説明

1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶の製造方法

【課題】1,2,3−プロパントリカルボン酸含有反応水溶液から晶析操作により濾過分離特性の優れた高純度の1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶を製造する。
【解決手段】1,2,3−プロパントリカルボン酸を45〜60重量%含有する水溶液を60℃以上の温度から30℃まで冷却して晶析するに際して、撹拌レイノルズ数3,000〜20,000の撹拌下に、15℃/時間以下の冷却速度で冷却して晶析することを特徴とする1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶の製造方法 。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶の製造方法に関し、更に詳しくは、1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液から晶析操作により、高純度の1,2,3−プロパントリカルボン酸を濾過分離特性の優れた板状結晶として製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1,2,3−プロパントリカルボン誘導体(特にアミド系化合物)は、ポリオレフィン樹脂の透明性、結晶性及び剛性を改善する樹脂添加剤として注目されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
これまで1,2,3−プロパントリカルボン酸及びそのトリエステルの製造方法の典型例としては次のものがある。
(a)マレイン酸ジエチルとマロン酸ジエチルとをナトリウムエチラート触媒の存在下に反応させ、得られたマイケル付加物を塩酸水溶液中で加水分解し、脱炭酸する方法(非特許文献1、2参照)。
(b)クエン酸トリエチルエステルをCuO−Al2O3 触媒存在下、テトラヒドロフラン溶剤中、175℃及び10バールにおいて水素化反応させる方法(特許文献4参照)。(c)2−(2’−ブテニル)コハク酸を触媒の存在下に硝酸で酸化する方法(特許文献5参照)。
【0004】
1,2,3−プロパントリカルボン酸の工業的生産を想定した場合は、上記のいずれの製造方法によるとしても、反応終了後、1,2,3−プロパントリカルボン酸を含む水溶液から1,2,3−プロパントリカルボン酸を単離し、最終的に製品として取得するためには、晶析操作が不可欠である。
【0005】
しかしながら、上記いずれの方法においても、1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液から晶析法により1,2,3−プロパントリカルボン酸結晶を得ようとすると、室温での溶解度が大きいため、工業的に大量に1,2,3−プロパントリカルボン酸を取得できないという欠点を有している。そのため、この欠点を補うために高濃度の1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液から晶析を行うか又は過剰な冷却を行う必要があった。
【0006】
本発明者らが予備的に高濃度条件で撹拌又は無撹拌下で空冷により晶析を行った結果、水溶液全体に、一気に針状結晶が析出し、攪拌・固液分離の操作が困難になることがわかった。また、1,2,3−プロパントリカルボン酸の室温での溶解度(例えば、25℃で約38重量%)が、非常に大きいため、晶析、濾過後、得られた結晶表面の付着母液を除去するため水ですすいだ場合、収量が低下し、生産性が著しく悪くなることもわかった。
【0007】
これまでに、1,2,3−プロパントリカルボン酸の再結晶の際に、溶媒として水を用いることができることが記載されている(非特許文献2参照)。しかしながら、この文献には、水を用いた場合の再結晶条件、得られる結晶の純度や結晶形状については全く言及されていない。また、上記問題点があるために晶析法が工業的に積極的に用いられることがなかったというのが実状である。これまで、1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液から晶析により、1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶が得られることについては知られておらず、当然その製造条件についても何ら記載、示唆されていなかった。
【0008】
【非特許文献1】Org.Syn.Coll.Vol.1,272
【非特許文献2】Org.Syn.Coll.Vol.1,523
【特許文献1】日本特許第3401868号公報
【特許文献2】特開平7−242610号公報
【特許文献3】WO00/52089号公報
【特許文献4】特開平6−192167号公報
【特許文献5】フランス特許第1515153号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、晶析操作により高純度の1,2,3−プロパントリカルボン酸を、濾過分離特性の優れた板状結晶として製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の濃度の1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液を、特定の撹拌速度で撹拌しながら、特定の条件下で冷却晶析することにより、濾過分離特性に優れ、しかも純度の高い1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶を収率良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶の製造方法を提供するものである。
【0012】
[項1] 1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液から、1,2,3−プロパントリカルボン酸を晶析するにあたり、1,2,3−プロパントリカルボン酸濃度が45〜60重量%の水溶液を、60℃〜30℃の温度範囲内において、撹拌レイノルズ数が3,000〜20,000、冷却速度が15℃/時間以下の条件で晶析をおこなうことを特徴とする1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶の製造方法。
【0013】
[項2] さらに、上記水溶液に種晶を入れて晶析することを特徴とする上記項1に記載の製造方法。
【0014】
[項3] 上記板状結晶の平均粒径が50〜500μmの範囲内にある上記項1又は2に記載の製造方法。
【0015】
[項4] 1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶を晶析させた後、固液分離して得られる母液を、1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液として再使用する上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
[項5] 上記水溶液が、(i)マレイン酸ジエステルとマロン酸ジエステルとを、アルカリ触媒存在下に反応させてマイケル反応付加物を得、次いで、使用したアルカリ触媒を除去後、(ii)得られたマイケル反応付加物を酸触媒下、加水分解して得られる反応水溶液である上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
[項6] 1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶を晶析させた後、固液分離して得られる母液を、上記項5における(ii)段階の加水分解反応に用いる上記項5に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法により、1,2,3−プロパントリカルボン酸を板状結晶で得ることができる。かかる板状結晶は、固液分離性が良好であり、不純物が溶存する母液の結晶への付着率が低減できるため、高純度1,2,3−プロパントリカルボン酸を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0020】
[1,2,3−プロバントリカルボン酸]
本発明に係る1,2,3−プロパントリカルボン酸(以下、「PTC」と略記する。)の製造方法には特に制限はなく、いずれの方法で作られたものであってもよい。具体的には、上記(a)〜(c)に例示される従来公知の方法の他、(d)2−(2’−アルケニル)コハク酸をリン・タングステン酸触媒の存在下、過酸化水素により酸化開裂する方法などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
上記(a)製造方法によるPTCの製造例について以下に説明する。
(a)製造方法は、マレイン酸ジエステルとマロン酸ジエステルとを、アルコラート等の塩基触媒存在下に、溶媒中又は無溶媒で付加反応させ対応するテトラエステルを得るマイケル付加工程、及び得られたテトラエステルを、酸触媒存在下に加水分解させPTCを得る加水分解工程からなる。
【0022】
マレイン酸ジエステル及びマロン酸ジエステルは、市販品を入手できる他に従来公知の方法に従い、それぞれの酸とアルコールとのエステル化反応により容易に製造できる化合物である。
【0023】
マレイン酸ジエステルとしては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジn−プロピル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジn−ブチル、マレイン酸ジsec−ブチル、マレイン酸ジn−ペンチル、マレイン酸ジ−ヘキシル等のマレイン酸と炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルコールとのマレイン酸ジエステルが好ましく、なかでも、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチルが工業的に入手が容易である点で好ましく、特にマレイン酸ジメチルが好ましい。
【0024】
マロン酸ジエステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル等のマロン酸と炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルコールとのマロン酸ジエステルが好ましく、なかでも、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチルが工業的に入手が容易である点で好ましく、特に、マロン酸ジメチルが推奨される。
【0025】
そのマロン酸ジエステルの使用量は、マレイン酸ジエステル1モルに対して、0.5〜2モル、好ましくは、0.8〜1.2モル、さらに好ましくは0.95〜1.05モルが好ましい。
【0026】
マイケル付加工程に用いられる塩基触媒としては、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムt−ブチラートなどのアルコラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム等が挙げられる。これらのうち反応性の点でアルコラートが好ましく、特に、ナトリウムメチラート又はナトリウムエチラートを用いるのが好ましい。これらのアルコラートは1種又は2種以上で用いることができる。その使用量は、マロン酸ジエステルに対して、0.01〜10mol%が好ましく、0.5〜5mol%がさらに好ましい。
【0027】
溶媒は用いても用いなくてもよいが、無溶媒で行うほうが製造面や経済面で有利なことからさらに好ましい。溶媒を用いる場合、トルエン,ベンゼンなどの芳香族系炭化水素,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコールなどのアルコール類,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類,N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシドなどが使用できる。特に、エタノール、トルエン,N,N−ジメチルホルムアミドが好適である。溶媒量は特に制限が無く、1〜10倍重量があれば十分である。
【0028】
反応は、マロン酸ジエステル、塩基触媒、必要に応じて溶媒を仕込み、所定の反応温度に昇温後、発熱による昇温を抑制できる速度でマレイン酸ジエステルを滴下し、続いて、所定の反応温度で、所定の時間加熱撹拌を行い進行させることが好ましい。
【0029】
その反応温度としては、通常、0℃〜100℃の温度範囲、好ましくは20〜80℃の範囲であり、0℃に満たない場合は反応が遅延し、100℃を越える場合は副生物の生成が見られ、目的化合物の反応収率低下の傾向がある。
【0030】
反応時間としては、マロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステルの種類、触媒量及びその濃度、反応温度等により変わり得るが、通常1〜30時間、好ましくは2〜10時間程度である。
【0031】
反応は、大気下でも実施することができるが、安全性の観点からは、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0032】
マイケル付加反応終了後、使用した塩基触媒を除去するため中和・水洗又は水洗を行い、次いで、溶媒を常圧〜減圧下で留去することにより得られるテトラエステルは次の加水分解工程の原料としてそのまま使用することができる。特に、無溶媒で反応した場合、中和・水洗又は水洗を行うだけでよくプロセスの効率化を図ることができる。さらに必要に応じて、得られたテトラエステルを減圧蒸留して、加水分解工程の原料としてもよい。
【0033】
次に得られたテトラエステルの加水分解工程について記載する。
加水分解反応は、平衡反応であるので、通常、生成するアルコールを反応系外へ留去しながら実施するのが有利である。そのため、加水分解反応を、生成したアルコールを含有する水の留出量に相当する量の水を連続的に又は間欠的に追加しながら行うことが好ましく、アルコールの留出が見られなくなったら加水分解は終了する。
【0034】
加水分解反応に使用する酸触媒としては、有機スルホン酸が好ましく、p−トルエンスルホン酸 、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸 、ベンゼンスルホン酸 などが挙げられるが、一般的にはp−トルエンスルホン酸が用いられる。
【0035】
他の酸性触媒、例えばリン酸、硫酸、塩酸などの強酸、ダイヤイオン SK1BH(商品名、三菱化学(株)製)、アンバーライト IR−120B(商品名、ローム アンド ハース社製)Nafion NR−50(商品名、デュポン社製)等の強酸性イオン交換樹脂も使用できる。
【0036】
使用する酸触媒の量は、テトラエステルに対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。0.1重量%に満たない場合は、加水分解反応速度が遅く、一方、10重量%を超えた場合は、添加量に相応する速度上昇を得ることができず経済的ではない。
【0037】
加水分解反応での水の使用量は、通常、テトラエステルに対して、好ましくは0.5〜20倍当量、好ましくは0.5〜10倍当量、さらに好ましくは、0.5〜5倍当量である。
【0038】
反応温度としては、通常、50〜150℃、好ましくは90〜110℃である。反応時間は、他の反応条件により異なってくるが、通常、3〜30時間、好ましくは10〜25時間である。
【0039】
このようにして得られたPTCを含有する加水分解終了後の水溶液から、溶媒を留去するなどして粗PTC結晶を単離してもよいが、PTCを含有する水溶液としてそのまま、本発明に供することもできる。
【0040】
次に、(d)製造方法によるPTCの製造例について以下に記載する。
(d)製造方法は、2−(2’−アルケニル)コハク酸或いはその無水物を、水又は水と混和可能な溶媒中、タングステン酸、モリブデン酸、及びこれらのヘテロポリ酸を触媒として、過酸化水素により酸化することによりPTCを製造する方法である。
【0041】
ここにいうヘテロポリ酸とは、2種以上の酸素酸からなる縮合酸であり、ポリ酸原子としては、タングステン及びモリブデンであり、ヘテロ原子としては、P、As、Si、Ti、Co、Fe、B、V、Be、I、Ni、Ga等が例示される。触媒の使用量としては、触媒活性が発揮されるのに有効な量である限り、広い範囲から選択される。しかし、反応速度及び触媒のコストの観点からは、遊離酸(タングステン酸、モリブデン酸又はこれらのヘテロポリ酸)換算で、2−(2’−アルケニル)コハク酸に対し0.01〜30重量%、好ましくは1〜10重量%が推奨される。
【0042】
反応溶媒としては、水、水と混和可能な有機溶媒、例えば炭素数1〜4のアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等を単独で使用し、又は均一相を保つ範囲で水と併用することも可能である。なかでも水、炭素数1〜4の水混和性溶媒、又はこれらの混合溶媒が好ましく、特に水が好ましい。
【0043】
反応時の基質の濃度としては、特に限定されないが、その濃度は、2〜70重量%の範囲が好ましく、15〜60重量%の範囲がより好ましい。係る範囲内で反応を行うことにより、高収率、高純度で目的物が得られる傾向にある。
【0044】
本反応に必要な過酸化水素の化学量論量は、2−(2’−アルケニル)コハク酸1モルに対し4モルであるが、通常4〜12モル、好ましくは6〜10モル使用するのが望ましい。反応混合物中の過酸化水素の濃度は、広い範囲から選択できる。その下限は、2−(2’−アルケニル)コハク酸を酸化した触媒が、過酸化水素により酸化能力を回復するのに充分な濃度であればよく、かなり稀薄なものでも反応速度の低下は避けられないが、酸化反応は進行する。また、上限は特に存在せず、かなりの高濃度であってもよい。しかしながら、反応速度を向上させ、かつ低濃度の過酸化水素を用いて製造コストの低減を図る観点からは、0.1ミリモル/L〜12モル/L、好ましくは10ミリモル/L〜8モル/Lが有利である。過酸化水素は、通常、5〜60重量%の水溶液の形態で供給され、いずれの濃度の過酸化水素も使用できるが、40〜60重量%の過酸化水素が好ましい。
【0045】
反応温度としては、反応速度の点から、通常、20〜150℃、好ましくは60〜130℃の温度範囲が例示される。反応は、常圧下、加圧下又は減圧下のいずれでも行うことができる。反応速度の観点及び過酸化水素の分解を防止又は抑制する観点からは、60〜130℃、好ましくは80〜100℃、特に還流温度で反応を行なうのが好ましい。
【0046】
反応時間としては、2−(2’−アルケニル)コハク酸の種類、触媒及び過酸化水素の濃度、反応温度、副生する有機モノカルボン酸の留去の有無等により変わり得るが、通常1〜50時間、好ましくは5〜25時間、より好ましくは6〜20時間の範囲である。
【0047】
また、副生する脂肪族モノカルボン酸は、反応系外に留去させることが好ましい。その方法としては、特に制限がないが、水とともに系外に蒸発、留去させる方法が簡便で好ましい。
【0048】
反応は、常圧下または減圧下のいずれで行ってもよく、連続式またはバッチ式のいずれの方式で行ってもよい。また、反応は、大気下でも実施することができるが、安全性の観点からは、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0049】
このようにして得られたPTCを含有する酸化反応終了後の水溶液から、溶媒を留去するなどして粗PTC結晶を単離してもよく、また、PTCを含有する水溶液のまま、本発明に供することもできる。
【0050】
上記、(a)及び(d)製造方法では反応終了後に得られる水溶液をそのまま本発明に供することができる点で好ましく、特に、(a)製造方法により得られる反応水溶液が、得られるPTC板状結晶の収率、純度及び色相の点で特に好ましい。
【0051】
また、上記例示の(a)及び(d)以外の方法で得られたPTCを含有する水溶液を本発明に供することができる。これらの水溶液は、晶析前に、活性炭を用いて脱色処理することもできる。その使用量は、PTC100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。処理温度は、通常、得られた反応水溶液から結晶が析出しない最低温度から100℃の範囲であり、好ましくは、結晶が析出しない最低温度から50℃の範囲である。処理時間は、通常1分〜10時間の範囲であるが、脱色効果が得られる範囲であれば特に限定されない。尚、粗PTCとは、その純度が75重量%〜95重量%未満のものをいう。
【0052】
[PTCの晶析]
本願発明におけるPTC水溶液の濃度は、45〜60重量%、好ましくは45〜55重量%である。45重量%未満では、濾過性の悪い針状結晶が生成しやすく、作業効率及び目的物の純度が悪化する傾向が見られ、一方、60重量%を超えると、スラリー濃度が高くなるため攪拌、固液分離が困難となり、目的物の純度が低下する傾向が見られ好ましくない。上記(a)及び(d)製造方法のように、反応終了後にPTCの水溶液として得られたものをそのまま使用する場合には、前記濃度範囲となるよう、適宜、常圧或いは減圧下で水を蒸発させ濃縮したり、又は水を添加したりして調整した後で晶析をおこなう必要がある。
【0053】
板状結晶の生成率を向上するために、晶析の前にPTCの針状結晶を完全に溶解させることが好ましい。その為、PTC水溶液を60℃以上、好ましくは70℃以上、特に好ましくは90℃以上に加熱することが推奨される。PTCの針状結晶が溶解した後に、所定の冷却速度及び撹拌条件で晶析を行うことにより、板状結晶を優先的に析出させることができる。
【0054】
PTCの針状結晶を溶解させた後、徐冷しながら晶析を行う。従って、晶析は60℃以上の任意の温度(好ましくは60〜90℃、特に好ましくは60〜70℃)から開始することができる。また、PTCの板状結晶を種晶として、添加することにより板状結晶の生成が促進されるため好ましい方法として推奨される。種晶を入れる温度としては、PTCの結晶が析出を始める温度以上で且つ種晶が溶解しない温度(好ましくは、60〜70℃)であれば特に制限はなく、その添加量は、特に制限されないが、通常、水溶液に溶解しているPTCの全量に対して、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、さらに好ましくは、0.1〜0.3重量%が推奨される。
【0055】
冷却速度としては、15℃/時間以下、好ましくは4〜10℃/時間であり、特に好ましくは5〜8℃/時間である。冷却速度が遅いほど、板状結晶の生成及び成長が促進される一方、生産性が低下する傾向にある。
【0056】
また、本発明における撹拌速度は、撹拌レイノルズ数が3,000〜20,000、徳に8,000〜18,000の範囲であることが好ましい。3,000未満の場合、結晶境膜での液体の流速が遅い層流となるため、結晶の成長が阻害される。一方、20,000を超える場合、生成した結晶が、結晶同士又は結晶と撹拌翼の衝突頻度が増大し、板状結晶が、粗砕されてしまうため好ましくない。尚、本発明における撹拌レイノルズ数とは、Re=ρdn/μによって定義される無次元数であり、ρは晶析に供するPTC水溶液の密度(kg・m−3)、μはその粘度(kg・m−1・s−1)、dは撹拌羽根の径(m)、nはその回転数(1/s−1)を表す。粘度の測定はE型粘度計を用いて行った。
【0057】
また、攪拌方法は、とくに制限はないが、通常、攪拌翼などによる回転方法が挙げられる。撹拌翼形状としては、例えば、ディスクタービン型、パドル型、湾曲羽根ファンタービン型、矢羽根タービン型などの放射流型翼、プロペラ型、傾斜パドル型、ファウドラー型などの軸流型翼が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又パドル型の中でも特殊な形状を有するものも使用でき、例えば大型の二枚パドル羽根(神鋼パンテック製の商品名「フルゾーン」)、格子状のスリットを有するパドル羽根(住友重機械工業製の商品名「マックスブレンド」)等も好適に用いることができる。
【0058】
本願発明においては、規定の濃度のPTC水溶液を、60℃から30℃までの間、上記の冷却速度及び撹拌速度の条件を保つことにより、PTC板状結晶を優先的に生成することができる。尚、60℃より高い温度から晶析を開始する場合に、60℃に至るまでの冷却過程においては、本願規定の冷却速度、撹拌速度は必要ではないが、本願規定の条件で晶析を行うことが望ましい。
【0059】
30℃以下に到達後さらに冷却を続けてもよく、通常10〜25℃程度まで冷却することが望ましい。10℃未満に冷却すると、結晶の収量は増加するものの、逆にスラリー濃度が増大し、スラリー移送、固液分離が難しくなる等生産効率が低下したり、得られるPTC純度の低下を招く虞がある。PTCの水溶液が30℃以下に到達した場合にも、本願所定の冷却速度で冷却を続けることが好ましいが、特に冷却をしなくても晶析を継続し、いわゆる熟成期間を設けることにより大きな結晶に成長させることができる。その熟成時間として、3〜12時間、好ましくは4〜8時間が推奨される。この熟成時間が長いほど結晶が成長し、大きな板状結晶として取り出しやすくなるため好ましい。尚、30℃以下に到達しても晶析を続ける場合の撹拌速度としては、上記撹拌レイノルズの範囲がよいが、結晶の破壊を防ぐ目的でそれより低い撹拌レイノルズ数としてもよい。
【0060】
晶析終了後、PTCは、通常、固液分離装置、たとえば、遠心分離機、フィルター・プレス、ヌッチェなどにより、母液と分離できるが、工業的には、遠心分離機が好ましい。分離したPTC結晶は、水に対する溶解度(例えば、室温 40g/水100g)が非常に大きく、不純物が含有している付着母液を除くために、水ですすぐとPTC収量が低減するため、すすがずにそのまま乾燥することが好ましい。
【0061】
本発明の晶析方法によって得られるPTCの結晶が、適度な大きさの板状結晶であることは重要である。本発明の板状結晶の平均粒子径は、50〜500μmの範囲内で、結晶形状が板状となることにより濾過時間を著しく短縮でき、微粉末を生じにくく安定であるため分離工程の負荷が軽減され、高純度のPTCが得られやすい。
【0062】
なお、本明細書及び特許請求の範囲における板状結晶の平均粒子径は、スライドガラス板上に晶析のスラリーを一滴採取し、カバーガラスで被った後、光学顕微鏡で写真撮影し、得られた画像を解析ソフト(mitani CORPORATION社製、商品名「Win ROOF」)の手動計測モードにより、無作為に選択した少なくとも10個の粒子の長径を測定して算出した値である。また、同時に測定した短径との比率から縦横比を算出した。
【0063】
本明細書において「板状」とは、縦横比の小さい結晶であり、具体的には、個々の結晶の長径(最大径)を短径(最小径)で除した値の平均値が1〜5のものをいう。なお、この値が5越えるものは「針状」となる。したがって、本発明のPTCは板状 、即ちその個々の結晶の長径を短径で除した値の平均値が1〜5であるが、より好ましくはこの値が1〜3である。
【0064】
晶析した後、固液分離により得られた母液には、未析出のPTCを含有していることから、この母液に所定量の粗PTC又はその水溶液を加えて、所定の濃度に調整後、晶析を行い、母液をリサイクルすることができる。また、前記(d)製造方法における酸化反応反応溶媒として再使用することもできる。
【0065】
特に、上記(a)製造方法においてテトラメチルエステルの加水分解後、晶析で得られた母液は、PTCの他に酸触媒も含有していることから、それを再びテトラメチルエステルの加水分解反応に用いることができ、環境面及び経済面で好ましい。
【0066】
このようにして得られたPTCは、結晶の形状が良く、流動性があり、作業環境を悪くする微粉末が少なく安定であるため工業的に大量に取り扱いやすい。また、PTCの純度は、95〜99%又はそれ以上であり、そのまま更に精製することなく工業用原料、例えば、1,2,3−プロパントリカルボン酸アミド誘導体の酸成分として充分使用できる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を掲げて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。尚、下記製造例における、ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)及び高速液体クロマトグラフィー分析(HPLC分析)、並びにPTC結晶の平均粒子径及び縦横比は、下記に示す条件に従い行った。
【0068】
マレイン酸ジメチルとマロン酸ジメチルとをナトリウムメチラート触媒の存在下に付加反応させ、使用したアルコラート触媒を除去後、次いで、得られたマイケル付加物をp−トルエンスルホン酸触媒存在下で加水分解、脱炭酸して得られる反応液水溶液の調製は下記製造例1に記載の方法により行った。
【0069】
2−(2’−アルケニル)コハク酸をリン・タングステン酸触媒の存在下、過酸化水素により酸化開裂後、次いで、副生成物のカプロン酸を減圧又は常圧下で除いて得られる反応水溶液の調製は製造例2に記載の方法により調製した。
【0070】
(1)HPLC分析(マイケル付加)
カラム:SHIMADZU SCR ODS−2 内径6.0mmx長さ150mm
移動相:アセトニトリル:水=35:65(vol/vol)
流量:1ml/分
温度:40℃
検出:UV210nm 及びUV265nm
【0071】
(2)HPLC分析(加水分解)
カラム:SHIMADZU SCR 101−H 内径7.9mmx長さ300mm
移動相:5mmol/l 過塩素酸水溶液
流量:0.8ml/分
温度:40℃
検出:UV210nm
【0072】
(3)GC分析(酸化反応)
装置:SHIMADZU GC−14B
カラム:DB−1701 2.5mmx30m 0.25μm
カラム温度:100−300℃ (10℃/分)
流量:1ml/分
スプリット:1/30
セプタム:10ml/分
インジェクション温度:300℃
ディテクション温度:300℃
【0073】
(4)PTCの粒径測定
PTCの平均粒子径の測定は以下の方法で測定した。
晶析終了後、スライドガラス板上に晶析スラリーを一滴採取し、カバーガラスで被った後、光学顕微鏡で写真撮影した。得られた画像を、解析ソフト(mitani CORPORATION社製、商品名「Win ROOF」)の手動計測モードにより、無作為に選択した少なくとも10個以上の粒子の長径及び短径を測定した。平均粒子径は、長径の平均値とした。また、長径を短径で除した数値を縦横比とした。
【0074】
[製造例1]
(1)マイケル付加工程
温度計、滴下漏斗、温度計、コンデンサー付き水分離器、撹拌装置を備えたガラス製の3000mlの4ツ口フラスコに、マロン酸ジメチル782g(5.9mol)、28%ナトリウムメチラート(メタノール溶液)56.9g(5mol%/マロン酸ジメチル)を仕込み、50℃まで昇温後、マレイン酸ジメチル814g(5.6mol)を1.0時間で滴下し、同温度で3時間加熱撹拌を行った。次いで、冷却後、有機層を400gのイオン交換水で水洗を行い、使用したアルカリ触媒を除去した後、マイケル付加物のテトラメチルエステル1560gを得た。GC分析の結果、反応率100%、選択率98.5%であった。
【0075】
(2)加水分解工程
滴下漏斗、留出管、温度計及び攪拌装置を備えたガラス製1000ml4つ口フラスコに上記方法により得られたテトラメチルエステル500g、蒸留水125g及びp−トルエンスルホン酸一水和物20.0gを加え、100℃で加水分解を行った。留出する水と同量の量の蒸留水を適宜追加(約120ml/時間)しながら、反応系中のPTC転化率を高速液体クロマトグラフィーで分析して加水分解経過を追跡した。反応系中のPTCに対する転化率は加水分解 開始後16時間で増加しなくなり、加水分解反応液604gを得た。このときの反応率はほぼ100%であり、選択率は97.4%であった。
【0076】
[製造例2]
攪拌装置、温度計、滴下ロート及びコンデンサー付き水分離器を装着したガラス製の5000mlの4ツ口フラスコに、2−(2’−オクテニル)コハク酸無水物650.1g(3.0mol)と水1953gを入れ、窒素雰囲気下30分間100℃に加熱して有水酸とした後、70℃に冷却し触媒としてリン・タングステン酸29.9gを加え、60%過酸化水素水200gを滴下した。2時間、70℃で反応させた後、還流温度まで昇温し、副生するカプロン酸を水とともに蒸発留去しながら、60%過酸化水素1900gを10時間かけて滴下し、更に同温度で5時間反応させた。その際、水分離器で、分離したカプロン酸は系外に留去し、水だけ系内に戻しながら反応を行った。反応後、水を留去し反応粗液738gを得た。このときの反応率は、ほぼ100%であり、選択率は70.9%であった。
【0077】
[実施例1]
温度計、コンデンサー、デカンター、翼径7cmのフルゾーン型撹拌翼を備えた攪拌機を装着したガラス製の1000mlのセパラブルフラスコに、PTC含有量50重量%の上記製造例1で調製した反応水溶液550mlを加え、撹拌レイノルズ数16,000で撹拌しつつ、冷却速度6℃/時間で60℃から25℃まで冷却した。PTC種晶(板状結晶)を60℃で0.5g(PTC含有量に対して0.2重量%)を添加した。25℃に到達後、さらにそのまま12時間継続した。吸引濾過後、白色固体178.1g得た。HPLC分析による純度は99.2%であった(収率64%)。得られたPTC結晶は、平均粒子径が120μm、縦横比が1.8の板状結晶であった。
【0078】
[実施例2]
製造例1と同様に製造した反応溶液を常圧下にて100℃まで加熱し、溶媒である水を留去しPTC含有量を60重量%とした他は、実施例1と同様に行い、白色固体253.7gを得た。HPLC分析による純度は99.4%であった(収率76%)。得られたPTC結晶は、平均粒子径が250μm、縦横比が2.2の板状結晶であった。
【0079】
[実施例3]
製造例1と同様に製造した反応溶液に溶媒である水を130g加えてPTC含有量を45重量%とした反応溶液680gを用いた他は、実施例1と同様に行い、白色固体126.9gを得た。HPLC分析による純度は99.2%であった(収率46%)。得られたPTC結晶は、平均粒子径が210μm、縦横比が1.3の板状結晶であった。
【0080】
[実施例4]
製造例1と同様に製造した反応溶液を用いて撹拌レイノルズ数8200とした他は、実施例1と同様に行い、白色固体136.1gを得た。HPLC分析による純度は99.2%であった(収率49%)。得られたPTC結晶は、平均粒子径が180μm、縦横比が2.1の板状結晶であった。
【0081】
[実施例5]
実施例1で得られた濾過母液を用いて、製造例1と同様に加水分解反応を行い、1,2,3−プロパントリカルボン酸含有の加水分解反応液を得た。これを用いて実施例1と同様に晶析を行い、白色固体224.2gを得た。HPLC分析による純度は96.2%であった(収率78%)。得られた結PTC結晶は、平均粒径85μm、縦横比1.3の極めて濾過性の良好な板状結晶であった。
【0082】
[実施例6]
実施例1と同様の装置を用い、上記製造例2で調製した反応溶液を常圧下にて100℃まで加熱し、溶媒である水を留去した。PTC含有量50重量%に濃縮した反応水溶液を550mlを加え、撹拌レイノルズ数10,000で撹拌しつつ、冷却速度6℃/時間で60℃から25℃まで冷却した。PTC種晶を60℃で0.2g(PTC含有量に対して0.2重量%)を添加した。25℃に到達後、さらにそのまま12時間撹拌を行った。吸引濾過後、白色固体186g得た。HPLC分析による純度は90.2%であった(収率61%)。得られたPTC結晶は、平均粒子径が110μm、縦横比1.4の板状結晶であった。
【0083】
[比較例1]
製造例1と同様に製造した反応溶液に溶媒である水を170g加えてPTC濃度38%の反応溶液720gを用いた他は実施例1と同様に晶析を行い、白色固体179.3gを得た。HPLC分析による純度は84.7%であった(収率55%)。この結晶体の光学顕微鏡写真を図4に示す。この写真から明らかなように、得られたPTC結晶は、濾過性が悪い針状結晶である。
【0084】
[比較例2]
60℃〜40℃までの冷却速度を20℃/時間で冷却し、40℃〜25℃までは10℃/時間で冷却した他は実施例1と同様に晶析を行い、白色固体146.5gを得た。HPLC分析による純度は86.3%であった(収率46%)。また、この結晶を顕微鏡で観察したところ、比較例1と同様の針状結晶であった。
【0085】
[比較例3]
攪拌レイノルズ数2,300とした他は実施例1と同様に行い、白色固体172.7gを得た。HPLC分析による純度は83.2%であった(収率52%)。また、この結晶を顕微鏡で観察したところ、比較例1と同様の針状結晶であった。
[比較例4]
攪拌レイノルズ数25,000とした他は実施例1と同様に行い、白色固体169.6gを得た。HPLC分析による純度は89.0%であった(収率55%)。また、この結晶を顕微鏡で観察したところ、細かな針状結晶であった。
[比較例5]
製造例1と同様に製造した反応溶液を常圧下にて100℃まで加熱し、溶媒である水を留去しPTC含有量を65%とした。この他は、実施例1と同様に行なったところ、液移送が困難な高濃度スラリー溶液が得られた。また、この結晶を顕微鏡で観察したところ、比較例1と同様の針状結晶が殆どであった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の製造方法により1,2,3−プロパントリカルボン酸の結晶形状が板状となることにより濾過時間を著しく短縮でき、分離工程の負荷が軽減される。また分離性の改善に伴い、不純物が溶存する母液の結晶への付着率が低減できるため、高純度1,2,3−プロパントリカルボン酸を工業的に効率よく製造することが可能となった。このものの誘導体である1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(アルキル置換シクロヘキシルアミド)は、ポリオレフィン樹脂の透明性、結晶性及び剛性を改善する樹脂添加剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1で得られた1,2,3−プロパントリカルボン酸の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例2で得られた1,2,3−プロパントリカルボン酸の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図3】実施例3で得られた1,2,3−プロパントリカルボン酸の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図4】比較例1で得られた1,2,3−プロパントリカルボン酸の光学顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液から、1,2,3−プロパントリカルボン酸を晶析するにあたり、1,2,3−プロパントリカルボン酸濃度が45〜60重量%の水溶液を、60℃〜30℃の温度範囲内において、撹拌レイノルズ数が3,000〜20,000、冷却速度が15℃/時間以下の条件で晶析をおこなうことを特徴とする1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶の製造方法。
【請求項2】
さらに、上記水溶液に種晶を入れて晶析することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記板状結晶の平均粒径が50〜500μmの範囲内にある請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶を晶析させた後、固液分離して得られる母液を、1,2,3−プロパントリカルボン酸水溶液として再使用する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
上記水溶液が、(i)マレイン酸ジエステルとマロン酸ジエステルとを、アルカリ触媒存在下に反応させてマイケル反応付加物を得、次いで、使用したアルカリ触媒を除去後、(ii)得られたマイケル反応付加物を酸触媒下、加水分解して得られる反応水溶液である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
1,2,3−プロパントリカルボン酸板状結晶を晶析させた後、固液分離して得られる母液を、請求項5における(ii)段階の加水分解反応に用いる請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291029(P2007−291029A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122208(P2006−122208)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】