説明

(メタ)アクリル系樹脂組成物、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法及びその硬化物

【課題】酸素が存在する空気環境下においても充分な硬化が可能で、硬化物表面にべとつき感の生じない(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】多官能(メタ)アクリル樹脂と、SiH基を有するケイ素化合物と、白金化合物と、を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系樹脂組成物、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法及びその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、機械的強度や成形性が高いため、床や壁などのコーティング材等に利用されている。また、その硬化物が透明であることを活かし、レンズ等の光学部品材料として幅広く利用されている。このようなアクリル樹脂は、一般にアクリル酸、メタクリル酸又はこれらをエステル化したモノマーを重合又は共重合させることにより得られる。
【0003】
従来、アクリルモノマーを重合するためにラジカル重合開始剤が用いられている。例えば熱ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾ系ラジカル重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどの過酸化物系ラジカル重合開始剤が一般的に使用されている。また、光ラジカル重合開始剤として、ベンジルジメチルケタールなどのようなアルキルフェノン系化合物や、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのようなアシルフォスフィンオキサイド系化合物が使用されている。
【0004】
しかしながら、ラジカル重合反応は、空気中の酸素によって硬化阻害を受けるため、硬化が不十分となり、硬化物の表面がべとついてしまうという欠点を有している。
【0005】
この酸素の悪影響を避ける方法として、窒素などの不活性ガスを硬化の際に用いることで、酸素濃度を低下させる方法が提案されているが、不活性ガスのコストや酸素欠乏等による作業者への危険性等の問題があった。
【0006】
そこで、酸素が存在する空気環境下において(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させる方法として、例えば特許文献1では、樹脂組成物にパラフィン、ワックス等を添加する方法が提案されている。この方法によれば、樹脂組成物表面にパラフィン等を浮き出させ、空気遮断を行うことでアクリル樹脂組成物を硬化させているが、この方法で得た硬化物は表面仕上がりが低いだけでなく、耐候性をはじめとする諸物性に悪影響を及ぼすという問題点を有している。
【0007】
また、例えば特許文献2では、光硬化反応時に硬化性組成物と混和しない液体組成物を空気層との間に介在させることで、酸素による反応阻害を解決する技術が提案されているが、操作が煩雑となることや、表面に被覆を設ければならないことなどの問題がある。
【0008】
さらに特許文献3では、光ラジカル重合とカチオン重合を併用することで空気と接触する箇所においても十分な硬化物が得られるという方法が提案されているが、カチオン重合は湿度の影響により十分な硬化度を得られないという問題点がある。
【0009】
また、特許文献4では、単官能モノマーであるアクリルモノマーを制御された条件で穏やかに重合するために、重合触媒としてケイ素化合物と白金化合物を用いる方法が提案されている。しかし、特許文献4における組成物では、表面のべとつきがない硬化物は得られないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平1−36508号公報
【特許文献2】特開平8−231617号公報
【特許文献3】特開2009−292989号公報
【特許文献4】特開平10−139824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、酸素が存在する空気環境下において(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させる際に、酸素の影響を軽減するような手法は種々提案されているが、十分ではない。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、酸素が存在する空気環境下においても充分な硬化が可能で、硬化物表面にべとつき感の生じない(メタ)アクリル系樹脂組成物、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために検討を行った結果、多官能(メタ)アクリル樹脂、SiH基を有するケイ素化合物及び白金化合物を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いることで、酸素が存在する空気環境下においても充分な硬化が可能で、表面にべとつき感の生じない硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、多官能(メタ)アクリル樹脂と、SiH基を有するケイ素化合物と、白金化合物と、を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供する。
【0015】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物によれば、多官能(メタ)アクリル樹脂を含むことによって、酸素が存在する空気環境下においても充分な硬化が可能で、硬化物にした際に表面にべとつき感の生じない組成物となる。
【0016】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物においては、多官能(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、ケイ素化合物の含有量は3〜300質量部であり、白金化合物の含有量は0.001〜5質量部であることが好ましい。ケイ素化合物及び白金化合物を多官能(メタ)アクリル樹脂に対して上記割合で含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物は、酸素が存在する空気環境下においてより硬化性が向上し、硬化物表面にべとつき感が生じなくなる。
【0017】
また、本発明は、多官能(メタ)アクリル樹脂と、SiH基を有するケイ素化合物と、白金化合物と、を配合する第1工程と、第1工程で得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物を加熱する第2工程と、を備える(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法を提供する。
【0018】
上記第1工程及び第2工程を備える硬化方法によれば、酸素が存在する空気環境下においても(メタ)アクリル系樹脂組成物を充分に硬化させることが可能となる。
【0019】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法において、第1工程の配合量は、多官能(メタ)アクリル樹脂100質量部を基準として、ケイ素化合物は3〜300質量部であり、白金化合物は0.001〜5質量部であることが好ましい。このような配合割合の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いることにより、酸素が存在する空気環境下においても(メタ)アクリル系樹脂組成物をより充分に硬化させることが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上記硬化方法により得られる、硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法及びその硬化物によれば、酸素が存在する空気環境下でも表面にべとつき感の無い硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリル樹脂と、SiH基を有するケイ素化合物と、白金化合物を含有する。
【0024】
多官能(メタ)アクリル樹脂とは、官能基として分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する、二官能以上の(メタ)アクリル樹脂である。多官能(メタ)アクリル樹脂としては、官能基として(メタ)アクリロイル基を分子中に二つ以上有しているものであれば特に限定することなく使用することができ、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
また、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物においては、硬化物表面にべとつき感が生じないなど特性を阻害しない範囲で、官能基として(メタ)アクリロイル基を分子中に一つ有している単官能(メタ)アクリル樹脂を含有してもよい。このような単官能(メタ)アクリル樹脂は特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシ(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ピレノキシド付加物(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンを有するモノ(メタ)アクリレート、シロキサン構造を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明におけるケイ素化合物は、官能基としてSiH基を有するケイ素化合物であれば特に限定することなく、使用することができる。このようなケイ素化合物としては例えば、一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
―Si―R(4−m) (1)
【0027】
上記一般式(1)中、Rは同種もしくは異種の、置換あるいは非置換の一価の炭化水素基、アルコキシ基、アシロキシ基、シリル基、シロキシ基、水酸基、チオ水酸基、アミノ基、シリルアミノ基、および/またはハロゲンであり、mは1から4までの整数を示す。
【0028】
一般式(1)で示される化合物としては、例えば、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、メトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン、エトキシシラン、トリクロロシラン、ジクロロシラン、クロロシラン、メチルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、トリメチルシラン、ジメチルシラン、メチルシラン、トリエチルシラン、ジエチルシラン、エチルシラン、トリフェニルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、トリアセトキシシラン、ジアセトキシシラン、アセトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0029】
また、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラクロロジシロキサン、1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどのように、ケイ素原子を2個以上含むケイ素化合物も使用することが可能である。
【0030】
さらに、ハイドロジェンポリメチルシロキサン、末端SiHポリジメチルシロキサンなどのように、官能基として分子内に1つ以上のSiH基を有するポリシロキサン、分子内に1個以上官能基としてSiH基を有するポリシルセスキオキサン、分子内に1個以上官能基としてSiH基を有するポリカルボシラン、分子内に1個以上官能基としてSiH基を有するポリシラザン、特開平3−200807号公報、および特開平3−95266号公報に記載されているような有機骨格をもつ官能基としてSiH基を含有するケイ素化合物を使用することも可能である。これらのケイ素化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記ケイ素化合物の含有量は特に制限はないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化特性の向上の観点から、多官能(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して3〜300質量部であることが好ましい。ケイ素化合物が3質量部未満では硬化が不十分になりやすい傾向にあり、300質量部より多いと硬化物が得られにくい傾向にある。上記ケイ素化合物の含有量は、より好ましくは5〜100質量部である。
【0032】
本発明における白金化合物は、一般的にはヒドロシリル化用触媒として知られているものであり、上記ケイ素化合物と作用し重合触媒として用いられる。このような白金化合物の例としては、白金の錯体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの単体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金アセチルアセトナート、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Ptn((CH=CH−)MeSiOSiMe(−CH=CH))m、Pt[(Me(CH=CH−)SiO)]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu))、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Phはフェニル基を表し、m、nは整数を表す)、ジカルボニルジクロロ白金、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号公報および、米国特許3159662号公報中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびに、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号公報中に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号公報中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金アセチルアセトナートが好ましく、白金−ビニルシロキサン錯体が特に好ましい。
【0033】
これら白金化合物の含有量については特に制限はないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化特性の向上の観点から、多官能(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部であることが好ましい。白金化合物が0.001質量部未満では硬化が不十分になりやすい傾向にあり、5質量部より多いと反応が急激に進行し、発泡などにより硬化物が得られにくい傾向にある。上記白金化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0034】
(メタ)アクリル系樹脂組成物には、上記必須成分以外に、硬化遅延剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、フェノール系やリン系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、接着性付与剤、重合禁止剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等を、硬化物表面にべとつき感が生じないなど特性を阻害しない範囲で含有してもよい。
【0035】
次に、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法について説明する。本硬化方法は、多官能(メタ)アクリル樹脂、SiH基を有するケイ素化合物及び白金化合物を配合する第1工程を備える。多官能(メタ)アクリル樹脂、SiH基を有するケイ素化合物及び白金化合物を配合することにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
上記第1工程においては、多官能(メタ)アクリル樹脂、SiH基を有するケイ素化合物及び白金化合物はどのような順序で配合してもよい。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物としての均一性を高めるために、配合時に混合することが好ましい。
【0037】
また、第1工程における配合量は、硬化特性を向上させる観点から、多官能(メタ)アクリル樹脂100質量部を基準として、ケイ素化合物は3〜300質量部であることが好ましく、白金化合物は0.001〜5質量部であることが好ましい。より好ましくは、ケイ素化合物は5〜100質量部、白金化合物は0.01〜1質量部であり、さらに好ましくは、白金化合物は0.05〜0.2質量部である。
【0038】
本硬化方法は、上記第1工程で得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物を加熱する第2工程を備える。第2工程において、加熱の温度は特に制限されないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物の重合反応を促進させ、より硬化特性を向上させる観点から、好ましくは50〜150℃である。加熱温度が50℃より低くなると、(メタ)アクリル系樹脂組成物の重合反応が促進されにくい傾向があり、150℃より高くなると反応が急激に進行し発泡しやすい傾向にある。加熱温度は、より好ましくは90〜150℃である。
【0039】
上記第1工程及び第2工程を経ることにより、表面にべとつき感の生じない硬化物を得ることができる。なお、本硬化方法は、酸素の存在する空気環境下以外に、窒素などの不活性ガス環境下においても用いることができる。
【0040】
以上のとおり、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法及びその硬化物によれば、酸素が存在する空気環境下でも表面にべとつき感の無い硬化物を提供することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
50mLのスクリュー管に、まず多官能(メタ)アクリル樹脂としてエチレングリコールジメタクリレート4.5gを入れ、次にケイ素化合物として下記一般式(2)で表されるハイドロジェンポリジメチルシロキサン0.5gを加えた。
【化1】

【0043】
上記一般式(2)におけるnは、平均値で25であった。
【0044】
さらに、白金化合物として、白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.005gを上記スクリュー管に加え、これらを均一になるまで混合した。次いで、容器内の混合液の高さが3mmとなるように、底が平らなガラス容器に混合液を入れ、空気雰囲気下オーブンにより100℃で30分、さらに150℃で30分加熱し硬化物を得た。得られた硬化物表面を指で押圧後、指紋の付着の有無により表面硬化性の評価をした結果、指紋の付着やべとつき感は無かった。
【0045】
(実施例2)
50mLのスクリュー管に、多官能(メタ)アクリル樹脂として1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート2.5g、ケイ素化合物としてハイドロジェンポリジメチルシロキサン2.5g、白金化合物として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.005gを加えて、これらを均一になるまで混合した。次いで、容器内の混合液の高さが3mmとなるように、底が平らなガラス容器に混合液を入れ、空気雰囲気下オーブンにより100℃で30分、さらに150℃で30分加熱し硬化物を得た。得られた硬化物表面を指で押圧後、指紋の付着の有無により表面硬化性の評価をした結果、指紋の付着やべとつき感は無かった。
【0046】
(実施例3)
50mLのスクリュー管に、多官能(メタ)アクリル樹脂としてネオペンチルジオールジメタクリレート4.7g、ケイ素化合物としてハイドロジェンポリジメチルシロキサン0.3g、白金化合物として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.005gを加えて、これらを均一になるまで混合した。次いで、容器内の混合液の高さが3mmとなるように、底が平らなガラス容器に混合液を入れ、空気雰囲気下オーブンにより100℃で30分、さらに150℃で30分加熱し硬化物を得た。得られた硬化物表面を指で押圧後、指紋の付着の有無により表面硬化性の評価をした結果、指紋の付着やべとつき感は無かった。
【0047】
(実施例4)
50mLのスクリュー管に、多官能(メタ)アクリル樹脂としてネオペンチルジオールジメタクリレート2.25g、エチレングリコールジメタクリレート2.25g、ケイ素化合物としてハイドロジェンポリジメチルシロキサン2.5g、白金化合物として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.005gを加えて、これらを均一になるまで混合した。次いで、容器内の混合液の高さが3mmとなるように、底が平らなガラス容器に混合液を入れ、空気雰囲気下オーブンにより100℃で30分、さらに150℃で30分加熱し硬化物を得た。得られた硬化物表面を指で押圧後、指紋の付着の有無により表面硬化性の評価をした結果、指紋の付着やべとつき感は無かった。
【0048】
(実施例5)
50mLのスクリュー管に、多官能(メタ)アクリル樹脂としてネオペンチルジオールジメタクリレート2.25g、単官能(メタ)アクリル樹脂であるメチルメタクリレート2.25g、ケイ素化合物としてハイドロジェンポリジメチルシロキサン0.5g、白金化合物として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.005gを加えて、これらを均一になるまで混合した。次いで、容器内の混合液の高さが厚さ3mmとなるように、底が平らなガラス容器に混合液を入れ、空気雰囲気下オーブンにより100℃で30分、さらに150℃で30分加熱し硬化物を得た。得られた硬化物表面を指で押圧後、指紋の付着の有無により表面硬化性の評価をした結果、指紋の付着やべとつき感は無かった。
【0049】
(比較例1)
ケイ素化合物であるハイドロジェンポリジメチルシロキサンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の条件で、化合物を配合し、硬化反応を行った。しかし、配合液は液状のままで硬化物は得られなかった。
【0050】
(比較例2)
白金化合物である白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の条件で、化合物を配合し、硬化反応を行った。しかし、配合液は液状のままで硬化物は得られなかった。
【0051】
(比較例3)
50mLのスクリュー管に、単官能アクリル樹脂であるメチルメタクリレート4.5g、ケイ素化合物としてハイドロジェンポリジメチルシロキサン0.5g、白金化合物として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.005gを加えて、これらを均一になるまで混合した。次いで、容器内の混合液の高さが3mmとなるように、底が平らなガラス容器に混合液を入れ、空気雰囲気下オーブンにより100℃で30分、さらに150℃で30分加熱した。しかし、配合液の粘度が向上したが、硬化物は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能(メタ)アクリル樹脂と、SiH基を有するケイ素化合物と、白金化合物と、を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、前記ケイ素化合物の含有量は3〜300質量部であり、前記白金化合物の含有量は0.001〜5質量部である、請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
多官能(メタ)アクリル樹脂と、SiH基を有するケイ素化合物と、白金化合物と、を配合する第1工程と、
前記第1工程で得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物を加熱する第2工程と、
を備える(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化方法。
【請求項4】
前記第1工程の配合量は、前記多官能(メタ)アクリル樹脂100質量部を基準として、前記ケイ素化合物は3〜300質量部であり、前記白金化合物は0.001〜5質量部である、請求項3記載の硬化方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の硬化方法により得られる、硬化物。



【公開番号】特開2012−224783(P2012−224783A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95039(P2011−95039)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】