説明

黒鉛含有成形体及びその製造方法

黒鉛含有成形体は、黒鉛粒子を少なくとも1種の固体添加剤と混合して、少なくとも1種の無機添加剤を含有する混合物にするか、無機添加剤と有機添加剤との混合物を含有する混合物にするか、又は10質量%を超える有機添加剤を含有する混合物にし、こうして得られた混合物を引き続き圧縮する方法により得られ、その際に、使用される少なくとも1種の添加剤が、ISO 13320により測定される1〜500μmの平均粒径(d50)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にシールとして、建築材料、例えば壁張り材もしくは屋根張り材として、例えばレドックスフローセル用の双極板として、熱交換器プレートとして又は熱交換器管としての使用に適している、黒鉛含有成形体並びにその製造方法に関する。
【0002】
例えば化学装置組立において使用されるシール、例えば平形シールは、多数の要求を満たさなければならない。特に、これらは、液体及びガスの低い浸透性を、しかも特に例えば平形シールの場合にシールの平面で、有しなければならない。それとは別に、これらは、高い引張強さに、高い横強度に、良好な熱伝導率に、良好な適合性に及び良好な乾燥滑り特性(Trockengleiteigenschaften)に傑出していなければならない。多数の用途のためには、さらに、高い耐熱性並びに攻撃性の化学薬品に対する良好な耐性は不可欠である。
【0003】
黒鉛の特に−200℃〜+400℃の高い耐熱性、熱負荷下での卓越した寸法安定性、良好な耐薬品性及び高い回復性に基づいて、この種のシールはしばしば黒鉛から製造される。黒鉛の密封性を高めるためには、シール材料として液体含浸された黒鉛を、すなわち細孔が、適した含浸剤での液体含浸もしくは溶融含浸により少なくとも部分的に閉塞されている黒鉛を使用することが、既に提案されている。含浸剤として、例えば溶剤不含の樹脂が使用され、その際にここでシール材料の黒鉛含量は従来、90質量%又はそれ以上である。含浸により、密封性に加えてさらに、前記材料の取扱い並びに耐引っかき性が改善されることができる。
【0004】
しかしながら、そのような液体含浸により製造される材料の欠点は、含浸剤が、特に前記材料の深さ方向もしくはz−方向で、不均一に分布していることである。従って前記材料の表面領域内で高い含浸度及び比較的均質な含浸が達成されるのに対し、こうして含浸された材料の表面領域の間にある内部領域は、ゼロ又は単に比較的低いもしくは不均一な含浸度を有する。それにより、そのような材料から製造されたシールは確かに、それらの表面領域内で、表面含浸により液体及びガスについて比較的高い不浸透性を有する;しかしながら、このシールは、表面領域の間にある中心領域内で比較的浸透性であり、そのためにこれらのシールは特に、平形シールとしての使用に制約されてのみ適している。
【0005】
似た問題は、黒鉛をベースとする建築板、例えば壁張りパネル又は導熱板の場合にも生じる。そのようなプレートに、これらのプレートが規定通りの使用の際に生じる機械的な負荷に耐えることができるように、十分に高い強さ、十分に高い剛さ並びに十分に高い耐摩耗性を付与するために、これらは通常、同様に樹脂又は熱可塑性プラスチックをベースとする結合剤での液体含浸により含浸される。ここでも、前記材料の表面領域内でのみ高い含浸度及び比較的均質な含浸が達成されるが、しかしながら表面領域の間にある内部領域内では達成されず、そのためにこれらのプレートは、それらの断面にわたって不均一な剛さ及び安定性を有し、かつこれらのプレートの横強度は極めて強く変動する。
【0006】
さらに、他の用途のために設計される成形体、例えば双極板、集電板及び電極材料についての要求プロファイルは、高い引張強さ、高い電気伝導率もしくは低い電気抵抗並びに低い接触抵抗を含みうる。そのような成形体の例は詳細には、燃料電池において、レドックスフローセルにおいて又は鉛蓄電池において使用される双極板である。同じ又は少なくとも似た要求プロファイルは、例えば熱交換器プレートとして又は熱交換器管として使用される成形体にも必要とされる。
【0007】
前記の問題の少なくとも一部を克服するために、黒鉛の細孔を閉塞させるために、黒鉛と固体のエチレン−テトラフルオロエチレンコポリマーとが互いに混合されてから、こうして製造された混合物から成形体がシールの製造のために成形されることによって製造され、例えば黒鉛をベースとするシールとしての使用のための材料が既に提案されている。こうして製造されたシール材料の特性が、液体含浸されたシール材料の特性よりも良好であるにも拘わらず、これらの材料の特性の和は、かなりの用途にとってなお改善を要する。
【0008】
本発明の課題は、故に、高い引張強さ、高い横強度、高い熱伝導率、良好な乾燥滑り特性、高い耐熱性並びに良好な耐薬品性を有するだけでなく、幅広い温度範囲にわたって及び/又は低い表面圧力(Flaechenpressung)で、特に液体及びガスに対する特に高い不浸透性に、しかも具体的な用途に応じて特に平面で、すなわちシールのx−y−方向で、及び/又は、例えば双極板又は熱交換器としての使用にとって重要であるような、平面に対して垂直方向で、すなわちz−方向での高い不浸透性に、低い摩耗に並びに低い電気抵抗に、しかしそれにも拘わらず良好な可撓性に、傑出しており、かつ単純にかつ費用がかからずに製造されることができる、黒鉛含有成形体を提供することである。
【0009】
本発明によれば、この課題は、黒鉛粒子を少なくとも1種の固体添加剤と混合して、少なくとも1種の無機添加剤、少なくとも1種の無機添加剤と少なくとも1種の有機添加剤との混合物又は10質量%を超える有機添加剤を含有する混合物にし、こうして得られた混合物を引き続き圧縮する方法により得ることができる黒鉛含有成形体を提供することにより解決され、その際に使用される少なくとも1種の添加剤は、ISO 13320により測定される1〜500μmの平均粒径(d50)を有する。
【0010】
この解決手段は、こうして得ることができる、黒鉛をベースとする成形体及び特別な粒度を有する黒鉛が、高い溶浸度の細孔を閉塞させる添加剤を有するだけでなく、細孔を閉塞させる添加剤が、そのうえ三つ全ての次元にわたりかつ特に成形体の深さ方向で、すなわち成形体のz−方向で、均質に分布されているという意外な知見に基づくものである。この理由から、前記成形体は、三つ全ての次元で及び特に成形体の平面でも、すなわちx−y−方向でもしくは成形体がその最も長い寸法を有する平面で、同じ特性を有し、かつ特にx−y−方向でも、高い引張強さ、z−方向における高い強さ、高い熱伝導率、良好な乾燥滑り特性、高い耐熱性、良好な耐薬品性、液体及びガスに対する高い密封性及び特に平面密封性に並びに高い安定性にも、しかも特にこの成形体の低い表面圧力(Flaechenpressung)の場合にも、傑出している。三つ全ての次元にわたる1種の添加剤もしくは複数の添加剤の均質な分布に基づいて、すなわち、前記添加剤が、成形体の表面近くの領域内にだけでなく、特に成形体の表面近くの領域の間にある内部領域もしくは中心領域内にも存在することが特に達成される。それにより、前記成形体がその表面領域内でのみ高い不浸透性を有するが、しかし前記成形体の内部でガス又は液体が拡散しうることが防止される。むしろ、均質な添加剤分布により、前記成形体の内部でも、全ての次元で高い不浸透性が、故に特に高い平面密封性も、達成される。
【0011】
技術水準から知られた成形体と比べたさらに特別な利点において、本発明による成形体は迅速に、単純にかつ費用がかからずに、しかも特に連続的な方法によっても、製造可能であり、前記方法の場合に、例えば黒鉛粒子を含有するガス流に連続的に、固体の、好ましくは乾燥した添加剤が、例えばスクリューコンベヤーにより添加され、それにより混合され、この混合物がついでローラーに連続的に導かれ、その中で混合物が圧縮される。
【0012】
示されたように、本発明による成形体は、黒鉛粒子がまず最初に少なくとも1種の固体添加剤と混合されて混合物にされてから、こうして得られた混合物が引き続き圧縮される方法により得られる。このことは、本特許明細書の範囲内で、液体含浸もしくは溶融含浸とは異なり、混合物の圧縮まで、黒鉛粒子も、添加剤も、黒鉛粒子と添加剤とを含有している混合物も、溶融又は焼結されないことであると理解される。
【0013】
使用される少なくとも1種の添加剤が、1〜500μmの平均粒径(d50)を有するという規定は、使用される全ての添加剤が、ISO 13320に規定された測定方法により測定される、相応する平均粒径(d50)を有することを意味する。
【0014】
原則的に、黒鉛出発物質として、知られた全ての黒鉛をベースとする粒子、すなわち例えば天然黒鉛又は合成黒鉛の粒子が使用されることができる。
【0015】
しかしながら、本発明の特に好ましい一実施態様によれば、黒鉛粒子として膨張黒鉛の粒子を使用することが提案される。膨張黒鉛は、天然黒鉛に比べ、炭素六角網平面層に対して垂直の方向に例えば80倍又はそれ以上膨張されている黒鉛であると理解される。この膨張に基づいて、膨張黒鉛は、卓越した成形性(Formbarkeit)及び良好なからみ合い作用(Verzahnbarkeit)に傑出しており、そのためにこの黒鉛は、本発明による成形体の製造に特に適している。同様に高いその多孔度に基づいて、膨張黒鉛はそのうえ、相応して小さな粒径を有する添加剤粒子と極めて良好に混合され、かつ前記膨張度に基づいて容易に圧縮もしくは圧密化されることができる。芋虫状構造を有する膨張黒鉛を製造するには、通常、黒鉛、例えば天然黒鉛が、インターカレーション化合物、例えば硝酸又は硫酸と混合され、例えば600〜1 200℃の高められた温度で熱処理される。
【0016】
好ましくは、DIN 66165に規定された測定方法及びふるいセットにより測定される少なくとも149μm及び好ましくは少なくとも180μmの平均粒径(d50)を有する天然黒鉛から製造されている膨張黒鉛が使用される。
【0017】
特に良好な結果は、この実施態様の場合に、10〜1 400、好ましくは20〜700及び特に好ましくは60〜100の膨張度を有する膨張黒鉛の粒子を用いて特に得られる。
【0018】
これは、0.5〜95g/l、好ましくは1〜25g/l及び特に好ましくは2〜10g/lのかさ密度を有する膨張黒鉛に本質的に相当する。
【0019】
本発明思想のさらなる展開において、150〜3 500μm、好ましくは250〜2 000μm及び特に好ましくは500〜1 500μmの平均粒径(d50)を有する黒鉛粒子及び特に膨張黒鉛の粒子を使用することが提案される。これらの黒鉛粒子は、粒状の添加剤と特に良好に混合及び圧縮されることができる。この場合に、黒鉛粒子の平均直径(d50)は、DIN 66165に規定された測定方法及びふるいセットにより測定される。
【0020】
好ましくは、圧縮すべき混合物は、黒鉛粒子及び好ましくは相応する膨張黒鉛の粒子を50〜99質量%、好ましくは75〜97質量%及び特に好ましくは80〜95質量%含有する。
【0021】
本発明の特に好ましい一実施態様によれば、前記成形体は、ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(内圧40バール)で、DIN EN 13555により室温で測定される、10-1mg/(s・m)未満、好ましくは10-2mg/(s・m)未満及び特に好ましくは10-3mg/(s・m)未満の不浸透性を有する。
【0022】
示されたように、本発明は、原則的な3つの実施態様、すなわち、第一に、黒鉛に加えて無機添加剤のみを含有する黒鉛含有成形体、第二に、黒鉛に加えて有機添加剤のみをしかも10質量%超の量で含有する黒鉛含有成形体、及び第三に、黒鉛に加えて無機添加剤並びに有機添加剤を含有する黒鉛含有成形体を含む。
【0023】
黒鉛含有成形体が無機添加剤のみを含有し、有機添加剤を含有しない最初に挙げた実施態様において、この成形体もしくは圧縮すべき混合物は、1種又はそれ以上の無機添加剤を好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは2〜20質量%及び極めて特に好ましくは3〜10質量%含有する。それにより、高い不浸透性が達成されるだけでなく、特に500℃までの良好な酸化安定性並びに高い引張強さ及び全体で成形体の卓越した機械的安定性も達成される。
【0024】
本発明思想のさらなる展開において、最大1 800℃、好ましくは50〜1 000℃及び特に好ましくは100〜650℃の溶融温度を有する無機添加剤を使用することが提案される。
【0025】
良好な結果は特に、少なくとも1種の無機添加剤が、最大1 800℃、好ましくは50〜1 000℃及び特に好ましくは100〜650℃のガラス転移温度を有する場合にも達成される。
【0026】
本実施態様のさらに好ましい一変型によれば、少なくとも1種の無機添加剤は、50〜950℃及び好ましくは100〜600℃の焼結温度を有する。
【0027】
原則的に、この成形体はこの実施態様の場合に、黒鉛及び無機添加剤に加え、なお充填剤を含有することができるが、これはしかしながら不必要であり、好ましくもない。故に、この実施態様による本発明による成形体は好ましくは、前記の量の無機添加剤と、残部の黒鉛とからなる。
【0028】
無機添加剤は、任意のあらゆる無機材料であってよい。良好な結果は、無機添加剤が、少なくとも1種のガラス形成成分及び/又はガラス形成成分の少なくとも1種の前駆物質である場合に特に得られる。そのような材料を用いて、例えば250℃〜600℃の比較的高い温度で、液状及びガス状の物質についての成形体の高い不浸透性が特に達成される。
【0029】
これに関して良好な結果は、少なくとも1種のガラス形成成分及び/又はガラス形成成分の少なくとも1種の前駆物質が、リン酸塩類、ケイ酸塩類、アルミノケイ酸塩類、酸化ホウ素類、ホウ酸塩類及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の混合物からなる群から選択されている化合物である場合に特に達成される。
【0030】
本発明の特に好ましい一実施態様によれば、ガラス形成成分としてリン酸塩が使用される、それというのも、これは成形体の断面全体で良好に分布されるからである。特に適したリン酸塩類の例は、リン酸二水素アンモニウム、ポリリン酸塩、リン酸水素塩、リン酸カルシウム類及びリン酸アルミニウム類からなる群から選択されているものである。
【0031】
従って、無機添加剤は、その化学的性質及び使用される量に関して、成形体が、250〜600℃の温度範囲内で及び特に300〜550℃の温度範囲内で不浸透性であるように好ましくは選択され、その際に本発明の意味での不浸透性は、成形体が、32MPaの表面圧力で好ましくは大気汚染防止に関する技術指針(TA-Luft)により300℃で48時間のエージング後に又は好ましくは400℃で48時間のエージング後に、1×10-4mbar・l/s・m未満の漏れ速度(1.1バール、ヘリウム)を有することであると理解される。
【0032】
本発明思想のさらなる展開において、圧縮すべき混合物中の1種の無機添加剤もしくは複数の無機添加剤が、ISO 13320により測定される0.5〜300μm及び好ましくは1〜50μmの平均粒径(d50)を有することが提案される。
【0033】
さらに、この実施態様による無機添加剤のみを含有する成形体が、少なくとも0.7g/cm3の密度及び好ましくは1.0〜1.4g/cm3の密度を有することが好ましい。
【0034】
本発明の極めて特に好ましい第二実施態様によれば、本発明による成形体は、有機添加剤のみを含有し、無機添加剤を含有しない。良好な結果は特に所望の不浸透性に関して、しかし高い引張強さ及び機械的安定性に関しても、圧縮すべき混合物もしくは成形体が、10超〜50質量%、好ましくは10〜25質量%及び特に好ましくは10〜20質量%の1種又はそれ以上の有機添加剤を含有する場合に特に達成される。10質量%を上回る有機添加剤の添加により、極めて高い引張強さ及び成形体の特にz−方向での高い不浸透性を有する成形体が得られる。それとは別に、比較的大量の有機添加剤の添加が、付形を可能にし、かつ前記成形体と、例えば本発明による他の成形体、例えば黒鉛フィルム、金属箔、金属板又は金属ブロックと、又は繊維製シート状構造物と、例えばフェルトとのより良好な溶接性をもたらす。そのうえ、それにより、より少量の有機添加剤の添加の場合よりも良好な滑り摩擦並びに高い横強度が達成される。
【0035】
原則的に、この成形体はこの実施態様の場合に、黒鉛及び有機添加剤に加え、なお充填剤を含有することができるが、これはしかしながら不必要であり、好ましくもない。故に、この実施態様による本発明による成形体は好ましくは、前記の量の有機添加剤と、残部の黒鉛とからなる。
【0036】
原則的に、有機添加剤として任意のあらゆる有機材料が使用されることができる。良好な結果は、有機添加剤が、熱硬化性プラスチック、熱硬化性プラスチック、エラストマー及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるポリマーである場合に特に得られる。そのような材料を用いて、例えば−100℃〜300℃の比較的低い温度で、液状及びガス状の物質についての成形体の高い不浸透性が特に達成される。
【0037】
相応するポリマーの例は、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ベンズオキサジン、ポリウレタン、ニトリルゴム、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル及びフルオロポリマー、例えばポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン及び前記の化合物の2種又はそれ以上の混合物又はコポリマーである。
【0038】
この実施態様の極めて特に好ましい一変型によれば、1種の有機添加剤もしくは複数の有機添加剤は専らフッ素不含のポリマーである。このことは、本発明の範囲内で意外なことに、必要な全ての特性のバランス、例えば高い引張強さ、高い横強度、高い熱伝導率、良好な乾燥滑り特性、高い耐熱性、良好な耐薬品性及び液体及びガスに対する高い不浸透性にとって、特に有利であることが判明している。
【0039】
相応するフッ素不含のポリマーの例は、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ベンズオキサジン、ポリウレタン、ニトリルゴム、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン及び前記の化合物の2種又はそれ以上の混合物又はコポリマーからなる群から選択されるポリマーである。特に適したポリオレフィンの例がポリエチレン及びポリプロピレンであるのに対し、ニトリルゴムとして特にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴムが適している。特にシリコーン樹脂の添加により、フルオロポリマーの添加と比べて、より良好な密封性及び特に有意により良好な平面密封性が達成される。
【0040】
従って、有機添加剤は、その化学的性質及び使用される量に関して、成形体が、−100〜300℃の温度範囲内で及び特に−20〜250℃の温度範囲内で極めて特に室温で不浸透性であるように好ましくは選択され、その際に本発明の意味での不浸透性は、成形体が、ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(内圧40バール)で、DIN EN 13555により前記の温度範囲内で測定される、10-1mg/(s・m)未満、好ましくは10-2mg/(s・m)未満及び特に好ましくは10-3mg/(s・m)未満の不浸透性を有することであると理解される。
【0041】
特に、とりわけz−方向での高い不浸透性が必要である用途、例えば双極板として又は熱交換器プレートとして設計される成形体は、成形体が、−100〜300℃の温度範囲内で及び特に−20〜250℃の温度範囲内でガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(1バールのヘリウム試験ガス内圧)で、DIN 28090-1に従って測定装置中で室温でDIN 28090-1に従って前記の温度範囲中で測定されるz−方向での不浸透性が、10-1mg/(s・m2)未満、好ましくは10-2mg/(s・m2)未満及び特に好ましくは10-3mg/(s・m2)未満を有することが好ましい。
【0042】
有機添加剤の添加に基づいて、黒鉛含有成形体を、これがDIN ISO 1924-2により測定される10〜35MPa及び好ましくは15〜25MPaの引張強さを有するように備えることが容易に可能である。
【0043】
本発明思想のさらなる展開において、圧縮すべき混合物中の1種の有機添加剤もしくは複数の有機添加剤が、ISO 13320により測定される1〜150μm、好ましくは2〜30μm及び特に好ましくは3〜10μmの平均粒径(d50)を有することが提案される。
【0044】
さらに、この実施態様による有機添加剤のみを含有する成形体が、少なくとも1.0g/cm3の密度、好ましくは1.2〜1.8g/cm3の密度及び特に好ましくは1.4〜1.7g/cm3の密度を有することが好ましい。
【0045】
本発明の極めて特に好ましい第三実施態様によれば、本発明による成形体は、有機添加剤と、無機添加剤とを含有する。この実施態様の特別な利点は、有機添加剤及び無機添加剤の組合せにより、液体及びガスに対する成形体の高い不浸透性が、比較的極めて低いないし比較的極めて高い温度の極めて幅広い温度範囲にわたって達成されることである。このことは、例えば無機添加剤及び有機添加剤が選択されることによって達成されることができ、その際に無機添加剤が、有機添加剤が例えば熱分解、燃焼又は分解反応により分解される温度の範囲内及び特にそれをぎりぎり下回る温度で、例えば焼結過程又は溶融過程により開始される、成形体の圧縮に寄与し、こうしてより高い温度で有機添加剤の役割を引き受けることが始まる。
【0046】
これに関して特に良好な結果を達成するためには、本発明思想のさらなる展開において、圧縮すべき混合物もしくは成形体が、無機添加剤1〜25質量%及び有機添加剤1〜25質量%及び好ましくは無機添加剤3〜20質量%及び有機添加剤5〜15質量%を含有することが提案される。
【0047】
原則的に、この成形体はこの実施態様の場合に、黒鉛、無機添加剤及び有機添加剤に加え、なお充填剤を含有することができるが、これはしかしながら不必要であり、好ましくもない。故に、この実施態様による本発明による成形体は好ましくは、前記の量の有機添加剤と、無機添加剤と、残部の黒鉛とからなる。
【0048】
無機添加剤として及び有機添加剤として、特に本発明の前記で既に他の2つの極めて特に好ましい実施態様のために挙げたものが適している。特に無機添加剤としてガラス形成成分及び有機添加剤としてシリコーン樹脂の組合せを用いて、とりわけ卓越した平面密封性に関して、特に良好な結果が達成される。好ましくは、無機添加剤及び有機添加剤は、前記で既に他の2つの極めて特に好ましい実施態様のために挙げた平均粒径を有する。
【0049】
好ましくは、有機添加剤及び無機添加剤は、それらの化学的性質及び使用される量に関して、成形体が、−100〜600℃の温度範囲内で及び特に−20〜550℃の温度範囲内で不浸透性であるように好ましくは選択され、その際に本発明の意味での不浸透性は、成形体が、ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(内圧40バール)で、DIN EN 13555により−100〜300℃の温度範囲内で測定される、10-1mg/(s・m)未満の不浸透性を有し、かつ成形体が、32MPaの表面圧力で好ましくは大気汚染防止に関する技術指針により300〜600℃の温度範囲内で48時間のエージング後に測定される、1×10-4mbar・l/s・m未満の漏れ速度(1.1バール、ヘリウム)を有することであると理解される。好ましくは、前記成形体は、ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(内圧40バール)で−100〜600℃及び好ましくは−20℃〜550℃の温度範囲内で、DIN EN 13555により測定される、10-2mg/(s・m)未満及び特に好ましくは10-3mg/(s・m)未満の不浸透性を有する。
【0050】
本発明思想のさらなる展開において、この実施態様による有機添加剤と無機添加剤とを含有する成形体が、少なくとも0.7g/cm3の密度及び好ましくは1.0〜1.8g/cm3の密度を有することが提案される。
【0051】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、前記成形体は、少なくとも本質的には平面状に、しかも例えばプレート、ストリップ又はフィルムとして、形成されている。本質的には平面状に形成される成形体は、本発明の範囲内で、特に成形された成形体、例えばシールリングであるとも理解される。平面状に形成される成形体については、高い平面密封性の利点が特に良好に利用されうる。
【0052】
前記成形体の機械的安定性を高めるために、この成形体は二次元又は三次元に構造化された強化材が備えられていてよい。このためには、特に構造化された板、例えば穴あき板(Spiessbleche)が適している。
【0053】
本発明のさらなる対象は、以下の工程を含む前記の成形体の製造方法である:
a)黒鉛粒子を少なくとも1種の固体添加剤と混合して、少なくとも1種の無機添加剤、少なくとも1種の無機添加剤と少なくとも1種の有機添加剤との混合物又は10質量%を上回る有機添加剤を含有する混合物にする工程、その際に使用される少なくとも1種の添加剤は、ISO 13320により測定される1〜500μmの平均粒径(d50)を有し、並びに
b)処理工程a)において得られた混合物を圧縮する工程。
【0054】
好ましくは、本発明による方法は、本発明による成形体を迅速に、単純にかつ費用がかからずに製造するために、連続的に実施される。
【0055】
連続的な方法手順は、例えば管路系中で実施されることができ、前記系中で、処理工程a)による混合は、黒鉛粒子を含有するガス流に、固体添加剤が、例えばスクリューコンベヤーにより供給されるように実施され、かつこうして得られた、黒鉛粒子と添加剤とを含有する混合されたガス流が処理工程b)による圧縮のためにローラーに導かれる。こうして、黒鉛粒子及び添加剤が、迅速にかつ単純に互いに混合されるだけでなく、特に温和に、すなわちより大きな機械的応力なしで、混合されることができるので、例えば静的又は動的な撹拌機中で数分間又はそれどころか数時間混合する際に必然的に起こるような、混合の際の固体粒子の粉砕、例えば微粉砕は回避される。それにより、本発明による成形体の前記の有利な特性、とりわけ高い引張強さ並びに高い横強度が促進される。
【0056】
本発明による方法の場合に、従って、圧縮の前に、静的又は動的撹拌装置中での5分を上回る、とりわけ20分を上回る及び特に1時間を上回る混合は、実施されない。
【0057】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、黒鉛粒子と添加剤とを含有する混合物は、処理工程b)による圧縮の際に又は圧縮後に、溶融及び/又は焼結される。本発明の範囲内で、意外なことに、それにより液体及びガスに対する成形体の不浸透性がさらに上昇されることができることが確かめられた。理論に結びつけるつもりではないが、そのような溶融もしくは焼結により、黒鉛粒子と添加剤粒子との結合が改善され、ついで低粘度の添加剤により別の細孔が閉塞され、かつ接触点が生成されると考えられる。
【0058】
最終的な付形のためには、別個の成形工程が行われることができ、その際に、成形体が、例えば成形、刻み目つけ、接合、ホットプレス、熱成形、折り曲げ、深絞り、エンボシング又はスタンピングにより形成される。
【0059】
その際に付形工程は、有利には最終的な圧縮工程の前に行われることができる。例えば、シールとしての成形体の使用の際に、成形体を密封すべき2つの部材の間にはさむことにより成形し、引き続き、例えば温度適用により最終的に圧縮することが有利でありうる。予備圧縮は、しかしながら既に成形の前に、例えばプレスにより、実施されることができる。
【0060】
さらに、前記成形体はプレス型中で加熱されることができ、それにより、特定の輪郭、形、波形及び/又はエンボスが生成されることができる。添加剤は、これらの形を安定化させ、かつ従来の黒鉛フィルムから知られた回復を防止する。本発明により生成される機械的な耐荷重性は、そのような方法を使用することをはじめて可能にする。
【0061】
最後に、本発明は、シール要素として、燃料電池、レドックスフローバッテリーの双極板として、導熱フィルムとして、建築分野における成形品、特に壁張り材、屋根張り材又は導熱板として、鉛蓄電池における又は相応するハイブリッドシステムにおける集電板として、PCM−黒鉛貯蔵体におけるフィルム又はフィンとして、ライニング材料として、接触要素として、バッテリー系用の電極材料として、熱分配要素として、平面加熱器として、個々の層を溶接できる黒鉛管を巻き取るための材料として、スタッフィングボックスパッキンとして、化学用塔のためのパッキンとして、熱交換器プレートとして又は熱交換器管としての、前記の黒鉛含有成形体の使用に関する。
【0062】
レドックスフローバッテリーにおける双極板としての成形体の本発明による使用のためには、前記成形体は好ましくは0.02〜1.5mmの厚さ、特に好ましくは0.2〜1mmの厚さ及び極めて特に好ましくは0.5〜0.8mmの厚さを有するフィルム又はプレートとして形成されている。より厚いプレートは、例えば、個々の2つの成形体のプレス、接着、ヒートシールにより製造されることができる。これは、加圧して又は加圧せずにかつ接着剤、接着促進剤(Haftvermittlern)の使用によるか又は成形体中に存在している添加剤により、可能である。その際に、2つの成形体を直接溶接できることが特に好ましい。
【0063】
双極板としての前記成形体の本発明による使用の際に、本発明による成形体を、好ましくは黒鉛及び/又は炭素及び特に好ましくは黒鉛繊維及び/又は炭素繊維を含有するフェルトと結合させることが特に有利でありうる。その場合に、結合は例えば接着により行われることができる。特に、導電性接着剤、例えば銀粒子、炭素粒子又は黒鉛粒子で充填された接着剤が使用されることができる。そのような結合は、プラスチック、特に前記で有機添加剤のために記載されたポリマーとの溶融によるか又は焼結によっても行われることができる。最も単純な場合には、すなわちフェルトは、本発明による成形体と、別の材料なしで熱により結合される。
【0064】
前記の実施態様の場合に、フェルトの密度は好ましくは0.01〜0.2g/cm3である。その際に、フェルト平面で測定される比電気抵抗は、好ましくは0.5〜15Ωmmであり、かつフェルト平面に対して垂直方向で測定される比電気抵抗は、好ましくは2〜20Ωmmである。これらの値は、20〜30%のフェルトの圧縮に関連付けられる。より強いもしくはより弱い圧縮の場合に、比電気抵抗は、相応してより低いもしくはより高い。フェルトの比表面積は、好ましくは0.2〜300m2/gである。
【0065】
とりわけ、建築分野における成形品として、特に壁張り材、屋根張り材又は導熱板としての成形体の本発明による使用の際に、成形体を塑性変形可能に、かつ例えばプレートの形で備えることが有利であることが判明しているので、成形体が、組み込み位置で壁又は屋根の所定の輪郭、例えばエッジ、カーブ、コーナー、フリーズ等で単純に成形されることができる。引き続き、プレートはそうすると組み込み位置で、例えばなお塑性変形可能なプレートの加熱により組み込まれた状態で、最終固化されることができる。
【0066】
原則的に、本発明による成形体は、添加剤の完全硬化の前又は後にあるいは溶融及び/又は焼結の前又は後に使用されることができる。
【0067】
それとは選択的に、成形体を、添加剤の部分硬化、溶融及び/又は焼結後に使用することも可能であり、その際に添加剤の最終的な硬化、溶融及び/又は焼結は、例えば運転温度での使用の際に行われる。この実施態様の場合に、例えば成形体の高い密封性は、使用の過程ではじめて生じる。このことは、組み込みの際に、例えば緊密に結合すべき部材への成形体のより良好な適合を達成するための成形性が可能であるという利点を有する。
【0068】
本発明のさらなる対象は、前記の黒鉛含有成形体の、前記成形体を他の成形体と結合させる方法における使用であり、その際に他の成形体は、例えば黒鉛フィルム、金属箔、金属板、金属ブロック、繊維製シート状構造物、好ましくはフェルト体であってよく、又は前記の成形体であってもよい。その際に、前記成形体の結合は、付加的な接着剤なしで行われる。そのような接着剤は、本発明による使用の場合に不要である、それというのも、成形体中に含まれる有機添加剤が結合剤として作用し、こうして双方の物体の溶接を可能にするからである。
【0069】
以下に、本発明は、有利な実施態様に基づき、かつ添付された図面を参照して、純粋に例示的に説明される。
【0070】
ここで、図は以下のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】技術水準による黒鉛含有成形体を示す図。
【図2】本発明の一実施例による黒鉛含有成形体を示す図。
【0072】
図1には、プレートとして形成された技術水準による黒鉛含有成形体1の略示断面図が示されている。この成形体1は、プレスされた膨張黒鉛2と液状結合剤3とを含有し、その際に結合剤3はその後に、成形体1の側面の液体含浸又は溶融含浸により、成形体1へ導入されている。液体含浸又は溶融含浸による結合剤3の導入に基づいて、これは不均一にのみ及びとりわけ表面上で成形体1へ侵入されており、そのためにとりわけ表面領域の間にある内部領域、例えば楕円形の破線で囲まれた中にある領域4は、僅かにのみ結合剤3を含有するかもしくはほぼ結合剤不含である。それに基づいて、成形体1の特性、特に成形体1の機械的強さ及び密封性は、とりわけ深さ方向もしくはz−方向で変動し、その際に成形体1の表面領域の間にある内部領域は、成形体1の表面領域よりも劣悪な密封性及び劣悪な機械的性質を有する。
【0073】
図2に示された本発明による成形体5は、知られた方法で芋虫状又はアコーディオン状に構成されている膨張黒鉛の粒子6と、添加剤粒子7とからなる。図1に示された技術水準による成形体1とは異なり、添加剤粒子7は、本発明による成形体5中で、成形体5の全ての次元で、しかも特に成形体5の表面領域の間にある内部領域内でも、均一に分布している。
【0074】
図2に示された本発明による成形体5を製造するために、まず最初に黒鉛粒子6を、有機添加剤粒子7と均質に混合してから、こうして製造された混合物を圧縮し、所望の形に成形した。
【0075】
以下に、本発明は、実施例に基づいてさらに説明されるが、しかし本発明を説明するこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0076】
例1
3.5g/lのかさ密度を有する膨張黒鉛を、シリコーン樹脂粉末、すなわちBurghausen、独国のWacker Chemie AG社のSilres MKと混合して、膨張黒鉛80質量%とシリコーン樹脂粉末20質量%とを含有する混合物にし、引き続き容器中で1分間混合した。
【0077】
こうして得られた混合物を、ついで直径90mmを有する鋼管中へ移し、加圧ピストンを用いてそれ自体の重みによりプレスし、約0.07g/cm3の密度を有するプリフォームとして取り出した。引き続き、プリフォームを、プレスを用いて1mmの所望のフィルムの厚さに圧縮し、こうして生じたドープされたフィルムを、プラスチックを溶融させるために、180℃で60分間状態調節した。
【0078】
これらの2つのフィルムを、0.1mmの厚さを有する穴あき板と共にプレスし、この成形体の漏れ速度をDIN EN 13555により試験ガスとしてヘリウム(内圧40バール)で測定した。
【0079】
後出の第1表には、漏れの特定の分類を達成するために必要とされる測定された表面圧力が示されている。
【0080】
比較例1
例1に記載された方法により、2つの黒鉛フィルムを製造したが、ただし、その製造のために専ら膨張黒鉛を使用し、かつ添加剤を使用しなかった。
【0081】
これらの2つのフィルムを、0.1mmの厚さを有する穴あき板と共にプレスし、この成形体の漏れ速度をDIN EN 13555により試験ガスとしてヘリウム(内圧40バール)で測定した。
【0082】
得られた値は、以下の第1表にまとめられている。
【0083】
第1表
【表1】

【0084】
添加剤により、不浸透性が改善されることが明らかに分かる。添加剤の添加により、明らかにより低い表面圧力で、特定の密封性レベルが既に達成される。
【0085】
例2及び3
3.5g/lのかさ密度を有する膨張黒鉛を、無機充填剤、すなわち、例2においてリン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)及び例3において炭化ホウ素(B4C)と混合して、膨張黒鉛90質量%と無機充填剤10質量%とを含有する混合物にし、引き続き容器中で1分間混合した。
【0086】
こうして得られた混合物を、ついで直径90mmを有する鋼管中へ移し、加圧ピストンを用いてそれ自体の重みによりプレスし、約0.07g/cm3の密度を有するプリフォームとして取り出した。引き続き、プリフォームを、プレスを用いて1mmの所望のフィルムの厚さに圧縮し、こうして生じたドープされたフィルムを、180℃で60分間状態調節した。
【0087】
双方の試料について、漏れ速度を、DIN 28090-1により試験ガスとして窒素を用い、かつ2 000g/m2の成形体の面積比質量を基準として表面圧力32MPaで測定した。
【0088】
得られた値は、以下の第2表にまとめられている。
【0089】
比較例2
例2及び3に記載された方法により、黒鉛フィルムを製造したが、ただし、その製造のために専ら膨張黒鉛を使用し、かつ添加剤を使用しなかった。
【0090】
前記試料について、漏れ速度を、DIN 28090-1により試験ガスとして窒素を用い、かつ2 000g/m2の成形体の面積比質量を基準として表面圧力32MPaで測定した。
【0091】
得られた値は、以下の第2表にまとめられている。
【0092】
第2表
【表2】

【0093】
第2表に示された値からは、無機添加剤の添加により、成形体の漏れ速度が顕著に低下されることが明らかに分かる。そのうえ、今やフィルム複合体全体に存在しているガラス状ネットワークの形成により圧縮強さに有利な影響を及ぼす。
【0094】
例4〜7
3.5g/lのかさ密度を有する膨張黒鉛を、無機充填剤として例4及び5についてリン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)及び例6及び7についてリン酸水素アンモニウム(NH42HPO4と混合して、膨張黒鉛95質量%と無機充填剤5質量%とを含有する混合物にし、前記混合物を引き続き容器中で1分間混合した。
【0095】
こうして得られた混合物を、ついで直径90mmを有する鋼管中へ移し、加圧ピストンを用いてそれ自体の重みによりプレスし、約0.07g/cm3の密度を有するプリフォームとして取り出した。引き続き、プリフォームを、プレスを用いて1mmの所望のフィルムの厚さに圧縮し、こうして生じたドープされたフィルムを、以下の第3表にまとめられている異なる条件で状態調節した。
【0096】
全ての試料について、漏れ速度を、DIN 28090-1により試験ガスとして窒素を用い、かつ2 000g/m2の成形体の面積比質量を基準として表面圧力32MPaで測定した。
【0097】
得られた値は、以下の第3表にまとめられている。
【0098】
比較例3
例4〜7に記載された方法により、黒鉛フィルムを製造したが、ただし、その製造のために専ら膨張黒鉛を使用し、かつ添加剤を使用しなかった。
【0099】
前記試料について、漏れ速度を、DIN 28090-1により試験ガスとして窒素を用い、かつ2 000g/m2の成形体の面積比質量を基準として表面圧力32MPaで測定した。
【0100】
得られた値は、以下の第3表にまとめられている。
【0101】
第3表
【表3】

【0102】
第3表に示された値からは、無機添加剤の添加により、成形体の漏れ速度が顕著に低下され、これが状態調節の種類により付加的に影響を受けうることが明らかに分かる。
【0103】
例8
3.5g/lのかさ密度を有する膨張黒鉛を、ポリプロピレン粉末、すなわちClariant社、独国のLicocene PP 2602と混合して、膨張黒鉛80質量%とポリプロピレンポリマー粉末20質量%とを含有する混合物にし、引き続き容器中で1分間混合した。
【0104】
こうして得られた混合物を、ついで直径90mmを有する鋼管中へ移し、加圧ピストンを用いてそれ自体の重みによりプレスし、約0.07g/cm3の密度を有するプリフォームとして取り出した。引き続き、プリフォームを、プレスを用いて0.6mmの所望のフィルムの厚さに圧縮し、こうして生じたドープされたフィルムを、プラスチックを溶融させるために、180℃で60分間エージングした。
【0105】
z−方向での成形体の不浸透性を、ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(1バールのヘリウム試験ガス内圧)でDIN 28090-1に従って測定装置中で室温で測定した。そのうえ、黒鉛含有成形体の引張強さをDIN ISO 1924-2により測定した。得られた値は、以下の第4表にまとめられている。
【0106】
比較例4
例8に記載された方法により、成形体を黒鉛フィルムの形で製造したが、ただし、その製造の際に専ら膨張黒鉛を使用し、かつ添加剤を使用しなかった。
【0107】
z−方向での成形体の不浸透性を、ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(1バールのヘリウム試験ガス内圧)でDIN 28090-1に従って測定装置中で室温で測定した。そのうえ、黒鉛含有成形体の引張強さをDIN ISO 1924-2により測定した。得られた値は、以下の第4表にまとめられている。
【0108】
第4表
【表4】

【0109】
黒鉛フィルムへの有機添加剤の添加により、それらの不浸透性が特にz−方向でも改善され、かつ引張強さも、添加剤不含の黒鉛含有成形体と比較して明らかに上昇されうることが明らかに分かる。
【符号の説明】
【0110】
1 技術水準による成形体
2 (膨張)黒鉛
3 結合剤
4 成形体の領域
5 本発明による成形体
6 (膨張)黒鉛の粒子
7 添加剤粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛含有成形体(5)であって、
黒鉛粒子(6)を少なくとも1種の固体添加剤(7)と混合して、少なくとも1種の無機添加剤(7)を含有する混合物にするか、少なくとも1種の無機添加剤(7)と少なくとも1種の有機添加剤(7)との混合物を含有する混合物にするか、又は10質量%を超える有機添加剤(7)を含有する混合物にし、こうして得られた混合物を引き続き圧縮する方法により得られ、その際に、使用される少なくとも1種の添加剤(7)が、ISO 13320により測定される1〜500μmの平均粒径(d50)を有する、
黒鉛含有成形体(5)。
【請求項2】
黒鉛粒子(6)、少なくとも1種の固体添加剤(7)及びこれらから製造された混合物が圧縮前に溶融されず、かつ焼結されない、請求項1記載の成形体(5)。
【請求項3】
黒鉛粒子(6)として、DIN 66165に規定された測定方法及びふるいセットにより測定される少なくとも149μm及び好ましくは少なくとも180μmの平均粒径(d50)を有する天然黒鉛から好ましくは製造されている膨張黒鉛の粒子(6)が使用される、請求項1又は2記載の成形体(5)。
【請求項4】
膨張黒鉛の粒子(6)が、0.5〜95g/l、好ましくは1〜25g/l及び特に好ましくは2〜10g/lのかさ密度を有する、請求項3記載の成形体(5)。
【請求項5】
ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(内圧40バール)で、DIN EN 13555により室温で測定される、10-1mg/(s・m)未満、好ましくは10-2mg/(s・m)未満及び特に好ましくは10-3mg/(s・m)未満の不浸透性を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項6】
ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(1バールのヘリウム試験ガス内圧)でDIN 28090-1に従って測定装置中で室温で測定される、10-1mg/(s・m2)未満、好ましくは10-2mg/(s・m2)未満及び特に好ましくは10-3mg/(s・m2)未満のz−方向での不浸透性を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項7】
圧縮すべき混合物が、1種又はそれ以上の無機添加剤(7)を1〜50質量%、好ましくは2〜20質量%及び特に好ましくは3〜10質量%含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項8】
少なくとも1種の無機添加剤が、最大1 800℃、好ましくは50〜1 000℃及び特に好ましくは100〜650℃の溶融温度及び/又はガラス転移温度を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項9】
圧縮すべき混合物が、1種又はそれ以上の有機添加剤(7)を10質量%を上回り50質量%まで、好ましくは10質量%を上回り25質量%まで及び特に好ましくは10質量%を上回り20質量%まで含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項10】
圧縮すべき混合物が、有機添加剤(7)としてフッ素不含の(1種又はそれ以上の)ポリマーのみを含有する、請求項9記載の成形体(5)。
【請求項11】
圧縮すべき混合物が、有機添加剤(7)として、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ベンズオキサジン、ポリウレタン、ニトリルゴム、好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン及び前記の化合物の2種又はそれ以上の任意の混合物又はコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項9又は10記載の成形体(5)。
【請求項12】
ISO 13320により測定される1〜150μm、好ましくは2〜30μm及び特に好ましくは3〜10μmの平均粒径(d50)を有する(1種又はそれ以上の)有機添加剤(7)が使用される、請求項1から11までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項13】
圧縮すべき混合物が、少なくとも1種の無機添加剤(7)と、少なくとも1種の有機添加剤(7)とを含有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項14】
ガスとしてヘリウムでの20MPaの表面圧力(内圧40バール)で、DIN EN 13555により−100〜300℃の温度範囲内で測定される、10-1mg/(s・m)未満の不浸透性を有し、かつ成形体が、32MPaの表面圧力で大気汚染防止に関する技術指針により300〜600℃の温度範囲内で48時間のエージング後に測定される、1×10-4mbar・l/(s・m)未満の漏れ速度(1.1バール、ヘリウム)を有する、請求項13記載の成形体(5)。
【請求項15】
成形体が無機添加剤のみを含有し、かつ0.7〜1.4g/cm3の密度を有し、成形体が有機添加剤のみを含有し、かつ1.0〜1.8g/cm3の密度を有し、又は成形体が、無機添加剤及び有機添加剤を含有し、かつ0.7〜1.8g/cm3の密度を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の成形体(5)。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の成形体(5)の製造方法であって、以下の工程:
a)黒鉛粒子(6)を少なくとも1種の固体添加剤(7)と混合して、少なくとも1種の無機添加剤(7)を含有する混合物にするか、少なくとも1種の無機添加剤(7)と少なくとも1種の有機添加剤(7)との混合物を含有する混合物にするか、又は10質量%を上回る有機添加剤(7)を含有する混合物にする工程、その際に、使用される少なくとも1種の添加剤(7)は、ISO 13320により測定される1〜500μmの平均粒径(d50)を有し、並びに
b)処理工程a)において得られた混合物を圧縮する工程
を含む、成形体(5)の製造方法。
【請求項17】
付加的に、成形体(5)が、例えば成形、刻み目つけ、ホットプレス、熱成形、折り曲げ、深絞り、エンボシング又はスタンピングにより形成される付形工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
シール要素として、燃料電池、好ましくはレドックスフローバッテリーの双極板として、導熱フィルムとして、建築分野における成形品、特に壁張り材、屋根張り材又は導熱板として、鉛蓄電池における又は相応するハイブリッドシステムにおける集電板として、PCM−黒鉛貯蔵体におけるフィルム又はフィンとして、ライニング材料として、接触要素として、バッテリー系用の電極材料として、熱分配要素として、平面加熱器として、個々の層を溶接することができる黒鉛管を巻き取るための材料として、スタッフィングボックスパッキンとして、化学用塔のためのパッキンとして、熱交換器プレートとして又は熱交換器管としての、請求項1から15までのいずれか1項記載の黒鉛含有成形体(5)の使用。
【請求項19】
成形体(5)を他の成形体と、特に溶接により、結合させる方法における、請求項1から15までのいずれか1項記載の黒鉛含有成形体(5)の使用であって、
他の成形体が、請求項1から15までのいずれか1項記載の成形体、黒鉛フィルム、金属箔、金属板、金属ブロック又は繊維製シート状構造物、好ましくはフェルト体である、黒鉛含有成形体(5)の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−516374(P2013−516374A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546456(P2012−546456)
【出願日】平成22年12月31日(2010.12.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070976
【国際公開番号】WO2011/080336
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512298708)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (11)
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
【住所又は居所原語表記】Soehnleinstr. 8, D−65201 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】