説明

(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法

【課題】過硫酸塩および重亜硫酸塩を開始剤として含む重合反応液を用いて、亜硫酸ガスの発生量を低減しつつ、低分子量の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する手段を提供する。
【解決手段】重合反応液中において2種以上のモノマーを重合させることによる、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法であって、前記重合反応液は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含み、前記重合反応液は、重金属イオンを含み、さらに、重合中の重合反応液中の酸の中和度を30〜100mol%とすることを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法によって、上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法に関する。本発明の製造方法によって製造される(メタ)アクリル酸系共重合体は、洗剤ビルダーやスケール防止材などとして、用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的低分子量の水溶性重合体は、洗剤ビルダー、スケール防止剤、分散剤などとして、広く用いられている。これらの用途に用いられる重合体の一つとして、(メタ)アクリル酸系共重合体が用いられている。(メタ)アクリル酸系共重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体と、これらと共重合可能な他の化合物とを、重合させることによって合成される。
【0003】
重合方法としては、水溶液中に溶解させたモノマーを水溶液重合させる手法が、本発明者らによって提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩を用いてモノマーを重合することによって、(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法を開示している。かような方法によって、共重合体末端にスルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を、効率よく製造することができる。製造される(メタ)アクリル酸系共重合体は、各種性能、特に耐ゲル性に優れるため、洗剤ビルダーやスケール防止剤として有用である。
【0004】
しかしながら、過硫酸塩および重亜硫酸塩を開始剤として含む重合反応液を用いて(メタ)アクリル酸系共重合体を合成する場合には、これらに由来する化合物が副生する。例えば、重亜硫酸塩の分解によって、亜硫酸ガスが発生しうる。発生する亜硫酸ガスは、除去するための設備を設けることによって除去されうる。しかし、亜硫酸ガスは有毒であり、作業者の安全や周辺環境への影響を考慮すると、極力発生を抑制することが望ましい。また、その上、液相中に溶解した亜硫酸ガスは不純物の原因となる。このため、亜硫酸ガスの発生量を低減する手段を開発することが望まれていた。
【0005】
亜硫酸ガスの発生量を抑制するには、発生源である重亜硫酸塩の使用量を減少させればよい。ところが、重亜硫酸塩の使用量を減少させると、開始剤の不足により、生成する(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量が増加してしまう。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合には、低分子量の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造することが望ましい。また、合成の自由度を向上させる上でも、重量平均分子量の小さい(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法が必要である。
【0006】
製造される(メタ)アクリル酸系共重合体の分子量を低下させる手段として、重合反応液のpHを低下させる手段が開示されている(特許文献2参照)。ところが、過硫酸塩および重亜硫酸塩を開始剤として含む重合反応液のpHを低下させると、亜硫酸ガスの発生量が増加してしまう。
【特許文献1】特開平11−315115号公報
【特許文献2】特開平7−278206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が目的とするところは、過硫酸塩および重亜硫酸塩を開始剤として含む重合反応液を用いて、亜硫酸ガスの発生量を低減しつつ、低分子量の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、重合反応液中において2種以上のモノマーを重合させることによる、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法であって、前記重合反応液は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含み、前記重合反応液は、重金属イオンを含み、さらに、重合中の重合反応液中の酸の中和度を30〜100mol%とすることを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法である。
【0009】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法においては、重合反応液中に、重金属イオン、好ましくは鉄イオンが含まれる。重合反応液中に重金属イオンが含まれていると、開始剤効率が向上し、より少ない開始剤量で共重合体を合成しうる。その結果、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造過程における亜硫酸ガスの発生量が減少する。
【0010】
単純に開始剤の使用量を減少させると、得られる共重合体の分子量が増加する傾向にある。本発明の製造方法を用いれば、開始剤の使用量を減少させても、同等の分子量の共重合体を製造しうる。
【0011】
使用する開始剤量が少ないと、製造コスト的にも有利である。また、使用する開始剤量が少ないと、(メタ)アクリル酸系共重合体中に含まれる開始剤由来の不純物量を低減させうる。これらの理由により、(メタ)アクリル酸系共重合体が適用される製品の競争力および品質が向上する。
【0012】
また、本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法においては、重合中の重合反応液中の酸の中和度が30mol%以上に制御される。重合反応液中の酸の中和度がこのような範囲となるような条件下で重合反応を進行させると、重合反応液からの亜硫酸ガスの発生が抑制されうる。
【0013】
本発明の製造方法は、重金属イオンの添加、および、中和度の制御といった比較的容易な手法によって、効果的に亜硫酸ガスの発生を低減させうる。このため、工業的に適用する際に発生する設備コストが比較的小さく、製造される製品の競争力が増大する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法を用いれば、過硫酸塩および重亜硫酸塩を開始剤として含む重合反応液を用いて、亜硫酸ガスの発生量を低減しつつ、低分子量の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、重合反応液に重金属イオンを含ませることによって、開始剤の使用量を減少させても、低分子量の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造しうることを見出した。また、重合反応液の中和度を制御することによって、重合反応液からの亜硫酸ガス発生量を低減できることを見出した。かかる知見に基づき、本発明は完成された。
【0016】
次に、本発明の製造方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0017】
(メタ)アクリル酸系共重合体は、重合反応液において、2種以上のモノマーを重合させることにより、合成される。本願において、(メタ)アクリル酸系共重合体とは、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの誘導体、および、これらと共重合可能な化合物をモノマーとして用いて重合することによって合成される共重合体をいう。したがって、本願に係る(メタ)アクリル酸系共重合体を製造するにあたっては、少なくともアクリル酸、メタクリル酸またはこれらの誘導体のいずれかが、モノマーとして用いられる。そして、これら以外の化合物が他のモノマーとして用いられる。誘導体としては、アクリル酸またはメタクリル酸を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ成分で中和した塩;アクリル酸またはメタクリル酸をアンモニア、またはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により中和した塩が挙げられる。なお、本願においては、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体を、「(メタ)アクリル酸系モノマー」と総称する。
【0018】
他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸系モノマーと共重合可能な化合物が用いられる。(メタ)アクリル酸系モノマーが、エチレン性不飽和モノマーであることを考慮すると、好ましくは、他のモノマーもエチレン性不飽和モノマーである。なお、「エチレン性不飽和モノマー」とは、エチレン(CH2=CH2)の水素原子が置換されてなる化合物をいう。
【0019】
エチレン性不飽和モノマーとしては、モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物、水酸基を有する不飽和炭化水素などが挙げられる。モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸とは、エチレンの水素原子を置換する置換基が1つのカルボキシル基(−COOH)を有する脂肪族炭化水素を意味する。モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸とは、エチレンの水素原子を置換する置換基が2つのカルボキシル基を有する脂肪族炭化水素を意味する。ただし、モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸は無水化されていてもよく、無水化されている部位においては環状構造を形成していてもよい。スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物とは、エチレンの水素原子を置換する置換基が1以上のスルホン酸基を有する化合物を意味する。水酸基を有する不飽和炭化水素とは、1以上のC=C結合および1以上の水酸基を有する炭化水素を意味する。
【0020】
モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸には、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸が含まれる。モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸には、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸が含まれる。スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和モノマーには、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸が含まれる。水酸基を含有する不飽和炭化水素には、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)が含まれる。水酸基を含有する不飽和炭化水素には、イソプレノールのエチレンオキサイド付加物、イソプレノールのプロピレンオキサイド付加物、アリルアルコールのエチレンオキサイド付加物、アリルアルコールのプロピレンオキサイド付加物などのポリアルキレングリコール含有不飽和化合物も含まれる。
【0021】
エチレン性不飽和モノマーの塩としては、上記例示した化合物を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ成分で中和した塩;上記例示した化合物をアンモニア、またはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により中和した塩が挙げられる。
【0022】
モノマーとして用いられる化合物は、上記例示した化合物に限定されるものではない。例えば、場合によっては、疎水性の化合物がモノマーとして用いられうる。しかしながら、このような疎水性の化合物をモノマーとして用いると、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の耐ゲル性が悪化する恐れがある点に留意する必要がある。
【0023】
(メタ)アクリル酸系共重合体における、各モノマーの構成比は、適用される用途に適した特性を発現しうる限りにおいて、特に限定されない。共重合体における(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量は、共重合体におけるモノマーユニットの総モル数に対して、好ましくは50〜99mol%、より好ましくは60〜90mol%である。残りの成分は、(メタ)アクリル酸系モノマー以外のモノマーに由来する繰り返し単位から構成される。
【0024】
本発明の製造方法においては、2種以上のモノマーが用いられるが、少なくとも1種のアクリル酸系モノマーが用いられていれば、その組み合わせについては制限されない。モノマーの組み合わせの例としては、アクリル酸と無水マレイン酸、アクリル酸とフマル酸などが挙げられる。ジカルボン酸モノマーは無水化していてもよい。
【0025】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体は、上述のモノマーを重合反応液中において、開始剤を用いて重合することによって合成される。
【0026】
重合反応液の溶媒は、好ましくは水性の溶媒であり、より好ましくは水である。溶媒として水を用いる場合には、使用されるモノマーは水溶性であるべきである。モノマーの溶媒への溶解性を向上させるために、モノマーの重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えてもよい。加えられる有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒドなどのアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。
【0027】
重合反応液中は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含む。過硫酸塩および重亜硫酸塩を開始剤系として用いて重合することにより、(メタ)アクリル酸系共重合体の末端にはスルホン酸基が定量的に導入されうる。スルホン酸基が導入されることにより、(メタ)アクリル酸系共重合体は、良好な耐ゲル性を示しうる。
【0028】
過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加比率は、質量比で過硫酸塩1に対して、重亜硫酸塩は0.5〜10の範囲内であることが好ましい。過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が0.5未満であると、重亜硫酸塩による効果が十分ではなくなり、末端に定量的にスルホン酸基を導入することができなくなる恐れがある。また、過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が0.5未満であると、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量が高くなる傾向にある。一方、過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が10を超えると、重亜硫酸塩による効果が添加比率に伴うほど得られない恐れがある。ただし、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量が、この範囲に限定されるわけではない。具体的な過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量は、使用用途や使用環境に応じて決定されるべきである。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体が洗剤ビルダーとして用いられる場合には、重合平均分子量が高すぎると、性能が低下する恐れがある。したがって、重量平均分子量が必要以上に増大しないように留意して、配合量を決定すればよい。
【0029】
過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加量は、使用される(メタ)アクリル酸系モノマー1モルに対する過硫酸塩および重亜硫酸塩の通常の配合量は、2〜20gである。この範囲内で過硫酸塩および重亜硫酸塩を添加すると、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の末端に定量的にスルホン酸基を導入しやすい。
【0030】
過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムが挙げられる。重亜硫酸塩としては、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウムが挙げられる。必要であれば、亜硫酸塩やピロ亜硫酸塩などを用いてもよい。
【0031】
得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の末端に定量的にスルホン酸基を導入するためには、ある程度の量の過硫酸塩および重亜硫酸塩が配合される必要がある。しかしながら、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量が多すぎると、これらの化合物由来の不純物の生成量も増大する。また、開始剤として配合される重亜硫酸塩が分解して発生する亜硫酸ガスは、重合反応時の作業員の安全性や周辺環境へ悪影響を及ぼす。したがって、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量は少ないことが好ましい。本発明においては、重金属イオンを重合反応液中に配合することによって、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量を低減することを可能にした。
【0032】
即ち、本発明においては、重合反応液は、重金属イオンを含む。重金属とは、比重が4g/cm3以上の金属を意味する。具体的な重金属としては、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどが挙げられる。2種以上の重金属が用いられてもよい。重合反応液は、これらのイオンを含む。好ましくは、重合反応液は、鉄イオンを含む。重金属イオンのイオン価については特に限定しない。例えば、重金属として鉄が用いられる場合には、重合反応中に溶解している鉄イオンは、Fe2+であっても、Fe3+であってよい。これらが組み合わされていても良い。
【0033】
重金属イオンは、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いて添加されうる。その際に用いられる重金属化合物は、重合反応液中に含有されることを所望する重金属イオンに応じて決定される。溶媒として水が用いられる場合には、水溶性の重金属塩が好ましい。水溶性の重金属塩としては、モール塩(Fe(NH42(SO42・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マンガンなどが挙げられる。重金属イオンの添加方法としては、初期添加または逐次添加、好ましくは初期添加が用いられる。ただし、重金属イオンの添加方法がこれらに限定されるわけではない。なお、初期添加とは、重金属イオンの全量を重合反応液中に予め添加する方法をいい、逐次添加とは、重金属イオンを重合反応の進行と共に、徐々に添加していく方法をいう。
【0034】
重金属イオンの含有量は、特に限定されないが、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜20ppm、より好ましくは0.2〜10ppm、さらに好ましくは0.3〜7ppm、特に好ましくは0.4〜6ppm、最も好ましくは0.5〜5ppmである。本発明の効果を得るために加えられる重金属イオンはこの程度の量でよいため、重金属イオン由来の不純物は殆ど発生しない。
【0035】
重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了した時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合反応が進行し、アルカリ成分を用いて重合させた共重合体を中和し、その後、溶媒を除去して固体の共重合体を得る場合には、中和する前の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0036】
重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しない恐れがある。一方、重金属イオンの含有量が20ppmを超えると、色調が悪化する恐れがある。また、洗剤ビルダーやスケール防止剤として(メタ)アクリル酸系共重合体が用いられた場合には、汚れの増加やスケールの増加を招く恐れがある。
【0037】
重合方法については、特に限定されない。好ましい実施形態の一つは、重金属イオンが予め配合された水溶液中に、(メタ)アクリル酸系モノマー、開始剤としての過硫酸塩および重亜硫酸塩を滴下する方法である。(メタ)アクリル酸系モノマーを含む溶液、過硫酸塩を含む溶液、および重亜硫酸塩を含む溶液を滴下することによって、各成分は重合反応液中で反応する。各溶液の濃度については、特に制限はない。
【0038】
各成分の滴下時間は、通常は60分〜420分であり、好ましくは90分〜360分である。(メタ)アクリル酸系モノマーは、一部または全量を反応系中に予め仕込まれてもよい。各成分によって、滴下時間が異なっていてもよい。
【0039】
滴下時間が60分以下であると、開始剤として添加される過硫酸塩および重亜硫酸塩によって生じる効果が減少し、定量的なスルホン酸導入ができない恐れがある。一方、滴下時間が420分を超える場合には、(メタ)アクリル酸系共重合体の生産性の点で問題がある。ただし、事情がある場合には、上記範囲を外れても構わない。
【0040】
各成分の滴下速度は特に限定されるものではない。例えば、滴下の開始から終了を通じて、滴下速度は一定であってもよく、必要に応じて、滴下速度を変化させてもよい。共重合体の製造効率を高めるためには、滴下終了後の重合反応液における固形成分の濃度、すなわちモノマーの重合によって生じる固形分の濃度が40質量%以上になるように、各成分を滴下させることが好ましい。
【0041】
本発明の製造方法においては、重合反応中の重合反応液中の酸の中和度が制御される。前述の通り、重合反応液が塩基性に近づくほど、亜硫酸ガスの発生が抑制される。酸性の程度を評価するパラメータとしてはpHがあるが、pHは温度により変化する値であり、また、工業的な生産工程において制御しづらい。このため、本発明は、重合反応液中の酸の中和度を制御することによって、重合反応液からの亜硫酸ガスの放出を制御する。重合反応液中の酸の中和度は、30〜100mol%、好ましくは30〜70mol%、より好ましくは30〜50mol%である。なお、ここで規定された中和度に関する数値範囲は、重合反応中の中和度に関するものである。また、中和度は重合反応を通じて一定でなくともよい。
【0042】
本発明において、重合反応中の重合反応液中の酸の中和度は、重合反応液中に含まれる有機酸および無機酸の双方の酸の平均の中和度を意味する。酸成分の具体例としては、カルボキシル基などの官能基を有するモノマー、過硫酸塩や重亜硫酸塩などの開始剤由来の無機酸、重合反応液中において生成した不純物である酸化合物などが挙げられる。ただし、過硫酸塩や重亜硫酸塩などの開始剤由来の無機酸や不純物である酸化合物は、通常は、30mol%以上の中和度を有している。このような場合には、モノマー中に含まれる酸を30mol%以上中和するために必要なアルカリ成分があれば、少なくとも重合反応液中の酸の中和度が30mol%を下回ることはない。中和度の測定方法については、一定の再現性を有する測定方法であれば、特に制限はない。例えば、実施例において記載する方法を用いることができる。また、重合反応液中の酸の中和度は、重合反応液中にアルカリ成分または酸性分を適宜加えることによって、制御されうる。酸性条件下で反応が進行している重合反応液中の酸の中和度を上昇させるためには、水酸化ナトリウムなどのアルカリ成分を添加するとよい。
【0043】
重合反応液中の酸の中和度は、重合が終了した後に、アルカリ成分を適宜添加することによって制御されうる。アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類等が挙げられる。アルカリ成分は、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(メタ)アクリル酸系モノマーの重合における重合温度は、好ましくは25〜99℃、より好ましくは50〜95℃、さらに好ましくは、80℃以上90℃未満である。重合温度が低すぎると、得られる共重合体の重量平均分子量が上昇する恐れ、および、不純物の生成量が増加する恐れがある。また、重合時間が長くなるため、共重合体の生産性が低下する。重合温度が高すぎると、重亜硫酸塩の分解により発生する亜硫酸ガスの量が増加する恐れがある。しかしながら、本発明においては、重合中の重合反応液中の酸の中和度が制御されているため、高温で重合反応を進行させても、亜硫酸ガスの発生量が少ない。このため、(メタ)アクリル酸系共重合体製造の生産性を向上させうる。また、高温で重合反応を進行させる際の安全性が高い。なお、重合温度とは、重合反応液の温度をいう。重合温度の測定方法や制御手段については、特に限定されず、一般に使用される装置を用いて測定すればよい。
【0045】
重合時の圧力は、特に限定されるものではなく、常圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下であってもよい。
【0046】
得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは500〜30,000であり、より好ましくは1,000〜10,000である。重量平均分子量がこの範囲内であれば、(メタ)アクリル酸系共重合体は、分散能、キレート能、および耐ゲル性といった各種性能を最も効果的に発揮することができる。
【0047】
分散剤やスケール防止剤に用いられる分子量が1,000以上の水溶性共重合体では、分子量が1,000に近づくほど、分散能および耐ゲル性は高い性能を示す。一方、キレート能は、水溶性共重合体の分子量が大きいほど高い性能を示す。それゆえ、分散能、キレート能、および耐ゲル性の三つの性能を全て良好に向上させることは困難であった。
【0048】
これに対して、本発明の製造方法によって調製される(メタ)アクリル酸系共重合体はその末端にスルホン酸基が導入されている。このため、分子量が比較的大きくても分散能および耐ゲル性は良好なものとなる。特に、分子量が大きいにもかかわらず、耐ゲル性は非常に良好である。
【0049】
本発明の製造方法によって製造される(メタ)アクリル酸系共重合体は、分散能、キレート能、耐ゲル性などの各種特性に優れる。その上、使用する開始剤が少ないため、不純物含有量が少なく、製造コストも低い。かような特徴を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、洗剤ビルダー、無機顔料の分散剤、スケール防止剤など各種用途において、非常に有用である。
【0050】
なお、本発明の製造方法を実施するにあたっては、前記特許文献1などの公知技術を適用してもよく、本発明の技術的範囲は、本明細書において記載する具体的実施形態に限定されない。また、本発明の製造方法によって製造された(メタ)アクリル酸系共重合体を各種用途に適用するにあたっては、公知技術を適宜参照すればよく、特に限定されるわけではない。新たに開発された手段を用いても良い。
【実施例】
【0051】
続いて、本発明の効果について、以下の実施例を参照して説明する。
【0052】
<実施例1> 還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、260.0gの純水および0.0353gのFe(NH42(SO42・6H2O(モール塩)を仕込んだ。重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオンの濃度を算出したところ、鉄イオンの濃度は3ppmであった。この水溶液を撹拌しながら、90℃まで昇温させた。
【0053】
次に、約90℃に保持された重合反応液中に、撹拌しながら、(1)モノマーAとして、122.5g(1.25mol)の無水マレイン酸(以下、「無水MA」と略す)、(2)モノマーBとして、450.0g(5.0mol)の80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」と略す)、(3)中和度を制御する目的で、187.5g(2.25mol)の48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」と略す)、(4)過硫酸塩として、166.7gの15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」と略す)、および、(5)重亜硫酸塩として、142.9gの35%重亜硫酸ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」と略す)を、別々の滴下ノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、無水MAについては100分間、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、35%SBSについては175分間、15%NaPSについては185分間とした。滴下は連続的に行われ、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。
【0054】
なお、系中に投入された全モノマーに対する開始剤の使用量は、下記式に従って算出される「対モノマー投入量」を用いて、比較した。
【0055】
【数1】

【0056】
上記式からも明らかなように、開始剤の「対モノマー投入量」とは、(メタ)アクリル酸系共重合体を重合するために、重合反応液中に投入されたモノマー1molあたり使用された開始剤量(g)を意味する。
【0057】
本実施例においては、過硫酸塩としての過硫酸ナトリウムについての対モノマー投入量は4.0g/molであった。また、重亜硫酸塩としての重亜硫酸ナトリウムについての対モノマー投入量は8.0g/molであった。滴下後の重合反応液中の酸の中和度は30.0mol%であった。
【0058】
滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。なお、前述の「重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオン(Fe)の濃度」は、この時点での重合反応液の全質量を基準として算出した。
【0059】
重合完結後、重合反応液を放冷し、343.8g(4.10mol)の48%NaOHを、撹拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。アクリル酸および無水マレイン酸をモノマーとして用いて合成された(メタ)アクリル酸系共重合体を含む重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は7000であった。重合反応液から放出される亜硫酸ガスは少なかった。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0060】
なお、重合反応液中の酸の中和度は、以下の手順に従って測定した。
【0061】
(1) イオン交換樹脂でナトリウム塩を処理することによって、重合反応液中の酸の中和度を0モル%にする。
【0062】
(2) (1)で得た重合反応液の中和滴定を水酸化ナトリウムを用いて行い、滴定曲線を作成する。
【0063】
(3) 重合反応液のpHと、(2)で得た滴定曲線の交点とから、重合反応液に含まれる水酸化ナトリウム量が決まる。中和滴定の開始点から終点、すなわち中和度0モル%から100モル%とするまでに要する水酸化ナトリウムの量に対する、重合反応液に含まれる水酸化ナトリウム量の比から、中和度(モル%)を算出する。
【0064】
<実施例2>
実施例1と同様に、アクリル酸および無水マレイン酸を滴下する方法を用いて、(メタ)アクリル酸系共重合体を合成した。重合に関する詳細な条件は、表1に記載の通りである。
【0065】
滴下後の重合反応液中の酸の中和度は30mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は6800であった。重合反応液から放出される亜硫酸ガスは少なかった。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0066】
<実施例3>
実施例1と同様に、アクリル酸および無水マレイン酸を滴下する方法を用いて、(メタ)アクリル酸系共重合体を合成した。重合に関する詳細な条件は、表1に記載の通りである。
【0067】
滴下後の重合反応液中の酸の中和度は30mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は8200であった。重合反応液から放出される亜硫酸ガスは少なかった。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0068】
<実施例4>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、185.0gの純水、0.0281gのモール塩、モノマーAとして、98.0g(1.0mol)の無水MA、および50.0g(0.6mol)の48%NaOHを仕込んだ。重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオンの濃度を算出したところ、鉄イオンの濃度は3ppmであった。この水溶液を撹拌しながら、90℃まで昇温させた。
【0069】
次に、約90℃に保持された重合反応液中に、撹拌しながら、(1)モノマーBとして、360.0g(4.0mol)の80%AA、(2)中和度を制御する目的で、100.0g(1.2mol)の48%NaOH、(3)過硫酸塩として、133.3gの15%NaPS、および(4)重亜硫酸塩として、114.3gの35%SBSを、別々の滴下ノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、35%SBSについては175分間、15%NaPSについては185分間とした。滴下は連続的に行われ、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。
【0070】
本実施例においては、過硫酸塩としての過硫酸ナトリウムについての対モノマー投入量は4.0g/molであった。また、重亜硫酸塩としての重亜硫酸ナトリウムについての対モノマー投入量は8.0g/molであった。滴下後の重合反応液中の酸の中和度は30.0mol%であった。
【0071】
滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。重合完結後、重合反応液を放冷し、275.0g(3.3mol)の48%NaOHを、撹拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。アクリル酸および無水マレイン酸をモノマーとして用いて合成された(メタ)アクリル酸系共重合体を含む重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は5200であった。重合反応液から放出される亜硫酸ガスは少なかった。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0072】
<実施例5>
実施例4と同様に、予め無水マレイン酸をフラスコ中に仕込む方法を用いて、(メタ)アクリル酸系共重合体を合成した。重合に関する詳細な条件は、表1に記載の通りである。
【0073】
滴下後の重合反応液中の酸の中和度は30mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は6300であった。重合反応液から放出される亜硫酸ガスは少なかった。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0074】
<実施例6>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、64.0gの純水、0.0182gのモール塩、モノマーAとして、116.0g(1.0mol)のフマル酸(以下、FAと略す)、および50.0g(0.6mol)の48%NaOHを仕込んだ。重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオンの濃度を算出したところ、鉄イオンの濃度は3ppmであった。この水溶液を撹拌しながら、90℃まで昇温させた。
【0075】
次に、約90℃に保持された重合反応液中に、撹拌しながら、(1)モノマーBとして、210.0g(2.3mol)の80%AA、(2)中和度を制御する目的で、58.3g(0.7mol)の48%NaOH、(3)過硫酸塩として、88.9gの15%NaPS、および(4)重亜硫酸塩として、76.2gの35%SBSを、別々の滴下ノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、35%SBSについては175分間、15%NaPSについては185分間とした。滴下は連続的に行われ、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。
【0076】
本実施例においては、過硫酸塩としての過硫酸ナトリウムについての対モノマー投入量は4.0g/molであった。また、重亜硫酸塩としての重亜硫酸ナトリウムについての対モノマー投入量は8.0g/molであった。滴下後の重合反応液中の酸の中和度は30.0mol%であった。
【0077】
滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。重合完結後、重合反応液を放冷し、198.8g(2.4mol)の48%NaOHを、撹拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。中和後の重合反応液における固形分濃度は50質量%であった。アクリル酸および無水マレイン酸をモノマーとして用いて合成された(メタ)アクリル酸系共重合体を含む重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は9500であった。重合反応液から放出される亜硫酸ガスは少なかった。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0078】
<比較例1>
重合反応中の重合反応液中の酸の中和度を5mol%とした以外は、実施例4と同様にして、(メタ)アクリル酸系共重合体を合成した。重合に関する詳細な条件は、表1に記載の通りである。
【0079】
重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は4200であった。重合反応液からは、多量の亜硫酸ガスが放出された。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0080】
<比較例2>
モール塩を添加しない以外は、実施例4と同様にして、(メタ)アクリル酸系共重合体を合成した。重合に関する詳細な条件は、表1に記載の通りである。
【0081】
重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は21000であった。重合反応液から放出される亜硫酸ガスは少なかった。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0082】
<比較例3>
重合反応液中の酸の重合体の中和度を5mol%とし、モール塩を添加しない以外は、実施例4と同様にして、(メタ)アクリル酸系共重合体を合成した。重合に関する詳細な条件は、表1に記載の通りである。
【0083】
重合反応液中の酸の最終中和度は85mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は9800であった。重合反応液から重合反応液からは、多量の亜硫酸ガスが放出された。共重合体の合成条件を表1に示す。また、製造条件、得られた共重合体の重量平均分子量、および放出された亜硫酸ガス量の関係を、表2にまとめた。
【0084】
【表1−1】

【0085】
【表1−2】

【0086】
【表2】

【0087】
表1に示されるように、重金属イオンを重合反応液に含ませることによって、開始剤の効率が向上する。例えば、実施例4と比較例2とを比較すれば、僅か3ppmの重金属イオンを重合反応液に加えることによって、得られる共重合体の分子量が約4分の1になっている。これは、重金属イオンの添加によって、開始剤の効率が上昇しているためと推測される。
【0088】
開始剤の効率が上昇すると生じる効果としては、以下の効果が考えられる。例えば、重金属イオンを用いない方法で、分子量5000の共重合体が得られていたとする。重金属イオンを用いる本発明の手法を用いれば、開始剤の効率が上昇する。このため、重金属イオンを含む重合反応液を用いて分子量5000の共重合体を製造する場合には、使用する開始剤の量を低減しうる。
【0089】
また、実施例4と比較例1との比較から解るとおり、重合反応液中の酸の中和度を30mol%以上に制御することによって、重合反応液からの亜硫酸ガスの放出量が減少する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒として水を含む重合反応液中において水溶性の2種以上のモノマーを重合させることによる、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法であって、
前記重合反応液は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含み、前記過硫酸塩および前記重亜硫酸塩の添加比率は、質量比で過硫酸塩1に対して、重亜硫酸塩は0.5〜10の範囲内であり、前記過硫酸塩および前記重亜硫酸塩の合計量が単量体1モルに対して2〜20gであり、
前記重合反応液は、重金属イオンを含み、さらに、
重合中の重合反応液中の酸の中和度を30〜50mol%とすることを特徴とする、末端にスルホン酸基が導入された(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記重金属イオンは、鉄イオンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量が、500〜30,000である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸系共重合体におけるアクリル酸の含有量が、共重合体におけるモノマーユニットの総モル数に対して、50〜99mol%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記2種以上のモノマーが、アクリル酸および無水マレイン酸、またはアクリル酸およびフマル酸のいずれかの組合わせである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。


【公開番号】特開2008−88446(P2008−88446A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338101(P2007−338101)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願2003−29546(P2003−29546)の分割
【原出願日】平成15年2月6日(2003.2.6)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】