説明

麺帯生成装置

【課題】凹凸が設けられる粗製ロールは、短時間で凹部位に剥離かすが詰まってグリップ力を喪失する。
【解決手段】粗製ロール20は、本体を構成する円筒体20Aの外周面20Bに窪穴部位7または突起部位8が均等に分散して配設されて凹凸が設けられる。窪穴部位7または突起部位8を含む外周面20Bの全面にフッ素樹脂のコーティングが施される。粗製ロール20の外周面20Bにおける凸部位におけるフッ素樹脂コーティング層の下地として金属溶射層が形成される。一方、凹部位におけるフッ素樹脂コーティング層の下地は、金属溶射層のない円筒体の素材金属の研磨面、または凸部位の下地の金属溶射層より表面荒れが小さい金属溶射層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺粒から麺帯を得る複合機と所望の厚さの麺帯に圧延する麺帯圧延機とを備えた麺帯生成装置を有する製麺機に関する。特に、フッ素樹脂を被覆した複数の粗製ロールを有する複合機を備えた麺帯生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製麺機は、麺の生成方法によって押出式製麺機とロール式製麺機と手打式製麺機とに大きく分類される。ロール式製麺機の場合、基本的に、混練ミキサと、麺帯生成装置と、麺線切出装置とを有する。麺帯生成装置は、麺粒から得る麺帯原型を重ね合わせて麺帯を生成する複合機と麺帯を段階的に圧延して所望の厚さの麺帯を生成する麺帯圧延機とを含んでなる。また、麺線切出装置は、一対の切刃ロールを含んでなり麺線を生成する麺線切出機と麺線を切断するカッタを含む麺線切断機とでなる。
【0003】
混練ミキサは、微粉末状に粉砕された小麦粉あるいは蕎麦粉のような麺素材に加水して均一に含ませる水回しを行ないながら麺素材を混練し、麺素材は、素材によって異なる大きさの麺粒に成長する。複合機は、麺粒を複数の粗製ロールで固めて麺帯原型を得るとともに複合ロールで複数の麺帯原型を重ね合わせて反物のような連続する一枚の麺帯を生成して送り出す。麺帯圧延機は、麺帯を加圧しながら薄く延ばしていき、所望の厚さと幅を有する麺帯を生成する。麺線切出機は、麺帯圧延機で得られた麺帯を縦断して所望の太さの麺線を切り出す。麺線切断機は、麺線を同一の長さに切断する。
【0004】
複合機は、粗製ロールと複合ロールを含んでなる。混練ミキサから供給される大小様々な麺粒は、麺粒押込装置で一対の粗製ロールの間隙に押し込まれて粗製ロールに導入される。粗製ロールは、間隙に導入された複数の麺粒を押し固めて麺生地塊にしながら麺生地塊を加圧して延ばし、一枚の連続する帯状の麺帯原型として送り出す。複数の粗製ロールから送り出される複数の麺帯原型は、重ねられてコンベア等で搬送され、複合ロールに導入される。複合ロールは、複数の麺帯原型を重ね合わせて一枚の麺帯を生成し、麺帯を麺帯圧延機に供給する。
【0005】
麺帯圧延機は、麺帯を引き込んで加圧して延ばしながら送り出す複数の圧延ロールと圧延ロールを駆動する駆動装置を含んでなる。圧延ロールは、それぞれ所定の間隙をもって対向配置されるオスロールとメスロールとの一対のロールを有する。複数の圧延ロールは、麺帯が送り出される方向に一列に並設される。圧延ロールは、麺帯を段階的に圧延しながら麺帯厚を薄くしていき、所望の厚さと幅を有する麺帯を生成する。
【0006】
粗製ロール、複合ロール、または圧延ロールのような加圧ロールにおいて、一対のロールの間隙に麺生地が送り込まれると、間隙よりも麺生地の厚さが大きいので、麺生地がロールの外周面に圧着すると同時に麺生地が加圧されて延ばされる。このとき、麺生地が水分を含んでいるために、麺生地がロールの外周面に貼り付いてしまう。そのため、麺帯原型ないし麺帯が加圧ロールから送り出されるときに、麺帯原型または麺帯が加圧ロールに巻き込まれようとする。
【0007】
例えば、麺帯圧延機の圧延ロールのように連続する一枚の麺帯を圧延する場合は、巻き込まれようとする麺帯が次の圧延ロールに引っ張られて圧延ロールの外周面から離れるときに、麺帯の表層部分がロールの外周面に貼り付いたまま部分的に剥ぎ取られて剥離かすとして残される。剥離かすは、微細な麺屑となって圧延前の麺帯に混入するので、カスリと称されるスクレーパで圧延ロールの外周面から掻き落とされるようにされている。
【0008】
掻き落とされた麺屑は、しばしば圧延後の麺帯に混入して製品の品質を低下させる原因になる。また、麺屑が大量に発生すると、麺帯圧延機の基底と圧延ロールの周辺に溜まるので不衛生である。そして、圧延ロールおよびカスリに残される麺屑が大きな塊に成長すると、圧延ロールの回転に障害を与えたり、カスリが損傷したりして、製麺作業を続けることができなくなる。そのため、作業者は、頻繁に製麺機を停止してこまめに麺屑の清掃を行なわなければならず、作業者にとって大きな負担であり、作業効率が低下するとともに、製麺作業の中断によって生産効率が低下する。
【0009】
そこで、外周面にフッ素樹脂のコーティングを施した加圧ロールが使用される。フッ素樹脂は、広く知られているように、安定した分子構造であるために撥水性に優れており、他の物質が付着しにくい特徴がある。そのため、フッ素樹脂を被覆した加圧ロールでは、麺生地がロールの外周面から容易に離れるので、外周面に剥離かすが付着しにくく、麺屑の発生が著しく低減されるため、作業効率と生産効率の低下を抑制することができる。以下、麺生地が加圧ロールの外周面から容易に離れる性質を離面性という。
【0010】
一方で、例えば、フッ素樹脂を被覆した圧延ロールは、離面性が高いために、麺帯との間に十分な摩擦力がなく、麺帯を安定して送り出せる程度十分に麺帯をグリップすることができない。その結果、断続的にスリップが発生して麺帯の送出しに支障をきたし、製麺作業が中断されたり、製品の品質を低下させたりする。そして、ときには連続する一枚の麺帯を寸断させて製品の製造に失敗する事態が生じる。
【0011】
そこで、フッ素樹脂のコーティング層の表面粗さを十数μm程度にするとともに、フッ素樹脂のコーティングが施された加圧ロールの外周面に積極的に凹凸を形成するようにすることが考えられている。外周面に凹凸が設けられフッ素樹脂が被覆された加圧ロールは、見かけ上の摩擦係数が大きくされて、麺帯原型ないし麺帯に対するグリップ性能を向上させることができる。
【0012】
具体的には、例えば、特許文献1または特許文献2に開示されるように、扁平裁頭四角錘状または断面波形の凸部位を設けるとともに、麺生地の離面性を確保するために、凸部位の占有率が投影面比率で10%〜15%程度であるようにされる。そのため、フッ素樹脂のコーティングによって加圧ロールの外周面に剥離かすが付着しにくく、麺屑の発生が押さえられるとともに、麺帯原型または麺帯をより安定して送り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−341831号公報(段落0022−段落0024)
【特許文献2】特公平7−108199公報(段落0013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
粗製ロールは、複合ロールまたは麺帯圧延機の圧延ロールのような他の加圧ロールと異なって、大小様々な麺粒を一対の粗製ロールの間隙に確実に送り込むことが要求される。したがって、圧延ロールのように粗製ロールに離面性の高いフッ素樹脂のコーティングが施されている場合は、麺粒が粗製ロールの外周面上で滑ってしまうので、麺粒を一対の粗製ロールの間隙に十分に寄せ集めることができなくなる。一対の粗製ロールの間隙に麺粒が十分に導入されないと、必要な麺生地塊が作られずに麺帯原型が生成されなくなってしまうため、製麺作業が完全に停止してしまう。
【0015】
そのため、フッ素樹脂のコーティングは、連続する一枚の麺帯原型ないし麺帯を引き入れて加圧し引き延ばして送り出す複合ロールまたは圧延ロールに適しているが、粗製ロールとしては、そのまま適用するには不十分である。麺粒押込装置によって一対の粗製ロールの間隙に麺粒を強制的に押し込むようにされているが、麺粒を固めて麺生地塊を作るために相当強い力で麺粒を押し込むことが要求されるので、麺粒押込装置が短期間で損傷し、また、麺帯原型の生成に確実性を欠いている。
【0016】
また、粗製ロールは、麺粒を押し固めて麺生地塊を作り、加圧して押し延ばして麺帯原型を生成して送り出すことが要求されるから、麺帯原型または麺帯を引き込んで送り出す複合ロールまたは圧延ロールと同じ構成の外周面に凹凸が設けられフッ素樹脂が被覆された加圧ロールでは、麺帯原型をグリップする力が不足しており、麺帯原型を安定して送り出すことができない。粗製ロールが麺帯原型を送り出せなくなると、複合ロールに麺帯原型が引き込まれるときに麺帯原型が引っ張られて破断負荷が加えられ麺帯原型が寸断されるおそれがある。
【0017】
粗製ロールの外周面の全面における凸部位の占有比率を高くすることによって麺粒を一対の粗製ロールの間隙に集める能力を向上させるとともに、麺帯原型に対するグリップ力を高くすることが考えられる。しかしながら、粗製ロールは、麺粒を固めて麺生地塊を作ることから、もともと麺帯原型が送り出されるときに粗製ロールの外周面に麺帯原型が貼り付いて取れにくくなっているので、フッ素樹脂のコーティングによる離面性が生かされず、剥離かすが粗製ロールの外周面に残されてしまう。
【0018】
特に、粗製ロールの外周面に押し付けられた麺生地塊が外周面の凹凸の凹部位に入り込んだときに、凹部位の底面の表面粗さに引っ掛かって麺帯原型の表層部分が剥ぎ取られる。凹部位に残される剥離かすは、底面の表面粗さに引っ掛かったまま取れにくく、剥離かすが凹部位に詰まって凹部位が埋められると、実質的に粗製ロールの外周面の凹凸がなくなった状態になってしまうので、比較的短時間で麺粒を一対の粗製ロールの間隙に寄せ集める能力がなくなるとともに、麺帯原型に対するグリップ力が喪失される。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みて、粗製ロールにおける麺帯原型の離面性と麺粒を一対のロールの間隙に集める収集力および麺帯原型に対するグリップ力を両立させて、比較的長時間にわたって安定して麺帯原型を生成し送り出すことができる改良された粗製ロールを含んでなる麺帯生成装置を提供することを目的とする。本発明の麺帯生成装置によって得ることができるいくつかの利点は、実施の形態の麺帯生成装置を説明するときに、その都度具体的に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の製麺機の麺帯生成装置は、上記課題を解決するために、金属製の円筒体(20A)の外周面(20B)に複数の窪穴部位(7)が麺帯原型(10B)を安定して送り出す十分な麺生地塊を含む麺帯原型(10B)に対するグリップ力が得られる範囲で隣接する同形の窪穴部位(7)に対して可能な限り近接するように配設され窪穴部位(7)を含む外周面(20B)の全面にわたってフッ素樹脂のコーティングが施された粗製ロールを含んでなる複合機を備える。
【0021】
上記麺帯生成装置は、円筒体(20A)の窪穴部位(7)を除く外周面(20B)におけるフッ素樹脂コーティング層(100)の下地として金属溶射層(200)が形成され窪穴部位(7)におけるフッ素樹脂コーティング層(100)の下地が金属溶射層(200)のない円筒体(20A)の素材金属の研磨面である。
【0022】
または、円筒体(20A)の窪穴部位(7)を除く外周面(20B)におけるフッ素樹脂コーティング層(100)の下地として第1の表面粗粗さの表面荒れを有する金属溶射層(200)が形成され窪穴部位(7)におけるフッ素樹脂コーティング層(300)の下地として第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さの表面荒れを有する金属溶射層(400)が形成される。
【0023】
本発明の別の麺帯生成装置は、金属製の円筒体(20A)の外周面(20B)に複数の突起部位(8)が隣接する同形の突起部位(8)との間に形成される凹部位に麺生地塊を含む麺帯原型(10B)の剥離かすが詰まって残されない範囲で隣接する同形の突起部位(8)に対して可能な限り近接するように配設され突起部位(8)を含む外周面(20B)の全面にわたってフッ素樹脂のコーティングが施された粗製ロールを含んでなる複合機を備える。
【0024】
上記麺帯生成装置は、突起部位(8)におけるフッ素樹脂コーティング層(100)の下地として金属溶射層(200)が形成され円筒体(20A)の突起部位(8)を除く外周面(20B)におけるフッ素樹脂コーティング層(100)の下地が金属溶射層(200)のない円筒体(20A)の素材金属の研磨面である。
【0025】
または、突起部位(8)におけるフッ素樹脂コーティング層(100)の下地として第1の表面粗さの表面荒れを有する金属溶射層(200)が形成され円筒体(20A)の突起部位(8)を除く外周面(20B)におけるフッ素樹脂コーティング層(300)の下地として第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さの表面荒れを有する金属溶射層(400)が形成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の麺帯生成装置は、粗製ロールの本体である円筒体の外周面の全面にわたってフッ素樹脂のコーティングが施されているので離面性に優れている。そして、隣接する窪穴部位との間の距離または隣接する突起部位との間の距離が必要十分な距離離れる範囲で可能な限り近接するように配設されるので、麺生地塊を含む麺帯原型との接触面積を十分に確保しながら凹部位に剥離かすが詰まらない。また、凸部位が十分に存在し、麺粒を一対のロールの間隙に集める収集力と麺生地塊を含む麺帯原型に対するグリップ力が高い。そのため、長時間にわたって麺屑の発生が抑えられ、間隙に効率よく麺粒を導入し、麺帯原型を安定して送り出すことができる。その結果、作業効率と生産効率が向上する効果を奏する。
【0027】
窪穴部位を除く円筒体の外周面の下地に限って金属溶射層を形成してフッ素樹脂を被覆するようにした場合は、十分なグリップ力を維持すると同時に窪穴部位に剥離かすがより詰まりにくくなる。または、突起部位の下地に限って金属溶射層を形成してフッ素樹脂を被覆するようにした場合は、十分なグリップ力を維持すると同時に凹部位である円筒体の突起部位を除く外周面に剥離かすがより詰まりにくくなる。そのため、より長時間にわたって麺屑の発生が抑えられ、間隙に効率よく麺粒を導入し、麺帯原型を安定して送り出すことができる。その結果、作業効率と生産効率が向上する効果を奏する。
【0028】
窪穴部位の下地に窪穴部位以外の下地に形成される金属溶射層の表面荒れよりも小さい表面荒れを有する金属溶射層を形成した場合、または、突起部位を除く外周面の下地に突起部位に形成される金属溶射層の表面荒れよりも小さい表面荒れを有する金属溶射層を形成した場合は、グリップ力が格段に優れるとともに窪穴部位に剥離かすがより詰まりにくく、しかもフッ素樹脂コーティング層の寿命が長くなる。そのため、より長時間にわたって麺屑の発生が抑えられ、間隙に効率よく麺粒を導入し、麺帯原型を安定して送り出すことができる。その結果、作業効率と生産効率が向上する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の麺帯生成装置における複合機と麺帯圧延機の概略構成を示す側面図である。
【図2】第1の実施の形態における複合機の粗製ロールを立体的に示す正面図である。
【図3】窪穴部位を示す斜視図である。
【図4】窪穴部位が設けられた粗製ロールの部分的断面図である。
【図5】窪穴部位が設けられた別の粗製ロールの部分的断面図である。
【図6】第2の実施の形態における粗製ロールの突起部位を示す斜視図である。
【図7】突起部位が設けられた粗製ロールの部分的断面図である。
【図8】突起部位が設けられた別の粗製ロールの部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に、製麺機の全体の概略構成が示されている。図2に、粗製ロールの外観が示される。図3に、粗製ロールの外周面に設けられる複数の窪穴部位が示される。また、図4および図5に、粗製ロールに施されたフッ素樹脂コーティング層と下地の金属溶射層が断面で示されている。以下、図1ないし図5を用いて、本発明の麺帯生成装置における好ましい第1の実施の形態を説明する。
【0031】
図1に示される製麺機の麺帯生成装置1は、複合機2と麺帯圧延機3とを含んでなる。複合機2は、粗製ロール20と複合ロール30を含んでなる。複合機2は、混練ミキサ4で加水混練されて得られる麺粒10Aをホッパ40に集積し、麺粒押込装置50によって一対の粗製ロール20の間隙Gに麺粒10Aを押し込んで導入する。
【0032】
一対の粗製ロール20は、寄せ集められ間隙Gに押し込まれる多数の麺粒10Aを固め合わせて麺生地塊を得て、麺生地塊を圧延して麺帯原型10Bを生成し送り出す。粗製ロール20は、複合ロール30で重ね合わせる麺帯原型10Bの数に対応して麺帯原型10Bが送り出される方向Fに複数並設される。一対の複合ロール30は、複数の粗製ロール20で生成された複数の麺帯原型10Bを重ね合わせて連続する一枚の麺帯10Cを生成する。
【0033】
麺帯圧延機3は、複数の圧延ロール60を備える。圧延ロール60は、それぞれメスロール60Aとオスロール60Bとの一対のロールでなる。複数の圧延ロール60は、麺帯10Cを送り出す方向Fに並設される。複数の圧延ロール60は、それぞれ予め規定された間隙で一対のロールを対向配置し、麺帯10Cを加圧しながら延ばし、麺帯10Cを送り出す方向Fに設置されている次の圧延ロール60に送り出す。麺帯圧延機3は、麺帯10Cを複数の圧延ロール60で加圧しながら延ばして段階的に麺帯厚を薄くしていく。
【0034】
圧延ロール60のメスロール60Aにフランジ60Cが設けられており、麺帯10Cをメスロール60Aとオスロール60Bとの一対のロールで挟みこむときに、麺帯10Cを送り出す方向Fにのみ麺帯10Cを延ばして麺帯厚を薄くする。したがって、麺帯10Cが送り出される方向Fの最下流に位置する圧延ロール60Lから所望の厚さと幅を有する麺帯10Dが送り出される。
【0035】
駆動ロールと従動ロールとの一対の切刃ロールを有する麺線切出機5は、切刃ロールを回転させて麺帯圧延機3から供給される連続する所望の麺帯厚の麺帯10Dを縦断し、所望の太さの麺線10Eを切り出すとともに麺線10Eを麺線切断機6に送り出す。麺線切断機6は、連続する麺線10Eを所定の長さに切断する。
【0036】
実施の形態の麺帯生成装置における複合機2の粗製ロール20は、図示しない回転型モータで駆動する駆動ロールと伝達装置を通して回転する従動ロールとの一対のロールでなる。図2に示されるように、粗製ロール20の本体であるステンレスのような金属製の円筒体20Aの外周面20Bに複数の窪穴部位7が分散して設けられる。円筒体20Aの窪穴部位7を含む外周面20Bの全面にわたってフッ素樹脂のコーティングが施されている。したがって、粗製ロール20は、麺帯原型10Bの離面性に優れている。
【0037】
具体的に、複数の窪穴部位7は、円筒体20Aの外周面20Bに麺帯原型10Bを安定して送り出す必要十分なグリップ力を得る範囲で隣接する同一形状の窪穴部位7に対して可能な限り近接するように分散して配設される。言い換えれば、窪穴部位7に剥離かすが詰まって取れなくなる状態を限界として凸部位の数と領域を最大限になるようにし、粗製ロール20の麺生地塊を含む麺帯原型10Bに対する接触面積を大きくする。
【0038】
実施の形態の窪穴部位7は、盆地形状にされる。盆地形状の窪穴部位7とは、図3に示されるように、実質的に一面の底面7Aを有する穴をいう。一面の底面7Aとは、平坦面に限定されないが、面上に角部位(エッジ)がない面を示す。したがって、例えば、椀形状の面は、底面が曲面一面で形成されてエッジが存在しないので、盆地形状の窪穴部位7に相当する。一方、反ピラミッド状の面は、複数面で形成されてエッジが存在するので、盆地形状の窪穴部位7に相当しない。
【0039】
このように、盆地形状の窪穴部位7を分散して配設した実施の形態の粗製ロール20は、底面7Aに麺屑が挟まりやすく取れにくいエッジがないので、一対の粗製ロール20の間隙Gに押し込まれる多数の麺粒を集めて固めて得られる麺生地塊を含む麺帯原型10Bの剥離かすが生じて麺屑が窪穴部位7に詰まる可能性が低減される。そのため、長時間にわたって麺粒10Aの収集力と麺生地塊を含む麺帯原型10Bに対するグリップ力を維持させることを助ける点で有利である。
【0040】
望ましくは、図4に示されるように、窪穴部位7の穴開口と底面7Aにおける窪穴部位7の輪郭部位7Bに面取りのような僅かなRを設ける。円筒体20Aの外周面20B全体にわたって鋭利なエッジをなくすことによって、凸部位に相当する円筒体20Aの窪穴部位7以外の外周面20Bが麺生地塊を含む麺帯原型10Bに食い込むときに、麺帯原型10Bの表面に切込みを入れることがなく、麺帯原型10の表面を傷付けにくくする。そのため、麺帯原型10Bの表層部分がより剥ぎ取られにくくなり、長時間にわたって窪穴部位7に剥離かすが詰まらない点で有利である。
【0041】
第1の実施の形態における窪穴部位7は、既述のとおり、麺帯原型10Bを安定して送り出す十分なグリップ力を得る範囲で隣接する同形の窪穴部位7に対して可能な限り近接するように配設される。具体的には、図3に示されるように、隣接する窪穴部位7との間の距離Lは、凸部位である円筒体20Aの窪穴部位7を除く外周面20Bが麺帯原型10Bを十分にグリップすることができる必要十分最小の大きさにされる。
【0042】
そのため、円筒体20Aの外周面20Bの全面における窪穴部位7を除く外周面20Bの領域が比較的広く、凸部位が十分に存在し、麺粒10Aを一対の粗製ロール20の間隙Gに集める能力と麺生地塊を含む麺帯原型10Bに対するグリップ力を高くすることができる。また、鋭利な部位がないので、麺帯原型10Bが傷付きにくく剥離かすの発生が抑制される。その結果、より長時間の使用で麺帯原型10Bを安定して生成し送り出すことができる。
【0043】
隣り合う窪穴部位7との間の距離Lが近すぎる場合は、もともとフッ素樹脂のコーティングによって離面性が高くされているため、円筒体20Aの外周面20の全面に対する窪穴部位7を除く外周面20Bの占有率が小さすぎて、麺生地塊を含む麺帯原型10Aに食い込んでグリップする凸部位が少なく、グリップ力が不足して安定して麺帯原型10Bを送り出せない。
【0044】
一方、窪穴部位7との間の距離Lが離れすぎている場合は、窪穴部位7の底面7Aの面積を大きくしないと窪穴部位7に剥離かすが詰まって取れなくなり、窪穴部位7の底面7Aの面積を必要以上大きくすると、円筒体20Aの外周面20Bの全面に対する凸部位の占有率を大きくできない。そのため、窪穴部位7に麺帯かすを詰まらせてグリップ力が低下し、麺帯原型10Bを安定して送り出すことができない。
【0045】
第1の実施の形態における粗製ロール20は、円筒体20Aの外周面20Bに設けられる複数の窪穴部位7が外周面20Bの全面に均等に分散して配設される。したがって、外周面20Bにおけるどこの場所においても麺帯原型10Bを全体的に均一にグリップする。そのため、麺帯原型10Bを安定して送り出すことができる。また、ホッパ40に集積される大小様々な麺粒10Aをより効率よく一対の粗面ロール20の間隙Gに引き込んで集めることができる。そのため、麺帯原型10Bが安定して生成されるとともに麺粒押込装置50の負担を大幅に軽減して損傷させず、製麺作業が中断することがない利点がある。
【0046】
窪穴部位7は、図4に示されるように、穴の深さDに対して十分に長い最大幅Xを有する。穴の深さDと最大幅Xの具体的な値は、麺素材によって異なる。穴窪部位7が深さDに対して底面の面積が小さいリブ状の溝であると、剥離かすが詰まりやすくかつ取れにくくなることが明らかであるため、試験的に運用することで比較的簡単に適当な穴の深さDと最大幅Xを決定することができる。
【0047】
窪穴部位7は、輪郭部位7Bにおける平面輪郭形状に鋭利なエッジまたは曲率の小さいコーナを少なくすること、言い換えれば、円筒体20Aの外周面20Bの全体的に鋭利なエッジを可能な限り少なくすることが、麺帯原型10Bの表面を傷付けにくく、窪穴部位7に剥離かすが詰まりにくい利点があると考えられる。したがって、実施の形態の粗製ロール20では、窪穴部位7の平面輪郭形状を円形または楕円形としている。
【0048】
しかしながら、粗製ロール20においては、他の加圧ロールと異なって間隙Gに効率よく麺粒10Aを集めて押し込むことが要求されるので、必ずしも平面輪郭形状が円形である窪穴部位7であることが優位であるということは断言できず、剥離かすの詰まりが発生しにくいことを条件として、例えば、十字形、正方形、長方形、三角形、菱形のように、円形以外の平面輪郭形状の窪穴部位7が採用し得る。
【0049】
図4に示されるように、第1の実施の形態における粗製ロール20は、窪穴部位7を含む円筒体20Aの外周面20Bの全面にわたってフッ素樹脂のコーティング層100が形成されている。円筒体20Aの窪穴部位7を除く外周面20Bにおけるフッ素樹脂コーティング層100の下地として金属溶射層200が形成されている。円筒体20Aの素材金属面と金属溶射層200との間にセラミック層のような1以上の層が設けられることがあるが、詳細な説明は省略する。一方、円筒体20Aの外周面20Bに設けられる窪穴部位7におけるフッ素樹脂コーティング層100の下地は、金属溶射層200が形成されておらず、適度に研磨された円筒体20Aの素材金属の表面にフッ素樹脂が被覆される。
【0050】
フッ素樹脂のコーティング層100の下地として金属溶射層200が施されている円筒体20Aの表面は、金属溶射層200の粗面になっているため、フッ素樹脂が金属溶射層200の粗面に入り込んで固着することで、フッ素樹脂のコーティング層100の強度が増すことが知られている。しかしながら、金属溶射層200の表面荒れは、フッ素樹脂を被覆するときにフッ素樹脂のコーティング層100に転写されて数μmRa〜数十μmRa程度の表面粗さを与える。
【0051】
このような表面粗さは、円筒体20Aの外周面20Bに摩擦力を生じさせグリップ力を向上させるものの、フッ素樹脂のコーティングの離面性を低下させる。特に、円筒体20Aの外周面20Bに凹凸を与えた粗面ロール20の場合は、麺生地塊を含む麺帯原型10Bが加圧されて窪穴部位7に入り込んだときに表面粗さで引っ掛かりやすくなる。そのため、窪穴部位7に入り込んだ麺生地塊を含む麺帯原型10Bの表層部分が削がれて剥離かすが発生し、発生した剥離かすが窪穴部位7に詰まったまま取れなくなる。その結果、凹凸がなくなった状態になって、短時間で麺粒10Aの収集力と麺生地塊を含む麺帯原型10Bに対するグリップ力を喪失させる。
【0052】
外周面20Bの全面に対する凹部位の領域を広くしておくことによって剥離かすが凹部位に詰まって取れなくなることを避けることができる。しかしながら、フッ素樹脂のコーティングが施された粗製ロール20にあっては、外周面20Bの全面に対する凸部位の占有率が低いと麺帯原型10Bを安定して送り出すために必要十分なグリップ力を得ることができない。
【0053】
本発明の粗製ロール20は、麺生地塊を含む麺帯原型10Bに食い込んでグリップする凸部位は、金属溶射層200を下地にフッ素樹脂が被覆され、フッ素樹脂コーティング層100が数μmRa〜十数μmRa程度の表面粗さを有し、凹部位である窪穴部位7は、金属溶射層200がない研磨された円筒体20Aの素材金属の表面にフッ素樹脂が被覆され、1μm程度以下の鏡面に近い状態にされている。
【0054】
そのため、凹凸を設けた粗製ロール20の凸部位が麺生地塊を含む麺帯原型10Bに食い込むと同時に表面粗さによる摩擦力で滑ることなく確実にグリップする。一方、凹部位である窪穴部位7においては、フッ素樹脂のコーティングによる離面性がそのまま生かされて麺生地塊を含む麺帯原型10Bが窪穴部位7から容易に離れるので、少なくとも剥離かすが窪穴部位7に詰まって残ることがない。その結果、粗製ローラ20は、より長時間にわたって麺粒10Aの収集力と麺帯原型10Bに対するグリップ力が維持される。
【0055】
粗製ロール20における円筒体20Aの窪穴部位7を除く外周面20Bで形成される凸部位の表面粗さ部分には、細かい剥離かすが残されて麺屑が発生する可能性がある。しかしながら、全ての表面粗さが剥離かすで埋められることはないので、グリップ力が著しく低下するおそれはない。また、麺屑が落下して麺帯原型10Bに混入することは殆んどなく、粗面ロール20が周回して間隙Gにおいて麺粒10Aどうしを押し付けて固める際に麺屑が麺生地塊に戻されて取り除かれることが多く、まだ麺帯が生成されていない段階であることから、製品の品質を低下させることがない。
【0056】
図4に示される下地処理が施された粗製ロール20に代えて、図5に示されるように、円筒体20Aの窪穴部位7を除く外周面20Bにおけるフッ素樹脂コーティング層100の下地として第1の表面粗さR1の表面荒れを有する金属溶射層200が形成され、窪穴部位7におけるフッ素樹脂コーティング層300の下地として第1の表面粗さR1よりも小さい第2の表面粗さR2の表面荒れ有する金属溶射層400が形成される粗製ロール20を採用することができる。
【0057】
図5に示される粗製ロール20の凸部位である窪穴部位7を除く外周面20Bにおけるフッ素樹脂コーティング層100の下地である金属溶射層200の表面荒れの表面粗さR1は、フッ素樹脂コーティング層100に数μmRa〜十数μmRa程度の表面粗さが残される値であって、図4に示される金属溶射層200と同程度である。一方、窪穴部位7におけるフッ素樹脂コーティング層300の下地である金属溶射層400の表面荒れの表面粗さR2は、フッ素樹脂コーティング層300にマイクロミリメートルオーダの表面粗さRaが残される値である。
【0058】
図5に示される粗製ロール20は、凹部位にフッ素樹脂コーティング層300の表面に対して比較的小さい影響を与える表面粗さR2の表面荒れを有する金属溶射層400の下地が施されているので、フッ素樹脂のコーティング層300の強度が増し寿命が長くなる。また、フッ素樹脂コーティング層300が数μmRa程度の表面粗さを有し、摩擦力によって麺粒10Aを一対の粗製ロール20の間隙Gに収集する力と麺生地塊を含む麺帯原型10をグリップする力がより優れる利点がある。しかも、凹部位のフッ素樹脂コーティング層300の表面は、鏡面ではないものの比較的滑らかな小さい値の表面粗さであるから、フッ素樹脂のコーティングの離面性が失われることがなく、麺生地を含む麺帯原型10が比較的容易に離れて剥離かすが詰まりにくい。
【0059】
以上に説明される実施の形態の麺帯生成装置は、別の実施の形態に変形することができる。麺帯生成装置の全体の構成は、図1に示される麺帯生成装置と同じである。また、粗製ロールの見かけ上の構成は、図2に示される粗製ロールと同じである。図6に、粗製ロールの外周面に設けられる複数の突起部位が示される。また、図7および図8に、粗製ロールに施されたフッ素樹脂コーティング層と下地の金属溶射層が断面で示されている。以下、図6ないし図8を用いて、本発明の麺帯生成装置における第2の実施の形態を説明する。なお、すでに説明された装置または部材と同一の装置または部材は、同一の符号が付され、詳細な説明が省略される。
【0060】
第2の実施の形態における粗面ロール20は、図2に示される粗面ロール20と同じように、粗製ロール20の本体である金属製の円筒体20Aの外周面20Bに複数の突起部位8が分散して設けられる。円筒体20Aの突起部位8を含む外周面20Bの全面にわたってフッ素樹脂のコーティングが施されている。したがって、粗製ロール20は、麺帯原型10Bの離面性に優れている。
【0061】
具体的に、複数の突起部位8は、円筒体20Aの外周面20Bに、粗製ロール20の凹部位に相当する円筒体20Aの突起部位8を除く外周面20Bに麺帯原型10Bの剥離かすが詰まらない範囲で隣接する同一形状の突起部位8に対して可能な限り近接するように分散して配設される。言い換えれば、凸部位である突起部位8の間の凹部位に剥離かすが詰まって取れなくなる状態を限界として凸部位の数と領域を最大限になるようにし、粗製ロール20の麺生地塊を含む麺帯原型10Bに対する接触面積を大きくする。
【0062】
実施の形態の突起部位8は、台地形状にされる。台地形状の突起部位8とは、図6に示されるように、実質的に一面の上面8Aを有する穴をいう。一面の上面8Aとは、平坦面に限定されないが、面上にエッジがない面を示す。したがって、例えば、ドーム形状の面は、上面が曲面一面で形成されてエッジが存在しないので、台地形状の窪穴部位7に相当する。一方、ピラミッド状の面は、複数面で形成されてエッジが存在するので、台地形状の突起部位8に相当しない。
【0063】
このように、台地形状の突起部位8を分散して配設した実施の形態の粗製ロール20は、上面8Aが麺生地塊を傷付けやすい鋭利なエッジがないので、剥離かすの発生が低減される。そのため、凹部位である円筒体20Aの突起部位8を除く外周面20Bに剥離かすが詰まるおそれが少ない。したがって、長時間にわたって麺粒10Aの収集力と麺生地塊を含む麺帯原型10Bに対するグリップ力を維持させることを助ける点で有利である。
【0064】
望ましくは、図7に示されるように、突起部位8の上面8Aと裾面における突起部位8の輪郭部位8Bに面取りのような僅かなRを設ける。円筒体20Aの外周面20B全体にわたって鋭利なエッジをなくすことによって、突起部位8が麺生地塊を含む麺帯原型10Bに食い込むときに、麺帯原型10Bの表面に切込みを入れることがなく、麺生地塊を含む麺帯原型10の表面を傷付けにくくする。そのため、麺帯原型10Bの表層部分がより剥ぎ取られにくくなり、長時間にわたって凹部位に相当する隣接する突起部位8に囲まれる円筒体20Aの突起部位8以外の外周面20Bに剥離かすが詰まらない点で有利である。
【0065】
第1の実施の形態における突起部位8は、既述のとおり、円筒体20Aの突起部位8を除く外周面20Bに麺帯原型10Bの剥離かすが詰まらない範囲で隣接する同一形状の突起部位8に対して可能な限り近接するように分散して配設される。具体的には、図7に示されるように、隣接する突起部位8との間の距離Lは、凹部位である突起部位8を除く外周面20Bに麺生地塊を含む麺帯原型10Bの剥離かすが詰まらない必要十分最小の長さにされる。
【0066】
そのため、突起部位8の上面8Aの領域が比較的広く、凸部位が十分に存在し、麺粒10Aを一対の粗製ロール20の間隙Gに集める能力と麺生地塊を含む麺帯原型10Bに対するグリップ力を高くすることができる。同時に凹部位は、剥離かすが詰まらない程度の広さを有する。その結果、より長時間の使用で麺帯原型10Bを安定して生成し送り出すことができる。
【0067】
隣り合う突起部位8との間の距離Lが近すぎる場合は、円筒体20Aの外周面20Bの全面に対する突起部位8に囲まれる突起部位8以外の外周面20Bで形成される凹部位の領域が少なすぎて、凹部位が狭くなりすぎ、剥離かすが凹部位に詰まったまま取れなくなる。そのため、短時間で麺帯原型10Bのグリップ力を喪失させ、麺帯原型10Bを送り出せなくなる。
【0068】
一方、突起部位8との間の距離Lが離れすぎている場合は、もともとフッ素樹脂のコーティングによって離面性が高くされているため、突起部位8の占有率が小さすぎて、麺生地塊を含む麺帯原型10Aに食い込んでグリップする凸部位が少なく、グリップ力が不足して安定して麺帯原型10Bを送り出せない。
【0069】
第2の実施の形態における粗製ロール20は、円筒体20Aの外周面20Bに設けられる複数の突起部位8が外周面20Bの全面に均等に分散して配設される。したがって、外周面20Bにおけるどこの場所においても麺帯原型10Bを全体的に均一にグリップする。そのため、麺帯原型10Bを安定して送り出すことができる。また、ホッパ40に集積される大小様々な麺粒10Aをより効率よく一対の粗面ロール20の間隙Gに引き込んで集めることができる。そのため、麺帯原型10Bが安定して生成されるとともに麺粒押込装置50の負担を大幅に軽減して損傷させず、製麺作業が中断することがない利点がある。
【0070】
突起部位8との間の距離Lは、図6に示されるように、突起の高さHに対して十分に長い。突起の高さHと距離Lの具体的な値は、麺素材によって異なる。突起部位8が高さHに対して距離Lが短く凹部位の面積が小さいリブ状の溝であると、剥離かすが詰まりやすくかつ取れにくくなることが明らかであるため、試験的に運用することで比較的簡単に適当な突起の高さHと距離Lを決定することができる。
【0071】
突起部位8は、輪郭部位8Bにおける平面輪郭形状を鋭利なエッジまたは曲率の小さいコーナが少なくするようにされている。ただし、粗製ロール20においては、他の加圧ロールと異なって間隙Gに効率よく麺粒10Aを集めて押し込むことが要求されるので、必ずしも突起部位8の平面輪郭形状が円形であることが優位であるとは断言できないので、剥離かすの詰まりが発生しにくいことを条件として、例えば、十字形、正方形、長方形、三角形、菱形のように、円形以外の平面輪郭形状の突起部位8が採用し得る。
【0072】
図7に示されるように、第2の実施の形態における粗製ロール20は、突起部位8を含む円筒体20Aの外周面20Bの全面にわたってフッ素樹脂のコーティング層100が形成されている。円筒体20Aの外周面20Bに設けられる突起部位8におけるフッ素樹脂コーティング層100の下地として金属溶射層200が形成されている。円筒体20Aの素材金属面と金属溶射層200との間にセラミック層のような1以上の層が設けられることがあるが、詳細な説明は省略する。一方、円筒体20Aの突起部位8を除く外周面20Bには、下地としての金属溶射層200が形成されておらず、適度に研磨された円筒体20Aの素材金属の表面にフッ素樹脂が被覆される。
【0073】
したがって、本発明の粗製ロール20は、麺生地塊を含む麺帯原型10Bに食い込んでグリップする凸部位は、金属溶射層200を下地にフッ素樹脂が被覆され、フッ素樹脂コーティング層100が数μmRa〜十数μmRa程度の表面粗さを有し、凹部位は、金属溶射層200がない研磨された円筒体20Aの素材金属の表面にフッ素樹脂が被覆され、1μm程度以下の鏡面に近い状態にされている。
【0074】
そのため、凹凸を設けた粗製ロール20の突起部位8が麺生地塊を含む麺帯原型10Bに食い込むと同時に表面粗さによる摩擦力で滑ることなく確実にグリップする。一方、突起部位8に囲まれた外周面20Bの凹部位においては、フッ素樹脂のコーティングによる離面性がそのまま生かされて麺生地塊を含む麺帯原型10Bが凹部位から容易に離れるので、少なくとも剥離かすが凹部位に詰まって残ることがない。その結果、粗製ローラ20は、より長時間にわたって麺粒10Aの収集力と麺帯原型10Bに対するグリップ力が維持される。
【0075】
図7に示される下地処理が施された粗製ロール20に代えて、図8に示されるように、突起部位8におけるフッ素樹脂コーティング層100の下地として第1の表面粗R1さの表面荒れを有する金属溶射層200が形成され、円筒体20Aの突起部位を除く外周面20Bにおけるフッ素樹脂コーティング層300の下地として第1の表面粗さR1よりも小さい第2の表面粗さR2の表面荒れ有する金属溶射層400が形成される粗製ロール20を採用することができる。
【0076】
図8に示される粗製ロール20の突起部位8におけるフッ素樹脂コーティング層100の下地である金属溶射層200の表面荒れの表面粗さR1は、フッ素樹脂コーティング層100に数μmRa〜十数μmRa程度の表面粗さが残される値であって、図7に示される金属溶射層200と同程度である。一方、凹部位である突起部位8を除く外周面20Bにおけるフッ素樹脂コーティング層300の下地である金属溶射層400の表面荒れの表面粗さR2は、フッ素樹脂コーティング層300にマイクロミリメートルオーダの表面粗さRaが残される値である。
【0077】
図8に示される粗製ロール20は、凹部位にフッ素樹脂コーティング層300の表面に対して比較的小さい影響を与える表面粗さR2の表面荒れを有する金属溶射層400の下地が施されているので、フッ素樹脂のコーティング層300の強度が増し寿命が長くなる。また、フッ素樹脂コーティング層300が数μmRa程度の表面粗さを有し、摩擦力によって麺粒10Aを一対の粗製ロール20の間隙Gに収集する力と麺生地塊を含む麺帯原型10をグリップする力がより優れる利点がある。しかも、凹部位のフッ素樹脂コーティング層300の表面は、鏡面ではないものの比較的滑らかな小さい値の表面粗さであるから、フッ素樹脂のコーティングの離面性が失われることがなく、麺生地を含む麺帯原型10が比較的容易に離れて剥離かすが詰まりにくい。
【0078】
以上に説明される麺帯生成装置は、図面に示される具体的な構成に限定されず、すでにいくつかの例が挙げられているように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形することができる。また、麺帯圧延機、混練ミキサ、麺線切出機のような製麺機を構成する装置を実施の形態で示されない他の構成の装置と置換したり、組み合わせたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、製麺業における麺素材から麺粒を生成し、麺粒から麺生地塊を経て麺帯原型を重ね合わせて麺帯を製造する技術の進歩に貢献し、作業効率と生産効率を向上させて、製麺業の発展に寄与する。
【符号の説明】
【0080】
1 麺帯生成装置
2 複合機
3 麺帯圧延機
4 混練ミキサ
5 麺線切出機
6 麺線切断機
7 窪穴部位
7A 底面
7B 輪郭部位
8 突起部位
8A 上面
8B 輪郭部位
20 粗製ロール
20A 円筒体
20B 外周面
30 複合ロール
40 ホッパ
50 麺粒押込装置
60 圧延ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の円筒体の外周面に複数の窪穴部位が麺帯原型を安定して送り出す十分なグリップ力を得る範囲で隣接する同形の窪穴部位に対して可能な限り近接するように配設され前記窪穴部位を含む前記外周面の全面にわたってフッ素樹脂のコーティングが施された粗製ロールを含んでなる複合機を備えた麺帯生成装置。
【請求項2】
前記円筒体の前記窪穴部位を除く前記外周面におけるフッ素樹脂コーティング層の下地として金属溶射層が形成され前記窪穴部位におけるフッ素樹脂コーティング層の下地が前記金属溶射層のない前記円筒体の素材金属の研磨面である請求項1に記載の麺帯生成装置。
【請求項3】
前記円筒体の前記窪穴部位を除く前記外周面におけるフッ素樹脂コーティング層の下地として第1の表面粗さの表面荒れを有する金属溶射層が形成され前記窪穴部位におけるフッ素樹脂コーティング層の下地として前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さの表面荒れを有する金属溶射層が形成された請求項1に記載の麺帯生成装置。
【請求項4】
金属製の円筒体の外周面に複数の突起部位が隣接する同形の突起部位との間に形成される凹部位に剥離かすが詰まって残されない範囲で前記隣接する同形の突起部位に対して可能な限り近接するように配設され前記突起部位を含む前記外周面の全面にわたってフッ素樹脂のコーティングが施された粗製ロールを含んでなる複合機を備えた麺帯生成装置。
【請求項5】
前記突起部位におけるフッ素樹脂コーティング層の下地として金属溶射層が形成され前記円筒体の前記突起部位を除く前記外周面におけるフッ素樹脂コーティング層の下地が前記金属溶射層のない前記円筒体の素材金属の研磨面である請求項4に記載の麺帯生成装置。
【請求項6】
前記突起部位におけるフッ素樹脂コーティング層の下地として第1の表面粗さの表面荒れを有する金属溶射層が形成され前記円筒体の前記突起部位を除く前記外周面におけるフッ素樹脂コーティング層の下地として前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さの表面荒れを有する金属溶射層が形成された請求項4に記載の麺帯生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−279316(P2010−279316A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136951(P2009−136951)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【Fターム(参考)】