説明

1−アミノ−1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロヘキサンを調製する方法

本発明は、1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンと、チオ尿素と、水とを含む混合物を加熱するステップからなる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン(ネラメキサン)、またはその薬剤学的に許容可能な塩を生産する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン(ネラメキサン)またはその薬剤学的に許容可能な塩を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン(ネラメキサン)、及びその薬剤学的に許容可能な塩は、耳鳴症や眼震症といった疾患および症状を患う患者の持続的な治療のための有用な薬剤である。
【0003】
これらの薬剤を調製する複数の方法が既に知られている。
【0004】
一の方法においては、市販のイソホロンを、次の反応スキームによる5つのステップからなる一連の反応(反応シーケンス)により、ネラメキサンに変換する(W.Danyszら; Current Pharmaceutical Design, 2002, 8, 835-843)。
【化1】

【0005】
上記反応シーケンスの第一ステップにおいては、塩化銅触媒を用いたヨウ化メチルマグネシウムの共役付加によって、イソホロン(1)を3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン(2)に変換する。
【0006】
第二ステップにおいては、ヨウ化メチルマグネシウムを用いたグリニャール反応によって、3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン(2)を1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサノール(3)に変換する。
【0007】
第三ステップにおいては、リッター反応にて、クロロアセトニトリルにより上記のシクロヘキサノール(3)を1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン(6)に変換する。
【0008】
続く第四ステップ(ステップ(iv))においては、酢酸中にてチオ尿素でもってアミド(6)中のクロロアセトアミド基を開裂させる。反応シーケンスの最後である第五ステップにおいては、得られたアミンを塩酸でもって酸性化することで、塩酸塩型のネラメキサン(1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)(7)を生成させる。
【0009】
アミド(6)中のクロロアセトアミド基の開裂は、イルゲンソンス(Jirgensons)らによっても広範囲にわたって研究されている(Jirgensonsら; Synthesis 2000, No.12, 1709-1712)。それによると、エタノールと酢酸との5:1混合物中で1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを還流させた。10時間の反応後、反応混合物を水で希釈し、生成する沈殿物を分離した。ろ液をアルカリ性化し、ヘキサンで抽出した。塩酸の添加後、塩酸塩型の1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンが収率89重量%で単離された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Jirgensonsら; Synthesis 2000, No.12, 1709-1712.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一の目的は、経済的な工業規模での有利な実施を可能とする、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンまたはその薬剤学的に許容可能な塩の調製方法を提供すべく、上述の反応シーケンスにおける一つ一つの反応ステップのうちの一つまたは複数について、改良を加えることにある。他の目的は、ネラメキサンまたはその薬剤学的に許容可能な塩を製造する過程で生成する、廃棄物および/または未反応物質(すなわち、これらの少なくとも一方)の量を最小化することである。さらなる目的は、ネラメキサンまたはその薬剤学的に許容可能な塩についての、収率および/または選択性および/または生成物の品質(すなわち、これらのうちのいずれか、または任意の組み合わせ)につき、最適化または改善することである。特には、本願は、上記のステップ(iv)について、すなわち、1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとチオ尿素との反応について、改良を加えようとするものである。このような改良された方法は、経済的な工業規模でネラメキサン、またはその薬剤学的に許容可能な塩を有利に製造する上での必要条件であると考えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ステップ(iv)からなる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを調製する方法に関する。:
ステップ(iv):1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとチオ尿素と水とを含む混合物を反応させる。
【0013】
一実施形態において、前記混合物は実質的に有機溶媒を含まない。
【0014】
一実施形態において、チオ尿素と水との重量比が1:0.5〜1:50の範囲内である。
【0015】
他の一実施形態において、チオ尿素と水との重量比が1:1〜1:20の範囲内である。
【0016】
他の一実施形態において、チオ尿素と水との重量比が1:2〜1:10の範囲内である。
【0017】
一実施形態において、前記混合物にはさらに酸が含まれる。
【0018】
一実施形態において、前記混合物には水の量を基準として0.1〜20重量%の酸が含まれる。
【0019】
一実施形態において、前記酸は塩酸である。
【0020】
一実施形態において、50℃から前記混合物の還流温度までの範囲の温度に前記混合物を加熱する。
【0021】
一実施形態において、80℃から前記混合物の還流温度までの範囲の温度に前記混合物を加熱する。
【0022】
一実施形態において、1モルの1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン当たり、(1) 1.0〜2モルのチオ尿素と、(2) 1〜3モルの酸と、(3) チオ尿素及び1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの量を基準として500〜1,500重量%の水とを、還流温度で用いる。
【0023】
一実施形態において、前記混合物を加熱した後、pH値を7以上とするべく、アルカリを添加し、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを前記混合物から分離する。
【0024】
一実施形態において、前記方法は、ステップ(v)をさらに備える。:
ステップ(v):ステップ(iv)で得られた1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに酸を添加する。
【0025】
一実施形態において、前記酸はメタンスルホン酸である。
【発明の効果】
【0026】
従来技術の方法において開示された反応時間と比較して、本発明の方法によれば反応時間がかなり短縮されるということが期せずして明らかとなった。さらに、背景技術のセクションで述べた水の添加と沈殿物のろ過とが不要となるため、本発明の方法によれば、生成するアミンを抽出・分離する一連の操作がかなり単純化される。アミンの収率は高く、ほとんど定量的である。すなわち、この新規な方法は、経済的な工業規模で好ましく実施し得る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、ステップ(iv)からなる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを調製する方法に関する。:
ステップ(iv):1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとチオ尿素と水とを含む混合物を反応させる。
【0028】
一実施形態において、ステップ(iv)にて用いる混合物には、有機溶媒がさらに含まれる。
【0029】
一実施形態において、前記有機溶媒は、ステップ(iv)の反応条件下にて水混和性である溶媒であり、例えばアルコールといった溶媒である。
【0030】
一実施形態において、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、及びエチレングリコールからなるグループより選択されるアルコールである。
【0031】
一実施形態において、前記有機溶媒の量は、水の量を基準として0〜200重量%である。他の一実施形態において、前記有機溶媒の量は、水の量を基準として、0〜150重量%、0〜100重量%、0〜50重量%、0〜10重量%、または0〜5重量%である。
【0032】
他の一実施形態において、ステップ(iv)で用いる混合物は実質的に有機溶媒を含まないか、または有機溶媒を全く含まない。
【0033】
用語「実質的に有機溶媒を含まない」とは、前記混合物の有機溶媒含有量が、水の量を基準として0〜5重量%、0〜3重量%、または0〜1重量%であることを想定するものである。
【0034】
一実施形態において、チオ尿素と水との重量比は1:0.5〜1:50、1:1〜1:20、または1:2〜1:10の範囲内である。
【0035】
ステップ(iv)の反応は酸の添加なしに実施し得るが、1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンから1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン塩への変換は、酸の添加によって促進され得る。
【0036】
したがって、一実施形態において、ステップ(iv)の混合物には、さらに酸が含まれる。
【0037】
使用し得る酸は、塩酸、硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、及び安息香酸であるが、これらに限定されない。したがって、有機酸だけでなく無機酸も使用し得る。
【0038】
一実施形態において、ステップ(iv)の混合物に、酢酸が含まれない。
【0039】
何らかの酸を使用する場合、酸の使用量は、比較的広い範囲内にある。
【0040】
一実施形態において、ステップ(iv)の混合物は、水の量を基準として0.1〜20重量%の酸を含む。
【0041】
一実施形態において、使用する酸は塩酸である。
【0042】
1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの変換をさらに促進するために、ステップ(iv)で使用する混合物を加熱する。
【0043】
用語「加熱」とは、ステップ(iv)の混合物を周囲温度(25℃)よりも高温にすることを想定するものである。
【0044】
一実施形態において、ステップ(iv)の混合物を、50℃から前記混合物の還流温度までの範囲内の温度に加熱する。
【0045】
他の一実施形態において、前記混合物を、80℃から前記混合物の還流温度までの範囲内の温度に加熱する。
【0046】
さらに他の一実施形態において、前記混合物を前記混合物の還流温度にまで加熱する。
【0047】
ステップ(iv)において実質的に有機溶媒を含まない混合物を使用する場合、還流温度は通常100℃前後、すなわち95〜105℃の範囲内である。ステップ(iv)において有機溶媒を含む混合物を使用する場合の還流温度は、使用する有機溶媒の量及び沸点によって、水は含むが有機溶媒は実質的に含まない混合物の還流温度よりも、高温または低温であり得る。すなわち、使用する有機溶媒の量及び沸点によって、より高温、または、より低温であり得る。
【0048】
ステップ(iv)の1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンから1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンへの変換は、一般的なクロマトグラフィー法、例えばガス液体クロマトグラフィーによって管理し得る。
【0049】
一実施形態において、ステップ(iv)において、1モルの1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン当たり、(1) 1.0〜2モルのチオ尿素と、(2) 1〜3モルの酸と、(3) チオ尿素および1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを基準として500から1,500重量%の水とを還流温度で使用する。
【0050】
一実施形態において、上記変換は、6時間後に、5時間後に、または、たった4時間後にも、たった3時間後にも、または、3時間より短い時間の後にも、早くも終了する。
【0051】
一実施形態において、前記1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンと、約1.2モル当量のチオ尿素および2モル当量の塩酸とを、8倍量(チオ尿素及び1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを基準とした重量比)の水中で還流温度下において反応させる。
【0052】
ステップ(iv)における、水を含む混合物中での変換は、通常、比較的速く進行する。
【0053】
一実施形態において、ステップ(iv)を水中で実施する。すなわち、前記混合物が実質的に有機溶媒を含まない。また、加熱を、還流温度、すなわち100℃前後の温度で行う。さらには、酸を添加する。このような場合、変換は、2時間でも終了し得る。または、たった1時間でも終了し得る。
【0054】
前記変換が酸によって触媒される場合、生成したアミンの少なくとも一部、すなわち1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの少なくとも一部は、アミノ基のプロトン化によって水に溶解し、塩を形成する。
【0055】
一実施形態において、生成したアミンを単離するべく、本発明の方法は、(1) 前記混合物にアルカリを添加してpH値を7以上にすること、及び、(2) 前記混合物から1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを分離することを含む。
【0056】
前記実施形態において、前記アミンは、アルカリ添加後に水相から分離して出てくる。好ましくは前記混合物を冷却した後、水相から分離して出てくる。そして、前記アミンを分離しうる。
【0057】
他の一実施形態において、アルカリ添加後に、有機相と水相とを形成する前記混合物から、水非混和性の有機溶媒によって前記アミンを抽出し得る。適当な溶媒は、塩化メチレン、トルエン、または石油エーテルといった溶媒である。抽出後、硫酸ナトリウム等によって前記抽出物を乾燥(脱水)し得る。蒸発させて溶媒を除去した後、粗製アミンを得る。
【0058】
一実施形態において、粗生成物の収率は、ほぼ、理論値の95重量%よりも高いか、または、定量的な値に近いものである。前記粗生成物は、通常、95重量%以上、97重量%以上、または99重量%以上という非常に高い含量で、目標化合物を含む(ガス液体クロマトグラフィー試験による)。
【0059】
一実施形態において、必要に応じて蒸留により前記粗製アミンをさらに精製する。
【0060】
<1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンから1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン塩への変換(ステップ(v))>
次のステップにおいて、適当な酸を添加することによって、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンをその塩に変換し得る。一実施形態において、前記塩は薬剤学的に許容可能な塩である。
【0061】
本願開示の目的において、用語「薬剤学的に許容可能な塩」とは、ネラメキサン塩であてって、哺乳類生物(例えばヒト)へ投与された際に、生理学的に許容できるものであって、有害な反応を通常はもたらさないものをいう。用語「薬剤学的に許容可能な塩」は、通常、哺乳類生物、特にヒトに対する使用について、連邦政府または州政府の規制当局により承認されたもの、または、米国薬局方もしくは他の一般に承認された薬局方のリストに掲載されたものを意味する。
【0062】
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンからその薬剤学的に許容可能な塩への変換は、従来の方式により、該塩基と、1モル当量以上の選択された酸とを不活性な有機溶媒中にて混合することにより実現される。前記塩の単離は、塩の溶解度が低い非極性溶媒(例えばエーテル)によって沈殿を誘導するといった、当分野の公知技術により行われる。非毒性であって所望の薬理活性と実質的に干渉しない限り、前記塩の特質は、決定的に重要なものではない。
【0063】
薬剤学的に許容可能な塩の例は、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、及び、これらと同様の酸でもって形成される塩である。
【0064】
さらなる薬剤学的に許容可能な塩には次のような酸の付加塩が含まれるが、これらに限定されない。すなわち、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、フマル酸、酒石酸、安息香酸、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリシクリック酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、及び2-アセトキシ安息香酸といった酸でもって形成される酸付加塩が含まれる。
【0065】
一実施形態において、ステップ(iv)で生成し単離した1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを、前記溶媒のうちの、一つの溶媒、または複数の溶媒の混合物の中に、溶解または分散もしくは懸濁する。
【0066】
適当な溶媒は、アセトン、アニソール、酢酸ブチル、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ペンタン、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、及びメチルテトラヒドロフランといった溶媒である。
【0067】
一実施形態において、メチルエチルケトンと水との混合物といった、溶媒と水との混合物を使用してもよい。
【0068】
溶解または分散もしくは懸濁に続いて、塩の形成を可能にするために適当な酸を添加する。前記酸は、上記に規定する溶媒の一つまたは複数の中に溶解または分散もしくは懸濁し得る。
【0069】
沈殿及び/または結晶化した上記の塩は、ろ過によって反応混合物から分離し得る。
【0070】
このような沈殿物に付着する溶媒は、減圧及び/または加熱によって除去し得る。
【0071】
一実施形態において、使用する酸は、塩酸またはメタンスルホン酸であり、塩は、塩酸塩またはメシラートである。
【0072】
一実施形態において、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに、メタンスルホン酸を添加する。
【0073】
一実施形態において、塩の収率は95重量%より高く、99.9重量%以上の純度を有する。
【実施例】
【0074】
<実施例1>
245gの1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンと、91gのチオ尿素と、2,700gの水と、220gの塩酸(33%酸)との混合物を、還流下で加熱する。6時間の反応後、前記混合物を周囲温度にまで冷却する。そして、水酸化ナトリウムを添加して前記混合物のpH値を7より高くする。次いで、前記混合物について、2回、石油エーテルでもって抽出を行う。2回の抽出の抽出液を合併する。石油エーテルを蒸留除去した後、159gの粗製1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンが得られる(収率97%)。この粗生成物は、97重量%の目標化合物を含有する(ガス液体クロマトグラフィー試験による)。次に、この粗生成物をさらに精製するべく、蒸留を行う。
【0075】
<実施例2>
実施例1を繰り返す。粗製目標化合物の収率は100%であり、目標化合物の含有量は99重量%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップ(iv)からなる、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、またはその薬剤学的に許容可能な塩を調製する方法。
ステップ(iv):1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとチオ尿素と水とを含む混合物を反応させる。
【請求項2】
前記混合物が実質的に有機溶媒を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
チオ尿素と水との重量比が1:0.5〜1:50の範囲内である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
チオ尿素と水との重量比が1:1〜1:20の範囲内である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
チオ尿素と水との重量比が1:2〜1:10の範囲内である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記混合物がさらに酸を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が、水の量を基準として0.1〜20重量%の量の酸を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸が塩酸である請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、50℃から前記混合物の還流温度までの範囲内の温度にまで加熱される請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記混合物が、80℃から前記混合物の還流温度までの範囲内の温度にまで加熱される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(iv)において、1モルの1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン当たり、1.0〜2モルのチオ尿素と、1〜3モルの酸と、チオ尿素及び1-クロロアセトアミド-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンの量を基準として500〜1,500重量%の水とが還流温度で用いられる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記混合物にアルカリを添加してpH値を7以上とすること、及び、前記混合物から1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンを分離することをさらに含む請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
下記ステップ(v)をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
ステップ(v):ステップ(iv)で得られた1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンに、酸を加える。
【請求項14】
前記酸がメタンスルホン酸である請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2012−531390(P2012−531390A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516588(P2012−516588)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003924
【国際公開番号】WO2011/000541
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(509295413)メルツ・ファルマ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲーアーアー (14)
【Fターム(参考)】