説明

(4AR,10AR)−1−N−プロピル−1,2,3,4,5,10,10A−オクタヒドロベンゾ[G]キノリン−6,7−ジオールおよび関連化合物を、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚越しに投与する方法ならびにその医薬組成物

パーキンソン病および不穏下肢症候群などの神経障害の治療用の、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩および関連化合物の医薬組成物および投与の方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経障害の治療用の(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールおよびその医薬組成物を投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)の対症治療におけるドパミン補充剤(dopamine−replacing agent)の使用は、疑いの余地なく、患者のクオリティー・オブ・ライフの向上に成功を収めてきている。長年にわたり使用されており依然としてPD治療のゴールド・スタンダードであるLドパは、運動の緩慢さ(運動緩徐)、硬直および/または振戦を特徴とするPDの運動症状を緩和する。Lドパは、生体内代謝され(bio−metabolized)てドパミン(DA)となるプロドラッグとして作用することは理解される。次いでDAは脳内のドパミン受容体を活性化するが、これらの受容体は2つのクラス、すなわちD1受容体およびD2受容体に分けられる。D1受容体は、D受容体およびD受容体に分けることができ、D2受容体は、D受容体、D受容体およびD受容体に分けることができる。しかし、ドパミン補充療法(dopamine−replacement therapy)は、特に長期の治療後には制限を有するのが実際である。
【0003】
PDに苦しむ患者は、正常な機能が得られる「オン(on)」期間と、重度にパーキンソン病症状を呈する「オフ(off)」期間とを繰り返すことがある。加えて、疾患の経過を通じLドパが依然として有効な抗パーキンソン病剤であるという事実にも関わらず、結果としてPD患者は、深刻な身体的障害を経験することがある(Obeso, JAら、Neurology、2000、55、S13〜23頁(非特許文献1))。DA作動薬が実際にLドパより運動異常を引き起こしにくいことは注目に値するが、これは、運動異常を有するPD患者に限られた価値であり、その理由は、PD患者の多くが中〜重度のPDを有し、Lドパの有効性を必要とする場合が多いからである。
【0004】
DAの作用を模倣する抗パーキンソン病剤は、PDの治療に有効であることが示されている。プラミペキソールなどの選択的なD2作動薬は有効であるが、末期のPDにおいては有効性に欠け、最終的にLドパでの補完または補充が必要である。アポモルヒネは、強力なD1/D2作動薬として作用するカテコールアミン系の抗パーキンソン病剤である。とりわけ、この薬物は、長期間のLドパ治療を受けている重度に身体的障害を有する患者の「オフ」期間中の救済物質として有用である。しかし、経口での生物学的利用率が低く初回通過効果が高いことから、アポモルヒネは、その臨床適用が限定される。初回通過効果の高さおよび経口での生物学的利用率の低さを克服するためには、アポモルヒネは皮下投与しなければならない。一般的に、カテコールアミンは経口での生物学的利用率が低いことから、経口投与薬としての臨床使用が妨げられている。
【0005】
PD以外に、ドパミン作動性のターンオーバーの増加が有益と考えられる他の疾患としては、うつの治療、および、認知の多様な側面を含めた精神機能の改善のための治療が挙げられる。ドパミン作動性のターンオーバーは、食欲抑制剤として肥満の治療にプラスの効果を有することがある。それにより、微細脳機能障害(MBD)、ナルコレプシー、および潜在的に、統合失調症の陰性症状、陽性症状ならびに認知症状を改善できる。不穏下肢症候群(RLS)および周期性四肢運動障害(PLMD)はDA作動薬で臨床的に治療される代替的な適応症である。
【0006】
加えて、性的不能および勃起機能不全もDA作動薬での治療により改善する傾向がある。したがって、男女両方における性機能の改善は、DA作動薬での治療にとって別の適応症である可能性があるが、その理由は、勃起機能不全(男性の性的不能)、および、例えば閉経期の女性の性的刺激(膣の潤滑および陰核の勃起といった刺激)は、潜在的にはDA受容体刺激により達成できるからである。この場合において、アポモルヒネ(舌下投与する場合)を使用すると臨床的に勃起機能不全が改善されることは注目に値する。
【0007】
ハンチントン病の治療薬としてのLドパおよびD2作動薬プラミペキソールの臨床試験は有望な結果を示しており、したがって、ハンチントン病の治療は、本発明の化合物の別の潜在的な用途である。DAは、心血管系および腎臓系の調節に関与しており、したがって、腎不全および高血圧症は、本発明の化合物の代替的な適応症と考えることができる。
【0008】
この分野における長年にわたる関心にも関わらず、PD治療用の有効で活性な薬物の開発に対する満たされていない需要は明らかに存在する。連続的なドパミン作動性の刺激をもたらすD1/D2混合作動薬は、そのような満たされていない需要を満足させると考えられる。この目的のため、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール[本明細書中では化合物10と呼ぶ]は、PDの治療に可能性を示す強力なD1/D2作動薬として同定されている。しかし、これまでに述べたように、カテコールアミンは経口での生物学的利用率が低いことから、経口投与薬としての臨床使用が妨げられている。
【0009】
あるいは、口腔全体は、薬物の粘膜(局所効果)吸収および経粘膜(全身効果)吸収の両方に向いていると考えることができるが、薬物の経口腔粘膜送達は、吸収部位として主に舌下および頬の粘膜を利用する。投与が容易なため、口腔は薬物送達にとって魅力的な部位である。さらに、口腔は、腸、直腸および鼻の粘膜と比較して酵素活性が低下しており、これにより吸収の向上および吸収部位での刺激低下がもたらされ得る。口腔は鼻上皮より損傷および刺激に対する感受性が低い。
【0010】
口腔粘膜は、下層組織を保護的に覆う一方、微生物に対するバリアとして、また、口腔を通る物質の通過を制御するものとして作用する。ヒトにおいては、頬膜は、角化した、および角化していない、筋のある上皮から成る。隔壁の特徴、イオン化度および分子サイズなど多くの因子が、膜越しの薬物輸送に影響する。しかし、多くの薬物は、有用となる十分な量では頬膜を通過しない。
【0011】
一般には、短時間での薬物送達を必要とする障害には舌下経路が好ましく、頬経路は、持続的な薬物送達が望ましい場合に利用されることが多い。さらに、舌下または経頬用の薬物製剤は、例えば、錠剤またはカプセル剤など慣用的な経口薬製剤を飲み込むのが困難な患者(パーキンソン病患者など)にとって魅力的な代用品となる。薬物の経頬送達に関する総説については以下を参照のこと:Shojaei、J. of Pharmacy & Pharm. Sci.、1998、1、15頁(非特許文献2)、Rossiら、Drug Discovery Today、2005、2、1、59頁(非特許文献3)およびPatherら、Expert Opinion on Drug Delivery、2008、5、531頁(非特許文献4)。舌下経路は、通常、経口投与される伝統的な錠剤より作用開始が早く、舌下の血管を通して吸収される分については、肝臓の初回通過代謝過程が省略される(Motwaniら、Clin. Pharm.、1991、21、83〜94頁(非特許文献5)およびIshikawaら、Chem. Pharm. Bull.、2001、49、230〜232頁(非特許文献6))。
【0012】
頬の血管分布が高いため、経頬送達される薬物は、体循環に直接到達でき、肝臓での初回通過代謝に付されない。加えて、頬経路を介して投与される治療剤は、消化管の環境にさらされない(Mitraら、Encyclopedia of Pharm. Tech.、2002、2081〜2095頁(非特許文献7))。さらに、頬粘膜は、経鼻経路および経直腸経路と比較して酵素活性が低い。したがって、生化学的分解により薬物が不活性化する可能性は、他の投与経路ほど急速かつ広範ではない(de Variesら、Crit. Rev. Ther. Drug Carr. Syst.、1999、8、271〜303頁(非特許文献8))。
【0013】
口腔粘膜は比較的速やかに再生されるため、口腔の変色は、他の送達様式と比較して経頬送達では最小に抑えられる。経頬送達は他の送達様式より有利でもある。例えば、カテコールアミンの経皮送達では局所的な皮膚刺激が観察される。さらに、注射部位での刺激および分解したアポモルヒネの沈殿は、その間欠的な皮下投与だけでなく連続的な注入による送達とも関連することがある。
【0014】
この目的のため、本発明者らは、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールおよび関連化合物を口腔粘膜送達により投与する方法を発見した。この方法は、パーキンソン病だけでなく本出願において開示する他の状態の治療における経頬投与用の前記化合物の新規の医薬組成物の開発により達成された。したがって、本発明は、本発明の化合物の1つまたは薬学上許容可能な塩と薬学上許容可能な担体とを含む経頬投与用の医薬組成物を提供する。
【0015】
独立に、鼻粘膜は、経口投与および非経口投与に代わる選択肢を提供するので、鼻腔内投与は、多くの医薬品の治療効果を達成する実用的な方式である。この方法の利点は、薬物を容易かつ簡単に投与でき、限局的または全身的な効果のいずれかを達成できることである。経鼻投与においては、生物学的活性物質を、粘膜を通して透過または吸収することが可能であるような条件で鼻粘膜に施用しなければならない。鼻粘膜下の広範な毛細血管網は、急速かつ有効な全身的な薬物吸収をもたらすのにとりわけ適している。さらに、鼻上皮膜は、事実上、上皮細胞の単一層(多列上皮)から成り、口、膣など扁平上皮層を有する他の粘膜表面より薬物投与に適していると考えられる。
【0016】
さらに、脳内で効果を発揮する薬物の鼻腔内投与は、薬物が「正常な」血流を通して血液脳関門(BBB)を横切らなければならない場合ほどには、BBBが当該薬物にとって障害にならないと考えられることから有利であると考えられる。作用開始も、CNSベースの薬物の鼻腔内投与の場合は他の投与経路による場合より顕著に速やかであると考えられる。
【0017】
本発明者らは、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールおよび関連化合物を鼻腔内投与により投与する方法を発見した。この方法は、パーキンソン病だけでなく本出願において開示する他の状態の治療における鼻腔内投与用の前記化合物の新規の医薬組成物の開発により達成された。したがって、本発明は、本発明の化合物の1つまたは薬学上許容可能な塩と薬学上許容可能な担体とを含む鼻腔内投与用の医薬組成物を提供する。
【0018】
さらに、皮膚を通した体循環中への医薬剤の送達は、経口投与に勝るいくつかの他の利点ももたらす望ましい投与経路と見られる。例えば、胃腸(GI)管を迂回すれば、頻繁に生じるGI刺激が取り除かれ、肝臓による部分的な初回通過不活性化が回避されると考えられる。さらに、数時間または数日にわたり薬物が着実に吸収される方が、経口剤形によりもたらされる血液レベルのスパイクおよびトラフより好ましい場合がある。加えて、患者は、薬を服用することを忘れることが多く、最も忠実に服用遵守する患者であっても、丸剤を飲み込むことが、特に毎日複数回服用しなければならない場合には面倒になる。経皮経路は、比較的速やかなまたは遅い(持続的な)吸収および治療作用開始をもたらすことができることから、経口経路より有効な場合もある。
【0019】
経皮送達には固有の課題もあるが、その理由は、一部、皮膚の性質による。皮膚は、バリアとして作用することにより体を保護する本質的に厚い膜である。結果として、皮膚を通した薬物または任意の外用剤の動きは複雑な過程である。皮膚の構造には、比較的薄い表皮、または外層、および、真皮と呼ばれるより厚い内層が含まれる。薬物が無傷の皮膚に透過するには、まず表皮の外層である角質層中に、また、これを通して、移動しなければならない。次に、薬物は、生存表皮、真皮乳頭層および毛細管壁を透過し、血流またはリンパ管に入らなければならない。各組織は透過に対して異なる抵抗性を特徴とするが、角質層は、経皮用および局所用の薬物の吸収に対する最も強いバリアである。きつく詰まった角質層細胞はケラチンで満たされている。細胞の角化および密度は、ある薬物に対する皮膚の不浸透性に関与していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,223,614号
【特許文献2】欧州特許第0159237号
【特許文献3】米国特許第5,587,172号
【特許文献4】米国特許第5,622,717号
【特許文献5】米国特許第5,567,439号
【特許文献6】米国特許第5,871,781号
【特許文献7】米国特許第5,654,003号
【特許文献8】米国特許第5,622,716号
【特許文献9】米国特許第5,629,011号
【特許文献10】米国特許第5,023,252号
【特許文献11】米国特許第6,200,591号
【特許文献12】米国特許第6,369,058号
【特許文献13】米国特許第6,380,175号
【特許文献14】国際公開第WO01/60325号
【特許文献15】米国特許第6,068,852号
【特許文献16】米国特許第5,814,329号
【特許文献17】国際公開第WO99/58110号
【特許文献18】米国特許第6,465,626号
【特許文献19】米国特許第6,432,440号
【特許文献20】米国特許第6,391,318号
【特許文献21】米国特許第5,840,341号
【特許文献22】欧州特許第EP0993483号
【特許文献23】欧州特許第EP1051190号
【特許文献24】国際公開第WO96/05810号
【特許文献25】国際公開第WO96/03142号
【特許文献26】国際公開第WO93/15737号
【特許文献27】欧州特許第EP1025859号
【特許文献28】欧州特許第EP1108423号
【特許文献29】国際公開第WO03/020771号
【特許文献30】国際公開第WO03/026559号
【特許文献31】国際公開第WO02/011800号
【特許文献32】国際公開第WO00/51672号
【特許文献33】国際公開第WO02/068029号
【特許文献34】国際公開第WO02/068030号
【特許文献35】国際公開第WO02/068031号
【特許文献36】国際公開第WO02/068032号
【特許文献37】国際公開第WO03/000310号
【特許文献38】国際公開第WO03/020350号
【特許文献39】国際公開第WO03/082393号
【特許文献40】国際公開第WO03/084591号
【特許文献41】国際公開第WO03/090812号
【特許文献42】国際公開第WO00/41755号
【特許文献43】米国特許第5,785,991号
【特許文献44】米国特許第4,764,381号
【特許文献45】米国特許第4,956,171号
【特許文献46】米国特許第4,863,970号
【特許文献47】米国特許第5,453,279号
【特許文献48】米国特許第4,883,660号
【特許文献49】米国特許第5,719,197号
【特許文献50】米国特許第3,996,934号
【特許文献51】米国特許第3,797,494号
【特許文献52】米国特許第3,742,951号
【特許文献53】米国特許第3,598,122号
【特許文献54】米国特許第3,598,123号
【特許文献55】米国特許第3,731,683号
【特許文献56】米国特許第3,734,097号
【特許文献57】米国特許第4,336,243号
【特許文献58】米国特許第4,379,454号
【特許文献59】米国特許第4,460,372号
【特許文献60】米国特許第4,486,193号
【特許文献61】米国特許第4,666,441号
【特許文献62】米国特許第4,615,699号
【特許文献63】米国特許第4,681,584号
【特許文献64】米国特許第4,558,580号
【特許文献65】米国特許第3,797,454号
【特許文献66】米国特許第4,031,894号
【特許文献67】米国特許第4,291,014号
【特許文献68】米国特許第4,297,995号
【特許文献69】米国特許第4,390,520号
【特許文献70】米国特許第4,340,043号
【特許文献71】米国特許第3,549,016号
【特許文献72】米国特許第3,546,141号
【特許文献73】米国特許第5,087,241号
【特許文献74】米国特許第5,087,242号
【特許文献75】米国特許第5,846,217号
【特許文献76】米国特許第6,421,561号
【特許文献77】米国特許第5,685,837号
【特許文献78】米国特許第5,158,537号
【特許文献79】米国特許第5,288,289号
【特許文献80】米国特許第5,310,404号
【特許文献81】米国特許第5,320,598号
【特許文献82】米国特許第5,385,543号
【特許文献83】米国特許第5,645,527号
【特許文献84】米国特許第5,730,716号
【特許文献85】米国特許第6,223,075号
【特許文献86】米国特許第4,383,529号
【特許文献87】国際公開第WO02/14279号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Obeso, JAら、Neurology、2000、55、S13〜23頁
【非特許文献2】Shojaei、J. of Pharmacy & Pharm. Sci.、1998、1、15頁
【非特許文献3】Rossiら、Drug Discovery Today、2005、2、1、59頁
【非特許文献4】Patherら、Expert Opinion on Drug Delivery、2008、5、531頁
【非特許文献5】Motwaniら、Clin. Pharm.、1991、21、83〜94頁
【非特許文献6】Ishikawaら、Chem. Pharm. Bull.、2001、49、230〜232頁
【非特許文献7】Mitraら、Encyclopedia of Pharm. Tech.、2002、2081〜2095頁
【非特許文献8】de Variesら、Crit. Rev. Ther. Drug Carr. Syst.、1999、8、271〜303頁
【非特許文献9】Senel, J. Control. Res.、2001、72、133〜144頁
【非特許文献10】Ghosh and Pfister、Drug Delivery to the Oral Cavity: Molecule to Market、2005、New York、CRC Press
【非特許文献11】Hamiltonら、Drug Deliv. Technol.、2005、5、34〜37頁
【非特許文献12】Parakhら、Pharm. Tech.、2003、27、92〜100頁
【非特許文献13】Auroraら、Drug Deliv. Technol.、2005、5、50〜54頁
【非特許文献14】Sastryら、Drug Delivery to the Oral Cavity: Molecule to Market、2005、New York、CRC Press、311〜316頁
【非特許文献15】Sastryら、Pharm. Sci. Tech. Today、2000、3、138〜145頁
【非特許文献16】Changら、Pharmaceutical Technology、2000、24、52〜58頁
【非特許文献17】Sharmaら、Pharmaceutical Technology North America、2003、10〜15頁
【非特許文献18】Allen、International Journal of Pharmaceutical Technology、2003、7、449〜450頁
【非特許文献19】Dobetti、Pharmaceutical Technology Europe、2000、12、32〜42頁
【非特許文献20】Verma and Garg、Pharmaceutical Technology On-Line、2001、25、1〜14頁
【非特許文献21】Watanabeら、Biol. Pharm. Bull.、1995、18、1308〜1310頁
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【非特許文献27】Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、1975
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【非特許文献35】Sheldrick、「SHELXTL, Structure Determination Programs」、Version 6.12、Bruker Analytical X-Ray Instruments Inc.、Madison、USA、(2001)
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【非特許文献37】Cannonら、J. Heterocycl. Chem.、17、1633頁、(1980)
【非特許文献38】Ungerstedt and Arbuthnott、Brain Res.、1970、24、485頁
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【非特許文献41】Arnt and Hyttel、Psychopharmacology、1985、85(3)、346頁
【非特許文献42】Sonsallaら、J. Pharmacol Exp. Ther.、1988、247(1)、180頁
【非特許文献43】Lundbladら、Eur. J Neurosci.、15、120頁、(2002)
【非特許文献44】Smithら、Mov. Disord.、2002、17(5)、887頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
近年、経皮送達の進歩としては、浸透促進剤(permeation enhancer)(皮膚透過促進剤(skin penetration enhancing agent))の製剤が挙げられる。浸透促進剤は、角質層中に容易に移動して、皮膚を通る薬物の動きを促進する親油性の化学物質であることが多い。経皮送達を改善するための非化学的な様式も出現しており、こうした様式としては、超音波、イオン浸透法および電気穿孔法が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールおよび関連化合物を経皮送達により投与する方法を発見した。この方法は、パーキンソン病だけでなく本出願において開示する他の状態の治療における経皮投与用の前記化合物の新規の医薬組成物の開発により達成された。したがって、本発明は、本発明の化合物の1つまたは薬学上許容可能な塩と薬学上許容可能な担体とを含む経皮投与用の医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚を越えて送達するための医薬組成物に関する。
【0025】
別の態様は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を含む、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚を越えて送達するための医薬組成物の、パーキンソン病の治療用の医薬の調製における使用に関する。
【0026】
さらに、本発明の態様は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、口腔粘膜を越えて送達するための医薬組成物に関する。独立の一態様は、ラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、口腔粘膜越しの送達用の医薬組成物に向けたものである。
【0027】
別の態様は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩の、口腔粘膜越しの送達の方法に関する。独立に、本発明の一態様は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの治療上有効量の(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩を含む、口腔粘膜越しの送達用の医薬組成物の、神経障害の治療用の医薬の調製における使用に関する。一態様では、神経障害はパーキンソン病である。
【0028】
本発明の独立の一関心は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの治療上有効量の(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩の口腔粘膜越しの送達用の医薬組成物を投与することを含む、神経障害を治療する方法に向けられている。一態様では、神経障害はパーキンソン病である。
【0029】
本発明のまた別の態様は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、鼻内投与用の医薬組成物に関する。独立の一態様は、ラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、鼻内投与用の医薬組成物に向けたものである。
【0030】
別の態様は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの(4aR,10aR)エナンチオマーまたはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩の鼻内送達の方法に関する。独立に、本発明の一態様は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの治療上有効量の(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩を含む鼻内投与用の医薬組成物の、神経障害の治療用の医薬の調製における使用に関する。一態様では、神経障害はパーキンソン病である。
【0031】
本発明の独立の一関心は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの治療上有効量の(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩の鼻内投与用の医薬組成物を投与することを含む、神経障害を治療する方法に向けられている。一態様では、神経障害はパーキンソン病である。
【0032】
本発明の一態様は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む経皮送達用の医薬組成物に関する。独立の一態様は、ラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む経皮送達用の医薬組成物に向けたものである。
【0033】
別の態様は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩を含む経皮送達用の医薬組成物のための方法に関する。独立に、本発明の一態様は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの治療上有効量の(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩を含む経皮送達用の医薬組成物の、神経障害の治療用の医薬の調製における使用に関する。一態様では、神経障害はパーキンソン病である。
【0034】
本発明の独立の一関心は、1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの治療上有効量の(4aR,10aR)エナンチオマーもしくはラセミ・トランス異性体または薬学上許容可能なその塩の経皮送達用の医薬組成物を投与することを含む、神経障害を治療する方法に関する。一態様では、神経障害はパーキンソン病である。
【0035】
また別の態様は、式1a、1bまたは1c:
【0036】
【化1】

(式中、各R、RおよびRは独立に、C1〜6アルカノイル、シクロアルキルアルキル、フェニルアセチルまたはベンゾイルである)
から選択される化合物または薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚越しの送達用の医薬組成物に関する。
【0037】
本発明の一態様は、比率が約0:1〜約1:0の式Ia(式中、Rx≠Ryである)の非対象ジエステル混合物に向けたものである。本発明の独立の一態様は、比率が約0:1〜約1:0の式IbおよびIcのモノエステル混合物に関する。
【0038】
本発明の独立の態様は、前述の医薬組成物のパーキンソン病の治療のための使用および方法に向けたものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】化合物ent−10の結晶構造を示す図である。「重い」臭素原子の異常散乱により絶対配置を決定した。
【図2】hDをトランスフェクトしたCHO−Ga16細胞中での、ドパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存刺激についての用量応答曲線を示すグラフである。
【図3】動物2、5日目の試料の代表的なクロマトグラムである。
【図4】例14の化合物10について用量正規化したAUC0−∞を示すグラフである。
【図5】例14の化合物10について用量正規化したCmaxを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の化合物は、2つのキラル中心(以下の式においてで示す)を有する。
【0041】
【化2】

【0042】
本発明の化合物は、2つの異なるジアステレオマー体、すなわちシス異性体およびトランス異性体の形で存在でき、その両方とも、2つのエナンチオマー体の形で存在できる。本発明は、トランス・ラセミ体および(4aR,10aR)エナンチオマーのみに関する。
【0043】
【化3】

【0044】
前述のように、本発明は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール(本明細書中では「化合物10」と呼ぶ)が、口腔粘膜を通した送達により生体利用可能である強力なD1/D2作動薬であるという発見に基づく。本発明を以下により詳細に説明するが、この説明は、本発明が実行される可能性のある全ての異なる方式または本発明に加えてもよい全ての特徴の詳細な目録であることを意図したものではない。
【0045】
ラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールは、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールと(4aS,10aS)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールとの1:1混合物である。
【0046】
「(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールの関連化合物」は、式Ia、IbおよびIcのラセミ・トランス−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールならびに対称エステル、非対称エステルおよびモノエステルを指す。式Ia、IbおよびIcのラセミ・トランス異性体および(4aR,10aR)エナンチオマーは両方とも、本発明の範囲内にある。
【0047】
本明細書中で使用する場合、「C1〜6アルカノイル」は、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のアルカノイル基を指し、その例としては、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基などが挙げられる。
【0048】
「シクロアルキルアルキル」は、1〜3個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のアルキレン・リンカーの末端に結合した飽和炭素環を指し、その例としては、シクロプロピルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロペンチルプロピル基などが挙げられる。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「活性成分」または「本発明の化合物」は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、ラセミ・トランス1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオール、または式Ia、IbもしくはIcの化合物から成る群から選択される化合物を指す。式Ia、IbおよびIcのラセミ・トランス異性体および(4aR,10aR)エナンチオマーは両方とも本発明の範囲内にある。
【0050】
A.口腔粘膜越しの投与
本明細書中で使用する場合、頬側口腔の「口腔粘膜の」膜には、以下の5つの領域が包含される:頬粘膜(頬)、口の底部(舌下)、歯茎(歯肉)、口蓋粘膜および口唇裏(lining of the lips)。
【0051】
本明細書に記載の医薬組成物は、浸透促進剤を含有してもよく、その理由は、頬側口腔は、吸収性に乏しい消化管部位だからである。頬側口腔には、典型的な絨毛型の吸収性の腸膜がない。さらに、腸とは異なり、上皮細胞間の接合部はきつく締まっている。頬側口腔の粘膜の膜を通して吸収されることになる物質の場合、その物質は、親油性の形態で存在すべきである。
【0052】
本発明による送達系は、当技術分野で公知の浸透/吸収促進剤と共に使用してもよい。適当な例としては、以下が挙げられる:陰イオン性界面活性物質(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムラウリエート(laureate))、陽イオン性界面活性物質(例えば塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性物質(例えばPolysorbate−80)、胆汁酸塩(例えば、グリコデオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム)、多糖(例えばキトサン)、合成ポリマー(例えば、Carbopol、カルボマー)、脂肪酸(例えば、オレイン酸、カプリル酸)、キレート剤(例えば、=エチレンジアミン四酢酸、クエン酸ナトリウム)、およびシクロデキストリン:α、β、γシクロデキストリン。細胞膜の流動性の増加、細胞間/細胞内の脂質の抽出、細胞のタンパク質の変化または表面ムチンの変化など、経頬施用のための吸収(浸透)促進剤の作用機序に関する一般的な総説および洞察については、Senel, J. Control. Res.、2001、72、133〜144頁(非特許文献9)を参照する。
【0053】
酸化防止剤
この経頬用組成物は、1つまたは複数の酸化防止剤を含むこともできる。代表的な酸化防止剤としては、塩化ラウラルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾドデシニウム、塩化セチルピリジウム、セトリミド、臭化ドミフェンなどの四級アンモニウム塩;ベンジルアルコール、クロロブタノール、o−クレゾール、フェニルエチルアルコールなどのアルコール;アスコルビン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラベンなど有機酸もしくはその塩;またはEDTAなどの錯体形成剤が挙げられる。
【0054】
他の賦形剤
担体および賦形剤としては、カルボン酸残基、カルボキシメチル基、スルホプロピル基およびメチルスルホン酸基などの適当な陰イオン性基を担持するイオン交換微小球が挙げられる。陰イオン交換体などのイオン交換樹脂も使用できる。部分的に脱アセチル化されたキチンであるキトサン、またはポリ−N−アセチル−D−グルコサミン、または、塩酸塩、乳酸塩、グルタミン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩もしくはコハク酸塩など薬学上許容可能なその塩。非イオン交換微小球として使用するための適当な他の原料としては、デンプン、ゼラチン、コラーゲンおよびアルブミンが挙げられる。
【0055】
pH調節
塩化ナトリウム、グルコース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、乳糖など、組成物の張性を調節するための賦形剤を加えてもよい。酸性または塩基性の緩衝液を口腔粘膜用組成物に加えてpHを制御することもできる。本発明の場合は低pHが好ましいと考えられる。
【0056】
医薬組成物としての本発明の化合物は、任意の適当な方式にて口腔中で投与してもよく、本化合物は、そのような投与に適した任意の剤形で、例えば、単純な液剤または分散剤、単純な錠剤、マトリックス錠、カプセル剤、散剤、シロップ剤、溶けるフィルム剤(dissolvable film)、パッチ剤、親油性のゲル剤の形態で存在してもよい。一実施形態では、本発明の化合物は、固形の医薬体の形態で、適切には錠剤またはカプセル剤として、投与される。別の特定の実施形態では、本発明の化合物は、溶けるフィルム剤の形態で投与される。
【0057】
本発明の化合物の経口腔粘膜投与の場合、慣用的な剤形では中で治療薬レベルを確保できない可能性があるが、その理由は、薬物製剤を口腔粘膜から取り除き、その結果、曝露時間が短すぎて吸収が予測不可能となる、口腔の生理学的な除去機序(唾液の洗浄効果および機械的応力)による。したがって、所望の治療作用を得るためには、本発明の化合物と粘膜との間の接触を長時間化および改善することが必要と考えられる。したがって、治療要件を満たすためには、舌下または経頬投与用に設計される製剤は、製剤と吸収部位との密接かつ持続的な接触を維持するための粘膜付着剤、粘膜を越える薬物浸透性を改善するための透過促進剤、および、口腔粘膜の酵素による分解から薬物を最終的に保護するための酵素阻害薬を含有してもよい。
【0058】
一実施形態では、口腔粘膜越しの送達は、頬経路を通して行われる。別の実施形態では、口腔粘膜越しの送達は、舌下経路を通して行われる。別の実施形態では、口腔粘膜越しの送達は、口唇を通して行われる。一実施形態では、本医薬組成物は液体の溶液剤である。一実施形態では、本医薬組成物はゲル剤である。また別の実施形態では、本組成物は透過促進剤をさらに含む。また別の実施形態では、本組成物は錠剤である。また別の実施形態では、本組成物はロゼンジ剤である。また別の実施形態では、本組成物はチューインガムである。また別の実施形態では、本組成物はリップスティックである。
【0059】
固体の医薬組成物の調製の方法も、当技術分野で周知である。したがって、錠剤は、活性成分を通常の佐剤、増量剤および希釈剤と混合し、次いで、簡便な打錠機でこの混合物を圧縮することにより調製できる。佐剤、増量剤および希釈剤の例は、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、乳糖、マンニトール、ソルビトール タルカム、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、乳糖、ゴムなどを含む。活性成分と適合することを条件に、着色剤、アロマ、保存剤など任意の他の佐剤または添加物を使用してもよい。
【0060】
とりわけ、本発明による錠剤製剤は、本発明の化合物を慣用的な佐剤または希釈剤と共に直接圧縮することにより調製できる。あるいは、本発明の化合物の湿式造粒物または溶融造粒物(慣用的な佐剤または希釈剤と共に混合物中に入っていてもよい)を錠剤の圧縮用に使用してもよい。
【0061】
本発明の特定の一実施形態では、口腔粘膜経由での、とりわけ経頬または舌下投与用の治療上有効量の本発明の化合物または薬学上許容可能なその酸付加塩を含む医薬組成物が提供される。
【0062】
経頬および舌下用の崩壊錠の製造工程は当技術分野で公知であり、そのような工程としては、慣用的な打錠法、凍結乾燥技術およびフロス・ベースの(floss−based)打錠技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
慣用的な打錠法
慣用的な錠剤加工により、取扱い、包装の容易さ、および速やかな崩壊について、慣用的な錠剤の特徴が得られる(Ghosh and Pfister、Drug Delivery to the Oral Cavity: Molecule to Market、2005、New York、CRC Press(非特許文献10))。この技術は、速やかな崩壊および高圧縮性を容易にする、水溶性を有する、物理的に改変された多糖の組合せに基づく。その結果得られるのが、瓶に梱包するのに妥当な硬度、および取扱いの容易さを有する速崩錠である。
【0064】
一定の実施形態では、この製造工程には、素早い溶解性を示す成型性の低い(low−moldable)糖(例えば、マンニトール、乳糖、グルコース、スクロースおよびエリトリトール)を成型性の高い(high−moldable)糖(例えば、マルトース、ソルビトール、トレハロースおよびマルチトール)と共に造粒することが含まれる。その結果得られるのが、速溶性と高い成型性とを有する賦形剤の混合物である(Hamiltonら、Drug Deliv. Technol.、2005、5、34〜37頁(非特許文献11))。本発明の化合物は、造粒またはブレンド工程の間に他の標準的な造粒用賦形剤と共に加えることができる。この錠剤は、低圧縮力で製造され、次いで、錠剤硬度を高めるために任意選択的な湿度調節処理が施される(Parakhら、Pharm. Tech.、2003、27、92〜100頁(非特許文献12))。
【0065】
他の実施形態では、本発明の化合物を含む経頬または舌下用の圧縮錠は、活性成分、発泡性の賦形剤および矯味剤の直接圧縮を含む慣用的な造粒工程に基づく(米国特許第5,223,614号(特許文献1)を参照のこと)。この錠剤は素早く崩壊するが、その理由は、水分と接触すると発泡性の二酸化炭素が生成されるからである。この発泡性賦形剤(発泡カップル剤(effervescence couple)として公知である)は、化学量論的により少ない量のベース材料を用いて有機酸結晶をコーティングすることにより調製される。有機酸結晶の粒子サイズは、ベース賦形剤より大きく、酸結晶上へのベース賦形剤の均一なコーティングを確実にするように慎重に選ぶ。このコーティング工程は、反応開始剤(この場合は精製水である)を加えることにより開始される。この反応は、有機酸結晶上でのベース・コーティングを完了させる程度のみ進行させる。反応終了に必要な終末点は、二酸化炭素の発生量を測定することにより定量される。次に、賦形剤を活性成分または活性微小粒子と、また、他の標準的な造粒用賦形剤と混合してから、圧縮して錠剤にする。
【0066】
さらなる他の実施形態では、この経頬または舌下用の錠剤は、非圧縮性の増量剤を矯味用の賦形剤および活性成分と合わせて乾燥ブレンド物にすることにより作製される。このブレンド物は、慣用的な回転式錠剤プレス機(rotary tablet press)を用い、圧縮して錠剤にする。この工程を用いて作製される錠剤は、機械的強度がより高く、ブリスター・パックまたは瓶の中に詰めるのに十分頑丈である(Auroraら、Drug Deliv. Technol.、2005、5、50〜54頁(非特許文献13))。他の実施形態では、この方法は、矯味用の甘味剤、ならびに、ミント、サクランボおよびオレンジなどの香味剤をさらに組み込む。一定の実施形態では、この工程を用いて作製される本発明の化合物の錠剤は、口中で5〜45秒で崩壊すべきであり、本発明の化合物を含有する筋肉内または皮下用の剤形と生物学的に等価であるように製剤化できる。
【0067】
経頬または舌下用のフリーズ・ドライ錠
フリーズ・ドライ工程には、予め形成されたブリスター・ポケット中に充填された本発明のマトリックス形成物質の化合物と他の賦形剤との液体混合物から水を除去する(フリーズ・ドライ時の昇華により)ことが含まれる。形成されたマトリックス構造は、本質的に非常に多孔質であり、唾液と接触すると急速に溶解または崩壊する(Sastryら、Drug Delivery to the Oral Cavity: Molecule to Market、2005、New York、CRC Press、311〜316頁(非特許文献14))。
【0068】
一般的なマトリックス形成剤としては、構造を強化するためのガラス状の非晶質の混合物を形成する、ゼラチン、デキストランまたはアルギネート;結晶化度および硬度を賦与するための、マンニトールまたはソルビトールなどの糖;ならびに、昇華時に多孔質構造を誘導するフリーズ・ドライ・ステップの間、製造プロセス媒体として機能する水が挙げられる。加えて、このマトリックスは、甘味剤、香味料(flavorant)などの矯味剤、クエン酸などのpH調節剤、および、昇華前に溶媒中に懸濁している薬物の水中での安定性を確保するための保存剤を含有してもよい。
【0069】
この実施形態では、本発明の化合物を含む経頬または舌下用のフリーズ・ドライ口腔崩壊錠(本明細書中ではODTと呼ぶ)を製造し、ポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデンのプラスチック・パック中に包装することができ、または、こうした錠剤は、外部の水分から製品を保護するためにラミネートまたはアルミニウム・マルチラミネート・ホイルの袋の中に充填してもよい。
【0070】
経頬または舌下用のODTを製造する他の公知の方法としては、凍結乾燥が挙げられる(例えば、Lyoc(Farmalyoc、現在のCephalon、Franzer、PA)およびQuickSolv(Janssen pharmaceutica、Beerse、ベルギー)。Lyocは、ブリスター中に直接配置され次いで密封された水中油エマルションを凍結乾燥させることにより製造される多孔質の固形ウェファー剤である。このウェファー剤は、高用量の薬物投与に適応し急速に崩壊できるが、機械的強度に乏しい(欧州特許第0159237号(特許文献2)を参照のこと)。QuickSolv錠は、マトリックス製剤の水性の分散剤または溶液剤を凍結することにより多孔質の固形マトリックスを作り出す類似の技術で作製される。この工程は、過剰なアルコールを用いて水を除去することにより進む(溶媒抽出)。一定の実施形態では、前述のようなQuickSolvに関するものなど凍結乾燥法を利用する製造方法は、本発明の化合物を含む経頬または舌下用のODTを作製するには特定の重要性を有する可能性があると考えられる。このことは、高度に水溶性の賦形剤が本発明の化合物のin vivoでの吸収において有することのできる潜在的なマイナスの効果を示す本明細書中に記載のデータに照らせば特にそうである。したがって、そのような凍結乾燥法により製造される、本発明の化合物を含む経頬または舌下用のODTは、前述のように水除去のステップの間に行われる水溶性の賦形剤の除去によりin vivoでの吸収を増加させることができると考えられる。
【0071】
経頬または舌下用のフロス・ベース錠
他の実施形態では、フロス・ベースの錠剤技術(例えば、FlashDose、Biovail、Mississauga、ON、カナダ)を使用して、shearformマトリックスとして公知のフロスを用いた本発明の化合物を含む経頬または舌下用の速溶錠を作製することができる。このフロスは、一般に、スクロース、デキストロース、乳糖および果糖などの糖から成る。綿菓子を作るのに使用されるものと似た熱加工機で、瞬時に融解する力と遠心力とが同時に作用することにより糖をフロスに転換させる。米国特許第5,587,172号(特許文献3)、米国特許第5,622,717号(特許文献4)、米国特許第5,567,439号(特許文献5)、米国特許第5,871,781号(特許文献6)、米国特許第5,654,003号(特許文献7)および米国特許第5,622,716号(特許文献8)を参照のこと。作製された繊維は通常は本質的に非晶質であり、部分的に再結晶化させると、自由に流動するフロスが得られる。このフロスを、本発明の化合物および薬学上許容可能な賦形剤と混合し、次いで圧縮して、速溶性を有する錠剤にすることができる。
【0072】
舌下錠
本発明の経頬または舌下用の速崩錠または速溶錠を製剤化するには、追加的な手法も使用できる(Sastryら、Pharm. Sci. Tech. Today、2000、3、138〜145頁(非特許文献15)、Changら、Pharmaceutical Technology、2000、24、52〜58頁(非特許文献16)、Sharmaら、Pharmaceutical Technology North America、2003、10〜15頁(非特許文献17)、Allen、International Journal of Pharmaceutical Technology、2003、7、449〜450頁(非特許文献18)、Dobetti、Pharmaceutical Technology Europe、2000、12、32〜42頁(非特許文献19)およびVerma and Garg、Pharmaceutical Technology On-Line、2001、25、1〜14頁(非特許文献20)。これらの手法の1つである直接圧縮は、製剤中に超崩壊剤を組み込むこと、または、錠剤の速やかな崩壊もしくは溶解を達成するための高度に水溶性の賦形剤の使用が必要である。直接圧縮は、錠剤形成工程中に水分または熱を使用する必要はないので、この方法は、水分に不安定かつ熱に不安定な医薬品を含有する錠剤の製剤および圧縮には非常に有用である。しかし、速崩能力を損なわずに適当な硬度の錠剤を得るために用いる場合、直接圧縮法は賦形剤の種類および比率ならびに圧縮力(CF)の変化に非常に敏感である。当業者には理解されるであろうが、舌下投与される錠剤の場合、最大の吸収速度および吸収度を得るための用量の薬物を放出するには、こうした錠剤は、舌下腔中に挿入後ほぼ即座に崩壊しなければならない。錠剤を製剤化するために使用される賦形剤の種類および比率の的確な選択および評価により、硬度および崩壊速度の度合いは制御される。圧縮力(CF)を調節することでも、より低い硬度(H)を有し、より素早く崩壊する錠剤を得ることができる。直接圧縮による速崩錠は極度に脆いという問題を補うために、ストリップ包装など独特の包装法が必要になると考えられる。
【0073】
Watanabeら(Watanabeら、Biol. Pharm. Bull.、1995、18、1308〜1310頁(非特許文献21)、Ishikawaら、Chem. Pharm. Bull.、2001、49、134〜139頁(非特許文献22))およびBiら(Biら、Chem. Pharm. Bull.、1996、44、2121〜2127頁(非特許文献23)、Biら、Drug Dev. Lnd. Pharm.、1999、25、571〜581頁(非特許文献24))は、超崩壊剤を用いた丈夫な速崩錠を製剤化するために必要な理想的な賦形剤の比率および他の関連パラメーターを最初に評価した。彼らは、広範な微結晶セルロース:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(MCC:L HPC)の比率が錠剤の特徴に及ぼす効果を試験した。
【0074】
さらなる一態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害の治療用の医薬を調製するための前記組成物の使用を提供する。
【0075】
さらなる一態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症の治療用の医薬を調製するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0076】
別の態様では、本発明は、哺乳動物における認知障害の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0077】
またさらなる一態様では、本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0078】
またさらなる一態様では、本発明は、勃起障害の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0079】
異なる一態様では、本発明は、哺乳動物における運動障害、運動低下、運動異常障害(dyskinetic disorder)、歩行障害または企図振戦の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0080】
さらなる一態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0081】
さらなる一態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0082】
別の態様では、本発明は、哺乳動物における認知障害の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0083】
またさらなる一態様では、本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0084】
異なる一態様では、本発明は、哺乳動物における運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0085】
独立の態様では、本発明は、口腔粘膜経由での投与を意図した医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0086】
本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の該医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0087】
別の態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の該医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0088】
さらなる一態様では、本発明は、認知障害に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に有効量の該医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0089】
本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の本発明の化合物または薬学上許容可能なその付加塩を投与することを含む方法にも関する。
【0090】
本発明は、独立の一態様では、運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に該医薬組成物を投与することを含む方法にも関する。
【0091】
本発明の化合物の治療上有効量は、遊離塩基としての前述の本発明の化合物の1日用量として計算した場合、適切には0.001〜12.5mg/日の間、より適切には0.005〜10.0mg/日の間、例えば好ましくは0.01〜5.0mg/日の間である。特定の一実施形態では、本発明の化合物の1日用量は0.1〜1.0mg/日の間である。
【0092】
別の実施形態では、本発明の化合物の1日用量は約0.1mg/日未満である。独立の一実施形態では、本発明の化合物の1日用量は約0.01mg/日である。さらなる一実施形態では、本発明は、口腔粘膜経由での送達用に0.0001mg〜12.5mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、口腔粘膜経由での送達用に0.0001mg〜0.01mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、口腔粘膜経由での送達用に0.001mg〜0.10mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、口腔粘膜経由での送達用に0.01mg〜1.0mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。
【0093】
また他の実施形態では、本明細書に記載の本発明は、本発明の化合物を含む経頬または舌下投与用の医薬錠剤であって、投与により、皮下または筋肉内のいずれかに投与される本発明の化合物を含む伝統的な注射用剤形の薬物動態プロファイルと実質的に等価な薬物動態プロファイルがもたらされる医薬錠剤を提供する。一定の実施形態では、本明細書に記載の経頬または舌下投与用の医薬錠剤は、皮下または筋肉内のいずれかに投与される本発明の化合物を含む伝統的な注射用剤形の薬物動態プロファイルと実質的に等価な薬物動態プロファイルをもたらすことができ、この場合の薬物動態プロファイルは、Cmax、Tmax、AUC(last)およびAUC(0−∞)から成る群から選択される薬物動態パラメーターの1つまたは複数から成る。
【0094】
最終的には、投与されることになる本発明の化合物および特定の製剤の正確な用量は、いくつかの因子、例えば、治療されることになる状態、治療の望ましい継続期間および活性剤の放出速度に依存する。例えば、必要な活性剤の量およびその放出速度は、血漿中の特定の活性剤濃度が、治療効果にとって許容可能なレベルで残る長さを測定する公知のin vitro法またはin vivo法に基づいて測定してもよい。
【0095】
B.鼻内投与
用語「鼻内送達」は、本明細書中で使用する場合、鼻粘膜を通した、また鼻粘膜内での薬物吸収の方法を意味する。
【0096】
「担体」または「ビヒクル」は、本明細書中で使用する場合、鼻内の薬物投与に適した担体材料を指し、当技術分野で公知の任意のそのような材料、例えば、無毒であり組成物の他の構成成分と有害な形で相互作用しない任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などを包含する。本発明において使用するための適当なビヒクルの例としては、水、イソプロピルアルコールおよびイソブチルアルコールなどのアルコール、グリセロールなどのポリアルコール、ならびにプロピレングリコールなどのグリコール、ならびにそのようなポリオールのエステル(例えば、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリド)が挙げられる。
【0097】
鼻内用組成物
錠剤またはカプセル剤などの経口用剤形と比較して、鼻内送達は、急速な吸収、治療作用のより速やかな開始、および、腸管壁または肝臓での初回通過代謝の回避をもたらす。錠剤、カプセル剤もしくは他の固形物の嚥下困難を有する患者、または腸の不具合を有する患者の場合、鼻内送達経路が好ましいと考えられる。
【0098】
経鼻投与用の本組成物は、本発明の化合物または薬学上許容可能なその塩を含み、任意選択的に、経鼻投与後に活性成分の経鼻吸収を促進する吸収促進剤などの担体および賦形剤を非限定的に含む他の原料を含むこともできる。他の任意選択的な賦形剤としては、希釈剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、崩壊剤、脱感作剤、乳化剤、粘膜付着剤、可溶化剤、懸濁化剤、粘度調整剤、イオン性等張化剤(ionic tonicity agent)、緩衝液、担体、香料およびそれらの混合物が挙げられる。
【0099】
吸収される薬物の量は、多くの因子によって決まる。これらの因子としては、薬物濃度、薬物送達ビヒクル、粘膜接触時間、粘膜組織の静脈ドレナージ(venous drainage)、薬物が吸収部位のpHでイオン化される度合い、薬物分子のサイズ、およびその相対的な脂溶性が挙げられる。当業者は、これらの因子を考慮して、適切な量の活性剤を送達する適切な鼻内用組成物を容易に調製できる。
【0100】
吸収促進剤
正常な鼻粘膜を越える活性成分の輸送は、任意選択的に、活性成分を、米国特許第5,629,011号(特許文献9)、米国特許第5,023,252号(特許文献10)、米国特許第6,200,591号(特許文献11)、米国特許第6,369,058号(特許文献12)、米国特許第6,380,175号(特許文献13)および国際公開第WO01/60325号(特許文献14)に開示されているような吸収促進剤と組み合わせることにより促進できる。このような吸収促進剤の例としては、陽イオン性ポリマー、表面活性剤、キレート化剤、粘液溶解剤、シクロデキストリン、ポリマー性のヒドロゲル、それらの組合せ、および、当業者に公知の任意の他の類似の吸収促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な吸収促進用賦形剤としては、ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリンまたはリゾホスファチジン酸などのリゾホスファチジル誘導体、グリセロールもしくはプロピレングリコールなどのポリオール、グリセリドなどその脂肪酸エステル、アミノ酸、およびそのエステル、およびシクロデキストリンが挙げられる。ゲル化用の賦形剤または粘度増加用の賦形剤も使用できる。
【0101】
粘膜付着性/生物付着性ポリマー
正常な粘膜表面を越える活性成分の輸送は、製剤が粘膜表面に付着する時間を長くすることによっても促進できる。粘膜付着性/生物付着性ポリマー(例えば、ヒドロゲルを形成するもの)は、粘膜付着性および制御された薬物放出性を呈し、本明細書に記載の鼻内用組成物中に含めることができる。そのような製剤の例は、米国特許第6,068,852号(特許文献15)および米国特許第5,814,329号(特許文献16)ならびに国際公開第WO99/58110号(特許文献17)に開示されている。鼻粘膜と結合する能力のある代表的な生物付着性ポリマーまたはヒドロゲル形成ポリマーは当業者に周知であり、そのようなポリマーとしては、ポリカルボフィル、ポリリジン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ペクチン、Carbopol 934P、酸化ポリエチレン600K、Pluronic F127、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン(PIP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、キサンタム・ガム(xanthum gum)、グアー・ガムおよびローカスト・ビーン・ガムが挙げられる。
【0102】
他の経鼻送達用組成物はキトサン・ベースであり、粘膜表面上での活性成分の滞留時間を延ばし、結果としてその生体利用率を高めるのに適している。これらの経鼻送達用組成物の例は、米国特許第6,465,626号(特許文献18)、米国特許第6,432,440号(特許文献19)、米国特許第6,391,318号(特許文献20)および米国特許第5,840,341号(特許文献21);欧州特許第EP0993483号(特許文献22)および欧州特許第EP1051190号(特許文献23);ならびに国際公開第WO96/05810号(特許文献24)、国際公開第WO96/03142号(特許文献25)および国際公開第WO93/15737号(特許文献26)に開示されている。加えて、本発明は、欧州特許第EP1025859号(特許文献27)および欧州特許第EP1108423号(特許文献28)に開示されているように粉末微小球および粘膜付着性の組成物と共に製剤化でき、同文献は、そのような組成物に関し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
最後に、システインに富む粘膜のサブドメインと共有結合を形成するチオール化したポリマー性賦形剤も粘膜付着をもたらすことができ、それにより、活性成分と膜との間の接触時間が長時間化する。そのような賦形剤は、国際公開第WO03/020771号(特許文献29)に開示されている。
【0104】
酸化防止剤
この経頬用組成物は、1つまたは複数の酸化防止剤を含むこともできる。代表的な酸化防止剤としては、塩化ラウラルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾドデシニウム、塩化セチルピリジウム、セトリミド、臭化ドミフェンなどの四級アンモニウム塩;ベンジルアルコール、クロロブタノール、o−クレゾール、フェニルエチルアルコールなどのアルコール;アスコルビン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラベンなど有機酸もしくはその塩;またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの錯体形成剤が挙げられる。
【0105】
他の賦形剤
担体および添加剤としては、カルボン酸残基、カルボキシメチル基、スルホプロピル基およびメチルスルホネート基などの適当な陰イオン性基を有するイオン交換微小球が挙げられる。陰イオン交換体などのイオン交換樹脂も使用できる。部分的に脱アセチル化されたキチンであるキトサン、またはポリ−N−アセチル−D−グルコサミン、または、塩酸塩、乳酸塩、グルタミン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩もしくはコハク酸塩など薬学上許容可能なその塩。非イオン交換微小球として使用するための適当な他の原料としては、デンプン、ゼラチン、コラーゲンおよびアルブミンが挙げられる。
【0106】
本組成物は、塩酸、乳酸、グルタミン酸、マレイン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸およびコハク酸から成る群から選択される適切な酸を含むこともできる。希釈剤などの他の原料は、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどである。
【0107】
塩化ナトリウム、グルコース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、乳糖など、組成物の張性を調節するための賦形剤を加えてもよい。酸性または塩基性の緩衝液を鼻内用組成物に加えてpHを制御することもできる。
【0108】
組成物中への活性剤の組込み
粘膜を通した活性剤の輸送量を増加させる吸収促進剤、および、粘膜に沿った活性剤の接触時間を長時間化する生物付着性の材料の使用に加え、製剤によっては、急速もしくは持続的な放出またはその両方をもたらすことができる制御放出製剤を用いることにより活性剤の投与を制御できる。
【0109】
活性成分を含み、制御された様式でそれを送達することができる、当業者に公知の多数の微粒子薬物送達ビヒクルがある。例としては、微粒子ポリマー性の薬物送達ビヒクル、例えば、生分解性ポリマー、および、非ポリマー性の構成成分から形成された粒子が挙げられる。これらの微粒子薬物送達ビヒクルは、粉末、微小粒子、ナノ粒子、マイクロカプセル、リポソームなどの形態であってもよい。典型的には、活性剤が、追加された構成成分のない微粒子の形態であれば、その放出速度は、活性剤自体の放出によって決まる。典型的には、吸収速度は、微粒子化された形態で薬物を提供することにより高まり、このとき、粒子は直径20ミクロン未満である。これに対し、活性剤が、活性剤とポリマーとのブレンド物としての微粒子の形態であれば、活性剤の放出は、少なくとも部分的には、ポリマーの除去により、典型的には、ポリマー・マトリックスからの溶解、生分解または拡散により制御される。
【0110】
本組成物は、活性成分を最初に急速に放出させ、次いで、活性成分を持続放出させることができる。米国特許第5,629,011号(特許文献9)は、この種の製剤の例を示しており、同文献は、そのような製剤に関し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
鼻内送達を利用する多数の組成物およびその関連する方法がある。さらに、多様な医薬組成物の鼻内送達をもたらす多数の方法および関連する送達ビヒクルがある。例えば、現在市販されているニコチン補充治療薬を用いる鼻内用組成物(N. J. Benowitz、Drugs、45、157〜170頁、(1993)(非特許文献25)を参照のこと)も、本明細書に記載の化合物の投与に適している。
【0112】
経鼻吸入器具(insufflator device)
この鼻内用組成物は、その形態による任意の適切な方法により投与できる。微小球または粉末などの組成物は、経鼻吸入器具を用いて投与できる。こうした器具の例は当業者に周知であり、そのような器具としては、Fisons Lomudal Systemなど市販の粉末システムが挙げられる。吸入器は、乾燥粉末または微小球の微粉化した霧を生成する。吸入器は、好ましくは、実質的に固定された量の組成物を確実に投与するための機構を備える。この粉末または微小球は、粉末または微小球用の瓶または容器と共に供給される吸入器を用いて直接使用できる。あるいは、この粉末または微小球は、ゼラチン・カプセルなどのカプセル、または、経鼻投与用に構成される他の単回用量用の器具中に充填できる。吸入器は、好ましくは、カプセルまたは他の器具を破って開けるための機構を有する。
【0113】
さらに、本組成物は、例えば、2種類以上の微小球または粉末を供給することにより、活性成分を最初に急速に放出させ、次いで、活性成分を持続放出させることができる。
【0114】
計量スプレーの使用
鼻内送達は、水性媒体中の溶液または分散液中に活性成分を含めることによっても達成でき、活性成分は、スプレー剤として投与できる。そのようなスプレー剤を投与するための適切な器具としては、気体または液体の推進剤を任意選択的に用いる、計量用量エアゾール用バルブおよび計量用量ポンプが挙げられる。
【0115】
この種の代表的な器具は、以下の特許、特許出願および公報に開示されている:国際公開第WO03/026559号(特許文献30)、国際公開第WO02/011800号(特許文献31)、国際公開第WO00/51672号(特許文献32)、国際公開第WO02/068029号(特許文献33)、国際公開第WO02/068030号(特許文献34)、国際公開第WO02/068031号(特許文献35)、国際公開第WO02/068032号(特許文献36)、国際公開第WO03/000310号(特許文献37)、国際公開第WO03/020350号(特許文献38)、国際公開第WO03/082393号(特許文献39)、国際公開第WO03/084591号(特許文献40)、国際公開第WO03/090812号(特許文献41)、国際公開第WO00/41755号(特許文献42)および医薬文献(Bell, A.、Intranasal Delivery Devices、収録先:Drug Delivery Devices Fundamentals and Applications、TyIe P.(編)、Dekker、New York、1988(非特許文献26)を参照のこと)およびRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、1975(非特許文献27)。
【0116】
鼻内送達の他の様式
前述したものに加え、本化合物および本化合物を含む鼻腔内用組成物は、当技術分野で公知のように、点鼻剤、スプレー、洗浄(irrigation)および灌注器(douche)の形態でも投与できる。点鼻剤は、典型的には、ベッドに横になりながら、患者が仰向けになって、特に、ベッドの縁に頭を乗せて、液滴を挿入することにより投与される。この方法により、液滴がさらに奥に達しやすくなる。
【0117】
鼻洗浄には、鼻腔に温塩水を定期的に大量に流すことが含まれ、この塩水には、本明細書に記載のような1つもしくは複数の化合物、または薬学上許容可能なその塩が含まれる。鼻灌注剤は、典型的には、鼻灌注器に、本明細書に記載のような1つまたは複数の化合物または薬学上許容可能なその塩を含む塩溶液を充填し、灌注器のノズルを一方の鼻孔中に挿入し、呼吸のために患者の口を開け、溶液剤を一方の鼻孔中に流動させて隔壁および鼻甲介の周辺をすすぎ、他方の鼻孔から排出させることにより使用する。
【0118】
これまでに述べたように、本発明は、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールおよび関連化合物の鼻内投与用の医薬組成物を提供し、この組成物は、鼻粘膜を越える送達により体循環に送達してもよい。
【0119】
一実施形態では、本組成物は吸収剤をさらに含んでいる。一実施形態では、本組成物は、1つまたは複数の粘着剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、崩壊剤またはそれらの混合物をさらに含んでいる。
【0120】
鼻内投与用の医薬組成物としての本発明の化合物は、任意の適当な方式にて鼻腔中で投与してもよく、本化合物は、そのような投与に適した任意の剤形で、例えば、単純な溶液剤または分散剤、単純な錠剤、マトリックス錠、カプセル剤、散剤、シロップ剤、溶けるフィルム剤、パッチ剤、親油性のゲル剤の形態で存在してもよい。一実施形態では、本発明の化合物は、固形の医薬体の形態で、適切には錠剤またはカプセル剤として、投与される。別の特定の実施形態では、本発明の化合物は、溶けるフィルム剤の形態で投与される。
【0121】
本発明の化合物の鼻内投与の場合、慣用的な剤形では中で治療薬レベルを確保できない可能性があるが、その理由は、薬物製剤を鼻粘膜から取り除き、その結果、曝露時間が短すぎて吸収が予測不可能となる、口腔の生理学的な除去機序(唾液の洗浄効果および機械的応力)による。したがって、所望の治療作用を得るためには、本発明の化合物と鼻粘膜との間の接触を長時間化および改善することが必要であるかもしれない。したがって、治療要件を満たすためには、鼻内投与用に設計される製剤は、製剤と吸収部位との密接かつ持続的な接触を維持するための粘膜付着剤、粘膜を越える薬物浸透性を改善するための透過促進剤、および、鼻粘膜の酵素による分解から薬物を最終的に保護するための酵素阻害薬を含有してもよい。
【0122】
本発明の特定の一実施形態では、治療上有効量の本発明の化合物または薬学上許容可能なその酸付加塩を含む、鼻粘膜経由での投与用の医薬組成物が提供される。
【0123】
さらなる一態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害の治療用の医薬を調製するための前記組成物の使用を提供する。
【0124】
さらなる一態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症の治療用の医薬を調製するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0125】
別の態様では、本発明は、哺乳動物における認知障害の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0126】
またさらなる一態様では、本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0127】
またさらなる一態様では、本発明は、勃起障害の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0128】
異なる一態様では、本発明は、哺乳動物における運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦の治療用の医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0129】
さらなる一態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0130】
さらなる一態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0131】
別の態様では、本発明は、哺乳動物における認知障害の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0132】
またさらなる一態様では、本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0133】
異なる一態様では、本発明は、哺乳動物における運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦の治療のための該医薬組成物の使用を提供する。
【0134】
独立の態様では、本発明は、口腔粘膜経由での投与を意図した医薬を製造するための該医薬組成物の使用を提供する。
【0135】
本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の該医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0136】
別の態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の該医薬組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0137】
さらなる一態様では、本発明は、認知障害に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に有効量の該医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0138】
本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の本発明の化合物または薬学上許容可能なその付加塩を投与することを含む方法にも関する。
【0139】
本発明は、独立の一態様では、運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に該医薬組成物を投与することを含む方法にも関する。
【0140】
本発明の化合物の治療上有効量は、遊離塩基としての前述の本発明の化合物の1日用量として計算した場合、適切には0.001〜12.5mg/日の間、より適切には0.005〜10.0mg/日の間、例えば好ましくは0.01〜5.0mg/日の間である。特定の一実施形態では、本発明の化合物の1日用量は0.1〜1.0mg/日の間である。
【0141】
別の実施形態では、本発明の化合物の1日用量は約0.1mg/日未満である。独立の一実施形態では、本発明の化合物の1日用量は約0.01mg/日である。さらなる一実施形態では、本発明は、鼻粘膜経由での送達用に0.0001mg〜12.5mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、鼻粘膜経由での送達用に0.0001mg〜0.01mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、鼻粘膜経由での送達用に0.001mg〜0.10mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、鼻粘膜経由での送達用に0.01mg〜1.0mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。
【0142】
C.経皮投与
「経皮送達」では、出願人らは、経皮投与(transdermal)および皮膚経由(percutaneous)投与の両方、すなわち、皮膚を通して血流中に活性成分を通過させることによる送達を包含することを意図している。
【0143】
「担体」または「ビヒクル」は、本明細書中で使用する場合、経皮的な薬物投与に適した担体材料を指し、当技術分野で公知の任意のそのような材料、例えば、無毒であり組成物の他の構成成分と有害な形で相互作用しない任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などを包含する。本発明において使用するための適当なビヒクルの例としては、水、イソプロピルアルコールおよびイソブチルアルコールなどのアルコール、グリセロールなどのポリアルコール、ならびにプロピレングリコールなどのグリコール、ならびにそのようなポリオールのエステル(例えば、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリド)が挙げられる。
【0144】
「透過促進」または「浸透促進」は、本明細書中で使用する場合、薬理的活性剤への皮膚の透過性の増加、すなわち、活性成分が皮膚を通して浸透して血流または局所的な作用部位に入る速度(すなわち流束)を増加させるための透過性の増加に関する。これらの促進剤を用いることにより実現した浸透性の向上は、本明細書における例に記載されているような拡散セル装置(diffusion cell apparatus)を用いて、動物もしくはヒトの皮膚、または、適当なポリマー性の膜を通る活性成分の拡散速度(または流量)を測定することにより観察できる。
【0145】
浸透促進剤は、例えば、米国特許第5,785,991号(特許文献43)、米国特許第4,764,381号(特許文献44)、米国特許第4,956,171号(特許文献45)、米国特許第4,863,970号(特許文献46)、米国特許第5,453,279号(特許文献47)、米国特許第4,883,660号(特許文献48)、米国特許第5,719,197号(特許文献49)に、また、文献「Pharmaceutical Skin Penetration Enhancement」、J. Hadgraft、Marcel Dekker, Inc.、1993(非特許文献28)、「Percutaneous Absorption」、R. Bronaugh、H. Maibach、Marcel Dekker, Inc.、(1989)(非特許文献29)、B. W. Barry、「Penetration Enhancers in Skin Permeation」、Proceedings of the 13th international Symposium on Controlled Release of Bioactive Materials、Chaudry & Thies編、Controlled Release Society、Lincolnshire、III.、136〜137頁、(1986)(非特許文献30)およびCooper & Berner、「Penetration Enhancers」、収録先:The Transdermal Delivery of Ingredients、Vol. Il、Kydonieus and Berner編、CRC Press、Boca Raton、FIa.、57〜62頁、(1986)(非特許文献31)に記載されている。
【0146】
浸透促進剤は、角質層の浸透性を促進すると共に、繰り返される曝露時に無毒、非刺激性および非感作性であるべきである。代表的な浸透促進剤としては、例えば、スクロースモノココエート、モノオレイン酸グリセロール、モノラウリン酸スクロース、グリセロールモノラウリエート(monolaureate)、ジエチレングリコールモノエチルまたはモノメチルエーテル(Transcutol(登録商標)P)などのジエチレングリコールモノアルキルエーテル、モノラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸メチルおよび酢酸ラウリルなどのエステル成分、モノラウリン酸グリセロールなどのモノグリセリド、単独またはオレイン酸と組み合わせた、ラウリルアルコールおよび2−エチル−1,3ヘキサンジオールなどの脂肪アルコールが挙げられる。
【0147】
ゲル化剤
カルボマー、カルボキシエチレンなどのゲル化剤、または、Carbopol(登録商標)980もしくは940NF、981もしくは941NF、1382もしくは1342NF、5984もしくは934NF、ETD2020、2050、934P NF、971P NF、974P NF、Noveon(登録商標)AA−1USPなどのポリアクリル酸;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(Klucel(登録商標)、さまざまなグレード)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(Natrosol(登録商標)グレード)、HPMCP55、Methocel(登録商標)グレードなどのセルロース誘導体;アラビア・ガム、キサンタン・ガム、グアー・ガム、アルギネートなどの天然ガム;Kollidon(登録商標)グレードなどのポリビニルピロリドン誘導体;Lutrol(登録商標)F、グレード68、127などのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー;キトサン、ポリビニルアルコール、ペクチン、ヴィーグン(veegun)グレードなど他のものが存在してもよい。当業者は、本発明における使用に適した他のゲル化剤または増粘剤(viscosant)を承知している。代表的なゲル化剤としては、Carbopol(登録商標)980NF、Lutrol(登録商標)F127、Lutrol(登録商標)F68およびNoveon(登録商標)AA−1USPが挙げられるが、これらに限定されない。ゲル化剤は、ポリマーの種類によるが、約0.2〜約30.0%w/w存在する。
【0148】
酸化防止剤
この経皮用組成物は、1つまたは複数の酸化防止剤を含むこともできる。代表的な酸化防止剤としては、塩化ラウラルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾドデシニウム、塩化セチルピリジウム、セトリミド、臭化ドミフェンなどの四級アンモニウム塩;ベンジルアルコール、クロロブタノール、o−クレゾール、フェニルエチルアルコールなどのアルコール;アスコルビン酸、安息香酸、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラベンなど有機酸もしくはその塩;またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの錯体形成剤が挙げられる。代表的な酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸およびそのナトリウム塩、D,L−αトコフェロールが挙げられる。
【0149】
他の構成成分
他の構成成分としては、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの希釈剤を挙げることができる。塩化ナトリウム、グルコース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、乳糖など、組成物の張性を調節するために賦形剤を加えることができる。酸性または塩基性の緩衝液を加えてpHを制御することもできる。グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート(BASF製のSolutol HS15)、ブチレングリコール、へキシレングリコールなどの共溶媒または可溶化剤も加えることができる。
【0150】
経皮用組成物
経皮投与用組成物としては、脂肪酸塩を含む本発明の化合物が挙げられ、任意選択的に、経皮投与後に活性成分の経皮吸収を促進する浸透促進剤などの担体および賦形剤を非限定的に含む他の原料を含むこともできる。
【0151】
吸収される活性成分の量は、多くの因子によって決まる。これらの因子としては、活性成分濃度、活性成分送達ビヒクル、皮膚接触時間、投与される皮膚領域、吸収部位のpHでの活性成分のイオン化形態と非イオン化形態との比率、活性成分分子の分子サイズ、および活性成分の相対的な脂溶性が挙げられる。
【0152】
経皮用器具
本明細書に記載の活性成分を送達するための経皮用器具は、モノリス型、マトリックス型、膜型、および、経皮経路による活性成分の投与に典型的に有用な他の型のものなど当技術分野で公知の任意の型のものであってもよい。そのような器具は、米国特許第3,996,934号(特許文献50)、米国特許第3,797,494号(特許文献51)、米国特許第3,742,951号(特許文献52)、米国特許第3,598,122号(特許文献53)、米国特許第3,598,123号(特許文献54)、米国特許第3,731,683号(特許文献55)、米国特許第3,734,097号(特許文献56)、米国特許第4,336,243号(特許文献57)、米国特許第4,379,454号(特許文献58)、米国特許第4,460,372号(特許文献59)、米国特許第4,486,193号(特許文献60)、米国特許第4,666,441号(特許文献61)、米国特許第4,615,699号(特許文献62)、米国特許第4,681,584号(特許文献63)、および、中でも米国特許第4,558,580号(特許文献64)に開示されている。
【0153】
これらの器具は、柔軟で皮膚によく付着し、皮膚を通して活性成分が一方向性に投与されるように送達されることになる、活性成分に対し不浸透性であるポリマー性の裏打ち(覆い)を備える傾向がある。活性成分または薬学上許容可能なその塩は、溶液剤または分散剤中に典型的に存在し、そのような溶液剤または分散剤は、ゲル剤、溶液剤または半固形剤の形態であってもよく、表皮の角質層を通した活性成分の送達において、また、真皮に対しては吸収するように役立つ。
【0154】
膜用具
膜用具は、典型的には以下の4つの層を有する:(1)不浸透性の裏打ち、(2)貯留層、(3)膜層(高密度のポリマー膜または微多孔質の膜であってもよい)、および(4)連続もしくは不連続なコーティングの形で用具表面全体を覆うか、または膜層を取り巻くかいずれかである接触用粘着層。不浸透性の層として作用するように使用できる材料の例は、高密度、中密度および低密度のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(terepthalate)、および、アルミニウム箔でラミネート加工またはコーティングされたポリマーである。他のものは、本明細書中で言及する標準的な経皮用用具の特許において開示されている。貯留層が流動体であるかまたはポリマーである一定の実施形態では、裏打ち層の外縁は、貯留層の端にかぶせ、拡散膜層への接着または融合により密封してもよい。そのような場合、貯留層は曝露表面を有する必要がない。
【0155】
貯留層は不浸透性の裏打ちの下にあり、担体液、典型的には、水および/またはアルコールまたはポリオールまたはそのエステルを含有し、活性成分を含有していてもいなくてもよい。貯留層は、担体液および活性成分に加え、希釈剤、安定化剤、ビヒクル、ゲル化剤などを含むことができる。
【0156】
ラミネート用具の拡散膜層は、活性成分および担体液に対し必要な浸透性を有する高密度または微多孔質のポリマー・フィルムで作製できる。好ましくは、この膜は活性成分および担体液以外の原料には不浸透性であるが、皮膚表面での緩衝化が望ましい場合には、この膜は組成物中の緩衝液に対しても浸透性であるべきである。この膜層を作製するために使用できるポリマー・フィルムの例は、米国特許第3,797,454号(特許文献65)および米国特許第4,031,894号(特許文献66)に開示されている。好ましい材料は、ポリウレタン、エチレンビニルアルコールのポリマーおよびエチレン/ビニルアセテートである。
【0157】
モノリス型のマトリックス
第2のクラスの経皮用の系は、モノリス型のマトリックスに代表される。そのようなモノリス型の用具の例は、米国特許第4,291,014号(特許文献67)、米国特許第4,297,995号(特許文献68)、米国特許第4,390,520号(特許文献69)および米国特許第4,340,043号(特許文献70)である。他のものは、当業者に公知である。
【0158】
モノリス型およびマトリックス型のバリア状の経皮用具は、典型的には以下を含む:(1)ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの多孔質ポリマーまたは連続気泡ポリマー(open−cell foam polymer)、(2)セルロース、HEMAもしくはMEMAまたはそれらのコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)など高度に膨張もしくは可塑化されたポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)/ポリビニルピロリドン(PVP)もしくは他のヒドロゲル、または、PVC、ポリウレタン、エチレン/ビニルアセテートまたはそれらのコポリマー、(3)典型的には、水、および/または、エタノールなどヒドロキシル含有溶媒などの液体ゲルであり、PVP、カルボキシメチルセルロース(CMC)、Klucel(登録商標)の商品名で販売されているものなどのヒドロキシプロピルセルロース、HPMC、アルギネート、カオリネート(kaolinate)、ベントナイトまたはモンモリロナイト、他のクレイ充填剤、ステアレート、二酸化ケイ素粒子などのゲル化剤を含有することが多い液体ゲル、(4)織物原料、セルロース、ポリウレタン、ポリエステルまたは他の繊維で作製された不織材料、(5)天然ポリマーまたは発泡性ポリマーから形成できるスポンジ、ならびに(6)粘着剤、理想的には皮膚科学的に許容可能な圧力感受性の粘着剤、例えば、シリコーン粘着剤またはアクリル粘着剤。
【0159】
ポリマー性のバリア材料
代表的なポリマー性のバリア材料としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:Lexan(登録商標)(General Electric Company)の商品名(trade designation)で販売されている材料、Geon(登録商標)121(B.G.Goodrich Chemical Company)などのポリ塩化ビニル、NOMEX(登録商標)(E.I.DuPont de Nemours&Co.)を含むポリヘキサメチレンアジパミドなどのポリアミド(「ナイロン」)を含め、ビスフェノールAなどのジヒドロキシ芳香族のホスゲン化により形成されるものなどのポリカーボネート。
【0160】
DYNEL(登録商標)などのモダクリルコポリマーは、ポリ塩化ビニル(60パーセント)とアクリロニトリル(40パーセント)とのコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマーなどから形成される。ポリスルホン、例えば、ジフェニレンスルホン基を含有するもの、例えばP−1700(Union Carbide Corporation)。ハロゲン化ポリマー、例えば、Kynar(登録商標)(Pennsalt Chemical Corporation)などのポリフッ化ビニリデン、Tedlar(登録商標)(E.I.DuPont de Nemours&Co.)などのポリフッ化ビニル、およびAclar(登録商標)(Allied Chemical Corporation)などのポリフルオロハロカーボン。ポリクロルエーテル(polychlorether)、例えば、Penton(登録商標)(Hercules Incorporated)および他の熱可塑性ポリエーテル。アセタールポリマー、例えば、Delrin(登録商標)(E.I.DuPont de Nemours&Co.)などのポリホルムアルデヒド。アクリル樹脂、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリn−ブチルメタクリレートなど。
【0161】
ポリウレタン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、酢酸ポリビニル、芳香族および脂肪族の、ポリエーテル、セルロースエステル、例えば三酢酸セルロースなどの他のポリマー;セルロース;コレジオン(colledion)(11%窒素を加えた硝酸セルロース);エポキシ樹脂;オレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン;ポリ塩化ビニリデン;多孔質ゴム;架橋ポリ(エチレンオキシド);架橋ポリビニルピロリドン;架橋ポリビニルアルコール);米国特許第3,549,016号(特許文献71)および米国特許第3,546,141号(特許文献72)に記載されているような種類の2つのイオン結合ポリマーから形成される高分子電解質構造;ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)およびポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)などのポリスチレン誘導体;ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル);ポリ(イソブチルビニルエーテル)なども使用できる。前記のポリマー・リストにある多様な比率のモノマーを反応させることにより形成できる多数のコポリマーも有用である。膜または他のバリアが十分に高い流束をもたない場合は、膜またはバリアの厚みを減少させることができる。しかし、この厚みは、破れやすい点まで、または投与できる活性成分の量が少なすぎる点まで減少させるべきではない。
【0162】
粘着剤
この経皮薬物送達用組成物は、典型的には、用具を皮膚に付着させるための粘着性の接触層を備える。活性剤は、いくつかの実施形態では粘着剤の中に存在してもよい。粘着剤としては、以下が挙げられる:ポリウレタン;アクリル酸もしくはメタクリル酸のエステルにn−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、1−メチルブタノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、イソオクタノール、n−デカノールもしくはn−ドデカノールなどのアルコールを加えたポリマーで、単独で、もしくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド、N−アルコキシメチルメタクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、イタコン酸、酢酸ビニル、アルキル基が10〜24個の炭素原子を有するN−分枝アルキルマレアミド酸、ジアクリル酸グリコールなどのエチレン性不飽和モノマーと共重合させたものなどのアクリル樹脂もしくはメタクリル酸樹脂、またはこれらの混合物;スチレンブタジエン、ブチルエーテル、ネオプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンおよびポリイソプレンなどの天然または合成のゴム;ポリ酢酸ビニル;ウレアホルムアルデヒド(unreaformaldehyde)樹脂;フェノールホルムアルデヒド樹脂;レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸酪酸セルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ならびに、グアー・ガム、アラビア・ガム、ペクチン、デンプン、デキストリン、アルブミン、ゼラチン、カゼインなどの天然ガム。当技術分野で周知のように、粘着剤は、粘着付与剤および安定化剤と配合できる。
【0163】
代表的なシリコーン粘着剤としては、シラン、ハロシランまたはCMSアルコキシシランのモノマーをベースにしたシリコーン・エラストマー、特にポリジメチルシロキサンが挙げられ、これらは、単独で使用するか、または、医学上許容可能なシリコーン液、すなわち、シラン、ハロシランもしくはC1〜18アルコキシシランをベースにした非エラストマー性のシリコーンから選択されるシリコーン粘着付与剤もしくはシリコーン可塑剤と共に製剤化してもよい。典型的なシリコーン粘着剤は、SILASTIC(登録商標)の商品名でDow Corningから入手できる。
【0164】
液体ビヒクル
経皮用組成物は、液体ビヒクル、典型的には、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノールなどのC2〜4アルカノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、エチレングリコールなどのポリアルコールもしくはグリコール、および/または精製水などさまざまな構成成分を含むことができる。ビヒクルは、典型的には約5〜約75%w/wの間、より典型的には約15.0%〜約65.0%w/wの間、好ましくは約20.0〜55.0%w/wの間の量で存在する。
【0165】
水は、本組成物中の親水性の活性剤の溶解性を増大させ、組成物からの親油性の活性剤の放出を加速させる。エタノールなどのアルコールは、角質層の液体流動性を増加させ、または、角質層から脂質を抽出するように機能する。本明細書において論考するように、グリコールは、浸透促進剤として作用することもできる。
【0166】
活性剤の制御放出
組成物によっては、急速もしくは持続的な放出またはその両方をもたらすことができる制御放出組成物を用いることにより活性剤の投与を制御できる。活性成分を含み、制御された様式でそれを送達することができる、当業者に公知の多数の微粒子薬物送達ビヒクルがある。例としては、微粒子ポリマー性の薬物送達ビヒクル、例えば、生分解性ポリマー、および、非ポリマー性の構成成分から形成された粒子が挙げられる。これらの微粒子薬物送達ビヒクルは、粉末、微小粒子、ナノ粒子、マイクロカプセル、リポソームなどの形態であってもよい。典型的には、活性剤が、追加された構成成分のない微粒子の形態であれば、その放出速度は、活性剤自体の放出によって決まる。これに対し、活性剤が、活性剤とポリマーとのブレンド物としての微粒子の形態であれば、活性剤の放出は、少なくとも部分的には、ポリマーの除去により、典型的には、溶解または生分解により制御される。
【0167】
一実施形態では、この経皮用組成物は、活性成分を最初に急速に放出させ、次いで、活性成分を持続放出させることができる。米国特許第5,629,011号(特許文献9)は、この種の組成物の例を示している。現在市販されているニコチン補充治療薬など、時間放出様式(速度制御膜など)でニコチンを送達するための経皮送達を用いる多数の経皮用組成物がある。これらは、本明細書に記載の化合物の投与にも適している。
【0168】
半固形剤形
一実施形態では、この経皮用剤形は「パッチ剤」ではなく、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、液体剤などの半固形剤形である。この実施形態では、患者のコンプライアンスを増大させ、パッチ剤で覆うことができるよりも広い表面積を覆うことができる。
【0169】
この実施形態では、疼痛治療に用いる場合は特に、剤形は、疼痛治療に使用される半固形剤形において典型的に見られる他の活性および不活性な構成成分を含むことができる。このような構成成分としては、メントール、ヒメコウジ、カプサイシン、アスピリン、NSAID、麻薬剤(例えばフェンタニル)、アルコール、エマルション油などの油、および、DMSOなどの溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
イオン浸透法
経皮薬物送達用の用具および半固形剤形による送達に加え、活性成分は、イオン浸透法により送達することもできる。イオン浸透法は、反発的な起電力により、本明細書に記載の活性成分など高濃度の荷電物質を経皮的に推進させる非侵襲的な方法である。この手法には、同様の電荷をもつ活性剤およびそのビヒクルを含有するイオン浸透法のチャンバーにかける小電荷を用いることが含まれる。皮膚の浸透性は、電荷をかける際に変化し、これにより、表皮中への活性成分の移動が増加する。
【0171】
イオン浸透法は、電場内での能動輸送を用いて、典型的には、電気移動および電気浸透により活性剤を経皮送達するために使用できる。これらの動きは、典型的には、化学的な流量、一般にはμmol/cm2*時間の単位で測定される。皮膚の等電点はおよそ4である。皮膚の表面が7.4またはその前後で緩衝化されている生理的条件下では、膜は正味の負電荷を有し、電気浸透流は陽極(−)から陰極(+)へ向かう。電気浸透は、本明細書に記載の(正に帯電した)活性剤の陽極での送達を増大させる。
【0172】
イオン浸透法用の器具は、典型的には患者に取り付ける2つの電極を備え、電極はそれぞれ、マイクロプロセッサー制御されている電気機器にワイヤーにより接続されている。活性剤は、電極の一方または両方の下に配置され、機器が作動すると体内に送達される。
【0173】
典型的には、イオンは、イオン浸透法用の器具中に備わる水性薬物の貯留部から体内に送達され、反対の電荷の対イオンは、「逆貯留部(counter reservoir)」から送達される。活性成分を含有する溶液、および、対イオンの溶液も、離れた場所に保管して、使用時にイオン浸透法の電極の吸収層に導入することができる。そのようなシステムの例は、米国特許第5,087,241号(特許文献73)、米国特許第5,087,242号(特許文献74)、米国特許第5,846,217号(特許文献75)および米国特許第6,421,561号(特許文献76)に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、米国特許第5,685,837号(特許文献77)に記載されているように、活性剤を乾燥形態で電極(複数可)中に予め充填できる。この方法は、使用時に水分活性化ステップを必要とする。
【0174】
活性剤溶液は、イオン浸透法用の器具と同梱でき、理想的には、使用時までは電極および他の金属部品と離して配置する。この手法および適当な器具は、例えば、米国特許第5,158,537号(特許文献78)、米国特許第5,288,289号(特許文献79)、米国特許第5,310,404号(特許文献80)、米国特許第5,320,598号(特許文献81)、米国特許第5,385,543号(特許文献82)、米国特許第5,645,527号(特許文献83)、米国特許第5,730,716号(特許文献84)および米国特許第6,223,075号(特許文献85)に記載されている。これらの器具においては、同梱されている電解質の構成液が、破ることのできる容器に入った状態で電極から離れた位置に保管され、使用時の機械的な作用ステップにより、電極に隣接する受け側貯留部への流動体の移動が誘導される。こうしたシステムにより、製造時に正確な流動体体積を組み込んで過量充填を避けることが可能になる。
【0175】
活性剤は、溶液の他、参照により組み込まれる米国特許第4,383,529号(特許文献86)に記載されているように、予め形成されたゲル中に存在してもよい。したがって、活性剤を含有する予め形成されたゲルは、使用時に電極ソケット中に移動させることができる。この系は、正確な所定の体積のゲルを供給することにより過量充填を防止することから、有利であると考えられる。さらに、活性剤はゲル組成物中に存在するので、保管または輸送中に漏れにくい。
【0176】
いくつかの実施形態では、この経皮薬物送達は、適当な粘着剤を用いて皮膚に付着させるポリマー性のバリアを備え、適当な量の活性成分またはその塩も溶液剤または分散剤中に皮膚と接触する状態で含む器具を用いて実施するか、または、速度制御膜を活性剤含有組成物と皮膚との間で使用してもよい。他の実施形態においては、送達は、活性成分を含み皮膚に施用されるクリーム剤またはローション剤などの半固形組成物を用いて実施する。さらなる他の実施形態では、活性成分は、正に帯電した活性剤が電気浸透により投与されるイオン浸透法を用いて送達する。活性成分(複数可)が粘着剤のマトリックス内で製剤化される実施形態もあると考えられる。
【0177】
これまでに示したように、本発明は、皮膚を越える送達により体循環に送達できる、(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールおよび関連化合物の経皮用組成物を提供する。
【0178】
一実施形態では、本組成物はパッチ剤としてさらに特徴付けられる。一実施形態では、本組成物は半固形剤形としてさらに特徴付けられる。一実施形態では、本組成物は、ゲル剤、ローション剤またはクリーム剤としてさらに特徴付けられる。一実施形態では、本組成物は制御放出製剤としてさらに特徴付けられる。一実施形態では、本組成物は、浸透促進剤をさらに含んでいる。一実施形態では、本組成物は、1つまたは複数の粘着剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、崩壊剤またはそれらの混合物をさらに含んでいる。
【0179】
経皮投与用の医薬組成物としての本発明の化合物は、皮膚越しの任意の適当な方式で投与してもよく、本化合物は、そのような投与に適した任意の剤形で、例えば、単純な溶液剤または分散剤、単純な錠剤、マトリックス錠、カプセル剤、散剤、シロップ剤、溶けるフィルム剤、パッチ剤、親油性のゲル剤の形態で存在してもよい。別の実施形態では、本発明の化合物は、溶けるフィルム剤の形態で投与される。
【0180】
本発明の特定の一実施形態では、治療上有効量の本発明の化合物または薬学上許容可能なその酸付加塩を含む、皮膚越しの投与用の経皮用組成物が提供される。
【0181】
さらなる一態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害の治療用の医薬を調製するための前記組成物の使用を提供する。
【0182】
さらなる一態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症の治療用の医薬を調製するための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0183】
別の態様では、本発明は、哺乳動物における認知障害の治療用の医薬を製造するための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0184】
またさらなる一態様では、本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療用の医薬を製造するための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0185】
またさらなる一態様では、本発明は、勃起障害の治療用の医薬を製造するための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0186】
異なる一態様では、本発明は、哺乳動物における運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦の治療用の医薬を製造するための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0187】
さらなる一態様では、本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害の治療のための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0188】
さらなる一態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症の治療のための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0189】
別の態様では、本発明は、哺乳動物における認知障害の治療のための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0190】
またさらなる一態様では、本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)の治療のための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0191】
異なる一態様では、本発明は、哺乳動物における運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦の治療のための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0192】
独立の態様では、本発明は、皮膚経由での投与を意図した医薬を製造するための該経皮用組成物の使用を提供する。
【0193】
本発明は、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性障害に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の該経皮用組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0194】
別の態様では、本発明は、精神病、性的不能、腎不全、心不全または高血圧症に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に治療上有効量の該経皮用組成物を投与することを含む方法も提供する。
【0195】
さらなる一態様では、本発明は、認知障害に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に有効量の該経皮用組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0196】
本発明は、不穏下肢症候群(RLS)または周期性四肢運動障害(PLMD)に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に本発明の化合物または薬学上許容可能なその付加塩の経皮用組成物を投与することを含む方法にも関する。
【0197】
本発明は、独立の一態様では、運動障害、運動低下、運動異常障害、歩行障害または企図振戦に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に該医薬組成物を投与することを含む方法にも関する。
【0198】
本発明の化合物の治療上有効量は、遊離塩基としての前述の本発明の化合物の1日用量として計算した場合、適切には0.001〜12.5mg/日の間、より適切には0.005〜10.0mg/日の間、例えば好ましくは0.01〜5.0mg/日の間である。特定の一実施形態では、本発明の化合物の1日用量は0.1〜1.0mg/日の間である。
【0199】
別の実施形態では、本発明の化合物の1日用量は約0.1mg/日未満である。独立の一実施形態では、本発明の化合物の1日用量は約0.01mg/日である。さらなる一実施形態では、本発明は、経皮送達用に0.0001mg〜12.5mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、経皮送達用に0.0001mg〜0.01mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、経皮送達用に0.001mg〜0.10mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。さらなる一実施形態では、本発明は、経皮送達用に0.01mg〜1.0mgの本発明の化合物を含む製剤を提供する。
【0200】
最終的には、投与されることになる本発明の化合物および特定の製剤の正確な用量は、多くの因子、例えば、治療されることになる状態、治療の望ましい継続期間および活性剤の放出速度に依存する。例えば、必要な活性剤の量およびその放出速度は、血漿中の特定の活性剤濃度が、治療効果にとって許容可能なレベルで残る長さを決定する公知のin vitro法またはin vivo法に基づいて決定してもよい。
【0201】
化合物10の薬学上許容可能な塩
化合物10および関連化合物は、多種多様な有機酸および無機酸と共に薬学上許容可能な酸付加塩を形成する。そのような塩も本発明の一部である。本発明の化合物の薬学上許容可能な酸付加塩は、当技術分野で周知のように、薬学上許容可能な酸から形成される。そのような塩としては、Journal of Pharmaceutical Science、66、2〜19頁、(1977)(非特許文献32)に掲載されている薬学上許容可能な塩が挙げられ、当業者に公知である。そのような塩の形成に使用される典型的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸などが挙げられる。脂肪族のモノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸などの有機酸から誘導される塩も使用できる。したがって、そのような薬学上許容可能な塩としては、以下が挙げられる:塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジカルボン酸塩、ヘキシン−1,4−ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩(teraphthalate)、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ナフタレン−1,5−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩など。
【実施例】
【0202】
実験の部
大気圧光イオン化を装備したPE Sciex API 150EX装置および島津LC−8A/SLC−10A LCシステムでLC/MS分析データを入手した。UV(254nm)およびELSDトレースを積分することにより、純度を決定した。MS装置は、APPIイオン源を装備したPeskier(API)製のもので、陽イオン・モードで運転した。UVトレースの保持時間(RT)を、分単位で表す。溶媒Aは、水中の0.05%TFAから成るものであり、溶媒Bは、アセトニトリル中の0.035%TFAおよび5%水から成るものであった。いくつか異なる方法を用いた:
方法25:API 150EXおよび島津LC10AD/SLC−10A LCシステム。カラム:dC−18 4.6×30mm、3マイクロm(Atlantis、Waters)。カラム温度:40℃。勾配:イオン対形成を用いた逆相。流速:3.3mL/分。注入体積:15マイクロL。勾配:A中の2%Bから100%Bに2.4分かけてから、A中の2%Bを0.4分間。合計通液時間:2.8分。
方法14:API 150EXおよび島津LC8/SLC−10A LCシステム。カラム:C−18 4.6×30mm、3.5マイクロm(Symmetry、Waters)。カラム温度:室温。勾配:イオン対形成を用いた逆相。流速:2mL/分。注入体積:10マイクロL。勾配:A中の10%Bから100%Bに4分かけてから、A中の10%Bを1分間。合計通液時間:5分。
【0203】
X線結晶構造の決定を以下のように実施した。クライオストリーム窒素ガス冷却システムを用いて、化合物の結晶を120Kに冷却した。CCD面積高感度検出器付きのSiemens SMARTプラットフォーム回折計でデータを収集した。直接法により構造を解析し、全てのデータのFに対する全行列最小二乗法により精密化した。構造中の水素原子は、電子密度差マップ中で見出すことができた。水素以外の原子を異方的に精密化した。全ての水素原子は、O−H=0.84Å、C−H=0.99〜1.00Å、N−H=0.92〜0.93Åのライディング・モデル(riding model)を用いた算出位置にあった。全ての水素原子について、熱パラメーターを固定した[U(H)=結合している原子については1.2U]。Flack x−パラメーターは0.0(1)〜0.05(1)の範囲であり、絶対構造が正しいことが示唆される。データ収集、データ整理および吸収に用いたプログラムは、SMART、SAINTおよびSADABSであった[「SMART and SAINT, Area Detector Control and Integration Software」、Version 5.054、Bruker Analytical X-Ray Instruments Inc.、Madison、USA (1998)(非特許文献33)、Sheldrick、「SADABS, Program for Empirical Correction of Area Detector Data」、Version 2.03、University of Goettingen、ドイツ(2001)(非特許文献34)を参照のこと]。構造解析および分子グラフィックスには、プログラムSHELXTL[Sheldrick、「SHELXTL, Structure Determination Programs」、Version 6.12、Bruker Analytical X-Ray Instruments Inc.、Madison、USA、(2001)(非特許文献35)を参照のこと]を使用した。
【0204】
本発明の化合物の合成
Taberら、J. Am. Chem. Soc.、124(42)、12416頁、(2002)(非特許文献36)に記載されている要領で調製した、合成が文献中に記載されている化合物1から開始して、本明細書に記載する要領で8つのステップで化合物8を調製できる。この材料を、本明細書に記載のようにキラルSFCにより分離すると、化合物9およびent−9を得ることができる。Boc−保護基の開裂後、還元的アミノ化を用いて、窒素原子上にn−プロピル基を導入することができる。その結果得られる遮蔽されたカテコールアミンを48%HBrで処理することにより、またはBBrと反応させることにより、標準条件下で脱保護すると、化合物10およびent−10を得ることができる。
【0205】
例1のエナンチオマー(化合物10)およびent−例1(ent−化合物10)は、ent−9から同様の様式で調製できる。例1のラセミ化合物、rac−例1は、例1とent−例1との1:1混合物を混合することにより調製できる。rac−例1は、純粋なエナンチオマーの場合は、前述のように、未分離の化合物8、または、化合物9/ent−9の1:1混合物から得ることもできる。あるいは、rac−例1は、文献(Cannonら、J. Heterocycl. Chem.、17、1633頁、(1980)(非特許文献37))に記載されている要領で調製できる。
【0206】
【化4】

【0207】
化合物9およびent−9の合成。
7−ヨード−1,2,6−トリメトキシナフタレン(化合物2)。
【0208】
【化5】

【0209】
乾燥THF(200mL)中の化合物1(26.2g、Taberら、J. Am. Chem. Soc.、124(42)、12416頁、(2002)(非特許文献36))に記載されている要領で調製)の撹拌溶液に、アルゴン下、−78℃でs−ブチルリチウム(1.2M、シクロヘキサン中、110mL)をゆっくり加えた。この溶液を−78℃で3時間撹拌した。乾燥THF(50mL)中のヨウ素溶液(30.5g)を10分間にわたり加えた。次に、その結果得られた混合物を−78℃でさらに10分間撹拌した。飽和NHCl(100mL)、水(240mL)およびEtO(240mL)を加えることにより反応混合物をクエンチした。有機層を10%亜硫酸ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させてから真空中で濃縮した。粗材料を蒸留により精製して、未反応の出発物質を除去した。残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)によりさらに精製すると不純な固形材料が生成し、これをEtOAc/ヘプタンからの沈殿により精製すると、11.46gの化合物2が得られた。
【0210】
(E/Z)−3−(3,7,8−トリメトキシナフタレン−2−イル)−アクリロニトリル(化合物3)。
【0211】
【化6】

【0212】
マイクロ波反応器用バイアルに入った乾燥アセトニトリル(10.7mL)中の化合物2(3.41g)の懸濁液に、アクリロニトリル(1.19mL)、Pd(OAc)(73mg)およびトリエチルアミン(1.48mL)を加えた。バイアルを密封し、この混合物をマイクロ波照射下で145℃にて40分間加熱した。この手順をさらに2回実施した(合計10.23gの化合物5を用いた)。未精製の反応混合物を合わせ、触媒を濾過により除去し、真空中で濾液を濃縮した。残留物をEtO(300mL)と2M HCl(150mL)との間で分離した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させてから真空中で濃縮した。粗材料(7.34g)をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)により精製すると、オレフィン異性体の混合物としての5.23gの化合物3が生成した。
【0213】
3−(3,7,8−トリメトキシナフタレン−2−イル)−プロピオニトリル(化合物4)。
【0214】
【化7】

【0215】
化合物3(5.23g)をCHCl(15mL)および99%EtOH(100mL)に溶解した。10%Pd/C(0.8g)を加え、Parr震盪器を用いて水素圧3バール下で45分間この溶液を水素化した。触媒を濾過により除去し、濾液は小プラウ(plough)のシリカゲル(溶出剤:99%EtOH)を通過させた。収量:白色の固形物としての4.91gの化合物4。
【0216】
[3−(3,7,8−トリメトキシ−1,4−ジヒドロナフタレン−2−イル)プロピル]カルバミン酸t−ブチルエステル(化合物5)。
【0217】
【化8】

【0218】
化合物4(5.0g)を99%EtOH(150mL)に溶解し、この混合物を窒素雰囲気下で加熱して還流させた。ナトリウム金属(5g)を小さな塊の状態で3時間にわたり加えた。この混合物をさらに2時間還流させてから、室温で2日間撹拌した。次に、この混合物を再び加熱して還流させ、さらなるナトリウム金属(3.68g)を加え、この混合物を一晩還流させた。氷/水浴で冷却した後、固形の塩化アンモニウム(20g)および水(25mL)を加えることにより反応をクエンチした。その結果得られた混合物を濾過し、真空中で濾液を濃縮した。残留物をジエチルエーテル(50mL)と水(50mL)との間で分離した。水層を37%HClで中和させ、ジエチルエーテルで抽出した(2×50mL)。有機抽出物を合わせたものをブライン(50mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させてから真空中で濃縮すると、油が得られた。この材料をTHF(50mL)に溶解し、室温にてBocO(2.34g)およびEtN(1.78mL)で処理した。6日後、揮発性物質を真空中で除去し、残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)により精製した。これにより不純な化合物5(1.52g)が得られた。
【0219】
ラセミ6,7−ジメトキシ−2,3,4,4a,5,10−ヘキサヒドロ−ベンゾ[g]キノリンヒドロクロリド(化合物6)。
【0220】
【化9】

【0221】
化合物5(先のステップからの1.52g)をMeOH(20mL)に溶解した。37%HCl(3.5mL)を加え、この混合物を4時間還流させた。共沸的に水を除去するためにトルエンを用い、真空中で揮発性物質を除去した。これにより、不純な化合物6(0.89g)が黄色の油として得られた。
【0222】
ラセミ・トランス−6,7−ジメトキシ−3,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]キノリン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(化合物8)。
【0223】
【化10】

【0224】
化合物6(0.89g)をMeOH(10mL)に溶解し、NaCNBH(0.19g)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。粗混合物を氷/水浴で冷却してから、これをEtO(1mL)中の2M HClでクエンチした。この混合物をEtO(50mL)、水(50mL)および2M NaOH(10mL)の間で分離した。水層をジエチルエーテルで抽出した(3×50mL)。有機層を合わせたものを乾燥(MgSO)させてから真空中で濃縮すると、不純な遊離アミン(化合物7)が得られた。この材料をTHF(25mL)に溶解し、BocO(0.68g)およびEtN(0.86mL)で室温にて1時間処理した。粗混合物を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン)により精製すると、次のステップ用に十分に純粋な1.18gのラセミ化合物8が得られた。
【0225】
ラセミ・トランス−6,7−ジメトキシ−3,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]キノリン−1−カルボン酸t−ブチルエステルのエナンチオマーのSFC分離(化合物9およびent−9)。
【0226】
【化11】

【0227】
Chiralcel OD 21.2×250mmカラムを装備したBerger SFCマルチグラムII装置でのキラルSFCを用いて、化合物8(19.7g)をそのエナンチオマーに分離した。溶媒系:CO/EtOH(85:15)、方法:一定勾配、流速50mL/分。UV230nm検出により画分収集を実施した。早く溶出してくるエナンチオマー(4aR,10aRエナンチオマー、化合物9):9.0gの白色の固形物。遅く溶出してくるエナンチオマー(4aS,10aSエナンチオマー、化合物ent−9):8.1gの白色の固形物。
【0228】
(4aS,10aS)−6,7−ジメトキシ−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリンヒドロクロリド(化合物ent−9’)。
【0229】
【化12】

【0230】
化合物ent−9(0.52g)をMeOH(15mL)に溶解し、EtO(7.5mL)中の5M HClで室温にて2時間処理した。この混合物を真空中で濃縮し、固形物を真空中で乾燥させると、化合物ent−9’が白色の固形物として得られた。LC/MS(方法14):室温、1.31分。
【0231】
例1
本発明の化合物の調製
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールヒドロブロミド(化合物10)の合成。
【0232】
【化13】

【0233】
化合物9(0.5g)を99%EtOH(5mL)に溶解し、EtO(4mL)中の2M HClで室温にて一晩処理した。粗混合物を真空中で濃縮し、残留物をEtOAcと10%水性NaOH(5mL)との間で分離した。水層をEtOAcで抽出し、有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空中で濃縮した。残留物を99%EtOH(5mL)に溶解し、プロピオンアルデヒド(0.52mL)、NaCNBH(0.45g)およびAcOH(3滴)で、室温にて一晩処理した。粗混合物を飽和水性NaHCO(12.5mL)、水(12.5mL)およびEtOAc(2×25mL)の間で分配した。有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、乾燥(MgSO)させ、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲル・クロマトグラフィー(MeOH/EtOAc)により精製した。得られた中間体を、マイクロ波条件下で、48%HBr(3mL)で150℃にて1時間処理してから、粗混合物を4℃で一晩保管した。沈殿した材料を濾過により単離し、真空中で乾燥させた。化合物10の収量:固形物として103mg。LC/MS(方法25):室温0.77分。
【0234】
(4aS,10aS)−1−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールヒドロブロミド(化合物ent−10)。
【0235】
【化14】

【0236】
化合物10について記載した手順は、化合物ent−9’(0.5g、還元的アミノ化ステップの前にEtOAcと10%水性NaOHとの間で分離することによりHCl塩を遊離させた)からの出発に従った。化合物ent−10の収量:固体として70mg。LC/MS(方法25):室温0.70分。化合物ent−10の小量試料をMeOHに溶解し、ゆっくり室温で2カ月にわたり結晶化させた。形成された白色の結晶を回収し、X線分析にかけた(図1を参照のこと)。X線結晶学により化合物ent−10の絶対配置を決定し、化合物9および10、ひいてはその関連化合物の立体化学の明確な定量を可能にした。
【0237】
例2
一般的なジエステル合成
以下のスキームは、カテコールアミンから化合物10の対称エステル、非対称エステルおよびモノエステルへの変換の一般的な手順を示すものである。
【0238】
【化15】

(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、C1〜6アルカノイル、シクロアルキルアルキル、フェニルアセチルもしくはベンゾイル、または薬学上許容可能なその塩および薬学上許容可能な担体である)。簡潔に言えば、TFAを溶媒として用い、カテコールアミンを塩化アシルで処理した。未精製のアシルカテコールアミン(複数可)を、酸化アルミニウム・クロマトグラフィーにより精製した(この変換に関する参考文献については、例えば、Wikstroem、Dijkstra、Cremers、Andren、Marchais、Jurva、国際公開第WO02/14279号(特許文献87)を参照のこと)。この例に記載の対称エステル、非対称エステルおよびモノエステルはそれぞれ、本発明の範囲内にある。
【0239】
例3
2,2−ジメチルプロピオン酸(4aR,10aR)−7−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6−イルトリフルオロ酢酸エステル
実施例として、しかし本発明の範囲を限定するものではないが、化合物10(44mg)および塩化ピバロイルで開始して、前述の要領で同様の様式で対称的なジエステルを調製した。例3の収量は、白色の固体として14mgであった。LC/MS(方法14):室温、2.45分、ELSD97.7%、UV83.9%。MH:430.2。
薬理学的データ
【0240】
例4
in vitroでの薬理学的試験I
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトの組換えD受容体を安定に発現するCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、11000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、PBS(リン酸緩衝生理食塩水))中の予熱したG緩衝液(1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX(3−i−ブチル−1−メチルキサンチン)中で細胞を1回洗浄し、30nM A68930と、G緩衝液(アンタゴニズム)中で希釈した試験化合物、またはG緩衝液(アゴニズム)中で希釈した試験化合物との混合物100マイクロLを加えることにより、アッセイを開始した。
【0241】
細胞を37℃で20分間インキュベートし、100マイクロLのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM NaOAc)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロlの反応物を、40マイクロLの60mM酢酸ナトリウム、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM酢酸ナトリウム、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSA(ウシ血清アルブミン)および0.15マイクロ−Ci/mLの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。化合物10は、このアッセイにおいてD作動薬として作用することが実証され、EC50は15.5nM、固有活性(有効性)は100%であった。これに対し、アポモルヒネおよびドパミンは、このアッセイにおいてD作動薬であり、EC50値はそれぞれ52nM、43nM、固有活性(有効性)はそれぞれ86%、100%であった。
【0242】
例5
in vitroでの薬理学的試験II
cAMPアッセイ
本化合物が、ヒトD受容体をトランスフェクトしたCHO細胞においてD受容体介在性のcAMP形成阻害を刺激または阻害するいずれかの能力を次のように測定した。細胞を96ウェル・プレート中に、8000細胞/ウェルの濃度で実験の3日前に播種した。実験当日、予熱したG緩衝液(PBS中の1mM MgCl、0.9mM CaCl、1mM IBMX)中で細胞を1回洗浄し、G緩衝液(アンタゴニズム)中の、1マイクロMキンピロール、10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物の混合物100マイクロl、または、G緩衝液(アゴニズム)中の10マイクロMフォルスコリンおよび試験化合物を加えることにより、アッセイを開始した。
【0243】
細胞を37℃で20分インキュベートし、100マイクロLのS緩衝液(0.1M HClおよび0.1mM CaCl)を加えることにより反応を停止させ、プレートを4℃で1時間置いた。68マイクロLのN緩衝液(0.15M NaOHおよび60mM酢酸ナトリウム)を加え、プレートを10分間振盪させた。60マイクロLの反応物を、40マイクロLの60mM NaOAc、pH6.2を含有するcAMP FlashPlates(DuPont、NEN)に移し、100マイクロLのICミックス(50mM NaOAc、pH6.2、0.1%アジ化ナトリウム、12mM CaCl、1%BSAおよび0.15マイクロ−Ci/mlの125I−cAMP)を加えた。4℃での18時間のインキュベーションに次いでプレートを1回洗浄し、Wallac TriLux計数器で計数した。化合物10は、このアッセイにおいてD作動薬として作用することが実証され、EC50は0.11nM、固有活性(有効性)は100%であった。これに対し、アポモルヒネおよびドパミンは、このアッセイにおいてD作動薬であり、EC50値はそれぞれ3.9nM、21nM、固有活性(有効性)は両化合物について100%であった。
【0244】
例6
in vitroでの薬理学的試験III
アッセイ
hDをトランスフェクトしたCHO−Ga16細胞におけるドパミンによる細胞内Ca2+放出の濃度依存刺激。細胞にカルシウム指示色素フルオロ−4を1時間載せた。カルシウム応答(蛍光変化)をFLIPR(蛍光定量的な画像化プレート・リーダー)により2.5分間モニターした。2つ組のウェルのピーク応答(EC50)を各データ点について平均し、薬物濃度と共にプロットした(ドパミンについては図2を参照のこと)。化合物10はこのアッセイにおいてD作動薬として作用することが実証され、EC50は0.06nM、固有活性(有効性)は95%であった。これに対し、アポモルヒネおよびドパミンは、このアッセイにおいてD作動薬であり、EC50値はそれぞれ0.36nM、1.6nM、固有活性(有効性)はそれぞれ88%、100%であった。
【0245】
例7
in vivoでの薬理学的試験I
D1/D2の精査
ドパミン作動薬は、D1受容体、D2受容体のいずれか、またはその両方で活性を有する場合がある。本発明者らは、両方の受容体タイプを刺激し回転を誘導する能力について化合物を評価するために、片側性の6−OHDA病変を有するラットにおける回転応答を用いた[Ungerstedt and Arbuthnott、Brain Res.、1970、24、485頁(非特許文献38)、Setlerら、Eur. J. Pharmacol.、1978、50(4)、419頁(非特許文献39)およびUngerstedtら、「Advances in Dopamine Research」、(Kohsaka編)、Pergamon Press、Oxford、219頁、(1982)(非特許文献40)]。6−OHDA(6−ヒドロキシドパミン)は、神経生物学者が実験動物の脳内において注射部位でドパミン作動性ニューロンを選択的に殺すために使用する神経毒である。6−OHDAモデルにおいては、黒質線条体のドパミン細胞は、黒質の前面に位置する内側前脳束中に6−OHDAを注射することにより脳の一側(片側)上で破壊される。片側性病変の効果がアポモルヒネなどのドパミン作動薬の投与と合わさると、回転行動が誘導される。体重200〜250gのラットに片側性の6−OHDA病変を生じさせた。アンフェタミン(2.5mg/kg、皮下)に対する回転応答について試験する前に動物を最低3週回復させ、それに次ぐ運動異常試験(例8および9)においては同側性の回転により応答する動物のみを使用した。アンフェタミンは、再取込みを遮断しシナプス前終末からの放出を増加させることによりシナプスにおけるドパミン・レベルを増加させる。この効果は、脳の病変側上で主に作用するLドパおよびアポモルヒネなどの直接作動薬への応答と比較して、動物を逆方向に回転させる病変のない側における方が大きい。D1/D2については、実験で使用する前にアポモルヒネ(0.1mg/kg、皮下)に対するin vivoでの精査試験を訓練してから、90分で少なくとも350回繰り返し回転した動物のみを含めた。次に、アポモルヒネ(0.1mg/kg、皮下)に対する動物の回転応答について群をバランスさせながら、3つの処置群にラットをランダムに割り付けた。運動異常試験については、動物はアポモルヒネについて訓練せず、代わりに、Lドパで予備刺激するか(例9)または「薬物未投与で」用いる(例8)か、いずれかとした。実験は、当該化合物について回転を誘導する最小有効用量(MED)を決定することから成る。一旦MEDを決定したら、第2の実験を実施して、ネモナプリド遮断を克服するための、化合物のMED(MEDネモナプリド)を決定した。ネモナプリドは、D2受容体を遮断するD2拮抗薬であることから、観察されるいずれの回転もD1受容体での活性に依存することになろう。最後に、一旦MEDネモナプリドがわかったら、MEDネモナプリド用量を用い、D1拮抗薬SCH23390単独、D2拮抗薬ネモナプリド単独の効果を、最後に、SCH23390とネモナプリドとを用いた併用処置の効果を観察する第3の実験を行う。この第3の実験は、両方の受容体での化合物の活性を確認するものであるが、その理由は、いずれかの拮抗薬単独では試験化合物により誘導される回転応答を部分的に阻害することができるだけであるのに対し、併用処置ではラットにおける全ての回転が完全に遮断されるからである[Arnt and Hyttel、Psychopharmacology、1985、85(3)、346頁(非特許文献41)およびSonsallaら、J. Pharmacol Exp. Ther.、1988、247(1)、180頁(非特許文献42)]。このモデルを、D1/D2混合作動薬の原理実証用化合物としてアポモルヒネを使用して検証した。化合物10(皮下投与した)は、このモデルにおけるD1/D2混合比が約2であったが、これに対し、アポモルヒネは比率が約3であった。D1成分は、プラミペキソールおよびロチゴチンにより例証されたようにはD2作動薬については観察できなかった。データを表1にまとめる。
【0246】
【表1】

【0247】
化合物10は、作用が速やかに開始する持続性のD1/D2二重作動薬のin vivoプロファイルを有する(経頬投与または皮下注射投与した場合)。したがって、化合物10はパーキンソン病におけるON/OFF変動の治療に有用である可能性があることが期待されよう。この化合物は、OFF期間(すくみ)用の「救済薬」としても使用できる。
【0248】
例8
in vivoでの薬理学的試験II
未処置の6−OHDAラットを用いた運動異常モデル
片側性の6−OHDA病変[実験の詳細については例7を参照のこと]を有する20匹のラットを使用して、化合物10(皮下投与、n=7、第1群)による運動異常の誘導を、Lドパ/ベンセラジド(1kg当たり6mg/15mg、皮下、n=7、第2群)およびアポモルヒネ(1mg/kg、皮下、n=6、第3群)と比較して試験した。ベンセラジドは、血液脳関門を越えることができないDOPAデカルボキシラーゼ阻害薬であり、脳の外でのLドパからドパミンへの代謝を防止するために使用される。
【0249】
実際の運動異常実験の間、ラットに1日1回試験化合物を皮下注射し、注射後3時間観察した。先に記載したとおりの異常不随意運動尺度(AIMS)(Lundbladら、Eur. J Neurosci.、15、120頁、(2002)(非特許文献43))を用い、運動異常の存在について各動物を20分毎に1分間、3時間にわたり観察した。ラットに連続14日間薬物投与を行い、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、8日目、10日目および12日目に評点付けを行った。二元配置反復測定ANOVAにより、有意な処置効果、時間効果および処置×時間の相互作用(treatment by time interaction)があったことが明らかになった(全てのケースにおいてp<0.001)。Holm−Sidak法を用いた事後比較により、化合物10で処置された動物は、Lドパまたはアポモルヒネのいずれかで処置された動物(評点は約65)と比較して有意に少ない運動異常を有した(評点は約30)ことが示唆される。Lドパ処置群とアポモルヒネ処置群との間に差はなかった。この実験後、アポモルヒネ群およびLドパ群において見られた運動異常の重篤性に化合物10がどのように影響するかを確認するために、全てのラットに15日目〜19日目に化合物10の皮下注射を行った。実験の19日目(化合物10については5日に相当する)に運動異常の評点付けを実施した。データから、Lドパおよびアポモルヒネにより誘導された運動異常が、化合物10により誘導された運動異常のレベル程度まで部分的に回復したことが示された(化合物10は、処置の12日後に観察された評点約30と比較して、第1群において運動異常の増加を引き起こさなかった)。データを表2に示す。
【0250】
【表2】

【0251】
例9
in vivoでの薬理学的試験III
6−OHDAラットにおけるLドパ誘導性運動異常の回復
独立の運動異常試験は、プラミペキソールまたは化合物10のいずれかを用いてのLドパ誘導性運動異常の回復を検討するものであった。簡潔に言えば、18匹の動物をLドパ/ベンセラジド(1kg当たり6mg/15mg、皮下)で7日間処置した。動物を1日目、3日目および5日目に観察し、AIMSの評点付けを行った。次に、5日目の評点を用いて動物を動物6匹ずつ3つの群に分けた。第1群は毎日Lドパ処置を続けた。第2群は化合物10(皮下投与)で処置した。第3群はプラミペキソール(0.16mg/kg、皮下)で処置した。処置は10日間毎日続け、運動異常の量を1日目、5日目、9日目および10日目に評点付けした。二元配置反復測定分散分析により、化合物10で処置された動物は、プラミペキソール群およびLドパ/ベンセラジド群のいずれより有意に少ない運動異常を有することが示唆された。プラミペキソール群は、Lドパ/ベンセラジド群より有意に少ない運動異常を有した。したがって、化合物10は、Lドパにより誘導された運動異常の回復に関し、プラミペキソールに勝る優れたプロファイルを有した。データを表3に示す。
【0252】
【表3】

【0253】
したがって、Lドパ様の有効性に基づく中等度から重度のPDにおける運動異常および運動異常の回復は、化合物10の投与により治療できると期待される。
【0254】
例10
in vivoでの薬理学的試験IV
優越性モデル
アポモルヒネおよびLドパは、重度のドパミン枯渇のマウスモデルにおいて運動欠損(motility deficit)を回復することが可能である。アポモルヒネおよびLドパは両方ともドパミンのD1受容体およびD2受容体を刺激する。D2受容体での作動薬であるプラミペキソールは、このモデルにおいては効果がない。化合物10をこのモデルにおいて試験したところ、マウスにおいて運動力を回復することが可能であるという点でアポモルヒネおよびLドパと似たプロファイルを呈する。このように、化合物10は、D2受容体のみを標的とするプラミペキソールなど他の化合物に対し「優れ」ている。ブロモクリプチンは、この動物モデルにおける欠損から回復させないD2作動薬の別の例である。
【0255】
実験を次のように実施した:MPTP(2×15mg/kg、皮下)でそれまでに処置を受け安定な病変を発症したマウスを使用し、ビヒクル処置したマウスを正常対照とした。MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)は、脳の黒質中のあるニューロンを殺すことによりパーキンソン病の永久的な症状を引き起こす神経毒である。サルおよびマウスにおける疾患を試験するためにMPTPを使用する。実験当日、マウスをAMPT(250mg/kg、皮下)で処置してからホームケージに1.5時間戻し、その後マウスを運動ユニット(motility unit)中の個々のケージ内に置いた。AMPT(α−メチル−p−チロシン)は、脳のカテコールアミン活性(この場合、特にドパミン・レベル)を一時的に低下させる薬物である。AMPT注射の3時間後、化合物10で運動欠損の救済を試み、さらに1.5時間活性を記録した。救済処置後に収集した最初の30分のデータには「ノイズが含まれて(contaminated)」いたが、これは、ビヒクル対照におけるレベル増加により明らかなように、取扱いおよび注射で動物にストレスがかかっていたことによるものであり、このため、記録されたデータの最後の1時間を用いてデータを分析した。多様な化合物(全て皮下投与)を、このモデルにおいて生じた運動欠損から回復させる能力について試験した。Lドパ/ベンセラジド、アポモルヒネおよび化合物10は、マウスにおいて用量依存的な形で運動力を回復した。これに対し、D2作動薬であるプラミペキソールおよびブロモクリプチンは回復しなかった。データを表4a〜4eに示す。
【0256】
【表4】

【0257】
このモデルを使用して、化合物10は、D2作動薬に勝るLドパおよびアポモルヒネと同様の優越性を呈するか否かを評価した。化合物10について用量応答実験を実施したところ、内因性ドパミンの重度の枯渇により誘導された運動性低下障害が用量依存的に回復した。このモデルにおけるアポモルヒネ、プラミペキソールおよび化合物10の効果を直接比較する最終実験を実施し、化合物10は、処置したMPTPマウスにおいて運動力を回復でき、このモデルにおいてプラミペキソールより優れていたことを確認した。データを表4eに示す。
【0258】
【表5】

【0259】
表4a〜4eの前記データに基づき、また、本発明の一実施形態では、化合物10は、「中〜重度のPD」または「重度のPD」の患者集団の治療に使用できると期待される。
【0260】
D1/D2精査試験(dissection study)(およびMPTP/AMPTマウス+MPTPマーモセットの試験)と組み合わせたアポモルヒネおよびLドパと比較すると、化合物10による運動異常の誘導の方が少ないことから、化合物10での第一選択治療が支持される。今日、プラミペキソールなどのD2作動薬は、Lドパと比較してより良好な「変動副作用」プロファイル(例えば運動異常)を有することから好ましい第一選択薬である。本発明者らのデータから、化合物10はLドパ(およびアポモルヒネ)同様に有効であるが、Lドパおよびアポモルヒネより良好な運動異常プロファイルも有することが実証される。PDの全てのステージにおいてLドパはプラミペキソールのようなD2作動薬より一貫して有効であることから、化合物10はin vivoでの組み合わさった二重のD1/D2プロファイル、Lドパと同等でD2作動薬より良好な有効性とLドパより良好な運動異常プロファイルとに基づき第一選択治療薬として最適な薬物であろうと考えられる。
【0261】
例11
in vivoでの薬理学的試験V
MPTP処置した普通のマーモセットにおける抗パーキンソン病効果
この実験は、MPTP処置した6匹のマーモセットを用いて行った(1日2.0mg/kg、最長で連続5日間、滅菌済の0.9%生理食塩溶液に溶解)。全ての動物は、それまでに、運動異常を誘導するために、最長30日間毎日投与されるLドパ(12.5mg/kg、経口、+カルビドパ12.5mg/kg、経口)で処置しておいた。試験に先立ち、全ての対象は、基本的な自発運動の顕著な低下、運動の協調不足、異常な、および/または硬直した姿勢、機敏性の低下および頭部のチェック運動(checking movement)など安定な運動欠損を呈した。試験化合物のいずれかの60分前にドンペリドンを投与した。ドンペリドンは、悪心および嘔吐を抑制する抗ドパミン作動薬である。ケージ内に戦略的に置かれた8つの赤外線ビームから成る8つの光電性のスイッチから成る試験用ケージを用いて自発運動を評価し、ビームの妨害を1回として記録する。次に、時間区分当たりのビームの回数の合計数を時間の経過に従いプロットするか、または、総合的な活動について曲線下面積(AUC)として示す。処置について知らされていない、訓練を受けた観察者により、運動障害の評価を実施した。
【0262】
これまでに記載されているように、Lドパ(12.5mg/kg、経口)は自発運動を増加させ、運動障害から回復させた(Smithら、Mov. Disord.、2002、17(5)、887頁(非特許文献44))。この挑戦のために選んだ用量は、この薬物の用量応答曲線の最高用量である。化合物10(皮下投与(0.001mg/kgまたは0.01mg/kg、SC)は、自発運動の用量依存的な増加および運動障害からの回復をもたらし、Lドパ(12.5mg/kg、経口)の場合より大きい応答をもたらす傾向があった。化合物10はLドパと比較して運動障害の持続的な回復をもたらし、Lドパ同様に有効であった。このデータを表5に示す。
【0263】
【表6】

【0264】
例12
in vivoでの薬理学的試験VI
化合物10の経頬送達によるレセルピン誘導性運動性低下からの回復
体重約200gのラットをレセルピン(5mg/kg、メタンスルホン酸でpHを4に調節した20%水性ソルトール(solutol)中の溶液剤として皮下投与)で処置した。レセルピンをラットに投与すると、ドパミンからシナプス前神経終末が枯渇し、したがって、レセルピン処置した(reserpinesed)ラットは一時的に「パーキンソン病症状を呈し」、ドパミン作動薬またはLドパで処置しなければ動けなかった。4匹の動物の独立の群を、レセルピン用に用いるビヒクルで皮下処置した(第1群)。23〜24時間後、24匹のレセルピン動物をそれぞれ4匹の動物を有する第2群〜第6群に分けた。これらに以下にまとめたような処置を施してから、光センサーを装備した活動箱の中に置き、その自発運動を3時間にわたり記録した。第1群:0.7%水性塩化ナトリウム中の20%エタノールで処置、皮下。第2群:アポモルヒネで処置(1mg/kg、pH=4の水溶液として皮下投与。アポモルヒネの分解を防止するために0.02%アスコルビン酸を加えておいた)。第3群:化合物10で処置(0.7%水性塩化ナトリウム中の20%エタノール中の溶液剤として皮下投与)。第4群〜第6群:漸増用量の化合物10で処置(0.7%水性塩化ナトリウム中の20%エタノール中の溶液剤として右上の歯肉に経頬投与)。データから、アポモルヒネ(1mg/kg、皮下、陽性対照)および化合物10(皮下投与)によりレセルピン誘導性運動性低下から回復したことが示された。化合物10(経頬投与)により、運動性低下から回復した。データを表6にまとめる。
【0265】
【表7】

【0266】
例13
in vivoでの薬理学的試験VII
化合物10の経頬送達による6−OHDAラットにおける回転応答の誘導
本出願人らは、片側性の6−OHDA病変を有するラットを使用して、化合物10の、経頬投与後に回転を誘導する能力について評価した[モデルに関する詳細については、例7の記載を参照のこと]。8匹の動物群をアポモルヒネで処置した(陽性対照、0.1mg/kgをpH=4の水溶液として皮下投与。アポモルヒネの分解を防止するために0.02%アスコルビン酸を加えておいた)。8匹の動物の別の2つの群は、2つの異なる用量の化合物10で処置した(右上の歯肉中に、0.7%水性塩化ナトリウム中の20%エタノール中の溶液剤として経頬投与)。アポモルヒネは、皮下投与後に回転を誘導した。化合物10の経頬送達も旋回行動を誘導した。データを表7にまとめる。
【0267】
【表8】

【0268】
例14
in vivoでの薬理学的試験VIII
ミニブタにおける静脈内および経頬での薬物動態試験
この試験の目的は、化合物10の投与(0.0025mg/kgでの静脈内投与または0.010mg/kgおよび0.040mg/kgでの経頬投与いずれかによる)後の、ミニブタにおける化合物10の血漿濃度を測定することであった。
【0269】
試験デザイン
被験物質および対照物質
被験物質は化合物10であった。被験物質用のビヒクルは、Baxter、Norfolkにより供給された滅菌済の生理食塩水(0.9%NaCl)(静脈内投与)またはVWR International、Leicestershireにより供給された注射(経頬投与)用水中で再構成されたアスコルビン酸であった。製剤は投与当日に調製した。
【0270】
試験系および用量レベル
Goettingen ApS系の3匹のオスのミニブタは、Ellegaard Goettingen、Dalmose、デンマークにより供給された。投与開始時点で、動物は生後およそ15〜17週であった。各動物には、以下の試験デザインにより、3つの別々の機会に1回投与した:
【0271】
【表9】

【0272】
各投与機会に先立ち、動物を一晩絶食させ、酸素中のイソフルランで麻酔した(フェースマスクにより投与)。
【0273】
1日目−静脈内投与
耳静脈中に配置した短期カテーテル経由でゆっくり手動で注射することにより、麻酔下に置きながら静脈内投与を実施し、投与直後に動物を麻酔から回復させた。麻酔しながら頸静脈中にカテーテルを挿入し、採血目的で所定の位置に固定した。カテーテルにヘパリン(250iu/mL、0.9%塩化ナトリウム中)を充填した。カテーテルの外側部分をミニブタの頸部腹側から背側に送り、包帯をすることにより保護した。カテーテルの遠位端にキャップをし、包帯内の再密封可能な袋の中に配置した。頸静脈カテーテルを所定の位置に保持し、24時間毎にヘパリン加生理食塩水で洗い流した。
【0274】
3日目および5日目−経頬投与
動物に麻酔をかけながら試験製剤を頬膜に5分間施用することにより経頬投与を実施した。施用5分後に口中に残留製剤が残っていれば、口中に放置した。投与直後に、動物を麻酔から回復させた。
【0275】
血漿濃度
静脈内(ボーラス)投与後1日目に全ての動物から、低用量の経頬投与後3日目に全ての動物から、また、薬物動態学的分析用の高用量の経頬投与後5日目に全ての動物から、血液試料を採取した。頸静脈(カテーテルにより)から、EDTA抗凝血薬を含有するチューブの中に試料(1.0mL)を回収した。血液試料の添加に先立ち、100マイクロLの安定化剤(20mg/mlアスコルビン酸を含有する2%β−メルカプトエタノール)を各容器に加えた。安定化剤は、試料収集日毎に新しく調製した。試料を次のように回収した:
●1日目:投与後5分、10分、15分、30分および45分、ならびに、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間および16時間
●3日目:予備投与、ならびに、投与後5分、10分、15分、30分および45分、ならびに、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間および24時間時点
●5日目:予備投与、ならびに、投与後5分、10分、15分、30分および45分、ならびに、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間および24時間時点
採血の時間は全般に厳守した。計画した時点から最も大きくずれたのは、3日目の5分時点で1分遅れたことであった。血液試料を1時間以内に試料収集分から遠心分離し、結果として得られた血漿を分析に先立ち凍結させた。
【0276】
【表10】

【0277】
分析方法
血漿試料の固相抽出に次ぎ試料体積約100マイクロLを用い、タンデム質量分析法による検出を伴う高速液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)にかけた後、化合物10の血漿濃度を定量した。
【0278】
化合物10の内部標準を含有する内部標準溶液を、解凍した血漿試料(100マイクロLアリコット)に加えた。SPEプレート(Oasis HLB、10mg)を、メタノール(500マイクロL)、次いで水(500マイクロL)で整えた。試料(およそ500マイクロLアリコット)を、予め整えたSPEプレートに移した。次に、カートリッジに試料を通過させてから、水:メタノール(90:10v/v、0.5mL)で洗浄した。次に、20mMギ酸アンモニウム(水溶液):アセトニトリル:ギ酸(50:50:2v/v/v、250マイクロL)の入った新しい96ウェルのポリプロピレン製の収集プレート中に試料を溶出させた。次に、溶出した試料の有機成分を、元の体積のおよそ50%が残っている状態まで穏やかな窒素気流下で蒸発させた。20mMギ酸アンモニウム(水溶液)および0.5%ギ酸:アセトニトリル(90:10v/v)を4mg/mLのアスコルビン酸と共に含有する一定分量(100マイクロL)の溶液を、各ウェル中の試料の残存する水性成分に加え、UHPLC−MS/MS分析にかける前にボルテックス混合し、遠心分離した(3500rpm、10分、室温)。
【0279】
化合物10について1/x加重した最小二乗直線回帰法を用いて、較正標準中の化合物10の濃度、QC試料および試験試料を測定した。血漿試料の固相抽出に次ぎ、タンデム質量分析法による検出を伴う高速液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)にかけた後、化合物10の血漿濃度を測定した。この方法を検証したところ、100マイクロLの血漿を用いると定量下限(LLOQ)は10pg/mLである。
【0280】
分析手順:液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC−MS/MS)用API5000:最終抽出溶液を以下の条件下でLC−MS/MS分析にかけた。
LC条件:
分析用カラム# Waters BEH UPLCフェニル100×2.1mmカラム、粒子サイズ1.7マイクロm、部品番号186002885
インライン・フィルター(Acquity) 供給者:Waters 部品番号700002775
カラム・オーブン温度# 名目上50℃
オートサンプラー温度 名目上4℃
移動相A# 20mMギ酸アンモニウム(水溶液)+0.5%ギ酸
移動相B# アセトニトリル
流速# 0.5mL/分
勾配設定: 以下の表を参照のこと
【0281】
【表11】

バルブ切替時間 0〜1.2分−排液
1.2〜6分−MSへ
6〜8分−排液
スレーブ・ポンプ(slave pump)溶媒 (20mMギ酸アンモニウム(水溶液)+0.5%ギ酸):アセトニトリル(50:50v/v)
スレーブ・ポンプ流速 0.5mL/分
洗浄溶媒1# (20mMギ酸アンモニウム(水溶液)+0.5%ギ酸):アセトニトリル(90:10v/v)
弱洗浄(Acquity)
洗浄溶媒2# 水:メタノール:TFA(50:50:0.1v/v/v)
強洗浄(Acquity)
注射様式(Acquity) 針に過量充填して部分ループ(partial loop with needle over−fill)
LC条件
注射ループ体積(Acquity) 50マイクロL
針の配置 底部から2.0mm
注射剤体積(推奨) 50マイクロL
Waters acquity
弱洗浄体積(μL) 3000(範囲200〜5000)
強洗浄体積(μL) 3000(範囲0〜5000)
質量分析計パラメーターAPI5000
運転モード# ターボ・イオンスプレー(陽イオン)(MS/MS)
衝突ガス設定(CAD) 6[設定12は、API4000機器の場合4.8×10−5トルにほぼ等しい]
カーテン・ガス設定(CUR) 20psi
イオン源ガス1(GS1) 50psi
イオン源ガス2(GS2) 70psi
イオンスプレー電圧(IS) 5500V
温度(TEM) 650℃
Q1分解能 ユニット
Q3分解能 低
インターフェース・ヒーター状態 オン
分析時間 以下の2期間で6分:
期間1: 3.5分
期間2: 2.5分
【0282】
前述の手順を用いて作製しミニブタ血漿中での化合物10の測定の間に得られた代表的なクロマトグラムを図3に示す。化合物10の定量化はピーク高さ比に基づくものであったことから、正しいピーク高さが確実に測定されるように、クロマトグラムのいくつかに対する積分は、付加的なノイズおよび干渉ピークを含む。
【0283】
静脈内投与後の化合物10の血漿濃度
0.0025mg/kgでの化合物10の単回の静脈内ボーラス投与後の化合物10の血漿濃度。データを表8にまとめる。
【0284】
【表12】

【0285】
オスのミニブタへの0.0025mg/kgでの化合物10の単回の静脈内ボーラス投与に次ぎ、投与後5分時点、すなわち静脈内投与後の1回目の採血時間時点で化合物10の最大血漿濃度が観察された。化合物10の血漿濃度は、一般的に二相性の形で低下するようであり、見かけの終末相消失半減期(t1/2)は3.4〜4.3時間の範囲、見かけの終末相の開始は投与後4時間時点で起こった。
【0286】
16時間の試料採取期間にわたり、2匹の動物において投与後12時間まで血漿濃度を定量化でき(すなわち、LLOQの10pg/mLを超えた)、投与後16時間時点でのレベルとしての推定濃度はLLOQの20%を超えた。1匹の動物(動物3)においては、血漿濃度は16時間の期間を通してLLOQより高かった。
【0287】
経頬投与後の化合物10の血漿濃度
経頬投与(0.010mg/kg)後のミニブタにおける化合物10の血漿濃度。データを表9にまとめる。
【0288】
【表13】

NR:報告結果なし
NS:試料なし
【0289】
経頬投与(0.040mg/kg)後のミニブタにおける化合物10の血漿濃度。データを表10にまとめる。
【0290】
【表14】

【0291】
0.010mg/kgおよび0.040mg/kgでの化合物10のオスのミニブタへの単回の経頬投与後、化合物10は急速に吸収され、化合物10は、投与後5分時点で血漿中にて定量化できた。投与後約0.75時間時点で最高血漿濃度が観察されたが、投与後1時間のtmaxが遅れた0.040mg/kg用量レベルでの動物1は例外であった。Cmax到達後、化合物10の血漿濃度は二相性の形で低下するようであり、平均の見かけの終末相半減期は、0.010mg/kgおよび0.040mg/kgの用量レベルでそれぞれ5.1時間、5.6時間であった。
【0292】
24時間の試料採取期間にわたり、化合物10の血漿レベルはLLOQを超えたままであり、血漿濃度が、推定されるか(レベルがLLOQの20%を超えたため。1Mについては投与後16時間、2Mについては投与後24時間)、または定量化できなかった(LLOQの20%未満であり、1Mについては投与後24時間)かのいずれかであった、0.010mg/kgの投与後の2匹の動物とは差があった。
【0293】
用量比例性
化合物10の用量が0.010mg/kg〜0.040mg/kgで増加した後の化合物10への全身的な曝露の倍増を以下に示す。
【0294】
【表15】

NA=不適用
【0295】
化合物10への全身的な曝露は、0.010mg/kg〜0.040mg/kgの用量範囲にわたり超比例的な形で(in a supra−proportional manner)増加し、AUC0−∞およびCmaxは、4倍の用量増加を超える12倍で増加した。経頬投与後の化合物10の生物学的利用率は、0.010mg/kgでは30〜42%の範囲で用量依存的であり、0.040mg/kgでは73〜136%に増加した。化合物10についての用量正規化したAUC0−∞およびCmaxを図3および4にそれぞれグラフで示す。
【0296】
結論
0.025mg/kgの化合物10のオスのミニブタへの静脈内ボーラス投与後、化合物10の血漿濃度は、二相性の形で低下するようであり、個々の見かけの終末相消失半減期は3.4〜4.3時間の範囲であった。
【0297】
化合物10の単回の経頬投与後の化合物10の吸収は急速であり、最高血漿濃度は投与後0.75〜1時間時点で観察された。化合物10の血漿濃度は二相性の形で低下するようであり、見かけの終末相消失半減期は用量とは無関係で、個々の動物における値は3.1〜5.6時間であった。
【0298】
経頬投与後、化合物10への全身的な曝露は、超比例的な形で増加するようであり、0.010〜0.040mg/kgの用量範囲にわたりAUC0−∞およびCmaxは両方とも12倍増加した。曝露が非線形性であったため、化合物10の生物学的利用率は用量依存的であり、平均値は0.010mg/kgで31〜35%、0.040mg/kgでは105〜122%に増加した。
【0299】
例15
in vivoでの薬理学的試験IX
化合物10の鼻内投与によるパーキンソン病のラット・モデルにおける旋回行動の誘導。
【0300】
動物は例7に記載したように作製した。4つの動物群に多様な用量の化合物10(第1群:1マイクロg/kg、第2群:10マイクロg/kg、第3群:25マイクロg/kg、第4群:50マイクロg/kg)を投与した。全てのケースにおいて、化合物10は鼻孔の一方の中に、0.02%アスコルビン酸を含有する0.7%水性塩化ナトリウム中の20%エタノール中の適切な濃度の溶液剤を体積20マイクロLで投与した。この薬物溶液を鼻孔の一方に施用し、鼻を穏やかにマッサージして、投与した溶液が鼻粘膜にわたり確実に分布するようにした。続く3時間にわたり動物の回転行動の度合いを記録した。データを表11に示す。
【0301】
【表16】

【0302】
例16
in vivoでの薬理学的試験X
化合物10の経皮送達による6−OHDAラットにおける回転応答の誘導
本出願人らは、片側性の6−OHDA病変を有するラットを用いて、経皮投与後に化合物10が回転を誘導する能力について評価した[モデルの詳細については例7の説明を参照のこと]。6匹の動物の3つの群を、経皮投与される異なる用量の化合物10で処置した。化合物10(24mg)を生理食塩水(9mL)中の0.02%アスコルビン酸と20%エタノールとの混合物中で懸濁させ、その結果得られた懸濁液をジメチルスルホキシド(0.45mL)で希釈した。適切な量のこの製剤を動物の耳に施用した。耳を穏やかにこすってから、動物の回転応答を3時間にわたり評価した。化合物10の経皮送達は、3つの群全てにおいて旋回行動を誘導した。データを表12にまとめる。
【0303】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚を越えて送達するための医薬組成物。
【請求項2】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を含む、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚を越えて送達するための医薬組成物の、パーキンソン病の治療用の医薬の製造における使用。
【請求項3】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、口腔粘膜を越えて送達するための請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を含む、口腔粘膜を越えて送達するための、パーキンソン病の治療用の医薬の製造における請求項2に記載の使用。
【請求項5】
口腔粘膜を越える送達が、口腔頬経路(oral buccal route)、舌下経路を通してまたは口唇を通して行われる、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
透過促進剤(penetration enhancer)をさらに含む、請求項3または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
錠剤、ロゼンジ剤、チューインガムまたはリップスティックである、請求項3、5および6のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項8】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む鼻腔内投与用の医薬組成物。
【請求項9】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を含む鼻腔内送達用の医薬組成物の、パーキンソン病の治療用の医薬の製造における使用。
【請求項10】
浸透促進剤(permeation enhancer)をさらに含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
1つまたは複数の粘着剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、崩壊剤またはそれらの混合物をさらに含む、請求項8または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む経皮送達用の医薬組成物。
【請求項13】
(4aR,10aR)−1−n−プロピル−1,2,3,4,4a,5,10,10a−オクタヒドロベンゾ[g]キノリン−6,7−ジオールまたは薬学上許容可能なその塩を含む経皮送達用の医薬組成物の、パーキンソン病の治療用の医薬の製造における使用。
【請求項14】
パッチ剤、半固形剤形、ゲル剤、ローション剤またはクリーム剤としてさらに特徴付けられる、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
浸透促進剤、1つもしくは複数の粘着剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、崩壊剤またはそれらの混合物をさらに含む、請求項12または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
式1a、1bまたは1c:
【化1】

(式中、各R、RおよびRは独立に、C1〜6アルカノイル、シクロアルキルアルキル、フェニルアセチルまたはベンゾイルである)
から選択される化合物または薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な担体とを含む、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚を越えて送達するための医薬組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519156(P2012−519156A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551408(P2011−551408)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050050
【国際公開番号】WO2010/097091
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】