説明

(メタ)アクリル系重合体粒子

【課題】樹脂用添加剤として用いた場合に、樹脂の着色や残留気泡をより抑制できる重合体粒子を提供する。
【解決手段】構成成分として50質量%以上の(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体と、(B)マレイミド系単量体とを含む共重合体から形成されることを特徴とする。前記(B)マレイミド系単量体の含有量が、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、5質量部〜40質量部である重合体粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系重合体粒子の改良技術に関するものであり、特に非酸化性雰囲気における熱分解開始温度が高い(メタ)アクリル系重合体粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリル系重合体粒子は、樹脂用添加剤(アンチブロッキング剤、光拡散剤等)、艶消し剤、トナー用添加剤、粉体塗料、水分散型塗料、化粧板用添加剤、人工大理石用添加剤、化粧品用充填剤、クロマトグラフィーのカラム充填剤等広範な用途に適用されている。これらの用途の中でも、特に樹脂用添加剤として用いる場合は、重合体粒子は耐熱性に優れていることが望まれる。すなわち、アンチブロッキング剤等の樹脂用添加剤を樹脂に配合する場合、通常、高温での溶融混合が行われる。この際、樹脂用添加剤として用いる重合体粒子が、溶融混合時の温度付近で熱分解を起こすと、分解物の影響により樹脂が着色したり、樹脂中に分解ガスが気泡として残留するといった問題が起こる。このような樹脂の着色や樹脂中の気泡は、樹脂の機械的、光学的特性を低下させる原因となる。このような着色や気泡を抑制するため、重合体粒子は耐熱性に優れていることが望まれる。
【0003】
そこで、耐熱性を改良した(メタ)アクリル系重合体粒子が種々提案されている。例えば、(メタ)アクリル系モノマーを主成分とし、空気中270℃で40分間保持したときの重合体の有機成分の分解による重量減少の割合が60重量%以下の樹脂粒子(特許文献1(請求項1)参照);硫黄系酸化防止剤を必須的に含む酸化防止剤を10ppm以上(質量基準)含み、且つ、熱分解開始温度が290℃以上である有機重合体微粒子(特許文献2(請求項1)参照);熱分解開始温度が310℃以上であり、特定の粒子径分布を有し、且つ、テトラメチルスクシノニトリルの含有量が重合体微粒子中100ppm以下である重合体微粒子(特許文献3(請求項1)参照);等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−7730号公報
【特許文献2】国際公開第2008/133147号
【特許文献3】特開2010−95598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の(メタ)アクリル系重合体粒子は熱分解開始温度が高く改良されているものの、高融点を有する樹脂(例えば、ポリエステル樹脂)に溶融混合する場合には、若干の着色や残留気泡を生じることがあり、さらに熱分解開始温度を高めることが求められている。また、従来の(メタ)アクリル系重合体粒子において評価されている耐熱性とは、空気雰囲気下における耐熱性である。しかし、実際に(メタ)アクリル系重合体粒子と樹脂とを溶融混合する場合、窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気で行われるのが通常であるから、非酸化性雰囲気における耐熱性のコントロールがより重要である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂用添加剤として用いた場合に、樹脂の着色や残留気泡をより抑制できる(メタ)アクリル系重合体粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、構成成分として50質量%以上の(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体と、(B)マレイミド系単量体とを含む共重合体から形成されることを特徴とする。前記(B)マレイミド系単量体の含有量は、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、5質量部〜40質量部であることが好ましい。前記(B)マレイミド系単量体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロへキシルマレイミドよりなる群から選択される少なくとも1種が好適である。前記共重合体は、構成成分として、さらに(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体を含有することが好ましい。
【0008】
前記(メタ)アクリル系重合体粒子は、共重合体が、構成成分として、さらに(D)スチレン系単量体を含有することが好ましい。前記(D)スチレン系単量体の含有量は、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、5質量部〜40質量部であることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体粒子の非酸化性雰囲気における熱分解開始温度は360℃以上であることが好ましい。
【0009】
本発明には、前記(メタ)アクリル系重合体粒子を含有するポリエステル樹脂用添加剤、前記(メタ)アクリル系重合体粒子を含有するポリエステル樹脂用アンチブロッキング剤が含まれる。また、前記ポリエステル樹脂用添加剤と、ポリエステル樹脂とを含有するマスターバッチは、本発明の好適態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、非酸化性雰囲気における熱分解開始温度が非常に高い。そのため、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、樹脂用添加剤として使用した場合、樹脂の着色や残留気泡を生じることなく、アンチブロッキング性、光拡散性等の特性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】TG曲線の解析方法を説明する図である。
【図2】重合体粒子No.1、7のTG曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体を主成分とする共重合体から形成されており、この共重合体は構成成分として(B)マレイミド系単量体を含むものである。(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体を主成分とする重合体は、耐候性、透明性に優れるものの、非酸化性雰囲気における熱分解温度が低い。しかし、このような(メタ)アクリレート系重合体に対して、構成成分として(B)マレイミド系単量体を含ませることにより、非酸化性雰囲気における熱分解温度を上昇させることができる。
【0013】
(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体
前記共重合体の主成分は(A)(メタ)アクリレート系単量体であり、その含有量は共重合体を構成する単量体成分中50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。また、前記共重合体の(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体の含有量は、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0014】
前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体は、分子中に一つの(メタ)アクリロイル基を有し、他にラジカル性重合性基を有さない。前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0015】
また、(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体は、(メタ)アクリロイル基の他にラジカル重合性基以外の官能基を有していてもよい。このような(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。これらの(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基の他に官能基を有さないものが好ましく、より好ましくはアルキル(メタ)アクリレート類、特にメチル(メタ)アクリレートが好適である。
【0016】
(B)マレイミド系単量体
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を形成する共重合体は、構成成分として(B)マレイミド系単量体を含む。(B)マレイミド系単量体を含むことで、共重合体の非酸化性雰囲気における熱分解開始温度が上昇する。前記(B)マレイミド系単量体としては一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0017】
【化1】


[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアリール基又は炭素数1〜15のアラルキル基を示し、R3は炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアリール基又は炭素数1〜15のアラルキル基を示す。]
【0018】
1〜R3で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。R1〜R3で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。なお、これらのアルキル基、アリール基が有する水素原子は、さらにアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基等で置換されていてもよい。R1〜R3で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0019】
前記(B)マレイミド系単量体の具体例としては、例えば、マレイミド;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド等のN−アルキルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(3−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモ)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミド、N−(3−ニトロフェニル)マレイミド、N−(4−ニトロフェニル)マレイミド、N−(2,4−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−フェニルフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド等のN−アリールマレイミド;N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(3−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−ブチルフェニル)マレイミド、N−(3−ブチルフェニル)マレイミド、N−(4−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド等のN−アルキルアリールマレイミド;N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(3−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−エトキシフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシ−4−クロロフェニル)マレイミド等のアルコキシアリールマレイミド;N−(4−フェニルオキシフェニル)マレイミド等のアリールオキシアリールマレイミド;ベンジルマレイミドなどのアラルキルマレイミド;等が挙げられる。これらの(B)マレイミド系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、N−アルキルマレイミド(好ましくはN−環状アルキルマレイミド)、N−アリールマレイミドが好ましく、特にN−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが好適である。
【0020】
前記共重合体中の(B)マレイミド系単量体の含有量は、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。一方、マレイミド系単量体が過剰となると、非酸化性雰囲気における質量減少開始温度が低下する傾向がある。よって、共重合体中の(B)マレイミド系単量体の含有量は、40質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0021】
(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を形成する共重合体は、構成成分として(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体を含有してもよい。この(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体は、分子中に一つの(メタ)アクリロイル基と、該(メタ)アクリロイル基の他に一つ以上の重合性基を有しており、共重合体に架橋構造を導入できる。架橋構造を導入すると、(メタ)アクリル系重合体粒子の非酸化性雰囲気における熱分解開始温度がより上昇する。
【0022】
ここで、「重合性基」とは、他のモノマーと結合を形成し得る基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のラジカル重合性基が挙げられる。(メタ)アクリロイル基と、該(メタ)アクリロイル基の他に一つ以上のラジカル重合性基を有するものとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;が挙げられる。
【0023】
また、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等のように、反応(結合)相手となる基が他のモノマーに存在する場合にエステル結合等を形成可能な縮合性反応基も「重合性基」として作用し得る。よって、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体として例示したものの中で、(メタ)アクリロイル基の他にラジカル重合性基以外の官能基を有するものは、その官能基が架橋構造を形成し得る場合には、(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体に分類される。これらの(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1分子中に2以上のラジカル重合性基を有するものが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイル基を2以上有するもの、さらに好ましくは(メタ)アクリロイル基を3以上有するものである。
【0024】
前記共重合体中の(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体と(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体との質量比((A)/(C))は、1以上が好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上である。なお、架橋構造が入りすぎると(メタ)アクリル系重合体粒子が硬くなり過ぎる傾向がある。よって、前記質量比は、((A)/(C))20以下が好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下、一層好ましくは8以下、特に好ましくは7以下である。
【0025】
(D)スチレン系単量体
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を形成する共重合体は、構成成分として(D)スチレン系単量体を含有してもよい。前記(B)マレイミド系単量体の配合量を多くすると非酸化性雰囲気において質量減少を開始する温度が低下するが、(D)スチレン系単量体を含ませることにより、この質量減少を開始する温度の低下を抑制できる。(D)スチレン系単量体を含有させることにより、重合時にマレイミド系単量体が共重合鎖に取り込まれ易くなるため、得られた重合体粒子の熱分解挙動が改善されると考えられる。
【0026】
前記(D)スチレン系単量体としては、例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類;p−フェニルスチレン等の芳香環含有スチレン類;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン含有スチレン類;p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシル基含有スチレン類;p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類;等が挙げられる。これらの(D)スチレン系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレンが好適である。
【0027】
前記共重合体中の(D)スチレン系単量体の含有量は、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは12質量部以上であり、40質量部以下が好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。
【0028】
他の単量体
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を形成する共重合体は、本発明の効果を損なわない程度であれば、(A)単官能(メタ)アクリレート、(B)マレイミド系単量体、(C)多官能(メタ)アクリレート、(D)スチレン系単量体と異なる他の単量体を構成成分として含んでもよい。他の単量体を用いる場合、その使用量は全単量体中20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。本発明の重合体粒子は、他の単量体を構成成分として含まない態様が好ましい。
また、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、顔料、可塑剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤等を含有してもよい。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、非酸化性雰囲気における熱分解開始温度が、360℃以上が好ましく、より好ましくは365℃以上、さらに好ましくは370℃以上である。組成物は、その配合組成や重合度により、樹脂加工の最適温度範囲が異なるが、300℃前後でポリエステル樹脂をはじめとする各種樹脂を用いた樹脂組成物の加工品を調製することができる。そのため、重合体粒子の熱分解開始温度が360℃以上であれば、加工温度に対して重合体粒子の熱分解温度が充分に高いため、溶融加工温度の選択の自由度が広くなり、最適な溶融粘度での樹脂組成物の調製が可能となる。これにより、例えば、重合体粒子の分散状態が良好な組成物の加工品を、着色や透明性の低下を伴うことなく得られる。
【0030】
熱分解開始温度の上限は特に限定されないが、本発明で規定する組成を有する重合体粒子の場合、400℃である。前記非酸化性雰囲気における熱分解開始温度は、上述した成分から重合体粒子を構成すれば達成される。なお、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気下、不活性ガス雰囲気下等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、非酸化性雰囲気における質量減少開始温度が、283℃以上が好ましく、より好ましくは285℃以上、さらに好ましくは290℃以上である。アンチブロッキング剤等の樹脂用添加剤を樹脂に配合する場合、通常、280℃前後で溶融混合が行われる。この場合、重合体粒子の質量減少開始温度が283℃以上であれば、280℃前後での溶融混合では分解物をほとんど生じない。そのため、本発明の重合体粒子を樹脂用添加剤として用いた場合、着色や、残留気泡を生じることが抑制される。よって、樹脂本来の機械的特性や光学的特性を損なうことなく、アンチブロッキング性、光拡散性等の特性を付与することができる。
【0032】
質量減少開始温度の上限は特に限定されないが、本発明で規定する組成を有する重合体粒子の場合、通常340℃である。質量減少開始温度は、重合体粒子を構成する単量体の種類や含有量を変更することにより、適宜調整できる。なお、非酸化性雰囲気における質量減少開始温度、熱分解開始温度の測定方法は後述する。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、20μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、樹脂組成物のアンリブロッキング剤として用いた場合に、この樹脂組成物から得られる成型加工品の滑り性改良効果が良好となる。体積平均粒子径が20μmを超えると、成型加工品の滑り性が高くなりすぎる傾向がある。また、重合体粒子の体積基準の粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。
【0034】
(メタ)アクリル系重合体粒子の製造方法
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を形成する共重合体は、上述した構成成分(単量体)を共重合することで得られる。また、前記構成成分を共重合する際は、例えば、重合開始剤、分散安定剤を用いてもよい。なお、重合反応は溶媒中で行うことが好ましいが、この場合、予め単量体等を混合したものを溶媒に投入してもよいし、各単量体や添加剤等を別々に溶媒に投入し、溶媒中で混合してもよい。
【0035】
ここで、前記共重合体を製造する際は、前記単量体((A)単官能(メタ)アクリレート系単量体及び(B)マレイミド系単量体、必要に応じて(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体、(D)スチレン系単量体等)を、(E)チオール基とカルボキシル基とを有する化合物(以下、単に「(E)化合物」と称する場合がある。)の存在下で共重合することが好ましい。(E)化合物の存在下で単量体を共重合することにより、得られる(メタ)アクリル系重合体粒子の非酸化性雰囲気における熱分解開始温度をより上昇させることができる。
【0036】
前記(E)化合物は、一分子中に、チオール基(−SH)とカルボキシル基(−COOH)をそれぞれ1つ以上有するものであれば、特に限定されない。(E)化合物の具体例としては、例えば、チオサリチル酸、ジチオサリチル酸等のサリチル酸類等の芳香族環を有するもの等のメルカプトカルボン酸類が挙げられる。これらの中でも芳香族環を有するものが好ましく、より好ましくはチオサリチル酸、ジチオサリチル酸である。
【0037】
前記(E)化合物の使用量は、全単量体100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上であり、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。
【0038】
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を製造する方法としては、乳化重合、懸濁重合、シード重合等の公知の重合方法を採用できる。これらの重合方法において、重合溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類等の有機溶媒が使用できる。上記重合方法の中でも、原料の単量体組成に準じた重合体組成の重合体粒子が得られやすいことから懸濁重合法が好ましい。
【0039】
以下、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子の製造方法の一例として、懸濁重合について説明する。
懸濁重合とは、一般的には、単量体や添加剤等を、水に分散、懸濁させることにより得られた液滴懸濁体組成物を重合することにより、(メタ)アクリル系重合体粒子(共重合体)が水中に分散含有されてなる分散液を得る方法である。液滴懸濁体組成物を調製する際には、単量体等を水中に懸濁させる手段として従来公知の分散、懸濁方法、装置を採用することができる。例えば、T.K.ホモミキサー、ラインミキサー(例えばエバラマイルダー(登録商標))等の高速攪拌機が使用できる。また、上記単量体等の液滴の粒子径を制御し、安定化させるためには、液滴懸濁体組成物の調製時に、後述する分散安定剤を共存させることが好ましい。
【0040】
ここで、重合開始剤(後述する)は、重合反応時に懸濁体組成物中に存在していればよいが、液滴懸濁体組成物調製時に、単量体相あるいは水相に分散、溶解させておくのが好ましく、特に、単量体混合物に予め溶解せしめておく態様が好ましい。重合反応は、撹拌下で行うことが好ましい。撹拌は、パドル翼、タービン翼、ブルーマージン翼、プロペラ翼等従来公知の撹拌翼を用いた撹拌を採用し得る。
【0041】
重合反応には、重合開始剤を用いてもよく、また、放射線の照射や、熱を加えて重合を開始させる方法を採用してもよい。上記重合開始剤としては、通常、ラジカル重合に用いられるものはいずれも使用可能であり、例えば、過酸化物系開始剤や、アゾ系開始剤等が使用可能である。上記過酸化物系開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)等が挙げられる。これらの重合開始剤は、全単量体100質量部に対して、0.01質量部〜20質量部(より好ましくは0.1質量部〜10質量部)使用するのが好ましい。
【0042】
また、重合反応時には、重合反応を安定に進めるため、分散安定剤を使用しても良い。前記分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム)等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤、その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等が用いられる。
【0043】
前記分散安定剤は、所望する(メタ)アクリル系重合体粒子のサイズに応じてその使用量を適宜調整すればよい。例えば、粒子径1μm〜20μmの(メタ)アクリル系重合体粒子を得たい場合であれば、全単量体100質量部に対して0.01質量部〜10質量部(より好ましくは0.05質量部〜5質量部、さらに好ましくは1質量部〜2質量部)である。
【0044】
重合温度は、60℃〜100℃(より好ましくは65℃〜95℃、さらに好ましくは70℃〜90℃)が好ましく、重合反応は2時間〜7時間(より好ましくは2.5時間〜5時間であり、さらに好ましくは3時間〜4.5時間)が好ましい。また、重合反応は、pH4〜pH10の範囲で行うのが好ましい。
【0045】
そして、重合反応により得られた(メタ)アクリル系重合体粒子が水中に分散含有されてなる分散液を固液分離することにより(メタ)アクリル系重合体粒子が得られる。固液分離方法としては、例えば、ろ過、遠心分離等が挙げられる。
【0046】
また、固液分離する際には、凝集剤を用いてもよい。凝集剤としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化アンモニウム、カリミョウバン等の金属塩類;硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、炭酸、酢酸等の酸類;メタノール、エタノール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの凝集剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記凝集剤の添加量は特に限定されないが、分散液中の(メタ)アクリル系重合体粒子100質量部に対して、0.05質量部〜10質量部である。凝集に必要な時間は短く、通常は0.1分〜2時間の範囲で凝集が起こる。そのため、急激な凝集剤の添加は撹拌不能を起こす場合があるので好ましくなく、分散液への凝集剤は徐々に添加することが好ましい。また、凝集剤を添加する際の分散液の温度は30℃〜100℃が好ましい。
【0048】
用途
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、従来の粒子に比べて、非酸化性雰囲気における熱分解開始温度が高い。従って、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は、窒素雰囲気下等の非酸化性雰囲気中で樹脂に対して溶融混合した場合に分解物を発生し難く、樹脂の着色や残留気泡等を生じにくいため、樹脂用添加剤として好適に使用できる。本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を添加する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、比較的融点が高く、溶融混合を高い温度で行う必要があるポリエステル樹脂の添加剤として本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を用いると、より本発明の効果が発揮される。
【0049】
樹脂用添加剤の中でも、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は耐熱性に優れ、さらに着色が抑えられ(無色性に優れ)、組成によって重合体粒子の屈折率を比較的広範囲に制御できることから樹脂用アンチブロッキング剤、光拡散剤として有用である。本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を樹脂用添加剤として使用する場合、(メタ)アクリル系重合体粒子を単独で使用してもよいし、他の成分と混合して用いてもよい。
【0050】
マスターバッチ
上述したように、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子は樹脂用添加剤として有用である。また、本発明の重合体粒子は非酸化性雰囲気における熱分解温度が高いため、溶融加工温度を高くすることができ、より低い溶融粘度での混合が可能となる。そのため、樹脂に対する重合体粒子の配合量を高くしても、重合体粒子を均一に分散させやすい。よって、本発明の重合体粒子と樹脂とを含むマスターバッチも好ましい態様である。
【0051】
マスターバッチに用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、比較的融点が高く、溶融混合を高い温度で行う必要があるポリエステル樹脂の添加剤として本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を用いると、より本発明の効果が発揮される。そのため、本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を含有するポリエステル用添加剤とポリエステル樹脂とを含有するマスターバッチは本発明の好適態様である。
【0052】
前記ポリエステル樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリテトラメチレン−2,6−ナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0053】
マスターバッチにおける(メタ)アクリル系重合体粒子の含有量は、特に限定されないが、マスターバッチ中の樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、400質量部以下が好ましく、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、一層好ましくは80質量部以下である。
【0054】
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子を含有するマスターバッチを調製する方法としては、樹脂を合成する重合段階に重合体粒子を添加混合する方法;重合後の樹脂に対してエクストルーダー等を用いて溶融混合する方法;樹脂を溶剤に溶解した状態で重合体粒子を添加混合する方法;等が採用できる。これらの中でも、溶融混合する方法は、本発明の重合体粒子を用いる効果が顕著に発揮されるとともに、重合体粒子を高濃度に分散含有された樹脂組成物を製造しやすいため、マスターバッチの製造に好適である。
【0055】
樹脂を合成する重合段階で混合する方法としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂に添加する場合、エチレングリコール等のグリコール成分とジカルボン酸(エステル)成分との重合反応時に、重合体粒子を一方の成分(好適にはグリコール成分)に分散させておき、重合体粒子存在下で重合反応を行う方法が挙げられる。
【0056】
溶融混練する方法としては、例えば、粉末あるいはペレット状のポリエステル樹脂と、重合体粒子(粉体あるいは溶剤に分散させた形態)を混合し、攪拌しながらポリエステル樹脂を溶融させて混合処理する方法;ポリエステル樹脂を溶融させた状態で重合体粒子(粉体あるいは溶剤に分散させた形態)を混合する方法;等が挙げられる。
【0057】
調製されたマスターバッチは、通常、粉末状あるいはペレット状に加工される。そして、マスターバッチを、このマスターバッチに含まれる樹脂と同様の樹脂に添加し、溶融混合して樹脂組成物が調製される。本発明の重合体粒子を添加剤として用いることで、着色や気泡の発生の抑制された樹脂組成物が得られる。
【0058】
樹脂組成物
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子と樹脂とを含む樹脂組成物も好ましい態様である。本発明の重合体粒子は、窒素雰囲気下等の非酸化性雰囲気中で樹脂に対して溶融混合した場合に分解物を発生しにくいため、着色や残留気泡等が抑制された樹脂組成物が得られる。また、本発明の重合体粒子は、樹脂組成物を加熱成型する際にも、分解物を発生しにくいため、着色や残留気泡等が抑制された樹脂成型体が得られる。樹脂組成物は、上記マスターバッチと樹脂とを混合して調製してもよいし、本発明の重合体粒子と樹脂を混合して、直接、樹脂組成物を調製してもよい。
樹脂組成物を、フィルム状に成型する方法としては、射出成形、押出成形等の加熱成型;樹脂組成物を溶剤で希釈して、液状の樹脂組成物を基材となる支持体に塗布する方法;等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0060】
1.評価方法
1−1.体積平均粒子径
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、体積基準の粒子径分布より、体積平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)
【0061】
1−2.熱分解評価(質量減少開始温度、熱分解開始温度)
(メタ)アクリル系重合体粒子の熱分解評価は、熱分析装置(「DTG−50M」、株式会社島津製作所製)を使用して、試料量15mg、昇温速度10℃/分(最高到達温度500℃)、窒素雰囲気中、流量20ml/分の条件で測定した。具体的には、精密天秤を使用して、規定のアルミカップに15mgの試料を計り取り、このアルミカップを熱分析装置の所定の位置にセットし、窒素ガス(窒素純度99.9%以上)が規定流量(20ml/分)流れるように調整し、装置が安定した後、昇温を開始した。そして、得られたTG(Thermogravimetry)曲線から、以下のようにして質量減少開始温度、熱分解開始温度を求めた。図1はTG曲線の解析方法を説明する図である。
<質量減少開始温度>
TG曲線から試料の質量変化を読み取り、100℃における試料質量を100質量%として、これを基準として試料質量が1質量%減少した温度(試料質量が99質量%となる温度)を読み取り、この温度を質量減少開始温度とした。なお、常温における質量を基準とすると、吸着水分等に起因する質量減少までも含まれてしまうため、100℃における試料質量を基準とした。
<熱分解開始温度>
TG曲線について、100℃における点の接線(図中の一点鎖線A)を描く。次に、上記の質量減少開始温度よりも高温側で、本格的な熱分解が生じている質量減少段階に相当する部分(TG値が−10%〜−90%となる部分)において、変曲点における接線(図中の二点鎖線B)を描く。そして、接線Aと接線Bの交点における温度Tを読み取り、この温度を熱分解開始温度とした。
【0062】
2.(メタ)アクリル系重合体粒子の製造
2−1.製造例1
撹拌器、不活性ガス導入管、還流冷却管及び温度計を備えたフラスコに、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(「ハイテノール(登録商標) NF−08」、第一工業製薬株式会社製)2部を溶解した脱イオン水300部と予め調整しておいたメタクリル酸メチル(MMA)160部、フェニルマレイミド(PMI)20部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)20部、ラウリルパーオキサイド(LPO)1部及びチオサリチル酸(TSA)2部を溶解した混合液を仕込んだ後、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製)により8000rpmで10分間撹拌して均一な懸濁液とし、さらに脱イオン水500部を添加した。
次いで、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みながら液温が65℃になるまで加熱して、反応容器を65℃で保温した。自己発熱により液温が75℃に達した時点を反応開始とし、90分後、更に液温を85℃まで昇温させて、2時間撹拌して重合反応を完了させた。その後、攪拌した状態で、85℃で硫酸アルミニウム0.1部を約10秒かけて添加した。さらに、反応液を冷却、ろ過し、重合生成物を80℃、8時間熱風乾燥して、重合体粒子No.1を得た。得られた重合体粒子No.1の評価結果を表1に示した。
【0063】
2−2.製造例2
単量体成分を、メタクリル酸メチル(MMA)140部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)20部、フェニルマレイミド(PMI)40部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体粒子No.2を得た。得られた重合体微粒子No.2の評価結果を表1に示した。
【0064】
2−3.製造例3
単量体成分を、メタクリル酸メチル(MMA)140部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)20部、フェニルマレイミド(PMI)20部、スチレン(St)20部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体粒子No.3を得た。得られた重合体微粒子No.3の評価結果を表1に示した。
【0065】
2−4.製造例4
単量体成分を、メタクリル酸メチル(MMA)120部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)20部、フェニルマレイミド(PMI)40部、スチレン(St)20部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体粒子No.4を得た。得られた重合体微粒子No.4の評価結果を表1に示した。
【0066】
2−5.製造例5
予め調製する混合液において、チオサリチル酸(TSA)を添加しなかったこと以外は製造例3と同様にして(メタ)アクリル系重合体粒子No.5を得た。得られた重合体微粒子No.5の評価結果を表1に示した。
【0067】
2−6.製造例6
重合反応を完了した後、反応液に硫酸アルミニウムを添加しなかったこと以外は製造例5と同様にして(メタ)アクリル系重合体粒子No.6を得た。得られた重合体微粒子No.6の評価結果を表1に示した。
【0068】
2−7.製造例7
単量体成分を、メタクリル酸メチル(MMA)180部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)20部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体粒子No.7を得た。得られた重合体微粒子No.7の評価結果を表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
表1より、(メタ)アクリレート系重合体粒子の構成成分として、(B)マレイミド系単量体を配合した重合体粒子No.1〜6は、マレイミド系単量体を配合しない重合体粒子No.7に比べて、熱分解開始温度が上昇していることがわかる。また、重合体粒子No.3とNo.5とを比較すると、単量体組成物が添加剤として(E)化合物を有するNo.3の方が、熱分解開始温度がより上昇していることがわかる。
【0071】
また、製造例2及び製造例4は、PMIの含有量を多くした場合である。製造例2では製造例1に比べて熱分解開始温度は向上しているが、質量減少開始温度が大きく低下している。これに対してStを含有する製造例4ではPMIの含有量を多くした場合でも、質量減少開始温度を低下させることなく、熱分解開始温度を上昇できていることがわかる。このことから、Stを含有させることにより、PMIの共重合性を高めることができ、PMIを多量添加した場合でも、質量減少開始温度を低下させることなく、熱分解開始温度を上昇できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の重合体粒子は、従来の粒子に比べて、非酸化性雰囲気における熱分解開始温度が高い。従って、本発明の重合体粒子は、アンチブロッキング剤、光拡散剤等の樹脂用添加剤として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分として50質量%以上の(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体と、(B)マレイミド系単量体とを含む共重合体から形成されることを特徴とする(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項2】
前記(B)マレイミド系単量体の含有量が、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、5質量部〜40質量部である請求項1に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項3】
前記共重合体が、構成成分として、さらに(C)多官能(メタ)アクリレート系単量体を含有する請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項4】
前記共重合体が、構成成分として、さらに(D)スチレン系単量体を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項5】
前記(D)スチレン系単量体の含有量が、前記(A)単官能(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、5質量部〜40質量部である請求項4に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項6】
前記(B)マレイミド系単量体が、N−フェニルマレイミド、N−シクロへキシルマレイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項7】
非酸化性雰囲気における熱分解開始温度が360℃以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子を含有することを特徴とするポリエステル樹脂用添加剤。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系重合体粒子を含有することを特徴とするポリエステル樹脂用アンチブロッキング剤。
【請求項10】
請求項8に記載のポリエステル樹脂用添加剤と、ポリエステル樹脂とを含有することを特徴とするマスターバッチ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−188554(P2012−188554A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53482(P2011−53482)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】