説明

0次回折顔料

本発明は、少なくとも0.25だけ隣接する材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料から製造された層を有する又はこれから構成された顔料であって、この場合に、前述の層は、0次回折微細構造を具備し、前述の層は、光学導波路として機能し、且つ、前述の層は、50nm〜500nmの厚さを具備する、顔料と;その製造用のプロセスと;その使用法と;に関するものである。これらの顔料は、回転及び/又は傾斜の際にカラーエフェクトを示し、且つ、このカラーエフェクトは、0次回折に基づいたものであると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転及び/又は傾斜の際にカラーエフェクトを示す顔料に関するものであり、更に詳しくは、カラーエフェクトが0次回折に基づいたものであるカラーエフェクト顔料と、その製造のためのプロセスと、その使用法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物理色:表面格子の1次又はこれよりも高次の回折によるか、或いは、米国特許第3,858,977号に開示される平坦な誘電層積層体又はFabry−Perot型層積層体(干渉フィルタ)により、物理色を得ることが知られている。又、物理色は、非常に微細なサブ波長格子をその上部の1つ又は複数の誘電体及び/又は金属積層体と組み合わせることにより、得ることができることも知られている。このような所謂、0次回折フィルタ(Zero Order Diffractive:ZODフィルタ)又は0次回折装置(ZOD装置)は、米国特許第4,484,797号に記載されているように、0次回折を使用し、非常にはっきりとしたカラーエフェクトを生成する。ZOD装置の主な特徴及び利点は、次のとおりである。
【0003】
・虹色の光学的効果が傾斜角度θ及び/又は回転角度φと共に変化する。
・光学的効果が、訓練を受けていない要員によって容易に認識される。
・光学的効果が機械判読可能である
・カラーエフェクトが、拡散した照明状態においても強力である。
・費用効率に優れた大量生産可能な技法を利用可能である。
・光学的効果が、極めて微細なサブ波長格子と組み合わせられた2つの異なるレベルにおける高屈折率材料の材料特性及び堆積に依存していることから、偽造が非常に困難である。格子又は材料積層体のみを複写しても、所望の効果を生成しない。
【0004】
ZOD装置:図1.1に示されているように、代表的なZOD構造は、その内部に、高屈折率(黒色、n>n+0.25)を有する材料のセグメント(HRI層)が、例えば、平行な又は交差した格子ラインなどの周期的な微細構造として規則的に配列された低屈折率(Low Index of Refraction:LRI)材料(白色、1.1〜1.7の範囲内のn)から構成される。更に一般的には、導波層が回折微細構造によって変調されるか、或いは、微細構造が、この層の上又は下に配置される。導波路の上又は下の材料は、異なる屈折率を具備可能である。1つは、空気であってもよい。0次回折が発生するためには、微細構造の周期Λ、微細構造の深さt、導波層の厚さc、充填率又はデューティサイクルf.f.=p/Λ、及び微細構造のプロファイル又は形状(矩形、正弦波、三角形、又は更に複雑なもの)を含むいくつかのパラメータを調節しなければならない。微細構造の周期は、フィルタの設計対象である光の波長よりも小さい。白色光によって照射された際には、このZOD構造は、特定のスペクトル範囲又は色を非常に効果的に直接的に反射する。これは、サブ波長格子構造の導波HRI層内における共振効果に由来する。この層は、漏洩導波路として機能する。従って、ZODフィルタは、しばしば、共振格子と呼ばれる。角度θにおいて入射する光の一部は、直接的に透過し、一部は、回折されて導波層内にトラップされる。トラップされた光の一部は、再度外に回折され、且つ、透過した部分と干渉する。特定の波長及び周期的微細構造の角度方向φにおいて、完全な否定的干渉に結び付く共振が発生する。このような光は透過されない。1次又はこれよりも高次の回折装置とは反対に、ZOD装置又はZODフィルタ内においては、光は、入射角度θに等しい視角において反射される。使用された材料が吸収作用を保持していない限り、透過スペクトルは、反射におけるものの補完体である。0次回折フィルタに関する更なる詳細は、M.T.Galeによる「Zero−Order Grating Microstructures」(R.L. van Renesse、Optical Document Security、第2版、268〜287頁)において見出すことができる。反射及び透過色は、観察者との関係における格子の向きに依存する。図1.2に示されているように、色は、表面の垂線を中心とした回転の際に変化する(「カラーフリップ」)。格子の対称性に応じて、異なる回転角度を実現することができる。線形格子においては、ZOD格子が180°だけ回転され場合には、スペクトルは同一であるが、90°の回転の際に、強力なカラーフリップが発生する。2次元格子においては、60°及び90°の対称なカラーフリップ効果を容易に生成することができ、その他の値も可能である。特定の波長における100%の反射率が理論的に可能であり、実際には、最大で80〜90%の値が観察される。
【0005】
ZODフィルタの製造:ホットエンボス加工によって微細構造化されたフォイル基板上に堆積されたHRI層として熱によって蒸気化されたZnSを有するロールツーロールプロセスにおいてラミネートされたフォイルとして、ZODフィルタを製造することが知られている。
【0006】
ZODフィルタの使用法:パスポート及び文書の保護のための、並びに、紙幣におけるセキュリティ機能として前述のように製造されたフォイルを使用することが知られている。ZODフィルタは、セキュリティアプリケーション用に現在広く使用されているホログラムの妥当な後継者として見なされている。主な理由は、ZODフィルタは、偽造が更に困難であり、それにも拘わらず、ホログラムと同一の基礎生産技術を使用しているという点にある。更には、ZODフィルタは、人間の目にとって更に良好に可視的であり、且つ、単純な装置によって容易にチェック可能である。
【0007】
カラーシフト顔料:交互に変化する高屈折率及び低屈折率の屈折層の多層堆積又はFabry−Perot型の干渉層積層体により、カラーシフト顔料を製造できることも知られている。カラーシフトは、多層積層体内における薄膜干渉効果に由来する。
【0008】
米国特許第5,135,812号は、真空堆積に基づいたこのような顔料を製造するプロセスを記載している。材料の柔軟なウェブの1つの表面上に、光学的に変化可能な薄膜コーティングを形成する。コーティングをウェブから分離し、光学的に変化可能な薄膜フレークを形成する。フレークをインク及び塗料ビヒクル内に配設し、光学的に変化可能なインクを提供する。このようにして得られた顔料は、回転の際に、はっきりとしたカラーエフェクトを示さないことが欠点であると考えられる。更には、少なくとも5つの層を堆積させなければならず、これは、相当に費用を所要し、且つ、厚い顔料に結び付く。通常、このような顔料は、厚さが、1μmのレベルである。
【0009】
国際特許出願公開第WO98/53012A1号は、気相又は液相からの層の堆積に基づいてこのような多層積層体を有する顔料を製造する代替方法を記載している。硬化と、連続ストリップ上において熱によって加水分解可能であるチタニウム化合物の水溶液の加水分解と、によって得られるマルチコーティングされた干渉顔料が記載されている。このようにして生成された層が、ストリップから分離され、分解されてフレークを形成する。このようにして得られたフレークを、湿式プロセスにおける中間の乾燥の後に又はこれを伴うことなしに、対応する水溶性金属化合物を加水分解することにより、高屈折率を有する金属オキシド水和物と低屈折率を有する金属オキシド水和物によって交互にコーティングする。この場合にも、このようにして得られた顔料は、回転の際に、はっきりとしたカラーエフェクトを示さないことが欠点であると考えられる。傾斜の際に妥当なカラーエフェクトを得るためには、更に少なくとも5つの層を堆積させなければならず、この結果、顔料が厚くなる。
【0010】
回折顔料:国際特許出願公開第WO03/011980A1号は、単層又は多層フレークを含む回折顔料フレークを記載している。フレークは、反射表面と、反射表面上に形成された回折構造と、を具備した層を有し、この場合に、構造のピッチ及び振幅は、更に高次の回折光ビームの強度及びカラーコントラストを増大させるために、0次回折光ビームの強度を減少させるべく選択される。このような顔料を真空堆積によって製造する方法が記載されている。このような顔料のカラーエフェクトは、1次又はこれよりも高次の回折に基づいていることから、ホログラムの代表的なレインボーカラーエフェクトのみを実現可能である。
【0011】
国際特許出願公開第WO04/024836号は、プリズムと同様に、光をスペクトル成分に分離し、且つ、顔料を選択的にアライメントするための磁気層を含む1次及びこれよりも高次の回折顔料を記載している。この文献は、0次回折顔料を開示又は想定していない。
【0012】
この結果、回転及び/又は傾斜の際にカラーエフェクトを示す顔料と適切な製造プロセスに対するニーズが存在している。更には、最新技術によるものと比較して薄い物理色顔料に対するニーズも存在している。後者は、最新技術による物理色顔料を含むラッカーと比べて、顔料を含むラッカーの堆積のための更に多くの印刷及びコーティング法の使用を可能にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、最新技術のこれらの欠点の少なくともいくつかのものを軽減することが発明の目的である。具体的には、回転及び/又は傾斜の際にカラーエフェクトを示す新しい顔料を提供し、且つ、このような顔料を得るための製造プロセスを提供することが本発明の狙いである。本発明の更なる狙いは、最新技術による物理色顔料と比べて、薄い顔料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、請求項1に定義された顔料により、且つ、請求項11に定義された製造プロセスにより、達成される。本発明の更なる態様は、本明細書及び独立請求項に開示され、好適な実施例は、本明細書及び従属請求項に開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明について、以下に更に詳述する。本明細書に提供/開示される様々な実施例、選択、及び範囲は、自由に組み合わせ可能であることを理解されたい。更には、特定の実施例に応じて、選択された定義、実施例、又は範囲が適用されない場合もある。
【0016】
特記されていない限り、本明細書においては、以下の定義が適用される。
【0017】
0次回折顔料(「ZOD顔料」)は、回転及び/又は傾斜の際にカラーエフェクト(即ち、色の変化)を示す顔料であり、この場合に、前述のカラーエフェクトは、0次回折に基づいたものである。
【0018】
材料は、エンボス加工段階の適用の後に、その表面上にエンボス加工ツールの構造が維持される場合に、「エンボス加工可能」であると考えられる。
【0019】
「周期的な微細構造」とは、100nm〜600nmの周期を具備した周期的構造である。
【0020】
「顔料」という用語は、当技術分野において既知である。これは、固体粒子に関係し、それぞれの粒子は、色及び/又はカラーエフェクトを示す。前述の粒子は、100マイクロメートル(μm)未満の、特に、20μm未満の最大直径を具備することが有利である。このような粒子は、フレーク状に成形され、即ち、これらは、その長さ及び幅と比較された際に、薄いことが有利である。
【0021】
「高屈折率層(「HRI層」)」という用語は、当技術分野において既知である。例えば、HRI層は、ZnS、TiO、Cr、AlN、Al、HfO、Nb、Si、SnN、Ta、V、WO、又はZrO、或いは、類似の無機材料又はHRI721及びHRI751(optimate)のような高屈折率ポリマーから製造することができる。
【0022】
本発明は、添付図面を参照することにより、更に理解することができよう。
【0023】
更に一般的には、第1の態様においては、本発明は、顔料、特に、光学導波層(HRI層)を有する又はこれから構成された0次回折顔料(「ZOD顔料」)に関するものであり、この場合に、前述の層は、少なくとも0.25だけ隣接する材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料から製造され、この場合に、前述の層は、0次回折格子構造を具備し、且つ、この場合に、前述の層は、50nm〜500nmの厚さを具備する。
【0024】
有利な実施例においては、本発明は、0次回折格子構造が、0次反射において反射される光の波長よりも小さい周期を保持する、本明細書に記載される顔料に関するものである。
【0025】
更なる有利な実施例においては、本発明は、0次回折格子構造が、100〜600nmの周期と、30〜300nm、好ましくは、150nm以下の格子深さを具備する、本明細書に記載の顔料に関するものである。
【0026】
更なる有利な実施例においては、本発明は、100nm〜2マイクロメートルの厚さと、1〜100マイクロメートルの横方向サイズと、を具備した顔料に関するものである。このような顔料の形状は、任意のものであってよく、有利な形状は、矩形、三角形、六角形、又は五角形である。大きな面積(>2mm)上におけるZOD効果は、既知であるが(例えば、米国特許第4,484,797号)、ZODのサイズ効果は、これまで調査されてはいない。関連する計算及び実験が難しいことから、驚いたことに、格子が、少なくとも3つの格子周期にわたって横方向に延長した場合に、ZOD効果が既に現れることが判明した。従って、大きな面積のZODのカラーエフェクトが可能であるのみならず、少なくとも1マイクロメートルの横方向サイズを有する0次回折に基づいたカラー顔料を製造可能である。このようなカラー顔料の反射スペクトルは、前述のパラメータ以外に、顔料のサイズ及び形状に依存する。理論に拘束されることなしに、例えば、300nm〜500nm又はこれ未満の格子周期及び1〜2マイクロメートルの横方向サイズを有する顔料は、同一の格子であるが横方向サイズが10マイクロメートル以上である顔料よりも、広い反射ピークを具備するものと考えられる。
【0027】
本発明の一実施例においては、以下のパラメータを充足しなければならない。格子周期は、回折光の波長よりも小さくなければならない。代表的な格子の周期Λは、100nm〜600nm、特に、300〜500nmの範囲である。代表的な格子の深さtは、30〜300nm、好ましくは、150nm以下である。誘電材料の場合には、有用な厚さcは、格子及び材料特性に強力に依存するが、代表的な厚さは、30nm〜250nmの範囲である。充填率f.f.=p/Λの適切な範囲は、0.3〜0.8、好ましくは、0.4〜0.7である。又、格子のプロファイルも、反射スペクトルに影響を及ぼす。可能な格子プロファイルは、矩形、湾曲(例えば、正弦波)、三角形、及びこれらの3つの基本形状の組み合わせである。格子形状の有利な例が図1.1及び図1.3に示されている。
【0028】
有利な実施例においては、本発明は、異方性の横方向形状、特に、細長い横方向形状を具備した粒子から構成されたZOD顔料に関するものである。一般に、ZOD装置は、異なる極角(θ)においてその色を変化させる。これは、安定したカラーシフト干渉顔料において観察されるカラーシフトエフェクトと同様に(米国特許第5,135,812号)、表面に適用された際に、ZOD顔料に虹色の外観を付与する。更には、線形の一次元格子を有するZOD装置は、表面の垂線を中心した90°の回転の際に固有のカラーフリップを示す。任意の向きにおいて堆積されたZOD顔料においては、カラーフリップは、もはや、人間の目によっては観察可能ではない。極角θに対する依存性のみが残ることになる。しかしながら、顔料の形状が、例えば、矩形などのように、強力に異方性であり、且つ、堆積方法にとって、1つの方向のアライメントが好ましい場合には、堆積されたカラー顔料は、依然として、カラーフリップエフェクトを示すことになり、即ち、表面は、表面の垂線を中心として回転された際に、色を変化させることになる。適切な顔料は、ロッド形状の粒子、特に、1:2〜1:10の範囲、特に、1:5(例えば、10×50マイクロメートル)の幅対長さの比率を有する矩形粒子を有する。これは、例えば、長くて狭い矩形の顔料を、湿式コーティングプロセスにおいて、重合性バインダと共に又はこれを伴うことなしに、表面上に堆積させることにより、実現可能である。印刷、特に、フレキソ印刷、インクジェット印刷、又はスクリーン印刷、カーテン又はディップコーティング、並びに、吹き付けが適切な技法である。乾燥した層が顔料の辺の長いほうの寸法の2倍未満の厚さを具備する場合に、結果的に、最大で数マイクロメートルの厚さの層がもたらされ、有利であると判明した。
【0029】
更なる有利な実施例においては、本発明は、磁気層を含む本明細書に記載されるZOD顔料に関するものである。1つ又は複数の磁気層がZOD顔料に内蔵された場合には、製造の際に1つの方向においてそれらを磁化し、堆積の際に顔料を磁気的にアライメントさせることも可能である。このような磁気層は、例えば、酸化クロミウム、金属の鉄、酸化鉄、金属のニッケル、及びこれらに類似したものから製造可能であろう。大部分の磁気材料は、可視スペクトル範囲において吸収作用を有することから、好適な1つ又は複数のスペーサ層が1つ又は複数の導波層を1つ又は複数の磁気層から分離する。この結果、磁化された顔料の堆積は、顔料の印刷の際に磁界を局所的に変化させることにより、可視、UV、及びIR領域において光学パターンを磁気的に書き込むことを許容する。これにより、異なる方向に方向付けされた顔料を有する印刷エリアが形成される。その他の既知の光学技法は、この能力を具備していない。明らかに、このような磁気ZOD顔料は、高分解能により、且つ、単純なカラーカメラにより、磁界の空間的な分布を計測するべく使用することができる。
【0030】
更なる有利な実施例においては、本発明は、マルチレベルシステムを有するZOD顔料に関するものである。本発明の文脈においては、マルチレベルシステムは、周期的微細構造及び導波層に加えて、更なる周期的微細構造及び導波層、誘電層、又は金属層などの光学特性に影響を及ぼす追加要素を含むシステムである。具体的には、このようなマルチレベルシステムは、i)周期的微細構造上のいくつかの(2つ以上の)誘電層、又はii)ZODフィルタと金属層の組み合わせ、又はiii)これら両方の組み合わせを有する。好適な実施例は、互いに上下に類似の又は同一のZODフィルタを積層するというものである。1つのZOD層によって透過された光が、下の層によって部分的に反射され、この結果、合計の反射率が増大するため、その結果、色が強化される。このような構成においては、誘電層間の離隔が約1ミクロンよりも小さい場合には、新しいスペクトルが出現する。この場合には、それぞれの誘電層は、独立したZODフィルタとして機能せず、それぞれの層は、互いに干渉し、更に強力な異なるカラースペクトルを付与することになる。1つの可能なこのような多層構成の概略図が図1.6に示されている。複雑なZOD顔料を製造するその他の可能性は、0次回折構造を金属又は誘電ミラー構造と組み合わせるというものであり、例えば、格子上の積層体が、5〜100nmの厚さのAl、Ag、Au、Cr、Cu、及びこれらの合金又は類似の金属である1つ又はいくつかの完全に反射性の又は半透明の金属層を包含可能であろう。この場合には、ミラーがHRI層に近接して配置された場合に、即ち、それぞれの単一の層の厚さが1ミクロン未満である場合に、強力な色が観察されることになる。図1.7に示されているように、色は、ミラーと従来のZOD顔料構造の間の追加的な干渉に起因している。
【0031】
更なる有利な実施例においては、本発明は、HRI層が、消化可能な粉体内に埋め込まれたTiO又は類似の食用材料などの人間に投与するのに好適な材料から製造されたZOD顔料に関するものである。このような粉体は、薬剤ピル、有機食品、歯磨き粉、及び類似の材料の大規模な混合物であってよいであろう。ピル内において使用される薬剤組成物の代表的な例は、ラクトース一水和物(72.5%)、微結晶セルロース(4.25%)、アエロジル(コロイダルシリカ、無水、1.00%)、ステアリン酸マグネシウム(1.00%)、Na−サリシレート(典型的な活性剤、1.00%)である。
【0032】
更なる有利な実施例においては、本発明は、有機又は無機小滴内に埋め込まれ、且つ、この小滴内に固定された1つ又は複数のZOD顔料に関するものである。この結果、図1.5に示されているように、これらの小滴は、粉体、ペースト、又はゲル内において充填材として使用されるか、或いは、液体又はプラスチック内に内蔵される。薬剤アプリケーション又は食品産業におけるアプリケーションの場合には、本明細書に記載されるZOD顔料は、砂糖によってコーティングされるか又はこの内部に埋め込み可能であろう。
【0033】
更なる実施例においては、本発明は、隣接する材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料から製造された層から構成されたZOD顔料に関するものであり、この場合に、層は、0次反射において反射される光の波長よりも小さな、好ましくは、100〜600nmの周期を有する回折格子構造を具備する。代表的な格子深さは、30〜300nm、好ましくは、150nm以下であり、この場合に、層は、光導波路として機能し、且つ、この場合に、導波層の厚さは、50nm〜500nmである。
【0034】
更なる有利な実施例においては、本発明は、前述のZOD顔料を有するコーティング、光滑剤、又はラッカーなどのマトリックスに関するものである。適切なマトリックスは、ZOD顔料のHRI層の屈折率よりも少なくとも0.25だけ低い平均光学屈折率を保持する。図1.4を参照されたい。
【0035】
第2の態様においては、本発明は、i)基板上に、第1溶剤中において溶解可能である第1層を堆積し、任意選択により、微細構造化する段階、ii)1つ又は複数の堆積段階及び任意選択の1つ又は複数の微細構造化段階により、前述のZOD顔料の1つ又は複数の層を製造する段階であって、この場合に、すべての追加層は、前述の第1溶剤中において溶解不能である、段階、iii)前述の第1層を溶解させる段階、iv)任意選択により、得られたZOD基板/ZOD顔料に1つ又は複数の更なるコーティング段階を適用する段階、及びv)任意選択により、得られたZOD顔料にサイズ及び/又は形状に関する1つ又は複数の選択段階を適用する段階を有する、本明細書に記載されるZOD顔料を製造するプロセス、特に、大量生産プロセスに関するものであり、この場合に、少なくとも1つの微細構造化段階が、i)又はii)において実行される。本発明の文脈においては、微細構造化段階とは、製造された層の1つのものに対して微細構造を生成するプロセスであり、エンボス加工段階が代表的な例である。本発明の文脈においては、大量生産プロセスとは、結果的に大量のZOD顔料をもたらすプロセスであり、ロールツーロールプロセスが代表的な例である。
【0036】
干渉層積層体顔料(前述のもの)と同様に、ZOD顔料は、柔軟なウェブ上における微細構造化及び堆積の後に、高屈折率コーティングをフレーク化することによって得ることができる。これは、ロールツーロール(「R2R」)プロセスにおける大きなエリアにおける真空堆積及びエンボス加工法によって実行可能である。ロールツーロールプロセスに使用される機器は、当技術分野において既知であり、且つ、本明細書に記載されるZOD顔料用の製造プロセスにも使用可能である。従って、有利な実施例においては、ZODフィルタ製造プロセスのすべての段階は、このようなR2Rプロセスにフィットするべく適合される。このようなR2Rプロセスは、相対的に低い生産費用及び大きな製造速度に起因し、有利であると考えられる。
【0037】
一実施例においては、ZOD顔料の第1製造プロセスは、次の段階を具備することになる(図2.2を参照されたい)。
【0038】
1.変形可能なポリマーフォイル内又はポリマーフォイル(「キャリアフォイル」)上の変形可能な層内への周期的な微細構造(「格子」)のホット又はコールドエンボス加工。ポリマーフォイル(「キャリアフォイル」)用の好適な材料は、熱可塑性ポリマーである。例えば、キャリアフォイルは、アクリロニトリルブタジエンスチレンABS、ポリカーボネートPC,ポリエチレンPE、ポリエーテルイミドPEI、ポリエーテルケトンPEK、ポリ(エチレンナフタレート)PEN、ポリ(エチレンテレフタレート)PET、ポリイミドPI、ポリ(メチルメタクリレート)PMMA、ポリオキシメチレンPOM、モノオリエンテッドポリプロピレン(mono oriented polypropylene)MOPP、ポリスチレンPS、ポリビニルクロライドPVC、及びこれらに類似したものから製造可能である。重合性の変形可能な層の好適な材料は、ポリ(ビニルアルコール)PVA、ポリ(ビニルピロリドン)PVP、及びその他の適切な熱可塑性及びコーティング可能なポリマーである。エンボス加工に使用される格子のマスタツールは、例えば、Cr表面仕上げを伴う又は伴わないニッケル又はスチールのフォイル又はシート又はプレート又はロールなどの金属性のものであってよい。又、これは、MoC又はWC又はこれらに類似したものからも製造可能であろう。
【0039】
2.通常は、熱蒸着、プラズマ堆積、スパッタリング、又はグラビア印刷による少なくとも1つのHRI層の堆積。交互に変化する高い及び低い屈折率の層のいくつかの積層体を堆積可能であろう。それぞれの層の厚さは、1マイクロメートル未満であり、通常は、50nm〜500nmである。又、薄い金属層も、熱蒸着、プラズマ堆積、又はスパッタリングによって堆積可能である。これらの層の厚さは、通常、5nm〜150nmの範囲である。
【0040】
3.エンボス加工層を溶解させることにより、顔料を機械的に剥離可能である。堆積の後に、顔料を液体中において分解可能である。
【0041】
4.サイズ分布を絞り込むべく、顔料をサイズ及び形状について選択可能である。この技法により、同時にいくつかのサイズを製造可能である。
【0042】
5.次いで、ZOD又はHRI顔料は、ペーストや粉体内に埋め込むか、又は液体やペースト内に分散させることにより、処理可能な形態となる。
【0043】
有利な実施例においては、格子のマスタは、境界を有する小さな格子パッチを具備し、これらは、ZOD顔料の形状を有する。格子のエッジは、マスタ上のそれぞれの格子が十分に離隔するように、十分に隆起又は陥没させる。中間領域は、顔料を分離するためのナイフとして機能する。ZOD顔料のカラーエフェクトは、サイズに依存可能であることから、再現可能な結果及び狭い色スペクトルのためには、顔料形状の厳格な制御が必要である。ZOD顔料の形状は、格子の製造段階において制御されることから、このようなサイズ制御は、本明細書に記載される格子マスタを使用することにより、実現可能である。
【0044】
有利な実施例においては、リリース層を、エンボス加工可能なフォイル又は層上、或いは、マスタツール上に堆積させているが、マスタツール上が好ましい。このリリース層は、エンボス加工又はHRI層用の接着防止層として機能する。リリース層の可能な例は、テフロン(登録商標)、DLC、シラン、及びこれらに類似したものである。
【0045】
それにも拘わらず、更に低い製造コストを実現するべくZOD顔料内において使用される導波HRI層を堆積させる改善された方法に対するニーズが存在している。これは、フレーク形状の基板上における気体又は湿式堆積法によって実現可能である。導波層のものよりも少なくとも0.25だけ低い屈折率を有する材料から製造されたフレーク形状の基板(「フレーク」)が必要であり、この場合に、フレークは、少なくとも1つの表面上にサブ波長の格子構造を保持しなければならない。本明細書においては、このようなフレークを製造する方法について説明する。非真空プロセスにおいて、これらのフレーク上に導波層を堆積させる更なる方法について説明する。一実施例においては、エンボス加工された周期的な微細構造を保持する柔軟な基板上に、真空堆積によってLRI材料を堆積させることにより、フレークを製造している。別の実施例においては、柔軟な基板上に、LRI材料を湿式コーティングプロセスにおいて堆積させ、この後に、堆積された層内に周期的な微細構造をエンボス加工している。この後に、堆積された層又は多重層をフレークに分解している。
【0046】
有利な実施例においては、本発明は、a)柔軟な基板上に、エンボス加工可能であり、且つ、第1溶剤中において溶解可能である第1層を堆積させる段階と、b1)第1層内に周期的な微細構造をエンボス加工する段階と、c1)エンボス加工された第1層上に、前述の第1溶剤中において溶解不能であり、且つ、屈折率nを具備する第2層を堆積させる段階、d1)前述の第1溶剤と接触させることにより、前述の第1層から前述の柔軟な基板を分離する段階であって、この場合に、第2層は、フレーク形状の基板に分解される、段階と、e)得られたフレーク形状の基板を第3層によってコーティングする段階であって、この場合に、前述の第3層は、屈折率n>n+0.25を具備する、段階と、を有するZOD顔料用の第1製造プロセスに関するものである(図2.1aを参照されたい)。
【0047】
更なる有利な実施例においては、本発明は、a)柔軟な基板上に、第1溶剤中において溶解可能である第1層を堆積させる段階と、b2)前述の第1層上に、エンボス加工可能であり、且つ、前述の第1溶剤中において溶解不能であり、且つ、屈折率nを具備する第2層を堆積させる段階と、c2)前述の第2層内に周期的微細構造をエンボス加工する段階と、d2)前述の第1溶剤と接触させることにより、前述の第1層から前述の柔軟な基板を分離する段階であって、この場合に、前述の第2層は、フレーク形状の基板に分解される、段階と、e)得られたフレーク形状の基板を第3層によってコーティングする段階であって、この場合に、前述の第3層は、屈折率n>n+0.25を具備する段階と、を有するZOD顔料用の第3製造方法に関するものである(図2.1bを参照されたい)。
【0048】
第2及び第3製造方法は、いずれも、2つのサブプロセス、即ち、微細構造化されたフレーク形状の基板の製造(段階a)〜段階d))と、微細構造化されたフレーク形状の基板から始まるZOD顔料の製造(段階e))を含む。この結果、本発明は、微細構造化されたフレーク形状の基板の製造と、ZOD顔料の製造に関するものである。一実施例においては、段階a)〜d)は、R2Rプロセスに適合され、段階e)は、不連続なプロセスに適合される。
【0049】
前述のように、第2プロセスは、段階a)、b1)、c1)、d1)、及びe)を有し、第3プロセスは、段階a)、b2)、c2)、d2)、及びe)を有する。以下、これらの段階及びこれに好適な材料について更に詳述する。又、これらの段階を概略的に示す図2.1をも参照する。
【0050】
段階a)柔軟な基板上に、第1溶剤中において溶解可能であるエンボス加工可能な第1層を堆積させる。これは、例えば、ロールツーロールカーテン又はカスケードコーティング又はグラビア印刷によって実行可能である。これらの技法による堆積速度は、1メートルのレベルのウェブ幅を有する柔軟なウェブ基板において、最大で数百メートル/分であってよい。柔軟な基板用の好適な材料は、例えば、PET、PEN、PP、PMMA、PS、MOPP、PE、PC、及びPCVなどのポリマーフォイルである。柔軟な基板の厚さは、広い範囲において変化可能であるが、好ましくは、5μm〜500μmであり、特に好ましくは、12μm〜250μmである。このような材料は、市販されているか、又は既知のプロセスに従って得ることができる。第1層用の好適な材料は、例えば、ポリエステル又はニトロセルロース派生物などのエンボス加工可能であり、且つ、溶剤中において溶解可能なポリマーである。水溶性の並びにエンボス加工可能なポリマーの例は、ポリ(ビニルピリジン)PVP又はポリ(ビニルアルコール)PVAである。第1層の厚さdは、通常、50nm〜10μmであり、好ましくは、100nm〜3μmであり、特に好ましくは、300nm〜2000nmである。このプロセス段階用の好適な溶剤は、第1層用の材料の選択内容に従って選択可能である。好適なものは、環境親和的な溶剤である。通常、水、エタノール、イソプロパノール、及びその混合物が使用される。
【0051】
段階b1)次いで、周期的微細構造を第1層内にエンボス加工する。これは、例えば、ロールツーロールのホット又はコールドエンボス加工によって実行可能であり、この場合に、ロールの表面は、周期的な微細構造を保持する。通常、これは、ロールの周りにニッケルシムを配置することによって実行される。周期的微細構造は、前述のとおりである。第1方法において記載されたエッジナイフ構造を定義する顔料形状を使用可能である。
【0052】
段階c1)次いで、第1溶剤中において溶解不能であり、且つ、少なくとも可視スペクトル範囲内において透明である第2層を第1層上に堆積させるが、この場合に、透明とは、平均透過率が>75%であり、好ましくは>90%であることを意味している。この第2層の厚さdは、格子深さtよりも大きくなければならない。これは、安定したフレーク形状の基板を得ることを保証する。好適なdは、100nm〜最大で2000nmの範囲である。堆積は、例えば、蒸着、スパッタリング、又はCVD(Chemical Vapour Deposition)などの真空プロセスによって実行可能である。この第2層用の好適な材料は、ポリ(p−キシリレン)PPXなどのポリマー、或いは、例えば、MgF、Al、又はSiOなどの無機金属酸化物又は金属ハロゲン化物である。ロールツーロールのカーテン又はカスケードコーティング又はグラビア印刷のような湿式コーティング法は、第2層を堆積するための別の可能性である。湿式コーティング可能であり、且つ、水溶液中において溶解不能である材料の例は、ニトロセルロースNC又はポリスチレンPSである。第2層が真空堆積によって堆積される場合には、第1層と接触状態にはない第2層の第2表面は、サブ波長格子構造を保持可能である。これが図2.1a)に示されている。関連する材料及び層の厚さに応じて、格子の深さ及びプロファイルは、両方の表面上において異なっていてもよく、異なっていなくてもよい。湿式コーティング法が使用される場合には、この第2表面は、大部分の場合に、第1表面と相関を有することにならない(図2.1aには、示されていない)。
【0053】
段階d1)次いで、第1層を第1溶剤と接触させることにより、第2層を柔軟な基板から分離させる。このような接触は、結果的に、部分的な又は完全な第1層の溶解をもたらすことができる。第2層は、溶解段階において、フレークに分解される。
【0054】
有利な一実施例においては、段階d1)は、ロールツーロールプロセスにおいて実行可能である。
【0055】
有利な一実施例においては、段階d1)は、超音波処理(UltraSonic:US)によってサポート可能である。
【0056】
有利な一実施例においては、柔軟な基板と第1層の間に配置される多孔性層を、第1層の前に、又はこれと共に、堆積させている。第1溶剤が、多孔を充填し、これにより、柔軟な基板側から第1層に到達可能であることから、この多孔性層は、第1溶剤による第1層の溶解をサポート可能である。多孔性層は、例えば、シリカ又はベーマイトなどの無機ナノ粒子を含む分散から、例えば、欧州特許第EP1464511号に記載されている既知の技法によって堆積可能である。
【0057】
段階b2):エンボス加工可能であり、且つ、先程識別された第1溶剤中において溶解不能である第2層を、先程識別された第1層上に堆積させる。好適なdは、100nmから最大で2000nmの範囲である。第1層におけると同一の堆積法を使用可能である。第2層は、水溶性の分散を含む微小球体から堆積可能である。可能な材料は、例えば、ラテックス又はPS微小球体である。
【0058】
段階c2):次いで、第2層内における周期的微細構造のエンボス加工を実行する。これは、b1との関連で説明したように、例えば、ロールツーロールホットエンボス加工により、実行可能である。第2層が重合性の微小球体から製造される場合には、好ましくは、重合性材料のガラス転移温度を上回る温度において実行されるホットエンボス加工は、層の溶解又はシーリングに結び付く。従って、ホットエンボス加工の後には、このような層は、水溶液から堆積されたものではあるが、水中において溶解不能となる。第1及び第2層の材料の弾性的及び可塑性の特性に応じて、周期的微細構造を第2層の上部表面内に又は両方の表面内にエンボス加工する。
【0059】
段階d2)前述のように(d1)、第2層を柔軟な基板から分離し、フレーク形状の基板を形成する。
【0060】
この第3プロセスの有利な実施例においては、前述の第1及び第2層の堆積は、例えば、カーテン又はカスケードコーティングにより、同時に実行される。
【0061】
この第3プロセスの更なる有利な実施例においては、前述の第1層、前述の第2層、及び前述の多孔性層の堆積は、例えば、カーテン又はカスケードコーティングにより、同時に実行される。
【0062】
両方のプロセスの有利な実施例においては、既定の破壊点又は線を第1又は第2又は両方の層内に製造(例えば、エンボス加工)する段階により、フレークのサイズ及び形状に影響を付与可能である。これらの破壊点は、例えば、x及びy方向における平行なラインであってよい。好適には、ラインの厚さは、薄く、これは、3μmよりも小さいことを、特に、1.5μmよりも小さいことを意味している。ラインの間の間隔は、好ましくは、1μm〜100μmであり、特に好ましくは、2μm〜20μmである。顔料の非対称的な形状は、顔料のコーティングプロセスにおいて顔料をアライメントするのに有用であることが判明した。このようなアライメントは、このようなZOD顔料によってコーティングされた製品の回転の際にカラーエフェクトを実現するべく必要である。このような破壊点/線は、ZOD微細構造のエンボス加工の前に、後に、又はこれと同時に、製造可能である。好適な実施例においては、破壊点は、周期的構造と共にエンボス加工される。この実施例においては、エンボス加工ツールがZOD微細構造及びZOD顔料の構造を有する。従って、追加機器は不要である。
【0063】
段階e)0次回折顔料の製造:この段階においては、フレーク形状の基板を、i)透明であり、ii)高い屈折率を保持し、且つ、iii)適切な厚さを具備する導波層によってコーティングする。厚さは、通常、50nm〜500nmの範囲であり、好適には、80nm〜150nmである。透明度は、エンドユーザーのニーズに従って選択可能であるが、通常は>75%、好ましくは>90%の値が適切である。
【0064】
多くのアプリケーションにおいて、顔料は、550nmの波長において1.5のレベルの屈折率を有するポリマーマトリックス内に埋め込まれる。このようなアプリケーションの場合には、導波層は、少なくとも>1.75の屈折率を有する材料から製造しなければならない。
【0065】
導波層は、既知の方法を使用して堆積可能である。有利な一実施例においては、導波層は、気相又は液相からタンク内において堆積されている。タンク内における堆積は、その他の方法、特に、真空プロセスと比較した場合に、その大きな大量生産能力と、従って、低費用に起因し、有利であると考えられる。例えば、対応する水溶性の金属化合物を加水分解することにより、金属酸化物のHRI層を基板上に堆積可能である。任意選択により、層を加熱して石灰化可能である。このような金属酸化物の非限定的な例は、TiO、ZrO、Crである。必要な屈折率及び透明度の要件を充足するすべての透明な材料を使用可能である。
【0066】
図2.1は、両面(2.1a)上及び片面(2.1b)上にサブ波長格子を有するフレーク形状の基板上における導波層の溶液からの堆積を概略的に示している。大部分のケースにおいて、導波層は、フレークの両方の表面上に成長する。これは、1つのHRI層堆積段階のみによる多層0次回折フィルタを有する顔料の製造を可能にする。
【0067】
フレーク形状基板が十分に薄い場合には、追加の干渉効果が発生可能であり、これは、d<2μm、好適には、d<1μmを意味している。従って、本発明は、顔料が、2マイクロメートル未満の厚さを具備する基板から構成されるZOD顔料にも関するものである。
【0068】
両方の表面上に周期的微細構造を有するフレーク形状基板の場合には、2つの0次回折フィルタの干渉効果が存在する。これは、国際特許出願公開第WO06/038120A1号に記載されているように、更に強力な反射特性に結び付く。従って、本発明は、粒子が両方の表面上に周期的な微細構造を具備するZOD顔料にも関するものである。
【0069】
1つの表面上にのみ周期的微細構造を有するフレーク形状基板の場合には、両方の表面上における高屈折率層の堆積によって、1つの表面上にZODフィルタを、そして、もう1つの表面上に平坦な導波層を有する顔料が形成される。この場合には、0次回折フィルタと薄い導波層の干渉効果が発生する。例えば、ZODフィルタの漏洩導波層内を伝播する光を平坦な導波層に結合可能である。
【0070】
更なる実施例においては、本発明は、前述の第3層が複数のサブ層から構成されるZOD顔料に関するものである。フレーク形状の基板上における交互に変化する低及び高屈折率材料による前述の液体及び気体堆積プロセスを反復することにより、非常に複雑な多層ZOD顔料を実現可能である。適切な低屈折率材料は、例えば、SiO、Al、又はAlOOHである。更なる適切な材料は、堆積層が薄い場合には、Ag、Au、Al、Cuなどの金属である。この文脈において、薄い層とは、厚さが100nm未満であり、好ましくは、10〜50nmの範囲である。このような層は、液体又は気体堆積によって適用可能である。従って、好適な実施例においては、本発明は、コーティング段階e)が、異なる屈折率を有するコーティング材料を使用して反復的に実行されるプロセスに関するものである。
【0071】
第3の態様においては、本発明は、前述のように、ZOD顔料の使用法に関するものである。一般に、ZOD顔料は、顔料が使用されるすべての分野において既知の顔料のように使用可能である。
【0072】
好ましくは、ZOD顔料は、識別、認証及びセキュリティ、烙印、及びマーケティング、並びに、装飾、塗装、コーティング、及び化粧品のような分野において使用可能である。
【0073】
アプリケーションの例は、紙幣、クレジットカード、パスポートにおける、或いは、偽造防止及びブランド保護用のセキュリティ装置である。その他の可能なアプリケーションは、自動車又は包装用の塗装又はコーティングである。
【0074】
特に、ペースト、液体、粉体、又はポリマー内に埋め込まれた際のZOD顔料は、薬剤製造(例えば、タブレット)、食品、車、プラスチック、金属、紙、及びこれらに類似したもの用のカラーコーティングにおいて使用可能である。
【0075】
その他の粉体粒子に混合される小さな粉体粒子を製造するべくポリマーや砂糖などによってコーティングされたZOD顔料は、薬剤タブレット、食品、又は日焼け止め、並びに、これらに類似したのにおいて有用である。
【0076】
本発明を更に例示するべく、以下の例を提供する。これらの例は、本発明の範囲を限定する意図を伴って提供されるものではない。
【0077】
例1:PETフォイル(23マイクロメートル厚)上において、水溶性PVA層(1000nm厚)をグラビア印刷によって適用する。次いで、このPVA層内に、ZOD微細構造を100℃のR2Rニッケルシムによってエンボス加工する。次いで、ZnS層(190nm厚)を蒸着チャンバ内において堆積させる。PVA層を室温の水中において溶解させ、これにより、硬いZnS層が、直径が数マイクロメートルの小さな粒子に分解することにより、コーティングされたフォイルから顔料が得られる。これらの粒子のサイズは、US処理により、更に低減可能であり、遠心分離又は篩別により、サイズ分布を低減可能である。得られた顔料は、はっきりとしたカラーエフェクトを示す。
【0078】
例2:ニッケルシムを10*50マイクロメートルの既定の破壊線にも適用することを除いて、例1の手順を踏襲する。得られた顔料は、はっきりとしたカラーエフェクトを示し、サイズ分布を修正するためのUS処理又は段階は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1.1】既知のZOD装置の概略側面図を示す。黒色は、HRI材料を表し、白色は、低屈折率材料を表す。Λは、周期であり、tは、微細構造の深さであり、pは、上部微細構造ラインの幅であり、φは、回転角度であり、θは、視角であり、cは、HRI層の厚さである。
【図1.2】線形格子の表面の垂線を中心とした回転の際のカラーフリップを表すZOD装置の平面図を示す概略図である。格子ラインが反射の方向に垂直である場合には、例えば、緑色光が特定の視角において反射される(左側の部分)。ZOD装置を90°だけ回転させると、色が緑色から赤色に変化する。格子ラインは、いまや、反射の方向と一致している(右側の部分)。その他の格子の対称性は、その他の回転角度を生成する。
【図1.3a】代替ZOD顔料の格子形状であり、正弦波(上)と三角形(下)である。これら2つの形状の組み合わせ及び矩形形状との組み合わせも、0次回折を示す。
【図1.3b】可能な非対称ZOD顔料の格子形状であり、非対称三角形(上)と非対称矩形(下)である。
【図1.4】ペースト、液体、粉体、又はポリマー内に埋め込まれたZOD顔料(黒色格子)である。
【図1.5】その他の粉体粒子(明るい灰色)に混合された小さな粉体粒子を製造するべくポリマーや砂糖などによってコーティングされたZOD顔料(黒色格子)である。
【図1.6】多重層ZOD顔料の構造が一例として示されている。この特定のケースにおいては、顔料の横方向寸法は、約4格子周期である。間隔は、1マイクロメートルよりも小さく、通常は、500nm以下であり、層間の相互光学干渉を許容している。
【図1.7】ミラー−ZOD顔料構造が一例として示されている。この特定のケースにおいては、横方向の顔料寸法は、約4格子周期である。黒色の底部は、反射ミラー構造であり、これは、波形を付与可能であろう。この場合にも、代表的な間隔は、1マイクロメートルよりも小さく、通常、500nm以下であり、すべての層間における相互光学干渉を許容している。
【図2.1】本明細書に記載されるZOD顔料を製造するプロセスを概略的に示す。
【図2.2】本明細書に記載されるZOD顔料を製造する代替プロセスを概略的に示す。異なる順序で最初の3つの段階を配列可能である。エンボス加工の際のナイフセパレータの形状は、例えば、矩形などの異なるものであってよい。又、隆起の代わりに陥没が、セパレータ機能を提供することになる。但し、ナイフエッジの高さは、誘電積層体の全体厚さよりも大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学導波層を有する又はこれから構成された顔料、特に0次回折顔料において、
前記層は、
・少なくとも0.25だけ隣接する材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料から製造され、
・0次回折格子構造を具備し、且つ、
・50nm〜500nmの厚さを具備する、顔料。
【請求項2】
請求項1に記載の顔料において、前記0次回折格子構造は、0次反射において反射される光の波長よりも小さな周期を保持する顔料。
【請求項3】
請求項1に記載の顔料において、前記0次回折格子構造は、100〜600nmの周期と、30〜300nmの格子深さを具備する顔料。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の顔料において、異方性の横方向形状を具備する顔料。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の顔料において、磁気層を含む顔料。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の顔料において、多重層システムを含む顔料。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の顔料において、1つ又は複数の光学導波層は、有機又は無機小滴内に埋め込まれ、且つ、この小滴内において固定される顔料。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の顔料において、前記光学導波層は、人間への投与に適切な材料、特に、TiOから製造され、且つ、この場合に、前記顔料は、消化可能なマトリックス内に埋め込まれる顔料。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の顔料を有するマトリックス、特に、コーティング、光滑剤、又はラッカー。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のZOD顔料を製造するプロセス、特に、ロールツーロールプロセスにおいて、
・基板上に、第1溶剤中において溶解可能である第1層を堆積させ、且つ、任意選択により、これを微細構造化する段階、
・1つ又は複数の堆積段階及び任意選択の1つ又は複数の微細構造化段階により、前記ZOD顔料の1つ又は複数の層を製造する段階であって、この場合に、すべての追加層は、前述の第1溶剤中において溶解不能である、段階、
・ZOD基板又はZOD顔料を得るべく前記第1層を溶解させる段階、
・このようにして得られた前記ZOD基板又はZOD顔料に、任意選択により、1つ又は複数の更なるコーティング段階を適用する段階、及び/又は、
・得られた前記ZOD基板又はZOD顔料に、任意選択により、サイズ及び/又は形状に関する1つ又は複数の選択段階を適用する段階を有し、
この場合に、少なくとも1つの微細構造化段階が実行される、プロセス。
【請求項11】
請求項10に記載のプロセスにおいて、
a)柔軟な基板上に、エンボス加工可能であり、且つ、第1溶剤中において溶解可能である第1層を堆積させる段階と、
b)前記第1層内に周期的な微細構造をエンボス加工する段階と、
c)前記エンボス加工された第1層上に、前記第1溶剤中において溶解不能であり、且つ、屈折率nを具備する第2層を堆積させる段階と、
d)前記第1溶剤と接触させることにより、前記第1層から前記柔軟な基板を分離する段階であって、この場合に、前記第2層は、フレーク形状基板に分解される、段階と、
e)得られた前記フレーク形状の基板を第3層によってコーティングする段階であって、この場合に、前記第3層は、屈折率n>n+0.25を具備する、段階と、
を有するか、又は、
a)柔軟な基板上に、第1溶剤中において溶解可能である第1層を堆積させる段階と、
b)前記第1層上に、エンボス加工可能であり、且つ、前述の第1溶剤中において溶解不能であり、且つ、屈折率nを具備する第2層を堆積させる段階と、
c)前記第2層内に周期的な微細構造をエンボス加工する段階と、
d)前記第1溶剤と接触させることにより、前記第1層から前記柔軟な基板を分離する段階であって、この場合に、前記第2層は、フレーク形状基板に分解される、段階と、
e)得られた前記フレーク形状の基板を、屈折率n>n+0.25を有する第3層によってコーティングする段階と、
を有するプロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスにおいて、前記コーティング段階e)は、湿式又は気相において実行されるプロセス。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のプロセスにおいて、段階d)は、収集及び精製段階によって補完されるプロセス。
【請求項14】
請求項11乃至13の何れか1項に記載のプロセスにおいて、前記第1層の堆積の前に、又はこれと同時に、多孔性層が前記柔軟な基板上に堆積されるプロセス。
【請求項15】
請求項11乃至14の何れか1項に記載のプロセスにおいて、前記第1層は、基本的に、PVA又はPVPから構成されるプロセス。
【請求項16】
請求項11乃至15の何れか1項に記載のプロセスにおいて、前記第1溶剤は、基本的に、水から構成されるプロセス。
【請求項17】
請求項11乃至16の何れか1項に記載のプロセスにおいて、前記第2層は、基本的に、MgF、SiO、ラテックス、又はPSから構成されるプロセス。
【請求項18】
請求項11乃至17の何れか1項に記載のプロセスにおいて、コーティング段階e)は、異なる屈折率を具備する異なるコーティング材料を使用することにより、反復的に実行されるプロセス。
【請求項19】
請求項11に記載のプロセスにおいて、
a)変形可能なポリマーフォイル内又はポリマーフォイル上の変形可能な層内への周期的な微細構造のホット又はコールドエンボス加工段階と、
b)特に、熱蒸着、プラズマ堆積、スパッタリング、又はグラビア印刷による少なくとも1つのHRI層の堆積段階と、
c)前記エンボス加工層を溶解させ、前記顔料を機械的に剥離させる段階と、
d)任意選択により、所望のサイズ及び形状に従ってHRI顔料を選択することにより、サイズ分布を絞り込む段階と、
e)前記HRI顔料をペースト又は粉体内に埋め込むか、又は前記HRI顔料を液体又はペースト内に分散させる段階と、
を有する又はこれらから構成されたプロセス。
【請求項20】
請求項11乃至19の何れか1項に記載のプロセスにおいて、前記周期的微細構造のエンボス加工段階の前に、これと同時に、又はこの後に、特に、これと同時に、既定の破壊点又は線がエンボス加工されるプロセス。
【請求項21】
請求項19又は20に記載のプロセスにおいて、すべてのプロセス段階は、ロールツーロールプロセスに適合されるプロセス。
【請求項22】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のZOD顔料の使用方法であって、識別、認証及びセキュリティ、烙印、マーケティング、装飾、化粧品製造、薬剤製造の分野における使用法。
【請求項23】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のZOD顔料を含む塗料、コーティング、光滑剤、又はインク。

【図1.1】
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【図1.2】
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【図1.3】
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【図1.4】
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【図1.5】
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【図1.6】
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【図1.7】
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【図2.1】
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【図2.2】
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【公表番号】特表2009−538937(P2009−538937A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512385(P2009−512385)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000127
【国際公開番号】WO2007/137438
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(507308924)セエスウエム サントル スイス デレクトロニクエ ドゥ ミクロテクニク ソシエテ アノニム−ルシェルシェ エ デブロップマン (2)
【Fターム(参考)】