説明

1,3−ジオキサン環を有するエステル化合物、並びに該化合物を含む組成物、位相差板、及び表示装置

【課題】大きい誘電率異方性Δεを有する化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(A−I)で表される化合物。一般式(A−I)中、R1、R2及びX1〜X6は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Aは6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環を表し、mは1又は2を表し、Lは一般式(A−II)で表されるいずれか1つの連結基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3−ジオキサン環を有するエステル化合物に関し、特に液晶組成物、位相差板、及び表示装置に好適に利用できる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶(化合物)は、ディスプレイ等のデバイス、位相差板等の光学要素等の用途で広く用いられているが、その目的に応じた新しい素材の開発が望まれている。現在までに知られてる液晶の種類にはネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、ディスコティック液晶があり、それぞれの液晶に特有な電気光学効果を利用して種々の液晶表示素子が実用化されている。
これらの液晶のなかでネマチック液晶を用いた液晶表示素子が特に広く用いられており、その表示方式には動的散乱型、複屈折制御型、ゲスト・ホスト型、捩れたネマチック型(TN型)、超捩れネマチック型(STN型)、超捩れ複屈折型などがあり、またその駆動方式にはスタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式、二周波駆動方式などがある。
【0003】
液晶は、良好な化学的安定性及び熱に対する安定性を有し、また電場及び電磁波照射線に対する良好な安定性を有していなければならない。さらにまた、液晶材料は、駆動速度の観点から低粘度を有することが好適であり、またセルにおいて、短いアドレス時間、低いしきい値電圧及び大きいコントラストを呈しなければならない。
【0004】
しきい値電圧(Vth)は、以下の式にて表されるように誘電率異方性(Δε)の関数である(Mol.Cryst.Liq.Cryst.,12,57(1970))。
Vth=π{K/(ε0×Δε)]1/2
上式中、Kは弾性定数、ε0は真空の誘電率を表す。
【0005】
この式からわかるように、しきい値電圧(Vth)を小さくするためには、誘電率異方性(Δε)を大きくするか、又は弾性定数Kを小さくするかの2通りの方法が考えられる。しかし、既存の技術では弾性定数Kのコントロールは困難であることから、誘電率異方性(Δε)の大きな材料を使用することにより、低しきい値電圧の要求に対処している。そのため誘電率異方性(Δε)の大きな液晶性化合物の開発が活発に行われている。
【0006】
このような状況下、例えば、誘電率異方性が正の液晶材料として、1,3−ジオキサン誘導体が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】国際公開第01/027221A1パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、大きな値の誘電率異方性Δεを有する化合物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0009】
<1> 下記一般式(A−I)で表される化合物である。
【化1】

【0010】
一般式(A−I)中、R1、R2、及びX1〜X6は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Lは下記一般式(A−II)で表されるいずれか1つの連結基を表し、Aは6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環を表す。また、mは1又は2を表す。
【0011】
【化2】

【0012】
<2> 前記Lで表される連結基が、−COO−であることを特徴とする前記<1>に記載の化合物である。
【0013】
<3> 前記一般式(A−I)におけるX2〜X6が、水素原子であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の化合物。
【0014】
<4> 一般式(A−I)におけるAが6員環のときは、1,4位に結合位置を有する6員環であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の化合物。
【0015】
<5> 前記一般式(A−I)で表される化合物が、下記一般式(B−I)〜(B−V)で表される化合物であることを特徴とする前記<4>に記載の化合物。
【化3】

一般式(B−I)〜(B−V)中、R1、R2、R3及びX1は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Lは前記一般式(A−II)で表されるいずれか1つの連結基を表す。
【0016】
<6> 一般式(A−I)におけるAが6員環で構成されるビシクロ基のときは、3,8位に結合位置を有するビシクロ基であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の化合物。
【0017】
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1種含有する組成物である。
【0018】
<8> 透明支持体と、該透明支持体の上に前記<7>に記載の組成物を含有する光学異方性層を少なくとも1層有する位相差板である。
【0019】
<9> 一対の電極基板と、前記一対の電極基板の間に、前記<7>に記載の組成物を含有する液晶層と、を有する表示装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、誘電率異方性Δεの大きい化合物及び組成物を提供することができ、また、しきい値電圧(Vth)の小さい位相差板及び表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
1.一般式(A−I)で表される化合物
まず、一般式(A−I)で表される化合物(以下、適宜「本発明の化合物」と称する。)の構造と、誘電率異方性△εの関係について説明する。
誘電率異方性(Δε)は、分子の配向方向に平行な方向での誘電率と、垂直な方向での誘電率との差分を表すものであり、下記式で表される。
誘電率異方性(Δε)=ε‖−ε⊥
【0022】
上式中、ε‖は、分子の配向方向に平行な方向での誘電率を表し、ε⊥は、垂直な方向での誘電率を表す。つまり、誘電率異方性(Δε)を大きくするには、棒状の液晶化合物の分子内で長軸方向での分極を大きくすることが効果的である。
【0023】
ここで、本発明の一般式(A−I)で表される化合物は、以下の通りである。
【0024】
【化4】

【0025】
一般式(A−I)中、R1、R2、及びX1〜X6は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Lは下記一般式(A−II)で表される連結基を表し、Aは6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環を表す。また、mは1又は2を表す。
【0026】
【化5】

【0027】
一般式(A−I)で表される化合物は、1,3−ジオキサン基の双極子が分子長軸に平行となっている。更に、1,3−ジオキサン基にエステル基が隣接することによって、分子長軸方向の誘電率が大きくなっている。
【0028】
また、一般式(A−I)におけるAが環状でない場合には、一般式(A−I)で表される化合物が液晶性を示さなくなり、また6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環でない場合には、分子の直線性が低下し、分子長軸方向の誘電率が低下する方向にある。また、好ましい液晶相をとらなくなる。その様子を下記に示す。
【0029】
下記構造式(I−1)に示すように、Aが1,4位に結合位置を有する6員の脂肪族環の場合(トランス型)、一般式(A−I)で表される化合物の長軸方向に結合手が延びている。
【0030】
【化6】

【0031】
これに対し、例えばAが5員の脂肪族環の場合、構造式(II−1)に示すように、5員の脂肪族環の位置において一般式(A−I)で表される化合物の形状が折れ曲がってしまう。したがって、分子長軸方向の誘電率が低下する。
【0032】
【化7】

【0033】
また、下記構造式(III)に示すように、Aが1,4位に結合位置を有する6員の芳香族環の場合、一般式(A−I)で表される化合物の長軸方向に結合手が延びている。これに対し、例えばAが5員の芳香族環の場合、下記構造式(IV)に示すようにAの位置において、一般式(A−I)で表される化合物の長軸方向に対して少なくとも36°屈折してしまう。したがって、本発明では、一般式(A−I)におけるAは6員環であることが必要である。
【0034】
【化8】

【0035】
一般式(A−I)におけるAは、6員環であれば複素環であってもよい。また、6員環と同様の効果を奏することから、一般式(A−I)におけるAは、少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環であってもよい。このような多環縮合環としては、以下のものを挙げることができる。なお、下記に挙げた多環縮合環は、環上の炭素が窒素、酸素、硫黄等であるような複素縮合環であってもよい。
【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
また、6員の脂肪族環の場合には、シクロヘキシル基のような飽和脂肪族環であっても、シクロヘキセニル基のような不飽和脂肪族環であってもよい。
【0039】
なお、一般式(A−I)におけるmが2の場合とは、前記Aが単結合で連結されて、−A−A−となっていることを意味する。
【0040】
さらに、一般式(A−I)で表される化合物中、Lは上記一般式(A−II)で表される連結基を表す。上記連結基Lの機能は明らかとなっていないが、一般式(A−I)で表される化合物を液晶組成物として用いる場合に、液晶組成物の粘度を好適な範囲に調整する機能を有すると考えられる。液晶の駆動を行う際に液晶組成物の粘度が高すぎると、駆動速度が遅くなり、且つ消費電力が大きくなってしまう。また、連結基が化学的に不安定であると、液晶の製造上の取り扱いが困難となってしまう。一般式(A−I)における連結基Lが、上記一般式(A−II)で表される連結基の場合に、好適な粘度の液晶化合物となり、かつ製造上の取り扱いが容易となる。
【0041】
更に、一般式(A−I)で表される化合物において長軸方向での分極を大きくするには、R2に電子吸引基又は電子供与性基を用いたり、連結基Lに−CH=CH−や−N=N−の二重結合を用いたり、不対電子対を有する酸素原子や窒素原子を連結基Lに配したり(例えば、−COO−、−CH2−O−、−N=N−など)することが効果的である。
【0042】
また、一般式(A−I)で表される化合物を二周波駆動性液晶化合物とするには、下記に示すように、長軸方向の分極に加え、短軸方向でも分極するようにすることが好ましい。
【0043】
【化11】

【0044】
ここで、一般式(A−I)で表される化合物において、1,3−ジオキサン基に隣接するエステル基のカルボニル基(C=O)は、上述の通り長軸方向への分極を促すとともに、短軸方向での分極にも寄与していることが明らかとなった。したがって、1,3−ジオキサン基とこれに隣接するエステル基とを有する化合物は、二周波駆動性液晶化合物として好適である。その中でも一般式(A−I)中のLがエステル基(−COO−)の場合、液晶組成物とした際の粘度が特に好適な範囲にあり、且つ短軸方向への分極率が増加するため、更に好適な二周波駆動性液晶化合物となる。
また、X1〜X6に電子吸引性基を用いたり、Aで表される6員環に電子吸引性基を用いたり、連結基Lに短軸方向に分極するエステル基(カルボニル基)を用いたりすることが短軸方向での分極に効果的であり、このような化合物も二周波駆動性液晶化合物として好適である。
【0045】
以下では、一般式(A−I)で表される化合物について、更に詳細に説明する。
一般式(A−I)におけるR1、R2、X1〜X6で表される置換基は、以下に置換基群Wから選ばれる置換基である。
【0046】
(置換基群W)
ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(以下「ヘテロ環基」と称する場合がある。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ウレイド基、が例として挙げられる。
【0047】
更に詳しくは、置換基群Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)が挙げられる。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0048】
アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5又は6員の置換若しくは無置換の、アリール基もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
【0049】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
【0050】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
【0051】
スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換若しくは無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、
【0052】
ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ウレイド基(好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)、を表す。
【0053】
また、2つのWが互いに結合して環を形成してもよい。このような環としては、例えば、アリール基、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる
【0054】
次に、一般式(A−I)におけるAで表される6員環及び6員環で構成される多環縮合環について説明する。
Aで表される6員環及び6員環で構成される多環縮合環は、上記で説明した通りであり、より好ましくは、下記で示す連結基である。
【0055】
【化12】

【0056】
上記6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環は、更に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、置換基群Wを挙げることができる。
【0057】
これらの6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環は、液晶の転移温度、Δε、粘性、Δnなどの諸物性を制御するために、置換基を有する芳香環も無置換の芳香環も、いずれも好ましく用いることができる。
Aで表される6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環が置換基を有する場合、該置換基は、前述の置換基群Wで列挙した置換基を挙げることができる。Aの置換基としては、前記置換基群Wの中でも、短軸方向に分極しやすいようにするには、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)、アルコキシ基、パーフロロアルコキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、等の電子吸引性基が好ましく、より好ましくは、フッ素原子、パーフロロアルコキシ基、シアノ基である。
【0058】
液晶性を示す化合物として用いる場合、一般式(A−I)におけるR1としては、好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エステル基である。ここで、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
【0059】
さらに好ましくは、R1は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜15、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。)、アルケニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜15のアルケニル基である。)、アルキニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜15のアルキニル基である。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基である。)、アリールオキシ基(好ましくはフェニルオキシ基である。)である。R1で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアルコキシ基が上記炭素数の範囲よりも長くなると、融点が高くなる、又は、好ましい液晶相をとらなくなる。
【0060】
一般式(A−I)におけるR2としては、一般式(A−I)で表される化合物が液晶性を示すためには、好ましくは、アリール基、複素環基、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基である。これらの基は置換基を有していても無置換でもよく、また単環であっても、多環縮合環を形成してもよい。
【0061】
特に、R2がアリール基の場合、上記結合基Lに対して、パラ位に置換基を有していることが好ましい。更に前記置換基が電子吸引性基の場合、一般式(A−I)で表される化合物の長軸方向での分極が大きくなるので、誘電率異方性が正に大きい液晶化合物とするには好適である。
【0062】
液晶性を示す化合物として用いる場合、一般式(A−I)におけるX1〜X6として、好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、アルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、アルキル基、トリフルオロメチル基である。
【0063】
更に、X1としては、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基であることが特に好ましく、X2〜X6としては水素原子、アルキル基が特に好ましい。
【0064】
一般式(A−I)中、Lは下記一般式(A−II)で表される連結基を表す。
【0065】
【化13】

【0066】
上記一般式(A−II)で表される上記連結基Lの中でも、−COO−であることが好ましい。−COO−の連結基Lを有する一般式(A−I)で表される化合物を液晶組成物に用いると、液晶の駆動を行うのに好適な粘度となる。なお、結合基Lが−CF2−O−の場合には、化合物の安定性の観点から、製造が難しいという問題がある。
【0067】
本発明の一般式(A−I)で表される化合物は、液晶性を示す化合物として用いる場合には、下記一般式(A−III)で表される化合物であることが、液晶温度範囲を広げる観点から好ましい。なお、一般式(A−III)は、前記一般式(A−I)におけるX2〜X6がすべて水素原子の場合である。
【0068】
【化14】

【0069】
上記一般式(A−III)において、R1、R2、X1、m、A、及びLは、それぞれ一般式(A−I)で説明したR1、R2、X1、m、A、及びLと同義である。
【0070】
また、上記一般式(A−I)で表される化合物の中でも、下記一般式(B−I)〜(B−V)で表される化合物であることが好ましい。なお、一般式(B−I)は、前記一般式(A−I)におけるAが、1,4−シクロへキシレン基の場合であり、一般式(B−II)は、前記一般式(A−I)におけるAが、1,4−フェニレン基の場合であり、一般式(B−III)は、前記一般式(A−I)におけるAが、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基の場合であり、一般式(B−IV)は、前記一般式(A−I)におけるAが、ナフタレン−2,6−ジイル基の場合であり、一般式(B−V)は、前記一般式(A−I)におけるAが、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基の場合である。一般式(B−I)〜(B−V)で表される化合物は、液晶温度範囲を広げる観点から好適である。
【0071】
【化15】

【0072】
一般式(B−I)〜一般式(B−V)で表される化合物において、R1、R2、X1及びLは、それぞれ一般式(A−I)で説明したR1、R2、X1及びLと同義であり、R3、は、R2と同義であり、nは0〜2のいずれかの整数を表す。
【0073】
上記一般式(A−I)で表される化合物の中でも、更に下記一般式(A−IV)で表される化合物であることが、誘電率異方性を大きくする点で好ましい。
【0074】
【化16】

【0075】
上記一般式(A−IV)中、R1、X1、A及びLは、それぞれ一般式(A−I)で説明したR1、X1、A及びLと同義であり、R4は置換基を表し、Bは、一般式(A−I)で説明したAと同義である。mは1又は2、pは1又は2を表す。
4で表される置換基としては、各々独立に、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、パーフルオロアルコキシ基、アルキル基、アルコキシ基であることがより好ましい。
【0076】
一般式(A−IV)中のBにおいて、連結基Lと置換基R4との位置関係がパラ位となることが、一般式(D−I)で表される化合物における液晶性および誘電率の観点から好ましい。
【0077】
一般式(A−I)で表される化合物の中でも、特に好ましいのは、下記一般式(C−I)〜一般式(C−V)で表される化合物であり、更に二周波駆動性液晶化合物の場合には、その中でも下記一般式(D−I)〜一般式(D−V)で表される化合物である。
【0078】
【化17】

【0079】
【化18】

【0080】
一般式(C−I)〜(C−V)、(D−I)〜(D−V)中、R1、R3、R4、X1、L及びBは、それぞれ一般式(A−I)、(B−I)〜(B−V)及び(A−IV)で説明したR1、R3、R4、X1、L及びBと同義である。
【0081】
以下に、本発明における一般式(A−I)で表される化合物の具体的例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。

【0082】
【化19】

【0083】
【化20】

【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
【化24】

【0088】
本発明の特定の構造を有する化合物を用いることで、誘電率異方性|Δε|が大きい化合物を得ることができる。大きな誘電率異方性|Δε|は、しきい値電圧が低くなるため液晶組成物を用いるデバイスの高速応答に有効であり、様々な液晶表示方式に必要な物性である。
また、本発明の特定の構造を有する化合物は、二周波駆動性を示すため、本発明の化合物を用いたデバイスは、二周波駆動方法によって表示などの駆動を行うことができる。
【0089】
本発明の一般式(A−I)で表される化合物は、1,3−ジオキサン−2−カルボン酸化合物とアルコール化合物(フェノールなどの芳香族アルコールを含む)の縮合反応によって合成できる。縮合反応では、下記スキーム1に示すように、ジシクロヘキシルカルボジイミドのような、有機合成用に用いられている縮合剤を使うことで合成できる。また、カルボン酸を塩化チオニルやオキシ塩化リンなどのクロロ化剤と反応させて酸クロライドを合成してからアルコールとの縮合反応を行うこともできる。
【0090】
【化25】

【0091】
この際、対応する1,3−ジオキサン酸化合物は、下記スキーム2に示すように、対応する1,3−ジオール化合物とグリオキシル酸エチルを、酸触媒の存在下に脱水縮合反応し、引き続きアルカリによるエステルの加水分解をすることによって合成することができる。この際、シアノ基、エステル基など、酸や塩基に弱い官能基は合成中に分解が起こるので、これらの置換基を導入する際には、1,3−ジオキサン化合物を合成した後に導入することが好ましい。
【0092】
【化26】

【0093】
2つの基が導入された1,3−ジオキサン環は、シス体とトランス体が存在するが、このうち液晶性を示すのは専らトランス体の化合物である。そのため、合成した1,3−ジオキサン化合物はカラムクロマトグラフィーや再結晶によって精製が必要になる。1,3−ジオキサン環の置換基の炭素数が大きくなると、カラムクロマトグラフィーによる精製が困難になるため、このような場合には再結晶によって精製する方法が好ましい。
【0094】
2.組成物
また、本発明では、一般式(A−I)で表される化合物を少なくとも一種含有する組成物を提供する。
かかる組成物は、一般式(A−I)で表される化合物を単独又は2種以上含有してよく、適宜、液晶に用いられる公知の化合物を添加して液晶組成物(好ましくはゲストホスト用液晶組成物)として用いてもよい。組成物における本発明の化合物の割合は特に限定されず、所望の物理的特性に応じて、任意の割合で混合できる。
本発明の組成物を液晶組成物として用いる場合、混合する液晶を用いて液晶組成物の物理的特性(光学特性等)を適宜調節してもよい。本発明の組成物において、併用可能な液晶化合物は、限定されないが、二周波液晶(ネマチック、スメクチック)が好ましい。
【0095】
3.表示装置
本発明の化合物及び組成物は、液晶ディスプレイ等の表示装置に用いることができる。例えば、表示装置は、一対の電極基板と、前記一対の電極基板の間に配置された液晶層とを有し、前記液晶層は本発明の一般式(A−I)で表される化合物を少なくとも一種含む。
【0096】
電極としては、通常ガラスあるいはプラスチックからなる基板上に、電極層を形成したものを用いることができる。プラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、PESあるいはPENなどが挙げられる。
基板については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第218〜231頁に記載のものを用いることができる。基板上に形成される電極層は、好ましくは透明電極層である。例えば、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ等から形成することができる。透明電極については、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第232〜239頁に記載のものを用いることができる。
本発明の表示装置は、誘電率異方性|△ε|が大きい一般式(A−I)で表される化合物を用いるため、しきい電力が低くなり、消費電力を抑えることができる。また、一般式(A−I)で表される化合物は二周波駆動性を示すため、この化合物を用いた本発明の表示装置を二周波駆動によって表示させることができる。
【0097】
本発明の表示装置は、例えば、一対の基板をスペーサーなどを介して、1〜50μm間隔で対向させ、基板間に形成された空間に本発明の液晶組成物を配置することにより作製することができる。前記スペーサーについては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第257〜262頁に記載のものを用いることができる。本発明の液晶組成物は、基板上に塗布あるいは印刷することにより基板間の空間に配置することができる。
【0098】
本発明の表示装置は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクティブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。駆動方式については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第387〜460頁に詳細が記載され、本発明の液晶素子の駆動方法として利用できる。
【0099】
本発明の表示装置は、本発明の一般式(A−I)で表される化合物のほかに、適宜、一般的に表示装置に用いる化合物や部材を適用することができる。
【0100】
4.光学要素
本発明の化合物及び組成物は、以下に説明する光学要素としても好適に利用できる。
本発明における光学要素は、具体的には、円偏光発光フィルム、光学フィルム、位相差板、強誘電性フィルム、反強誘電性フィルム、及び圧電フィルム等の機能性フィルム等、並びに(円)偏光発光素子、(1次のフォトニック結晶効果に基づく)光励起あるいは電界励起によるレーザー発振素子、LCD用バックライト、非線形光学素子、電気光学素子、焦電素子、圧電素子、及び光変調素子等の機能性素子等をいう。
【0101】
本発明において光学要素は、例えば、一枚の支持体、又は一対の支持体(セルなど)等に、1)本発明の化合物(又は組成物)を塗布した後架橋する方法、又は2)本発明の化合物(又は組成物)をそのまま注入する方法等により製造できる。
これらの光学要素は、誘電率異方性|△ε|が大きい一般式(A−I)で表される化合物を用いるため、しきい電力が低くなり、消費電力を抑えることができる。また、一般式(A−I)で表される化合物は二周波駆動性を示すため、この化合物を用いた本発明の光学要素を二周波駆動によって表示させることができる。
【0102】
位相差板の場合には、支持体は透明支持体を用いる。かかる透明支持体としては特に制限は無いが、ガラス、TAC、PET、PEN、COP、PMMA、PS、ポリカーボネートなどを用いることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
[実施例1]
<例示化合物(1)の合成>
【化27】

【0105】
(化合物1aの合成)
窒素置換した500mlの三つ口フラスコに、1.0mol/lのリチウムアルミニウムハイドライド(100ml(0.1mol)、アルドリッチ製)を入れ、氷浴で内温5℃以下に調整する。ノルマルブチルマロン酸ジエチル(8.0g(0.037mol))を100mlの脱水THFに溶解させ、滴下ロートで30分かけて滴下する。滴下終了後、湯浴で内温65℃に過熱し、反応溶媒を還流させる。4時間後、薄層クロマトグラフィーによって原料の消失を確認し、反応溶液を30℃以下に降温する。反応溶液に水10mlを入れて未反応のリチウムアルミニウムハイドライドを分解する。pH2以上になるまで1規定塩酸水溶液を加え、反応溶液を50mlの酢酸エチルで3回抽出する。得られた酢酸エチル溶液を飽和食塩水及び重曹水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた溶液を濃縮することで、粗生成物が5.0g得られる。この組成生物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により精製することで、化合物1aを4.4g(収率90%)を得る。
【0106】
(化合物1bの合成)
東京化成製のグリオキシル酸エチル(ポリマー型)(47質量%トルエン溶液)から東京化成の精製法マニュアルに従いグリオキシル酸エチルモノマーを合成する。グリオキシル酸エチル(ポリマー型)(47質量%トルエン溶液)25gに、85質量%燐酸を25mg加え、80〜81℃/20.4kPaで減圧蒸留を行い、グリオキシル酸エチルモノマーを10g得る。得られたモノマーは反応性に富み、ポリマー化などが容易に進行するため、合成後直ちに使用することに注意する。またポリマー化反応は発熱反応であり、密栓をした容器に保存すると発生するガスなどにより容器の内圧が高くなることがあるので、保存せずに使い切ることに注意する。
【0107】
50mlナスフラスコに、化合物1a(2.0g(15.1mmol))、グリオキシル酸エチルモノマー(1.7g(17mmol))、AMBERLIST(200mg、ICN Biomedicals製)、クロロホルム10mlを入れ、ディーンスターク還流管とジムロートを取り付ける。オイルバスで4時間加熱還流し、反応溶液を水冷する。反応溶液を濾過し、酢酸エチルで容器内の化合物を洗い出す。得られたクロロホルム−酢酸エチル溶液を濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィーにより精製(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)することにより、化合物1bを2.9g(収率89%)得る。
【0108】
(化合物1cの合成)
100mlのナスフラスコに、化合物1b(2.9g(13.4mmol))、水酸化カリウム(7.5g(134mmol))、メタノール30ml、及び12mlの水を入れる。反応容器を70℃のオイルバスで過熱する。4時間後、薄層クロマトグラフィーによって原料の消失を確認し、反応溶液を氷浴によって冷却する。反応溶液がpH1になるまで1規定塩酸水溶液を加え、反応溶液を酢酸エチル20mlで3回抽出する。得られた酢酸エチル溶液硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別する。得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで、化合物1c2.0g(収率80%)を得る。
【0109】
【化28】

【0110】
(化合物1dの合成)
2.0リットルのナスフラスコに、2−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリル(40g(0.29mol)、東京化成製)、水酸化ナトリウム(233g(5.8mol))、及び、800mlの水を入れる。反応容器を120℃のオイルバスで過熱し、反応溶媒を還流させる。4時間後、薄層クロマトグラフィーによって原料の消失を確認し、反応溶液を30℃まで降温する。反応溶液がpH1以上になるまで3規定塩酸水溶液を加える。反応溶液を氷冷することで、粗生成物が36.4g得られる。この粗生成物をヘキサンに懸濁させ、濾取することにより、化合物1dを40.1g(収率80%)を得る。
【0111】
(化合物1eの合成)
300ml三つ口フラスコに、化合物1d(10g(64mmol))、トリエチルアミン(26.8ml(192mmol)和光純薬製)、THF100mlを入れる。水浴で内温35℃から40℃に調整しながら、tert−ブチルトリメチルシリルクロリド(21g(141mmol)東京化成製)を3回に分けて添加する。2時間攪拌し、反応溶液を水冷する。反応溶液に1規定塩酸100ml、酢酸エチル100mlを加え、分液ロートで有機層を分けとる。得られた溶液を分液ロートに入れ、有機層を1規定塩酸で洗浄し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することによりオイル上の液体が得られる。得られた液体をTHF90mlに溶解させ、12%炭酸カリウム溶液を80ml滴下する。滴下終了後、酢酸エチル400mlで希釈し、1規定塩酸100mlで中和する。分液ロートで有機層を分け取り、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することにより、粗生成物が15.7g得られる。シリカゲルクロマトグラフィーにより精製(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)することにより、化合物1eを14.0g(収率81%)得る。
【0112】
(化合物1fの合成)
300ml三つ口フラスコに、化合物1e(14.2g(53mmol))、p−フルオロフェノール(5.9g(53mmol)和光純薬製)、4−ジメチルアミノピリジン(1.28g(10.5mmol)東京化成製)、ジクロロメタン100mlを入れる。水浴で外接温度40℃に調整し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(13g(63mmol))のジクロロメタン溶液50mlを滴下する。2時間加熱還流し、反応溶液を水冷する。反応溶液に1規定塩酸30ml、ヘキサン100mlを加え、濾過する。得られた溶液を分液ロートに入れ、有機層を分取する。有機層を飽和食塩水、重曹水で洗浄し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することにより粗生成物が15.6g得られる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)することにより、化合物1fを12.7g(収率67%)得る。
【0113】
(化合物1gの合成)
300ml三つ口フラスコに、化合物1f(12.7g(35mmol))、THF130mlを入れる。氷浴で内温10℃に調整し、1mol/lのテトラブチルアンモニウムフルオライドTHF溶液を42ml(42mmol)滴下する。室温で30分攪拌し、反応溶液に酢酸エチル200ml、1規定塩酸50mlを滴下する。得られた溶液を分液ロートに入れ、有機層を分取する。有機層を飽和食塩水、重曹水で洗浄し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することにより粗生成物が8.1g得られる。得られた粗生成物をメタノール/水溶液から再結晶することにより、化合物1gを7.5g(収率86%)得る。
【0114】
【化29】

【0115】
(化合物1の合成)
100ml三つ口フラスコに、化合物1c(500mg(2.7mmol))、化合物1g(660mg(2.7mmol))、ジクロロメタン10mlを入れる。氷浴で内温5℃以下に調整し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(710mg(3.4mmol))のジクロロメタン溶液15mlを滴下する。そのままの温度で3時間攪拌し、室温で1時間攪拌する。反応溶液にヘキサン100mlを加え、濾過する。得られた溶液を分液ロートに入れ、有機層を分取する。有機層を飽和食塩水、重曹水で洗浄し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することにより粗生成物が950mg得られる。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1〜4/1)することにより、化合物1を870mg(収率78%)得る。
【0116】
<例示化合物(29)の合成>
p−ヒドロキシベンジルアルコール(和光純薬製)をブロモ化し、これとp−トリフルオロメトキシフェノールとの反応により合成した4−(4−トリフルオロメトキシ−フェノキシメチル)フェノールと、化合物1cとのエステル化反応により合成した。
【0117】
【化30】

【0118】
(誘電率異方性Δε)
誘電率異方性Δεは、メルク社製液晶ZLI−1132を用いた外挿法により算出する。算出の誘電率異方性Δεを下記表1に示す。比較に用いた化合物1,2の構造を下記に示す。
【0119】
【化31】

【0120】
【表1】

【0121】
表1に示すとおり、本発明の化合物は、低周波数と高周波数における誘電率異方性の値が大きく、二周波駆動液晶として好適であることがわかる。
【0122】
[実施例2]
<例示化合物(12)の合成>
以下に、例示化合物(12)の合成スキームを示す。
【0123】
【化32】

【0124】
1.0リットルのステンレス製オートクレーブに、p−ヒドロキシ安息香酸(100g(0.72mol)、東京化成製)、5%Ru/C(35g(0.017mol)、東京化成製)、水酸化カリウム(91g(1.4mol))及び、500mlの水を入れる。オートクレーブ内部を窒素置換3回、水素置換3回行い、水素圧7.5MPa導入し、150℃に過熱する。反応の進行と共に水素圧が減っていくので適宜水素を追加する。水素圧の低下が見られなくなったところで水素圧を開放し、窒素置換する。反応溶液をセライト濾過し、得られた水溶液を5規定塩酸で中和し、pHを1以下にする。酢酸エチルで3回抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムを濾別し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮すると、粗生成物が78g得られる。この組成生物をヘキサンに懸濁させ、濾取することにより、シス体とトランス体の比が1:7の混合物(2a)を40g(収率39%)得る。
以上のようにして合成したシクロヘキサノール化合物(2a)を用いて、実施例1と同様にして合成したジオキサンカルボン酸誘導体とのエステル化反応をおこなった。これを水素添加により脱保護し、フェノール類とエステル化反応をおこなうことで、例示化合物12を合成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A−I)で表される化合物。
【化1】

〔一般式(A−I)中、R1、R2、及びX1〜X6は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Lは下記一般式(A−II)で表されるいずれか1つの連結基を表し、Aは6員環又は少なくとも1つの6員環で構成される多環縮合環を表す。また、mは1又は2を表す〕
【化2】

【請求項2】
前記Lで表される連結基が、−COO−であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(A−I)におけるX2〜X6が、水素原子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(A−I)におけるAが6員環のときは、1,4位に結合位置を有する6員環であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記一般式(A−I)で表される化合物が、下記一般式(B−I)〜(B−V)で表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【化3】

〔一般式(B−I)〜(B−V)中、R1、R2、R3及びX1は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Lは前記一般式(A−II)で表されるいずれか1つの連結基を表す。〕
【請求項6】
一般式(A−I)におけるAが6員環で構成されるビシクロ基のときは、3,8位に結合位置を有するビシクロ基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1種含有する組成物。
【請求項8】
透明支持体と、該透明支持体の上に請求項7に記載の組成物を含有する光学異方性層を少なくとも1層有する位相差板。
【請求項9】
一対の電極基板と、前記一対の電極基板の間に、請求項7に記載の組成物を含有する液晶層と、を有する表示装置。

【公開番号】特開2007−223950(P2007−223950A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46803(P2006−46803)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】