説明

麺食品及び麺食品の製造方法

【課題】焼そば本来の香ばしい味や風味を損なうことなく、食用油脂の経時的な酸化を進行させず、調理の際に油脂を使用することがなく、出汁のみを用い調理場所の油汚れがない麺食品を提供する。
【解決手段】生麺をアルファ化処理後、揚げ処理をし、常温に冷却後、長さを短くした揚げ麺2を吸油性紙3に包み包装用容器1に真空包装する。包装用袋5内には削り節4が、包装用容器6には甘酢が、包装用容器7には和風味の出汁が夫々個別的に封入されて容器8に1食分としてセットされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺食品及び麺食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼そばは、生麺、茹で麺、若しくは蒸し麺を植物油、或は豚脂で野菜や豚肉等の具材と共に炒めたり、或は所定温度に昇温した植物油で揚げた揚げ中華麺に片栗粉等の澱粉粉の水溶きを入れてとろみを付けた野菜、蓄肉、海産物を炒めたものをかけたものが一般的に存在する。一般的に中華麺を用いたやきそばには和風の出汁は使用しない。ウスターソースがベースとなるソースや塩で味付けを行う(例えば、非特許文献1参照)。
上記焼きそばの調理を家庭で簡単に行うことができるようにするために、種々の即席焼きそば麺或は調味料をセットにした即席焼きそばセットが販売されている。具体的には、生麺を茹でて茹麺を得、得られた茹麺を一般的な1人分の大きさの塊に成型し表面に植物油を散布し、次に植物油が散布された茹麺を表面が樹脂加工或は焼き入れ加工を施された鉄板上に置き、鉄板を加熱して焼き色を付けた後、製品の中心温度が常温になるまで常温下に放置し真空包装する焼き目が付き焼きそば麺の製造方法が提案され、調理方法は麺を袋に密封された状態で湯温中に入れるか、或は小穴を穿孔するか袋からだしてマイクロ波加熱したものにかやくをまぶすものである(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明であると、真空包装されている麺は茹で麺の表面に食用植物性油を付着させ、焦げ目も付されているため、見た目はフライパンで調理した焼きそばに見えるが、真空包装された麺が茹でられて高水分含有率の状態で密封されているため、経時的に麺が互いに付着して塊化し、食用植物油も生状態であるため香ばしさに欠け、食感も柔らかく本来の焼きそばとはかけ離れたものとなるという問題点があった。
1食分の生麺を油で揚げたものに、ガスバーナーや遠赤外線で焦げ目を付す即席焼きそばの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示の即席焼きそばの製造方法により得られた焼そばは焦げ目から小麦粉の単なる焦げた味がするのみで、鉄板で麺を炒めた香ばしい焼きそば本来の味及び風味がないという問題点があった。
生麺を100℃の湯温中で茹でるか、或は蒸すかの何れかのアルファ化処理をした後、一食分の長さに切断してマイクロ波加熱可能な耐熱性及び気密性を有する包装用袋に密封し、アルファ処理された麺をマイクロ波加熱により殺菌したものと、別の包装容器に乳化油脂、調味料、青海苔や削り節を入れたものとをセットにした即席焼きそばが提案されている。そして、この即席焼きそばは、耐熱性及び気密性を有する包装用袋に小穴を穿孔し麺が耐熱性包装用袋に収納された状態でマイクロ波による加熱をし、加熱後は耐熱性包装用袋から麺を取り出し、添付の調味料をからませたり削り節や青海苔をトッピングして、麺を炒めること無く手軽に焼きそばを調理するのである(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に開示の発明は、アルファ処理することで高水分含有率になった麺を耐熱性及び気密性を有する包装用袋に入れて消費者に届け、消費者は袋内の麺を温めるか、或は取り出してマイクロ波加熱して温める調理方法を採りため、袋内で麺が互いにくっ付き合い塊化し、又、香ばしい焼きそばの味や風味を呈しないという問題点があった。
生麺をアルファ化処理後、麺に着味液を噴き付けたもの、又は着味液を練り込まれた生麺を所定形状に整形したものを食用油で揚げて麺塊表面に焦げ目を付着させる即席焼きそばの製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4に開示の即席焼きそばの製造方法であると、予め麺に付着或は混練した調味料が食用油脂で揚げることや経時的な成分の反応により味が変化し、当初の計画していた味とは程遠いものとなるという問題点があった。
【非特許文献1】中華麺のインターネット上のホームページ
【特許文献1】特開平7−298989号公報
【特許文献2】特開2002−119234号公報
【特許文献3】特開2000−83613号公報
【特許文献4】特開2006−141234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創案されたものであって、麺を揚げたものを真空包装することで、焼そば本来の香ばしい味や風味を損なうことなく、食用油脂の経時的な酸化を進行させず、調理の際に油脂を一切使用することがなく、しかも油分を一切使用しない出汁のみを用いて調理するため調理場所が油汚れすることなく、低カロリーの健康志向の麺食品及び麺食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本願発明のうち請求項1に記載の発明麺食品は、気密性を有する包装用容器内に真空密封包装された揚げ麺と、包装用容器に封入された調味液とよりなる麺食品であって、前記真空包装された揚げ麺が、アルファ化処理され食用植物油にて揚げ処理され、且つ1本1本の麺の長さを短くしたものであり、前記包装用容器に封入された調味液が出汁であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明麺食品の製造方法は、小麦粉に水を混合し捏ねた後に展延し、所定の細幅に裁断して細紐状の生麺を得る工程と、得られた生麺をアルファ化処理する工程と、アルファ化処理された麺の表面に食用植物油を付着させる工程と、前記食用植物油が表面に付着された所定量の塊状の麺を、油温が160〜200℃の食用植物油内に入れ、厚みが1.0〜2.9cm程度で平視が略円形の扁平形状を形成するように成形しながら加熱し揚げる工程と、揚げ麺を常温環境下に放置し、揚げ麺の中心温度が常温になるまで冷却する冷却工程と、品温が常温になった揚げ麺を長さが0.2〜4.5cm程度になるように叩き折り、麺の長さを短くする工程と、得られた麺を出汁と共に加熱容器内に入れ、加熱しながら出汁を麺に吸収させる味付け工程と、出汁を吸収した麺を加熱容器から取り出し、麺に甘酢や削り節をかけるトッピング工程とよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本願発明は、アルファ化処理した麺を更に揚げ処理することで、アルファ化処理した麺に含まれる水分を蒸散させることで、真空包装中に麺が互いに付着し合うことがないという効果がある。
本願発明は、アルファ化処理した麺を更に揚げ処理したものを真空包装することで、焼そば本来の香ばしい味や風味を損なうことなく、食用油脂の経時的な酸化を進行させることがなく、調理までは包装容器を未開封であるため鮮度が保持されるという効果がある。
本願発明は、調理の際に油脂を使用することなく麺に出汁を吸収させることで麺食品を完成させるため、焼そば本来の香ばしい味や風味を保持しつつ、低カロリーの麺食品を得られるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0006】
アルファ化処理され麺を食用植物油で揚げることで、麺中の水分を蒸発させて麺組織に微細な空洞部を多数設けて出汁が麺に浸み込みやすくして出汁による調味を容易化することを実現した。予め麺を食用植物油で揚げ処理をすることで、調理の際に油を使用しないで済むようにし、得られた麺食品の低カロリー化と調理器具や調理場所の油煙による汚れをなくすことを実現した。
【実施例1】
【0007】
実施例1について説明する。
先ずは生麺を得る工程について説明する。小麦粉にかん水を溶かした水を混合する。かん水の量は小麦粉に対して35重量%程度であることが好適である。かん水を添加混合後、捏ねて玉状にする。この玉状物を打ち粉を使用して所望の薄さに展延し所望の細幅に刃物で切断して細紐状の生麺を得る。かん水は麺の弾力性を持たせるためのものであり、かん水を用いることなく、小麦粉と水のみを原料として捏ね展延、細紐状に裁断したものであってもよい。かん水を使用する場合は、小麦粉に対して0.1〜1.2重量%を添加することが麺の弾力性の観点より好ましい。
【0008】
アルファ化処理工程について説明する。生麺を100℃の湯中で約3分間放置して茹でる。本実施例では、2kgの生麺に対し、20リットルの沸騰する湯を使用し、生麺を湯中に約3分間放置して茹でる。本実施例では生麺の澱粉をアルファ化させる方法として、茹で処理を用いたが、茹で処理に限定せず、蒸煮処理を行うことも本願発明に包含される。
【0009】
アルファ化処理された麺の表面に食用植物油を付着させる工程について説明する。沸騰した湯中から引き上げた麺はざるにとり、ざるを上下に振り麺の水気を切る。上方を解放した有底容器に麺を入れ、白絞油を麺に注ぎ、麺に白絞油をからませる。麺の表面に満遍なく白絞油が付着するようにする。
【0010】
揚げ工程について説明する。生麺時の重量0.5kg毎に揚げ処理する。0.5kgの生麺をアルファ化後、表面に白絞油が付着された麺を白絞油で揚げる。具体的には、180℃に昇温された白絞油が600cc入っているフライパンに生麺時にして0.5kg重量の白絞油が付着されたアルファ化処理された麺を入れて揚げる。100℃を超える温度で揚げるとアルファ化処理された麺に含まれる水分が蒸発し、麺組織に多数微細孔を形成し、麺の水分含雄率が低下することでパリパリした食感を呈し、又、後の味付け工程の際に出汁が微細孔に入り込み、味が麺の内部にまで容易に浸透するという作用効果がある。平坦面を有する調理器具で表面を平らにしながら表面と裏面を夫々4〜9分間ずつ数回表裏面をひっくり返して揚げ、直径が約38cmの平面から視て略円形で厚みが約1.5cmの麺が固くなった扁平形状を呈する揚げ麺を得る。
【0011】
麺の長さを短くする工程について説明する。扁平な円板状の揚げ麺をフライパンから取り出し、常温環境下に放置して揚げ麺の中心温度が常温になるまで冷却する。常温に冷却された揚げ麺を棒で叩き、麺の1本1本の長さが0.2〜4.5cm程度になるように割る。
【0012】
味付け工程について説明する。フライパン或は中華鍋内で沸騰中の和風出汁約100cc中にスライスしたキャベツや玉葱等の好みの野菜と割られた揚げ麺を入れ、約2分間加熱して出汁を揚げ麺に吸収させる。
【0013】
トッピング工程について説明する。食器に出汁を吸収した揚げ麺を盛り、好みにより削り節をトッピングしたり、甘酢をかけて麺食品を得る。
【実施例2】
【0014】
図1に基いて実施例2を説明する。図1は麺食品の構成を示す分解斜視説明図である。図1において、包装用容器1は気密性、耐薬品性、耐油性及び耐熱性を有するフィルムより成り、例えばポリプロピレンフィルムよりなり、全周囲を熱溶着により気密に封着されている。包装用容器1内には、生麺をアルファ化処理後に揚げ長さを短く処理された揚げ麺2が吸油性紙3に包まれて真空包装されている。吸油性紙3で揚げ麺2を包むことで、余分な食用植物性油を吸油性紙3に吸い込ませている。4は包装用袋5内に封入された削り節であり、ポリプロピレンフィルムよりなる包装用袋内に気密に封入されている。包装用容器6は定型性及び耐薬品性を有するポリプロピレンよりなり、内側には甘酢が封入されている。包装用容器7は定型性及び耐薬品性を有するポリプロピレンよりなり、内側には和風味の出汁が封入されている。開閉式の容器8内には、包装用容器1に真空包装された揚げ麺2と、包装用袋5に封入された削り節4と、包装用容器6に充填封入された甘酢、及び包装用容器7に充填封入された出汁が1食分としてセットされ、即席の麺食品を構成している。
調理の際には、包装用容器7を開封し出汁と所定量の水をフライパン或は中華鍋等の調理器具内に入れ、出汁を沸騰させる。包装用容器1を開封し、封入されていた揚げ麺2を沸騰中の出汁に所望の野菜等と共に入れ、約2分間強火で加熱を続ける。調理器具内の出汁等の水分が揚げ麺2の孔に吸い込まれ揚げ麺2に味付けされる。味付けがされた揚げ麺2を、調理器具から食器に移し入れ包装用袋5を開封して削り節4をトッピングしたり、好みにより包装用容器6を開封して甘酢をかけて麺食品を得る。
得られた麺食品は麺組織内に出汁が入り込み、且つ堅焼きそば風の食感を有し、又、調理の際に油脂を一切使用しないため、健康志向の強い人でも脂肪分を気にしないで食することができ、調理の際に新たに食用植物油を調理器具に入れることがないので油煙が立たず、調理場所が汚れず、調理器具も容易に洗浄可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
生麺をうどん麺や素麺にすることで、焼うどん風或は沖縄伝統の素麺チャンプルーに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】麺食品の構成を示す分解斜視説明図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0017】
1、6、7 包装用容器
2 揚げ麺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有する包装用容器内に真空密封包装された揚げ麺と、包装用容器に封入された調味液とよりなる麺食品であって、
前記真空包装された揚げ麺が、アルファ化処理され食用植物油にて揚げ処理され、且つ1本1本の麺の長さを短くしたものであり、
前記包装用容器に封入された調味液が出汁であることを特徴とする麺食品。
【請求項2】
小麦粉に水を混合し捏ねた後に展延し、所定の細幅に裁断して細紐状の生麺を得る工程と、
得られた生麺をアルファ化処理する工程と、
アルファ化処理された麺の表面に食用植物油を付着させる工程と、
前記食用植物油が表面に付着された所定量の塊状の麺を、油温が160〜200℃の食用植物油内に入れ、厚みが1.0〜2.9cm程度で平視が略円形の扁平形状を形成するように成形しながら加熱し揚げる工程と、
揚げ麺を常温環境下に放置し、揚げ麺の中心温度が常温になるまで冷却する冷却工程と、
品温が常温になった揚げ麺を長さが0.2〜4.5cm程度になるように叩き折り、麺の長さを短くする工程と、
得られた麺を出汁と共に加熱容器内に入れ、加熱しながら出汁を麺に吸収させる味付け工程と、
出汁を吸収した麺を加熱容器から取り出し、麺に甘酢や削り節をかけるトッピング工程とよりなることを特徴とする麺食品の製造方法。

【図1】
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