説明

1塩基多型の検出法

【課題】本発明は、核酸の1塩基多型の検出方法を提供する。
【解決手段】核酸の1塩基多型を検出するための方法であって、少なくとも1つのLNA(locked nucleic acid)を含み、かつ、該1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む10〜50塩基長からなる第1のプライマーと、該第1のプライマーを挟むように該核酸にアニーリング可能な10〜50塩基長からなる第2、第3等の複数のプライマーとを含む、合計3種またはそれ以上の10〜50塩基長のプライマーを用いたPCR反応によって、該核酸の断片を増幅し、1塩基多型を検出することを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の1塩基多型の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子型を核酸レベルで識別する様々な方法が開発され、医学、法医学、農学などの分野で利用されている。農業分野では品種の識別や育種における選抜マーカーあるいは病害の診断などで実用に使われ効力を発揮している。このうち核酸の1塩基多型、例えば1塩基置換は、頻度高く存在するので利用価値が高い反面、検出に特別な機器を必要とするか、あるいは煩雑な手順を必要とするなどの課題がある。
【0003】
LNA(locked nucleic acid)は、DNAに比較して相補的な塩基との水素結合が強固になる特徴を有している(特許文献1、2)。このように塩基特異性の向上が期待されるので、PCR反応により1塩基多型を検出する方法の検討がなされ(特許文献3、4)、後述のようないくつかの方法が考案されている。(i)通常のPCR反応で増幅した核酸について、6〜7塩基からなるLNAプローブとのハイブリダイゼーションのしやすさを検出する方法(非特許文献1)。(ii)プライマーの中央当たりに1〜数塩基のLNA塩基を入れることによりPCRを行う方法(非特許文献2)。(iii)プライマーの3’端に検出すべき多型塩基を配置しこの位置にLNA塩基を用いたプライマーを使ったPCR反応による方法(非特許文献3、4)。(iv)検出すべき多型をプライマーの3’末端に配置し、これより1塩基内側の塩基にLNAを用いたプライマーによるPCRによる方法。このPCRの場合プルーフリーディング酵素を利用しないと検出できないことが記載されている(非特許文献5)。
【0004】
1塩基多型を検出する場合、これら各種の方法のうち、例えば通常のPCR反応により検討している(iv)の方法を実際に用いてみると、特異性が十分ではないか、あるいは、特異性はみられるがLNAをプライマー内に含むことが要因でPCR反応の増幅効率が低く、そのためPCRサイクル数増加や試薬量増量等の対策で増幅効率を向上しようとすると、代わりに特異性が減じてしまうことがあり、いずれにせよ多型を区別することが困難となる課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO02/018388
【特許文献2】特表2002-521310
【特許文献3】特表2002-539801
【特許文献4】特表2005-514005
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nucleic Acids Research (2002),30:e91
【非特許文献2】Mol Cell Probes (2003) 17:253-259
【非特許文献3】Plant Methods (2007) 3 :2(http://www.plantmethods.com/content/3/1/2)
【非特許文献4】Human mutation (2003) 22:79-85
【非特許文献5】Nucleic Acids Research (2004),32:e32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、1塩基置換の簡便な検出は頻度高く存在する多型を利用するために重要な技術である。LNAの利用はこのような1塩基置換の検出を実現すると期待されるが、通常のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に利用しようとすると特異性と増幅効率両方を満足させることができない場合が多い。また、1塩基挿入や1塩基欠失の検出は、1塩基置換に比べさらに特異性をもたせることが困難である。
【0008】
本発明は、1塩基多型、特に1塩基置換、1塩基挿入および1塩基欠失、のPCRによる通常の増幅効率を維持もしくは向上させながら高い特異性を付与する検出法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、一般化しているPCR反応を用い、従前に比べ特異性を減じることなく十分な増幅を確保し簡便に1塩基多型、例えば1塩基置換、1塩基欠失あるいは1塩基挿入、を検出する方法を提供する。目的とする1塩基多型に特異的な核酸断片を増幅するためのプライマー対と、目的とする1塩基多型を含む核酸断片を増幅するためのプライマー対とを添加し、PCR反応により該核酸断片の鋳型を増幅しながら、同時に、目的とする1塩基多型に特異的なPCR反応を行うことが可能である。このようにして特異性を確保した上で増幅効率を向上することが達成される。
【0010】
本発明の特徴は、プライマーの特定の位置にLNAを含み、かつ、核酸の1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む10〜50塩基からなるプライマーを含む、合計3種以上の10〜50塩基からなるプライマーを用いたPCR反応により1塩基多型を検出することにある。本発明を利用することにより、1塩基置換、1塩基欠失、1塩基挿入、マイクロサテライトの多型などの1塩基多型を、通常のPCR反応とそれに続く増幅産物の解析により特異的に検出することが可能となる。
【0011】
本発明は、要約すると、以下の特徴を包含する。
すなわち、本発明は、その一態様において、核酸の1塩基多型を検出するための方法であって、少なくとも1つのLNAを含み、かつ、該1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む10〜50塩基長からなる第1のプライマーと、該第1のプライマーを挟むように該核酸にアニーリング可能な10〜50塩基長からなる第2、第3等の複数のプライマーとを含む、合計3種またはそれ以上の10〜50塩基長のプライマーを用いたPCR反応によって、該核酸の断片を増幅し、1塩基多型を検出することを含む方法を提供する。1塩基多型の検出のためには、例えば電気泳動法などの、増幅核酸断片のサイズに基づく方法を使用できる。また、プライマーに蛍光標識を付けることで識別する等の方法も使用できる。
【0012】
その実施形態において、上記1塩基多型が、1塩基置換、1塩基欠失、1塩基挿入、またはマイクロサテライトの多型である。
【0013】
別の実施形態において、上記1塩基多型部位において他の多型を示す核酸断片を増幅するための第4のプライマーをさらに含み、該第4のプライマーは、少なくとも1つのLNAを含み、かつ、上記第2の1塩基多型の塩基に相当する塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む10〜50塩基長からなるプライマーであり、上記第2、第3等の複数のプライマーのうち適するプライマーとプライマー対を形成することができるプライマーである。
【0014】
別の実施形態において、上記第1のプライマーの3’末端が、上記核酸の上記1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基であり、上記LNAが、上記第1のプライマーの3’末端の塩基の5’側の、少なくとも1番目の塩基または少なくとも1番目および2番目の塩基である。
【0015】
上記1塩基多型が1塩基欠失である場合、上記第1のプライマーの3’末端が、上記核酸の該1塩基欠失部位の3’側の1番目の塩基であり、上記LNAが、上記第1のプライマーの3’末端の塩基の5’側の、少なくとも1番目の塩基または少なくとも1番目および2番目の塩基である。
【0016】
別の実施形態において、上記1塩基多型が連続同一塩基からなる配列の多型である場合、上記第1のプライマーの3’末端が、上記核酸の該連続同一塩基の3’側に隣接する1番目の塩基であり、上記LNAが、少なくとも上記第1のプライマーの3’末端および上記核酸の該連続同一塩基の両端の塩基、および該連続同一塩基の5’側に隣接する1番目の塩基である。
【発明の効果】
【0017】
1塩基置換、1塩基欠失、1塩基挿入、またはマイクロサテライトの多型を通常のPCRで十分な正確さと感度で検出可能とするには、特異性を維持しつつ増幅を確保する必要がある。本発明は、PCR反応により、鋳型DNAを増幅しながら目的とする1塩基置換、1塩基欠失、1塩基挿入、またはマイクロサテライトの多型などの1塩基多型を特異的にかつ高精度で検出することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】トマトのdg変異の検出を示す。A:検出の模式図であり、Laはアデニンを塩基としたLNA、Lgはグアニンを塩基としたLNAを表す。B:検出結果を示し、MWは分子量マーカーとして用いたφX174DNAのHinCII分解物である。
【図2】酵母のflo8遺伝子変異の検出を示す。A:検出の模式図であり、Lcはシトシンを塩基としたLNAを表す。B:検出結果を示し、MWは分子量マーカーとして用いたφX174DNAのHinCII分解物である。プライマー2種では、プライマー5とプライマー7を使用し、プライマー3種では、プライマー5、プライマー6、プライマー7を使用した。
【図3】酵母野生型FLO8遺伝子の検出を示す。A:検出の模式図であり、Lgはグアニンを塩基としたLNA、Ltはチミンを塩基としたLNAをそれぞれ表す。B:検出結果を示し、MWは分子量マーカーとして用いたφX174DNAのHinCII分解物である。プライマー2種では、プライマー6とプライマー8を使用し、プライマー3種では、プライマー5、プライマー6、プライマー8を使用した。
【図4】トマトの野生型リコピンβ−シクラーゼ遺伝子の検出を示す。A:検出の模式図であり、Lcはシトシンを塩基としたLNA、Laはアデニンを塩基としたLNA、Ltはチミンを塩基としたLNAをそれぞれ表す。B:検出結果を示し、MWは分子量マーカーとして用いたφX174DNAのHinCII分解物である。
【図5】トマトogc変異遺伝子および野生型リコピンβ−シクラーゼ遺伝子の同時検出を示す。A:検出の模式図であり、Lcはシトシンを塩基としたLNA、Laはアデニンを塩基としたLNA、Ltはチミンを塩基としたLNA、Lgはグアニンを塩基としたLNAをそれぞれ表す。B:検出結果を示し、MWは分子量マーカーとして用いたφX174DNAのHinCII分解物である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について説明する。
本明細書で使用する用語は、以下の定義を包含する。
【0020】
「核酸」は、1本鎖または2本鎖のいずれでもよく、および、DNAまたはRNAを表す。DNAは、ゲノムDNA、cDNAなどを含み、RNAは、rRNA、tRNA、mRNAなどを含む。
【0021】
「1塩基多型」(SNP;single nucleotide polymorphism)は、核酸の塩基配列の中のある1塩基に変異(特に、置換)があることをいい、置換、欠失、付加または挿入により生じる。例えば、個体差(例えばヒトでは、個人差、人種間の差異など)の比較や病気の罹りやすさに関わるジェノタイピング(genotyping)のためにその検出が利用される。
【0022】
「LNA」(locked nucleic acid)は、リボ核酸の4’−C位と2’−O位との間にメチレン架橋が形成された2つの環状構造を有する核酸アナログである。
【0023】
「マイクロサテライト」は、特に真核生物のゲノム上において見られる、モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサヌクレオチド、などの繰り返しからなるポリヌクレオチドの配列を指す。
【0024】
「相補的塩基」は、センス鎖上の特定の塩基と対合することができるアンチセンス鎖上の塩基をいう。
【0025】
「センスプライマー」および「アンチセンスプライマー」はそれぞれ、核酸のセンス鎖配列の一部と同等の塩基配列からなるプライマー、核酸のアンチセンス鎖配列の一部と同等の塩基配列からなるプライマーをいう。
【0026】
本発明を以下においてさらに詳細に説明する。
上記のとおり、本発明は、核酸の1塩基多型を検出するための方法であって、少なくとも1つのLNAを含み、かつ、該1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む10〜50塩基長からなる第1のプライマーと、該第1のプライマーを挟むように該核酸にアニーリング可能な10〜50塩基長からなる第2、第3等の複数のプライマーとを含む、合計3種またはそれ以上の10〜50塩基長のプライマーを用いたPCR反応によって、該核酸の断片を増幅し、1塩基多型を検出することを含む方法を提供する。
【0027】
本発明の方法では、3種以上、例えば3種または4種、のプライマーを使用する。プライマーは、(i) 少なくとも1つのLNAを含み、かつ、該1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む第1のプライマーであって、適するサイズの核酸断片の増幅を可能にする1種類以上のプライマー、および(ii) 該第1のプライマーを挟むように該核酸にアニーリング可能な第2、第3等のプライマーであって、適するサイズの核酸断片の増幅を可能にする2種類以上のプライマー、を含む。ここで、第2および第3のプライマーは互いに対向し、核酸断片の増幅を可能にするプライマーであり、第1のプライマーは第2または第3のプライマーのいずれかと対向し、核酸断片の増幅を可能にするプライマーである。
【0028】
上記プライマーの他に、(iii)該1塩基多型部位において他の多型を有する核酸断片を増幅するための第4のプライマーをさらに含むことができる。この第4のプライマーは、少なくとも1つのLNAを含み、かつ、上記1塩基多型の塩基に相当する塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含むプライマーであり、上記第2および第3のプライマーのうち適するプライマーとプライマー対を形成することができるプライマーである。
【0029】
上記(i)、(ii)および(iii)のプライマーは、10〜50塩基、好ましくは15〜30塩基、より好ましくは17〜25塩基の塩基長を有する。具体的には、プライマーは、例えば図1〜図5に記載されるように、野生型核酸または変異型核酸に対して配置される3種または4種のプライマーとして設計され得る。
【0030】
本発明では、増幅産物(すなわち、増幅核酸断片)は、そのサイズに基づく方法、例えばアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの電気泳動、ゲルろ過などのサイズ排除クロマトグラフィー、HPLCなど、を利用して検出することが好ましい。例えば電気泳動法の場合、増幅産物のラダーを得たのち、臭化エチジウム染色にてバンドを検出することができる。上記検出法の場合、変異型核酸の増幅産物と野生型核酸の増幅産物の各バンドの位置が視覚的に差異を有するべきであり、これによって増幅産物のバンド位置から変異型か野生型かを識別することが可能である(図1B、図2Bなど)。したがって、プライマーの設計の際には、増幅産物のサイズを考慮しながらプライマーのアニーリング位置および配列を決定することが望ましい。各プライマー対は、限定されないが、例えば、1塩基多型部位を挟む約100bp〜約3,000bp、好ましくは約200bp〜約1,000bpの核酸断片を増幅できるように設計される。
【0031】
核酸は、上記定義のとおりDNAまたはRNAのいずれでもよく、またRNAの場合にはcDNAに変換されてもよく、さらにまたそれらの由来も特に制限されないものとし、動物、植物、微生物などを含むあらゆる生物由来、またはウイルス由来、の核酸である。被検用核酸は、生物の細胞、組織または体液、ウイルス粒子などから公知の手法によって調製することができる。DNAの場合、例えばフェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿によって得ることができるし、RNAの場合、例えばSDS/フェノール、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールなどによる抽出とエタノール沈殿によって得ることができる。DNAまたはRNAの抽出のためのキットが市販されているため、そのような抽出キットを使用してもよい。
【0032】
本発明で特徴的なプライマーは、LNAを含む第1のプライマーである。
本発明の実施形態において、上記第1のプライマーは、その3’末端が、上記核酸の上記1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基であり、上記LNAが、上記第1のプライマーの3’末端の塩基の5’側の、少なくとも1番目の塩基または少なくとも1番目および2番目の塩基である。このようなプライマーの例は、図1のプライマー3または図2のプライマー7である。この場合、1塩基多型は、例えば1塩基置換または1塩基挿入であり、この場合、該1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基がプライマーの3’末端に配置される。プライマーは、センスプライマー、アンチセンスプライマー、またはその両方である。
【0033】
上記第1のプライマーの特定例において、上記1塩基多型が1塩基欠失である場合、上記第1のプライマーは、その3’末端に配置された、欠失の結果元の配列とずれが生じてしまう塩基から数えて少なくとも2番目の塩基をLNAとして含むことができる。言い換えれば、この例の第1のプライマーは、その3’末端が、上記核酸の該1塩基欠失部位の3’側の1番目の塩基であり、上記LNAが、上記第1のプライマーの3’末端の塩基の5’側の、少なくとも1番目の塩基または少なくとも1番目および2番目の塩基である。
【0034】
あるいは、上記1塩基多型が連続同一塩基からなる配列の多型である場合、上記第1のプライマーの3’末端が、上記核酸の該連続同一塩基の3’側に隣接する1番目の塩基であり、上記LNAが、少なくとも上記第1のプライマーの3’末端および上記核酸の該連続同一塩基の両端の塩基、および該連続同一塩基の5’側に隣接する1番目の塩基である。このようなプライマーの例は、図4のプライマー11、図5のプライマー11、12である。図5の例では、同一塩基の繰り返しからなるマイクロサテライトの配列における同一塩基の挿入(Ax9)または欠失(Ax8)が検出されうることが示されている(例えば、図5Bの野生型遺伝子の増幅DNAバンドとogc遺伝子の増幅DNAバンドの比較)。
【0035】
上記のとおり、本発明の上記(ii)のプライマーは、核酸の1塩基多型部位もしくはその相補的部位を含む第1のプライマーを挟むように設計された少なくとも2種のプライマーであり、それらはともにプライマー対を構成する。また、それらのいずれか片方は上記(i)の第1のプライマーとともにプライマー対を構成する。例えば図1の場合、上記(i)の第1のプライマーはプライマー3であり、上記(ii)の第2および第3のプライマーはプライマー1とプライマー2であり、上記(iii)のプライマーはプライマー4である。
【0036】
増幅産物は、プライマー1とプライマー2、プライマー1とプライマー3、およびプライマー2とプライマー4、のそれぞれのプライマー対から増幅される3つのバンドによって示される(図1B)。
【0037】
本発明で使用されるプライマーは、上記(ii)のプライマーの場合、ホスホアミダイト法などのポリヌクレオチドの合成法を応用した市販の自動核酸合成機を使用することによって作製されうるし、また、上記(i)、(iii)および(iv)のプライマーの場合も、同様に、ホスホアミダイト化学を用いて作製可能であるし、自動合成も可能である。なお、プライマーに含まれるLNAは市販されており、また、LNAを含むポリヌクレオチドの受託合成も行われている。
【0038】
本発明の方法の手順の例は、まず、検出すべき1塩基置換、1塩基欠失、1塩基挿入、マイクロサテライトの多型などの1塩基多型を含む核酸試料を調製する。試料となる核酸は生物またはウイルスに由来するサンプルから抽出されたDNAおよびRNAであるが、RNAの場合は逆転写酵素によりcDNAを合成し用いてもよい。核酸の抽出方法は、上記の公知の手法を利用しうる。cDNA合成も以降のPCR反応が起こる限りどのような方法を利用してもよい。次に、試料となるDNAまたはcDNAを鋳型に用い、目的とする1塩基多型に特異的なDNA断片を増幅させるためのプライマー対および目的とするDNA断片を含む断片を増幅するためのプライマー対を使用してPCR増幅反応を行う。
【0039】
PCRの反応条件としては、通常利用される条件を使用することができる。PCR反応は、耐熱性DNAポリメラーゼを使用する酵素反応であり、反応に必要な成分には、耐熱性DNAポリメラーゼの他に、PCRバッファー(Tris−HCl(例えば、約pH8.3)、KCl、MgClを含有する)、dNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)、PCRプライマー、鋳型核酸(通常、DNA)が含まれる。プライマーの性状により温度条件が、増幅されるDNA断片の長さにより時間が、期待する増幅の量によりサイクル数が、それぞれ設定される。また、用いるDNAポリメラーゼはPCR用に利用される耐熱性酵素であればいずれを用いてもよい。そのような耐熱性DNAポリメラーゼの例には、Taqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼなどが含まれる。このような耐熱性酵素は市販されているので、それらをPCR法に使用することができる。
【0040】
PCR反応は、市販のサーマルサイクラー装置を使用し、反応条件を設定することによって行うことができる。反応サイクルの前に、94℃〜96℃で約1分〜約5分の加熱変性処理を行ったのちに、変性(94℃〜96℃で10秒〜60秒)、アニーリング(55℃〜65℃で10秒〜60秒)および伸長(通常、72℃で30秒〜10分)を1サイクルとして20〜50サイクルを実施し、そのあとで、72℃で2分〜10分の最終伸長反応を実施する。例えば、95℃、2分→(95℃、30秒→60℃、30秒→72℃、30秒)×30サイクル→72℃、5分などの条件を利用し得る。
【0041】
得られた増幅DNA断片は、上記のような電気泳動などの分子サイズ分析が可能な手法を用い、エチジウムブロマイド染色法などを用いて可視化することができる。この場合、可視化された結果に、増幅されたDNA断片の量(例えば、ピークの大きさ、バンドの濃度など)と分子サイズの情報が存在すればいかなる手法を用いて可視化してもよい。設計されたプライマーから期待される大きさの増幅DNA断片の有無により、1塩基多型の存在または有無を評価することが可能である。
【0042】
本発明の方法によって、核酸の1塩基多型、すなわち1塩基置換、1塩基欠失または1塩基挿入を、増幅効率を維持もしくは向上させながら特異的にかつ高精度で検出可能である。また、マイクロサテライトにおける多型も検出可能であり、特に連続する同一塩基の繰り返し配列における1塩基の欠失または挿入を検出することも可能にする。すなわち、例えば、5連続アデニン塩基((A)5)と4連続アデニン塩基((A)4)の識別が可能である。
【0043】
(実施例)
次に、本発明を、下記の実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明の技術的範囲を何ら特定するものではない。
【0044】
以下の実施例に利用したトマトゲノムDNAは、トマト品種・系統「LA2451」、「Tropic」、「NT604」の本葉を材料に、「DNeasy Plant Mini Kits」(QIAGEN社)を使用し添付のプロトコールに従い抽出した。抽出したDNAは、50ng/μl前後に濃度を調整し使用した。なおトマト系統「LA2451」およびトマト品種「Tropic」は、Tomato Genetics Resource Centerから入手可能である。アクセッション番号はそれぞれLA2451、LA2803である。また、「NT604」は株式会社ナガノトマトから入手可能である。
【0045】
また、以下の実施例に利用した酵母DNAは、酵母菌株「S288C」、「ATCC 60715」をYPD培地で一晩培養し、「Genとるくん(酵母用)」(タカラバイオ株式会社)を使用し添付のプロトコールに従い抽出し200μlのTEバッファーに溶解した。得られたDNAに、終濃度が10μg/mlとなるようにRNase(Ribonuclease (DNase free) Glycerol Solution, Nippon Gene)を加え室温で15分放置した。その後、等量のイソプロパノールを加え混和した後、14,000rpmで10分遠心し沈殿を得た。沈殿に70%エタノール250μlを加え、14,000rpmで5分遠心し、上清を捨て沈殿を風乾し、50μlのTEバッファーに溶解した。抽出したDNAは、40ng/μl前後に濃度を調整し使用した。なお、「S288C」、「ATCC 60715」は、いずれもATCCより入手可能である。それぞれのATCC No.は、26108、60715である。
【0046】
[実施例1]
1塩基多型の検出(転換塩基の検出:AからTへの変異)
トマトのdg変異は、TDET1遺伝子の第2エクソン内にあるAからTへの1塩基変異(塩基転換)によることが報告されている(Theor Appl Genet (2003) 106:454-460, WO 03/057917)。
【0047】
この変異を特異的に検出すべく、dg変異をもつトマト系統「LA2451」およびdg変異を持たないトマト品種「Tropic」のDNAを用い、以下のプライマーによるPCR反応を行った(図1A)。
【0048】
プライマー1、プライマー2:両プライマーを組み合わせて利用することで、検出すべき1塩基多型を含むDNA部分約1kbを増幅するように設計されたプライマー対。
【0049】
プライマー3:検出すべき1塩基多型(dg変異)を3’末端に配置し3’末端から2塩基目をLNAとしたプライマー。プライマー1との組み合わせでdg変異のあるDNA断片約0.4kbを特異的に増幅するように設計した。
【0050】
プライマー4:検出すべき1塩基多型(野生型)を3’末端に配置し3’末端から2塩基目をLNAとしたプライマー。プライマー2との組み合わせで野生型のDNA断片約0.6kbを特異的に増幅するように設計した。
プライマー1(配列番号1):5’-TTCTTCACTgCTTATTgg-3’
プライマー2(配列番号2):5’-AATgCTATgTgCCAAATTA-3’
プライマー3(配列番号3):5’-TATggTATAACTTggTACAACLgA-3’(Lgはグアニン塩基をもつLNA)
プライマー4(配列番号4):5’-CgTgCCAgAAgATTTTATgAgLaA-3’(Laはアデニン塩基をもつLNA)
【0051】
PCR反応は、サンプルDNA1μl、10×Ex Taqバッファー(タカラバイオ株式会社)2μl、2.5mM dNTPミックス2μl、Ex Taq(タカラバイオ株式会社)0.1μl、20μMのプライマー各々0.5μl、水12.9μlからなる反応液で実施した。また、95℃・2分の後に(95℃・30秒→56℃・30秒→72℃・30秒)を35サイクル行い最後に72℃で5分反応させた。得られた反応産物10μlを2%アガロースゲル電気泳動(TAEバッファー、100V、30分)により分離し、エチジウムブロマイド染色の後、紫外線下でDNA断片を検出した。
【0052】
図1Bに示すように、dg変異遺伝子をもつトマト系統「LA2451」では約0.4kbに、TDET1遺伝子が野生型であるトマト品種「Tropic」では約0.6kbに十分な量の増幅DNA断片がみられた。このように、両遺伝子それぞれを特異的に検出することが可能であった。
【0053】
[実施例2]
1塩基多型の検出(転位塩基の検出:GからAへの変異)(その1)
酵母のflo8変異は、コーディング塩基配列の608塩基目が、GからAへの1塩基変異(塩基転位)によることが報告されている(Genetics (1996) 144:967-978、Mol Gen Genet. (1996) 251:707-715)。この変異を特異的に検出すべく、flo8変異を持つ酵母菌株「S288C」およびflo8変異を持たない菌株「ATCC 60715」のDNAを用い、以下のプライマーによるPCR反応を行った(図2A)。
【0054】
プライマー5、プライマー6:両プライマーを組み合わせて利用することで、検出すべき1塩基多型を含むDNA部分約0.6kbを増幅するように設計されたプライマー対。
【0055】
プライマー7:検出すべき1塩基多型(flo8変異)を3’末端に配置し3’末端から2塩基目をLNAとしたプライマー。プライマー5との組み合わせでflo8変異のあるDNA断片約0.2kbを特異的に増幅するように設計した。
プライマー5(配列番号5):5’-CTTTCTTACgAAgTCgTCT-3’
プライマー6(配列番号6):5’-TggCCAgCCAgTAACgT-3’
プライマー7(配列番号7):5’-AAGATGTCCCAGAATATTTGLcT-3’(Lcはシトシン塩基をもつLNA)
【0056】
PCR反応は、サンプルDNA1μl、10xEx Taqバッファー(タカラバイオ株式会社)2μl、2.5mM dNTPミックス2μl、Ex Taq(タカラバイオ株式会社)0.1μl、20μMのプライマー各々0.5μl、水13.4μlからなる反応液で実施した。また、95℃・2分の後に(95℃・30秒→56℃・30秒→72℃・30秒)を35サイクル行い最後に72℃で5分反応させた。得られた反応産物10μlを2%アガロースゲル電気泳動(TAEバッファー、100V、30分)により分離し、エチジウムブロマイド染色の後、紫外線下でDNA断片を検出した。
【0057】
比較例としてプライマー5とプライマー7の2種のみを用い、他の条件を上記と同一としたPCR産物を同時に電気泳動し可視化した。
【0058】
図2Bに示すように、3種のプライマーを用いた場合、flo8変異遺伝子をもつ酵母菌株「S288C」特異的に約0.2kbに十分な量の増幅DNA断片がみられた。このように、flo8遺伝子を特異的に検出することが可能であった。しかし、2種のプライマーのみでPCR反応を行った場合には、DNA断片の増幅はみられるものの特異性がなく「S288C」、「ATCC 60715」両サンプルとも増幅してしまった。1塩基多型を含むDNA断片を増幅しながら1塩基多型特異的なPCRを実施することにより、偶然に非特異的な増幅がみられた場合でも常に正確な1塩基多型をもつ鋳型DNA断片の存在割合が高く維持される。その結果、特異的増幅断片の割合が非特異的増幅断片に比べとても高くなり、1塩基多型特異的な増幅が可能となったと考えられる。
【0059】
[実施例3]
1塩基多型の検出(転位塩基の検出:GからAへの変異)(その2)
実施例2に示したflo8遺伝子のみならず野生型遺伝子を検出すべく、flo8変異を持つ酵母菌株「S288C」およびflo8変異を持たない菌株「ATCC 60715」のDNAを用い、以下のプライマーによるPCR反応を行った(図3A)。
【0060】
プライマー5、プライマー6:両プライマーを組み合わせて利用することで、検出すべき1塩基多型を含むDNA部分約0.6kbを増幅するように設計されたプライマー対。
【0061】
プライマー8:検出すべき1塩基多型(野生型遺伝子)を3’末端に配置し3’末端から2塩基目および3塩基目をLNAとしたプライマー。プライマー6との組み合わせでFLO8遺伝子が野生型であるDNA断片約0.45kbを特異的に増幅するように設計した。
プライマー5(配列番号5):5’-CTTTCTTACgAAgTCgTCT-3’
プライマー6(配列番号6):5’-TggCCAgCCAgTAACgT-3’
プライマー8(配列番号8):5’- CAAggCTTTTTgTATgAATgLgLtg-3’
(Lgはグアニン塩基をもつLNA、Ltはチミン塩基をもつLNA)
【0062】
PCR反応は、サンプルDNA1μl、10×Ex Taqバッファー(タカラバイオ株式会社)2μl、2.5mM dNTPミックス2μl、Ex Taq(タカラバイオ株式会社)0.1μl、20μMのプライマー各々0.5μl、水13.4μlからなる反応液で実施した。また、95℃・2分の後に(95℃・30秒→56℃・30秒→72℃・30秒)を35サイクル行い最後に72℃で5分反応させた。得られた反応産物10μlを2%アガロースゲル電気泳動(TAEバッファー、100V、30分)により分離し、エチジウムブロマイド染色の後、紫外線下でDNA断片を検出した。
【0063】
比較例としてプライマー6とプライマー8の2種のみを用い、他の条件を上記と同一としたPCR産物を同時に電気泳動し可視化した。
【0064】
図3Bに示すように、3種のプライマーを用いた場合、FLO8遺伝子が野生型である酵母菌株「ATCC 60715」特異的に約0.45kbに十分な量の増幅DNA断片がみられた。このように、FLO8遺伝子(野生型遺伝子)を特異的に検出することが可能であった。しかし、2種のプライマーのみでPCR反応を行った場合には、DNA断片の増幅はみられるものの特異性がなく「S288C」、「ATCC 60715」両サンプルとも増幅してしまった。1塩基多型を含むDNA断片を増幅しながら1塩基多型特異的なPCRを実施することにより、偶然に非特異的な増幅がみられた場合でも常に正確な1塩基多型をもつ鋳型DNA断片の存在割合が高く維持される。その結果、特異的増幅断片の割合が非特異的増幅断片に比べても高くなり、1塩基多型特異的な増幅が可能となったと考えられる。
【0065】
[実施例4]
1塩基挿入の検出
トマトのogc変異は、リコピンβ−シクラーゼのエクソンにある1塩基欠失によるフレームシフトによることが報告されている。野生型でアデニン残基(A)が9塩基連続する部分が、変異遺伝子では8塩基連続となっている(PNAS (2000) 97: 11102-11107)。ogc変異の検出は、Aが9連続するか8連続するかを識別する必要があり、困難であるとされているが、プライマーにミスマッチを導入することで解決しようという試みが報告されている(特開2009-50214)。
【0066】
野生型遺伝子(変異遺伝子に対して1塩基挿入)を特異的に検出すべく、ogc変異を持つトマト品種「NT604」およびogc変異を持たないトマト品種「Tropic」のDNAを用い、以下のプライマーによるPCR反応を行った(図4A)。
【0067】
プライマー9、プライマー10:両プライマーを組み合わせて利用することで、検出すべき1塩基挿入を含むDNA部分約0.9kbを増幅するように設計されたプライマー対。
プライマー11:検出すべきA×9塩基(野生型)の次の塩基を3’端とし、連続塩基の両端およびその前後1塩基をLNAとしたプライマー。プライマー10との組み合わせで野生型のDNA断片約0.6kbを特異的に増幅するように設計した。
プライマー9(配列番号9):5’-TAgCTTAgCAAAgATTCC-3’
プライマー10(配列番号10):5’-ACTTgCATCCACAACC-3’
プライマー11(配列番号11):5’-AAgTCCCACCACLcLaAAAAAAALaLt-3’
(Lc,La,Ltはそれぞれシトシン塩基,アデニン塩基,チミン塩基をもつLNA)
【0068】
PCR反応は、サンプルDNA1μl、10×Ex Taqバッファー(タカラバイオ株式会社)2μl、2.5mM dNTPミックス2μl、Ex Taq(タカラバイオ株式会社)0.1μl、20μMのプライマー各々0.5μl、水13.4μlからなる反応液で実施した。また、95℃・2分の後に(95℃・30秒→62℃・30秒→72℃・30秒)を15サイクル行い、さらに(95℃・30秒→60℃・30秒→72℃・30秒)を25サイクル行った後に72℃で5分反応させた。得られた反応産物10μlを2%アガロースゲル電気泳動(TAEバッファー、100V、30分)により分離し、エチジウムブロマイド染色の後、紫外線下でDNA断片を検出した。
【0069】
図4Bに示すように、ogc変異遺伝子をもたないトマト品種「Tropic」でのみ約0.6kbに十分な量の増幅DNA断片がみられた。このように、野生型遺伝子を特異的に検出することが可能であった。
【0070】
[実施例5]
1塩基欠失(挿入)の検出
実施例4に示した野生型遺伝子のみならずogc変異遺伝子(野生型遺伝子に対して1塩基欠失)をも同時に検出すべく、ogc変異を持つトマト品種「NT604」およびogc変異を持たない品種「Tropic」のDNAを用い、以下のプライマーによるPCR反応を行った(図5A)。
【0071】
プライマー9、プライマー10:両プライマーを組み合わせて利用することで、検出すべき1塩基欠失(挿入)を含むDNA部分約0.9kbを増幅するように設計されたプライマー対。
【0072】
プライマー11:検出すべきAx9塩基(野生型)の次の塩基を3’端とし、連続塩基の両端およびその前後1塩基をLNAとしたプライマー。プライマー10との組み合わせで野生型のDNA断片約0.6kbを特異的に増幅するように設計した。
【0073】
プライマー12:検出すべきA×8塩基(ogc遺伝子)においてプライマー11と逆向きに設計されたプライマーである。連続塩基の次の塩基を3’端とし、連続塩基の両端およびその前後1塩基をLNAとしたプライマー。プライマー9との組み合わせでogc遺伝子のDNA断片約0.3kbを特異的に増幅するように設計した。
プライマー9(配列番号9):5’-TAgCTTAgCAAAgATTCC-3’
プライマー10(配列番号10):5’-ACTTgCATCCACAACC-3’
プライマー11(配列番号11):5’-AAgTCCCACCACLcLaAAAAAAALaLt-3’
(Lc,La,Ltはそれぞれシトシン塩基,アデニン塩基,チミン塩基をもつLNA)
プライマー12(配列番号12):5’-gAAgACATTTTCTTgLaLtTTTTTTLtLg-3’
(La,Lt,Lgはそれぞれアデニン塩基,チミン塩基,グアニン塩基をもつLNA)
【0074】
PCR反応は、サンプルDNA1μl、10×Ex Taqバッファー(タカラバイオ株式会社)2μl、2.5mM dNTPミックス2μl、Ex Taq(タカラバイオ株式会社)0.1μl、20μMのプライマー9を0.4μl、20μMのプライマー10を0.2μl、20μMのプライマー11を0.5μl、20μMのプライマー12を0.8μl、水13μlからなる反応液で実施した。また、95℃・2分の後に(95℃・30秒→62℃・30秒→72℃・30秒)を15サイクル行い、さらに(95℃・30秒→60℃・30秒→72℃・30秒)を25サイクル行った後に72℃で5分反応させた。得られた反応産物10μlを2%アガロースゲル電気泳動(TAEバッファー、100V、30分)により分離し、エチジウムブロマイド染色の後、紫外線下でDNA断片を検出した。
【0075】
図5Bに示すように、ogc変異遺伝子をもつトマト系統「NT604」では約0.3kbに、リコペンβ−シクラーゼ遺伝子が野生型であるトマト品種「Tropic」では約0.6kbに十分な量の増幅DNA断片がみられた。このように、両遺伝子それぞれを特異的に検出することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、医学、法医学、農学などの分野で、生物やウイルス由来の核酸の1塩基多型を、特異性を維持しながらPCR増幅することにより検出することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の1塩基多型を検出するための方法であって、少なくとも1つのLNA(locked nucleic acid)を含み、かつ、該1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む10〜50塩基長からなる第1のプライマーと、該第1のプライマーを挟むように該核酸にアニーリング可能な10〜50塩基長からなる第2、第3等の複数のプライマーとを含む、合計3種またはそれ以上の10〜50塩基長のプライマーを用いたPCR反応によって、該核酸の断片を増幅し、1塩基多型を検出することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記1塩基多型が、1塩基置換、1塩基欠失、1塩基挿入、またはマイクロサテライトの多型である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1塩基多型の検出が、増幅核酸断片のサイズに基づく方法によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1塩基多型部位において他の多型を示す核酸断片を増幅するための第4のプライマーをさらに含み、該第4のプライマーは、少なくとも1つのLNAを含み、かつ、前記第2の1塩基多型の塩基に相当する塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基を含む10〜50塩基長からなるプライマーであり、前記第2および第3のプライマーのうち適するプライマーとプライマー対を形成することができるプライマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のプライマーの3'末端が、前記核酸の前記1塩基多型の塩基もしくはそれと塩基対を形成する相補的塩基であり、前記LNAが、上記第1のプライマーの3'末端の塩基の5'側の、少なくとも1番目の塩基または少なくとも1番目および2番目の塩基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1塩基多型が1塩基欠失である場合、前記第1のプライマーの3’末端が、前記核酸の該1塩基欠失部位の3'側の1番目の塩基であり、前記LNAが、上記第1のプライマーの3'末端の塩基の5'側の、少なくとも1番目の塩基または少なくとも1番目および2番目の塩基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1塩基多型が連続同一塩基からなる配列の多型である場合、前記第1のプライマーの3’末端が、前記核酸の該連続同一塩基の3'側に隣接する1番目の塩基であり、前記LNAが、少なくとも前記第1のプライマーの3'末端および前記核酸の該連続同一塩基の両端の塩基、および該連続同一塩基の5'側に隣接する1番目の塩基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−30514(P2011−30514A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180954(P2009−180954)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】