説明

黄色顔料の製造方法および黄色顔料

【課題】簡易な方法で鮮やかな黄色を発色する無機系の黄色顔料を得る。
【解決手段】ゾル状のチタン酸顔料を凍結乾燥させ(S100)、ゾル中の溶媒が除去し、鱗片状チタン酸顔料粉末が得られる。そののち、凍結乾燥により得られた鱗片状チタン酸顔料粉末に、30重量%の高濃度の過酸化水素水を作用させて、チタン酸顔料粉末を黄色化させ、黄色顔料粉末を得る(S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色顔料の製造方法および黄色顔料、特に、鮮やかな黄色を発現する無機系黄色顔料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、黄色顔料としては、例えば、硫化カドミウム組成のカドミウムイエロー、亜硝酸コバルト・カリ組成のオーレオリン(別名、コバルトイエロー)などの無機系顔料や、レモンイエロー、パーマネントイエロー等のアゾ系黄などの有機系顔料が用いられている。
【0003】
しかしながら、上記無機顔料は、上記アゾ系黄に比べ発色性がやや劣り、またいずれも毒性がやや高く、使用用途が限られてしまうという問題があった。
【0004】
したがって、近年では、発色性も良好で、人工顔料であるため色味を変えることが容易なアゾ系黄などの有機系顔料が、主に黄色顔料として用いられている。
【0005】
しかし、上記有機系顔料は、やや耐候性に劣るため、より耐候性に優れた黄色顔料が望まれていた。
【0006】
特許文献1には、ゲル状の水酸化チタン(Ti(OH)4)に35%の過酸化水素水を添加して黄色透明のアモルファス型酸化チタンゾルを得て、このアモルファス型酸化チタンゾルとアルカリ金属化合物とを混合してなるコーティング剤が提案されている。なお、このコーティング剤はタイル等の基体にコーティングされる。
【0007】
また、特許文献2には、塩化チタン、硫酸チタン等の水溶液とアンモニア、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液とを反応させてオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させ、デカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離、水洗し、この水酸化チタンゲルに過酸化水素水を添加して、黄色透明粘性液体を得て、この黄色透明粘性液とリン酸系化合物とを含有する酸化チタン膜形成用塗布剤を得ることが提案されている
【0008】
【特許文献1】特開平11−92689号公報
【特許文献2】再公表WO2002/061005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記いずれの黄色透明粘性液体もゾル状又はゲル状であって、これらの黄色透明粘性液体はコーティング剤としてしか用いることができず、これら自体を顔料として用いることはできなかった。
【0010】
一方、発色性や色味を変化可能なアゾ系黄などの有機系顔料は、上述したようにやや耐候性に劣る。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、鮮やかな黄色を発色する無機系顔料とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の黄色顔料の製造方法は、以下の特徴を有する。
【0013】
(1)酸化チタン化合物顔料粉末または酸化チタン化合物により基材表面が被覆された被覆顔料粉末に過酸化水素水を作用させ、黄色顔料を得る黄色顔料の製造方法である。
【0014】
酸化チタン化合物と過酸化水素とを反応させると、酸化チタン化合物は黄色化し、これにより無機系の黄色顔料を得ることができる。
【0015】
(2)上記(1)に記載の黄色顔料の製造方法において、前記酸化チタン化合物は、酸化チタンまたはチタン酸からなる群から選択された一種である。
【0016】
酸化チタンもチタン酸も過酸化水素と反応して容易に黄色化する。特に、チタン酸は酸素原子リッチであるため、過酸化水素と反応し易くより鮮明な黄色を発色する。
【0017】
(3)ゾル状のチタン酸顔料を乾燥させて鱗片状のチタン酸顔料粉末を生成させる乾燥工程と、前記鱗片状のチタン酸顔料粉末に過酸化水素水を作用させ、黄色顔料を得る黄色顔料の製造方法である。
【0018】
後述するように、ゾル状のチタン酸顔料は、極めて薄い鱗片状顔料になっており、この極薄鱗片状顔料のままの状態で乾燥させることによって、アスペクト比の高い極薄鱗片状のチタン酸顔料粉末が得られる。このアスペクト比が高い酸素原子リッチのチタン酸顔料粉末に過酸化水素を反応させることによって、アスペクト比の高くより鮮やかな極薄鱗片状の粉末黄色顔料を得ることができる。また、この粉末極薄鱗片状黄色顔料は、上述したように、アスペクト比が高いため、アスペクト比が低い他の顔料に比べ相対的に同一体積内に存在する顔料粉末の量が多くなり、その結果、同一体積内の黄色顔料表面積も大きくなるため、肉眼的にもより鮮明な黄色顔料と写る。
【0019】
(4)上記(3)に記載の黄色顔料の製造方法において、前記乾燥工程は、ゾル状のチタン酸顔料を凍結乾燥させる凍結乾燥工程である。
【0020】
後述するように、通常チタン酸塩はチタン酸層と層間イオンとが互い違いに積層して形成されており、さらに、この層状チタン酸塩に対し、酸処理を行い、交換可能な金属カチオンを水素イオンまたはヒドロニウムイオンで置換することにより層状チタン酸が得られる。この層状チタン酸に有機塩基性化合物を作用させ、層間を剥離することにより、薄片状チタン酸の水性媒体分散液(剥離ゾル)が得られる。有機塩基性化合物としては、ジメチルエタノールアミン(DMEA)が望ましい。この薄片状チタン酸の水性媒体分散液(剥離ゾル)を凍結乾燥することにより、剥離分散状態をほぼ維持しながら剥離ゾル中の分散液の有機塩基性化合物(例えば、DMEA)を除去することができる。その結果、極薄でアスペクト比がより高い鱗片状チタン酸顔料粉末を得ることができ、これを過酸化水素を反応させることにより、より鮮明な黄色を発色する黄色顔料を得ることができる。
【0021】
(5)上記(1)から(4)に記載のいずれか1項の黄色顔料の製造方法において、得られる黄色顔料は、マンセル表色系でマンセル値が5Y8/2から5Y10/14の範囲である。
【0022】
上記範囲のマンセル値を有する黄色顔料は、明度も彩度も高く鮮やかな黄色味を発色する。
【0023】
本発明の黄色顔料は、以下の特徴を有する。
【0024】
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の黄色顔料の製造方法により製造された黄色顔料である。
【0025】
また、マンセル表色系でマンセル値が5Y8/2から5Y10/14であって、酸化チタン化合物顔料粉末または酸化チタン化合物により基材表面が被覆された被覆顔料粉末を過酸化水素処理することにより得られる無機の黄色顔料である。
【0026】
これらの黄色顔料は、より鮮明な黄色顔料である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、酸化チタン化合物と過酸化水素とを反応させることによって、酸化チタン化合物は黄色化し、これにより無機系鮮やかな黄色を発色する黄色顔料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
[黄色顔料の製造方法]
本発明の好適な実施の形態の黄色顔料の製造方法は、酸化チタン化合物顔料粉末または酸化チタン化合物により基材表面が被覆された被覆顔料粉末に過酸化水素水を作用させ、黄色顔料を得る黄色顔料の製造方法である。
【0030】
ここで、上記酸化チタン化合物としては、例えば、Ti23,TiO2を含む酸化チタン、層状チタン酸塩を酸で処理して層状チタン酸とし、次いで有機塩基性化合物を作用させて層間を剥離した薄片状チタン酸からなる群から選択される化合物である。
【0031】
そして、上記酸化チタン化合物顔料粉末は、Ti23,TiO2を含む酸化チタン顔料、または、層状チタン酸塩を酸で処理して層状チタン酸とし、次いで有機塩基性化合物を作用させて層間を剥離した薄片状チタン酸からなるチタン酸顔料から選択される顔料粉末であり、これらの顔料粉末の形状は、鱗片状であることが好ましい。
【0032】
また、上記酸化チタン化合物により基材表面が被覆された被覆顔料粉末(以下「被覆顔料粉末」という)としては、例えば、その基材が鱗片状のアルミナ又はマイカ又はシリカなどから選択されることが望ましい。
【0033】
また、本実施の形態で用いるチタン酸顔料は、図1に示すように、チタン酸顔料10の厚みT1が10〜200nmであってその長手方向の長さ(粒径)D1が10〜30μmであり、そのアスペクト比(厚みと長手方向の長さとの比)は250〜3000である。また、チタン酸顔料としては、層状チタン酸塩を酸で処理して層状チタン酸とし、次いで有機塩基性化合物を作用させて層間を剥離した薄片状チタン酸からなるチタン酸顔料が好ましく、より酸素原子リッチで価数が高くてD1が10〜50nmである極薄鱗片状のチタン酸顔料が好ましい。ここで、価数が高い程、後述する過酸化水素との反応により鮮やかな黄色が発色する。
【0034】
また、酸化チタン顔料は、球状であって、直径が10〜200nmである。また、酸化チタン顔料としては、例えば、ルチル型二酸化チタン顔料が好ましい。
【0035】
また、被覆顔料粉末は、図2に示すような、鱗片状アルミナ又はマイカ又はシリカなどからなる鱗片状基材24の表面を酸化チタン膜22により被覆した酸化チタン被覆顔料20の粉末、または、図2における酸化チタン膜22をチタン酸膜に替え、鱗片状基材24の表面をチタン酸膜によって被覆したチタン酸被覆顔料である。
【0036】
この被覆顔料粉末は、その厚みT2が400〜500nmであり、その長手方向の長さ(粒径)D2が約15〜20μmであり、そのアスペクト比が30〜50である。
【0037】
以下に、黄色チタン酸顔料粉末の製造方法の一例を、層状チタン酸塩を酸で処理して層状チタン酸とし、次いで有機塩基性化合物を作用させて層間を剥離した薄片状チタン酸からなるチタン酸顔料を例にとり、図3および図4を用いて説明する。なお、TiO4顔料についても同様の製造方法で黄色顔料粉末が得られる。
【0038】
図3に示すように、層状チタン酸塩K0.8Li0.27Ti1.734を酸処理し、交換可能な金属カチオンを水素イオンまたはヒドロニウムイオンで置換することにより層状チタン酸(例えば、H1.07Ti1.734・nH2O)が得られる。この層状チタン酸に有機塩基性化合物を作用させ、層間を剥離することにより、薄片状チタン酸の水性媒体分散液(剥離ゾル)が得られる。有機塩基性化合物としては、ジメチルエタノールアミン(DMEA)が望ましい。
【0039】
<薄片状チタン酸分散液の合成>
(合成例1)
酸化チタン67.01g、炭酸カリウム26.78g、塩化カリウム12.04gおよび水酸化リチウム5.08gを乾式で粉砕混合した原料を1020℃にて4時間焼成した。得られた粉末の10.9%水スラリー7.9kgを調製し、10%硫酸水溶液470gを加えて2時間撹拌し、スラリーのpHを7.0に調製した。分離、水洗したものを110℃で乾燥した後、600℃で12時間焼成した。得られた白色粉末は層状チタン酸塩K0.6Li0.27Ti1.733.9であり、平均長径15μmであった。
【0040】
この層状チタン酸塩65gを3.5%塩酸5kgに分散撹拌し、40℃で2時間反応させた後、吸引濾過で分離し、水洗した。得られた層状チタン酸のK2O残量は2.0%であり、金属イオン交換率は94%であった。
【0041】
得られた層状チタン酸全量を脱イオン水1.6kgに分散して撹拌しながら、ジメチルエタノールアミン34.5gを脱イオン水0.4kgに溶解した液を添加し、40℃で12時間撹拌してpH9.9の薄片状チタン酸分散液を得た。10000rpmで10分間遠心することにより濃度5.0重量%に調製した。得られた薄片状チタン酸分散液は長時間静置しても固形分の沈降は見られず、それを110℃で12時間乾燥した固形分は、TG/DTA分析により200℃以上の重量減少が14.7重量%、XRD分析により層間距離が10.3Åであった。
【0042】
次に、図4に示すように、剥離ゾル状のチタン酸顔料を乾燥させる(S100)。ここで、乾燥としては凍結乾燥が望ましく、凍結乾燥は、溶媒を含む物質を凍結させた状態で圧力を減じることにより、その物質に含まれる溶媒(主に水)が、「液体」の状態を経ることなく「固体」から一気に「気体」へ変化する「昇華」という現象を利用して、凍結状態の物質から減圧下に溶媒を取り除く方法であり、溶媒中の物質の分散状態をほぼ維持したまま、溶媒のみを除去することができる。また、減圧下で行うことから、真空凍結乾燥ともいわれる。本実施の形態で用いられる真空凍結乾燥の条件としては、上記剥離ゾルの濃度と溶媒に応じて適宜選択されるが、例えば、−70℃から0℃、好ましくは−60℃から−5℃、より好ましくは−10℃から−5℃(氷温)で、真空度が2〜5mmHg(2.7〜6.7hPa(N/m2))であることが好ましい。真空凍結乾燥器としては、例えば、「TFD−550−8SP」(株式会社 宝製作所 製)を用いることができる。
【0043】
上記層間剥離および凍結乾燥により、剥離ゾル中の溶媒が除去され、1枚約1nmのチタン酸が10〜100層積層した鱗片状チタン酸顔料粉末が得られる。なお、剥離ゾルを生成させるためのアミン類の量を適宜選択することによって、層間剥離の度合いを調整することができ、10〜100層チタン酸が積層した鱗片状チタン酸顔料を得ることもできる。
【0044】
上述の製造方法により得られた鱗片状チタン酸顔料粉末に、30〜35重量%の高濃度の過酸化水素水を作用させて、チタン酸顔料粉末を黄色化させ黄色顔料粉末を得る(S110)。ここで、高濃度の過酸化水素水を用いることにより、チタン酸顔料を黄色化させるための過酸化水素水総量を少なくすることができ、後の乾燥工程を短縮化することができる。このあとの乾燥工程は、通常の常温常圧乾燥(自然乾燥)、加熱乾燥、凍結乾燥のいずれを用いてもよい。
【0045】
チタン酸顔料粉末に過酸化水素水を作用させる方法としては、過酸化水素水を、例えばエアレススプレー、エアスプレーによってチタン酸顔料粉末に噴霧する方法が望ましい。なお、過酸化水素の処理量は、チタン酸顔料粉末の所望の色味や、チタン酸顔料粉末のアスペクト比に基づく顔料表面積に応じて適宜選択するのが望ましいが、例えば、一定体積あたりのチタン酸顔料粉末量とそのチタン酸顔料粉末のアスペクト比に基づいて、30重量%過酸化水素水の添加量を算出し、噴霧してもよい。
【0046】
本実施の形態における黄色チタン酸顔料粉末のマンセル表色系でのマンセル値は5Y8/8から5Y10/14である。このマンセル値の範囲になるように30重量%の過酸化水素水の添加量を適宜算出してチタン酸顔料粉末に噴霧することが望ましい。
【0047】
ここで、マンセル表色系とは、色を表す3属性、色立方体に基づく色の数値表現の一種であり、色票は、円筒座標を用いて配列し、明度Vを縦軸、色相Hを円周方向に、彩度Cを半径方向に配列してなり、この色票を空間的に配列したものを色立方体という。色相H(Hue)は最初の2桁で示され、1桁目は0〜10からなり2桁目のY(黄),YR(黄赤),R(赤)などの色相からの隔たり量を表す。次に明度V(Vlue)を0(完全暗黒)から10(完全純白)の範囲の数字で表し、最後に彩度C(Chroma)を0(無彩色)から始め鮮やかな色になるにしたがって数字が大きくなるように表す。なお、明度と彩度の数字の間は判別のために「/」(スラッシュ)が入っている。
【0048】
なお、マンセル表色系は、JIS Z 8721(1944)に基づき、測定される。
【0049】
また、以下に、黄色酸化チタン被覆顔料粉末の製造方法の一例を、図5を用いて説明する。
【0050】
酸化チタンにより表面被覆された被覆顔料粉末に対して、上述同様に、30重量%〜35重量%の高濃度の過酸化水素水を、例えばエアレススプレー、エアスプレーによって被覆顔料粉末に噴霧して、黄色化させる(S120)。なお、過酸化水素の処理量は、被覆顔料粉末の所望の色味や、被覆顔料粉末のアスペクト比に基づく顔料表面積に応じて適宜選択するのが望ましいが、例えば、一定体積あたりの被覆顔料粉末量とその被覆顔料粉末のアスペクト比に基づいて、30重量%過酸化水素水の添加量を算出し、噴霧することが好ましい。なお、後に加熱乾燥等を行う場合には、被覆顔料粉末を過酸化水素水に浸漬してもよい。
【0051】
本実施の形態における黄色酸化チタン顔料粉末のマンセル表色系でのマンセル値は5Y8/2から5Y9/5である。このマンセル値の範囲になるように30重量%の過酸化水素水の添加量を適宜算出してチタン酸顔料粉末に噴霧することが望ましい。
【0052】
[黒真珠色塗膜]
本実施の形態の黄色顔料は、粉末状無機系顔料であって、上述の黄色顔料の製造方法により製造された顔料であり、マンセル表色系でマンセル値が5Y8/2から5Y10/14であって、酸化チタン化合物顔料酸化チタン化合物顔料粉末または酸化チタン化合物により基材表面が被覆された被覆顔料粉末を過酸化水素処理することにより得られる無機系の黄色顔料である。ここで、酸化チタン化合物は、上述同様に化合物から選択されたものである。上記黄色顔料は、より鮮明な黄色を発色する黄色顔料粉末である。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の黄色顔料の製造方法とその製造方法により得られた黄色顔料について、実施例を用いて説明する。
【0054】
[実施例1]
合成例1で得られた薄片状チタン酸分散液を、真空凍結乾燥器「TFD−550−8SP」(株式会社 宝製作所 製)を用い、−10℃から−5℃(氷温)で、真空度が2〜5mmHg(2.7〜6.7hPa(N/m2))で凍結乾燥を行った。凍結乾燥により粉末化した薄片状チタン酸顔料粉末は、厚さT1が50nmでアスペクト比400であった。この薄片状チタン酸顔料粉末を0.2g秤量し、これに対して、30重量%の過酸化水素水を過剰量の1mL滴下し、顔料粉末を黄色化させた。得られた黄色顔料粉末のマンセル値を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
厚さT2が400nmでアスペクト比50のルチル型二酸化チタン被覆マイカ顔料粉末を0.2g秤量し、これに対して、30重量%の過酸化水素水を過剰量の1mL滴下し、顔料粉末を黄色化させた。得られた黄色顔料粉末のマンセル値を表1に示す。
【0056】
[参考例]
本参考例では、実施例1の真空凍結乾燥の代わりに、塩酸凝集法を用い、合成例1で得られた薄片状チタン酸分散液に塩酸を添加して顔料を凝集させて、溶媒と凝集顔料とを分別し、洗浄したのち乾燥させて、凝集チタン酸顔料粉末を得た。この凝集チタン酸顔料粉末は、厚さT1が15μmでアスペクト比1であった。この凝集チタン酸顔料粉末を0.2g秤量し、これに対して、30重量%の過酸化水素水を過剰量の1mL滴下し、顔料粉末を黄色化させた。得られた黄色顔料粉末のマンセル値を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1より、本発明の黄色顔料の製造方法により得られた黄色顔料粉末は、無機系顔料でありながら、従来のアゾ系黄であるパーマネントイエローと同等以上の鮮明な黄色を発色することがわかる。また、例えば、一般的な無機黄色顔料の「ダンピロキサイドイエロー」のマイセル値は8.52Y8.9/9.0であり、このことから、一般的な無機顔料に比べ、本発明の黄色顔料の製造方法により得られた黄色顔料粉末は、極めて鮮明な黄色を発現していることがわかる。なお、表2により、チタン酸顔料粉末は、塩酸凝集よりも凍結乾燥により得る方が望ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の黄色顔料の製造方法および黄色顔料は、粉末状の黄色顔料を用いる用途であれば、いかなる用途にも有効であるが、例えば車両用塗膜、家電製品用塗膜、建築用外装塗膜の形成に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の黄色顔料の製造方法において過酸化水素を作用させるチタン酸顔料の一例を説明する図である。
【図2】本発明の黄色顔料の製造方法において過酸化水素を作用させる酸化チタン被覆顔料の一例を説明する図である。
【図3】本発明の黄色顔料の製造方法に用いるチタン酸顔料の製造方法の一例を説明する図である。
【図4】本実施の形態の黄色チタン酸顔料粉末の製造工程を説明するフロー図である。
【図5】本実施の形態の黄色酸化チタン被覆顔料粉末の製造工程を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0062】
10 チタン酸顔料、20 酸化チタン被覆顔料、22 酸化チタン膜、24 鱗片状基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン化合物顔料粉末または酸化チタン化合物により基材表面が被覆された被覆顔料粉末に過酸化水素水を作用させ、黄色顔料を得ることを特徴とする黄色顔料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の黄色顔料の製造方法において、
前記酸化チタン化合物は、酸化チタンまたはチタン酸からなる群から選択された一種であることを特徴とする黄色顔料の製造方法。
【請求項3】
ゾル状のチタン酸顔料を乾燥させて鱗片状のチタン酸顔料粉末を生成させる乾燥工程と、
前記鱗片状のチタン酸顔料粉末に過酸化水素水を作用させ、黄色顔料を得ることを特徴とする黄色顔料の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の黄色顔料の製造方法において、
前記乾燥工程は、ゾル状のチタン酸顔料を凍結乾燥させる凍結乾燥工程であることを特徴とする黄色顔料の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の黄色顔料の製造方法において、
得られる黄色顔料は、マンセル表色系でマンセル値が5Y8/2から5Y10/14の範囲であることを特徴とする黄色顔料の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の黄色顔料の製造方法により製造された黄色顔料。
【請求項7】
マンセル表色系でマンセル値が5Y8/2から5Y10/14であって、酸化チタン化合物顔料粉末または酸化チタン化合物により基材表面が被覆された被覆顔料粉末を過酸化水素処理することにより得られる無機の黄色顔料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−265366(P2006−265366A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85032(P2005−85032)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】