説明

黒豆抽出物を含有した咽喉頭用液状組成物

【課題】発声向上効果等を有する咽喉頭用液状組成物と、該咽喉頭用液状組成物を含有するうがい薬を提供する。
【解決手段】可溶性固形分濃度が15〜75重量%である黒豆の水溶性抽出物を調整し、該抽出物を含有する咽喉頭用液状組成物とする。また、該咽喉頭用液状組成物を添加して食品、又は経口若しくは経鼻的に使用される医薬品若しくは医薬部外品、好ましくはうがい薬を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒豆の水溶性抽出物を含有する咽喉頭用液状組成物に関する。より詳細には、特定の可溶性固形分濃度(糖度値)を有する黒豆の水溶性抽出液(以下、黒豆抽出物ともいう)を調製し、該黒豆抽出物を含有した咽喉頭用液状組成物、及び該咽喉頭用液状組成物を摂取することによる咽喉頭部に対する改善方法、並びに該咽喉頭用液状組成物を有効成分とするうがい薬及び該うがい薬を用いた含嗽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「発声」という行為は、情報や意思、感情などを表現して、他人とのコミュニケーションを図るだけでなく、耳で自らの声を聞くことで健康のバロメーターとも成り得るものである。また、発声という行為が職業として必須であるアナウンサー、教職者、声楽家、芸能人等では、滑らかな発声の維持が求められている。滑らかな発声が妨げられると、上記発声行為を必須とする職業に従事する者にとっては業務上の支障を来し、日常生活においても不都合を生じ、心理面にも作用してストレスの原因ともなる。
【0003】
一方、既存の咽喉頭領域における医薬品や機能性食品の効能は、咽頭部の抗菌、抗炎症、鎮咳及び去痰など、主として風邪の罹患時における諸症状の緩和や治療、それらの予防を目的としたものである。しかし、発声しやすくなる(発声向上)という観点から、のど・声に対する効果効能を主観的心理学的に助長する経口時の使用感、即ち摂取した際に実効感を得ることができる、或いは持続的な効果を認識できるといった点については充分に考慮されていなかったのが実情である。特に日常的に摂取可能な食品にあっては、医薬品より効果効能が緩慢なものが多く、経口摂取時の使用感、イメージは効果効能に大きく影響するため非常に重要である。
【0004】
また、口腔、咽喉頭部位の洗浄、殺菌、消毒或いは口臭の除去・予防のために、マウスウォッシュ(口腔用液体洗浄剤)やうがい薬が開発され広く市販されている。既存のうがい薬やマウスウォッシュは、口腔内や咽喉頭部領域における清涼感の付与、口臭の除去・予防を初め、抗菌、抗炎症、鎮咳及び去痰など、主としてマナーの向上と風邪の罹患時における諸症状の緩和や治療、それらの予防を目的としたものである。例えば、口腔内の清潔感、清涼感を与えるマウスウォッシュには、殺菌成分以外にもメントール等の清涼感を与える成分が添加されている。また、うがい薬には、殺菌成分としてポピドンヨード、チモール、グルコン酸クロルヘキシジン等が添加されている。具体的には、シアル酸および/またはシアル酸誘導体を有効成分とするうがい薬(特許文献1)、有効成分として塩化セチルピリジウムおよびグリチルリチン酸ジカリウムを含有し、非イオン性界面活性剤により当該有効成分の保存安定化を図り、有機酸緩衝液にてpH調整を行うことにより溶液の退色防止を図ったうがい薬(特許文献2)等が開示されている。
【0005】
特にうがいを行うことは、上気道粘膜を湿潤させることとなり、インフルエンザウイルスの感染を予防するといった効果が知られているため、冬季に奨励される効果的な健康維持行為である。
【0006】
従って、滑らかな発声を維持すること、咽喉頭部位や上気道粘膜を湿潤状態に保つことは、生活の質(QOL:Quality Of Life)向上や健康増進の観点からも非常に重要と考えられる。しかし、のどの状態を良好に保つ、即ち上気道粘膜を適度な湿潤状態に保つことにより、結果として発声しやすくなる(発声向上)という上記QOLの観点においては、充分な検討がなされていないのが現状である。
【0007】
ところで、黒豆の煮汁が古くから声嗄れの抑制や鎮咳を目的とした民間薬として使用されているように、黒豆にはのどや声に良いなどの効果があることが伝承的に知られている(例えば非特許文献1参照)。このため、黒豆から抽出したエキスを、そのまま液体或いはスプレードライ等の常法により粉末化し、それを食品素材として配合した食品(例えば黒豆エキスを含む飲料やのど飴等)が、声嗄れ抑制や鎮咳効果のある食品として提案されているが、これをうがい薬として利用された例は開示も示唆もされていない。
【0008】
【特許文献1】特開平9−268129号公報
【特許文献2】特開2004−51511号公報
【非特許文献1】臨床と研究、75、No.12、2625(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、QOLの向上を主眼とし、安全性が高い黒豆の水溶性抽出物を有効成分とする、使用感を高めた咽喉頭用液状組成物及び該咽喉頭用液状組成物を摂取することによる咽喉頭部改善方法と、該咽喉頭用液状組成物を有効成分とするうがい薬及び該うがい薬を用いた含嗽方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、のどや声に良いなどの効果が伝承的に知られている黒豆の水溶性抽出物を、特定の可溶性固形分濃度(糖度値)になるよう調整し摂取することにより、従来の咽喉頭領域における医薬品や機能性食品とは全く異なる使用感・効果を与える咽喉頭用液状組成物を得て、さらに該咽喉頭用液状組成物を有効成分とするうがい薬を得るに至った。
【0011】
即ち、本発明は下記項にあげる咽喉頭用液状組成物である;
項1 可溶性固形分濃度が15〜75重量%である黒豆の水溶液抽出物を含有することを特徴とする咽喉頭用液状組成物。
項2 黒豆の水溶性抽出物に由来する可溶性固形分が20〜40重量%含まれる項1に記載の咽喉頭用液状組成物。
項3 糖類を含む項1又は2に記載の咽喉頭用液状組成物。
項4 糖類がマルトースであり、且つ可溶性固形分濃度が50〜70重量%である項3に記載の咽喉頭用液状組成物。
【0012】
そして、本発明は次項にあげる項1乃至4に記載の咽喉頭用液状組成物を用いた咽喉頭部の改善方法である;
項5 項1乃至4に記載の咽喉頭用液状組成物を摂取することを特徴とする咽喉頭部改善方法。
【0013】
さらには次項にあげるうがい薬及び該うがい薬を用いた含嗽方法に関する;
項6 項1乃至4に記載の咽喉頭用液状組成物を有効成分とすることを特徴とするうがい薬。
項7 項6記載のうがい薬を水で薄めて使用することを特徴とする含嗽方法。
項8 項6記載のうがい薬を服用し、次いで水で通常のうがいを行うことを特徴とする含嗽方法。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)咽喉頭用液状組成物
本発明でいう咽喉頭用液状組成物とは、特定の可溶性固形分濃度を有する黒豆の水溶性抽出物、更に詳しくは可溶性固形分濃度が15〜75重量%、好ましくは25〜60重量%である黒豆抽出物を含有してなるものである。
【0015】
咽喉頭部とは、鼻腔、口腔部から咽頭、喉頭、声帯、気管及び食道付近までを含む範囲であり、本発明にかかる咽喉頭用液状組成物を摂取する際は、これらの部位に当該組成物が塗布されるようにすればよく、飲用等通常の経口摂取のほか、鼻腔部分への噴霧等経鼻的な摂取であってもよい。
【0016】
本発明において用いられる黒豆とは、マメ科ダイズ属Glycine max(L.)Merrillに属する短日性の一年生草木の黒い種子(子実)(黒大豆)である。黒豆には、例えば中生光黒、トカチクロ、いわいくろ、玉大黒、丹波黒、信濃黒及び雁喰などの品種があるが、黒豆であればどの品種の種子を使用しても良い。
【0017】
黒豆の水溶性抽出物は、上記黒豆を水溶性溶媒を用いて抽出し、得られた抽出液を公知の方法により濃縮して得ることができる。かかる水溶性溶媒としては、特に制限されないが水、低級アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールを例示することができる。好ましくは水、または含水アルコール(特に含水エタノール)であり、より好ましくは水である。尚、含水アルコールを溶媒として使用する場合、それに含まれるアルコール量は40容量%以下であることが好ましい。
【0018】
尚、当該水溶性溶媒は中性に調整されていることが好ましい。特に制限されないが、pHの範囲は5〜8程度が好ましく、pHの値がこれ以下であってもこれ以上になっても、服用した際の使用感が損なわれてしまうため好ましくない。かかるpH値に水溶性溶媒を調整するため、適当な酸性物質、アルカリ性物質を添加してもよい。
【0019】
黒豆からの抽出方法としては、一般に用いられる方法を利用することができる。制限はされないが、例えば水溶性溶媒中に生または乾燥処理した黒豆(そのままの形状、若しくは粗末、細切物)を低温、加温または煮沸条件下で浸漬する方法;低温、加温または煮沸条件下で攪拌しながら抽出する方法;またはパーコレーション法等を挙げることができる。好ましくは、乾燥処理した黒豆(そのままの形状、若しくは粗末、細切物)を水に、高温若しくは煮沸条件下で浸漬し、必要に応じて攪拌しながら抽出する方法(熱水抽出法)である。
【0020】
得られた抽出液に対し、必要に応じてろ過、共沈または遠心分離による固形物の除去、酵素処理、酸処理、抽出処理、吸着処理等の精製処理を行ってもよい。好ましくは酵素処理である。
【0021】
本発明の酵素処理に用いられる酵素としては、糖質及び/又はタンパク質を分解する作用を有する酵素を挙げることができる。具体的には、例えば前者糖質分解酵素として、クライスターゼY(大和化成社製)、スミチームS(新日本化学工業社製)などのアミラーゼ;セルラーゼA(天野エンザイム社製)、及びセルロシンAC40(エイチビィアイ社製)などのセルラーゼ;スクラーゼS(三共社製)、及びスミチームX(新日本化学工業社製)などのヘミセルラーゼ等の、糖質分解活性を有する酵素を使用することができる。また、後者タンパク質分解酵素として、ニューラーゼA(天野エンザイム社製)、及びプロテアーゼYP−SS(ヤクルト薬品工業社製)などの酸性プロテアーゼ;スミチームFP(新日本化学工業社製)、及びエンチロンNBS(洛東化成工業社製)などの中性プロテアーゼ;ノボザイムFM(ノボザイムズ社製)やビオプラーゼSP−4FG(ナガセケムテック社製)などのアルカリ性プロテアーゼ等、タンパク質分解活性を有する酵素を使用することができる。
【0022】
かかる糖質分解活性を有する酵素、及びタンパク質分解活性を有する酵素は、それぞれ1種単独で使用しても、両者を組み合わせて使用することもできる。また、使用する酵素は単一種でもよいが、各種の酵素を組み合わせて使用することもできる。
【0023】
好ましい酵素は糖質分解活性を有する酵素であり、特に上記セルラーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等の糖質を分解する活性を有する酵素が好適に使用できる。
【0024】
酵素処理は、使用する各酵素に適した所定の条件で実施することができる。酵素処理を行う温度条件は特に制限されないが、通常30〜80℃の範囲を用いることができる。好ましくは35〜60℃である。
【0025】
抽出処理も特に制限はされず、定法に従って行うことができる。例えば炭酸ガス、エチレン、プロパン等の液体を、黒豆の水溶性抽出物又はその処理物に対して、臨界点以上の温度、圧力下の密閉系装置内で接触させる方法が例示できる。
【0026】
また、吸着処理も定法に従い行うことができる。例えば活性炭、シリカゲル又は多孔質セラミックなどによる吸着処理;スチレン系、芳香族系等の合成吸着樹脂を挙げることができる。
【0027】
さらに任意で陽イオン、陰イオン各種のイオン交換樹脂を用いたイオン交換樹脂処理、メンブレンフィルター膜、電気透析膜などの機能性高分子膜を用いた膜処理を行ってもよい。
【0028】
上記抽出方法及び精製処理を経て得られた水溶性溶媒による黒豆抽出物を、可溶性固形分濃度15〜75重量%、好ましくは25〜60重量%に調整し本発明の黒豆抽出物とするものである。可溶性固形分濃度をかかる範囲に調整する方法としては、煮沸による濃縮、減圧濃縮等公知の方法を用いることができる。好ましくは減圧濃縮である。可溶性固形分濃度が15重量%以下になると、咽喉頭部への刺激が低くなり所望の効果が得られず、また、可溶性固形分濃度が75重量%を越えると半固形状となり服用が困難となるため好ましくない。
【0029】
必要に応じて、得られた黒豆抽出物に対しUHT殺菌、レトルト殺菌処理といった公知の方法による殺菌処理を行ってもよい。
【0030】
かくして得られた特定の可溶性固形分濃度を有する黒豆抽出物を、そのまま或いは更に濃縮或いは希釈することにより、本発明にかかる特定の可溶性固形分濃度、即ち15〜75重量%、好ましくは25〜60重量%である咽喉頭用液状組成物とすることができる。特定の可溶性固形分濃度とするために、濃縮は上述の各種濃縮方法を、希釈は水等その他の溶媒をもって行うことができる。また、咽喉頭用液状組成物に含まれる黒豆抽出物の濃度は、上述の可溶性固形分濃度の範囲内であることの他、咽喉頭用液状組成物に含まれる黒豆抽出物由来の可溶性固形分が20〜40重量%の範囲となるように調整することが好ましい。黒豆抽出物の濃度がこの範囲より低くなると咽喉頭部への効果が不十分となり、また濃度範囲がこの範囲より高くなると咽喉頭部への違和感が増すため好ましくない。
【0031】
また、黒豆抽出物に糖類を添加してシロップ状に調製し可溶性固形分濃度の調整を行っても良い。使用する糖類としては、グルコース、フルクトース等の単糖類、スクロース、マルトース、乳糖等の二糖類、三糖以上からなるオリゴ糖類、水飴等の多糖類が例示できる。
【0032】
具体的には、この群より選ばれる少なくとも1種以上の糖類を黒豆抽出物と混合しシロップ状とするものである。糖類を添加することにより、咽喉頭用液状組成物の安定化を向上させることができ、黒豆抽出物に由来する成分の沈殿や風味の変化、使用感の低下を抑えることができる。特に好ましいのは糖類としてマルトースを添加し、可溶性固形分濃度を50〜70重量%に調整する方法である。
【0033】
さらに、本発明の効果を妨げない範囲において、着色料、香料、酸化防止剤、保存剤、増粘剤、安定剤、果汁エキス、ビタミン・ミネラル類、消炎剤、保湿剤等を咽喉頭用液状組成物に添加しても良い。具体的には、溶液の保存安定性を向上させるためにプロピレングリコールやグリセリンを溶液に対し0.5〜5重量%程度添加する例が挙げられる。また、アルコール類を溶媒に添加することもできる。
【0034】
そして得られた咽喉頭用液状組成物をそのまま服用する、あるいは咽喉頭用液状組成物を含む食品(機能性食品、サプリメントを含む)、並びに経口若しくは経鼻的に摂取できる医薬品及び医薬部外品を提供することができる。かかる食品、医薬品及び医薬部外品の例としては、上述のような可溶性固形分濃度15〜75重量%、好ましくは25〜60重量%の範囲に調整された咽喉頭用液状組成物を、そのまま口腔若しくは鼻腔へ滴下、噴霧等することにより摂取できる形態であれば特に制限はない。例えば、液状組成物一回分量(約1g)を密封容器に分注したもの、数回分量を容器に充填し、一回分量毎服用していく形態、或いはスプレー容器に咽喉頭用液状組成物を充填し、使用時に咽喉頭部へ直接噴霧する形態が例示できる。この時、既存ののどや声の諸症状に効果があるとされる医薬品成分や各種植物抽出物等を、本発明の効果を妨げない範囲で任意で添加してもよい。かかる形態をもって本発明にかかる咽喉頭用液状組成物を摂取することにより、のどや声の諸症状を改善し、或いはのどの乾燥を予防するといった咽喉頭部の改善効果を得ることができる。
2)咽喉頭部の改善方法
本発明は上述のような咽喉頭用液状組成物を摂取することによる咽喉頭部の改善方法に関する。
【0035】
咽喉頭部の改善とは、具体的には咽喉頭部に対し本発明にかかる咽喉頭用液状組成物が噴霧されることにより、発声向上効果、のどの乾燥防止効果、痰切れ効果、花粉症のくしゃみ、鼻水の緩和効果、のどの痛み、いがらっぽさの緩和効果といったのど・声の諸症状に効果を奏する。そして、本発明で言う「使用感」とは、本発明にかかる咽喉頭用液状組成物を摂取した際に、咽喉頭部に感じる実効感、例えば咽喉頭用液状組成物を摂取し嚥下した際に、咽頭部に感じる温熱感や持続的な刺激感であり、のどの荒れ、乾きを緩和し声の嗄れやかすれを防止する効果、或いは咽頭部や鼻腔部の乾燥が緩和されるといった効果を、使用者自身が実感できるといった、上記のど・声の諸症状に対する緩和・予防等を含む効果全般を指すものである。特に発声向上効果とは会話などで日常的に用いられる話し声や歌唱に用いられる歌声における発声を、正常な状態(滑らかな発声)に維持する効果を奏するもの、或いは異常な状態の発声(嗄れた、荒れた発声)を正常な状態に速やかに復帰させる効果を奏するものである。例えば嗄れた声が当該咽喉頭用液状組成物を経口することにより濁りのないきれいな発声が出来ることを意味する。
【0036】
本発明に係る咽喉頭部位の改善方法は、具体的には上記咽喉頭用液状組成物をそのまま或いは既知の溶媒等により希釈、或いは減圧濃縮、凍結乾燥等の既存の方法により濃縮して得られた製剤を、服用又は塗布等の方法により摂取することで実施できる。具体的には、咽喉頭用液状組成物(製剤化されたものも含む)を液状のまま飲用する方法、希釈した咽喉頭用液状組成物をスプレー容器に分注し口腔内、咽喉頭部へ直接スプレーする方法が例示できる。
【0037】
具体的な例として、可溶性固形分濃度15〜75重量%、好ましくは25〜60重量%に調製された黒豆抽出物を、例えば1回量摂取量の1g毎にアルミパック等に分注し、これを服用する方法、数回分をチューブ容器、スプレー容器等に充填し、使用毎に液を口腔内或いは鼻腔内に噴霧、滴下することにより摂取する方法が挙げられる。或いは、吸引剤、吸入剤等の形態であってもよい。この時、既存ののどや声の諸症状に効果があるとされる医薬品成分や各種植物抽出物等を、本発明の効果を妨げない範囲で任意で添加してもよい。かかる形態をもって本発明にかかる咽喉頭用液状組成物を摂取することにより、のどや声の諸症状を改善し、或いはのどの乾燥を予防するといった咽喉頭部の改善効果を得ることができる。
3)うがい薬と該うがい薬を用いた含嗽方法
さらに本発明は、1)で得られた特定の可溶性固形分濃度を有する咽喉頭用液状組成物を有効成分とするうがい薬と、該うがい薬を用いた含嗽方法に関する。
【0038】
本発明でいううがい薬とは、通常のうがい薬の態様をなすものであり、咽喉頭部位を洗浄する際に用いられる液状品を指す。本発明におけるうがい薬は、可溶性固形分濃度が15〜75重量%、好ましくは25〜60重量%である黒豆抽出物を有効成分とする咽喉頭用液状組成物を含有するという特徴を有する。
【0039】
本発明に係るうがい薬に含まれる咽喉頭用液状組成物は、上記1)に記載の咽喉頭用液状組成物を用いる。咽喉頭用液状組成物をうがい薬とするために特別な処理を施す必要はなく、該咽喉頭用液液状組成物、好ましくは可溶性固形分濃度が15〜75重量%に範囲のものを、そのまま或いは既知の方法により濃縮・希釈して得ることができる。
【0040】
さらに本発明では、上記うがい薬を用いた含嗽方法を提供する。
【0041】
本発明に係る含嗽方法は、上記うがい薬を水で希釈してうがいを行う方法と、うがい薬をそのまま飲用し、次いで水で通常のうがいを行う方法が挙げられる。
【0042】
まず、うがい薬を水で希釈してうがいを行う方法について説明する。
【0043】
本発明に係るうがい薬は、上述の咽喉頭用液状組成物を有効成分として含有するものであり、その可溶性固形分濃度は15〜75重量%の範囲にあるものである。そして、咽喉頭用液状組成物の他に、本発明の効果を妨げない範囲において、既存のうがい薬に添加されているポピドンヨード等の成分をはじめ、着色料、香料、酸化防止剤、増粘剤、保存剤、安定剤、果汁エキス、ビタミン・ミネラル類、消炎剤、保湿剤等が含まれていても良い。例えば、溶液の保存安定性を向上させるためにプロピレングリコールやグリセリンを溶液に対し0.5〜5重量%程度添加する例が挙げられる。また、アルコール類を溶媒に添加することもできる。
【0044】
次いで、含嗽方法について説明する。
【0045】
本発明に係る含嗽方法には、上記うがい薬を水で希釈しうがいを行う方法と、うがい薬をそのまま飲用し、次いで水だけでうがいを行う方法が含まれる。
【0046】
前者の方法は、既存の濃縮されたうがい薬を水で希釈してうがいをする方法と同様であるが、本発明では特定の可溶性固形分濃度を有する黒豆抽出物を有効成分として含有している点で大きく異なる。希釈する場合の水の量は、使用するうがい薬の量の15〜25倍量が例示できる。即ち、最終的にうがいを行う希釈されたうがい液中の黒豆抽出物由来の可溶性固形分濃度が0.5〜5重量%になるよう調整することが好ましい。希釈後のうがい液中の黒豆抽出物由来の可溶性固形分濃度が0.5重量%以下では十分な使用感が得られず、また5重量%以上としても、有意な使用感の向上は認められない。
【0047】
後者の含嗽方法は、うがい薬を希釈せずそのまま飲用し、次いで水だけでうがいを行う方法である。うがい薬は上述の通り、黒豆抽出物由来の可溶性固形分濃度が特定の範囲にあるものであればよい。飲用するうがい薬の量は、0.3〜2.0gの範囲が例示できる。うがい薬を飲用した後にうがいを行う水の量は、特に制限されないが、水によるうがいを行わない場合でも、うがい薬中の咽喉頭用液状組成物が効果的に咽喉頭部への効果を奏することが期待できるが、水の量が多すぎてうがいの回数が多くなると、飲用して咽喉頭部に塗布されたうがい薬の流出が早まり、効果を発揮する時間が短くなるため好ましくない。好ましくは10〜20cc程度の水で2〜3回のうがいを行えば本発明の目的を達成することができる。
【0048】
いずれの含嗽方法であっても、うがい薬0.3〜2.0gを使用することにより、咽喉頭部位への保湿、洗浄等の効果と、黒豆抽出物に由来する発声向上効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0049】
かくして得られた黒豆抽出物を含有する咽喉頭用液状組成物は、特定範囲の可溶性固形分濃度を有し、経口時に直ちに滲みるように感じる声帯部分の塩分の辛味的温熱感、及び少し遅れて声帯部分を意識させる持続的刺激残存感からなる経口時の使用感を増強し、発声向上効果をはじめのどの乾燥防止、痰切れ、花粉症の緩和、のどの痛み、いがらっぽさの緩和などのど・声の諸症状に対する効果を主観的心理学的に助長する効果がある。
【0050】
さらに、係る咽喉頭用液状組成物を含有するうがい薬は、上記黒豆抽出物に由来する効果に加え、咽喉頭部位、上気道における湿潤状態を維持し、健康増進に効果を奏するものである。
【0051】
以下に本発明の構成ならびに効果をより明確にするために、実施例、比較例及び実験例を記載する。但し本発明は、これら実験例等になんら影響されるものではない。
実験例1 黒豆抽出液の調整
水7Lに豆科植物(黒豆)の種子1kgを投入して、室温下に一夜放置し、続いて煮沸を2時間行った。かくして得られた熱水抽出物を固液分離し、当該熱水抽出液5.5L(pH5.8)に、酵素としてセルラーゼ(セルロシン AC40(エイチビィアイ製)、力価:4,000units/g)を1.0g添加し、40〜55℃でゆっくり攪拌して2時間処理を行った後、95℃達温にて酵素失活した。得られた酵素処理液に、ろ過助剤及び珪藻土を配合して吸引ろ過し、約5.5L(pH5.8)の可溶性固形分濃度3.5重量%の黒豆抽出液を調製した。さらに10gを取り滅菌容器に分注し、オートクレーブによる121℃/20分の滅菌を行って、使用感官能評価の供試試料とした。
比較例
実験例1により得られた可溶性固形分濃度3.5重量%の黒豆抽出物を減圧下で可溶性固形分濃度35%になるまで濃縮して、次いで凍結乾燥に供して黒豆抽出物パウダー4.6kg(5%水分含有)を得た。当該パウダーを0.37gに小分けして使用感官能評価の供試試料(比較例品)とした。
実施例1
実験例1で得られた可溶性固形分濃度3.5の抽出液を減圧下で可溶性固形分濃度が35重量%になるまで濃縮し、濃縮エキス4.4kgを得た。当該濃縮エキス1.0gを取り滅菌容器に分注し、オートクレーブによる121℃/20分の滅菌を行って、使用感官能評価の供試試料(実施例1品)とした。
実施例2
実験例1で得られた黒豆抽出液を、減圧下で可溶性固形分濃度70%まで濃縮して濃縮エキス2.2kgを得た。次いで当該濃縮液50部、マルトース26.3部、水23.7部からなる可溶性固形分濃度60重量%の黒豆抽出液(内、黒豆由来の可溶性固形分濃度35重量%)を含有するシロップを調製し、該当液1.0gを取り滅菌容器に分注し、オートクレーブによる121℃/20分の滅菌を行って、使用感官能評価の供試試料(実施例2品)とした。
実験例2 使用感の官能評価
成人男性(33〜56歳)6名の被験者を用い、本発明の実施例1、2、実験例1で得られた黒豆抽出物及び比較例で調製した各試料を1日1回午前中に服用し、その使用感を官能評価した。尚、摂取量は黒豆抽出物として等量摂取できるように夫々1.0g、1.0g、10g、0.37gとした。評価方法は経口時直ちに声帯部分に滲みるように感じる塩分の辛味的温熱感及び、経口時から少し遅れて声帯部分を意識させる持続的刺激残存感について、かなり感じる(3点)、普通に感じる(2点)、わずかに感じる(1点)、感じない(0点)の4段階の尺度基準を用いた。また声帯部分に滲みるように感じる塩分の辛味的温熱感及び、経口時から少し遅れて声帯部分を意識させる持続的刺激残存感だけでは表現できない効果、使用感については自由表記欄を設けた。
<結果>
表1に6名の被験者の得点数の合計を示し、得点数が高いほどその有効性が高いことを示している。
【0052】
表1の結果から実施例1品(黒豆抽出物由来可溶性固形分濃度35重量%液体製剤)と実施例2品は(黒豆抽出物由来可溶性固形分濃度35重量%にマルトースを添加して可溶性固形分濃度60%に調整した液体製剤)は合計満点36得点中、夫々合計30得点、29得点と効果的な使用感が認められた。又実施例1品及び2品については被験者6名全員、空気が乾燥していたにもかかわらず終日のどの乾燥感を感じなかった。また経口後3名には痰切れが認められた。更に痰切れが認められた3名のうち2名は痰が絡んだガラガラ声が治まってきれいな声になった。痰切れが認められた3名以外の2名は花粉症にかかっていたが2名とも経口後、数時間にわたってくしゃみ、鼻水の緩和が認められた。比較例品(黒豆抽出液由来可溶性固形分濃度95重量%含有パウダー製剤)は経口時直ちに滲みるように感じる温熱感は3得点とほとんどなかったが、少し遅れて生じる刺激残存感は11得点あり、実施例1、実施例2のような液状品よりも低いものの使用感が認められた。また被験者6名中1名は痰切れが認められたが花粉症の2名は緩和効果が認められなかった。被験者6名中4名は刺激残存感11得点に現れていないが、比較例品のパウダーが声帯に異物として残る残存感もあって、いがらっぽさやのどの乾燥感を感じていた。比較例品(黒豆抽出物由来可溶性固形分濃度3.5重量%含有液体製剤)は実施例1のエキス濃度の1/10と低く逆に摂取量を10倍にして黒豆エキス分等量を摂取するようにしたが合計点1得点で使用感は認められなかった。また終日空気が乾燥して、被験者6名中3名が終日のどの乾燥感とのどのいがらっぽさを感じていた。痰切れ、花粉症の緩和は6名とも認められなかった。
【0053】
【表1】

【0054】
実験例3 うがい薬
実施例1品1gを取り滅菌容器に分注し、オートクレーブによる121℃/20分の滅菌処理を行い、これをうがい薬(実施例3品)とした。
使用例1
実施例3品(可溶性固形分濃度35重量%)をそのまま服用し、次いで20ccの水にて5秒間のうがいを3回行い、使用後の官能評価を行った。その結果を表2に示す。
使用例2
実施例3品を20倍量の水と混合し(可溶性固形分濃度1.75重量%)、この液で5秒間のうがいを3回行い、使用後の官能評価を行った。その結果を表2に示す。
使用例3
実施例3品を40倍量の水と混合し(可溶性固形分濃度0.87重量%)、この液で5秒間のうがいを3回行い、使用後の官能評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例
うがい薬を添加せず、20ccの水のみで5秒間のうがいを3回行い、使用後の官能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
<使用感の官能評価>
本発明の実施例で得られたうがい薬を用いた使用例1、2及び比較例で得られた黒豆抽出物及び比較例で調製した各試料による使用感を官能評価した。
評価方法はうがい時に直ちに咽喉頭部位、声帯部分に滲みるように感じる辛味的温熱感と、うがい後に咽喉頭部位、声帯部分を意識させる持続的刺激残存感、そしてうがい後に咽喉頭部位に感じる保湿感を、かなり感じる(◎)、普通に感じる(○)、感じない(×)の3段階の尺度基準を用いて評価した。
<結果>
表2の結果から、使用例1と使用例2のいずれの使用方法によっても、咽喉頭部位への効果、温熱感、残存感、保湿感が得られていることが証明された。特に、使用例1のように濃縮された状態のうがい薬を直接服用し、その後に水でうがいをする方法では、本発明にかかるうがい薬が直接咽喉頭部位を通過、接触することにより、より強い使用感を得られていることが明らかとなった。また、水で希釈してうがいを行った使用例2の場合でも、咽喉頭部位への効果が実感できたとの結果が得られた。
【0057】
しかし、40倍量まで薄めた使用例3では、残存感は感じられるものの温熱感、保湿感は十分に得られなかった。
【0058】
一方、水だけでうがいを行った比較例においては、温熱感、刺激残存感も得られず、うがい後の保湿感についても実感として効果を感じられるものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性固形分濃度が15〜75重量%である黒豆の水溶性抽出物を含有することを特徴とする咽喉頭用液状組成物。
【請求項2】
黒豆の水溶性抽出物に由来する可溶性固形分が20〜40重量%含まれる請求項1に記載の咽喉頭用液状組成物。
【請求項3】
糖類を含む請求項1又は2に記載の咽喉頭用液状組成物。
【請求項4】
糖類がマルトースであり、且つ可溶性固形分濃度が50〜70重量%である請求項3に記載の咽喉頭用液状組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の咽喉頭用液状組成物を摂取することを特徴とする咽喉頭部改善方法。
【請求項6】
請求項1乃至4に記載の咽喉頭用液状組成物を有効成分とすることを特徴とするうがい薬。
【請求項7】
請求項6記載のうがい薬を水で薄めて使用することを特徴とする含嗽方法。
【請求項8】
請求項6記載のうがい薬を服用し、次いで水で通常のうがいを行うことを特徴とする含嗽方法。



【公開番号】特開2006−315966(P2006−315966A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137788(P2005−137788)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】