説明

黒色チタン酸窒化物粉末とその製造方法および用途

【課題】高い黒色度と遮光性を有すると共に比表面積が大きく、塗液化したときに長期分散性に優れており、顔料の沈降を生じ難く、ブラックマトリックス材料として好適な黒色チタン酸窒化物粉末とその製造方法等を提供する。
【解決手段】酸化チタン粉末を非酸化性雰囲気下で高温のアンモニアガスと反応させて、酸素および窒素が所定濃度になるように還元処理し、生成した粉末を湿式粉砕して水分散液にし、該水分散液のpHを好ましくは5.5以下に調整した後に乾燥することによって、酸素3〜8%、窒素17〜25%、残りがチタンであり、かつ比表面積25m2/g以上であって、その水分散液のpHが6.0以下である黒色チタン酸窒化物粉末を製造する方法およびその黒色粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い黒色度と遮光性を有すると共に比表面積の大きい黒色チタン酸窒化物粉末に関する。本発明の黒色チタン酸窒化物粉末は黒色顔料として好適であり、塗液化したときに長期分散性に優れており、顔料の沈降を生じ難く、ブラックマトリックス材料として優れた特性を有する。
【背景技術】
【0002】
黒色顔料粉末として、カーボンブラック、酸化鉄、低次酸化チタン、酸窒化チタン粉末などが知られている。カーボンブラックは黒色度、着色度とも優れており高い導電性を有しているが、嵩が大きいため、取り扱いが難しく、また樹脂とのなじみが良くない。また極微量ではあるが原料起因の発ガン性物質、3,4−ベンズピレンを伴うため、その安全性が問題となっている。
【0003】
酸化鉄は磁性による凝集があり、分散性に劣る。耐熱性も低く、大気中150℃付近で茶色のγ-Fe2O3に酸化され、黒色度が低下する。低次酸化チタンは二酸化チタン粉末をチタン粉末または水素ガスによって1000℃以上の温度で還元して得られる粉末であり、Ti3O5、Ti2O3など多種の構造を持つ低次酸化チタン混合物である。低次酸化チタンは高温での還元反応を行うため焼結して粒子が大きくなり、顔料用としては不適な粗大粒子(1.0μm以上)になってしまう。
【0004】
一方、特許1758344号公報にはチタンブラックと称される酸窒化チタン(チタン酸窒化物)が記載されている。これは二酸化チタンをアンモニアによって還元して得られる化合物であり、半導電性を示す青みを帯びた黒色を示す黒色顔料である。この酸窒化チタンは有害物質を含まないため、飲食品用プラスチックス、化粧品などの原料として最適である。また、近年、黒色顔料を樹脂に分散させ、フォトリソ法などでパターニングすることによって液晶カラーフィルターのブラックマトリックス(樹脂BMと云う)として応用する例が多い。この酸窒化チタンは高い隠蔽性や高絶縁性などのブラックマトリックス用黒色顔料としての優れた性質を有しており、今後さらなる応用が期待される。
【0005】
また、特開2006−182627号公報(特許文献2)には、高い比表面積を有するチタン酸窒化物が記載されている。
【特許文献1】特許1758344号公報(特公平3−51645号公報)
【特許文献2】特開2006−182627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のアンモニア還元による黒色酸窒化チタンの製造方法では、水素ガスによる還元ほどではないものの高温での窒化還元反応によって酸化チタンの焼結反応が生じ、微粒子化が困難である。また、酸窒化チタン単体では比重が4.3g/mL程度であり、ブラックマトリックス用レジスト液のように塗液化した場合、長期保管すると顔料分の沈降が発生し、液中の上部と下部との濃度差が顕著になる問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1の実施例8〜9には、比表面積の大きな酸窒化チタン粉末(比表面積39〜48m2/g)が記載されているが、これは比表面積の大きな二酸化チタン粉末(TCA微粒子:比表面積150m2/g)を原料としており、しかも生成される酸窒化チタン粉末の比表面積は原料の二酸化チタン粉末よりも大幅に低下している。また、原料酸化チタンの黒色化反応の際に、未反応酸化チタンに起因する酸素分が残存するため、塗膜にしたときの遮光性能が劣り、樹脂ブラックマトリックスとしての性能は十分ではない。さらに原料の酸化チタン粉末の還元反応時間を長くし、強制的に還元を進めようとすると、焼結によって比表面積が急激に低下し、高還元度と高比表面積を両立させることは困難であった。
【0008】
また、特許文献2に記載されているチタン酸窒化物はシリカが不純物として含まれており、硬度が著しく硬くなるため粉砕時の機器の磨耗、不純物混入が避けられず、また原料の前処理が非常に複雑であるためコスト高になるなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、二酸化チタン粉末の還元処理時に、酸化チタンの割合を低下させた(酸素濃度を7%以下に抑制した)粉末について、これを湿式粉砕して水分散液(水スラリー)にし、この水分散液のpHを酸性に調整した乾燥すれば、得られる粉末の比表面積が著しく向上することを見出した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づき従来の上記問題を解決したものであり、高い比表面積を有するチタン酸窒化物粉末と、これを低コストで非常に簡便に製造する方法を提供する。
【0011】
本発明は以下の構成からなるチタン酸窒化物粉末とその製造方法に関する。
〔1〕酸素量3〜8%、窒素量17〜25%、残りがチタンであり、比表面積25m2/g以上であって、その水分散液のpHが6.0以下であることを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末。
〔2〕酸化チタン粉末の還元処理によって製造され、比表面積10m2/g未満の原料酸化チタン粉末に対して3倍以上の比表面積を有し、比表面積10m2/g以上の原料酸化チタン粉末に対して1.5倍以上の比表面積を有する上記[1]に記載する黒色チタン酸窒化物粉末。
〔3〕請求項1または請求項2のチタン酸窒化物粉末からなる黒色顔料。
〔4〕上記[3]の黒色顔料を含有し、顔料濃度80%においてOD値4.4以上であることを特徴とする黒色インキ。
〔5〕製造直後のL値に対して3週間経過したときのL値の差が1.5以下である上記[4]に記載する黒色インキ。
〔6〕酸化チタン粉末を非酸化性雰囲気下で高温のアンモニアガスと反応させ、酸素量3〜8%、窒素量17〜25%、残りがチタンであって比表面積25m2/g以上になるように還元処理し、生成した黒色粉末を湿式粉砕して水分散液にし、該水分散液のpHを6.0以下に調整した後に乾燥することを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。
〔7〕酸化チタン粉末を還元処理して得た黒色粉末を湿式粉砕して水分散液にする際に、該湿式粉砕時または該水分散液に、蟻酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸、ホウ酸、過酸化水素、オゾンから選ばれる一種または二種以上の酸化剤を添加して、該水分散液のpHを6.0以下に調整する上記[6]に記載する黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。
〔8〕酸化チタン粉末を還元処理して得た黒色粉末を湿式粉砕して固体濃度20〜60%の水分散液にし、該水分散液のpHを5.5以下に調整する上記[6]または上記[7]に記載する黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチタン酸窒化物粉末は、酸化チタン割合が低い(酸素含有量が少なく)ので、塗液化したときのOD値が高く、ブラックマトリックスとして必要な遮光性能を有することができる。また、比表面積が大きく比重が小さいので、塗液中の粉体が沈降し難く、黒色インクを調製したときに黒色度(L値)が長期間変化し難く、安定である。
【0013】
本発明の製造方法は、原料の二酸化チタン粉末を還元処理した後に湿式粉砕して水分散液とし、該水分散液のpHを6.0以下、好ましくはpH5.5以下に調整して乾燥させる方法であるので、従来の製造プロセスの大幅な改変を必要とせず、容易に実施することができ、低コストで高い比表面積を有するチタン酸窒化物粉末を非常に簡便に得ることができる。また、使用する原料も高価な微粒子酸化チタンではなく、汎用で安価な顔料用酸化チタンを使用することができる。
【0014】
また、本発明の製造方法において、湿式粉砕時に酸化剤を添加すると、さらに微細になる粉砕効果が得られるが、同時に粉末表面が酸性になり、塩基性分散剤との親和性が向上し、粉体の比表面積が高くなるにもかかわらず、液中での粉体の分散安定性が向上する効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。以下の説明において、単位固有の場合を除き、%は質量%である。
〔チタン酸窒化物粉末〕
本発明の黒色粉末は、酸素量3〜8%、窒素量17〜25%、残りがチタンであり、比表面積25m2/g以上であって、その水分散液のpHが6.0以下であることを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末である。
【0016】
本発明の黒色チタン酸窒化物粉末は、例えば、酸化チタン粉末の還元処理によって製造され、還元処理後に湿式粉砕して得た粉末の水分散液のpHを6.0以下、好ましくはpH5.5以下に調整し、これを乾燥してなる粉末であり、乾燥して得た黒色粉末を水に分散させたときに、該水分散液のpHが6.0以下を示す黒色粉末である。
【0017】
また、本発明の黒色チタン酸窒化物粉末は高い比表面積を有し、具体的には25m2/g以上の比表面積を有する。また、本発明の黒色チタン酸窒化物粉末は原料の二酸化チタン粉末よりも格段に高い比表面積を有する。具体的には、比表面積10m2/g未満の原料酸化チタン粉末に対して3倍以上の比表面積を有し、比表面積10m2/g以上の原料酸化チタン粉末に対して1.5倍以上の比表面積を有する。
【0018】
例えば、実施例1〜5に示すように、比表面積8m2/gの二酸化チタン粉末を原料として製造されるチタン酸窒化物の比表面積は25〜72m2/gであり、原料に対して約3倍〜約10倍の比表面積を有する。また、実施例6〜8に示すように、比表面積30〜50m2/gの二酸化チタン粉末を原料として製造されるチタン酸窒化物の比表面積は55〜100m2/gであり、原料に対して約1.5倍〜2.0倍の比表面積を有する。
【0019】
本発明のチタン酸窒化物粉末は、焼結による凝集が少ないので焼結後の一次粒子径が小さく、黒色インキを製造したときに黒色顔料が均一に分散し、高いOD値を有することができる。具体的には、顔料濃度80%の黒色インキにおいて、OD値4.4以上である。
【0020】
また、本発明のチタン酸窒化物からなる黒色粉末を用いた黒色インキは、塗液が分離せず粉末が長期間安定に分散した状態を保つことができる。例えば、実施例1〜8に示すように、顔料濃度80%の黒色インキについて、これを10万倍に希釈したインキ液の透過光のL値を測定すると、製造直後のL値(L1)に対して3週間経過したときのL値(L2)の差〔L1−L2〕は何れも1.5以下であり、黒色度(L値)の変化が極めて小さく安定である。
【0021】
〔製造方法〕
本発明の製造方法は、酸化チタン粉末を非酸化性雰囲気下で高温のアンモニアガスと反応させ、酸素3〜8%、窒素17〜25%、残りがチタンになるように還元処理し、生成した粉末を湿式粉砕して水分散液にし、該水分散液のpHを酸性に調整した後に乾燥することを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法である。
【0022】
原料の酸化チタン粉末は一般的な顔料用酸化チタンを使用しても良く、また比表面積50m2/g以上の微粒子酸化チタンを使用しても良い。微粒子酸化チタンを使用した場合はより高い比表面積を有する黒色複合顔料を得ることができるが原料が高価である。一方、本発明の製造方法によれば、低コストの顔料用酸化チタンを使用した場合でも、高い比表面積を有するチタン酸窒化物粉末を得ることができる。
【0023】
原料の酸化チタン粉末を、非酸化性雰囲気下、高温のアンモニアガスと反応させ、酸素3〜8%、窒素17〜25%、残りがチタンになるように還元処理し、生成した粉末を湿式粉砕する。酸素含有量および窒素含有量が上記範囲になるように還元反応の雰囲気、反応温度、反応時間を調整すればよい。
【0024】
還元反応は、非酸化性雰囲気下、例えば、窒素ガス雰囲気下、700℃〜1200℃で、アンモニアガスと接触させて行う。還元温度が上記範囲より低いと、還元反応が不十分になる。一方、還元温度が上記範囲より高いと焼結反応が進み一次粒子径が著しく増大する。
【0025】
還元反応によって生成した粉末を湿式粉砕して比表面積25m2/g以上の黒色粉末が分散した水分散液にし、該水分散液のpHを6.0以下、好ましくはpH5.5以下に調整する。具体的には、湿式粉砕時に酸化剤を添加し、あるいは水分散液に酸化剤を添加して水分散液のpHを調整する。
【0026】
なお、湿式粉砕時に酸化剤を添加すると、粉砕効果が向上すると共に、粉末表面が酸性になり、塩基性分散剤との親和性が向上し、粉体の比表面積が高くなるにもかかわらず、液中での粉体の分散安定性が向上する効果が得られる。
【0027】
酸化剤としては、蟻酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸、ホウ酸、過酸化水素、オゾンから選ばれる一種または二種以上を用いることができる。
【0028】
上記水分散液(水スラリー)は固体濃度20〜60%に調整するとよい。20%を下回ると乾燥処理に時間がかかり粉末の最凝集が著しくなる。60%を越えるとスラリー粘度上昇により粉砕処理が不十分となり、目的とする微粒子化が困難となる。
【0029】
水分散液のpHを上記範囲に調整した後に、固液分離を実施し、あるいはそのまま乾燥することによって、本発明の黒色チタン酸窒化物粉末を得ることができる。乾燥は通常の雰囲気で水分散液の水分がなくなるまで行えばよい。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、粉体の比表面積、比重、L値、OD値は下記方法によって測定した。
〔比表面積〕比表面積測定装置(柴田科学社製SA-1100)を用いて測定した。
〔L値〕チタン酸窒化物粉末のL値は、L、a、b系色度に基づき、カラーコンピューター(日本電色社製品:SE-2000)を用い、粉末の反射光L値を測定した。黒色インキのL値はPGM-Acにて10万倍に希釈したインキ液の透過光のL値をカラーコンピューター(日本電色社製品:SE-2000)で測定した。
〔OD値〕インキのOD値は、OD(光学濃度)=−log(透過光/入射光)によって定義され、通常、膜厚1μm当たりで評価される。マクベス社の測定装置(D200)を用いて測定した。
【0031】
〔実施例1〕
比表面積8m2/gの酸化チタン粉末を石英製反応容器に充填し、窒素ガス雰囲気で950℃まで昇温した後、アンモニアガスを所定時間流して還元処理を行い、窒化還元された黒色粉末を得た。この粉末の組成を表1に示した。この粉末をサンドミル(メディア:ガラス)に入れて湿式粉砕処理し、固体濃度30%の水スラリーを得た。このときのpHは10.0であった。この水スラリーに過酸化水素水をpH5.0になるまで添加し、そのまま乾燥機に入れて、120℃で48時間乾燥した。乾燥して得たフレークをミキサーで解砕処理してチタンブラック粉末を得た。得られたチタンブラックのL値は9.2であり、比表面積は58m2/gであった。また、この黒色粉末を10%濃度の水分散液にしたときのpHは5.5であった。
この粉末を、循環式横型ビーズミル(メディア:φ0.3mmジルコニア)を使用し、アミン系分散剤を添加して、PGM−Ac(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶剤中での分散処理を行った後、アクリル樹脂(分子量15000)を添加し、顔料:樹脂=8:2の黒色インキを作製した。
また、この黒色インキをスピンコートによりガラス基板に塗布し、OD値を測定したところ5.8であり、高い光学濃度を示した。さらに、この黒色インキをPGM-Acにて10万倍に希釈して透過光のL値をカラーコンピューター(日本電色社製品:SE-2000)によって測定したところ、製造直後のL値は2.51であり、一週間後、三週間後の沈降性を確認したところ、L値はそれぞれ25.1、25.0であり、製造直後のL値(L1)に対して3週間経過したときのL値(L2)の差〔L1−L2〕は0.1であり、顔料の沈降は殆ど認められなかった。
【0032】
〔実施例2〜8〕
実施例1と同様な方法で黒色粉末を製造し、得られた黒色粉末を分散処理して黒色インキを調製した。この黒色粉末の製造条件、粉末物性、黒色インキの物性を表1に示す。この黒色インキについて、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。表1に示すように、黒色インキのOD値は4.4〜5.8であり、比較例1、3より格段に高い。また、製造直後のL値に対する3週間経過したときのL値の差は何れも0〜0.4であり、L値の変動が格段に少ない。
【0033】
〔比較例1〕
比表面積8m2/gの酸化チタン粉末を用い、実施例1と同様にアンモニアによって還元処理してチタンブラックを製造した。この粉末の組成を表2に示した。この粉末をサンドミル(メディア:ガラス)に入れて湿式粉砕処理し、固体濃度30%の水スラリーを得た。このときのpHは10.0であった。この水スラリーに過酸化水素を添加しない以外は実施例1と同様にして乾燥し、フレークにし、このフレークをミキサーで解砕処理しチタンブラック粉末を得た。このチタンブラック粉末のL値、組成、比表面積、10%濃度水分散液のpHを表2に示した。
このチタンブラック粉末を用い、実施例1と同様にして顔料:樹脂=8:2の黒色インキを作製した。作製したインキの物性値を表2に示す。この黒色インキについて、実施例1と同様にしてOD値を測定し、沈降性試験を行った。この結果を表2に示した。表2に示すように、黒色インキ作製直後のL値は25.5であったが、一週間経過後のL値は30.4に低下し、三週間後のL値はさらに34.8に低下しており、製造直後のL値に対する3週間経過したときのL値の差は9.3であり、L値の変動が大きい。
【0034】
〔比較例2〜3〕
表2に示す条件でチタンブラック粉末を製造した。この粉末を用い、実施例1と同様にして顔料:樹脂=8:2の黒色インキを製造した。この評価結果を表2に示す。表2に示すように、比較例2〜3の黒色インキのOD値は2.5〜4.3であり、実施例1〜8よりも大幅に低い。また、L値の変化も実施例1〜8より大きく、液中の粉体が沈降している。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素量3〜8%、窒素量17〜25%、残りがチタンであり、比表面積25m2/g以上であって、その水分散液のpHが6.0以下であることを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末。
【請求項2】
酸化チタン粉末の還元処理によって製造され、比表面積10m2/g未満の原料酸化チタン粉末に対して3倍以上の比表面積を有し、比表面積10m2/g以上の原料酸化チタン粉末に対して1.5倍以上の比表面積を有する請求項1に記載する黒色チタン酸窒化物粉末。
【請求項3】
請求項1または請求項2のチタン酸窒化物粉末からなる黒色顔料。
【請求項4】
請求項3の黒色顔料を含有し、顔料濃度80%においてOD値4.4以上であることを特徴とする黒色インキ。
【請求項5】
製造直後のL値に対して3週間経過したときのL値の差が1.5以下である請求項4に記載する黒色インキ。
【請求項6】
酸化チタン粉末を非酸化性雰囲気下で高温のアンモニアガスと反応させ、酸素量3〜8%、窒素量17〜25%、残りがチタンであって比表面積25m2/g以上になるように還元処理し、生成した黒色粉末を湿式粉砕して水分散液にし、該水分散液のpHを6.0以下に調整した後に乾燥することを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。
【請求項7】
酸化チタン粉末を還元処理して得た黒色粉末を湿式粉砕して水分散液にする際に、該湿式粉砕時または該水分散液に、蟻酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸、ホウ酸、過酸化水素、オゾンから選ばれる一種または二種以上の酸化剤を添加して、該水分散液のpHを6.0以下に調整する請求項6に記載する黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。
【請求項8】
酸化チタン粉末を還元処理して得た黒色粉末を湿式粉砕して固体濃度20〜60%の水分散液にし、該水分散液のpHを5.5以下に調整する請求項6または請求項7に記載する黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。

【公開番号】特開2010−30842(P2010−30842A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195547(P2008−195547)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】