説明

(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法およびその用途

【課題】優れたキレート能や分散性能、耐ゲル性を発揮し、例えば、スケール防止剤や防蝕剤等の水処理剤、分散剤、洗剤ビルダー等の各種用途に好適に用いることができる(メタ)アクリル酸系共重合体及びその製造方法、並びに、その用途を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位(b)を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であって、
該共重合体は、スルホン酸(塩)基を有し、下記式(1);
A=1/(Abs−Abs0) (式1)
で定義されるA値が10以上である(メタ)アクリル酸系共重合体。
【化1】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
【化2】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、炭素原子1〜4のアルキレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法及びその用途に関する。より詳しくは、無機顔料や金属イオン等の分散剤;洗剤ビルダー;防蝕剤やスケール防止剤等の水処理剤等の各種用途に好適に使用される(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸系共重合体は、水溶性重合体であり、種々の分野において広く使用されているが、その中でも、低分子量のものはキレート能や分散性能に優れており、無機顔料や金属イオン等の分散剤;洗剤ビルダー;防蝕剤やスケール防止剤等の水処理剤等の各種用途に好適に使用されている。例えば、冷却水系やボイラー水系、海水淡水化装置、パルプ溶解釜、黒液濃縮釜等では、内壁に炭酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、水酸化亜鉛、ケイ酸マグネシウム等の析出物(スケール)が付着し、熱効率の低下や局部腐食等の運転上の障害を生じることがあるが、そのスケールを抑制又は除去するために防蝕剤やスケール防止剤として(メタ)アクリル酸系共重合体が用いられている。しかしながら、近年では、環境問題への意識の高まりから、これらを省資源・節水のために高濃縮した冷却水系や海水等の高塩濃度の水系で使用したり、水質の低下等の理由で硬度の高い水系等で使用したりするケースが増加しており、これらの場合には、(メタ)アクリル酸系共重合体がゲル化して沈殿し、スケール防止能等の特性が充分に発揮できなくなることから、このような点で工夫の余地があった。
【0003】
従来の(メタ)アクリル酸系共重合体に関し、(メタ)アクリル酸及び水溶性モノエチレン性不飽和単量体を水溶液中で重合してなる重合体であって、末端にスルホン酸基を有し、Q=ゲル化度×10/重量平均分子量で定義される耐ゲル能Q値が2.0未満である(メタ)アクリル酸系重合体が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この(メタ)アクリル酸系重合体は、分散能やキレート能に加えて耐ゲル性にも優れた低分子量の重合体であり、分散剤やスケール防止剤、洗剤ビルダー等に好適に用いられるものである。しかしながら、更に耐ゲル性を向上させてスケール防止能等の各種特性を高めることにより、より広範囲の用途に好適に用いられるようにするための工夫の余地があった。特に、近年では、高硬度の水系や高濃縮された水系に対して効果的に作用し得る水処理剤が求められているが、これらのニーズにより充分に合致できるものとするための工夫の余地があった。
【0004】
またカルボキシル基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体から誘導された構造単位を含むポリマーを含有するスケール防止剤に関し、実施例として、アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタアクリレート/アクリル酸メチル共重合(物)ナトリウム塩を単量体成分とするスケール防止剤等が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、このスケール防止剤において、更にタングステン酸若しくはモリブデン酸又はその塩を含有するものも開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、これらのスケール防止剤においては、耐ゲル性を充分に向上させることにより、近年求められる高硬度の水系等においても充分に効果を発揮し得るものとするための工夫の余地があった。
【0005】
更に(A)アクリル酸アルカリ金属塩、(B)アクリルアミド等の単量体及び(C)親水性単量体からなるアクリル酸塩系単量体と、亜硫酸水素ナトリウムとを連続的に添加し、空気を吹き込みながら80℃以下で水溶液重合するアクリル酸塩系低分子量重合体の製法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この製造方法によると、分散剤やスケール防止剤として有用なアクリル酸塩系低分子量重合体を、着色が少なく且つ高い生産性で製造することが可能となる。しかしながら、重合体における分散性やキレート能、耐ゲル性等の各種特性を更に充分に向上させるとともに、製造工程における不純物をより充分に低減し、生産性高く重合体を製造するための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平11−315115号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】特開昭51−112447号公報(第1、4頁)
【特許文献3】特開昭58−171576号公報(第1頁)
【特許文献4】特公昭60−24806号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、優れたキレート能や分散性能、耐ゲル性を発揮し、例えば、スケール防止剤や防蝕剤等の水処理剤、分散剤、洗剤ビルダー等の各種用途に好適に用いることができる(メタ)アクリル酸系共重合体及びその製造方法、並びに、その用途を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、(メタ)アクリル酸系共重合体について種々検討したところ、(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位とを有する共重合体にスルホン酸基を導入することにより、耐ゲル性が向上され、分散性やキレート能、スケール防止能等の特性を充分に発揮できることを見いだし、更に、1/(Abs−Abs0)で表されるA値を特定すると、高濃縮した水系や高硬度の水系、高塩濃度の水系等に対しても充分に作用し得るものとなることを見いだした。そして、このような共重合体を含むスケール防止剤が特に有用なものであることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、このような(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法において、重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度が40質量%以上となるように設定したり、連鎖移動剤として亜硫酸塩を用いて重合反応を行ったりすることにより、該共重合体の生産性が著しく向上し、高効率に製造できるようになることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位(b)を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であって、上記共重合体は、スルホン酸(塩)基を有し、下記式(1);
A=1/(Abs−Abs0) (式1)
で定義されるA値が10以上である(メタ)アクリル酸系共重合体である。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、炭素原子1〜4のアルキレン基を表す。)
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体は、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)及び上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位(b)を有するものであるが、これらの構成単位(a)及び(b)は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、更に、その他の共重合可能な単量体(C)由来の構成単位(c)の1種又は2種以上を有していてもよい。なお、これらの構成単位は、(メタ)アクリル酸系共重合体がこれらの構成単位を有することになる限り特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸系単量体(A)や(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)を単量体成分として用いた場合に生じるものでもよいし、また、反応の過程で生じるものであってもよい。
上記(メタ)アクリル酸系共重合体において、構成単位(a)は、重合反応によって(メタ)アクリル酸系単量体(A)の重合性二重結合部分が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当し、構成単位(b)は、重合反応によって(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)の重合性二重結合部分が開いた構造に相当し、構成単位(c)は、重合反応によってその他の共重合可能な単量体(C)の重合性二重結合部分が開いた構造に相当する。
【0014】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)において、Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表すが、金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、有機アミン基(プロトン化された有機アミン)としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸系単量体(A)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)が挙げられ、中でも、アクリル酸、アクリル酸ナトリウムが好ましい。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体において、構成単位(a)と構成単位(b)との相互割合としては、例えば、構成単位(a)30〜95モル%、構成単位(b)5〜70モル%であることが好適である。このような範囲に設定することにより、例えば、カルシウムイオン等の硬度成分が多い水系においてスケール防止剤等として用いた場合にも、共重合体のゲル化が充分に抑制され、スケール防止剤等としての性能が充分に発揮されることとなる。ここで、構成単位(a)が上記範囲よりも多く、構成単位(b)が上記範囲未満であると、耐ゲル性を向上させることができないおそれがあり、逆に構成単位(a)が上記範囲未満であり、構成単位(b)が上記範囲よりも多いと、キレート能や分散性能をより充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、構成単位(a)60〜95モル%、構成単位(b)5〜40モル%である。
なお、(メタ)アクリル酸系共重合体における構成単位(a)と構成単位(b)との合計の比率(モル%)としては、共重合体全体を100モル%とすると、50〜100モル%であることが好ましい。より好ましくは、70〜100モル%である。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体としてはまた、上述したように、構成単位(a)及び構成単位(b)の他に、その他の共重合可能な単量体(C)由来の構成単位(c)を有していてもよいが、構成単位(c)としては、共重合体全体を100モル%とすると、50モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、30モル%以下である。
このような構成単位(c)を与える単量体(C)としては、(メタ)アクリル酸系単量体(A)及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)と共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを1〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)等の(メタ)アリルエーテル系単量体及びこれらの塩;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸といった共役ジエンスルホン酸等のスルホン酸系単量体及びこれらの塩;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩;(メタ)アリルアルコール、(メタ)アリルアルコールにエチレンオキサイドを1〜100モル付加させた化合物等の(メタ)アリルアルコール系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;イソプレノール、イソプレノールにエチレンオキサイドを1〜100モル付加させた化合物等のイソプレン系単量体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体としては、スルホン酸(塩)基を有するが、これにより、耐ゲル性が充分に向上され、高硬度の水系や高濃縮された水系等に対してもキレート能や分散性を充分に発揮することが可能となり、今日のニーズに充分に対応できることとなる。なお、スルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を意味し、スルホン酸塩基としては、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩又は有機アミン等とスルホン酸とからなる基が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、有機アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
このようなスルホン酸基としては、側鎖に有してもよいし、主鎖末端に有してもよいが、少なくとも主鎖末端に有することが好適であり、上記スルホン酸基が主鎖末端の少なくとも一方に存在する形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、主鎖末端の両方に有してもよい。なお、上記(メタ)アクリル酸系共重合体が主鎖末端の少なくとも一方にスルホン酸基を有することは、例えば、重水を溶媒に用いてH−NMR(nuclear magnetic resonance)を測定することにより確認することが可能である。
【0019】
上記スルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体としては、例えば、スルホン酸基を有する単量体成分を用いて重合反応を行ったり、連鎖移動剤として亜硫酸塩を用いて重合反応を行ったりすることによって得ることができる。特に連鎖移動剤として亜硫酸塩を用いて重合反応を行うことにより、主鎖末端の少なくとも一方にスルホン酸基が導入されることとなるため好適である。なお、製造方法については後述するとおりである。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体としてはまた、下記式(1);
A=1/(Abs−Abs0) (式1)
で定義されるA値(耐ゲル化能A値)が10以上であることが好適である。10未満であると、カルシウムイオン等による(メタ)アクリル酸系共重合体のゲル化が非常に起りやすくなる。ゲル化した(メタ)アクリル酸系共重合体は水溶性を失って沈殿となり、分散性等の特性が失われる。したがって、例えば、カルシウムイオン等の硬度成分が比較的少ない水系においても水処理剤として好適に使用することができないおそれがある。また、A値としては、100以上であることが適当である。100未満であると、カルシウムイオン等による(メタ)アクリル酸系共重合体のゲル化が起こりやすくなる。ゲル化した(メタ)アクリル酸系共重合体は水溶性を失って沈殿となり、分散性等の特性が失われる。したがって、例えば、カルシウムイオン等の硬度成分が多い水系において水処理剤として好適に使用することができないおそれがある。このように上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)、及び、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位(b)を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であって、該共重合体は、スルホン酸(塩)基を有し、下記式(1);
A=1/(Abs−Abs0) (式1)
で定義されるA値が100以上である(メタ)アクリル酸系共重合体もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0021】
上記A値は、100以上であることが好ましい。上記A値としてより好ましくは200以上であり、更に好ましくは300以上である。A値は高ければ高いほど好ましく、特に上限はないが、例えば、A値が10000以上あれば水処理剤として用いる際に充分であるといえる。なお、この耐ゲル化能A値の大きい共重合体ほどカルシウムイオンとの結合によるゲル化を起こしにくく、例えば、高いカルシウム硬度の水に対してもスケール防止剤としての優れた性能を発揮することができる。
上記式(1)において、「Abs」とは、UV(紫外線)波長380nmにおける上記(メタ)アクリル酸系重合体のUV吸光度値であり、「Abs0」とは、UV波長380nmにおけるブランクの吸光度値である。なお、これらのUV吸光度値は、例えば、下記のようにして求めることができる。
[UV吸光度値の測定]
500mlのトールビーカーに脱塩水、ホウ酸−ホウ酸ナトリウムpH緩衝液、(共)重合体水溶液及び塩化カルシウム水溶液をこの順に加え、pH8.6、(共)重合体濃度を固形分換算で100mg/L、カルシウム硬度を500mgCaCO/Lに調整する。この試験液を90℃の恒温槽に1時間静置した後、撹拌してから、5cm石英セルに入れ、UV波長380nmでの吸光度Absを測定する。ブランクとして、上記の試験液から塩化カルシウムを除いた試験液を用意し、同様の操作を行って吸光度Abs0を測定する。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体としては、上述のように、構成単位(a)、構成単位(b)、及び、スルホン酸(塩)基を有し、上記式(1)で定義されるA値が10以上であるものであるが、更に、JIS11種クレー分散能が0.55以上、又は、JIS8種クレー分散能が0.97以上であることが好ましい。このようなクレー分散能を有することにより、砂塵や埃等の沈殿防止効果が高まり、水処理剤等の種々の用途に好適に用いることができるものとなる。なお、クレー分散能については後述する。このように、上記(メタ)アクリル酸系共重合体は、カルシウム硬度が200mgCaCO/Lの水溶液で、JIS11種クレー分散能が0.55以上、又は、JIS8種クレー分散能が0.97以上である(メタ)アクリル酸系共重合体もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0023】
本発明はまた、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位(b)を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であって、上記共重合体は、スルホン酸(塩)基を有し、カルシウム硬度が200mgCaCO/Lの水溶液で、JIS11種クレー分散能が0.55以上、又は、JIS8種クレー分散能が0.97以上である(メタ)アクリル酸系共重合体でもある。
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、炭素原子1〜4のアルキレン基を表す。)
【0028】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体において、構成単位(a)、構成単位(b)、スルホン酸(塩)基の好ましい例としては、上述したとおりである。
上記クレー分散能とは、下記のような、上記共重合体の抑制効果を示す指標である。例えば、開放循環式冷却水系において、冷却塔で冷却水に外気を通風して気化熱を奪って冷却水を冷却する際、外気中に存在する砂塵や埃等が冷却水中に持ち込まれる。この場合、上記共重合体が冷却水等に添加されると、砂塵や埃等が均一に分散され、砂塵や埃等が配管等に沈殿するのを防いだり、冷却水系の流路を狭めることによるエネルギーロスを防いだり、配管等の閉塞による冷却水系の破壊を防いだりする。また、上記クレー分散能の評価で使用するJIS11種クレー及びJIS8種クレーはシリカが主成分であり、その化学組成の約4割を占める。冷却水に使用される工業用水等にはシリカが含まれていることが多く、例えば、開放循環式冷却水系で冷却水が循環使用された際に冷却水中のシリカが濃縮されて、配管等にスケールとして析出する場合がある。上記クレー分散能とは、下記のような、上記共重合体の抑制効果を示す指標でもある。上記共重合体を冷却水等に添加すると、析出したシリカを均一に分散させ、シリカが熱交換器の表面に付着して熱交換効率が低下するのを防いだり、シリカが配管等に沈殿して、冷却水系の流路を狭めることによるエネルギーロスを防いだり、配管等の閉塞による冷却水系の破壊を防いだりする。本発明でいうクレー分散能の値は、後述する方法及び条件で測定される値であるとし、詳しくは、カルシウム硬度が200mgCaCO/Lである試験液中でのJIS8種クレーの分散能(以下、JIS8種クレー分散能と称する)の値と、カルシウム硬度が200mgCaCO/Lである試験液中でのJIS11種クレーの分散能(以下、JIS11種クレー分散能と称する)の値がある。上記JIS11種クレー分散能又はJIS8種クレー分散能については、クレー分散能が高いほど、水処理剤等の種々の用途において能力が高まることを示し、クレー分散能が高いほど好ましい。上記JIS11種及びJIS8種クレーは、安定的かつ容易に入手が可能であるため、クレー分散能を評価するために好適に用いることができる。
【0029】
上記JIS11種クレー分散能としては、0.55以上であることが好ましい。上記クレー分散能が、0.55未満であると、砂塵や埃等の沈殿防止効果が小さくなるおそれがある。より好ましくは、0.58以上であり、更に好ましくは、0.60以上である。
上記JIS8種クレー分散能としては、0.97以上であることが好ましい。上記クレー分散能が、0.97未満であると、砂塵や埃等の沈殿防止効果が小さくなるおそれがある。より好ましくは、0.98以上であり、更に好ましくは、0.99以上である。このように、上記(メタ)アクリル酸系共重合体は、カルシウム硬度が200mgCaCO/Lの水溶液で、JIS11種クレー分散能が0.55以上、又は、JIS8種クレー分散能が0.97以上である(メタ)アクリル酸系共重合体もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0030】
[JIS11種クレー分散能の測定]
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファーAとする)。バッファーA60gに塩化カルシウム二水和物0.3268gを加え、更に純水を加え、1000gとした(これをバッファーBとする)。測定対象の重合体の0.02重量%水溶液(固形分重量換算)3gに、バッファーBを27g加え、攪拌し分散液とした。試験管(IWAKI GLASS社製:直径18mm、高さ180mm)にJIS11種クレー(社団法人日本粉体工業技術協会製、試験用ダスト11種)0.3gを入れた後、上記の分散液を30g加え、密封する。この条件で、水の硬度は200mgCaCO/Lとなる。
試験管を振り、クレーを均一に分散させた。その後、試験管を室温(約20℃)・暗所に3時間静置した。3時間後、分散液の上澄みを5cc取り、UV分光器(島津製作所社製、UV−1200;1cmセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この値をJIS11種クレー分散能とした。この値が大きいほど、JIS11種クレー分散能が高いことを示す。
【0031】
[JIS8種クレー分散能の測定]
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、NaOH2.4gに純水を加え、600gとした(これをバッファーAとする)。バッファーA60gに塩化カルシウム二水和物0.3268gを加え、更に純水を加え、1000gとした(これをバッファーBとする)。測定対象の重合体の0.02重量%水溶液(固形分重量換算)3gに、バッファーBを27g加え、攪拌し分散液とした。試験管(IWAKI GLASS社製:直径18mm、高さ180mm)にJIS8種クレー(社団法人日本粉体工業技術協会製、試験用ダスト8種)0.3gを入れた後、上記の分散液を30g加え、密封する。この条件で、水の硬度は200mgCaCO/Lとなる。
試験管を振り、クレーを均一に分散させた。その後、試験管を室温(約20℃)・暗所に5時間静置した。5時間後、分散液の上澄みを5cc取り、UV分光器(島津製作所社製、UV−1200;1cmセル、波長380nm)で吸光度を測定した。この値をJIS8種クレー分散能とした。この値が大きいほど、JIS8種クレー分散能が高いことを示す。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体としては、上述のように、構成単位(a)、構成単位(b)、及び、スルホン酸(塩)基を有し、JIS11種クレー分散能が0.55以上、又は、JIS8種クレー分散能が0.97以上であるものであるが、更に、下記式(1)で定義されるA値が10以上であることが好ましい。このようなA値を有することにより、カルシウムイオン等による(メタ)アクリル酸系共重合体のゲル化の発生が抑制され、水処理剤等の種々の用途に好適に用いることができるものとなる。なお、A値については上述したとおりである。このように、上記(メタ)アクリル酸系共重合体は、下記式(1);
A=1/(Abs−Abs0) (式1)
で定義されるA値が10以上である(メタ)アクリル酸系共重合体もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量としては、下限が500、上限が50000であることが好適であり、これにより、キレート能と分散性能との双方の特性を充分に発揮できることとなる。ここで、重量平均分子量が500未満であると、キレート能が充分とはならず、50000を超えると、分散性を向上することができないおそれがあるため、いずれの場合も、例えば、スケール防止剤、防蝕剤、分散剤、洗剤ビルダー等の各種用途において所望の性能を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、下限が1000、上限が30000であり、更に好ましくは、下限が2000、上限が20000である。
上記(メタ)アクリル酸系共重合体が上述の重量平均分子量のものである場合、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸ソーダ、シリカ、鉄塩等種々のスケールを防止するスケール防止剤等として好適に用いることができるが、炭酸カルシウムのスケールの防止には、重量平均分子量が小さい共重合体が特に有効である。
なお、重量平均分子量としては、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工社製、商品名「Shodex−GPC SYSTEM−21」を用い、下記の条件で測定することができる。
(重量平均分子量の測定条件)
カラム:昭和電工社製「Asahipak GF−710 HQ」及び「Asahipak GF−310 HQ」をこの順で接続したもの
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(vol比)
流速:0.5ml/分
温度:40℃
検量線:ポリエチレングリコール標準サンプル(ジーエルサイエンス社品)を用いて作成。
【0034】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法としては、例えば、構成単位(a)を与える(メタ)アクリル酸系単量体(A)と、構成単位(b)を与える(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)とを必須成分として含む単量体成分を共重合することにより製造することができる。また、単量体成分を共重合する際には、必要に応じ、上記その他の共重合可能な単量体(C)を更に共重合させてもよい。
このような製造方法においては、重合開始剤を用いて単量体成分を共重合すればよい。なお、(メタ)アクリル酸系共重合体を構成する構成単位が上述したようになるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することになる。
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではない。共重合反応の際の溶媒としては、特に限定されず、例えば、水や、イソプロピルアルコール等の炭素原子数1〜4の低級アルコールを用いることが好ましく、これらは単独溶媒であっても混合溶媒であってもよい。中でも、脱溶剤工程を省略できる点で、水を溶媒に用いることがより好適である。
【0035】
上記共重合反応において、重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2−アゾビス(2−アミノプロパン)塩酸塩、2,2−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等のアゾ化合物;過酸化水素、tert−ブチルヒドロキシパーオキシド等の過酸化物等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、重合率向上、残存単量体量低減の点から、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を用いることが好ましい。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、例えば、全単量体成分100質量%に対し、下限が0.001質量%、上限が10質量%とすることが好適である。
【0036】
上記共重合反応においてはまた、亜硫酸塩を用いることが好適である。これにより、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができることとなり、耐ゲル性を充分に向上することが可能となる。このように、上記(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法であって、該製造方法は、亜硫酸塩を用いて重合反応を行う工程を含む(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。なお、スルホン酸基を定量的に導入できるということは、亜硫酸塩が連鎖移動剤等として非常に良好に機能していることを示しており、これにより、重合反応系に過剰な連鎖移動剤等を添加する必要がなくなり、共重合体の製造コストの上昇を低減するとともに、製造効率が向上され、しかも不純物を充分に低減することが可能となる。また、重合反応系に亜硫酸塩を加えることによって、得られる共重合体が必要以上に高分子量化することが抑制されることとなる。
【0037】
上記亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。なお、通常用いられるその他の連鎖移動剤と併用することもできる。
上記亜硫酸塩の使用量は、例えば、全単量体成分100モル%に対し、下限が2モル%、上限が15モル%とすることが好ましい。2モル%未満であると、重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入できないおそれがあり、15モル%を超えると、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがあり、しかも経済的にも不利となるおそれがある。より好ましくは、下限を3モル%とすることであり、また、上限を10モル%未満とすることがより好ましい。
【0038】
上記共重合に際しては、上記連鎖移動剤及び重合開始剤とともに、重合助剤を併用してもよい。重合助剤としては、例えば、鉄、モール塩(硫酸第1鉄アンモニウム6水和物)等の遷移金属化合物、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のメルカプト化合物;アスコルビン酸塩等を用いることができる。この重合助剤は、あらかじめ反応系内に仕込んでおけばよく、添加量は、通常、全単量体成分に対して、遷移金属化合物では0.1ppm〜50ppm、メルカプト化合物やアスコルビン酸塩等では、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。なお、上記共重合反応に用いる連鎖移動剤としては、上述したように亜硫酸塩を用いることが好適であるが、本発明の(メタ)アクリル酸系重合体を得られるものであれば特に限定されず、上記通常用いられるその他の連鎖移動剤の1種又は2種以上を用いてもよい。例えば、上記連鎖移動剤を単独で使用しても製造条件を適宜調整することで、所望の重合体を得ることができる。
【0039】
上記共重合反応はまた、酸性条件下で行うことが好適である。具体的には、pH5未満の条件下で行うことが好ましく、また、中和度が40モル%未満で行うことが好適である。このように酸性条件下で重合反応を行うことにより、重合反応系の水溶液の粘度が上昇することがなく、低分子量の重合体を良好に製造することが可能となる。しかも、後述するように従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができることとなる。また、高濃度かつ一段で重合を行うことが可能となるため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができ、(メタ)アクリル酸系共重合体の生産性が充分に向上され、製造コストの上昇も抑制することができることとなる。より好ましくは、pH5未満かつ中和度40モル%未満の条件下で重合反応を行うことである。中和度としては、30モル%未満であることが更に好ましく、20モル%未満であることが特に好ましい。
なお、上記共重合方法により得られる共重合体は、そのままでもスケール防止剤の主成分等として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アンモニウム(有機アミン)等を用いることが好ましい。
【0040】
上記共重合反応において、共重合の際の反応温度としては特に限定はされないが、例えば、50〜150℃とすることが好適である。50℃未満であると、共重合反応性が充分とはならず、未反応の単量体を充分に低減することができないおそれがあり、150℃を超えると、副反応を充分に抑制することができず、反応制御を簡便にすることができないおそれがある。より好ましくは、70〜120℃であり、最も好ましくは、80〜110℃である。なお、上記共重合反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、大気下で行ってもよい。
【0041】
上記共重合反応において、各単量体成分、亜硫酸塩及び重合開始剤は、それぞれ所定の滴下時間をかけて別々に連続滴下又は分割投入することが好適である。滴下時間は、適宜設定すればよいが、例えば、30〜480分とすることが好ましい。滴下時間が長すぎると、生産性が充分とはならないおそれがあり、滴下時間が短すぎると、例えば、共重合体末端へのスルホン酸基の導入が効果的に行えなくなるおそれがある。より好ましくは、45〜240分である。また、滴下速度は特に限定されるものではなく、例えば、滴下開始から終了まで一定速度であってもよいし、必要に応じて時間の経過に伴い滴下速度を変化させてもよい。各単量体成分、亜硫酸塩及び重合開始剤の滴下開始及び滴下終了のタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、亜硫酸塩の滴下開始を各単量体成分や重合開始剤の滴下開始よりも早く行ってもよいし、全ての滴下を同時に開始してもよい。
【0042】
上記共重合反応においては、重合反応が終了した時点で、水溶液中の固形分濃度、すなわち重合反応系における固形成分の濃度(例えば、単量体の重合固形分濃度)が40質量%以上となっていることが好ましく、これにより、共重合体の製造効率を大幅に上昇させることが可能となる。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。このように、上記(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法であって、該製造方法は、重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度が40質量%以上である(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
ここで、重合反応が終了した時点とは、例えば、上述した各成分の滴下終了後であってもよいし、また、より具体的には、上述した各成分の滴下終了後、更に30分間、反応溶液を90℃又は沸点下に保持(熟成)した後であってもよい。
なお、本発明においては、上述したように重合反応を酸性条件下で行うことが好ましいが、これにより、重合反応が進行しても反応溶液の粘度上昇を充分に抑制できるため、重合反応を高濃度の条件下で行っても低分子量の共重合体を得ることが可能となる。
【0043】
上記各単量体成分の反応容器への投入方法としては特に限定されず、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法等のいずれでもよい。好適な投入方法として、具体的には、下記の(1)〜(3)の方法等が挙げられる。
(1)単量体(A)及び単量体(B)の全部を反応容器に連続投入する方法。
(2)単量体(A)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(A)の残り及び単量体(B)の全部を反応容器に連続投入する方法。
(3)単量体(A)の一部及び単量体(B)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(A)の残り及び単量体(B)の残りをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法。
【0044】
このようにして得られる(メタ)アクリル酸系共重合体は、そのままでも種々の用途に用いることができるが、必要に応じ、更にアルカリ性物質で中和して用いることもできる。このようなアルカリ性物質としては、例えば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0045】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体は、上述したように、キレート能や分散性能、耐ゲル性に特に優れたものであるので、例えば、冷却水系、ボイラー水系、地熱水系、オイルフィード水系、集塵水系、製紙水系、鉱物の精錬水系等におけるスケール防止剤や防蝕剤;有機・無機顔料、土・鉱物等の無機物等の分散剤;洗剤用等のビルダー;繊維処理剤等の各種用途において好適に使用することができる。中でも、スケール防止剤に用いることが好適であり、これにより、高硬度の水系においても充分に本発明の作用効果を発揮できるため、工業的に特に有用なものとなる。このように、上記(メタ)アクリル酸系共重合体を含むスケール防止剤もまた、本発明の1つである。
なお、上記(メタ)アクリル酸系共重合体を水系において用いる場合、該共重合体の添加量としては、用途や水質等に応じて適宜設定することが好適であるが、例えば、水に対し、下限を0.1ppm、上限を100ppmとすることが好ましい。より好ましくは、下限が1ppm、上限が50ppmである。
【0046】
本発明のスケール防止剤としては、上記(メタ)アクリル酸系共重合体単独で使用しても充分に効果を発揮することができるが、必要に応じ、通常用いられる他の添加剤と併用することもできる。例えば、リン系化合物及び/又はポリアクリル酸(塩)、ポリマレイン酸(塩)、アクリル酸系共重合体、スチレン/マレイン酸系共重合体等のポリカルボン酸系重合体等の1種又は2種以上を使用することができ、また、他のスケール防止剤や防蝕剤、スライム防止剤、キレート剤、脱酸素剤等を使用することも可能である。
【0047】
上記スケール防止剤を用いたスケール防止方法について、下記に説明する。
上記スケール防止剤は、冷却水系、ボイラー水系等の水系に、そのまま添加すればよく、また、上記スケール防止剤が上記(メタ)アクリル酸系共重合体以外の成分を含む場合には、別々に添加してもよい。なお、水系にスケール防止剤を添加する際には、リン酸系化合物及び/又は亜鉛塩と併せて添加することが好適であり、これにより、水系の流路として用いる鉄の配管の腐食を防ぎ、スケールの付着も防ぐという両方の効果を高めることが可能となる。リン酸系化合物としては、重合リン酸(塩)、リン酸(塩)、ホスホン酸(塩)類等が挙げられ、亜鉛塩としては、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のスケール防止剤としては、リン酸亜鉛のスケールの防止に特に有効であるが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸ソーダ、シリカ、鉄塩等の他のスケールの防止にも用いることができる。
【0048】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体を水処理剤として用いる場合、該水処理剤は、例えば、冷却水系、ボイラー水系等の水系に添加されることになる。この場合、(メタ)アクリル酸系共重合体をそのまま添加してもよく、(メタ)アクリル酸系共重合体以外のその他の成分を含むものを添加してもよい。水処理剤における(メタ)アクリル酸系共重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の水処理剤に用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0049】
上記(メタ)アクリル酸系共重合体を分散剤として用いる場合、該分散剤としては、水系の分散剤であればよく、例えば、顔料分散剤、セメント分散剤、炭酸カルシウムの分散剤、カオリンの分散剤等が好適である。このような分散剤は、(メタ)アクリル酸系共重合体が本来有する極めて優れた分散能を発現することができる。また、長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出等も生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れた分散剤とすることができる。分散剤における(メタ)アクリル酸系共重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の分散剤に用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体は、上述のような構成であるので、優れたキレート能や分散性能、耐ゲル性を発揮し、例えば、スケール防止剤や防蝕剤等の水処理剤、分散剤、洗剤ビルダー等の各種用途に好適に用いることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
下記の実施例等において、重量平均分子量及びA値(耐ゲル化能値)、JIS11種クレー分散能、JIS8種クレー分散能については、上述したようにして求めた。また、リン酸亜鉛析出抑制能は、下記手順に従って測定した。
【0052】
[リン酸亜鉛析出抑制能の測定]
225mlのネジ口瓶に脱塩水、塩化カルシウム水溶液、(共)重合体水溶液、塩化亜鉛水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液の順に添加し、最後に0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液でpHを調節して、pH8.6、(共)重合体濃度を固形分換算で3mg/L、カルシウム硬度100mg CaCO/L、Mアルカリ度100mg CaCO/L、リン酸イオン6.0mg PO3−/L、亜鉛イオン3.5mg Zn2+/Lの試験液100mlを調整した。密封した後60℃の熱風乾燥機に入れた。40時間後に、試験液を孔径0.1μmのろ紙でろ過し、ろ液中の残留リン酸イオン濃度と残留亜鉛イオン濃度を分析した。ブランクとして、上記の試験液から(共)重合体を除いた試験液を用意し、同様の操作を行って残留リン酸イオン濃度と残留亜鉛イオン濃度を分析した。下記式より析出抑制率を求めた。
析出抑制率(%)=100×(R−Q)/(P−Q)
但し、P:仕込みリン酸イオン濃度と仕込み亜鉛イオン濃度の合計(mg/L)
Q:ブランクの残留リン酸イオン濃度と残留亜鉛イオン濃度の合計(mg/L)
R:残留リン酸イオン濃度と残留亜鉛イオン濃度の合計(mg/L)
【0053】
<実施例1>
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水175.0g及びモール塩0.0084gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す)328.5g、100%2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、100%HEMAと略す);175.6g、48%水酸化ナトリウム(以下、48%NaOHと略す)15.2g、35%亜硫酸水素ナトリウム(以下、35%SBSと略す);57.1g(単量体組成物中の単量体1モルに対して4.0gに相当)、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下15%NaPSと略す)50.0g(単量体組成物中の単量体1モルに対して1.5gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEMA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度59%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に、JIS11種クレー分散能、JIS8種クレー分散能の結果を表2に示す。
また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0054】
<実施例2>
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水175.0g及びモール塩0.0182gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;363.6g、100%HEMA;124.9g、48%NaOH;16.8g、35%SBS;85.7g(単量体組成物中の単量体1モルに対して6.0gに相当)、15%NaPS;100.0g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.0gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEMA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは185分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度54%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に、JIS11種クレー分散能、JIS8種クレー分散能の結果を表2に示す。
また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0055】
<実施例3>
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水175.0g及びモール塩0.0086gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;346.5g、100%HEMA;149.6g、48%NaOH;16.0g、35%SBS;68.6g(単量体組成物中の単量体1モルに対して4.8gに相当)、15%NaPS;60.0g(単量体組成物中の単量体1モルに対して1.8gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEMA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは185分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度57%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に示す。
また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0056】
<実施例4>
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水161.7g及びモール塩0.0081gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;328.5g、100%2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下、100%HEAと略す);156.7g、48%NaOH;15.2g、35%SBS;57.1g(単量体組成物中の単量体1モルに対して4.0gに相当)、15%NaPS;50.0g(単量体組成物中の単量体1モルに対して1.5gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度59%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に示す。
また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0057】
<実施例5>
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水276.1g及びモール塩0.0101gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;180.0g、100%HEMA;390.3g、48%NaOH;8.3g、35%SBS;57.1g(単量体組成物中の単量体1モルに対して4.0gに相当)、15%NaPS;50.0g(単量体組成物中の単量体1モルに対して1.5gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEMA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度59%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に示す。
また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0058】
<実施例6>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水350.0g及びモール塩0.0185gを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、攪拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;657.0g、100%HEMA;351、3g、48%NaOH;30.4g、35%SBS;171.3g(単量体組成物中の単量体1モルに対して6.0gに相当)、15%NaPS;200.0g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.0gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEMA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度55%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に、JIS11種クレー分散能、JIS8種クレー分散能を測定した結果を表2に示す。また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖の開始末端及び停止末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0059】
<実施例7>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水350.0g及びモール塩0.0167gを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、攪拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;847.8g、100%HEMA;75.5g、48%NaOH;39.3g、35%SBS;142.8g(単量体組成物中の単量体1モルに対して5.0gに相当)、15%NaPS;133.3g(単量体組成物中の単量体1モルに対して2.0gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEMA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度53%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、JIS11種クレー分散能、JIS8種クレー分散能を測定した結果を表2に示す。また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖の開始末端及び停止末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0060】
<実施例8>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水350.0g及びモール塩0.0395gを仕込み、攪拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、攪拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;657.0g、100%HEMA;351、3g、48%NaOH;30.4g、35%SBS;285.7g(単量体組成物中の単量体1モルに対して10.0gに相当)、15%NaPS;200.0g(単量体組成物中の単量体1モルに対して3.0gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA水溶液、100%HEMA及び48%NaOHは180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度54%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に示す。また、得られた共重合体水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに共重合体主鎖の開始末端及び停止末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0061】
<比較例1>
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製のセパラブルフラスコに、脱イオン水178.0g及びモール塩0.0242gを仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次いで、撹拌下、約90℃に保たれた上記重合反応系中に、80%AA;450.0g、48%NaOH;20.8g、35%SBS;57.1g(単量体組成物中の単量体1モルに対して4.0gに相当)、15%NaPS;66.7g(単量体組成物中の単量体1モル似対して2.0gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA、48%NaOHは、180分間、35%SBSは175分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPS滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)し、重合を完結させた。重合完結後、上記反応溶液を放冷し、該反応溶液を撹拌しながら、48%NaOH;375.0gを徐々に滴下して、反応溶液を中和した。このようにして、固形分濃度45%、最終中和度が95モル%のポリアクリル酸ナトリウムの水溶液を得た。この重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に、JIS11種クレー分散能、JIS8種クレー分散能の結果を表2に示す。
また、得られた重合体水溶液を減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、2.4ppm及び3.0ppmに重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するメチレン及びメチン基のピークが確認された。
【0062】
<比較例2>
還流冷却器、撹拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水292.0gを仕込み、撹拌しながら沸点還流状態になるまで昇温して重合反応系とした。次いで撹拌下、沸点還流状態の上記重合反応系中に、80%AA;36.5g、37%アクリル酸ナトリウム(以下、37%SAと略す)926.0g、100%HEMA;123.6g、15%NaPS;66.7g(単量体組成物中の単量体1モルに対して2.0gに相当)、35%過酸化水素(以下、35%HPと略す)71.4g(単量体組成物中の単量体1モルに対して5.0gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA、37%SA、100%HEMA及び35%HPを180分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度35%、最終中和度が90モル%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に示す。
また、得られた共重合体水溶液を減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、共重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するピークは確認されなかった。
【0063】
<比較例3>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水380.0gを仕込み、攪拌しながら沸点還流状態になるまで昇温して重合反応系とした。次いで攪拌下、沸点還流状態の上記重合反応系中に、80%AA;42.4g、37%SA;1076.9g、100%HEMA;37.7g、15%NaPS;83.4g(単量体組成物中の単量体1モルに対して2.5gに相当)、35%HP;71.4g(単量体組成物中の単量体1モルに対して5.0gに相当)をそれぞれ別個の滴下ノズルから滴下して、反応溶液とした。なお、上記水溶液の滴下時間は、80%AA、37%SA、100%HEMA及び35%HPを180分間、15%NaPSは190分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、各水溶液の滴下は連続的に行った。
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させた。このようにして、固形分濃度30%、最終中和度が90モル%の共重合体の水溶液を得た。この共重合体の重量平均分子量Mw、耐ゲル化能A値、リン酸亜鉛析出抑制能を測定した結果を表1に示す。また、得られた共重合体水溶液を減圧乾燥して水を除去した後、重水を溶媒に用いてH−NMR(溶媒:重水)を測定したところ、共重合体主鎖末端にスルホン酸基が導入されたことに由来するピークは確認されなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体は、上述のような構成であるので、優れたキレート能や分散性能、耐ゲル性を発揮し、例えば、スケール防止剤や防蝕剤等の水処理剤、分散剤、洗剤ビルダー等の各種用途に好適に用いることができるものである。
本願は、2005年3月31日に出願された日本国特許出願第2005−104257号「(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法及びその用途」、及び、2005年12月16日に出願された日本国特許出願第2005−363294号「(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法及びその用途」を基礎として、優先権を主張する。これらの出願の内容は、全てここに引用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位(b)を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であって、
該共重合体は、スルホン酸(塩)基を有し、下記式(1);
A=1/(Abs−Abs0) (式1)
で定義されるA値が10以上であることを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体。
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
【化2】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、炭素原子1〜4のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体(A)由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体(B)由来の構成単位(b)を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であって、
該共重合体は、スルホン酸(塩)基を有し、
カルシウム硬度が200mgCaCO/Lの水溶液で、JIS11種クレー分散能が0.55以上、又は、JIS8種クレー分散能が0.97以上であることを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体。
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
【化4】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、炭素原子1〜4のアルキレン基を表す。)
【請求項3】
前記A値は、100以上であることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル酸系共重合体。
【請求項4】
前記スルホン酸基は、主鎖末端の少なくとも一方に存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系共重合体。
【請求項5】
前記共重合体は、構成単位(a)と構成単位(b)との相互割合が、構成単位(a)30〜95モル%、構成単位(b)5〜70モル%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系共重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度が40質量%以上であることを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、亜硫酸塩を用いて重合反応を行う工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸系共重合体を含むことを特徴とするスケール防止剤。

【公表番号】特表2008−534694(P2008−534694A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520528(P2006−520528)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/JP2006/307277
【国際公開番号】WO2006/104255
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】