説明

(メタ)アクリレートの製造方法

【課題】脱溶剤処理に要する時間を短縮することができるとともに、脱溶剤処理後の脱溶剤処理液着色を抑制することができる(メタ)アクリレートの製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸、アルコール、酸触媒及び有機溶剤を反応器11に供給し、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒及び有機溶剤の存在下にエステル化反応させ、反応生成液を中和槽14でアルカリ水溶液にて中和処理し、中和処理液から有機溶剤を脱溶剤槽16で除去することにより製造される。この場合、脱溶剤槽16には中和処理液を循環させる循環配管33を接続し、該循環配管33には流下式の外部熱交換器20を設ける。この外部熱交換器20中では、中和処理液が薄膜となった状態で熱交換される。そして、中和処理液が循環されて脱溶剤槽16内の中和処理液が加熱され、脱溶剤が行われて(メタ)アクリレートが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアクリル酸と多価アルコールとの減圧下におけるエステル化反応、反応生成液の中和反応及び中和処理液の脱溶剤処理により(メタ)アクリレートを製造する(メタ)アクリレートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、(メタ)アクリレートは、反応器で(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒及び有機溶剤の存在下にエステル化反応させ、反応生成液を中和槽でアルカリ水溶液にて中和処理を施し、中和処理液を脱溶剤槽で脱溶剤処理を施すことによって製造される。この際、脱溶剤槽では、減圧状態で加熱、撹拌して有機溶剤を蒸発させ、蒸発した有機溶剤は脱溶剤槽上部のコンデンサーで凝縮されて回収される。有機溶剤が取り除かれた脱溶剤処理液は濾紙、濾布、ストレーナー等による濾過処理により微細な固形の異物や濁りが除去され、目的とする(メタ)アクリレートが得られる。
【0003】
脱溶剤処理に関しては、例えば撹拌処理装置中で、有機溶剤を含有するポリウレタン水分散液を処理し、脱溶剤を行うポリウレタン水分散液の製造法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この場合、撹拌翼で撹拌しながら、ポリウレタン水分散液の凝固温度である30〜90℃の近傍温度に加熱し、脱溶剤処理を行うようになっている。
【特許文献1】特開2002−293945号公報(第2頁及び第7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1などに記載されている従来の(メタ)アクリレートの製造方法では、脱溶剤槽の外周部に設けられた熱交換部の熱媒体によって脱溶剤槽内の被処理液が加熱されることから、伝熱効率が悪く、被処理液を加熱するために長時間を要するという問題があった。その場合、被処理液が脱溶剤槽内で長時間に渡って高温に晒されるため、被処理液から着色成分が生成し、脱溶剤処理液が着色するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、脱溶剤処理に要する時間を短縮することができるとともに、脱溶剤処理後の脱溶剤処理液の着色を抑制することができる(メタ)アクリレートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の(メタ)アクリレートの製造方法は、(メタ)アクリル酸、アルコール、酸触媒及び有機溶剤を反応器に供給し、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒及び有機溶剤の存在下にエステル化反応させ、反応生成液を中和槽でアルカリ水溶液にて中和処理し、中和処理液から有機溶剤を脱溶剤槽で除去し、(メタ)アクリレートを製造する(メタ)アクリレートの製造方法において、前記脱溶剤槽には中和処理液を循環させる循環配管を接続し、該循環配管には流下式の外部熱交換器を設け、該外部熱交換器中で中和処理液が膜状となった状態で熱交換されるように構成し、中和処理液を循環させることにより脱溶剤槽内の中和処理液を加熱することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明の(メタ)アクリレートの製造方法は、請求項1に係る発明において、前記中和処理液を循環配管から脱溶剤槽に戻すに当たり、循環配管内の圧力よりも脱溶剤槽内の圧力が低くなるように設定し、中和処理液が循環配管から脱溶剤槽に戻ったとき減圧されてフラッシュ蒸発されるように構成することを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の(メタ)アクリレートの製造方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記アルコールが多価アルコールであることを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明では、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の(メタ)アクリレートの製造方法では、脱溶剤槽には中和処理液を循環させる循環配管を接続し、該循環配管には流下式の外部熱交換器を設け、該外部熱交換器中で中和処理液が膜状となった状態で熱交換されるようになっている。このため、中和処理液を循環配管に循環させ、外部熱交換器で熱交換を行うときに中和処理液に対する熱交換効率が高くなり、脱溶剤槽内の中和処理液が速やかに加熱される。その結果、中和処理液が高温に晒される時間が短くなる。従って、脱溶剤処理に要する時間を短縮することができるとともに、脱溶剤処理後の脱溶剤処理液の着色を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明の(メタ)アクリレートの製造方法では、中和処理液を循環配管から脱溶剤槽に戻すに当たり、循環配管内の圧力よりも脱溶剤槽内の圧力が低くなるように設定し、中和処理液が循環配管から脱溶剤槽に戻ったとき減圧されてフラッシュ蒸発されるように構成されている。このため、中和処理液が循環配管から脱溶剤槽に戻ったとき急激に減圧されてフラッシュ蒸発され、中和処理液中の有機溶剤の蒸発が促進される。従って、請求項1に係る発明の効果を一層向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明の(メタ)アクリレートの製造方法においては、アルコールが多価アルコールであることから、高沸点の多官能(メタ)アクリレートについて請求項1又は請求項2に係る発明の効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良と思われる実施形態につき詳細に説明する。
〔エステル化反応〕
本発明では、まず(メタ)アクリル酸、アルコール、酸触媒及び有機溶剤を反応器に供給し、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒及び有機溶剤の存在下にエステル化反応を行う。
【0014】
エステル化反応は、(メタ)アクリレートの製造における常法に従って行われる。(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、ジメチルアミノエタノール等の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の二価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸であり、目的とするエステルがアクリレートであるか、又はメタクリレートであるかによって選択される。(メタ)アクリル酸の使用量は、得られる(メタ)アクリレートが目的とする水酸基価を有するように、アルコールの全水酸基1モルに対して調整される。
【0017】
酸性触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。また、反応温度は、使用する原料及び目的に応じて適宜設定すればよいが、反応時間の短縮と重合防止の観点から65〜140℃が好ましく、75〜120℃がより好ましい。この反応温度が65℃未満の場合にはエステル化反応が遅くなったり、収率が低下したりし、一方反応温度が140℃を越える場合には(メタ)アクリル酸又は生成した(メタ)アクリレートの熱重合が起きるおそれがある。
【0018】
エステル化反応に際しては、エステル化反応で生成する水を有機溶剤と共沸させながら脱水を促進する。好ましい有機溶剤としては、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン等のケトン等が挙げられる。有機溶剤の使用量は、前記アルコールと(メタ)アクリル酸の合計量に対して質量で0.1〜10倍量が好ましく、1〜5倍量がより好ましい。
【0019】
エステル化反応は、(メタ)アクリル酸又は生成した(メタ)アクリレートの熱重合を防止することを目的とし、減圧状態で低い温度にて行うことが好ましい。また、エステル化反応を酸素の存在下で行うことが好ましい。同様の目的で、反応液に重合禁止剤を添加することが好ましい。そのような重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、フェノチアジン、並びに塩化銅及び硫酸銅等の銅塩等が挙げられる。エステル化反応の進行度は、エステル化反応により生成する水の量、すなわち脱水量をモニターすることによって行われる。
〔中和処理〕
エステル化された反応生成液は、中和槽でアルカリ水溶液にて中和処理する。
【0020】
この中和処理は常法に従って行えばよく、例えば反応液にアルカリ成分として水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液を添加し、攪拌、混合する方法等が挙げられる。
【0021】
この場合、アルカリ成分の量は通常、反応液の酸分に対してモル比で1倍以上、好ましくは1.1〜2.0倍である。この添加量が、反応液の酸分に対してモル比で1倍未満では、酸分の中和が不十分となるので好ましくない。また、アルカリ水溶液の濃度は、1〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜25質量%である。この濃度が1質量%未満では中和処理後の排水量が増大するため好ましくなく、25質量%を越えると(メタ)アクリレートが重合するおそれがある。さらに、撹拌、混合する時間は、5分から120分程度が好ましい。
【0022】
なお、必要に応じて、中和槽において、反応生成液又は中和後の有機層を水洗処理することができる。
〔脱溶剤処理〕
前記中和処理で得られた中和処理液は、該処理液から有機溶剤を脱溶剤槽で除去し、最終製品である(メタ)アクリレートを得る。
【0023】
本発明は、該脱溶剤処理において、脱溶剤槽には中和処理液を循環させる循環配管を接続し、該循環配管には流下式の外部熱交換器を設け、該外部熱交換器中で中和処理液が膜状となった状態で熱交換されるように構成し、中和処理液を循環させることにより脱溶剤槽内の中和処理液を加熱する(メタ)アクリレートの製造方法である。
【0024】
以下、本発明における脱溶剤処理工程の理解を容易にするため、図1に基づき説明する。
図1は(メタ)アクリレートの製造工程を示す概略説明図であり、その図1に示すように、上下が密閉された円筒状をなす反応器11の天板には、原料供給配管12が接続され、(メタ)アクリレートの原料が反応器11内に供給されるようになっている。この反応器11内において、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒及び有機溶剤の存在下にエステル化反応(脱水縮合反応)させる。
【0025】
次に、反応器11の底部には第1接続配管13の一端が接続され、その他端が中和槽14の上部に接続され、反応器11でエステル化された反応生成液が中和槽14へ移される。該中和槽14においては、反応生成液がアルカリ水溶液にて中和処理される。
【0026】
次に、中和槽14の底部には第2接続配管15の一端が接続され、その他端が脱溶剤槽16の上部に接続され、中和処理液が脱溶剤槽16に移され、そこで有機溶剤が除去されるようになっている。脱溶剤槽16の底部には第3接続配管17の一端が接続され、その他端がポンプ18の吸入部に接続されている。ポンプ18の吐出部には、第4接続配管19の一端が接続され、その他端が流下式の外部熱交換器20に接続されている。
【0027】
流下式の外部熱交換器の一例について、図2に基づき説明する。
図2(a)に示すように、ほぼ円筒状をなす熱交換器本体21は、上部本体22、中央本体23及び下部本体24が連結されて構成されている。中央本体23内には、図2(a)及び(b)に示すように、中和処理液が流下する多数本の熱交換用チューブ25が水平方向に一定間隔をおいて上下方向に延びるように立設されている。中央本体23の周壁の上部位置には加熱媒体としてのスチーム、温水等が導入される導入管26が突設されるとともに、下部位置には熱交換後の水が排出される排出管27が突設されている。そして、導入管26から導入されたスチームは、中央本体23内で熱交換用チューブ25の間隙28を通って下降し、熱交換用チューブ25内の中和処理液と熱交換して水となって排出管27から排出されるようになっている。
【0028】
図2(a)に示すように、上部本体22の頂部には、中和処理液を内部に注入するための注入管29が支持され、その下端部には逆椀状に形成され、その底壁に多数の孔が開いた分散体30が形成され、中和処理液をミスト状に噴出するように構成されている。また、下部本体24は下部ほど縮径されるホッパー状に形成され、熱交換された中和処理液を集めるようになっている。
【0029】
図2(c)は熱交換用チューブ25の一部を拡大して示す斜視図であり、同図に示すように、中和処理液が熱交換用チューブ25内を流下する際には熱交換用チューブ25の内周面に沿って膜状、つまり薄膜31となって流れるようになっている。従って、単位伝熱面積当たりの中和処理液の量が少なく、言い換えれば中和処理液当たりの伝熱面積が大きいため、加熱媒体の熱エネルギーの伝熱効率を高めることができる。
【0030】
脱溶剤槽16の真空度としては、使用する原料及び目的に応じて適宜設定すれば良く、好ましくは0.5〜50kPaであり、溶剤の除去程度により徐々に減圧度を増すことができる。この脱溶剤処理は、(メタ)アクリレートの熱重合を抑えるために、酸素を供給したり、重合禁止剤を添加したりするとともに、温度を例えば80℃以下に維持して、減圧下に行うことが好ましい。
【0031】
図2に示すように、下部本体24の底部には、第5接続配管32の一端が接続され、図1に示すように、その他端が脱溶剤槽16の上端部に接続され、中和処理液が脱溶剤槽16に循環される。上記の第3接続配管17、第4接続配管19及び第5接続配管32によって循環配管33が構成されている。
【0032】
この場合、循環配管33内の圧力よりも脱溶剤槽16内の圧力が低くなるように設定し、中和処理液が第5接続配管32から脱溶剤槽16に戻ったとき減圧されて沸点が下がり、瞬間的な蒸発が生ずるフラッシュ蒸発(自己蒸発)されるように構成することが、中和処理液中の有機溶剤の蒸発を促進させることができるため好ましい。
【0033】
脱溶剤槽16の頂部には、溶剤排出用配管34が接続され、図示しない冷却装置で冷却されて液化され、溶剤タンクへ戻される。また、第4接続配管19の途中には抜き出し配管35が接続され、脱溶剤処理された脱溶剤処理液、すなわち(メタ)アクリレートを主成分として含む脱溶剤処理液が取り出されるようになっている。
【0034】
さて、本実施形態の作用を説明すると、反応器11では(メタ)アクリル酸とアルコールとが酸触媒及び有機溶剤の存在下にエステル化反応し、中和槽14では反応生成液がアルカリ水溶液にて中和処理され、脱溶剤槽16では中和処理液から有機溶剤が除去され、(メタ)アクリレートが製造される。この製造過程で、脱溶剤槽16には中和処理液を循環させる循環配管33が接続され、該循環配管33には流下式の外部熱交換器20が設けられ、該外部熱交換器20の多数の熱交換用チューブ25内で中和処理液が薄膜31となって流下し、加熱媒体との間で熱交換が行われる。その熱交換時には、中和処理液の薄膜31に対する伝熱面積が大きいため、熱交換が効率良く行われ、脱溶剤槽16内の中和処理液は加熱媒体の熱エネルギーによって速やかに加熱される。よって、中和処理液が高温に晒される時間を短くすることができる。
【0035】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の(メタ)アクリレートの製造方法では、脱溶剤槽16には中和処理液を循環させる循環配管33を接続し、該循環配管33には流下式の外部熱交換器20を設け、該外部熱交換器20中で中和処理液が薄膜31となった状態で熱交換されるようになっている。このため、熱交換効率が高くなり、脱溶剤槽16内の中和処理液は迅速に加熱される。従って、従来の脱溶剤槽の外周部を加熱する方法に比べ、脱溶剤処理に要する時間を短縮することができるとともに、脱溶剤処理後の脱溶剤処理液の着色を抑制することができる。
【0036】
・ また、中和処理液を循環配管33から脱溶剤槽16に戻すに当たり、循環配管33内の圧力よりも脱溶剤槽16内の圧力が低くなるように設定し、中和処理液が循環配管33から脱溶剤槽16に戻ったとき減圧されてフラッシュ蒸発されるように構成されている。そのため、中和処理液が循環配管33から脱溶剤槽16に戻ったとき急激に減圧されてフラッシュ蒸発され、中和処理液中の有機溶剤の蒸発を促進させることができる。
【0037】
・ さらに、原料のアルコールが多価アルコールであることにより、高沸点の多官能(メタ)アクリレートについて上記の効果を発揮することができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
前記図1に示す(メタ)アクリレートの製造装置を用いてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの製造を行った。脱溶剤槽16の上端部には外部熱交換器20が付設されている。反応原料として、ジペンタエリスリトール2800kg、アクリル酸5800kg、塩化第2銅14kg、トルエン4500kg及び78%硫酸130kgを反応器11に仕込み、温度84℃、圧力53.2kPaの条件下にエステル化反応を開始した。トルエンとともに共沸するエステル化反応の縮合水を図示しないディーンスターク装置で留去してエステル化反応を進行させ、17時間後にエステル化反応を停止した。
【0039】
反応液を第1接続配管13を経て中和槽14に導き、中和槽14で4%硫酸アンモニウム水溶液にて水洗処理を行った後に、水酸化ナトリウム水溶液にて中和処理を行い、さらに水洗処理を行った。続いて、水洗処理後の反応液を第2接続配管15を介して脱溶剤槽16へ移し、減圧下に脱溶剤処理を行った。加熱は、脱溶剤槽16から抜き出した中和処理液をポンプ18により外部熱交換器20に供給し、加熱された反応液をフラッシュ蒸発させ循環させた。
【0040】
脱溶剤処理の進行に伴い、温度を75℃まで、圧力を0.67kPaまで徐々に変化させた。その結果、脱溶剤処理に要した時間は15時間であった。このようにしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを得た。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの製造を7ヶ月間連続で行った結果、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの色調(APHA)は、40〜70で推移し、着色の少ないものであった。
(実施例2)
実施例1において、ジペンタエリスリトール3600kg、アクリル酸7000kg、塩化第2銅16kg、トルエン5800kg及び78%硫酸180kgを反応器11に仕込み、温度83℃、圧力53kPaの条件にてエステル化反応を開始した。その他は、実施例1と同様にしてエステル化反応、中和処理、水洗処理及び脱溶剤処理を行った。脱溶剤処理の進行に伴い、温度を74℃まで、圧力を0.65kPaまで徐々に変化させた。その結果、脱溶剤処理に要した時間は8時間であった。このようにしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを得た。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの製造を18ヶ月間連続で行った結果、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの色調(APHA)は、10〜40で推移し、着色の少ないものであった。
(実施例3)
実施例1において、ジトリメチロールプロパン4000kg、アクリル酸5000kg、ハイドロキノンモノメチルエーテル15kg、トルエン5000kg及び78%硫酸120kgを反応器11に仕込み、温度84℃、圧力50kPaの条件にてエステル化反応を開始した。その他は、実施例1と同様にしてエステル化反応、中和処理、水洗処理及び脱溶剤処理を行った。脱溶剤処理の進行に伴い、温度を76℃まで、圧力を0.67kPaまで徐々に変化させた。その結果、脱溶剤処理に要した時間は11時間であった。このようにしてジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを得た。ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの製造を15ヶ月間連続で行った結果、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの色調(APHA)は、10〜30で推移し、着色の少ないものであった。
(比較例1)
実施例1において、脱溶剤処理工程を図3に示すように変更した。すなわち、脱溶剤槽16の周囲に加熱媒体が収容されたジャケット36を設けるとともに、そのジャケット36には加熱媒体の入口配管37と出口配管38とを設ける。さらに、脱溶剤槽16の頂部には有機溶剤を排出する排出管39を接続し、底部には脱溶剤処理液を抜き出す取り出し配管40を設けた。そして、ジャケット36内の加熱媒体により、脱溶剤槽16内の中和処理液を加熱してその中の有機溶剤を揮散させた。その他は、実施例1と同様にしてエステル化反応、中和処理及び水洗処理を行った。脱溶剤処理の進行に伴い、温度を80℃まで、圧力を0.67kPaまで徐々に変化させた。その結果、脱溶剤処理に要した時間は17時間であり、実施例1に比べて時間を要するものであった。このようにしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを得た。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの製造を7ヶ月間連続で行った結果、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの色調(APHA)は、150〜250で推移し、着色の多いものであった。
(比較例2)
実施例2において、比較例1と同様の脱溶剤処理を行う以外は、実施例2と同様にしてエステル化反応、中和処理及び水洗処理を行った。脱溶剤処理の進行に伴い、温度を80℃まで、圧力を0.65kPaまで徐々に変化させた。その結果、脱溶剤処理に要した時間は11時間であり、実施例2に比べて時間を要するものであった。このようにしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを得た。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの製造を15ヶ月間連続で行った結果、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの色調(APHA)は、50〜90で推移し、着色の不十分なものであった。
(比較例3)
実施例3において、比較例1と同様の脱溶剤処理を行う以外は、実施例3と同様にしてエステル化反応、中和処理及び水洗処理を行った。脱溶剤処理の進行に伴い、温度を80℃まで、圧力を0.67kPaまで徐々に変化させた。その結果、脱溶剤処理に要した時間は14時間であり、実施例3に比べて時間を要するものであった。このようにしてジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを得た。ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの製造を18ヶ月間連続で行った結果、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの色調(APHA)は、30〜200で大きく変動し、着色の不十分なものであった。
【0041】
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記循環配管33の第4接続配管19にガス混入部(ラインミキサー)を設け、そのガス混入部から例えば5%の酸素を含む窒素ガスを混入し、フラッシュ蒸発を促進するとともに、中和処理液の重合を防止するように構成することもできる。この場合、ガス混入部を第3接続配管17に設け、ポンプ18でガスを中和処理液に混合して気液混合を効率良く行うことが好ましい。
【0042】
・ 前記外部熱交換器20は、中和処理液を膜状にして熱交換する形式のものであればよく、ロータリー式等の熱交換器であってもよい。
・ 前記循環配管33において、外部熱交換器20を複数並列に設け、熱交換効率を向上させるように構成することもできる。
【0043】
・ 前記外部熱交換器20中での熱交換効率を高めるために、熱交換用チューブ25の内周面又は外周面に伝熱面積を大きくするフィン等を設けることができる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0044】
・ 前記流下式の外部熱交換器は、多管式の熱交換器であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を向上させることができる。
【0045】
・ 前記循環配管にはポンプを備え、中和処理液を強制的に循環させるように構成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態における(メタ)アクリレートの製造工程を示す概略説明図。
【図2】(a)は外部熱交換器を一部破断して示す正面図、(b)は(a)の2b−2b線における断面図、(c)は熱交換器用チューブの一部を示す斜視図。
【図3】比較例における(メタ)アクリレートの製造工程を示す概略説明図。
【符号の説明】
【0047】
11…反応器、14…中和槽、16…脱溶剤槽、20…外部熱交換器、31…薄膜、33…循環配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸、アルコール、酸触媒及び有機溶剤を反応器に供給し、(メタ)アクリル酸とアルコールとを酸触媒及び有機溶剤の存在下にエステル化反応させ、反応生成液を中和槽でアルカリ水溶液にて中和処理し、中和処理液から有機溶剤を脱溶剤槽で除去し、(メタ)アクリレートを製造する(メタ)アクリレートの製造方法において、
前記脱溶剤槽には中和処理液を循環させる循環配管を接続し、該循環配管には流下式の外部熱交換器を設け、該外部熱交換器中で中和処理液が膜状となった状態で熱交換されるように構成し、中和処理液を循環させることにより脱溶剤槽内の中和処理液を加熱することを特徴とする(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記中和処理液を循環配管から脱溶剤槽に戻すに当たり、循環配管内の圧力よりも脱溶剤槽内の圧力が低くなるように設定し、中和処理液が循環配管から脱溶剤槽に戻ったとき減圧されてフラッシュ蒸発されるように構成することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
前記アルコールが多価アルコールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−176829(P2007−176829A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375083(P2005−375083)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】