説明

黒色腫の早期検出のための方法及び試薬

【課題】黒色腫の同定方法を提供する。
【解決手段】黒色腫を示す特定の遺伝子の発現差異がカットオフ値を越えるか否かを測定することによる、生検組織中の早期悪性メラニン細胞を同定するためのアッセイを提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
皮膚悪性黒色腫は重大な医療問題であり、米国で2008年に、人々の間で少なくとも62,000の新たな浸潤性黒色腫症例が診断されると予想され、そのうち8,200人がこの疾病で死亡すると思われる。黒色腫の発生率は、任意の他の悪性腫瘍の発生率と比較してより急速に上昇し続けている。また、黒色腫は、若い成人に最もよく見られる癌の1つであり、それ故、生命を失う平均年齢の観点から2番目の癌タイプである。
【0002】
黒色腫及びその転移には所定のタンパク質が関係していることが示されている。これらのタンパク質又はそれらの活性は、転移を同定する免疫組織化学的検査に使用されており、L1CAMを含む(Thies et al.(2002)、Fogel et al.(2003))、及びS−100(Diego et al.(2003))。生物学的サンプル中の数千の遺伝子の発現を同時に監視するために、高密度マイクロアレイが適用されている。研究により、良性病変及び悪性病変で異なる発現を示した遺伝子、並びに予測値であり得る遺伝子を同定するに至った。Luo et al.(2001)、及びWang et al.(2004)。悪性黒色腫の遺伝子発現プロファイリングは、8,150のmRNA転写物の発現を監視するプローブを含むマイクロアレイにより行われた。Bittner et al.(2000)。これらの研究者は、攻撃的な腫瘍挙動に関連し得る数個の遺伝子を同定した。最近の業績では、黒色腫と正常なメラニン細胞の細胞ラインとの遺伝子発現プロファイルの比較により、黒色腫で異なる発現を示した遺伝子、及び調節された経路を同定するに至った。Takeuchi et al.(2004)。加えて、前立腺分化因子GDF15、接着分子L1CAM、及びキネシン様5、オステオポンチン、カテプシンB、カドヘリン3及びプレセニリン2を、黒色腫検出の有望なマーカーとして同定した(Talantov et al.(2005)、Wang et al.(2007))。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、組織サンプルを獲得し、SILV(me20m)(SEQ.ID NO:1〜3)、及びチロシナーゼ(tyorsinase)(TYR)(SEQ.ID NO:4)に対応するmRNAをコードする遺伝子のサンプル中の発現レベルをアッセイ及び測定することによる、黒色腫の同定方法を提供する。試験したサンプル中のメラニン細胞の存在を確認する正規化(mormalization)対照として、TYRが使用された。本発明は更に、組織サンプルを獲得し、それぞれプライマー/プローブのセットSEQ.ID NO:5〜7及び8〜10により認識される、GDF15又はL1CAMの一方又は両方に対応するmRNAをコードする遺伝子のサンプル中の発現レベルをアッセイ及び測定し、所定のカットオフを越える遺伝子発現は、黒色腫の存在を示す、ことによる黒色腫の同定方法を提供する。
【0004】
本発明はまた、組織サンプルを獲得し、SILVをコードする遺伝子のサンプル中の発現レベルをアッセイ及び測定し、所定のカットオフを越える遺伝子発現レベルは、サンプル中の黒色腫の存在を示す、ことによる悪性メラニン細胞を良性メラニン細胞から区別する方法を提供する。
【0005】
本発明はまた、組織サンプルを獲得し、プライマー/プローブセットSEQ/ID NO.:5〜7及び8〜10により認識される、GDF15及びL1CAMの一方(oen)又は両方をコードする遺伝子のサンプル中の発現レベルをアッセイ及び測定することによる、悪性メラニン細胞を良性メラニン細胞から区別する方法を提供する。所定のカットオフを越える遺伝子発現レベルは、サンプル中の黒色腫の存在を示す。
【0006】
本発明は更に、患者から組織サンプルを獲得し、SILVをコードする遺伝子のサンプル中の発現レベルをアッセイ及び測定し、所定のカットオフレベルを越える遺伝子発現レベルは、サンプル中の黒色腫の存在を示す、ことによる、患者処置プロトコールを決定する方法を提供する。
【0007】
本発明は更に、患者から組織サンプルを獲得し、プライマー/プローブセットSEQ.ID NOS.:5〜7及び8〜10により認識されるGDF15及びL1CAMの一方又は両方をコードする遺伝子のサンプル中の発現レベルをアッセイ及び測定し、所定のカットオフレベルを越える遺伝子発現レベルは、サンプル中の黒色腫の存在を示す、ことによる、患者処置プロトコールを決定する方法を提供する。
【0008】
最終的なマーカーはSILVであり、本明細書において、任意の変異体、対立遺伝子等をコードする遺伝子として定義される。SILVは、MELANOCYTE PROTEIN 17、PMEL17、PREMELANOSOMAL PROTEIN、PMEL、GP100、ME20、SI、SIL、D12S53Eとしても記載され、受入番号NM_006928.3で表される。本発明は更に、核酸増幅及び検出試薬を含む、細胞サンプル中の黒色腫の存在を測定するアッセイを行うためのキットを提供する。
【0009】
本発明は更に、本発明の方法で得られたPCR産物を増幅及び検出するためのプライマー/プローブセットを提供する。これらのセットは、以下を含む。
SEQ.ID NO:1、SILV、フォワードプライマー、AGCTTATCATGCCTGGTCAA
SEQ.ID NO:2、SILV、リバースプライマー、GGGTACGGAGAAGTCTTGCT
SEQ.ID NO:3、SILV、プローブ、FAM−AGGTTCCGCTATCGTGGGCAT−BHQ1
SEQ.ID NO:4、ABI AoD、Hs00165976_m1
SEQ.ID NO:5、GDF15、フォワードプライマー、CGCCAGAAGTGCGGCT
SEQ.ID NO:6、GDF15、リバースプライマー、CGGCCCGAGAGATACGC
SEQ.ID NO:7、GDF15、MGB Pobe、FAM−ATCCGGCGGCCAC
SEQ.ID NO:8、L1CAM、フォワードプライマー、ACTATGGCCTTGTCTGGGATCTC
SEQ.ID NO:9、L1CAM、リバースプライマー、AGATATGGAACCTGAAGTTGCACTG
SEQ.ID NO:10、L1CAM、MGBプローブ、FAM−CACCATCTCAGCCACAGC
【0010】
本発明は更に、本発明の方法に使用されるPCR方法で得られるアンプリコンを提供する。これらのアンプリコンは、以下を含む。
SEQ.ID NO:11、GDF15 PCRアンプリコン:CGCCAGAAGTGCGGCTGGGATCCGGCGGCCACCTGCACCTGCGTATCTCTCGGGCCG
SEQ.ID NO:12 L1CAM PCRアンプリコン:ACTATGGCCTTGTCTGGGATCTCAGATTTTGGCAACATCTCAGCCACAGCGGGTGAAAACTACAGTGTCGTCTCCTGGGTCCCCAAGGA
SEQ.ID NO:13 SILV PCRアンプリコン:AGCTTATCATGCCTGGTCAAGAAGCAGGCCTTGGGCAGGTTCCGCTGATCGTGGGCATCTTGCTGGTGTTGATGGCTGTGGTCCTTGCATTATGAAGCAAGACTTCTCCGTACCCCTCTGATATATAGGCGCAGACT
SEQ.ID NO:14 TYR PCRアンプリコン:TCTGCTGGTATTTTTCTGTAAAGACCATTTGCAAAATTGTAACCTAATACAAAGTGTAGCCTTCTTCCAA
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】良性と悪性の皮膚病変の区別におけるSILV、GDF15及びL1CAMのパフォーマンスを示すグラフ。
【図2】明白な(unequivocal)黒色腫と良性母斑の区別におけるSILV、GDF15及びL1CAMの感度対特異性をプロットするグラフ。
【図3】黒色腫と非定型母斑の区別におけるSILVのパフォーマンスのグラフ。
【図4】明白な黒色腫と良性母斑の区別におけるSILVの感度対特異性をプロットするグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、黒色腫の定性的及び定量的同定、悪性メラニン細胞の良性メラニン細胞からの区別、不確かな病理学的特徴を有するメラニン細胞病変の診断、並びに黒色腫患者処置プロトコールの決定の方法を提供する。本発明は更に、患者予後、患者監視及び薬剤開発における補助を提供する。本方法は、黒色腫生検アッセイに関する最終マーカーとしてのSILV(me20m)の発現レベルのアッセイ及び測定に依存し、TYR正規化対照に対する所定のレベルの遺伝子発現が、アッセイしたサンプル中の悪性メラニン細胞の存在を示す。
【0013】
本発明は、パラフィン包埋(「FFPE」)組織を使用して、不確かな形態学的特徴を有する病変、又は曖昧な(equivocal)症例と称される疑わしい(suspicious)原発性メラニン細胞病変を含む、様々な皮膚病変の中から悪性黒色腫を診断するための、同定された遺伝子発現マーカーの有用性に焦点を当てる。この設定において、皮膚病理専門医の意見の間で相違が生じている。したがって、本発明の有用性は、RT−PCRに基づく遺伝子発現アッセイにて良性メラニン細胞皮膚病変を原発性黒色腫から区別する遺伝子発現マーカーを同定して、疑わしい病変にて黒色腫を診断することである。
【0014】
総RNAを47つの原発性黒色腫、48つの良性皮膚母斑から単離し、48つの非定型母斑及び50つの黒色腫を含む98つの非定型/疑わしい母斑(皮膚病理学者により指定)組織標本をRT−PCRを使用して分析した。黒色腫特異的な遺伝子、SILV、GDF15及びL1CAMの異なる遺伝子発現を、黒色腫、良性母斑及び非定型の/疑わしい皮膚サンプルに関して、一段階定量RT−PCRアッセイにより試験した。結果は、最終マーカーとしてのSILVの使用の、良性又は悪性メラニン細胞を含む臨床的に関連した組織サンプルを区別する能力を証明した。
【0015】
高密度cDNA及びオリゴヌクレオチドマイクロアレイにより、数千の遺伝子の発現の同時監視が可能となる。マイクロアレイ技術は、mRNAの存在量を定量的に測定し、遺伝子発現に基づいたマーカー発見のためのツールとして一般に認められている。癌研究の状況では、マイクロアレイ分析は、異なる癌タイプに関して、良性及び悪性病変で異なる発現を示した遺伝子、又は予測有意性を有する遺伝子を同定している。Luo et al.(2001)、Su et al.(2001)、Henshall et al.(2003)、及びWang et al.(2004)。最初の悪性黒色腫の遺伝子発現プロファイリングは、8,150のmDNA転写物(trabscript)用のプローブを含むマイクロアレイを使用し、攻撃的な腫瘍挙動に関連し得る遺伝子を同定した。Bittner et al.(2000)。彼らの研究で分析されたサンプルは、正常な又は良性のメラニン細胞を含む組織を有さなかったため、悪性黒色腫で異なる発現を示した遺伝子は同定されなかった。正常な皮膚と対比して、良性母斑中のメラニン細胞の含有量は、黒色腫中のものに近い。
【0016】
他の研究では、黒色腫又は良性母斑組織のいずれかに由来する2つのプールしたサンプルをcDNAアレイにハイブリダイズし、黒色腫由来又は母斑由来のサンプル中で優位に発現された遺伝子を見出した。Seykora et al.(2003)。他の研究者らは、黒色腫細胞ライン上で生成したSAGEライブラリーの差引きハイブリダイゼーション又は分析を使用して、黒色腫中の遺伝子発現を監視した。Hipfel et al.(2000)、及びWeeraratna(2004)。最近、少数の黒色腫と正常なメラニン細胞の細胞ラインとの遺伝子発現プロファイルの比較により、黒色腫で異なる発現を示した遺伝子、及び調節された経路を同定するに至った。Hoek et al.(2004)。これらの研究が黒色腫ゲノミクスの確かな基盤を提供する一方、黒色腫を良性組織から明確に区別できるマーカーは全く存在しない。チロシナーゼ、HMB−45、mart−a/Melanin−a及びMITF等の、現在使用されている数種のマーカーは、メラニン細胞腫瘍同定に関する予測値を有することが証明されていないPhsie etal.(2008)その結果、これらのマーカーは、限定された臨床用途を有することが見出されている。
【0017】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第20070154889号に開示されているように、PCRは黒色腫の転移を検出するのに十分な特異性及び感度を有することが示されている。本発明では、原発性皮膚生検からの、黒色腫の非黒色腫病変からの区別において改善された診断パフォーマンスを有する方法を提供する。本発明のアッセイは、疑わしい又は曖昧な病変から、明確な(clear-cut)又は明白な病変を診断するのに有用である。したがって、本発明は、早期組織サンプルの試験にて特定の有用性を見出すことができる。好ましくは、確率測定は、黒色腫を有する組織を良性メラニン細胞又は正常な組織と区別するであろう。
【0018】
本発明の方法は、FFPE組織サンプルから核酸を抽出する迅速技術と、原発性皮膚病変内の黒色腫を示す核酸断片を増幅及び検出する方法とを使用する。核酸断片は、マーカー遺伝子によりコードされたmRNAを、定性的及び定量的に測定する。組織サンプルは、穿孔、針、切除又は薄片生検に由来する皮膚病変を含む。本明細書で提供する方法は、原発性皮膚生検サンプル中の黒色腫検出を可能にし、それにより医師は、早期疾病のための適切な処置プロトコールを直ちに実行するか否かを決定することができる。本発明の方法では、アッセイを行うのに使用する組織を十分にサンプリングすることが重要である。これは、組織サンプルの適切な切除及び処理、並びにRNAの抽出を含む。組織サンプルを得た後、存在する任意の癌性細胞が検出されるよう組織サンプルを適切に処理することが重要である。
【0019】
本発明の一方法において、RNAは、FFPE組織サンプルブロックから単離される。例えばRoche製のHigh Pure RNA Paraffin Kit(Cat.#3270289)等、任意の好適な市販のパラフィンキットを使用することができる。好ましくは、FFPEサンプルは、包埋された腫瘍の寸法(sixe)に従って、以下のように切片とされる。≦2〜5mmを9×10μmの切片とし、≧6〜8mmを6×10μmの切片とする。切片を製造業者の指示書に従って脱パラフィン処理し、単離したRNAをリボヌクレアーゼフリーの水中に−80℃で保管し得る。
【0020】
遺伝子発現を測定するためのmRNAレベルの測定の場合、アッセイは、当技術分野で公知の任意の手段を用いることができ、PCR、ローリングサークル型増幅(Rolling Circle Amplification)(RCA)、リガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction)(LCR)、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA)、核酸配列ベース増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)(NASBA)及びその他等の方法を含む。関与する迅速分子診断は、最も好ましくはQRT−PCRを含む定量的PCR方法である。検出は、マイクロアレイ、遺伝子チップ及び蛍光を含む、当技術分野にて公知の任意の方法を用いることができる。
【0021】
典型的なPCRは、標的核酸種を選択的に増幅する多重増幅ステップ又はサイクルを含む。典型的なPCRは、3つの工程を含む。標的核酸を変性させる変性工程、PCRプライマー(フォワード及びバックワードプライマー)のセットが相補的なDNA鎖にアニールするアニーリング工程、並びに熱安定性DNAポリメラーゼがプライマーを伸長する伸長工程。この工程を多数回繰り返すことにより、DNA断片が増幅されて、標的DNA配列に対応するアンプリコンが生成される。典型的なPCRは、変性、アニーリング及び伸長の20回以上のサイクルを含む。多くの場合、アニーリング及び伸長の工程は、同時に行われ得、その場合、サイクルは2回の工程のみを含む。
【0022】
本発明の一実施形態において、RT−PCR増幅反応は、これらの各工程の長さが、分ではなく秒の範囲内にあり得る時間中、行われ得る。詳細には、1秒当たり少なくとも約5℃の熱勾配速度を生成可能な、RT−PCR増幅が30分間以下の、所定の新しいサーマルサイクラーが使用され得る。より好ましくは、増幅は25分間未満で行われる。このことを考慮に入れて、PCRサイクルの各工程に提供される以下の時間は、勾配時間を含まない。変性工程は、10秒間以下の時間、行われ得る。事実、いくつかのサーマルサイクラーは、「0秒」の設定を有し、これは変性工程の最適持続時間であり得る。即ち、これはサーマルサイクラーが変性温度に到達するのに十分である。アニーリング及び伸長の工程は、それぞれ10秒未満が最も好ましく、同一温度で行われる場合、アニーリング/伸長工程の組み合わせは、10秒未満であり得る。いくつかの均一プローブ検出方法は、急速アッセイパフォーマンスを最大にするために別つの伸長工程を必要とし得る。総増幅時間と非特異的な副反応との両方を最小にするために、アニーリング温度は典型的には50℃を越える。より好ましくは、アニーリング温度は、55℃を越える。
【0023】
いくつかの理由により、実験者の介入が全く存在しないRT−PCRに関する単一の組み合わせ反応が望ましい。(1)実験者の間違いの危険性を低減する、(2)標的又は産物の汚染の危険性を低減する、及び(3)アッセイ速度を上昇させる。反応は、1種又は2種のいずれかのポリメラーゼからなり得る。2種のポリメラーゼの場合、これらの酵素の一方は、典型的にはRNA−ベースのDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)であり、もう一方は、熱安定性DNA−ベースのDNAポリメラーゼである。アッセイパフォーマンスを最大にするために、これら両方の酵素の機能のために「ホットスタート(hot start)」技術の形態を使用することが好ましい。米国特許第5,411,876号及び同第5,985,619号は、異なる「ホットスタート」手法の例を提供し、参照により本明細書に組み込まれる。好ましい方法は、効率的なDNA重合に必要な1種以上の成分を隔離する、1つ以上の熱活性化(thermoactivation)方法の使用を含む。米国特許第5,550,044号及び同第5,413,924号は、そのような方法に使用するための試薬の調製方法を記載し、またこれらは参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第6,403,341号は、PCR試薬成分の1つの化学的改変を含む隔離手法を記載し、これらは参照により本明細書に組み込まれる。最も好ましい実施形態では、単一の酵素中にRNA−及びDNA−依存性ポリメラーゼ活性の両方が存在する。効率的な増幅に必要な他の成分としては、ヌクレオシド三リン酸、二価塩及び緩衝液成分が挙げられる。ある場合に、非特異的核酸及び酵素安定剤が有益であり得る。
【0024】
好ましいRT−PCRにおいて、所定の逆転写酵素及びPCR成分の量は、いくつかサーマルサイクラーのより速い勾配時間を利用するよう不規則である。詳細には、プライマー濃度は非常に高い。
【0025】
逆転写酵素反応のための典型的な遺伝子特異的プライマー濃度は、約20nM未満である。1〜2分のオーダーの迅速な逆転写酵素反応を達成するために、逆転写酵素プライマー濃度を20nM越、好ましくは少なくとも約50nM越、典型的には約100nMに増大させる。標準的なPCRプライマー濃度は、100nM〜300nMの範囲である。標準的なPCRに、より高い濃度を使用して、Tm変動を補償してもよい。しかしながら、本明細書の目的において、引用したプライマー濃度は、Tm補償が必要ない環境用である。Tm補償が必要又は所望される場合、比例して高いプライマー濃度は、経験により決定及び使用することができる。迅速PCRを達成するために、PCRプライマー濃度は、一般に250nM越、好ましくは約300nM越、典型的には約500nMである。
【0026】
商業的に使用されている診断法は、好ましくは、負の結果の場合に備えて、特定の増幅反応の作用(operation)を確認する内部正対照も使用する。RT−PCRにて制御する必要がある誤った負の結果の潜在的な原因には、不十分なRNA品質、RNAの分解、RT及び/又はPCRの阻害、並びに実験者の間違いがある。
【0027】
遺伝子発現を測定するためにタンパク質レベルを測定する場合、十分な特異性及び感度を生じるのであれば、当技術分野で公知の任意の方法が好適である。例えば、タンパク質レベルは、タンパク質に特異的な抗体又は抗体断片に結合させ、抗体結合タンパク質の量を測定することにより測定することができる。抗体を放射性、蛍光又は他の検出可能な試薬により標識して、検出を容易にすることができる。検出の方法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び免疫ブロット法があるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明は、組織サンプル中の悪性メラニン細胞を同定するのに十分な特異性及び感度を提供する。本発明は、そのマーカーでコードされたmRNAを測定することにより、特定のマーカー遺伝子、SILVの発現を測定する。本明細書にて示される結果により、SILVが、黒色腫と良性の明白な症例との明確な区別、及び疑わしい組織グループのサンプル中の異なる異型サブグループの明確な区別を示す優れたマーカーであることが示される。マーカーSILVは、本明細書ではSEQ ID NO:1〜3を含む任意の変異体、対立遺伝子等をコードする遺伝子として定義される。
【0029】
本発明の方法では、チロシナーゼを対照遺伝子として使用して、組織サンプル中のメラニン細胞の存在を示し、またメラニン細胞の含有量に関して正規化する。チロシナーゼは、Mandelcorn−Monson et al.(2003)及び米国特許第6,153,388号により記載され、受入番号NM_000372として表される。チロシナーゼは、PCRアンプリコンSEQ ID NO:14を用いたABIアッセイオンデマンド(Hs00165976_m1)により認識されるmRNAをコードする遺伝子としても定義される。
【0030】
所定の増幅ベースの分子診断の特異性はいずれも、プライマーセットの同定に高く依存するが、排他的にではない。プライマーセットは、標的DNA配列にアニールして標的配列を増幅させることにより、標的配列特異的なアンプリコンを生成する一対のフォワード及びリバースオリゴヌクレオチドプライマーである。プライマーは、関心対象の疾病状態のマーカーを増幅可能である必要がある。本発明の場合、マーカーは、黒色腫に指向される。
【0031】
反応は、特定のシグナルを検出するいくつかの手段も含む必要がある。これは、好ましくは、関心対象の標的配列の重合から誘導されたDNA配列の領域を検出する試薬の使用により達成される。検出用の好ましい試薬は、関心対象の特定の核酸配列に結合した際に、測定可能なシグナル差異を与える。多くの場合、これらの方法は、関心対象の配列に結合した際に、蛍光を増大させる核酸プローブに関係する。典型的には、本発明の方法の反応の進行は、各PCRプライマーセットのアンプリコン生成の相対的な速度を分析することにより監視される。
【0032】
本発明は更に、プライマー/プローブのセット、及び特許請求された方法におけるそれらの使用を含む。配列IDは:SEQ,ID Nos.:1〜10である。アンプリコン生成は、二本鎖DNAに結合する蛍光プライマー、並びに蛍光プローブ及び蛍光染料を含むが、これらに限定されない多数の検出試薬及び方法により監視することができる。分子指標、スコーピオン(Scorpion)及び他の検出スキームも使用することができる。PCRの通常の監視方法は、蛍光加水分解プローブ(fluorescent hydrolysis probe)アッセイを使用する。この方法は、所定の熱安定性DNAポリメラーゼ(Taq又はTfl DNAポリメラーゼ等)の5’ヌクレアーゼ活性を利用して、PCRプロセス中にオリゴマープローブを切断する。
【0033】
本発明は更に、本発明の方法で使用されるPCR方法により得られるアンプリコンを提供する。これらのアンプリコンは、配列:SEQ.ID Nos:11〜14を含む。
【0034】
オリゴマーは、伸長条件下で、増幅された配列にアニールするよう選択される。プローブは、一般にその5’末端に蛍光レポーターを有し、3’末端にレポーターの蛍光クエンチャーを有する。オリゴマーが無傷である限り、レポーターからの蛍光シグナルは消光される。しかしながら、オリゴマーが伸長プロセス中に消化される場合、蛍光レポーターはもはやクエンチャーの近接に存在しない。所定のアンプリコンに関する遊離蛍光レポーターの相対的な蓄積を、対照サンプルに関する同じアンプリコン、及び/又は非限定的にβ−Actin又はPBGD等の対照遺伝子に関する同じアンプリコンの蓄積と比較して、RNA集団中の所定のRNAの所定のcDNA産物の相対的な存在量を決定することができる。蛍光加水分解プローブアッセイ用の製品及び試薬は、商業的に容易に、例えばApplied Biosystemsから入手することができる。
【0035】
最も好ましい検出試薬は、TaqMan(登録商標)プローブ(Roche Diagnostics,Branchburg,NJ)であり、これらは参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,210,015号、同第5,487,972号及び同第5,804,375号に記載されている。本質的に、これらのプローブは、PCRに使用されるポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性によるプローブ上の蛍光−クエンチャー組み合わせの分離に基づく核酸検出に関与する。任意のマーカー又は対照のために、任意の好適なフルオロフォアを使用することができる。そのようなフルオロフォアには、Texas Red、Cal Red、Fam、Cy3及びCy5が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、以下のフルオロフォアが、記述したマーカーに対応する。PLAB:Fam、L1CAM:Texas Red又はCal Red、チロシナーゼ:C1、PBGD:Cy5。PCR及びQRT−PCRにおけるアンプリコン蓄積を制御及び監視するための装置及びソフトウェアも容易に入手可能であり、それらはSunnyvale,CaliforniaのCepheidから市販されているSmart Cyclerサーモサイクラー、及びApplied Biosystemsから市販されているABI Prism 7900 Sequence Detection Systemを含む。
【0036】
QRT−PCRに関して記載した方法の商業化において、特定の核酸を検出する所定のキットが特に有用である。一実施形態において、キットは、マーカーを増幅及び検出するための試薬を備える。場合により、キットは、リンパ節組織から核酸を抽出するためのサンプル調製試薬及び又は物品(例えば、チューブ)を備える。キットは、サンプル汚染の危険性を最小にする物品も備え得る(例えば、リンパ節切開及び調製のための使い捨てメス及び表面)。
【0037】
好ましいキット内に、逆転写酵素、逆転写酵素プライマー、対応するPCRプライマーセット(好ましくはマーカー及び対照用)、Taqポリメラーゼ等の熱安定性DNAポリメラーゼ、並びに非限定的にスコーピオンプローブ、蛍光加水分解プローブアッセイ用のプローブ、分子指標プローブ、単一染色プライマー、又は臭化エチジウム等の二本鎖DNAに特異的な蛍光染料等の好適な検出試薬(1種又は複数種)等の、上述したワンチューブQRT−PCR法(one-tube QRT-PCR process)に必要な試薬が含まれる。プライマーは、上述した高い濃度を与える量が好ましい。熱安定性DNAポリメラーゼは、通常、様々な製造業者から市販されている。キット内の更なる材料は、好適な反応チューブ又はバイアル、典型的にはサックスビーズ(wax bead)、場合によりマグネシウムを含むバリア組成物、必要な緩衝液及びdNTP等の試薬を含む、逆転写酵素及びPCR段階用の反応混合物(典型的には10X)、ヌクレアーゼ又はリボヌクレアーゼフリー水、リボヌクレアーゼ阻害剤、逆転写酵素及び/又はQRT−PCRのPCR段階に使用し得る対照核酸(1種又は複数種)並びに/又は任意の更なる緩衝液、化合物、補因子、イオン成分、タンパク質及び酵素、ポリマー類等を含んでもよい。場合により、キットは、核酸抽出試薬及び材料を備える。キット内には指示書も含まれることが好ましい。
【0038】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、特許請求された発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
患者の臨床的及び病理学的特徴
204つのFFPE皮膚生検組織標本を、Georgetown University Hospitalで診断された原発性メラニン細胞皮膚病変を有する患者から選択した。一連の患者は、侵襲的黒色腫又は良性母斑の明白な特徴を有する102つの標本と、様々な程度の細胞異型を有する102つの標本とを含んでいた。これらの非定型標本を最初、疑わしい/非定型として分類し、次に熟達した皮膚病理専門医により非定型母斑又は悪性黒色腫として決定された。サンプル調製工程後、2つの患者サンプルを不十分なRNA収量(350ng未満)のため除外した。更なる9つのRNAサンプルをPCR制御の失敗により除外した。分析に適格な最終的なサンプルセットは、47つの黒色腫、48つの良性母斑、並びに皮膚病理専門医により指定された48つの非定型母斑及び50つの黒色腫を含む98つの非定型/疑わしいものからなる193つの生検組織(元のサンプルセットの95%)からなっていた。黒色腫サンプルの病理学的及び臨床的特徴の概略を、表1に示す。
【表1】

【0040】
病態により提供された臨床的データに基づき、サンプルを最も良性から最も悪性の症例へ順序付けた。組織学的診断を使用して、進行黒色腫、黒色腫、重度の異型、中度の異型、及び良性母斑からなる5つの主なカテゴリを形成し、193つのサンプルのそれぞれをこれらのグループに当てはめた。悪性黒子型黒色腫、上皮内黒色腫、及び表在性侵襲性(superficial invasive)黒色腫を組み合わせて、単一の黒色腫カテゴリとした。進行性特徴(T2以上の表在拡大型、及び結節型又は転移性)を有する黒色腫の2セットを進行黒色腫グループに加えた。二元分類は、進行黒色腫及び黒色腫を悪性に、残りのクラスを良性に分割することに基づいていた。この層別化は、黒色腫として分類された47つの明白な病変及び50つの重度の非定型病変を有する97つの悪性症例と、48つの良性及び48つの非定型母斑を表す96つの良性症例とを含んでいた。記載した更なる全データ分析は、進行黒色腫、黒色腫及び良性の3つのグループの1つに分類される明白な症例に関して示され、また進行黒色腫、黒色腫、重度及び中度の異型の4つのグループの1つに分類される曖昧な症例に関して示される。
【0041】
(実施例2)
組織調製
204つの組織サンプルを、原発性メラニン細胞皮膚病変と診断された個人から収集した。全てのサンプルを病変の寸法、深さ及び医師の判断に応じて切除、穿孔、又は薄片生検を使用して収集し、FFPEブロック中に包埋した。
【0042】
FFPEブロックから全RNAを、Roche製の標準的なHigh Pure RNAパラフィンキット(カタログ#3270289)を、以下の変更を伴い使用して単離した。パラフィン包埋組織サンプルを、包埋された腫瘍の寸法に応じて切片とした(2〜5mm以下=9×10μm、6〜8mm以上=6×10μm)。切片を、製造業者の指示書に従って脱パラフィン処理した。単離したRNAを、使用まで、リボヌクレアーゼフリーの水中にて−80℃で保管した。
【0043】
生検タイプによる分布と、抽出されたRNAの収量を、それぞれ表2a及び表2bに示す。10.5、4.5及び6つのスライドの総平均に対応する平均RNA収量は、3つのタイプの全生検を通じて同等であった。生検技術における差異に基づくアッセイパフォーマンスの偏りは、全く観察されなかた。
【表2】

【表3】

【0044】
(実施例3)
RNA特異的なプライマーを用いた単一の一段階qRTPCRアッセイ及びカットオフ確立
黒色腫、良性母斑、及び非定型/疑わしいFFPE組織からのRNAを用いた一段階RT−PCRにより、選択された遺伝子の発現の評価を行った。標本(specifmen)は、2連のサンプル:1)明白な又は明確な黒色腫(menaoma)及び良性母斑症例、並びに2.)様々な程度の異型を有するサンプルを含んでいた。チロシナーゼ(「TYR」)をハウスキーピング遺伝子として使用して、反応中の投入量及びRNA品質を制御した。デオキシリボヌクレアーゼ処理は用いなかった。代わりに、プライマー又はプローブを、ゲノムDNAについて報告しないように、イントロンにまたがるよう設計した。全部のプライマー/プローブセットを、商業的なベンダー(Oncomatrix)からの10つの黒色腫及び10つの良性母斑FFPE組織から単離した20つの全RNA標本のセット上で予め選別した。最高に機能したプライマー−プローブセットを、4つのマーカーのそれぞれに関して選択した。配列を下記の表3に列挙する。
【0045】
遺伝子発現マーカーGDF−15、SILV及びL1CAMを正規化対照チロシナーゼ(「TYR」)と共に黒色腫生検アッセイにて、単一反応RT−PCRフォーマットを用いてABI7900プラットホーム上で試験した。単一の一段階qRT−PCRアッセイを、以下のプロトコールに従って行った。50ngの総RNAをqRT−PCRに使用した。総RNAを、TAQMAN(登録商標)One Step PCR Master Mix Reagents Kit(Applied Biosystems,Foster City,CA)に収容されている40X Multiscribe及びリボヌクレアーゼミックスを使用して、逆転写した。次に、UNGを使用して2x Master MixにcDNAを供し、ABI 7900 HT Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster City,CA)上で、384ウェルフォーマットにて10μLの反応サイズを用いてPCR増幅を行った。各反応物は、5.0μLの2X One Step RT−PCR Master Mix、0.5μLのプライマー/プローブミックス、0.25μLの40X Multiscribe酵素、及びリボヌクレアーゼ阻害剤Mix、0.25μLのdNTP及び4μLの12.5ng/μLの総RNAから構成されていた。最終的なプライマー/プローブミックスは、表3に列挙される最終濃度900nMのフォワード及びリバースプライマーと、250nMの蛍光プローブとから構成されていた。dNTPミックスは、それぞれ最終濃度20mMのdATP、dGTP、dCTP及びdTTPを含んでいた。逆転写のために反応混合物を48℃で30分間インキュベートし、次いで95℃のAmplitaq活性化工程を10分間行い、最終的に95℃で15秒間の変性、60℃で1分間のアニール及び伸長を40サイクル行った。反応に使用した配列は、以下の通りであり、それぞれ5’から3’方向へ記載されている。
【表4】

【0046】
各サンプルに関して、ΔCt=Ct(標的遺伝子)−Ct TYRを計算した。ΔCtは、臨床的RT−PCRアッセイに広く使用されており、直接的な方法として選択された。Cronin et al.(2004)。
【0047】
ABI7900出力ファイルから得たCt値を、データ分析に使用した。単一反応のアッセイ形態において、TYR Ct<30を生成するサンプルのみを分析した。各マーカーに関するCt値を生Ctsとして表し、以下の式を使用して、メラニン細胞特異的なマーカー、TYRに対して正規化した。
Ct(正規化)=Ct(マーカー)−CT(TYR)
【0048】
アッセイで提供された診断を、皮膚病理検査と比較した。アッセイパフォーマンスを見積もるために、Rソフトウェアパッケージバージョン2.5.0.(チームRDCwww.r−project.org)を使用するROC曲線解析に基づき、AUC値を計算した。
【0049】
明確な(明白な)症例に関して、良性病変と比較して黒色腫において3つの黒色腫特異的なマーカーの発現の増大が示された(表4、図1a)。明確な(明白な)症例において、良性母斑と黒色腫サンプルとの間にSILV及びGDF15の有意な発現差異が観察された(2.8及び1.2倍、それぞれp値<0.001及び0.003)。しかしながら、L1CAMは、0.2倍の変化という遙かに低い差異を示し、良性と悪性の明確な症例との間で統計的有意性は存在しなかった(p=0.47)(図1)。それ故、このマーカーは、更なる分析から除外された。SILVは最高のパフォーマンスを示し、3つの患者グループ(進行黒色腫、黒色腫及び良性症例)全体で線形応答を有し、病理学で定義されるような疾病状態の連続的な変化の程度を示した。
【表5】

【0050】
単変量ROC曲線解析を使用して、SILV及びGDF15のパフォーマンスを、明白な黒色腫と良性母斑との間の区別に関して評価した。図2に示すように、AUC値は、それぞれ0.94及び0.67であった。線形回帰モデルを用いた多変量解析に基づき、SILVとGDF15との組み合わせは、明白な症例においてアッセイパフォーマンスをAUV0.94を越えて改善しなかった。したがって、GDF15は、疑わしい(曖昧な症例)の分析に関して更に追跡しなかった。最終的に、TYRへの正規化は、生Ct値を使用した場合の0.78と比較して、SILVのパフォーマンスを0.94に改善した。
【0051】
SILVのパフォーマンスを、疑わしい症例と明白な良性の症例とを比較(compring)することにより、更に評価した。n=2のため進行黒色腫を除外して、曖昧なサンプル中のSILVの平均ΔCtをそれぞれ組織学により、明白な良性グループの平均ΔCtと比較した。明白な良性サンプルに対するt検定比較に関する平均ΔCt値及びp値を、下記の表5に列挙する。SILVは、疑わしい黒色腫と、疑わしい非定型グループのそれぞれとの間で有意に異なっていた。黒色腫対重度の異型、p値=0.0077、及び黒色腫対中度の異型、p値=0.0009。
【0052】
図1〜図4は、SILVが優れたマーカーであり、黒色腫と良性な曖昧な症例との間を、また組織サンプルの疑わしいグループにおいて異なる異型サブグループ間を明確に区別することを確認する。
【表6】

【0053】
皮膚病理専門医の観点から、色素性病変が重度の非定型母斑であるか、又は黒色腫の閾値に到達しているかを決定する単一の基準は存在しない。皮膚病理専門医は、少なくとも10つの別個の組織学的特徴と取り込む。免疫組織学化学的マーカーのいずれの1つも、悪性メラニン細胞の増殖から良性のものを区別できない。
【0054】
本発明は、黒色腫の特定の遺伝子シグネチャーを同定及び確認することにより、黒色腫のメラニン細胞病変からの区別において改善された診断パフォーマンスを有する黒色腫生検アッセイを示す。試験結果は、黒色腫で異なる発現を示した少なくとも2つの遺伝子の進行的な増大を示した:SILV及びGDF15。しかしながら、線形回帰モデルを用いた多変量分析に基づき、GDF15の添加は、明確な症例において、SILVパフォーマンスをAUC0.94を越えて向上させなかった。したがって、SILVは、黒色腫生検アッセイの最終的なマーカーとして指定される。有意な差異は、SILVに関して重度の非定型母斑と黒色腫との間にも観察され、p値は0.0077であり、このマーカーを明確な(明白な)及び疑わしい(曖昧な)症例の両方の診断に適用可能とした。後者は熟達した皮膚病理専門医にとって最も困難な挑戦である。
【表7】

【0055】
〔実施の態様〕
(1) 黒色腫の同定方法において、
a.組織サンプルを獲得する工程と、
b.SILV(SEQ ID No.1〜3及び13)に対応するmRNAをコードする遺伝子の前記サンプル中の発現レベルを測定する工程と、を含む、方法。
(2) チロシナーゼ(SEQ ID NO:4及び14)をコードする遺伝子の発現レベルを測定することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) TYRに対するSILVの発現レベルを測定する、実施態様1及び3に記載の方法。
(4) 前記サンプルが原発性皮膚生検サンプルである、実施態様1〜3のいずれかに記載の方法。
(5) 遺伝子発現がマイクロアレイ又は遺伝子チップ上で測定される、実施態様1〜3のいずれかに記載の方法。
(6) 遺伝子発現が、前記サンプルから抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行われる核酸増幅によって測定される、実施態様1〜3のいずれかに記載の方法。
(7) 黒色腫の診断に関する確率が、実施態様1〜3のいずれかから決定される方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色腫の同定方法において、
a.組織サンプルを獲得する工程と、
b.SILV(SEQ ID No.1〜3及び13)に対応するmRNAをコードする遺伝子の前記サンプル中の発現レベルを測定する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
チロシナーゼ(SEQ ID NO:4及び14)をコードする遺伝子の発現レベルを測定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TYRに対するSILVの発現レベルを測定する、請求項1及び3に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが原発性皮膚生検サンプルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
遺伝子発現がマイクロアレイ又は遺伝子チップ上で測定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
遺伝子発現が、前記サンプルから抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行われる核酸増幅によって測定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
黒色腫の診断に関する確率が、請求項1〜3のいずれか一項から決定される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−15679(P2011−15679A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−154736(P2010−154736)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(505060347)ベリデックス・エルエルシー (43)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【住所又は居所原語表記】33 Technology Drive,Warren,NJ 07059,U.S.A.
【Fターム(参考)】