説明

13,13a−ジヒドロベルベリン誘導体及びその医薬組成物と用途

本発明は、下記一般式に示された13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩、その医薬用途、及び該誘導体を含む医薬組成物を提供している。前記13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体は、筋肉細胞に対しグルコース吸収を促進する作用があり、動物実験から該化合物はグルコース耐性とインスリン抵抗性の改善、肥満の軽減、脂肪肝の緩和などの治療効果を持っていることが確認されている。該化合物は、インスリン抵抗性による糖尿病、肥満症、脂肪肝及びその合併症の治療薬として適用される。
【化48】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物化学と薬物治療学の分野に関し、より詳しくは、インスリン抵抗性改善薬としての13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体及びその医薬組成物と医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病(diabetes mellitus)は、遺伝因子と環境因子の相互作用による臨床代謝性疾病であり、インスリン分泌の絶対または相対的不足及びターゲット組織細胞のインスリンに対する感受性の低下の原因で、糖、タンパク質、脂肪、水と電解質など一連の代謝障害を引き起こしている。臨床においては高血糖を主な共同症状とし、長く罹る場合様々な系統障害を引き起こし、病状が重くなる場合及びストレスの場合に、例えばケトアシドーシス等の急性代謝障害を引き起こす可能性がある。糖尿病患者群における心臓血管疾病、腎臓損傷、失明、先端壊疽などの深刻な合併症の発症率は、非糖尿病群より明らかに高い。したがって、糖尿病及びその合併症は、すでに人類の健康を厳重に脅す世界的な公衆衛生問題になっている。
【0003】
糖尿病は、通常I型糖尿病 (インスリン依存型糖尿病、IDDM)とII型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病、NIDDM)と2種類に分けられる。糖尿病の中で95% 以上がII型糖尿病である。生活レベルの向上に伴って、高齢化、肥満、不健康な飲食生活及び運動不足のライフスタイルにより、糖尿病の発症率はますます高くなっている。統計によると、現在全世界中の糖尿病患者は1.9億人を超え、専門家の予測では2025年までに3.3億人に達すると見られている。
【0004】
I型糖尿病の患者は、6番染色体短腕上のHLA-D遺伝子が遺伝子感受性を決めているので、環境因子、特にウイルス感染あるいは化学毒性物質の刺激に対する反応が異常であり、直接あるいは間接的に自己免疫反応によりランゲルハンス島β細胞の破壊を引き起こし、その結果インスリン不足になる。その臨床の特徴は、急激な発症、多食、多尿、多飲、体重減少などの症状であり、またケトアシドーシスを発症する傾向があり、インスリンの治療に依存して生命を維持しなければならない。
【0005】
また、II型糖尿病は、強い遺伝性と環境因子を持つ同時に、顕著な異質性を示し、その発症メカニズムは多様且つ複雑であり、患者によって大きな相違が存在する。いずれにしてもインスリン分泌の相対的不足とインスリン抵抗性によるものである。II型糖尿病の患者、特に肥満性糖尿病の患者に対する研究で、インスリン抵抗性はII型糖尿病の発生、発症過程における重要な要因であることが分かっている。インスリン抵抗性状態を改善するため、脂肪細胞と筋肉細胞内のインスリンシグナル伝達ルートの研究をもとに、インスリン抵抗性改善薬を開発することは、今のII型糖尿病の新薬研究の重点である。
【0006】
今臨床で経口糖尿病治療薬としては、主にインスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬と糖類吸収遅延薬の三種類がある。
【0007】
スルホニル尿素系インスリン分泌促進薬:その作用メカニズムは、ランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌を刺激することによって、人体の血糖レベルを下げることである。該種類の薬物としては、グリベンクラミド、グリピジド、グリキドン、グリクラジド、グリメピリド(Glimepiride)等が挙げられる。スルホニル尿素系薬物は、非肥満のII型糖尿病のファーストライン治療薬であるが、すべてのスルホニル尿素系薬物が低血糖を誘発する危険を有している。非スルホニル尿素系インスリン分泌促進薬は、インスリンの最初の分泌を促進することができる。ランゲルハンス島β細胞膜上のATP依存性K+チャネルを閉鎖して、細胞外から細胞内へのCa2+の流入をもたらし、細胞内のCa2+濃度を増加させることにより、細胞からのインスリン分泌を刺激する。該種類の薬物としては、レパグリニド(Repaglinide)、ナテグリニド(Nateglinide) 等が挙げられ、主に摂食調節剤として食後高血糖の制御に用いられるが、インスリン抵抗性を改善することができない上、一時的なアレルギー反応を引き起こす。
【0008】
チアゾリジンジオン系インスリン抵抗性改善薬は、インスリン抵抗性状態を改善し糖類と脂質代謝の異常を直すことができる高い選択性のPPARγアゴニストであり、その作用メカニズムは、インスリンの感受性を増加することにより、人体の血糖レベルを有効的に制御することである。この種類の薬物としては、塩酸トログリタゾン(肝臓毒性の面で安全問題を抱えているので既に市場から撤退、その不良反応発生の根本的原因はまだ不明である)、ロジグリタゾン(Rosiglitazone) 、ピオグリタゾン(Pioglitazone)等が挙げられ、主に体重増加、水腫などを含む不良反応を引き起こす。ビグアニド系インスリン抵抗性改善薬は、インスリン分泌を促進せず、その糖分を減らす作用メカニズムは、主に外周組織(例えば筋肉)でのグルコース取り込みと利用を高め、組織での無酸素性解糖を促進し、筋肉などの組織でのグルコース利用を強化すると同時に、肝臓の糖新生を抑え、糖尿病の場合に高血糖の形成率を下げることである。ビグアニド系薬物は、糖代謝を改善して体重を下げることができるが、血清のインスリンレベルに影響を与えない。血糖値が正常の範囲にある方は、服用した後血糖値が下がる危険がないので、肥満の糖尿病患者のファーストライン治療薬である。この種類の薬物としては、フェンフォルミン(安全問題で使用禁止)、塩酸メトホルミン、塩酸メトホルミン徐放性錠剤などが挙げられる。インスリン感受性を改善する効果を得るためには、大量の該種類の薬物を服用しなければならず(例えば、塩酸メトホルミンの内服量は1500 mg/dであり、これは我が国に規定された薬物投与量の上限値である)、それに伴う不良反応は、主に消化道症状(吐き気、下痢と腹痛性痙攣など)であり、心腎臓機能障害の高齢者が該薬を服用すると、乳酸中毒を誘発する恐れがある。
【0009】
糖類吸収遅延薬としては、主にα-グルコシダーゼ阻害薬とアルドース還元酵素阻害薬が挙げられる。α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸絨毛内の炭水化物の分解に関与するα-グルコシダーゼの活性を競合阻害し、炭水化物と二糖類の分解と消化を抑制し、小腸上部でのグルコース吸収を遅延して減少することにより、食後血糖の上昇を制御する。ファーストライン治療薬として飲食、運動とともに使用してもよく、スルホニル尿素薬、ビグアニド薬及びインスリンと併用してもよい。この種類の薬物としては、アカルボース(Acarbose)、ボグリボース(Voglibose)及びミグリトール(Miglitol)などが挙げられ、その主な不良反応は腹部不快感、脹気、排気などの消化道反応である。アルドース還元酵素(Aldose Reduetase、AR)は、ポリアルコール代謝チャネル中の重要な律速酵素である。70年代からAR阻害薬は、糖尿病治療研究領域の新しい注目点になっている。大量の動物実験と臨床研究からAR阻害薬は、生体のポリアルコール代謝チャネルの異常を有効に改善させることにより、糖尿病合併症を予防または遅延できることが示された。トルレスタット(Tolrestat)は、Wyeth Ayerst 会社 (米国ワイス社)によって研究開発され、そして1989年にアイルランドで発売された糖尿病治療薬である。しかし、該薬は視覚損害と腎不全を引き起こすため、FDA審査に合格できず、1996 年で市場から撤退された。エパルレスタット(Epalrestat)は、最近日本で発売された糖尿病治療薬であり、同様に一定のこのような不良反応を引き起こすという問題がある。
【0010】
今臨床で使用されているII型糖尿病治療薬は、血糖を完全に制御することができず、且つすべての糖尿病患者に対し有効でもない。薬物の種類ごとにある程度の副反応が存在しているため、新しい作用メカニズムと安全で有効なII型糖尿病治療薬を開発することは、依然として現在の研究の重点である。
【0011】
ベルベリン(Berberine)の別名は黄連素で、イソキノリン系アルカロイドであり、黄連、キハダ、radix berberidis 、ナンテン等の植物の主な成分である。臨床において主に細菌性赤痢と腸炎の治療に用いられ、その最大特徴は副作用がきわめて少ないことである。ベルベリンは、長年わたって抗菌薬として臨床で使用されている広域スペクトル抗菌薬であり、多種類のグラム陽性菌、グラム陰性菌と真菌、かび、ウィルス、原虫、線虫に対し抑制および滅菌作用を有している。
【0012】
【化1】

【0013】
20世紀50年代から、専門家と医療関係者らは、臨床上で広く使用されている塩酸ベルベリンに対し大量の動物実験と臨床試験を行い、ベルベリンが抗菌の他に糖尿病及びその合併症を治療できることを発見した。これら研究文献の内容を下記の表にまとめている。
【0014】
【表1−1】

【0015】
【表1−2】

【0016】
【表1−3】

【0017】
近年、ベルベリンは臨床でII型糖尿病の治療に広く利用されている。最初の研究でその血糖低下作用は、血糖上昇ホルモンの抑制、ランゲルハンス島b細胞の再生と機能回復の促進と関係があると考えられた(鄭洪艶、徐為人、中草薬、2004, 35: 708-711)。研究によると、5-100μmol/Lのベルベリンは、HepG2細胞のグルコース消費量を32〜60%に増加させたが、bTC3細胞からのインスリン分泌を刺激する作用がなかった。したがって、ベルベリンの血糖低下作用は、インスリン分泌を刺激することによるものではなく、肝細胞のグルコース消費量を増加させたことによるものであり、即ちベルベリンは、肝細胞によるインスリン非依存の血糖低下作用を発揮すると考えられた。王娟(王娟、中華中西医学雑誌、2004, 2(12): 65-66)は、ベルベリンで糖尿病を治療する場合、臨床において血糖値が低下するが、血清のインスリンレベルが上昇することを発見し、ベルベリンが血糖上昇ホルモンを抑制する作用のほか、ランゲルハンス島b細胞の再生と機能回復を促進できる作用を有することを報告している。またベルベリンは、糖新生の抑制及び解糖促進の作用を有し、血糖値を低下させることが可能である。ベルベリンの血糖低下作用は、インスリン抵抗性改善薬の範囲内に属する。ベルベリンは、同時に血圧低下、コレステロール低下および抗感染作用を有するので、糖尿病合併症の予防にも積極的な意義を持っている。
【0018】
今まで、ベルベリンで糖尿病を治療する効果は明らかであるが、その抗糖尿病の作用メカニズムがまだ明確にされていない。最近西安交通大学の楊広徳らは、ベルベリンの類似物の塩酸パルマチンがII型糖尿病治療に用いられることを公開し(CN1582930A)、またいくつかのベルベリン、テトラヒドロベルベリン類似物を合成し、細胞膜のクロマトグラフィー技術とalloxanに誘導された糖尿病マウスを使用することにより、その血糖低下活性を評価することを提案している(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2006, 16: 1380-1383)。
【0019】
研究で、我々はベルベリンがビグアニド系糖尿病治療薬と似ており、人体の外周組織(例えば筋肉)のグルコースに対する取り込みと利用を明らかに高め、糖尿病患者の血糖レベルを下げることによって、糖尿病治療の目的を達成でき、インスリン非依存性の人体外周組織のグルコースの吸収促進剤に属することを発見した。文献(Amira, K.,et.al, Endocrinology 2006, 130, 2535-2544; Yamamoto, N. et al, Anal. Bio. 2006, 351, 139-145.)によると、L6筋肉細胞を用いたグルコース吸収の評価モデル実験において、塩酸メトホルミンが明らかに人体筋肉組織中のグルコース取り込み量を増加できた。L6筋肉細胞のグルコース輸送のモデル実験において、塩酸メトホルミンが400μMである場合、L6筋肉細胞の3-メチルグルコースの輸送効果を約0.5倍増加させている。体外L6筋肉細胞のグルコース輸送のモデル実験において、塩酸ベルベリンが同じ効果を達成した際その必要投与量は、メトホルミンを使用した場合と比べ、低かった。
【0020】
我々の実験において、塩酸ベルベリンが10μMに達した場合、L6筋肉細胞のグルコース輸送効果を約3倍程度増加させている。更にL6筋肉細胞のグルコース吸収のモデル実験において、グルコースの細胞濃度が20mM、塩酸ベルベリンの濃度が5μMである場合、L6筋肉細胞のグルコース吸収量を2倍以上増加させている。L6筋肉細胞に免疫ブロット(immunoblotting)実験を行うことによって、ベルベリンがインスリンシグナル通路に与える影響は弱いが、AMPKとp38 MAPKキナーゼの活性を著しく強めていることが発見された。インスリンシグナル通路の特異的阻害剤wortmanninの処理を経て、インスリンに誘発されたグルコース吸収の向上は明らかに抑制されたが、ベルベリンに誘発されたグルコース吸収の向上は影響されなかった。AMPKとp38MAPKの特異的阻害剤(それぞれはCompound CとSB202190である)の処理を経て、ベルベリンに誘発されたグルコース吸収は明らかに低下した。更に免疫ブロット実験から、ベルベリンの影響を受けた細胞シグナル通路において、AMPKはp38MAPKの上流にあることが示された。以上の実験結果からAMPKは、ベルベリンによるグルコース吸収を促進する重要な標的タンパクであることが示された。我々は高速液体クロマトグラフィーにより細胞内のAMP:ATPの比率が著しく向上していることを発見したが、これは細胞内のエネルギー代謝レベルの変化を示しており、AMPK活性化の重要な原因である。上述したように、我々の研究では、ベルベリンがインスリンシグナル通路を通じてグルコース吸収を影響しているのではなく、細胞のエネルギー代謝レベルを変えることにより、AMPKタンパクを活性化してグルコース吸収を増加させていることがわかった。
【0021】
上述したように、ベルベリンの糖尿病治療における効果は明らかであるが、該化合物は、溶解度が低く内服で生体内に吸収されにくいなどの不利要素がある。これらのことが糖尿病治療におけるベルベリンの応用を制限しているため、該化合物の構造と活性の関係を深く研究し、より強い生体内の活性を有し、より吸収されやすいベルベリン誘導体を開発することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一つの目的は、下記一般式1に示された13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩を提供することにある。
【0024】
【化2】

【0025】
その中、--は二重結合又は単結合を表し;
R1、R2はそれぞれ独立にH、OH、C1-C4アルコキシ基又はC1-C4アシルオキシ基であり、あるいはR1とR2が結合して-O-CH2-O-を形成し;
R3はH、OH、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アシルオキシ基、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロアルキル基又は芳香族基であり;
R4、R5はH、OH、C1-C4アルコキシ基又はC1-C4アシルオキシ基であり、あるいはR4とR5が結合して-O-CH2-O-を形成し;
R6はH、OH、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロアルキル基、芳香族基、C1-C4アルコキシ基又はC1-C4アシルオキシ基である。
【0026】
本発明の13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体は、下記表中の2〜18に示された化合物であることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
【表2】

【0029】
本発明の13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体は、下記表中の19〜41に示された化合物であることが好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
【表3】

【0032】
本発明の13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩は、以下のような合成方法により合成できる。
【0033】
【化5】

【0034】
塩酸ベルベリンをアセトンに溶解させ、アルカリ(例えばNaOH)処理を経て、塩酸ベルベリンの8位がアセトンのα位に攻撃された後の産物である2-カルボニルプロピル基ベルベリン(acetonylberberine)を得る。更に該化合物は、ハロゲン化炭化水素と加熱の条件で13-アルキル基に置換されたベルベリン(13-alkylberberine)を生成する。13-アルキル基に置換されたベルベリンは、グリニャール試薬と反応し、8,13-ジアルキル基に置換されたジヒドロベルベリン誘導体を生成する。13-アルキル基に置換されたベルベリンは、強いアルカリ性の条件でナトリウムアルコラートのアニオンと反応し、8-アルコキシ-13-アルキル基に置換されたジヒドロベルベリン誘導体を得る。
【0035】
【化6】

【0036】
無水テトラヒドロフランの中で、ベルベリンが水素化リチウムアルミニウムに還元されジヒドロベルベリンを得て、該ジヒドロベルベリンはMCPBAに酸化され13-水酸基ジヒドロベルベリンを得て、更にエーテル化、エステル化反応により一連の13-アルコキシ基に置換又は13-アルキルアシルオキシ基に置換されたジヒドロベルベリンを合成する。
【0037】
本発明のもう一つの目的は、治療有効量の、13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩を含む医薬組成物を提供することにある。
【0038】
また、本発明のもう一つの目的は、インスリン抵抗性による糖尿病、肥満症、脂肪肝及びその合併症の治療薬の調製における、13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩の医薬用途を提供することにある。
【0039】
また、本発明のもう一つの目的は、インスリン抵抗性による糖尿病、肥満症、脂肪肝及びその合併症の治療薬の調製における、治療有効量の13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩を含む医薬組成物の用途を提供することにある。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、1シリーズの13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体を提案している。それらは、筋肉細胞に対しグルコース吸収を促進する作用を有し、動物実験から、該化合物は、グルコース耐性とインスリン抵抗性の改善、肥満の軽減、脂肪肝の緩和などの効果を有することが示された。該化合物は、インスリン抵抗性による糖尿病、肥満症、脂肪肝及びその合併症の治療に用いられる。本発明の化合物は、その合成が簡単で調製が容易で、しかも合成の原料が入手しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の化合物の濃度が5μMである場合、L6筋肉細胞のグルコース輸送を促進する効果を示す図である。
【図2A】図2Aは、ジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩で肥満のマウスを2週間治療した後、腹腔注射グルコース負荷(ipGTT)曲線図である。
【図2B】図2Bは、ジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩で肥満のマウスを2週間治療した後、腹腔注射グルコース負荷(ipGTT)曲線下面積の図である。
【図3A】図3Aは、ジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩で2週間治療した後、マウス体重の変化を示す図である。
【図3B】図3Bは、ジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩で2週間治療した後、マウス内臓脂肪/体重の比率の変化を示す図である。
【図4A】図4Aは、ジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩でマウスを2週間ゆっくり治療した後、その血漿中の遊離脂肪酸含有量の変化を示す図である。
【図4B】図4Bは、ジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩でマウスを2週間ゆっくり治療した後、その血漿中のトリグリセリド含有量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
以下の実施例において、1H-NMRをVarian Mercury AMX300型機で測定する。MSをVG ZAB-HS又はVG-7070型及びEsquire 3000 plus-01005で測定する。すべての溶媒は使用前に改めて蒸留され、使われた無水溶媒は、すべて標準方法で乾燥処理して得られたものである。特別な説明以外に、すべての反応はアルゴンガスの雰囲気下で行われ、TLCで追跡して、後処理の時に飽和食塩水での洗浄と無水硫酸マグネシウムでの乾燥処理を行う。製品の精製は特別な説明以外に、すべてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製したもので、使われたシリカゲルは200-300メッシュで、GF254は、青島海洋化学工場あるいは煙台縁博シリカゲル会社により生産されたものである。
【0044】
調製実施例
化合物2の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(3g)とヨ−ドメチルを100mLのジクロロメタンに溶解させ、100℃にまで加圧加熱して3時間反応させた。反応が終わった後、ろ過により固体の副産物を除去し、ろ液を減圧で蒸発乾涸した。メタノールの中で残留物を再結晶させて、化合物2を得た(1.53 g, 48%)。
【0045】
化合物2、C21H20INO4、MW:477;黄色の結晶で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0046】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):( 9.89 (1H, s, H-8), 8.20 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-12), 8.19 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-11), 7.48 (1H, s, H-1), 7.15 (1H, s, H-4), 6.18 (2H, s, -OCH2O-), 4.80 (2H, m, H-6), 4.10 (3H, s, -OCH3), 4.09 (3H, s, -OCH3), 3.15 (2H, m, H-5), 2.92 (3H, s, -CH3)。
【0047】
化合物3の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(1.5g)と臭化エチルを100mLのジクロロメタンに溶解させ、100℃にまで加圧加熱して5時間反応させた。反応が終わった後、ろ過により固体の副産物を除去し、ろ液を減圧で蒸発乾涸した。メタノールの中で残留物を再結晶させ、化合物3を得た(0.83 g, 53%)。
【0048】
化合物3、C22H22INO4、MW:491;白い結晶で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0049】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):( 9.90 (1H, s, H-8), 8.21 (2H, ABq, J = 9.0 Hz, H-11と12), 7.30 (1H, s, H-1), 7.17 (1H, s, H-4), 6.19 (2H, s, -OCH2O-), 4.80 (2H, m, H-6), 4.10 (3H, s, -OCH3), 4.09 (3H, s, -OCH3), 3.36 (2H, q, J = 7.5 Hz, H-1'), 3.09 (2H, m, H-5), 1.47 (3H, t, J = 7.5 Hz, H-2')。
【0050】
化合物4の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(0.5g)と1-ヨウ化プロピル(0.43g)を50mLのジオキサンに溶解させ、5時間還流反応させた。反応が終わった後、ろ過により固体の副産物を除去し、ろ液を減圧で蒸発乾涸した。シリカゲルカラム(メタノール:ジクロロメタン=1:10)で残留物を精製し、化合物4を得た(0.25 g, 52%)。
【0051】
化合物4、C23H24INO4、MW:505;黄色の結晶で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0052】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):( 9.96 (1H, s, H-8), 8.20 (2H, ABq, J = 9.0 Hz, H-11と12), 7.23 (1H, s, H-1), 7.19 (1H, s, H-4), 6.21 (2H, s, -OCH2O-), 4.80 (2H, m, H-6), 4.10 (3H, s, -OCH3), 4.09 (3H, s, -OCH3), 3.08 (2H, m, H-5), 1.83 (2H, m,H-1'), 1.10 (2H, m, H-2'), 1.05 (3H, t, J = 7.0 Hz, H-3')。
【0053】
化合物5の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(1.0g)と1-ヨウ化ブタン(9.2g)を50mLのアセトニトリルに溶解させ、5時間還流反応させた。反応が終わった後、ろ過により固体の副産物を除去し、ろ液を減圧で蒸発乾涸した。シリカゲルカラム(メタノール:クロロホルム=1:9)で残留物を精製し、化合物5を得た(0.42g, 43%)。
【0054】
化合物5、C24H26INO4、MW:519;黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0055】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):( 9.89 (1H, s, H-8), 8.23 (2H, ABq, J = 9.0 Hz, H-11と12), 7.31 (1H, s, H-1), 7.20 (1H, s, H-4), 6.11 (2H, s, -OCH2O-), 4.80 (2H, m, H-6), 4.01 (6H, s, -OCH3), 3.31 (2H, m, H-1'), 3.14 (2H, m, H-5), 1.82 (2H, m,H-2'), 1.47 (2H, m, H-3'), 0.95 (3H, t, J = 7.5 Hz, H-4')。
【0056】
化合物6の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(2.65g)と1,3-ジヨードプロパン(7.4mL)を75mLのアセトニトリルに溶解させ、6時間還流反応させた。反応が終わった後、ろ過により固体の副産物を除去し、ろ液を減圧で蒸発乾涸した。シリカゲルカラム(メタノール:クロロホルム=1:9)で残留物を精製し、化合物6を得た(0.37g, 8.7%)。
【0057】
化合物6、C23H23I2NO4、MW:631;黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0058】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 10.26 (1H, s, H-8), 8.00 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-11), 7.89 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-12),7.09 (1H, s, H-1), 6.89 (1H, s, H-4), 6.10 (2H, s, -OCH2O-), 5.08 (2H, m, H-6), 4.37 (3H, s, -OCH3), 4.07 (3H, s, -OCH3), 3.51 (2H, t, J = 8 Hz, CH2-Ar), 3.32 (2H, t, J = 6 Hz, H-5), 3.23 (2H, t, J = 5 Hz, CH2-I), 2.30 (2H, m, CH2(propyl))。
【0059】
化合物7の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(4g)とヨウ化ナトリウム(1.87g)を50mLのアセトニトリルに溶解させ、更に2mLの塩化ベンジルを入れ、80℃にまで加熱して6時間還流させた。反応の混合物をろ過し、アセトニトリルでろ過ケーキを洗浄し、液相を混合し減圧でアセトニトリルを蒸発除去した。シリカゲルカラム(CHCl3/CH3OH=20:1)で残留物を精製し、化合物7を得た(1.83g, 45%)。
【0060】
化合物7、C27H24ClNO4、MW:461;赤褐色の無定形粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0061】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 10.10 (1H, s, H-8), 7.63 (2H, dd, J = 15.0と9.0 Hz, H-3'と5'), 7.32−7.23 (3H, m, H-1'と4'と5'), 7.05 (2H, d, J = 7.0 Hz, H-11と12), 6.90 (1H, s, H-1), 6.84 (1H, s, H-4), 5.93 (2H, s, -OCH2O-), 4.98 (2H, m, H-6), 4.27 (3H, s, -OCH3), 3.96 (3H, s, - OCH3), 3.18 (2H, m, H-5)。
【0062】
化合物8の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(4g)とヨウ化ナトリウム(1.87g)を50mLのアセトニトリルに溶解させ、更に2mLのクロロぎ酸エチルを入れ、80℃にまで加熱して6時間還流させた。反応の混合物をろ過し、アセトニトリルでろ過ケーキを洗浄し、液相を混合し減圧でアセトニトリルを蒸発除去した。シリカゲルカラム(CHCl3/CH3OH=20:1)で残留物を精製し、化合物8を得た(1.61g, 40%)。
【0063】
化合物8、C23H22ClNO6、MW:443;黄色の無定形粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0064】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 10.82 (1H, s, H-8), 7.88 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-12), 7.73 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-11), 7.21 (1H, s, H-1), 6.89 (1H, s, H-4), 6.13 (2H, s, -OCH2O-), 5.38 (2H, m, H-6), 4.40 (2H, q, J = 7.5 Hz, H-2'), 4.08 (3H, s, - OCH3), 4.02 (3H, s, - OCH3), 3.38 (2H, m, H-5), 1.19 (3H, t, J = 7.5 Hz, H-3')。
【0065】
化合物9の調製
8-アセトンジヒドロベルベリン(4g)を30mLのアセトニトリルに溶解させ、更に2mLのクロロ酢酸エチルを入れ、80℃にまで加熱して6時間還流させた。反応の混合物をろ過し、アセトニトリルでろ過ケーキを洗浄し、液相を混合し減圧でアセトニトリルを蒸発除去した。シリカゲルカラム(CHCl3/CH3OH=20:1)で残留物を精製し、化合物9を得た(1.34g, 35%)。
【0066】
化合物9、C24H24ClNO6、MW:457;黄色の結晶で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0067】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 10.00 (1H, s, H-8), 7.84 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-2), 7.70 (1H, d, J = 9.0 Hz, H-11), 7.13 (1H, s, H-1), 6.86 (1H, s, H-4), 6.0 (2H, s, -OCH2O-), 4.28 (2H, m, H-3'), 4.26 (2H, m, H-6), 4.23 (3H, s, -OCH3), 4.01 (3H, s, -OCH3), 3.62 (2H, s, H-1')3.10 (2H, m, H-5), 1.28 (3H, t, J = 7.2 Hz, H-4')。
【0068】

化合物10の調製
ジヒドロベルベリン(337mg)を35mLのジクロロメタンに溶解させ、アルゴンガスで保護し、反応系の温度を-25℃〜-30℃に維持しながら、その中へ258mgのMCPBA(1.5mmol)を溶解したジクロロメタン溶液8mLをゆっくり滴下し、滴下が終わった後、その温度を維持したまま1時間撹拌反応させた。0℃にまで昇温し、反応系の中に250mg(2.0mmol)の亜硫酸ナトリウムを入れ、室温で1時間撹拌し続けた。反応を停止した後ろ過し、ろ液を減圧濃縮して溶媒を除去し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=10:1)で残留物を精製し、化合物10を得た(280mg, 80%)。
【0069】
化合物10、C20H18NO5、MW:352;黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0070】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 8.83 (1H, s, H-8), 8.28 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 7.78 (1H, s, H-1), 7.29 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 6.52 (1H, s, H-4), 5.88 (2H, s, -OCH2O-), 4.44 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 3.95 (3H, s, OMe-9又は10), 3.94 (3H, s, OMe-10又は9), 2.95 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5)。
【0071】
化合物11の調製
化合物10(1.0g)と炭酸カリウム(200mg)を20mLのアセトンに溶解させ、更に0.2mLのヨ−ドメチルを入れ、3時間加熱し還流させ、反応の混合物をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、シリカゲルカラム(CHCl3/CH3OH=20:1)で残留物を精製し、化合物11を得た(0.41g, 37%)。
【0072】
化合物11、C21H20INO5、MW:493;褐色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0073】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 8.97 (1H, s, H-8), 8.33 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 7.91 (1H, s, H-1), 7.45 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 6.76 (1H, s, H-4), 5.97 (2H, s, -OCH2O-), 4.32 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 4.01 (3H, s, -OMe), 3.94 (3H, s, -OMe), 3.73 (3H, s, -OMe), 2.95 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5)。
【0074】
化合物12の調製
化合物10(1.0g)と炭酸カリウム(200mg)を20mLのアセトンに溶解させ、更に0.25mLの臭化エチルを入れ、3時間加熱し還流させ、反応の混合物をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、シリカゲルカラム(CHCl3/CH3OH=20:1)で残留物を精製し、化合物12を得た(0.37g, 34%)。
【0075】
化合物12、C22H22BrNO5、MW:459;褐黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0076】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 9.01 (1H, s, H-8), 8.45 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 7.99 (1H, s, H-1), 7.63 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 6.81 (1H, s, H-4), 6.08 (2H, s, -OCH2O-), 4.35 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 4.11 (3H, s, -OMe), 4.01 (3H, s, -OMe), 3.92 (2H, m, H-1'), 2.95 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 1.35 (3H, t, J = 7.5 Hz, H-2')。
【0077】
化合物13の調製
化合物10(34mg, 0.1mmol)を、1mLピリジンと1mL無水酢酸の混合溶液に溶解させ、室温で一晩撹拌反応させた。減圧濃縮して溶媒を除去し、Sephdex LH-20のクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=10:1)で残留物を精製し、化合物13を得た(28mg, 80%)。
【0078】
化合物13、C22H20NO6、MW:394;黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0079】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 8.81 (1H, s, H-8), 8.27 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 7.76 (1H, s, H-1), 7.29 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 6.56 (1H, s, H-4), 5.89 (2H, s, -OCH2O-), 4.45 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 3.95 (3H, s, OMe-9又は10), 3.94 (3H, s, OMe-10又は9), 2.95 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 2.10 (3H, s, OAc)。
【0080】
化合物14の調製
ベルベリン(4.5g, 12.1mmol)を50mLの丸底フラスコに入れ、油ポンプで反応系の真空度(20~30mmHg)を維持し、190℃にまで加熱して40分間反応させた。温度を室温にまで下げた後、真空ポンプの操作を停止した。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=15:1と10:1で化合物が流れないまで溶出し続ける)で反応の産物を精製し、化合物14を得た(3.3g, 85%)。
【0081】
化合物14、C19H15NO4、MW:321;赤褐色の無定形粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0082】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 9.06 (1H, s, H-8), 8.60 (1H, s, H-13), 8.18 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 8.10 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 7.57 (1H, s, H-1), 6.87 (1H, s, H-4), 6.10 (2H, s, -OCH2O-), 4.90 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 4.63 (3H, s, OMe-10), 3.20 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5)。
【0083】
化合物15の調製
化合物14(33mg, 0.1mmol)を、1mLピリジンと1mL無水酢酸との混合溶液に溶解させ、室温で一晩撹拌反応させた。減圧濃縮して溶媒を除去し、Sephdex LH-20のクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=10:1)で残留物を精製し、化合物15を得た(32mg, 88%)。
【0084】
化合物15、C21H18NO5、MW:364;赤色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0085】
1H NMR (300 MHz, CDCl3 + CD3OD): ( 9.16 (1H, s, H-8), 8.64 (1H, s, H-13), 8.18 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 8.04 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 7.55 (1H, s, H-1), 6.87 (1H, s, H-4), 6.09 (2H, s, -OCH2O-), 4.99 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 4.03 (3H, s, OMe-10), 3.20 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 2.10 (3H, s, OAc)。
【0086】
化合物16の調製
化合物14(360mg, 1.0mmol)とトリエチルアミン(1.08g)を、50mLの無水ジクロロメタンに溶解させ、室温で撹拌しながら、その中へクロロぎ酸エチル(1.2g, 11.1mmol)が溶解されたジクロロメタン溶液3mLをゆっくり滴下し、滴下が終わった後、そのまま30分間反応を続け、減圧濃縮して溶媒を除去し、Sephdex LH-20のクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=1:1)で残留物を精製し、化合物16を得た(202mg, 88%)。
【0087】
化合物16、C22H20NO6、MW:394;黄色の無定形粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0088】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 9.18 (1H, s, H-8), 8.60 (1H, s, H-13), 8.12 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 8.06 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 7.54 (1H, s, H-1), 6.57 (1H, s, H-4), 6.04 (2H, s, -OCH2O-), 4.49 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 4.25 (2H, q, J = 6.0 Hz, H-2'), 4.13 (3H, s, OMe-10), 3.20 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 1.10 (3H, t, J = 6.0 Hz, H-3')。
【0089】
化合物17の調製
ベルベリン(370mg, 1.0mmol)とフロログルシノール(504mg, 4.0mmol)を、10mLの60%硫酸溶液 (体積比) の中に溶解させ、80℃にまで加熱し、1時間還流反応させた。冷却して、氷浴で反応系へ15mLのヨウ化ナトリウム溶液(30mg/mL)を入れてろ過した。ろ過ケーキを1%水酸化カリウムを含む溶液2mLに溶解させて、亜硫酸水素ナトリウムで該溶液のpH値を4〜5に調整し、再びろ過し、Sephdex LH-20のクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=10:1)でろ過ケーキを精製し、化合物17を得た(108mg, 33%)。
【0090】
化合物17、C19H18ClNO4、MW:359;黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0091】
1H NMR (300 MHz, DMSO), ( 9.83 (1H, s, H-8), 8.75 (1H, s, H-13), 8.18 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 8.04 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 7.53 (1H, s, H-1), 6.84 (1H, s, H-4), 4.89 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 4.08 (3H, s, OMe-9又は10), 4.05 (3H, s, OMe-10又は9), 3.11 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5)。
【0092】
化合物18の調製
化合物2(490mg, 1.0mmol)とフロログルシノール(504mg, 4.0mmol)を、10mLの60%硫酸溶液(体積比)の中に溶解させ、80℃にまで加熱し、1時間還流反応させた。冷却して、氷浴で反応系へ15mLのヨウ化ナトリウム溶液(30mg/mL)を入れてろ過した。ろ過ケーキを1%水酸化カリウムを含む溶液2mLに溶解させて、亜硫酸水素ナトリウムで該溶液のpH値を4〜5に調整し、再びろ過し、Sephdex LH-20のクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=10:1)でろ過ケーキを精製し、化合物18を得た(123mg, 31%)。
【0093】
化合物18、C21H22ClNO4、MW:387;黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶けやすい。
【0094】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6), ( 9.96 (1H, s, H-8), 8.91 (1H, s, H-13), 8.23 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 8.11 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 7.72 (1H, s, H-1), 6.91 (1H, s, H-4), 4.98 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 4.23 (3H, s, OMe-9又は10), 4.15 (3H, s, OMe-10又は9), 4.01 (2H, m, H-1'), 3.27 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 1.45 (3H, t, J = 7.5 Hz, H-2')。
【0095】
化合物19の調製
ベルベリン(370mg, 1.0mmol)を10mLの無水テトラヒドロフランに溶解させた。さらに190mgのLiAlH4(5.0mmol)を入れ、室温で2時間撹拌反応させた。反応が終わった後、減圧濃縮して反応の溶媒を除去し、0.2mL水と30%水酸化ナトリウム溶液0.2mLを入れ、更に0.6mL水を入れ、反応液を放置してろ過し、酢酸エチルでろ液を抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=50:1で化合物が流出しないまで溶出を続ける)で精製し、化合物19を得た(240mg, 65%)。
【0096】
化合物19、C20H19NO4、MW:337;黄色の無定形粉末で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0097】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 7.18 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-11), 6.73 (2H, m, H-12とH-1), 6.56 (1H, s, H-4), 5.95 (1H, s, H-13), 5.94 (2H, s, -OCH2O-), 4.32 (2H, s, H-8), 3.84 (6H, s, OMe ( 2), 3.20 (2H, t, J = 8.1 Hz, H-6), 2.90 (2H, t, J = 8.1 Hz, H-5)。
【0098】
化合物20の調製
マグネシウム棒(240mg, 10mmol)と臭化エチル(1.08g, 10mmol)とを、15mLの無水エーテルに溶解させ、アルゴンガスで保護し、激しい反応が終わった後、2時間還流し続けた。反応液を0℃にまで冷却し、何回かに分けてベルベリン(370mg, 1.0mmol)をゆっくり入れ、氷浴を撤去し、室温で一晩反応させた。反応液を氷水(20mL)の中に注入し、2N塩酸でpH値を5に調整し、エーテル/水で分配して水相を冷却し、また濃アンモニア水でpH値を11〜12に調整し、クロロホルムで抽出し(20mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた油状物をエーテルの中に再結晶し、化合物20を得た(220mg, 59%)。
【0099】
化合物20、C22H23NO4、MW:365;黄色の粉末結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0100】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 7.12 (1H, s, H-1), 6.80 (2H, m, H-11と12), 6.57 (1H, s, H-4), 6.00 (2H, s, -OCH2O-), 5.89 (1H, s, H-13), 3.85 (6H, s, OMe ( 2), 3.32 (2H, m, H-6), 3.06 (1H, t, J = 6.0 Hz, H-8), 2.81 (2H, m, H-5), 1.72 (2H, m, H-1'), 0.94 (3H, t, J = 6.3 Hz, H-2')。
【0101】
化合物21の調製
マグネシウム棒(240mg, 10mmol)と臭化ベンジル(1.7g, 10mmol)とを、15mLの無水エーテルに溶解させ、アルゴンガスで保護し、激しい反応が終わった後、2時間還流し続けた。反応液を0℃にまで冷却し、何回かに分けてベルベリン(370mg, 1.0mmol)をゆっくり入れ、氷浴を撤去し、室温で一晩反応させた。反応液を氷水(20mL)の中に注入し、2mol/L塩酸でpH値を5に調整し、エーテル/水で分配した。濃アンモニア水で水相のpH値を11〜12に調整し、クロロホルムで抽出し(20mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた油状物をエーテルの中に再結晶し、化合物21を得た(280mg, 59%)。
【0102】
化合物21、C27H25NO4、MW:427;黄色の粉末結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0103】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 8.80 (1H, s, H-1), 8.53 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-11), 7.39 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-12), 7.08-7.34 (6H, m), 6.53 (1H, s, H-13), 6.00 (2H, s, -OCH2O-), 4.35 (2H, t, J = 6.0 Hz, H-6), 3.95 (3H, s, OMe), 3.93 (1H, m, H-8), 3.81 (1H, m, H-1'(), 3.43 (3H, s, OMe), 2.75 (3H, m, H-5と1'();ESIMS m/z 428.2 ([M + H]+)。
【0104】
化合物22の調製
ベルベリン(370mg, 1.0mmol)を10mLのエタノール(分析試薬)に溶解させ、アルゴンガスで保護し、1.5gのナトリウムエチラートを入れ、室温で一晩撹拌反応させた。減圧濃縮して溶媒を除去し、10mL水(水酸化ナトリウムにアルカリ処理されたもの)を入れ、酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた黄色粉末をメタノールの中に再結晶し、針状結晶22を得た(94mg, 27%)。
【0105】
化合物22、C20H19NO5、MW:353;黄色の針状結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0106】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 7.16 (1H, s, H-1), 6.97 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-11), 6.88 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-12), 6.62 (1H, s, H-4), 6.10 (1H, s, H-13), 5.95 (2H, s, -OCH2O-), 5.64 (1H, s, H-8), 3.88 (3H, s, OMe-9又は10), 3.86 (3H, s, OMe-10又は9), 3.86 (1H, m, H-6(), 3.72 (1H, m, H-6(), 3.36 (1H, m, H-5(), 2.76 (1H, m, H-5()。
【0107】
化合物23の調製
ベルベリン(370mg, 1.0mmol)を10mLのメタノール(分析試薬)に溶解させ、アルゴンガスで保護し、1.5gのナトリウムメチラートを入れ、室温で一晩撹拌反応させた。減圧濃縮して溶媒を除去し、10mL水(水酸化ナトリウムにアルカリ処理された)を入れ、酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた黄色粉末をメタノールの中に再結晶し、針状の結晶23を得た(114mg, 30%)。
【0108】
化合物23、C21H21NO5、MW:367;黄色の針状結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0109】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 7.17 (1H, s, H-1), 6.96 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-11), 6.89 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-12), 6.64 (1H, s, H-4), 6.11 (1H, s, H-8), 6.03 (1H, s, H-13), 6.00 (2H, s, -OCH2O-), 3.88 (3H, s, OMe-9又は10), 3.86 (3H, s, OMe-10又は9), 3.64 (1H, m, H-6(), 3.52 (1H, m, H-6(), 3.05 (3H, s, OMe-8), 2.89 (2H, m, H-5)。
【0110】
化合物24の調製
金属ナトリウム(0.85g)を10mL無水エタノールの中にゆっくり加入し、加入が終わった後アルゴンガスで保護し、ベルベリン370mg(1.0mmol)を入れて、室温で一晩撹拌反応させた。減圧濃縮して溶媒を除去し、10mL水(水酸化ナトリウムにアルカリ処理された)を入れ、酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた黄色粉末をエタノールの中に再結晶し、黄色の針状結晶24を得た(130mg, 34%)。
【0111】
化合物24、C22H23NO5、MW:381;黄色の針状結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0112】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 7.17 (1H, s, H-1), 6.95 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-11), 6.86 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-12), 6.63 (1H, s, H-4), 6.13 (1H, s, H-8), 6.03 (1H, s, H-13), 6.01 (2H, s, -OCH2O-), 3.88 (3H, s, OMe-9又は10), 3.85 (3H, s, OMe-10又は9), 3.60 (1H, m, H-6(), 3.51 (1H, m, H-6(), 3.25 (2H, q, J = 6.3 Hz, H-1'), 2.87 (2H, m, H-5), 1.00 (3H, t, J = 6.3 Hz, H-2')。
【0113】
化合物25の調製
ベルベリン(370mg, 1.0mmol)を10mLのクロロホルム(分析試薬)に溶解させ、アルゴンガスで保護し、0.5gの水素化ナトリウムを入れ、室温で一晩撹拌反応させた。減圧濃縮して溶媒を除去し、10mL水(水酸化ナトリウムにアルカリ処理された)を入れ、酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた黄色粉末をメタノールの中に再結晶し、黄色の針状結晶25を得た(80mg, 21%)。
【0114】
化合物25、C21H18Cl3NO4、MW:453;黄色の針状結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0115】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 7.16 (1H, s, H-1), 6.97 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-11), 6.86 (1H, d, J = 8.7 Hz, H-12), 6.61 (1H, s, H-4), 6.10 (1H, s, H-13), 6.00 (2H, s, -OCH2O-), 5.64 (1H, s, H-8), 3.94 (3H, s, OMe-9又は10), 3.88 (3H, s, OMe-10又は9), 3.87 (1H, m, H-6(), 3.70 (1H, m, H-6(), 2.89 (2H, m, H-5)。
【0116】
化合物26の調製
ベルベリン(1g)を5mol/LのNaOH水溶液(5mL)に溶解させ、撹拌しながらアセトン(2mL)を1滴ずつ入れ、室温で1時間反応し続けた。反応の混合物をろ過し、メタノールでろ過ケーキを洗浄し、黄色の粉末固体26を得た(780mg, 78%)。
【0117】
化合物26、C23H23NO5、MW:393;黄色の無定形粉末で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0118】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 7.13 (1H, s, H-1), 6.78 (2H, m, H-11と12), 6.57 (1H, s, H-4), 5.94 (2H, s, -OCH2O-), 5.89 (1H, s, H-13), 5.32 (1H, dd, J = 6.9, 15.3 Hz, H-8), 3.85 (6H, s, OMe ( 2), 3.32 (2H, m, H-6), 3.06 (1H, dd, J = 3.9, 6.9 Hz, H-1'(), 2.81 (2H, m, H-5), 2.42 (1H, dd, J = 3.9, 15.3 Hz, H-1'(), 2.04 (3H, s, H-3')。
【0119】
化合物27の調製
化合物2(480mg)を20mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、水素化リチウムアルミニウム(120mg)をゆっくり入れ、室温で3時間反応し、反応液の中へそれぞれ水(0.1mL)、5N水酸化ナトリウム溶液(0.1mL)、水(0.9mL)を1滴ずつ入れてろ過した。ろ液を減圧で蒸発乾涸し、ジクロロメタンメタノールの中で残留物を再結晶し、化合物27を得た(300mg, 61%)。
【0120】
化合物27、C21H21NO4、MW:351;黄色の粉末結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0121】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 7.17 (1H, s, H-1), 7.03 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-11), 6.84 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-12), 6.68 (1H, s, H-4), 5.98 (2H, s, -OCH2O-), 4.33 (2H, s, H-8), 3.86 (6H, s, -OCH3), 3.13 (2H, m, H-6), 2.83 (2H, m, H-5), 2.78 (3H, s, -CH3)。
【0122】
化合物28の調製
化合物3(490mg)を20mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、水素化リチウムアルミニウム(120mg)をゆっくり入れ、室温で3時間反応し、反応液の中へそれぞれ水(0.1mL)、5N水酸化ナトリウム溶液(0.1mL)、水(0.9mL)を1滴ずつ入れてろ過した。ろ液を減圧で蒸発乾涸し、ジクロロメタンメタノールの中で残留物を再結晶し、化合物28を得た(320mg, 63%)。
【0123】
化合物28、C22H23NO4、MW:365;黄色の粉末結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0124】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 7.19 (1H, s, H-1), 7.09 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-11), 6.77 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-12), 6.69 (1H, s, H-4), 6.01 (2H, s, -OCH2O-), 4.23 (2H, s, H-8), 3.78 (6H, s, -OCH3), 3.13 (2H, m, H-6), 2.83 (2H, m, H-5), 2.78 (2H, m, H-1'), 1.34 (3H, t, J = 7.5Hz, H-2' )。
【0125】
化合物29の調製
マグネシウム棒(240mg, 10mmol)とヨ−ドメチル(1.40g, 10mmol)を、15mLの無水エーテルに溶解させ、アルゴンガスで保護し、激しい反応が終わった後、2時間還流し続けた。反応液を0℃にまで冷却し、ベルベリン(370mg, 1.0mmol)を何回かに分けてゆっくり入れ、氷浴を撤去し、室温で一晩反応させた。反応液を氷水(20mL)の中に注入し、2N塩酸でそのpH値を5に調整し、エーテル/水で分配した。水相を冷却し、濃アンモニア水でpH値を11〜12に調整し、クロロホルムで抽出し(20mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた油状物をエーテルの中に再結晶し、化合物29を得た(245mg, 61%)。
【0126】
化合物29、C21H21NO4、MW:351;黄色の粉末結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0127】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 7.17 (1H, s, H-1), 6.85 (2H, m, H-11と12), 6.62 (1H, s, H-4), 6.05 (2H, s, -OCH2O-), 5.94 (1H, s, H-13), 3.90 (6H, s, OMe ( 2), 3.37 (2H, m, H-6), 3.11 (1H, t, J = 6.0 Hz, H-8), 2.86 (2H, m, H-5), 1.31 (3H, t, J =7.0 Hz, H-2')。
【0128】
化合物30の調製
マグネシウム棒(240mg, 10mmol)とヨ−ドメチル(1.40g, 10mmol)を、15mLの無水エーテルに溶解させ、アルゴンガスで保護し、激しい反応が終わった後、2時間還流し続けた。反応液を0℃にまで冷却し、化合物2(480mg, 1.0mmol)を何回かに分けてゆっくり入れ、氷浴を撤去し、室温で一晩反応させた。反応液を氷水(20mL)の中に注入し、2N塩酸でそのpH値を5に調整し、エーテル/水で分配した。水相を冷却し、濃アンモニア水でpH値を11〜12に調整し、クロロホルムで抽出し(20mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた油状物をエーテルの中に再結晶し、化合物30を得た(232mg, 43%)。
【0129】
化合物30、C22H23NO4、MW:365;黄色の粉末結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0130】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 7.09 (1H, s, H-1), 6.81 (2H, m, H-11と12), 6.52 (1H, s, H-4), 6.01 (2H, s, -OCH2O-), 3.73 (6H, s, OMe ( 2), 3.21 (2H, m, H-6), 3.08 (1H, m, H-8) ,2.86 (2H, m, H-5), 1.83 (3H, s, H-1'), 1.38 (3H, d, J =6.3 Hz, H-2')。
【0131】
化合物31の調製
マグネシウム棒(240mg, 10mmol)と臭化エチル(1.08g, 10mmol)とを、15mLの無水エーテルに溶解させ、アルゴンガスで保護し、激しい反応が終わった後、2時間還流し続けた。反応液を0℃にまで冷却し、化合物3(490mg, 1.0mmol)を何回かに分けてゆっくり入れ、氷浴を撤去し、室温で一晩反応させた。反応液を氷水(20mL)の中に注入し、2N塩酸でそのpH値を5に調整し、エーテル/水で分配した。水相を冷却し、濃アンモニア水でそのpH値を11〜12に調整し、クロロホルムで抽出し(20mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、得られた油状物をエーテルの中に再結晶し、化合物31を得た(220mg, 43%)。
【0132】
化合物31、C24H27NO4、MW:393;黄色の粉末結晶で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0133】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):( 7.07 (1H, s, H-1), 6.75 (2H, m, H-11と12), 6.51 (1H, s, H-4), 5.98 (2H, s, -OCH2O-), 3.85 (6H, s, OMe ( 2), 3.32 (2H, m, H-6), 3.06 (1H, t, J = 6.0 Hz, H-8), 2.98 (2H, m, H-3'), 2.81 (2H, m, H-5), 1.72 (2H, m, H-1'),1.33 (3H, t, J = 6.0 Hz, H-4'), 0.94 (3H, t, J = 6.3 Hz, H-2')。
【0134】
化合物32の調製
化合物19(337mg, 1.0mmol)とフロログルシノール(504mg, 4.0mmol)とを、10mLの60%硫酸溶液(体積比)の中に溶解させ、80℃にまで加熱し、1時間還流反応させた。冷却して、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥して回転蒸発させ、シリカゲルカラム(CHCl3:MeOH=10:1)で精製し、化合物32を得た(108mg, 33%)。
【0135】
化合物32、C19H19NO4、MW:325;褐色の粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0136】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 6.87 (1H, s, H-1), 6.52 (1H, s, H-4), 6.75 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 6.47 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 5.88 (1H, s, H-13), 4.27 (2H, s, H-8), 3.76 (6H, s, -OCH3), 3.01 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 2.54 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5)。
【0137】
化合物33の調製
化合物14(321mg, 1.0mmol)とフロログルシノール(504mg, 4.0mmol)とを、10mLの60%硫酸溶液(体積比)の中に溶解させ、80℃にまで加熱し、1時間還流反応させた。冷却して、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥して回転蒸発させ、シリカゲルカラム(CHCl3:MeOH=10:1)で精製し、化合物33を得た(98mg, 31%)。
【0138】
化合物33、C18H17NO4、MW:311;褐色の粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0139】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 6.92 (1H, s, H-1), 6.57 (1H, s, H-4), 6.70 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-11), 6.41 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-12), 5.83 (1H, s, H-13), 4.33 (2H, s, H-8), 3.87 (3H, s, -OCH3), 3.11 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 2.33 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5)。
【0140】
化合物34の調製
化合物29(351mg, 1.0mmol)とフロログルシノール(504mg, 4.0mmol)とを、10mLの60%硫酸溶液(体積比)の中に溶解させ、80℃にまで加熱し、1時間還流反応させた。冷却して、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥して回転蒸発させ、シリカゲルカラム(CHCl3:MeOH=10:1)で精製し、化合物34を得た(103mg, 32%)。
【0141】
化合物34、C20H21NO4、MW:339;褐色の粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0142】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 6.78 (1H, s, H-1), 6.47 (1H, s, H-4), 6.31 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-11), 6.23 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-12), 4.37 (2H, s, H-8), 3.73 (6H, s, -OCH3), 3.11 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 2.43 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 1.79 (3H, s, -CH3)。
【0143】
化合物35の調製
化合物27(351mg, 1.0mmol)とフロログルシノール(504mg, 4.0mmol)とを、10mLの60%硫酸溶液(体積比)の中に溶解させ、80℃にまで加熱し、1時間還流反応させた。冷却して、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥して回転蒸発させ、シリカゲルカラム(CHCl3:MeOH=10:1)で精製し、化合物35を得た(107mg, 33%)。
【0144】
化合物35、C20H21NO4、MW:339;褐黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0145】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 6.77 (1H, s, H-1), 6.45 (1H, s, H-4), 6.29 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-11), 6.21 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-12), 4.51 (2H, s, H-8), 3.71 (6H, s, -OCH3), 3.13 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 2.41 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 1.34 (3H, s, -CH3)。
【0146】
化合物36の調製
化合物30(365mg, 1.0mmol)とフロログルシノール(504mg, 4.0mmol)とを、10mLの60%硫酸溶液(体積比)の中に溶解させ、80℃にまで加熱し、1時間還流反応させた。冷却して、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥して回転蒸発させ、シリカゲルカラム(CHCl3:MeOH=10:1)で精製し、化合物36を得た(123mg, 37%)。
【0147】
化合物36、C21H23NO4、MW:353;褐黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0148】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 6.81 (1H, s, H-1), 6.55 (1H, s, H-4), 6.32 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-11), 6.22 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-12), 4.43 (2H, s, H-8), 3.70 (6H, s, -OCH3), 3.34 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 2.58 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 1.79 (3H, s, -CH3), 1.35 (3H, s, -CH3)。
【0149】
化合物37の調製
化合物32(325mg)を、1mLピリジンと1mL無水酢酸との混合溶液に溶解させ、室温で一晩撹拌反応させた。減圧濃縮して溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=20:1)で残留物を精製し、化合物37を得た(132mg, 37%)。
【0150】
化合物37、C23H23NO6、MW:409;赤褐色の粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0151】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 7.15 (1H, s, H-1), 6.77 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 6.52 (1H, s, H-4), 6.47 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 5.93 (1H, s, H-13), 4.42 (2H, s, H-8), 3.84 (6H, s, -OCH3), 3.13 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 2.87 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 2.08 (6H, s, -OCOCH3)。
【0152】
化合物38の調製
2,3,9,10-テトラオキシジヒドロパルマチン(297mg)を、1mLピリジンと1mL無水酢酸の混合溶液に溶解させ、室温で一晩撹拌反応させた。飽和炭酸水素ナトリウム溶液を入れて中和し、酢酸エチルで分配し、有機相を減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=25:1)で残留物を精製し、化合物38を得た(108mg, 31%)。
【0153】
化合物38、C23H23NO6、MW:409;褐黄色の粉末で、クロロホルムとメタノールに溶けやすい。
【0154】
1H NMR (300 MHz, CDCl3): ( 7.21 (1H, s, H-1), 6.79 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-11), 6.55 (1H, s, H-4), 6.47 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-12), 5.91 (1H, s, H-13), 4.51 (2H, s, H-8), 3.17 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-6), 2.84 (2H, t, J = 6.3 Hz, H-5), 2.08 (6H, s, -OCOCH3), 2.06 (6H, s, -OCOCH3)。
【0155】
化合物39の調製
塩酸パルマチン(390mg, 1.0mmol)を10mLの無水テトラヒドロフランに溶解させた。190mgのLiAlH4(5.0mmol)を入れ、室温で2時間撹拌反応させた。反応が終わった後、減圧濃縮して反応の溶媒を除去し、0.2mL水と30%水酸化ナトリウム溶液0.2mLを入れ、更に0.6mL水を入れ、反応液を放置してろ過し、酢酸エチルでろ液を抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=50:1で化合物が流出しないまで溶出し続ける)で精製し、化合物39を得た(253mg, 67%)。
【0156】
化合物39、C21H23NO4、MW:353;黄色の無定形粉末で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0157】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 7.21 (1H, s, H-1), 7.08 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-12), 6.91 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-11), 6.67 (1H, s, H-4), 5.76 (1H, s, H-13), 4.33 (2H, s, H-8), 3.90 (6H, s, -OMe ( 2), 3.86 (3H, s, -OMe), 3.83 (3H, s, -OMe), 3.18 (2H, t, J = 7.5 Hz, H-6), 2.91 (2H, t, J = 7.5 Hz, H-5)。
【0158】
化合物40の調製
塩酸パルマチン(415mg, 1.0mmol)を10mLの無水テトラヒドロフランに溶解させた。190mgのLiAlH4(5.0mmol)を入れ、室温で2時間撹拌反応させた。反応が終わった後、減圧濃縮して反応の溶媒を除去し、0.2mL水と30%水酸化ナトリウム溶液0.2mLを入れ、更に0.6mL水を入れ、反応液を放置してろ過し、酢酸エチルでろ液を抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=50:1で化合物が流出しないまで溶出し続ける)で精製し、化合物40を得た(223mg, 61%)。
【0159】
化合物40、C23H27NO4、MW:381;黄色の無定形粉末で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0160】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 7.17 (1H, s, H-1), 7.03 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-12), 6.84 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-11), 6.68 (1H, s, H-4), 4.27 (2H, s, H-8), 3.92 (3H, s, -OMe ), 3.91 (3H, s, -OMe ), 3.88 (3H, s, -OMe), 3.85 (3H, s, -OMe), 3.08 (2H, m, H-6), 2.81 (4H, m, H-5と1'), 1.34 (3H, t, J = 7.5 Hz, H-2')。
【0161】
化合物41の調製
塩酸ベルベリン(355mg, 1.0mmol)を10mLの無水テトラヒドロフランに溶解させた。190mgのLiAlH4(5.0mmol)を入れ、室温で2時間撹拌反応させた。反応が終わった後、減圧濃縮して反応の溶媒を除去し、0.2mL水と30%水酸化ナトリウム溶液0.2mLを入れ、更に0.6mL水を入れ、反応液を放置してろ過し、酢酸エチルでろ液を抽出し(10mL×3)、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/CH3OH=50:1で化合物が流出しないまで溶出し続ける)で精製し、化合物41を得た(223mg, 61%)。
【0162】
化合物41、C19H15NO4、MW:321;黄色の無定形粉末で、クロロホルムとアセトンに溶けやすい。
【0163】
1H NMR (300 MHz, CDCl3), ( 7.13 (1H, s, H-1), 7.02 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-12), 6.83 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-11), 6.64 (1H, s, H-4), 5.98 (2H, s, -OCH2O-), 5.96 (2H, s, -OCH2O-), 4.23 (2H, s, H-8), 3.11 (2H, t, J = 7.5 Hz, H-6), 2.81 (2H, t, J = 7.5 Hz, H-5)。
【0164】
実験の実施例
実験の実施例1:
L6筋肉細胞のグルコース取り込みモデルを使用し、本発明の一部化合物のグルコース吸収促進作用について、生体外での評価を行った。
【0165】
実験ステップ:
24穴プレートの中に完全に分化されたL6筋肉細胞を培養し、1×PBSで1回洗浄した後、0.2%BSAを含む高グルコースDMEM培地の中に2時間飢餓培養し、その後5μMの本発明のジヒドロベルベリン誘導体を含む0.2% BSAの高グルコースDMEM培地を使用して2.5時間培養し続けた。5μMジヒドロベルベリン誘導体を含むHBS溶液で2回洗浄した後、5μMジヒドロベルベリン誘導体を含むHBS溶液の中に0.5時間培養し続けた。
【0166】
その最終濃度が100μM、同位元素が0.5 μCi/mLになるように、HBS溶液の中へ[3H]同位元素標識の2-デオキシグルコース(HBS又はKRPで溶解させる場合その濃度が1mMであり、5μCi/mL臨時の作業液体)を入れた。37℃で10分間培養し、細胞培養液を速やかに吸い出し、細胞を氷の上に置き、氷冷PBSで速やかに3回洗浄した。42℃のオーブン内で乾燥した。200μLの0.1% TritonX-100を入れ、4℃で45分間緩やかに振動させ細胞を分解させた。150μL分解液を取り、その中へ1.1mLのシンチレーション液を入れてシンチレーション計数した。10μl分解液を取り10倍希釈してBradford法でタンパクの濃度を測定した。最終結果をpmol/分/mg蛋白質で示した。
【0167】
評価基準:
測定対象化合物をDMSOの中に溶解させ、その濃度が5μMになる際、計算により得られたグルコース取り込み量がDMSOの空白対照グループより多く、且つこの2組のデータで顕著な統計学上の差があれば、該化合物はグルコース吸収を促進する効果を持っていることが確認できる。
【0168】
測定結果:
図1は、L6筋肉細胞のグルコース取り込みモデルにおいてグルコースの濃度が5.0mMである場合、本発明の一部化合物の濃度が5μM の時にグルコース輸送の促進効果を示した図であり、その中DMSOは空白対照グループで、BBRはベルベリンである。
【0169】
細胞レベルのスクリーニングにおいて、いくつかの化合物のグルコース吸収の促進活性は、ベルベリンより強いことが見出された。合成の難易程度に基き、我々はジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩を選び、動物に対する薬力学実験を行った。
【0170】
実験の実施例2:
本発明に係る化合物の生体内における抗糖尿病活性の評価
【0171】
実験ステップ:
正常なオスのC57BL/6Jマウスを使用し、高脂肪食で10週間飼育することにより、マウスは明らかなインスリン抵抗性による症状が発生し、耐糖能も明らかに低下した。モデルの作製が成功したマウスを10匹取り、化合物の薬力学評価に用いた。ジヒドロベルベリン誘導体19又はその硫酸塩を高脂肪食の中に混ぜて(投与量は100mg/kg/dayである)、2週間の治療を与え、一晩飢えさせた後、尾部の静脈から血を取り空腹時血糖値(0分)を測定し、次に正常食を与えた対照グループの体重に基づき2g/kgのグルコースを腹腔注射し、15、30、45、60、90と120分間でそれぞれの血糖値を測定し、またその曲線下面積AUCを計算した。その体重、内臓脂肪及びマウス血漿中の脂肪酸とトリグリセリドの含有量を測定した。
【0172】
実験結果:
図2〜4において、CH-conは正常なマウスで、HF-conは肥満マウスで、HF-BBR19はジヒドロベルベリン誘導体19により2週間治療された後の肥満マウスで、HF-BBR19Yはジヒドロベルベリン誘導体19の硫酸塩により2週間治療された後の肥満マウスである。
【0173】
図2は、マウスの腹腔内グルコース負荷(ipGTT)曲線と曲線下面積を示す図である。ジヒドロベルベリン誘導体19又はその硫酸塩グループと対照グループを2週間治療した後、腹腔注射により一晩飢えたマウスに2g/kgグルコースを与え、それぞれ0、15、30、45、60、90と120分間でその血糖値を測定し、またその曲線下面積AUCを計算した(*, P<0.05; **, P<0.01)。図2から、ジヒドロベルベリン誘導体19又はその硫酸塩により肥満マウスを2週間治療した後、肥満マウスの耐糖能は明らかに改善されていることが確認できる。
【0174】
図3は、ジヒドロベルベリン誘導体19又はその硫酸塩により2週間治療された後の肥満マウスの体重増加及び内臓脂肪/体重の比率を示す図である(*, P<0.05; **, P<0.01)。図3から、ジヒドロベルベリン誘導体19又はその硫酸塩により2週間治療されたマウスの体重増加は、対照グループより明らかに少ないことが確認できる。また、腹部の内臓脂肪が体重に占める比率は、対照グループより明らかに低かった。本発明の化合物は、高脂肪食に誘導されたマウスの体重増加と脂肪堆積を抑制する傾向を有し、潜在的な肥満症治療効果を持っていることが示された。
【0175】
図4は、ジヒドロベルベリン誘導体19又はその硫酸塩により2週間治療された後、肥満マウス血漿中の遊離脂肪酸(NEFA)とトリグリセリド(TG)の含有量の変化を示す図である(*, P<0.05; **, P<0.01)。図4から、ジヒドロベルベリン誘導体19又はその硫酸塩により2週間慢性治療された後、マウスの血漿中の遊離脂肪酸NEFA(HF-Con vs HF-19, 0.76 ( 0.03 mmol/l vs 0.6 ( 0.05 mmol/l)とトリグリセリドTGの含有量(HF-Con vs HF-19, 1.20 ( 0.05 mmol/l vs 0.86 ( 0.08 mmol/l)は、明らかに低下していることが確認された。
【0176】
実験の結論:
高脂肪食に誘導されたインスリン抵抗性及び肥満マウスのモデルにおいて、ジヒドロベルベリン誘導体19及びその硫酸塩は、グルコース耐性とインスリン抵抗性の改善、肥満の軽減、血漿中の遊離脂肪酸とトリグリセリドの低下、脂肪肝の緩和などの面で明らかな治療効果を持っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1に示された13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩であって、
【化7】

その中、--は二重結合又は単結合を表し;
R1、R2はそれぞれ独立にH、OH、C1-C4アルコキシ基又はC1-C4アシルオキシ基であり、あるいはR1とR2が結合して-O-CH2-O-を形成し;
R3はH、OH、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アシルオキシ基、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロアルキル基又は芳香族基であり;
R4、R5はそれぞれ独立にH、OH、C1-C4アルコキシ基又はC1-C4アシルオキシ基であり、あるいはR4とR5が結合して-O-CH2-O-を形成し;
R6はH、OH、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アシルオキシ基、C1-C4アルキル基、C1-C4ハロアルキル基又は芳香族基である、13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩。
【請求項2】
前記化合物は、以下の一般式2〜41のいずれかに示された構造を有することを特徴とする請求項1に記載の13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩;
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】


【請求項3】
治療有効量の、請求項1に記載の13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩を含む医薬組成物。
【請求項4】
インスリン抵抗性による糖尿病、肥満症、脂肪肝及びその合併症の治療薬の調製における、請求項1に記載の13,13a-ジヒドロベルベリン誘導体又はその生理的に許容し得る塩の医薬用途。
【請求項5】
インスリン抵抗性による糖尿病、肥満症、脂肪肝及びその合併症の治療薬の調製における、請求項3に記載の医薬組成物の用途。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2010−504919(P2010−504919A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529500(P2009−529500)
【出願日】平成19年9月30日(2007.9.30)
【国際出願番号】PCT/CN2007/002882
【国際公開番号】WO2008/040192
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(503189413)シャンハイ インスティテュート オブ マテリア メディカ チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ (4)
【Fターム(参考)】