130jak/STATの経路の大半のアクターは、概して偏在的に、さまざまな細胞型の間で大差なく発現した。しかし、いくつかの観察を行う必要がある。PTEN遺伝子(BM486819)ならびにPOZ3(TC216137)のようなPOZドメインにあるファミリーの遺伝子がCEGC細胞で強く発現した。CIS−1(TC216000)、SSB−1(TC210358)、SOCS13(TC217588)などのような遺伝子は、さまざまな受容体によるシグナル伝達に関与し、また多くの遺伝子がGTPasesの経路に関与する。TGF/BMPの作用を調節する作用で知られる、Smad−3(TC187835)、Smad−6およびSmad−7(TC194136)遺伝子もまた、CEFでの強い発現が見られても、CESC細胞よりもCEGC細胞で多く発現した。マウスにおける生殖細胞の決定論に強く関与することで知られるSmad−1遺伝子(Tremblay et al.,2001)とSmad−5遺伝子(TC209770)(Chang et al.,2001)はそれぞれ、CESC細胞とCEGC細胞でより多く発現した。線維芽細胞での発現も検出された。Smad−4遺伝子(TC207213)は、CEGCで好適に発現したが、CESCとCEFでは検出されないか、あるいはほとんど検出されなかった。このSmad−4遺伝子は多くの状況で、TGFb/BMPファミリーのメンバーのシグナル伝達の鍵遺伝子として現れる。なぜなら、該遺伝子は、これらの因子に依存する遺伝子の転写制御に不可欠だからである。マウスにおけるsmad−4遺伝子の不活性化に関連する多くの欠点のうち、BMP−4突然変異体(Lawson et al.,1999)およびMBP−8b突然変異体(Ying et al.,2000、Loebel et al.,2003)で観察されるものに非常に類似したPGCの形成の不在が観察された(Chu et al.,2004)。c−ski遺伝子(TC219247)およびSNoN遺伝子(TC215069)も特異的な発現の差異を有しており、生殖経路におけるこれらの細胞の増殖と分化の制御に参与している。TGF/BMPファミリーのシグナルの伝達のこれらさまざまなアクターの発現レベルは、研究した細胞の「幹細胞」または「生殖細胞」としての性質の主要な指標に相当すると考えることができる。発現レベルのあらゆる変動は、候補遺伝子のさまざまな操作によって誘導される変化をより良く画定するために利用することができる。これらのさまざまな遺伝子自体、とりわけSmad−4も、CES細胞の生殖能力の制御において非常に重要な候補である。したがって、これらのさまざまな遺伝子の効果または破壊をインビトロとインビボの両方でテストすることが特に適切だと考えられる。
【0124】
ras−like遺伝子(TC201177)もまた、CEGC細胞よりもCESC細胞において、またステージIX−XIIの胚盤葉細胞において、より特異的な発現を示した。マウスのオーソログ遺伝子は近年、MESC細胞の増殖の主要なアクターとして同定され(Takahashi et al.,2003)、PI3キナーゼ経路による特定の細胞系の「腫瘍形成」という特徴の原因である可能性がある。しかし、この遺伝子についてのMESC細胞の突然変異体は、生殖系をコロニー形成させる能力があるが、子孫に対するいかなる結果も今日まで現れていない。生殖細胞での発現レベルについては記載がなく、MESC細胞での発現の阻害は増殖速度に対してマイナスの効果を有している。増殖速度の必要な低下(この遺伝子の阻害を介する)はPGCの分化の前提条件であるという仮説が考えられる。
【0125】
テストしたその他の遺伝子は発現レベルでは大きな不均衡は示さなかったと考えられる。Stat、MAPキナーゼ、erkなどのタンパク質のような、シグナル伝達のその他のアクターの活性の調節は、おそらくタンパク質のレベルで、とりわけ、リン酸化/脱リン酸化に関連した活性化メカニズムによって行われる。このことは、MESC細胞におけるSTAT−3タンパク質については証明されている。
【0126】
核タンパク質の因子のレベルにおいては、候補遺伝子の数の多さを考えると状況は複雑である。概略的に、転写因子については、ホルモン核受容体(HNR)ファミリー、sox遺伝子ファミリーおよびgata遺伝子ファミリーなどのさまざまな遺伝子ファミリーが特に関与すると考えられる。
【0127】
特定の遺伝子の関与は、遺伝子発現のエピジェネティックな制御に直接関連している。ニワトリの発生過程または鳥類モデルにおけるエピジェネティックなメカニズムの知識は、インシュレーター配列の同定を含む、グロビン遺伝子の発現メカニズムの先駆的な発見(Felsenfeld,1993)と、リゾチーム遺伝子の転写制御に関する研究に限定される(Kontaraki et al.,2000)。その他の哺乳動物系または下等真核生物系との類推によって、遺伝子発現のエピジェネティックな制御に関与するニワトリのさまざまな遺伝子が同定された。発現の大きな差異が観察される遺伝子のうち、胚の性腺でより強く発現するdmrt−1遺伝子と、胚盤葉細胞でより多く発現するDCSM遺伝子およびenx−1遺伝子が見つかっている。dmrt−1遺伝子の発現は、マウスモデルにおけるようにセルトリ細胞に特異的であると考えられるが(Lei et al.,2004)、生殖細胞画分におけるこれらの遺伝子の検出は、説明を変更することになる。その他の遺伝子は興味深い発現プロファイルを有するが、線維芽細胞でも発現した。
【0128】
テロメラーゼ遺伝子
幹細胞および胚性幹細胞、特にCESC細胞は固有のテロメラーゼ活性を有する(Pain et al.,1996)。ニワトリのテロメラーゼ遺伝子はクローニングされたばかりであり(Delany et al.,2004、Swanberg et al.,2004)、CESC細胞での発現レベルは高いと考えられる。
【0129】
soxファミリーの遺伝子
sox遺伝子については、sox−9遺伝子(U12533)の発現がCEGC細胞に、より特異的であり、このことは、マウスの精巣形成におけるこの遺伝子の役割の重要性に合致していると考えられるが(Chaboissier et al.,2004、Vidal et al.,2001)、該遺伝子は好適には支持細胞で発現すると考えられる。哺乳類と鳥類の間でのこの遺伝子の役割の保存が考えられ(Morais da Silva et al.,1996)、この遺伝子は、Dax−1(AF202991)の存在下でCEGC細胞においてもまた強い発現が見られるアクターである、核受容体sf−1(Sekido et al.,2004)(NM205077)の直接的な標的である。
【0130】
CESC細胞に最も特異的な遺伝子のうち、二つの遺伝子sox−2(U12532)とsox−3(U12467)を挙げることができる。マウスにおけるある特定のプロモーターのレベル(Miyagi et al.,2004、Nishimoto et al.,1999)、とりわけFGF−4のプロモーターレベル(Dailey et al.,1994、Ambrosetti et al.,2000)で、SOX−2タンパク質とOCT−3/4タンパク質の強い関連が証明された。1P06遺伝子は、哺乳類のOct−3/4遺伝子に対する鳥類の相同体であり(下記実施例9参照)、CESC細胞で非常に強く発現し、これらの細胞の最も良いマーカーの一つであると考えられる。
【0131】
gataファミリーの遺伝子
また、gata遺伝子も特徴的な発現プロファイルを示した。gata−4遺伝子(U11887)は、胚の性腺細胞で好適に発現し、発現はセルトリ細胞の存在に関連していると考えられる(Imai et al.,2004、Lavoie et al.,2004)。gata−2遺伝子(X56930)とgata−5遺伝子(U11888)は、CESC細胞でより多く発現し、とりわけ、胚盤葉細胞ではgata−5遺伝子が強く過剰発現する。gata−2遺伝子のメッセンジャーは、生殖細胞(Siggers et al.,2002)およびニワトリの早期胚(Sheng et al.,1999)で検出されている。gata遺伝子の多面的な作用は、標的遺伝子のプロモーターにおける類似のおよび/または共通の応答エレメントのレベルでさまざまなパートナーと関連することで変調、制御される。したがって、造血系に優先的なパートナーの一つがetsファミリーの遺伝子の一つであれば、その他の系における増殖および分化の組み合わせは異なる。gata遺伝子に対する応答エレメントは、smad−7遺伝子のプロモーターにおけるBMPに対する応答エレメント(BREエレメント)を用いて同定される(Benchabane et al.,2004)。このsmad−7遺伝子はまた、CESC細胞よりも胚の性腺細胞でより多く発現した。
【0132】
Idファミリーの遺伝子はBMPの作用を制御する、無視できないアクターであると考えられる。Id2遺伝子は胚の性腺細胞でより発現し、とりわけ、CESC細胞よりも胚盤葉細胞で発現すると考えられる。この遺伝子は、マウスモデルと同様のアプローチにおいて(Ying et al.,2003、Kowanetz et al.,2004)、CESC細胞の増殖/分化の調節の中心にあると考えられる。
【0133】
文献に記載されているこれらのさまざまなプロセスでは、YY1パートナー(Kurisaki et al.,2003)(CESC細胞での強い発現も見られるが、その発現レベルは比較的、偏在的である)と、心臓分化のケースとしてはNKxファミリーのアクター(Lee et al.,2004)が頻繁に見られる。ところが、現状では哺乳類でのみ同定されているnanog遺伝子がこのNkx遺伝子ファミリーに属する(Chambers et al.,2003)。ニワトリのゲノムに関する公開されている配列レベルでの相同性分析によって、ニワトリのnanog遺伝子を同定した(図17)。このアクターの機能はさらに、マウス系ではほとんど知られていない。ENS−1タンパク質は遺伝子のトラッピングアプローチで同定されているが(Acloque et al.,2004)、細胞が分化するように誘導されると、CESC細胞での非常に強い過剰発現とメッセンジャーの急速な消失を伴う、特に興味深い発現プロファイルも示した(Acloque et al.,2001)。
【0134】
Oct−3/4/sox−2複合体の標的となることで知られているutf−1遺伝子の相同体(Nishimoto et al.,1999)はニワトリにおいて未だに同定されていないが、トランスフェクション実験では、マウスのoct−3/4遺伝子、sox−2遺伝子およびutf−1遺伝子のプロモーターがCESC細胞で特異的に活性化されることを指摘することができ、このことは、これらさまざまなアクターの発現調節メカニズムが鳥類のCESC細胞で保存され、機能的であることを示している(実施例12参照)。このトランス活性化はニワトリの胚線維芽細胞では検出されなかった。
【0135】
ホルモンの核受容体
ホルモンの核受容体については、dax−1遺伝子が胚盤葉細胞で非常に強く過剰発現すると考えられる。この遺伝子は、とりわけsf−1遺伝子の作用に対する拮抗作用による(Crawford et al.,1998)、生殖性の分化に対してマイナスではあるが(Swain et al.,1998)不可欠の役割を持つこと(Meeks et al.,2003)で知られている。このdax−1遺伝子はそれ自身がsf−1によってプラスに制御され、COUP−TFによってマイナスに制御されうる(Yu et al.,1998)。また、dax−1の発現はwnt−4による特定の活性化系に依存している(Mizusaki et al.,2003)。ところが、wnt−4はCESC細胞よりも性腺でより多く発現が観察される因子の一つである。また、N−Corl遺伝子(TC201157)のような、HNRと関連するタンパク質をコードする遺伝子も存在し、特徴的な差異を示した。
【0136】
本発明者が配列の全部を決定したgcnf遺伝子(図18)は、CESC細胞で非常に強く特異的な発現が見られ、Oct−3/4遺伝子のプロモーターレベルでのsf−1に対する該遺伝子の拮抗作用は、マウスにおける記載がある(Furhmann et al.,2001)。
【0137】
sf−1遺伝子はほとんど胚の性腺細胞のみで発現が見られた。ところが、sf−1とlrhはFTZ−F1の二つの相同体であり、該相同体の性腺の決定論と早期の発生における役割については記載がある(Kudo et al.,1997、Fayard et al.,2004)。補助的な調節レベルと、ホルモンの核受容体の作用とその他のパートナー(たとえばsox−9など)の間で起こりうる結合は、sumoylationを介して行われうる。転写制御におけるこの翻訳後修飾と、ゲノムの完全性の重要性は高まり続けている(Muller et al.,2004、Seeler et al.,2003)。sumoylationは細胞の配分と因子間の相互作用を同時に修飾する(Chen et al.,2004、Komatsu et al.,2004)。ERRのような(Mitsunaga et al.,2004)マウスの生殖細胞の決定論に関与することで知られるその他の受容体は、発現レベルの変動が大きい研究した系では存在しないと思われる。
【0138】
受容体RAR、RXR、TRは細胞の分化の過程に、より特徴的に関与している。該受容体の発現速度と発現レベルの変動は実施例5で分析した。
【0139】
RNA結合タンパク質
生殖細胞での遺伝子の転写制御に関与するタンパク質のうち、RNAを固定するタンパク質、すなわち「RNA結合タンパク質」が見られた。これらのタンパク質はとりわけショウジョウバエで同定されており、胚の極性の制御(Huynh et al.,2004a)と生殖細胞の決定論の制御に介入するものである。もう一つのモデル種、C.elegansでは、生殖細胞の前成説は、同様に、また概略的には、これらのタンパク質の存在と役割に基づいている。しかし、これら二つのモデルにおいて、転写に必要な活性化であるRNAポリメラーゼIIのリン酸化による活性化の制御は、これら「RNA結合タンパク質」によっては行われない(Seydoux et al.,1997)。哺乳類においては、これらの遺伝子のうちいくつかがマウスにおける生殖系の維持にも不可欠であることが示されている(Wang et al.,2004、Tsuda et al.,2003、Tanaka et al.,2000)。しかし、マウスの生殖細胞の由来は、三次元的な細胞環境と、BMP−4やBMP−8のような因子の作用とに関連した、さまざまなアクターによる誘導現象に、より関連していると考えられる。これらの誘導全体が最終的に、Oct−3/4のようなさまざまな主要なアクターの発現レベルを制御する(Saitou et al.,2003)。この誘導の由来は、マウスのMESC細胞の分化から生殖細胞をインビトロで得ることによって強化されると考えられる(Hubner et al.,2003、Geijsen et al.,2004、Toyooka et al.,2003)。
【0140】
ニワトリにおいては、ニワトリの胚の早期段階ですぐに、vasa陽性細胞が特定されたことで、前成説が再び説かれている(Extavour et al.,2003、Tsukenawa et al.,2000)。この仮説では、ある特定の「RNA結合タンパク質」の役割が必要不可欠であると考えられる。
【0141】
発現レベルをテストしたこのファミリーの約60の遺伝子では、CESC細胞よりもCEGC細胞において、しかしまた胚盤葉細胞においてもずっと強く発現する遺伝子として、bruno遺伝子(AB050497)、tudor遺伝子(TC213378)、nanos遺伝子(TC223629)、vasa遺伝子(AB004836)が検出されたが、これは、おそらくこれらの細胞における生殖レベルでのコンピテント細胞の存在に対応している。CESC細胞はvasa遺伝子に対して陽性であるが、該細胞が培養に維持されるとすぐに、生殖系をほとんど導かなくなる。また、相対的な発現レベルはこの生殖能力に不可欠な要素だと考えられる。nanos遺伝子のようなある特定の遺伝子は、ほぼCEGC細胞に対してのみ発現の特異性を有する。mago遺伝子は、CESCおよびCEGCの二つの細胞型と比べて、胚盤葉細胞でより強い発現を示した。また、RNAを結合させる能力を有するRNAヘリカーゼタンパク質の特徴的なモチーフである「Dead box」により特徴付けられる遺伝子についても指摘することができる(Rocak et al.,2004)。ddx 28遺伝子(TC211748)ならびにRNAシクラーゼの相同体(TC214888)はCESC細胞で良好に発現した。ショウジョウバエおよび/またはC.elegansのタンパク質と相同的な新規な分子は、さらに同定すべきものであり、該分子とはとりわけ、oskar、pumilio、aubergine、maelstrom相同体などである。哺乳類においては、生殖細胞の性質の制御におけるこれら「RNA結合」タンパク質の役割は知られていないが、ショウジョウバエで得られた結果によると、これらの遺伝子の活性のあらゆる乱れが生殖系の消失につながると考えられる。タンパク質は、該タンパク質が認識するメッセンジャーの細胞質/核局在化の制御に、ひいてはこれらの標的メッセンジャーの翻訳の効率に作用すると考えられる(Huynh et al.,2004、Yano et al.,2004、Hachet et al.,2004、Palacios et al.,2004)。これらのタンパク質と該タンパク質のRNAの作用メカニズムは、とりわけiRNAと「RNA誘導型サイレンシング複合体」であるRISC複合体による、これらのメッセンジャーの発現レベルの潜在的な調節によって、複雑化し続ける(Tomari et al.,2004)。
【0142】
非対称的な分裂および多くの種の生殖系の維持に関与するpiwi遺伝子(Cox et al.,1998、Kuromochi et al.,2004)は、CESC細胞よりもCEGC細胞でより多く発現した。胚盤葉細胞では、CESC細胞およびCEGC細胞におけるよりもpiwiは発現しないと考えられる。このpiwi遺伝子はArgonauteタンパク質のファミリーに属し、RISC複合体の必須の構成要素の一つである。該遺伝子はPAZドメインを含み、該ドメインは、RNAを結合し、siRNA/mRNAの分解の二本鎖mRNAレベルでのエンドヌクレアーゼとして作用することができるものである(Song et al.,2004、Tahbaz et al.,2004)。また、dicer遺伝子の発現レベルは、siRNAの産生を保証し、またニワトリにおいても同定されているものであり(Fukagawa et al.,2004)、CESC細胞とCEGC細胞において同等であると考えられる。
【0143】
その他の遺伝子
比較した細胞型によって発現で大きな差異を示すその他の遺伝子のうち、CESC細胞と胚盤葉細胞に特異的なtra−1(NM204289)、先行研究でCESC細胞のマーカーとして記載されている(Acloque et al.,2001)ens−1遺伝子、MESC細胞の生理に関与するT−boxというボックス遺伝子であるがその役割は分かっていないfbx15遺伝子とfbx15b遺伝子(Tokuzawa et al.,2003)、Nkx転写因子ファミリーのiroquoisホメオボックス遺伝子IRX4(Houweling et al.,2001)の存在を挙げることができる。その他の多くの遺伝子が発現の差異を示した。
【0144】
未知の遺伝子
機能が現状では完全に未知である遺伝子は、試験したさまざまな細胞型の間で発現の差異を示した。たとえば、CEGC細胞で過剰発現した遺伝子TC976(TC227369)、TC954(TC203410)およびFLJ00188(TC196697)と、CESC細胞で過発現した遺伝子TC869(TC192927)、1P08−A09(TC189639)、TC823(TC209084)、slc38a2(TC187360)、TC896(TC196399)、FPPシンターゼ(TC211235)、TC874(TC193590)およびCES−c32(TC83694)とを挙げることができる。胚盤葉細胞でより多く発現した遺伝子CPE1738(TC214741)を指摘することができる。TC976遺伝子は、アンキリン・モチーフとSOCSボックス(Suppressor of Cytokine signaling、サイトカインシグナル伝達の抑制遺伝子)を含んだ、マウスのASB−6タンパク質との部分的な相同性を有している(Wilcox et al.,2004、Kim et al.,2004)。これらのASB遺伝子は生殖細胞で発現することが多く、ASB14遺伝子は、CESC細胞とCEGC細胞で好適な発現が見られたが、胚盤葉細胞ではほとんど見られなかった。これらの遺伝子の機能の仮説の一つは、SOCSドメインが特定のメッセンジャーに特異的な生殖細胞の区画化に介入し、体細胞でのそれらの分解を促進させるというものである(DeRenzo et al.,2003)。このメカニズムは同時に存在し、「RNA結合タンパク質」によって行われるメカニズムに相補的であると考えられる。
【0145】
参考文献
−Acloque et al.,(2001)Mech Dev.103:79−91.
−Acloque et al.,(2004)Nucleic Acids Res.32:2259−71.
−Aida M et al.(2004)Cell 119:109−20.
−Allen JD et al.(2002)C.Mol Cancer Ther.1:417−425.
−Ambrosetti DC et al.(2000)J Biol Chem.275:3387−97.
−Anderson R et al.(2000)Mech Dev.91:61−8.
−Ara T et al.(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100:5319−23.
−Arai F et al.(2004)Cell 118:149−61.
−Barth JL et al.(1998)Exp Cell Res.238:430−8.
−Benchabane H,Wrana JL.(2003)Mol Cell Biol.23:6646−61.
−Besser D.(2004)J Biol Chem.279:45076−84.
−Bhattacharya et al.,(2004).Blood 103:2956−64.
−Biniszkiewicz D et al.(2002)Mol Cell Biol.22:2124−2135.
−Blackwell TK.(2004)Curr Biol.2004 Mar 23;14(6):R229−30.
−Blanpain C et al.(2004)Cell 118:635−48.
−Boeuf H et al.(1997)J Cell Biol.138:1207−17.
−Buaas FW et al.(2004)Nat Genet.36:647−52.
−Cai J et al.(2004)Exp Hematol.32:585−598.
−Carsience RS et al.(1993)Development 117:669−75.
−Cartwright P et al.(2005)Development 132:885−96.
−Castrillon DH et al.(2000)Proc Natl Acad Sci USA.97:9585−90.
−Chaboissier MC et al.(2004)Development 131:1891−901.
−Chambers I et al.(2003)Cell 113:643−55.
−Chambers I,Smith A.(2004)Oncogene 23:7150−60.
−Chang H,Matzuk MM.(2001)Mech Dev.104:61−7.
−Charge SB,Rudnicki MA.(2004)Physiol Rev.84:209−238.
−Chen WY et al.(2004)J Biol Chem.279:38730−5.
−Chu GC et al.(2004)Development 131:3501−12.
−Cossu G,Bianco P.(2003)Curr Opin Genet Dev.13:537−42.
−Costoya JA et al.(2004)Nat Genet.36:653−9.
−Coumoul X et al.(2004)Nucleic Acids Res.32:85.
−Cox DN et al.(1998)Genes Dev.12:3715−27.
−Crawford PA et al.(1998)Mol Cell Biol.18:2949−56.
−Daheron L et al.(2004)Stem Cells.22:770−778.
−Dailey L et a.(1994)Mol Cell Bio.14:7758−69.
−Damiola F et al.(2004)Oncogene 23:7628−43.
−Dani C et al.(1998)Dev Biol.1998 Nov 1;203(1):149−62.
−De Felici M et al.(1993)Dev Biol.157:277−80.
−Delany ME,Daniels LM.(2004)Gene 339:61−9.
−DeRenzo C et al.(2003)Nature 424:685−9.
−Doitsidou M et al.(2002)Cell 111:647−59.
−Duong CV et al.(2002)Development 129:1387−96.
−Evans MJ,Kaufman MH.(1981)Nature 292:154−6.
−Extavour CG,Akam M.(2003)Development 130:5869−84.
−Eyal Giladi & Kovak(1976).
−Fabioux C et al.(2004)Biochem Biophys Res Commun.320:592−8.
−Fayard E et al.(2004)Trends Cell Biol.14:250−60.
−Feldmann B et al.(1995)Science 267:246−9.
−Felsenfeld G.(1993)Gene.135:119−24.−Fuhrmann G et al.(2001)Dev Cell.1:377−87.
−Fujiwara Y et al.(1994)Proc Natl Acad Sci USA.91:12258−62.
−Fukagawa T et al.(2004)Nat Cell Biol.6:784−91.
−Furhmann Get al.,(2001)Dev Cell.1:377−87.
−Galli R et al.(2000)Nat Neurosci.3:986−991.
−Gaudet F et al.(2004)Mol Cell Biol.24:1640−168.
−Geijsen N et al.(2004)Nature 427:148−54.
−Geissen M et al.(1998)Development 125:4791−801.
−Ginis I et al.(2004)Dev Biol.269:360−380.
−Goodell MA et al.(1997)Nat Med.3:1337−45.
−Grabarek JB et al.(2003)Biotechniques.2003 Apr;34(4):734−6,739−44.
−Gu P et al.,(2005)Mol Cell Biol.25:8507−19.
−Ha JY et al.,(2002);Theriogenology.58:1531−9.
−Hachet O,Ephrussi A.(2004)Nature 428:959−63.
−Hamada H et al.(2005)Cancer Sci.96:149−156.
−Hamburger & Hamilton(1951.)
−Hattori N et al.(2004)Genome Res.14:1733−1740.
−Hogan B et al.(1994).Isolation,Culture and Manipulation of Embryonic Stem cells.In Manipulating the Mouse Embryo.A laboratory Manual,Second Edition,pp253−291.CSHL Press.
−Hong Y et al.(1996)Mech Dev.60:33−44.
−Hong Y et al.(2004)Mech Dev.121:933−43.
−Horiuchi H et al.(2004)J Biol Chem.279:24514−20.
−Houweling AC et al.(2001)Mech Dev.107:169−174.
−Hubner K et al.(2003)Science 300:1251−6.
−Humphrey RK et al.(2004)Stem Cells 22:522−30.
−Huynh JR et al.(2004 Dev Cell.6:625−35.
−Imai T et al.(2004)Mol Cell Endocrinol.214:107−15.
−Ivanova NB et al.(2002)Science 298:601−4.
−Jiang Y et al.(2002)Exp Hematol.30:896−904.
−Jiang Y et al.(2002)Nature 418:41−49.
−Karagenc L et al.(1996)Dev Genet.19:290−301.
−Karagenc L.(2000).Poult Sci.79:80−5.
−Katahira T,Nakamura H.(2003)Dev Growth Differ.45:361−7.
−Kawase E et al.(2004)Mol Reprod Dev.68:5−16.
−Kehler J et al.(2004)EMBO Rep.5.
−Kim KS et al.(2004)Zygote 12:151−6.
−Knaut H et al.(2002)Curr Biol.12:454−66.
−Knaut H et al.(2003)Nature 421:279−82.
−Komatsu T et al.(2004)Mol Endocrinol.18:2451−62.
−Komiya T et al.(1994)Dev Biol.162:354−63.
−Kontaraki J et al.(2000)Genes Dev.14:2106−22.
−Koshimizu U et al.(1995)Dev Biol.168:683−5.
−Kowanetz M et al.,(2004)Mol Cell Biol.24:4241−54.
−Krovel AV,Olsen LC.(2004)Dev Biol.271:190−7.
−Kudo T,Sutou S.(1997)Gene 197:261−8.
−Kunath T et al.(2003)Nat Biotechnol.2003 May;21(5):559−61.Epub 2003 Apr 7.
−Kuramochi−Miyagawa S et al.(2004)Development 131:839−49.
−Kurisaki K et al.(2003)Mol Cell Biol.23:4494−510.
−Kuromochi et al.,2004.
−Lakshmipathy U,Verfaillie C.(2005)Blood Rev.19:29−38.
−Lasko PF,Ashburner M.(1988)Nature 335:611−7.
−Lassalle B et al.(2004)Development 131:479−487.
−Lassalle B et al.(2004)Development 131:479−87.
−Lavoie HA et al.(2004)Mol Cell Endocrinol.227:31−40.
−Lawson KA et al.(1999)Genes Dev.13:424−36.
−Lee KH et al.(2004)Developmemt 131:4709−23.
−Lei N,Heckert LL.(2004)Mol Cell Biol.24:377−88.
−Levavasseur F et al.(1998)Mech Dev.74:89−98.
−Lickert H et al.(2005)Development.2005 Jun;132(11):2599−609.Epub 2005 Apr 27.
−Lin T et al.(2005)Nat Cell Biol.7:165−71.
−Loebel DA et al.,2003 Dev Biol.264:1−14.Review.
−Martin GR.(1981)Proc Natl Acad Sci USA.78:7634−8.
−Matsuda T et al.(1999)EMBO J.18:4261−9.
−Mayhall EA et al.(2004)Curr Opin Cell Biol.16:713−720.
−Meeks JJ et al.(2003)Nat Genet.34:32−3.
−Metzger D et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA.92:6991−5.
−Minasi MG et al.(2002)Development 129:2773−2283.
−Mitsui K et al.(2003)Cell 113:631−42.
−Mitsunaga K et al.(2004)Mech Dev.121:237−46.
−Miyagi S et al.(2004)Mol Cell Biol.24:4207−20.
−Mizusaki H et al.(2003)Mol Endocrinol 17:507−19.
−Mochizuki K et al.(2001)Dev Genes Evol.211:299−308.
−Morais da Silva S et al.(1996)Nat Genet.14:62−8.
−Mukhopadhyay M et al.(2003)Development 130:495−505.
−Muller S et al.(2004)Oncogene 23:1998−2008.
−Nakamura H et al.(2004)Mech Dev.121:1137−43.
−Nichols J et al.(1996)Mech Dev.1996 Jul;57(2):123−31.
−Nichols J et al.(2001)Development 128(12);2333−9.
−Nishimoto M et al.(1999)Mol Cell Biol.19:5453−65.
−Nishimoto M et al.(1999)Mol Cell Biol.19:5453−65.
−Niwa H et al.(1998)Genes Dev.12:2048−60.
−Niwa H et al.(2000)Nat Genet.24:372−6.
−Niwa H et al.(2002)Mol Cell Biol.22:1526−36.
−Ohinata Y.(2005)Nature 436:207−13.
−Okumura−Nakanishi S et al.(2005)J Biol Chem.280:5307−5317.
−Pain B et al.(1996)Development 122:2339−48.
−Pain Bet al.,(1999)Cells Tissues Organs.165:212−9.Review.
−Palacios IM et al.(2004)Nature 427:753−7.
−Park TS et al.,(2003)Mol Reprod Dev.65:389−95.
−Pekarik V et al.(2003)Nat Biotechnol.21:93−6.Erratum in:Nat Biotechnol.21:199.
−Petitte JN et al.(1990)Development 108:185−9.
−Ramalho−Santos M et al.(2002)Science 298:597−600.
−Raz R et al.(1999)Proc Natl Acad Sci USA.96:2846−51.
−Reik W et al.(2001)Science 293:1089−1093.
−Robertson EJ.(1987).Embryo derived stem cells.In teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:a Practical Approach(Ed E.J.Robertson),pp71−112.Oxford IRL Press.
−Rocak S,Linder P.(2004)Nat Rev Mol Cell Biol.5:232−41.
−Saitou M et al.(2002)Nature 418:293−300.
−Schisa JA et al.(2001)Development 128:1287−98.
−Seale P et al.(2004)Dev Biol.275:287−300.
−Seeler JS,Dejean A.(2003)Nat Rev Mol Cell Biol.4:690−9.
−Sekido R et al.(2004)Dev Biol.274:271−9.
−Seydoux G,Dunn MA.(1997)Development 124:2191−201.
−Shamblott MJ et al.(1998).Proc Natl Acad Sci USA.95:13726−31.Erratum in:Proc Natl Acad Sci USA 96:1162.
−Sheng G,Stern CD.(1999)Mech Dev.87:213−6.
−Shibata N et al.(1999)Dev Biol.206:73−87.
−Shiota K et al.(2002)Genes Cells 7:961−969.
−Shizuru JA et al.(2005)Annu Rev Med.;56:509−38.
−Siggers P et al.(2002)Mech Dev.111:159−62.
−Song JJ et al.(2004)Science 305:1434−7.
−Song X et al.(2002)Science 296:1855−7.
−Song X et al.(2004)Development 131:1353−64.
−Soodeen−Karamath S,Gibbins AM.(2001)Mol Reprod Dev.58:137−48.
−Stebler J et al.(2004)Dev Biol.272:351−61.
−Sumi T et al.(2004)Stem Cells 22:861−72.
−Swain A et al.(1998)Nature 391:761−7.
−Swanberg SE et al.(2004)Dev Dyn.231:14−21.
−Tada Tet al.,(1998)Dev Genes Evol.207:551−61.
−Tahbaz N et al.(2004)EMBO Rep.5:189−94.
−Takahashi K et al.(2003)Nature 423:541−5.
−Tanaka SS et al.(2000)Genes Dev.14:841−53.
−Thomson JA et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA.92:7844−8.
−Thomson JA et al.(1998)Science 282:1145−7.Erratum in:Science 282:1827.
−Thoraval P et al.(1994)Poult Sci.73:1897−905.
−Thoraval P et al.(1994)Poult Sci.73:1897−905.
−Tokuzawa Y et al.(2003)Mol Cell Biol.23:2699−2708.
−Tomari Y et al.(2004)Cell 116:831−41.
−Toyooka Y et al.(2003)Proc Natl Acad Sci USA.100:11457−62.
−Tremblay KD et al.(2001)Development 128:3609−21.
−Tsuda M et al.(2003)Science 301:1239−41.
−Tsunekawa N et al.(2000)Development 127:2741−50.
−Vallier L et al.(2004)et al.Dev Biol.275:403−21.
−Velculescu VE et al.(1995)Science 270:484−7.
−Vidal VP et al.(2001)Nat Genet.28:216−7.
−Wagers AJ,Weissman IL.(2004)Cell 116:639−648.
−Wang Z,Lin H.(2004)Science 303:2016−9.
Weidinger G et al.(2003)Curr Biol.13:1429−34.
−Wilcox A et al.(2004)J Biol Chem.279:38881−8.
−Wilder PJ et al.(1997)Dev Biol.192:614−29.
−Winnier G et al.(1995)Genes Dev.9:2105−16.
−Wurmser AE et al.(2004)Science 304:1253−5.
−Xie T,Spradling AC.(2000)Science 290:328−30.
−Yamashita YM et al.(2003)Science 301:1547−50.
−Yano T et al.(2004)Dev Cell.6:637−48.
−Yeom YI et al.(1996)Development 122:881−94.
−Ying QL et al.(2003)Cell 115:281−92.
−Ying Y et al.(2000)Mol Endocrinol.14:1053−63.
−Ying Y et al.,(20041)Proc Natl Acad Sci USA.98:7858−62.
−Yoon C et al.(1997)Development 124:3157−65.
−Yoshida K et al.(1994)Mech Dev.1994 Feb;45(2):163−71.
−Yoshimizu T et al.(1999)Dev Growth Differ.41:675−84.
−Youngren KKet al.,(2005)Nature 435:360−4.
−Yu RN et al.(1998)Mol Endocrinol.12:1010−22.
−Yuan H et al.(1995)Genes Dev.9:2635−45.
−Zhang et al.(2003)Nature 425:836−41.
−Zhao GQ et al.(1996)Genes Dev.10:1657−69.
−Zhao GQ et al.(1998)Development 125;1103−12
−Zhou S et al.(2001)Nat Med.7:1028−34.
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】StX細胞で発現する遺伝子の表である。
【図2】幹細胞で発現する遺伝子の表である。
【図3】生殖細胞で発現する遺伝子の表である。
【図4】StX細胞および幹細胞で発現する遺伝子の表である。
【図5】幹細胞および生殖細胞で発現する遺伝子の表である。
【図6】生殖細胞およびステージXの細胞で発現する遺伝子の表である。
【図7】GF58細胞の成長曲線を示す図である。
【図8】GF58細胞におけるいくつかの遺伝子の発現レベル(p7)を示す図である。
【図9】性腺で観察されたレベル(=1)と比較した、p3g画分とp4g画分における遺伝子発現の分析を示す図である。
【図10】試験した遺伝子クラスの分類を示す図である。
【図11】分化誘導過程における、クラス1遺伝子の発現レベルの変動を示す図である。
【図12】分化誘導過程における、クラス2遺伝子の発現レベルの変動を示す図である。
【図13】分化誘導過程における、クラス3遺伝子の発現レベルの変動を示す図である。
【図14】ステージXの胚盤葉細胞、CESC細胞およびCEGC細胞間の、発現プロファイルの比較を示す図である。
【図15】CESC細胞、ステージXの胚盤葉細胞およびCEGC細胞間の発現プロファイルの比較を示す図である。
【図16】CEGC細胞、ステージXの胚盤葉細胞およびCESC細胞間の発現プロファイルの比較を示す図である。
【図17】ニワトリのnanog遺伝子のタンパク質配列とcDNA配列を示す図である。
【図18】ニワトリのgcnf遺伝子のタンパク質配列とcDNA配列を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
StX型、幹細胞型または生殖細胞型の鳥類の細胞を特徴付けることを可能にするマーカーの組み合わせであり、同じグループ、あるいは異なる二つのグループから選択される少なくとも二つのマーカーを含む組み合わせであって、該グループが、
a. 1P06、2contig58、60S−L14、ATM、ブルーム症候群、BTEB4、CD9、CHDヘリカーゼ、Clock、cwf16(FLJ10374)、CXCR4、Dnmt2、enx1(ho−zeste2)、eomes、EWS、FGF−4、GATA−5、HOJ−1、N−AGN6Pデアセチラーゼ、N−Cor1、NF2、p53、pml、rbm6、SA−2、SA−3、SARA、SCYE1、SEF、sf−1、SnoN、SOCS13、SSB−1、TC87479、T細胞APP2C、TGF−beta2、WD40/FYVE−dタンパク質2、WD−RP3、Zan75、ZPCという遺伝子およびこれらの組み合わせから選択される、StX細胞で好適に発現する標的遺伝子の一つのマーカー、ならびに/または、
b. 1P06、1P08−A09、アクチビンRIIB、アスタシン、Claudin−3、dapper−1、Dorfin、FPPシンターゼ(fps)、GalNAc−T3、gcnf、HSPb7、IRX4、LMX、pax−6、Slc38a2、sox−3、tra1 gp96、wnt−10a、wnt−11という遺伝子およびこれらの組み合わせから選択される、幹細胞で好適に発現する標的遺伝子の一つのマーカー、ならびに/または、
c. アディポネクチン、BMP−2IK、bruno like、CD34、CDK5アクチベーター1、dkk1、dkk3、DMRT1、emx2、エンドグリン、FAST−1、FGF R、FLJ00188、flk−1、gata−4、gcl、LHX9、NOSタイプIII、plzf、PRL−R box1l、PTEN、SAMSN−1、slug、smad3、Smarcd3、sox−9、Strat8、TACC2、TC95408、TC97694、TGF RII、TGF RIII、tie2、tie−2、TR−alpha、vasa、VE−Cadherin、vera、Wisp−1という遺伝子およびこれらの組み合わせから選択される、生殖細胞で好適に発現する標的遺伝子の一つのマーカー、
である、マーカーの組み合わせ。
【請求項2】
StX細胞で好適に発現する標的遺伝子のマーカーが、1P06、ATM、CXCR4、eomes、FGF−4、GATA−5、NF2、SOCS13、SSB−1、TC87479、T細胞APP2C、TGF−beta2、WD−RP3、ZPCという遺伝子およびこれらの組み合わせのマーカーから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
ZPC遺伝子のマーカーを少なくとも一つ含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
幹細胞で好適に発現する標的遺伝子のマーカーが、1P06、アクチビンRIIB、アスタシン、Claudin−3、dapper−1、FPPシンターゼ(fps)、GalNAc−T3、gcnf、LMX、pax−6、tra1 gp96、wnt−10aという遺伝子およびこれらの組み合わせのマーカーから選択されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の組み合わせ。
【請求項5】
1P06遺伝子とtra−1遺伝子のマーカーを少なくとも一つ含むことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載の組み合わせ。
【請求項6】
生殖細胞で好適に発現する標的遺伝子のマーカーが、アディポネクチン、DMRT1、エンドグリン、FAST−1、FGF R、FLJ00188、gata−4、LHX9、plzf、PRL−R、box1l、PTEN、Strat8、TGF RIII、vasa、Wisp−1という遺伝子およびこれらの組み合わせのマーカーから選択されることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の組み合わせ。
【請求項7】
DMRT1遺伝子およびvasa遺伝子のマーカーを少なくとも一つ含むことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一つに記載の組み合わせ。
【請求項8】
マーカーが、標的遺伝子の発現産物、すなわちmRNA、cDNAもしくはポリペプチドまたはこれらの断片に特異的に結合する抗体と、前記標的遺伝子によって発現するmRNAもしくは対応するcDNAまたはこれらの断片に特異的にハイブリダイズする能力を有する核酸断片とから選択されることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか一つに記載の組み合わせ。
【請求項9】
同一の担体、好ましくは標準的な担体上にまとめられることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一つに記載の組み合わせ。
【請求項10】
標的遺伝子とハイブリダイズすることのできる核酸断片が好ましくは標準的な形で置かれている担体を含む、鋳型DNAの形であることを特徴とする、請求項9に記載の組み合わせ。
【請求項11】
DNAチップ上に置かれることを特徴とする、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一つに記載のマーカーの組み合わせを含むことを特徴とするDNAチップ。
【請求項13】
鳥類細胞を特徴付ける方法であり、請求項1〜請求項11のいずれか一つに記載のマーカーの組み合わせを用いて前記細胞で発現する遺伝子の発現を分析することと、分析された細胞の表現型を特徴づけることを含む、鳥類細胞の特徴付けの方法。
【請求項14】
鳥類細胞の培養方法であり、適切な培地での細胞の培養と、請求項13に記載の方法を用いた該細胞の特徴付けを含む、鳥類細胞の培養方法。
【請求項15】
StX細胞、幹細胞および生殖細胞から選択される細胞を単離することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
不活性化された支持細胞層「フィーダー」を添加していない適切な培地で培養されたStX細胞から生殖細胞を得ることを特徴とする、請求項14または請求項15に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2009−529900(P2009−529900A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500840(P2009−500840)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052574
【国際公開番号】WO2007/110343
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(503225629)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック (3)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
【出願人】(500470482)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(セーエヌエールエス) (25)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (CNRS)
【出願人】(508284528)
【氏名又は名称原語表記】ENS − ECOLE NORMALE SUPERIEURE DE LYON
【Fターム(参考)】