説明

麺類の連続茹上げ方法

【課題】麺線を個カゴで茹でると麺線の角立ちや折れ曲がりの癖が付き易く、麺帯で茹で上げ細断した茹麺は食感が劣る。又、角形に細断した麺線を長尺状のまま茹る方法には計量精度を高めると切断面の一部が再接着してほぐれない相反する問題がある。
【解決手段】角形麺用切歯で細断する前に、麺帯を広げた状態で熱水中に潜行させてアルファ化し、麺線で茹で上げる麺類の連続茹で上げ方法を基本とし、麺線茹で迄に麺帯又は麺線を定寸カットする方法や、麺帯アルファ化の前にメッシュのコンベアベルト上に平らに広げると共に該麺帯を定寸カットし、麺帯アルファ化をメッシュのコンベアベルト上で熱水中に入れて潜行させる方法や、麺帯アルファ化の際にコンベアベルト両側外に沸き上げる水流を発生させる方法や、切歯のカスリを熱水中に置く方法や、麺帯アルファ化工程の熱水潜行時間が5秒〜60秒で、麺帯の厚みが1mm〜2.5mmである方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角型麺用切歯前の連続生麺帯を短時間茹でることで事前のアルファ化を行い角立ちとストレート感に優れた麺線を得る、麺類の連続茹上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
角型麺の角立ちやストレート感は麺の品位を左右し、とりわけ、うどんや日本そばには、角立ちに優れ折り癖のないストレートな麺線が望まれる。
【0003】
近年、一般的な連続茹上方法は、長尺状の生麺帯を切歯で細断し、定寸カットされた1食分以下の生麺を、並行する2本の無端チェーンに横架された複数の茹カゴ内に投入し、熱水中を移行させることで茹で上げる。(以後、「個カゴ茹で」という。)個カゴ茹でには細断の際に切歯ローラによって挟まれる押圧で麺線の角が潰れ易く、個カゴ投入時の衝撃により折りたたまれて麺線は折り癖がつきやすい欠点があって、茹で上げられた麺線の角立ちやストレート感は必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
個カゴ茹でに代わる方法には、複数食分の生麺を大カゴにまとめて投入して茹で始め、連接する大カゴの反転を順次行うことで麺を移行して茹で上げる方法がある。この方法では大容量のカゴで麺線は真直ぐに伸ばされて折り癖のないストレートな形状になり易い。しかし、日本そばのように比較的茹時間が短く湯のびし易い麺の場合、茹上後の滞留工程で食感を損ない易い欠点があった。
【0005】
そもそも、麺線の角立ちやストレート感を高めるには、麺帯や麺線に折り癖をつけずに伸ばした状態で茹れば良い。
【0006】
伸ばした麺帯を茹る方法(以後、「麺帯茹で」という。)には、茹で湯槽内を循環移行する麺帯キャリアで幅広連続麺帯を茹上げ、その後、切歯により茹麺に細断し冷却水により冷却する方法がある。(特許文献1)また、茹で槽内の多段のベルトコンベアで麺帯を挟持しながら茹上げて冷却槽を通過させ、その後、切歯で細断し定寸カットする方法がある。(特許文献2)
【0007】
麺帯茹では、麺線で茹る場合に比べ長い茹時間を要する欠点がある。その欠点を克服する為、麺線状凹条と凸条を交互に成形した麺帯を茹ることで茹時間を短縮した後に麺線に分離細断する方法がある。(特許文献3、特許文献4)しかし、茹上後に麺線状凹条と凸条の境の全てを狂いなく分離させ、かつ優れた角立ちに仕上げることは容易ではない。
【0008】
折り癖を付けず伸ばした麺線で茹上げ可能な方法としては、茹槽内を迂回蛇行して始端から終端に移行する上下2層の麺線ネットコンベアがある。(特許文献5)特許文献5によれば、長尺状の並列麺線をジグザグに折り畳んで(屈曲又は湾曲して)茹上げるとあるが、大きく湾曲状又は直線状に近づければ、麺線のストレート感を高めることが可能と思われた。
【0009】
しかしながら、麺帯茹でや伸ばした麺線で茹上げる実用機はこれまで一般化していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭45−38508号公報
【特許文献2】特開平7−289189号公報
【特許文献3】特開昭58−36363号公報
【特許文献4】特開昭61−21055号公報
【特許文献5】特開2004−49140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
個カゴ茹では、麺重量の定量性、製造条件の均一化が得られ易い反面、茹で上がった麺線の角立ちや、折れ曲がり等の癖が付き易い点で満足できるものではない。
【0012】
そこで、公開特許文献にある麺帯茹でや伸ばした麺線で茹上げる方法が一般化しなかった理由を明らかにする為、発明者は麺帯茹でについて検討した。その結果、麺帯で茹で上げ細断した茹麺は、茹時間を長く要するだけでなく、日本そばではなめらかさに欠けて喉越し悪く、うどんではもちもち感に欠け、麺線で茹でた場合より食感が劣る(茹で上げに期待される食感とは異なる)欠点があった。
【0013】
次に、長尺状の麺線群を伸ばした状態で茹上げる方法について検討した。切歯で細断した長尺状の麺線群を、脱落防止を目的とする固定側壁を備えた金網ベルトコンベア上に移載して連続的に茹で上げたところ、麺線群を緩めた状態にすると、熱水の流れに浮遊する場所や程度が麺線によって異なり、又、固定側壁と金網ベルトの隙間に麺線の一部が入り込むなどもあって、その後、定寸カットする際に均一な引き伸ばしができず重量が揃わない。そこで、麺線の浮遊を抑制する為に麺線群を張った状態にすると、今度は切歯で細断した麺線の隣り合う切断面の一部が再接着した。すなわち、切歯で角形に細断した長尺状の麺線群を茹る方法には、計量精度を高めると切断面の一部が再接着してほぐれない、相反する問題があった。
【0014】
本発明はこのような問題を解決するもので、角立ちに優れ、折り癖のないストレートな形状により品位に優れ、茹で上げによる本来の食感を実現し、麺線の全数がほぐれて計量精度に優れた茹で上げ方法の提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者は上記の目的を達成するために図6に示したボイル槽で鋭意検討したところ、麺帯で短時間茹で、麺線群に細断し、麺線で再び茹でて茹で上げる際に、切歯カスリによる麺線の交互分配が維持できれば、隣り合う麺線の切断面が再接着することなく、食感と角立ちとストレート感に優れた麺線が製出できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明の課題解決手段1は、(1)麺の生地を麺帯に成形する麺帯成形工程と、(2)該麺帯を広げられた状態で熱水中に潜行させる麺帯アルファ化工程と、(3)該麺帯を角形麺用切歯に挿入し麺線に細断する麺線成形工程と、(4)該麺線を切歯カスリによって交互複数列に分散供給する麺線分配工程と、(5)該麺線を交互複数列の状態で熱水中に投入して茹で上げる麺線茹で上げ工程、の(1)から(5)の工程を、その順で備えることを特徴とする麺類の連続茹で上げ方法に関する。
【0017】
本発明における麺の生地とは、一種又は二種以上の穀粉又は穀粉と澱粉を主原料として加水混練したものであれば、小麦蛋白をつなぎとするものに限定されず、湯捏ねした蕎麦生地のように糊化澱粉や原料の結着成分をつなぎにする生地を含む。
【0018】
生地の混練は、減圧度40キロパスカル以上、望ましくは減圧度60キロパスカル以上の減圧下で混練し脱気すると、(2)麺帯アルファ化工程で麺帯の定着性が高まり都合良い。
【0019】
(1)麺帯成形工程は、連続茹で上げ方法に適用する為、該生地を麺線に適する厚さの長尺状の麺帯に成形して連続供給できる手段であれば、麺用圧延ロールによって段階的に帯状成形しても、押出し機により帯状に吐出成形しても、それらの組合せでもいずれでも良い。
【0020】
(2)麺帯アルファ化工程は、本願発明の特徴を代表する工程で、麺帯を広げ茹ることによって行う。広げられた麺帯は平らな形で熱凝固しその形状は記憶されると共に、弾力が向上する。そして(3)麺線成形工程では、刃の付いていない通常の角形切歯で押し切る原理で細断しても、麺線はその弾力故に押し潰されることなく鋭利な切り口となって角立ちに優れ、その後、個カゴ茹でしても麺帯の平らな形状は麺線のストレート形状として維持されるという効果を奏する。
【0021】
なお、切歯は、角形の麺線に細断できれば刃溝の形状は問わないが、熱凝固した麺帯は未加熱の麺帯に比べ硬い為、薄刃の構成による切歯にすれば麺帯端部を食い込み易い為、麺帯の左右が均等に挿入され真直ぐ細断される点で適している。(図6の6a参照)なお、麺帯アルファ化工程を経た麺帯は、熱水から一度出して切歯に挿入しても熱水中で切歯に挿入してもいずれでも良い。
【0022】
(4)麺線分配工程では、切歯で細断された麺線を切歯ローラの裏側に取り付けたカスリによって少なくとも交互2列に分配され、麺線1本1本がバラバラに分散した状態で供給するもので、全ての麺線が少なくとも麺線一本分の隙間を保って熱水中に製出されることで、(5)麺線茹で上げ工程で切断面の再接着を防いで麺線を茹で上げることができる。(図5参照)
【0023】
そして、(2)麺帯アルファ化工程から(5)麺線茹で上げ工程を連続して行えば麺を冷ますこともないから、食感を低下させることがない。
【0024】
しかしながら、長尺状の全ての麺線を麺線一本分の隙間を保って熱水中に投入し続けることは、長尺状の麺線に常時適度な緩みを保つ必要があって、緩め過ぎると麺線は浮遊混乱し管理を難しくする場合があった。
【0025】
そこで、本発明の課題解決の手段2は、前記(5)麺線茹で上げ工程迄に、麺帯又は麺線を定寸カットすると共に、前記(5)麺線茹で上げ工程が該麺線を個カゴ内で茹で上げることを特徴とする課題解決手段1に記載の麺類の連続茹で上げ方法に関する。
【0026】
課題解決の手段2で(5)麺線茹で上げ工程の前迄に、麺帯又は麺線を定寸カットするねらいは、(3)麺線分配工程で前後に交互分配された麺線が進行方向に引っ張られた際に前側1列に揃って再接着する、不具合を防止する点にある。故に、定寸カットするタイミングは(2)麺帯アルファ化工程の前後、(4)麺線分配工程の後のいずれでも良いが、望ましくは(2)麺帯アルファ化工程の前後が良い。
【0027】
なお、カット方法は、一定速度で連続製出される麺帯を一定の時間間隔でカットすれば良く、麺帯又は麺線の進行方向に板刃を回転して対向するまな板部材との間に麺帯又は麺線を挟んで切断する方法が、装置構造が簡単にできて良い。
【0028】
そして、課題解決手段2の中で、(2)麺帯アルファ化工程の前のタイミングで麺帯を定寸カットして予め金網ベルトに平らに展開してから熱水に潜行させると、金網ベルト上での定着性が思いがけずに良好であるために、熱水中の移行から切歯への安定挿入が人の手を介すことなく可能となった。
【0029】
すなわち、本発明の課題解決手段3は、前記(1)麺帯成形工程と前記(2)麺帯アルファ化工程の間に、該麺帯をメッシュのコンベアベルト上に平らに広げる麺帯展開工程を備えると共に該麺帯を定寸カットし、前記(2)麺帯アルファ化工程が該麺帯をメッシュのコンベアベルト上で熱水中に入れて潜行させることを特徴とする課題解決の手段2に記載の麺類の連続茹で上げ方法に関する。
【0030】
課題解決の手段3の特徴は、課題解決の手段2のなかでも、成形された生麺帯を、定寸カットすると共にメッシュのコンベアベルト上に広げて熱水中に沈めることに限定した。
【0031】
麺帯展開工程は、麺帯の重なりがないようにメッシュのコンベアベルト上に平らに広げ、熱水中の麺帯アルファ化に備える工程で、麺帯カットは麺帯展開工程の前後どちらでも良い。ただし、一度折り重なった麺帯を剥がして広げるのは不合理だから、麺帯成形工程と麺帯カットと麺帯展開工程は連続一体的に行うのが良い。一例を図2に示す。
【0032】
課題解決の手段3の麺帯アルファ化工程に適したメッシュのコンベアベルトは、通水性と茹で麺装置に必要な耐久性を備えるものであれば、金属でもプラスチック樹脂でも繊維素材でもいずれでも良く、中でも金網ベルトに代表される螺旋が組み込まれたベルト構造が水切れの点で優れていて良い。
【0033】
金網ベルトに展開され、熱水に入った麺帯は、まず水濡れにより金網ベルトの凸部に密着する。凸部の接着面積は極狭小でもアルファ化して接着し、一定時間接着が維持される作用により、熱水中でも麺帯は金網ベルト上に定着し、挟持機構を要さずに切歯挿入への強制移送が可能になるという効果を奏する。
【0034】
なお、熱水中の麺帯を折り曲げ等で大きく歪ませると、熱凝固により柔軟性を失った麺帯は、コンベアベルトの凸部接着が剥がれる場合があるから、熱水中のメッシュベルトはなるべく水平かつ平らに水面付近に構成し、麺帯に無用な浮遊スペースを与えないようにするのが良い。(図3の2c3i参照)
【0035】
また、切歯ロールの周速をコンベアベルトより高速に回転させれば、麺線はカット単位の間隔を容易に取ることができ、更に、バルブやダンパーの開閉のタイミングを調整することで、カット単位の麺線を水槽の熱水と共に全量茹でカゴに投入することができる。(図1のcde、図3の3f参照)
【0036】
又、課題解決手段4は、前記(2)麺帯アルファ化工程においてコンベアベルト両側外に沸き上げる水流を発生させる課題解決手段3に記載の連続茹で上げ方法に関する。
【0037】
麺帯アルファ化工程において、麺帯の両側外の底部に熱源を設ければ、両側外側に沸き上がる水流が発生して中央のベルト面付近で沈み込み、麺帯をベルト面に押し付ける作用により麺帯の定着性を高める効果がある。(図3、4の3e参照)
【0038】
又、課題解決手段5は、前記(4)麺線分配工程を熱水中で行うことを特徴とする課題解決手段1〜4に記載の連続茹で上げ方法に関する。
【0039】
麺線群を熱水中で分散供給するには、切歯のカスリ部分に熱水シャワーをかけて濯がれる状態にするか、カスリ部分を熱水中に設け麺線分配工程を熱水中で行えば良い。(図5の5a,5c参照)
【0040】
麺帯アルファ化工程を経た麺帯内部は澱粉が断水糊化状態にあって、細断によって露出した切断面は極めて接着し易い状態にある。麺線分配工程を熱水中で行えばそのような切断面を確実に水濡れ状態にする作用があり、その結果、麺線の再接着を防ぐという効果を奏する。また、切歯カスリ部の麺線や細断生地の付着堆積が最小限に抑えられ、切歯のカスリ部分を清浄に維持することができる。
【0041】
又、課題解決手段6は、前記(2)麺帯α化工程において熱水に潜行させる時間が5秒〜60秒で、前記(1)麺帯成形工程で調製された麺帯の厚みが1mm〜2.5mmである課題解決手段1〜5に記載の連続茹で上げ方法に関する。
【0042】
麺帯α化工程に必要な熱水潜行時間は5〜60秒、望ましくは10〜30秒、麺帯の厚みは1〜2.5mmに限定することで、茹で溶出を顕著に抑制して角立ちに優れ、コンベアベルト上の定着性もとりわけ優れて良い。茹で上げの主体が麺線で行われる為、麺帯で目標水分まで茹で上げた麺線(麺帯茹で)のように食感の低下はない。更に、麺帯アルファ化工程から澱粉の糊化温度を保って麺線茹で上げ工程に至ることで、澱粉成分の冷却による食感の低下をも防ぐことができる。
【0043】
又、課題解決手段7は、麺類が日本そばである課題解決手段1〜6に記載の連続茹で上げ方法に関する。本発明には、麺線の角立ちやストレート感を価値と認識され、茹で処理によって本来の美味しさが得られる麺種に適し、例えば、日本そば、ひやむぎ、ラーメン、きしめん、パスタ、焼きそば等に適するが、中でも日本そばは、生の麺線で茹でる場合に組織が煮崩れし易く、角部が落ちやすい。ところが、日本そばの組織の脆さも麺帯でのアルファ化により強化され麺線の角部は煮崩れし難いから、日本そばはとりわけ本発明に適している。
【0044】
又、課題解決手段8は、麺類が冷凍麺である課題解決手段1〜7に記載の連続茹で上げ方法に関する。冷凍麺は製品製造時の品質再現性が高い特性があって、喫食時に角立ちの再現性も優れるから、冷凍麺はとりわけ本発明に適している。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、麺線に角立ちやストレート感が得られ、麺の品位を高めると共に、食感に悪影響を及ぼすことがない。又、蒸気を直接噴射して茹で水に投入した生麺をほぐす必要がないから麺の茹で溶出を抑え、蒸気消費や換気能力を節減でき、吸気フードから溢れた蒸気により作業環境を悪化させることがない。更に、切歯カスリを熱水で常に濯がれる状態にすれば、切歯カスリに堆積した生地塊を原因とする異物混入を減らすことができる。故に、高品位な麺製品の提供、製造時のロスの低減、省エネ及び製造環境の改善に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による工程を含む全体を装置で表した縦断面略図
【図2】麺帯成形工程、麺帯カット、麺帯展開工程を装置で表した縦断面略図
【図3】麺帯アルファ化、麺線成形、麺線分配の工程を装置で表した縦断面略図
【図4】図3の平面図
【図5】図3のd(切歯)の部分拡大図
【図6】麺線成形工程に適する薄刃切歯を表した図5の切断線6−6の断面図
【図7】実施例1で用いた装置の縦断面略図
【図8】比較例1で用いた装置の縦断面略図
【図9】実施例2、3で用いた装置の縦断面略図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を実施例1、比較例、実施例2及び3より説明する。
【0048】
実施例1(長尺状の麺帯で茹で始め麺線に細断し長尺状の麺線で茹で上げる)
【0049】
挽きぐるみ相当のそば粉と強力粉を1:1で混合した粉体100重量部に対し、真水35重量部を練り水として真空ミキサーで70キロパスカルの減圧下、ゴルフボール大の生地に練りあげた。その後、定法により麺帯成形を行い、段階的にロール圧延を行い、幅15cm厚さ1.3mmの長尺状の麺帯を散粉して巻き取った。
【0050】
以後、実施例1は図7より説明する。巻き取った麺帯7aを、ステンレスネットコンベアベルト7b区間に折り重なりがないように広げ、コンベアを起動してベルトの進行と共に98℃の熱水中の7c位置を20秒で通過して長尺状のアルファ化麺帯とし、薄刃20番の切歯7dに挿入した。引き続き、得られた長尺状の麺線を、適度に緩めた状態で7e区間を50秒で通過して茹で上げた後、冷却シャワー7fによって30℃前後に冷却し、カッター7hにより麺線長40cm程度にカットした。次に、該茹で麺を、別に用意した5℃の冷水中で冷却後、水を切って凍結し、冷凍日本そばの実施サンプル1を得た。
【0051】
比較例(長尺状の麺帯で茹で上げて麺線に細断する)
比較例は、実施例の切歯7dを8dに移動した図8より説明する。巻き取った麺帯7aは、ステンレスネットコンベアベルト7b区間に折り重なりがないように広げ、コンベアを起動してベルトの進行と共に98℃の熱水中の8cの区間を通過後、8e区間で集積滞留させ、8fの関門より1枚に再び広げ、合計3.5分及び4.5分茹で上げ、薄刃20番の切歯8dに挿入した。なお、切歯8dに裏側のカスリ部には冷却シャワー8iを設け麺線の絡みを防いだ。長尺状の麺線は、カッター7hにより麺線長40cm程度にカット、該茹で麺は、別に用意した5℃の冷水中で冷却後、水を切って凍結し、冷凍日本そばの比較サンプルを得た。
【0052】
凍結状態のサンプルを熱湯で解凍した後、冷やしそばとして喫食し、評価項目は、角立ち、麺線のストレート感及び食感の総合評価を専門パネラー二名により採点したところ、角立ち及び麺線のストレート感は同等だったが、比較サンプルの茹で時間3.5分(水分66%)及び4.5分(水分68%)のいずれも表面がざらついた食感でのど越し悪いものであるのに対し、実施サンプル1(水分67%)の食感は、麺線で茹でた本来のなめらかさや歯切れが感じられ、明らかに優れていた。
【0053】
実施例2(日本そばをカット麺帯で茹で始め麺線に細断し個カゴで茹で上げる)
【0054】
実施例2について図9より説明する。実施例1の麺帯6aは長さ40cmにカットし、カット麺帯9aとした。カット麺帯9aをステンレスネットコンベアベルト9b区間に折り重なりがないように1枚ずつ平らに広げ、コンベアを起動してベルトの進行と共に98℃熱水中9c区間を20秒、35秒、70秒の其々で通過させて麺帯9aをアルファ化し、傾斜20°のベルト斜面9eをベルトと一体に立ち上げたところ、20秒、35秒は麺帯10枚中10枚が速やかに切歯9dに挿入されたのに対し、70秒で通過させた麺帯は、半数がコンベアから剥がれ補助なしに切歯に挿入できない場合があった。
【0055】
次に、薄刃20番の切歯9dに挿入された麺帯は、麺線に細断され受けカゴ9fに速やかに全量収容された。収容した麺線は速やかに引き出して茹でカゴ9hに移し、水分67%程度になるように98℃約50秒間維持した後に引き上げ、別に用意した5℃の冷水中で冷却後、水を切って凍結し冷凍日本そばの実施サンプル2を得た。また、切歯9dを水面の上に配置変更したところ、カスリ部に麺線の一部が付着堆積する以外は大差なかった。
【0056】
なお、対照区として、最終圧延麺帯9aをアルファ化工程なしに槽外の薄刃20番の切歯で細断して得た麺線を、同一水分になるように茹で上げたものを調製した。
【0057】
サンプルは、凍結状態のサンプルを熱湯で解凍した後、冷やしそばとして喫食した。評価項目は、角立ち、麺線のストレート感及び食感の総合評価で、表2の評価基準により専門パネラー二名により2回評価を行った。その結果、本発明実施サンプル2は、対照サンプルの5点(基準)に対し角立ち7.8点、麺線のストレート感7.3点で、明らかに優れ、食感は概ね同等だった。(表1)
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
実施例3(ひやむぎをカット麺帯で茹で始め麺線に細断し個カゴで茹で上げる)
【0061】
うどんに適した国産小麦粉粉体100重量部に対し、10重量%の食塩水44重量部を練り水として加え、真空ミキサーで80キロパスカル減圧し、ゴルフボール大の生地に練りあげた。その後、定法により麺帯成形及び段階的にロール圧延を行い、幅15cm、厚さ1.8mmの長尺状の麺帯を得た。
【0062】
長尺状の麺帯は、幅15cm、長さ30cmにカットし、図9のステンレスネットコンベアベルト9b位置に折り重なりがないように1枚ずつ平らに広げ、コンベアを起動して98℃の熱水中の9c上を20秒で通過し、切歯9dで麺線に細断、受けカゴ9fに全量収容後、速やかに茹でカゴ9hに移し、98℃90秒間を維持した後に引き上げ、別に用意した5℃の冷水中で冷却後、水を切って凍結し、冷凍ひやむぎの実施サンプル3を得た。
【0063】
なお、対照区として、最終圧延麺帯を麺帯アルファ化工程なしに槽外の薄刃20番の切歯で細断して得た麺線を、同一水分になるように茹で上げたものを同様に調製した。
【0064】
サンプルは、凍結状態のサンプルを熱湯で解凍した後、ひやむぎとして喫食した。評価項目は、角立ち、麺線のストレート感及び食感の総合評価で、表2の評価基準により専門パネラー二名により2回評価を行った。その結果、本発明実施サンプル3は、対照サンプルの5点(基準)に対し角立ちは7.5点で明らかに優れ、麺線のストレート感は8.5点で大きく優れ、食感は概ね同等だった。(表3)
【0065】
【表3】

【符号の説明】
【0066】
a 麺帯連続圧延機
b 麺帯成形工程に用いる麺帯最終圧延機
c 麺帯アルファ化工程に用いる熱水槽
d 麺線成形工程と麺線分配工程に用いる角形麺用切歯
e 麺線茹で上げ工程に用いる個カゴ茹でによる熱水槽
f 冷却槽
h 熱水循環ポンプ
i 個カゴ
j 茹で麺シュート
2a 麺帯最終圧延機bによって成形された長尺麺帯
2b 麺帯カットに用いるカッター
2c 麺帯展開工程に用いるメッシュのベルトコンベア
3a 定寸カットされ平らに広げられた麺帯
3b ボイル水槽を通過するメッシュのコンベアベルト
3c 熱水
3d 加熱蒸気管
3e 加熱蒸気管から沸き上がる水流
3f 茹で麺排出バルブ
3h 水流3eが麺帯を上から押し付ける向きに規制する側板
3i 水位線
5a 切歯dのカスリ
5b 2列に分配された麺線
6a 切歯を構成する薄刃の断面
7a 実施例1、比較例1の圧延後の巻き取り麺帯
7b 実施例1、比較例1のネットコンベアで長尺の生麺帯を平らに広げた区間
7c 実施例1のネットコンベア上で麺帯をアルファ化する区間
7d 実施例1の角型麺用切歯
7e 実施例1の麺線で茹る区間
7f 実施例1の麺線冷却シャワー
7h 実施例1、比較例1の麺線カッター
8c 比較例1のネットコンベア上で麺帯をアルファ化する区間
8d 比較例1の切歯
8e 比較例1で麺帯を集積して茹でる区間
8f 比較例1で集積して茹でた麺帯を1枚に再び広げる関門
8i 比較例1で麺線の絡みを防ぐ為、切歯7d裏側のカスリ部を濯ぐシャワー
9a 実施例2、3のカット麺帯
9b 実施例2、3のネットコンベアでカット麺帯を平らに広げる区間
9c 実施例2、3のネットコンベアで麺帯8aをアルファ化する区間
9d 実施例2、3の切歯
9e 実施例2、3の麺帯がアルファ化後に立ち上がる傾斜20°のベルト斜面
9f 実施例2、3の麺線受けカゴ
9h 実施例2、3の麺線茹でカゴ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)麺の生地を麺帯に成形する麺帯成形工程と、(2)該麺帯を広げられた状態で熱水中に潜行させる麺帯アルファ化工程と、(3)該麺帯を角形麺用切歯に挿入し麺線に細断する麺線成形工程と、(4)該麺線を切歯カスリによって交互複数列に分散供給する麺線分配工程と、(5)該麺線を交互複数列の状態で熱水中に投入して茹で上げる麺線茹で上げ工程、の(1)から(5)の工程を、その順で備えることを特徴とする麺線の角立ちとストレート感に優れた麺類の連続茹で上げ方法。
【請求項2】
前記(5)の麺線茹で上げ工程迄に、麺帯又は麺線を定寸カットすると共に、前記(5)麺線茹で上げ工程が該麺線を個カゴ内で茹で上げることを特徴とする請求項1に記載の麺類の連続茹で上げ方法。
【請求項3】
前記(1)麺帯成形工程と前記(2)麺帯アルファ化工程の間に、該麺帯をメッシュのコンベアベルト上に平らに広げる麺帯展開工程を備えると共に該麺帯を定寸カットし、前記(2)麺帯アルファ化工程が該麺帯をメッシュのコンベアベルト上で熱水中に入れて潜行させることを特徴とする請求項2に記載の麺類の連続茹で上げ方法。
【請求項4】
前記(2)麺帯アルファ化工程においてコンベアベルト両側外に沸き上げる水流を発生させることを特徴とする請求項3に記載の連続茹で上げ方法。
【請求項5】
前記(4)麺線分配工程を熱水中で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の連続茹で上げ方法。
【請求項6】
前記(2)麺帯アルファ化工程において熱水に潜行させる時間が5秒〜60秒で、前記(1)麺帯成形工程で調製された麺帯の厚みが1mm〜2.5mmである請求項1〜5のいずれかに記載の連続茹で上げ方法。
【請求項7】
前記の麺類が日本そばである請求項1〜6のいずれかに記載の連続茹で上げ方法。
【請求項8】
前記の麺類が冷凍麺である請求項1〜7のいずれかに記載の連続茹で上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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