説明

1,8−ナフチリジン誘導体および該誘導体を含有する有機電界発光素子

【課題】 本発明は、1,8−ナフチリジン誘導体および該誘導体を含有する有機電界発光素子の提供。
【解決手段】下記一般式(1)
【化1】


(mは0または1,nは2〜6の整数)
で示される1,8−ナフチリジン誘導体およびそれを含有する有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気エネルギーを光に変換して発光する発光素子および各種有機半導体デバイス等に用いることが可能な新規なヘテロ環化合物、すなわち、1,8−ナフチリジン誘導体およびそれを含有する有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な有機化合物が、種々の機能を有することが見いだされ、これを表示素子材料、記憶材料等に利用する研究が盛んに行われている。中でも、有機電界発光素子(有機EL素子;有機エレクトロルミネッセンス素子)は比較的低電圧で高輝度の発光が可能であることから特に注目を集めている。代表的な例として、有機化合物の蒸着で形成した有機薄膜からなる発光素子が良く知られている[非特許文献1]。この発光素子は、電子輸送兼発光材料であるトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)と正孔輸送材料である(トリアリールアミン化合物)を積層した構造からなり、これまでの単層型素子に比較して発光特性が大幅に向上している。
【0003】
しかしながら、有機電界発光素子を実用化する上で、素子の安定性、耐久性、発光輝度、発光効率、低電圧化等の解決すべき問題が数多く残されている。発光輝度、発光効率を向上させる手法として、例えばトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)層にクマリン誘導体等の蛍光性色素をドープする方法が知られている。この方法によって、ドープする色素を選択することにより所望の色の光を出すことができる。しかし、高輝度を得るために駆動電圧を高くしてしまうとAlqからの発光が混入してしまい色純度が低下する問題が出てきてしまう。また、バソフェナントロリン、バソクプロイン(BCP)等のホールブロック性を有する電子輸送材料を使用することにより発光効率を高める手法が知られているが、この種の材料を用いた発光素子は、高温保存時および連続発光時に素子の劣化が著しいことが問題となっている。この劣化原因は、おそらく材料の結晶性が非常に良く、ガラス転移点(Tg)が低いためであると推定される。
【0004】
一方、有機電界発光素子の駆動電圧の低電圧化については、陰極と電子輸送層の間にフッ化リチウムなどの陰極界面層を設けることによって、電子注入を容易にして低電圧化を図る方法が知られている。また、バソフェナントロリンからなる電子輸送層にナトリウムをドープすることによって低電圧化する方法が、最近、報告されている[非特許文献2]。しかし、有機電界発光素子の実用化の観点からすると、さらに駆動電圧を低電圧化する必要がある。
【0005】
1,8−ナフチリジン誘導体については、その合成が、P.Caluweらによって既に報告されている[非特許文献3、4]。また、1,8−ナフチリジン誘導体を発光素子等に使用した例としては、置換基を持たない1,8−ナフチリジン構造を2つ持つテトラフェニルメタンを電子輸送層に用いた有機電界発光素子がわずかに1例開示されているが、その電子輸送性能は不十分であった[特許文献1]。
【0006】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,51,913(1987).
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,73,2866(1998).
【非特許文献3】J.Org.Chem.,40,2566(1975).
【非特許文献4】Macromolecules,12,803(1979).
【特許文献1】特開2003−206278
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、1,8−ナフチリジン誘導体および該誘導体を含有する有機電界発光素子を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決を目的に鋭意研究した結果、本発明者等は、1,8−ナフチリジン骨格を有する特定の化合物が、高い電子輸送性能を有し、また、これらの化合物にセシウムをドープすることにより電子輸送性能が飛躍的に向上することを初めて発見し、本発明の完成に至ったものである。
【0009】
本発明の第1は、下記一般式(1)
【化6】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良く;Lは単結合、窒素原子、酸素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基よりなる群から選ばれた基であり、Lの結合位置は、Rが結合している位置またはRが結合している位置であり、LがRの位置に結合している場合は、Rの代わりにLが結合している形であり、LがRの位置に結合している場合は、Rの代わりにLが結合している形であり、mは0または1であり、nは2〜6から選ばれた整数である)
で示される1,8−ナフチリジン誘導体に関する。
本発明の第2は、下記一般式(2)
【化7】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良い)
で示される請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体に関する。
本発明の第3は、下記一般式(3)
【化8】

(式中、R〜R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良く;Lは単結合、窒素原子、酸素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基よりなる群から選ばれた基であり、nは2〜6から選ばれた整数である)
で示される請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体に関する。
本発明の第4は、下記一般式(4)
【化9】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良く;Lは単結合、窒素原子、酸素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基よりなる群から選ばれた基であり、nは2〜6から選ばれた整数である)
で示される請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体に関する。
本発明の第5は、請求項1記載の一般式(1)で示される1,8−ナフチリジン誘導体が下記式で示される2,3,6,7−テトラフェニル−1,8−ナフチリジンである請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体に関する。
【化10】

本発明の第6は、一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体よりなる電子輸送材料に関する。
本発明の第7は、一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体よりなる電子注入材料に関する。
本発明の第8は、一対の電極間に一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を少なくとも一種含有する層を含む有機電界発光素子に関する。
本発明の第9は、一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子輸送層である請求項8記載の有機電界発光素子に関する。
本発明の第10は、一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子注入層である請求項8記載の有機電界発光素子に関する。
本発明の第11は、一般式(1)で示される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層にアルカリ金属がドーピングされている請求項8記載の有機電界発光素子に関する。
本発明の第12は、アルカリ金属がドーピングされている一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子輸送層である請求項8記載の有機電界発光素子に関する。
本発明の第13は、アルカリ金属がドーピングされている一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子注入層である請求項8記載の有機電界発光素子に関する。
【0010】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれもが使用可能である。
【0011】
炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロトリデシル基、パーフルオロテトラデシル基、パーフルオロペンタデシル基等が挙げられる。
【0012】
置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−フェニル−1−ナフチル基、4−フェニル−2−ナフチル基、5−フェニル−1−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、10−フェニル−9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、1−フルオランテニル基、2−フルオランテニル基、3−フルオランテニル基、8−フルオランテニル基、2−トリフェニレニル基、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、9,9−ジブチルフルオレン−2−イル基、9,9−ジヘキシルフルオレン−2−イル基、9,9−ジオクチルフルオレン−2−イル基、9,9−ジフェニルフルオレン−2−イル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、p−テルフェニル−3−イル基、p−テルフェニル−4−イル基、m−テルフェニル−3−イル基、m−テルフェニル−4−イル基、o−テルフェニル−3−イル基、o−テルフェニル−4−イル基、4−(1−ナフチル)−1−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−tert−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−シアノフェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、10−メチル−9−アントリル基、10−メトキシ−9−アントリル基、4−フェニル−8−フルオランテニル基、7−ジメチルアミノ−9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、3′,5′−ジフェニルビフェニル−4−イル基等が挙げられる。
【0013】
置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基としては、2−フリル基、4−フェニル−2−フリル基、2−チエニル基、4−フェニル−2−チエニル基、4−(2−チエニル)−2−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、4−フェニル−2−ピリジル基、6−フェニル−2−ピリジル基、4−(ジメチルアミノ)−2−ピリジル基、2,2′−ビピリジル−6−イル基、2,2′−ビピリジル−5−イル基、2,3′−ビピリジル−6−イル基、2−ピリミジニル基、2−ピラジニル基、2−インドリジニル基、2−イソインドリル基、8−プリニル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、8−キノリル基、8−メトキシ−2−キノリル基、4−フェニル−2−キノリル基、2−キノキサリニル基、2−キナゾリニル基、4−キナゾリニル基、5−キナゾリニル基、6−キナゾリニル基、1,8−ナフチリジン−2−イル基、2−プテリジニル基、2−カルバゾリル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、3−フェニル−1,10−フェナントロリン−2−イル基、3−フェニル−1,10−フェナントロリン−4−イル基、3−フェニル−1,10−フェナントロリン−5−イル基、4−フェニル−1,10−フェナントロリン−2−イル基、4−フェニル−1,10−フェナントロリン−3−イル基、4−フェニル−1,10−フェナントロリン−5−イル基、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン−2−イル基、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、ベンゾ[b]フラン−2−イル基、ベンゾ[b]フラン−3−イル基、ベンゾ[b]フラン−5−イル基、ベンゾ[b]フラン−6−イル基、ベンゾ[b]チオフェン−2−イル基、ベンゾ[b]チオフェン−3−イル基、ベンゾ[b]チオフェン−5−イル基、ベンゾ[b]チオフェン−6−イル基、1−メチルインドール−2−イル基、1−メチルインドール−3−イル基、1−メチルインドール−5−イル基、ジベンゾフラン−1−イル基、ジベンゾフラン−2−イル基、ジベンゾフラン−3−イル基、ジベンゾフラン−4−イル基、ジベンゾチオフェン−1−イル基、ジベンゾチオフェン−2−イル基、ジベンゾチオフェン−3−イル基、ジベンゾチオフェン−4−イル基、9−フェニルカルバゾール−2−イル基、9−フェニルカルバゾール−3−イル基、9−メチルカルバゾール−2−イル基、9−メチルカルバゾール−3−イル基、ベンゾ[b][1,8]ナフチリジン−2−イル基、ピリド[2,3−g]キノリン−2−イル基、ピリド[3,2−g]キノリン−2−イル基、1,8,9−トリアザアントラセン−2−イル基等が挙げられる。
【0014】
炭素数3〜40の有機ケイ素基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、トリオクチルシリル基、トリデシルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジエチルフェニルシリル基、ジメチル(p−トリル)シリル基、ジメチル(m−トリル)シリル基、ジメチル(1−ナフチル)シリル基、ジメチル(2−ナフチル)シリル基、ジメチル(9−アントリル)シリル基、ジメチル(4−メトキシフェニル)シリル基、ジメチル(4−ジメチルアミノフェニル)シリル基、メチルジフェニルシリル基、イソプロピルジフェニルシリル基、n−ブチルジフェニルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、メチルジ(p−トリル)シリル基、メチルジ(1−ナフチル)シリル基、トリフェニルシリル基、トリ(p−トリル)シリル基(1−ナフチル)ジフェニルシリル基、(2−ナフチル)ジフェニルシリル基、ジフェニル(p−トリル)シリル基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルシリル基等が挙げられる。
【0015】
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエチルオキシ基、2−(2−メトキシエトキシ)エチルオキシ基、2−エトキシエチルオキシ基、2−ブトキシエチルオキシ基、2−(ジメチルアミノ)エチルオキシ基、2−(ジブチルアミノ)エチルオキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、3−メトキシプロピルオキシ基、3−エトキシプロピルオキシ基、3−(ジメチルアミノ)プロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−ブチルヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、4−フルオロベンジルオキシ基、3−(ジメチルアミノ)ベンジルオキシ基、4−フェニルベンジルオキシ基、1−ナフチルメチルオキシ基、2−ナフチルメチルオキシ基、1−(2−メトキシナフチル)メチルオキシ基、9−アントリルメチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基、ジ(p−トリル)メチルオキシ基、ジ(4−メトキシフェニル)メチルオキシ基、ジ(1−ナフチル)メチルオキシ基、トリフェニルメチルオキシ基、3−フェニルプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、イソプロピルメチルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、イソブチルメチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルエチルアミノ基、エチルイソブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、メチルペンチルアミノ基、エチルペンチルアミノ基、ヘキシルメチルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基、ブチルヘキシルアミノ基、ヘキシルペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基、シクロヘキシルエチルアミノ基、シクロヘキシルイソプロピルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、メチルオクチルアミノ基、ヘプチルメチルアミノ基、ヘプチルイソプロピルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、メチルオクチルアミノ基、オクチルプロピルアミノ基、ジオクチルアミノ基、デシルエチルアミノ基、デシルイソプロピルアミノ基、ジ(2−エチルヘキシル)アミノ基、ドデシルメチルアミノ基、ドデシルヘキシルアミノ基、シクロヘキシルドデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基等が挙げられる。
【0017】
置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(o−トリル)アミノ基、N,N−ジ(m−トリル)アミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、N,N−ジ(1−ナフチル)アミノ基、N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ基、N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−エチルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−フルオロフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−ジメチルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ基、N−(1−ナフチル)−N−(o−トリル)アミノ基、N−(2−ナフチル)−N−(o−トリル)アミノ基、N−(1−アントリル)フェニルアミノ基、N−(2−アントリル)−N−フェニルアミノ基、N−(9−アントリル)−N−フェニルアミノ基、N−(10−メチル−9−アントリル)−N−フェニルアミノ基、N−(1−アントリル)−N−(1−ナフチル)アミノ基、N−(2−アントリル)−N−(1−ナフチル)アミノ基、N−(9−アントリル)−N−(2−ナフチル)アミノ基、N−(10−メチル−9−アントリル)−N−(2−ナフチル)アミノ基、N−(9−フェナントリル)−N−フェニルアミノ基、N−(9−フェナントリル)−N−(p−トリル)アミノ基、N−(1−ナフチル)−N−(9−フェナントリル)アミノ基、N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ基、N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−(m−トリル)アミノ基、N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−(1−ナフチル)アミノ基、N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−(4−メトキシフェニル)アミノ基、N−(1−アントリル)−N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)アミノ基、N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−(9−フェナントリル)アミノ基、N,N−ビス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)アミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−(p−トリル)アミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−(4−メトキシフェニル)アミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−(1−ナフチル)アミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−(2−ナフチル)アミノ基、N−(1−アントリル)−N−(3−フルオランテニル)アミノ基、N−(9−アントリル)−N−(3−フルオランテニル)アミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−(9−フェナントリル)アミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)アミノ基、N,N−ジ(3−フルオランテニル)アミノ基、N−フェニル−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(1−ピレニル)−N−(p−トリル)アミノ基、N−(4−ジメチルアミノフェニル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(1−ナフチル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(2−ナフチル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(1−アントリル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(9−アントリル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(1−ピレニル)−N−(9−フェナントリル)アミノ基、N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(3−フルオランテニル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(9−フルオランテニル)−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−(3−ペリレニル)−N−フェニルアミノ基、N−(3−ペリレニル)−N−(m−トリル)アミノ基、N−(4−ジメチルアミノメチル)−N−(3−ペリレニル)アミノ基、N−(1−ナフチル)−N−(3−ペリレニル)アミノ基、N−(2−ナフチル)−N−(3−ペリレニル)アミノ基、N−(1−アントリル)−N−(3−ペリレニル)アミノ基、N−(3−ペリレニル)−N−(9−フェナントリル)アミノ基、N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−(3−ペリレニル)アミノ基、N−(9−フルオランテニル)−N−(3−ペリレニル)アミノ基、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)アミノ基、ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)アミノ基等が挙げられる。
【0018】
Lは単結合、窒素原子、酸素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基よりなる群から選ばれた基である。なお、ここで脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素の区別は、1,8−ナフチリジン骨格に結合している炭素骨格の種類によるものである。
【0019】
置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基の例としては、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、ベンジリデン基、4−tert−ブチルフェニルメチレン基、4−メトキシフェニルメチレン基、p−フェニルベンジリデン基、ジフェニルビニリデン基等が挙げられる。
【0020】
置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基の例としては、メチリジン基、エチリジン基、プロピリジン基、ブチリジン基、ペンチリジン基、へキシリジン基、ベンジリジン基、p−メトキシベンジリジン基、p−フェニルベンジリジン基等が挙げられる。
【0021】
置換もしくは無置換の炭素数4〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基の例としては、前記アリール基として挙げた1価の基より水素原子を1〜5個除いて形成される2〜6価の基であり、p−フェニレン基、m−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、9,10−アントラセンジイル基、2,7−フェナントリレン基、ビフェニル−4,4′−ジイル基、ビフェニル−3,5−ジイル基、1,1′−ビナフタレン−4,4′−ジイル基、4,4′−イソプロピリデンジフェニル−1,1′−ジイル基、4,4′−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニル−1,1′−ジイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、4,4′,4″−エチリジントリフェニル−1,1′,1″−トリイル基、ビフェニル−3,5,3′,5′−テトライル基等が挙げられる。
【0022】
置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基の例としては、前記ヘテロアリール基として挙げた1価の基より水素原子を1〜5個除いて形成される2〜6価の基であり、ピリジン−2,6−ジイル基、キノリン−2,4−ジイル基、1,10−フェナントロリン−2,9−ジイル基、1,10−フェナントロリン−4,7−ジイル基、ピリジン−2,4,6−トリイル基等が挙げられる。
【0023】
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基の例としては、前記アルキル基として挙げた1価の基にアミノ基が置換した基であり、メチルアミノ基、エチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、オクチルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基の例としては、前記アリール基として挙げた1価の基にアミノ基が置換した基であり、フェニルアミノ基、4−tert−ブチルフェニルアミノ基、4−メトキシフェニルアミノ基、m−トリルアミノ基、4−(ジフェニルアミノ)フェニルアミノ基、4−ビフェニリルアミノ基、3−ビフェニリルアミノ基、2−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0025】
一般式(2)で表される1,8−ナフチリジン誘導体の好ましい具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】
【化13】

【0029】
【化14】

【0030】
【化15】

【0031】
【化16】

【0032】
【化17】

【0033】
【化18】

【0034】
【化19】

【0035】
【化20】

【0036】
【化21】

【0037】
【化22】

【0038】
【化23】

【0039】
【化24】

【0040】
【化25】

【0041】
【化26】

【0042】
【化27】

【0043】
【化28】

【0044】
【化29】

【0045】
【化30】

【0046】
【化31】

【0047】
【化32】

【0048】
本発明の一般式(1)で示される誘導体は、一般式(6)で示される3−アシル−2−アミノピリジン誘導体と一般式(7)、(8)、(9)で示されるα−メチレンカルボニル化合物を、塩基または酸の存在下で縮合環化させてピリジン環を形成する反応(Friedlander反応)により製造することができる[Organic Reactions, 28巻、37頁]。本発明の一般式(1)の化合物、すなわち、一般式(2)で表される化合物は一般式(6)で示される化合物と一般式(7)で示される化合物より得ることができ、一般式(3)で示される化合物は、一般式(6)で示される化合物と一般式(8)で示される化合物得ることができ、一般式(4)で示される化合物は、一般式(6)で示される化合物と一般式(9)で示される化合物より得ることができる。
【化33】

【0049】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される化合物の製造に用いられる一般式(6)で示される3−アシル−2−アミノピリジン誘導体および一般式(7)、(8)、(9)で示されるα−メチレンカルボニル化合物は、公知の製造方法により製造することができる[J.Org.Chem.,40,1438(1975)、J.Org.Chem.,30,3354 (1965)]。
【0050】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体の製造は、通常、エタノール中で塩基または酢酸中で酸を作用させて行う。本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体の製造で使用される塩基の例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピペリジン等を挙げることができる。また、本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体の製造で使用される酸の例としては、例えば、塩酸、硫酸等を挙げることができる。
【0051】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体は、高い電子輸送性能を有する。従って、電子注入材料および電子輸送材料として用いることができる。
【0052】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体を有機電界発光素子に用いる場合、ホスト材料としても、ドーパントとしても用いることができる。
【0053】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体を電子輸送層に用いる場合、電子注入材料、電子輸送材料として用いることができる。また、この電子輸送層がドーパントを含有する層であってもよい。
【0054】
次に本発明の有機電界発光素子について説明する。本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機化合物層を積層した素子であり、該有機化合物層の少なくとも一層が本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する。有機電界発光素子が一層型の場合、陽極と陰極間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送する目的で、正孔注入材料もしくは電子注入材料を含有してもよい。また、複数の発光材料を混合してもよい。多層型の有機電界発光素子の構成例としては、例えば、陽極/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極等の多層構成で積層したものが挙げられる。また、必要により陰極上に封止層を有していてもよい。
【0055】
正孔輸送層、電子輸送層、および発光層のそれぞれの層は、一層構造であっても、多層構造であってもよい。また、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれの層で、注入機能を受け持つ層(正孔注入層および電子注入層)と輸送機能を受け持つ層(正孔輸送層および電子輸送層)を別々に設けることもできる。
【0056】
本発明の有機電界発光素子は、上記構成例に限らず、種々の構成とすることができる。必要に応じて、正孔輸送層成分と発光層成分、あるいは電子輸送層成分と発光層成分を混合した層を設けても良い。
【0057】
以下、本発明の有機電界発光素子の構成要素に関し、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極からなる素子構成を例として取り上げて詳細に説明する。本発明の有機電界発光素子は、基板に支持されていることが好ましい。
【0058】
基板の素材については特に制限はなく、従来の有機電界発光素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英ガラスなどからなるものを用いることができる。
【0059】
本発明の有機電界発光素子の陽極としては、その金属の持つ仕事関数の大きな(4eV以上)金属、その合金の持つ仕事関数の大きな(4eV以上)合金または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。このような電極材料の具体例としては、例えば、金、銀、銅などの金属、ITO(インジウム・チン・オキサイド)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性透明材料、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料が挙げられる。陽極はこれらの電極材料を、例えば、蒸着、スパッタリング、塗布などの方法により基板上に形成することができる。陽極のシート電気抵抗は数百Ω/cm以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。
【0060】
陰極としては、その金属の持つ仕事関数の小さな(4eV以下)金属、その合金の持つ仕事関数の小さな(4eV以下)合金または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。このような電極材料の具体例としては、リチウム、リチウム−インジウム合金、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金などが挙げられる。陰極はこれらの電極材料を、例えば、蒸着法、スパッタリング法などの方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。陰極のシート電気抵抗は数百Ω/cm以下が好ましい。陰極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。本発明の有機電界発光素子の発光を効率よく取り出すために、陽極または陰極の少なくとも一方の電極は、透明または半透明であることが好ましい。
【0061】
本発明の有機電界発光素子の正孔輸送層は、正孔伝達化合物からなるもので、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有している。電界が与えられた2つの電極間に正孔伝達化合物が配置されて陽極から正孔が注入された場合、少なくとも10−6cm/V・秒以上の正孔移動度を有する正孔伝達化合物が好ましい。本発明の有機電界発光素子の正孔輸送層に使用する正孔伝達物質は、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はない。従来から光導電材料において正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや有機電界発光素子の正孔輸送層に使用されている公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0062】
前記の正孔伝達物質としては、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N,N′−ジ(m−トリル)−N,N′−ジフェニル−4,4′−ジアミノビフェニル(TPD)、N,N′−ジ(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニル−4,4′−ジアミノビフェニル(α−NPD)などのトリアリールアミン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、および水溶性のPEDOT−PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)が挙げられる。正孔輸送層は、これらの正孔伝達化合物一種または二種以上からなる一層で構成されてもよく、前記の正孔伝達質物とは別の化合物からなる正孔輸送層を積層したものでもよい。
【0063】
本発明の有機電界発光素子の発光層の発光材料については特に制限されることはなく、従来の公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0064】
発光材料としては、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体(例えば、クマリン1、クマリン6、クマリン110、クマリン153)、ピラン誘導体(例えば、DCM1、DCM2)、オキサゾン誘導体(例えば、ナイルレッド)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、縮合多環式芳香族炭化水素およびその誘導体(例えば、ピレン、ペリレン、ルブレン、クリセン)、トリアリールアミン誘導体、有機金属錯体[例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)、トリス(2−フェニルピリジナイト)イリジウム]などを挙げることができる。
【0065】
発光層は、ホスト材料とゲスト材料(ドーパント)から形成することもできる[Appl.Phys.Lett.,65,3610(1989)]。
【0066】
ゲスト材料は、ホスト材料に対して、好ましくは、0.01〜40重量%であり、より好ましくは、0.1〜20重量%である。
【0067】
本発明の有機電界発光素子の電子輸送層および電子注入層の材料としては、本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体が好ましい。本発明の有機電界発光素子は、電子を輸送する領域、あるいは陰極と有機層の界面領域に還元性ドーパントを含有することが好ましい。また、本発明の有機電界発光素子は、前記の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体に加えて還元性ドーパントを含有することがより好ましい。還元性ドーパントは、電子輸送性化合物を還元できる物質であり、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機金属錯体、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の有機金属錯体、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、希土類金属の有機金属錯体などが挙げられる。
【0068】
具体的に好ましい還元性ドーパントとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムから選択される少なくとも一つのアルカリ金属、又は、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる。これらのうちでより好ましいのはリチウム、ナトリウム、セシウムである。さらに好ましくは、セシウムである。本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体にドープする還元性ドーパントは、1,8−ナフチリジン化合物に対して、1〜50重量%に調節するのが好ましい。より好ましくは、1〜35重量%である。これらのアルカリ金属を電子注入領域にある本発明の一般式(1)〜(4)で示される1,8−ナフチリジン誘導体にドープすることにより、有機電界発光素子の駆動電圧の低電圧化、発光輝度の向上、長寿命化を図ることができる。
【0069】
本発明の有機電界発光素子は、電子注入性をさらに向上させる目的で、陰極と有機層の間に絶縁体で構成される電子注入層をさらに設けてもよい。ここで使用される絶縁体としては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用することが好ましい。アルカリ金属ハロゲン化物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム等が挙げられる。
【0070】
正孔輸送層、発光層、電子輸送層の形成方法については、特に限定されるものではない。例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、溶液塗布法(例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法)を使用することができる。また、真空蒸着法と溶液塗布法を併用してもよい。
【0071】
真空蒸着法により正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の各層を形成する場合、真空蒸着条件は、特に限定されるものではない。通常、10−5Torr程度以下の真空下で、50〜500℃程度のボート温度(蒸着源温度)、−50〜300℃程度の基板温度で、0.01〜50nm/秒程度の蒸着速度で蒸着するのが好ましい。また、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の各層を真空下で連続して形成することが好ましい。正孔輸送層、発光層、電子輸送層の各層を複数の化合物を使用して形成する場合、化合物を入れた各ボートをそれぞれ温度制御しながら共蒸着することが好ましい。
【0072】
溶液塗布法により各層を形成する場合、各層を構成する成分を溶媒に溶解または分散させて塗布液とする。溶媒としては、炭化水素系溶媒(例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン等)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、エーテル系溶媒(ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)、非プロトン性溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等)、水等が挙げられる。溶媒は単独で使用してもよく、複数の溶媒を併用してもよい。
【0073】
正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の各層の膜厚は、特に限定されるものではないが、通常、5〜5,000nmになるようにする。
【0074】
本発明の有機電界発光素子は、酸素や水分等との接触を遮断する目的で保護層(封止層)を設けたり、不活性物質中に素子を封入して保護することができる。不活性物質としては、パラフィン、シリコンオイル、フルオロカーボン等が挙げられる。保護層に使用する材料としては、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0075】
本発明の有機電界発光素子は、通常、直流駆動型の素子として使用できる。直流電圧を印加する場合、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として電圧を通常、1.5〜20V程度印加すると発光が観測される。また、本発明の有機電界発光素子は、交流駆動型の素子としても使用できる。交流電圧を印加する場合には、陽極がプラス、陰極がマイナスの状態になった時に発光する。本発明の有機電界発光素子は、例えば、電子写真感光体、フラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト、計器類等の光源、各種発光素子、各種表示素子、各種標識、各種センサー、各種アクセサリーなどに使用することができる。
【発明の効果】
【0076】
本発明の1,8−ナフチリジン誘導体は、表2に示すようにセシウムをドープすることにより、これまで知られている代表的な電子輸送材料Alqよりも遙かに高い電子輸送性能を示すことがわかる。このため、有機電界発光素子、有機半導体トランジスタ等の有機半導体デバイスに適した材料を提供することが可能となった。また、本発明の1,8−ナフチリジン誘導体を用いることにより、従来の有機電界発光素子よりも、低い駆動電圧で動作し、発光特性に優れ、且つ、安定性に優れた長寿命の有機電界発光素子を提供することが可能となった。従って、本発明の1,8−ナフチリジン誘導体は、工業的に極めて重要なものである。
本発明の1,8−ナフチリジン誘導体は、Alqに比較して有機溶剤への溶解性が非常に高いので、真空蒸着ばかりでなく、スピンコートなどの塗布による成膜が可能である。また、1,8−ナフチリジン誘導体は、可視領域に蛍光を持たないため、Alqのような発光機能を示さない。従って、電子輸送層として使用した場合AlqのようにEL素子の駆動電圧を上げると発光してくるということはない。このため、発光材料の選択決定が容易である。
【実施例】
【0077】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
実施例1 例示化合物番号2−7の化合物{2,3,6,7−テトラフェニル−1,8−ナフチリジン}の合成
【化34】

2−アミノ−5,6−ジフェニルピリジン−3−カルバルデヒド(2.74g、10mmol)とベンジルフェニルケトン(2.35g、12mmol)のジメチルスルホキシド(30mL)溶液に20wt%水酸化カリウム−メタノール溶液を20滴加えた。反応混合物を120℃で23時間撹拌した。冷却後、反応混合物をメタノール(50mL)で希釈し、粗結晶を濾別した。粗結晶をクロロホルムから再結晶して2,3,6,7−テトラフェニル−1,8−ナフチリジン(3.33g)を得た。化学構造はH−NMRスペクトル、マススペクトル(m/e=434,M)(図1に示す)で同定した。
【0079】
実施例2 例示化合物番号3−55の化合物{1,3−ビス(2,7−ジフェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル)ベンゼン}の合成
【化35】

2−アミノ−6−フェニルピリジン−3−カルバルデヒド(1.66g、8.36mmol)と1,3−ビス(2−オキソ−2−フェネチル)ベンゼン(1.20g、3.8mmol)のエタノール(114mL)溶液に20wt%水酸化カリウム−メタノール溶液(3mL)を加えた。反応混合物を78℃で62時間撹拌した。冷却後、溶媒を留去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製した。得られた結晶をトルエン−クロロホルムから再結晶して1,3−ビス(2,7−ジフェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル)ベンゼン(1.93g)を得た。化学構造はH−NMRスペクトル、マススペクトル(m/e=638,M)で同定した。
【0080】
実施例3 例示化合物番号3−57の化合物{1,3−ビス[7−(2−ナフチル)−2−フェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル]ベンゼン}の合成
【化36】

2−アミノ−6−(2−ナフチル)ピリジン−3−カルバルデヒド(2.03g、8.4mmol)と1,3−ビス(2−オキソ−2−フェネチル)ベンゼン(1.26g、4mmol)のエタノール(120mL)溶液に20wt%水酸化カリウム−メタノール溶液(1.5mL)を加えた。反応混合物を78℃で75時間撹拌した。冷却後、粗結晶を濾別した。粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製して1,3−ビス[7−(2−ナフチル)−2−フェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル]ベンゼン(2.26g)を得た。化学構造はH−NMRスペクトル、マススペクトル(m/e=738,M)で同定した。
【0081】
実施例4 例示化合物番号3−60の化合物{1,3−ビス[2−フェニル−7−(2−ピリジル)[1,8]ナフチリジン−3−イル]ベンゼン}の合成
【化37】

2−アミノ−6−(2−ピリジル)ピリジン−3−カルバルデヒド(2.19g、11mmol)と1,3−ビス(2−オキソ−2−フェネチル)ベンゼン(1.57g、5mmol)のエタノール(150mL)溶液に20wt%水酸化カリウム−メタノール溶液(2mL)を加えた。反応混合物を78℃で65時間撹拌した。氷水で冷却後、粗結晶を濾別した。粗結晶をエタノールから再結晶して1,3−ビス[2−フェニル−7−(2−ピリジル)[1,8]ナフチリジン−3−イル]ベンゼン(2.9g)を得た。化学構造はH−NMRスペクトル、マススペクトル(m/e=640,M)で同定した。
【0082】
実施例5 例示化合物番号3−59の化合物{1,3−ビス(2,6,7−トリフェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル)ベンゼン}の合成
【化38】

2−アミノ−5,6−ジフェニルピリジン−3−カルバルデヒド(2.20g、8mmol)と1,3−ビス(2−オキソ−2−フェネチル)ベンゼン(1.26g、4mmol)のエタノール(120mL)溶液に20wt%水酸化カリウム−メタノール溶液(1.6mL)を加えた。反応混合物を78℃で24時間撹拌した。冷却後、粗結晶を濾別した。粗結晶をベンゼンから再結晶して1,3−ビス(2,6,7−トリフェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル)ベンゼン(2.1g)を得た。化学構造はH−NMRスペクトル、マススペクトル(m/e=790,M)(図2に示す)で同定した。
【0083】
実施例6 例示化合物番号3−25の化合物{1,4−ビス(2,6,7−トリフェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル)ベンゼン}の合成
【化39】

2−アミノ−5,6−ジフェニルピリジン−3−カルバルデヒド(1.15g、4.2mmol)と1,4−ビス(2−オキソ−2−フェネチル)ベンゼン(0.63g、2mmol)をエタノール(71mL)−ベンゼン(42mL)混合溶媒に溶解した。この溶液に20wt%水酸化カリウム−メタノール溶液(1.6mL)を加えた。反応混合物を78℃で48時間撹拌した。冷却後、粗結晶を濾別した。粗結晶をクロロホルム、DMF(ジメチルホルムアミド)で順次、加熱洗浄して1,4−ビス(2,6,7−トリフェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル)ベンゼン(0.61g)を得た。化学構造はH−NMRスペクトル、マススペクトル(m/e=790,M)で同定した。
【0084】
実施例7 例示化合物番号4−69の化合物{1,3−ビス(3,6,7−トリフェニル[1,8]ナフチリジン−2−イル)ベンゼン}の合成
【化40】

2−アミノ−5,6−ジフェニルピリジン−3−カルバルデヒド(1.15g、4.2mmol)と1,3−ビス(1−オキソ−2−フェネチル)ベンゼン(0.63g、2mmol)のエタノール(120mL)溶液に20wt%水酸化カリウム−メタノール溶液(0.8mL)を加えた。反応混合物を78℃で27時間撹拌した。冷却後、粗結晶を濾別した。粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製して1,3−ビス(3,6,7−トリフェニル[1,8]ナフチリジン−2−イル)ベンゼン(0.26g)を得た。化学構造はH−NMRスペクトル、マススペクトル(m/e=790,M)で同定した。
【0085】
実施例8 有機電界発光素子の作製(電子輸送性能の評価)
厚さ150nmのITO透明電極を有する25mm×25mmサイズのガラス基板をアセトン、洗浄剤(商品名:セミコクリーン56)、イソプロパノールを用いて超音波洗浄した。次いで、イソプロパノール中で煮沸した後、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。このガラス基板を真空蒸着装置内に設置し、正孔輸送層として下記式で示されるN,N′−ジ(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニル−4,4′−ジアミノビフェニル(α−NPD)を40nmの厚さに蒸着した後、発光層として下記式で示されるトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)を40nmの厚さに蒸着した。次いで、電子輸送層として例示化合物番号2−7の化合物を20nmの厚さに蒸着した。この上に、フッ化リチウムを0.2nmの厚さに蒸着し、次いで、電極としてアルミニウムを膜厚150nmの厚さに蒸着して有機電界発光素子を作製した。この素子に、6.0Vの直流電圧を印加すると、電流密度61.8mA/cm、発光輝度1,652cd/m、電流効率2.67cd/AでAlqからの黄緑色の発光が得られた。
【0086】
【化41】

【0087】
実施例9〜13 有機電界発光素子の作製(電子輸送性能の評価)
実施例8において、電子輸送層に例示化合物番号2−7の化合物を使用する代わりに、例示化合物番号3−55の化合物(実施例9)、例示化合物番号3−57の化合物(実施例10)、例示化合物番号3−60の化合物(実施例11)、例示化合物番号3−59の化合物(実施例12)、例示化合物番号3−25の化合物(実施例13)、例示化合物番号4−69の化合物(実施例14)を使用し、その膜厚を30nmの厚さに、また、Alqを30nmの厚さに蒸着した以外は、実施例8に記載の操作に従い、有機電界発光素子を作製した。それぞれの素子からは、Alqからの黄緑色の発光が得られた。その特性を調べた結果(直流印加電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、電流効率)を表1に示した。この表から、1,8−ナフチリジン誘導体がAlqとほぼ同等かそれ以上の電子輸送性能を示すことがわかる。特に、実施例8に示した例示化合物番号2−7の化合物を使用した素子は、Alqに比べて、電流密度および発光輝度が約9倍に達している。
【0088】
比較例1
実施例8において、電子輸送層に例示化合物番号2−7の化合物を使用する代わりに、Alqを使用した以外は、実施例8に記載の操作に従い、有機電界発光素子を作製した。この素子からは、Alqからの黄緑色の発光が得られた。その特性を調べた結果(直流印加電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、電流効率)を表1に示した。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例15 有機電界発光素子の作製(電子輸送性能に及ぼす還元性ドーパントの効果)
厚さ150nmのITO透明電極を有する40mm×40mmサイズのガラス基板をアセトン、洗浄剤(商品名:セミコクリーン56)、イソプロパノールを用いて超音波洗浄した。次いで、イソプロパノール中で煮沸した後、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。このガラス基板を真空蒸着装置内に設置し、正孔輸送層としてN,N′−ジ(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニル−4,4′−ジアミノビフェニル(α−NPD)を40nmの厚さに蒸着した後、発光層としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)を40nmの厚さに蒸着した。次いで、電子輸送層として例示化合物番号2−7の化合物と還元性ドーパントであるセシウム(セシウム源:サエス・ゲッターズ社製、セシウムディスペンサー)を膜厚20nmに共蒸着(例示化合物番号2−7の化合物:セシウムの重量比6:1)した。この上に、電極としてアルミニウムを膜厚150nmの厚さに蒸着して有機電界発光素子を作製した。この素子に、6.0Vの直流電圧を印加すると、電流密度177.7mA/cm、発光輝度5,033cd/m、電流効率2.83cd/AでAlqからの黄緑色の発光が得られた。この素子を用いて、初期輝度1000cd/mで一定電流駆動を行ったところ、輝度が半減する時間(半減寿命)は1,550時間であった。
【0091】
実施例16〜21 有機電界発光素子の作製(電子輸送性能に及ぼす還元性ドーパントの効果)
実施例15において、電子輸送層に例示化合物番号2−7の化合物を使用する代わりに、例示化合物番号3−55の化合物(実施例16)、例示化合物番号3−57の化合物(実施例17)、例示化合物番号3−60の化合物(実施例18)、例示化合物番号3−59の化合物(実施例19)、例示化合物番号3−25の化合物(実施例20)、例示化合物番号4−69の化合物(実施例21)を使用し、その膜厚を30nm、Alqの膜厚を30nmの厚さに蒸着した以外は、実施例15に記載の操作に従い、有機電界発光素子を作製した。これらの素子からは、Alqからの黄緑色の発光が得られた。これらの素子の特性を調べた結果(直流印加電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、電流効率)と還元性ドーパントを使用しない場合の結果の比較を表2に示した。この表から、セシウムをドープすることにより電子輸送性能が飛躍的に向上していることが分かる。
【0092】
比較例2
実施例15において、電子輸送層に例示化合物番号2−7の化合物を使用する代わりに、Alqを使用した以外は、実施例15に記載の操作に従い、有機電界発光素子を作製した。この素子からは、Alqからの黄緑色の発光が得られた。その特性を調べた結果(直流印加電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、電流効率)を表2に示した。
【0093】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1で得られた例示化合物番号2−7の化合物(2,3,6,7−テトラフェニル−1,8−ナフチリジン)のマススペクトルを示す。
【図2】実施例5で得られた例示化合物番号3−59の化合物{1,3−ビス(2,6,7−トリフェニル[1,8]ナフチリジン−3−イル)ベンゼン}のマススペクトルを示す。
【図3】実施例8で作製した有機電界発光素子の電流密度と電圧の関係を、比較例1とともに示すグラフである。
【図4】実施例8で作製した有機電界発光素子の発光輝度と電圧の関係を、比較例1とともに示すグラフである。
【図5】実施例15で作製した有機電界発光素子の電流密度と電圧の関係を、実施例8とともに示すグラフである。
【図6】実施例15で作製した有機電界発光素子の発光輝度と電圧の関係を、実施例8とともに示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良く;Lは単結合、窒素原子、酸素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基よりなる群から選ばれた基であり、Lの結合位置は、Rが結合している位置またはRが結合している位置であり、LがRの位置に結合している場合は、Rの代わりにLが結合している形であり、LがRの位置に結合している場合は、Rの代わりにLが結合している形であり、mは0または1であり、nは2〜6から選ばれた整数である)
で示される1,8−ナフチリジン誘導体。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良い)
で示される請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体。
【請求項3】
下記一般式(3)
【化3】

(式中、R〜R、およびRは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良く;Lは単結合、窒素原子、酸素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基よりなる群から選ばれた基であり、nは2〜6から選ばれた整数である)
で示される請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体。
【請求項4】
下記一般式(4)
【化4】

(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40の有機ケイ素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数12〜40のジアリールアミノ基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり;R〜Rは、それぞれ隣接した置換基同士で結合して環状構造を形成しても良く;Lは単結合、窒素原子、酸素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素の3価基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45の芳香族炭化水素の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数4〜40の芳香族複素環化合物の2〜6価基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜45のアリールアミノ基よりなる群から選ばれた基であり、nは2〜6から選ばれた整数である)
で示される請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体。
【請求項5】
請求項1記載の一般式(1)で示される1,8−ナフチリジン誘導体が下記式で示される2,3,6,7−テトラフェニル−1,8−ナフチリジンである請求項1記載の1,8−ナフチリジン誘導体。
【化5】

【請求項6】
一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体よりなる電子輸送材料。
【請求項7】
一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体よりなる電子注入材料。
【請求項8】
一対の電極間に一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を少なくとも一種含有する層を含む有機電界発光素子。
【請求項9】
一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子輸送層である請求項8記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子注入層である請求項8記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
一般式(1)で示される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層にアルカリ金属がドーピングされている請求項8記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
アルカリ金属がドーピングされている一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子輸送層である請求項8記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
アルカリ金属がドーピングされている一般式(1)で表される1,8−ナフチリジン誘導体を含有する層が、電子注入層である請求項8記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−84458(P2007−84458A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272745(P2005−272745)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(394013644)ケミプロ化成株式会社 (63)
【Fターム(参考)】