説明

17−スピロラクトンを得る方法

本発明は、17位にスピロラクトン基を有するステロイドを得る方法、特に、一般にドロスピレノンとして知られている、6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトンを工業的に得る方法、および上記方法における有用な中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、17位にスピロラクトン基を有するステロイドを得る方法、特に、一般にドロスピレノンとして知られている、6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトンを工業的に得る方法、および上記方法における有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の中で言及される化合物は、たとえば、ドロスピレノン、スピロレノンまたはプロレノンであることができ、式(I)のドロスピレノンは特に興味深いものである。
【化1】

【0003】
ドロスピレノンは、プロゲストゲン活性、抗鉱質コルチコイド活性および抗アンドロゲン活性を特に有し、それゆえ、その避妊薬としての用途のための医薬組成物において用いられている。
【0004】
当該化合物を得るための多くの化学的方法が記述されてきており、その中で主な合成上の困難は、ベータ配置におけるシクロプロピル基の配置およびラクトン基の導入である。
【0005】
この化合物が最初に記載されたDE2652761号には、それを得るための合成ルートが記載されており、ラクトン基が合成の初期段階で導入されている。
【化2】

【0006】
この方法は次の主な欠点を有している。すなわち、カラムクロマトグラフィーのような非工業的技術によって精製を行うことを強いる、6位、7位へのシクロプロピルの非ジアステレオ選択的な導入、およびSteroids,71,745−500,2006およびEP918791B1号に記載されているように、特に酸性媒体中で、異性化し得る17位のラクトン基の不安定性は、最終生成物に関連する主な不純物のひとつであるイソラクトンを生じさせる。
【0007】
特に、ラクトンの異性化、および精製することが非常に困難な関連不純物としてのイソラクトンの生成を抑制するために、合成の最終段階としてラクトン基の導入が実行されており、さらにその形成の時に、反応条件がコントロールされている合成ルートを用いることが望ましい。
【0008】
米国特許4416985号には、6位、7位のシクロプロピルの非ジアステレオ選択的な導入が解消され、さらに最終合成段階でラクトンが得られる方法が記載されている。
【化3】

ここで、ラクトンは、所望の生成物を生じさせるために形成されるテトラオールの水素化および引き続き酸化を受けるプロパルギルアルコールを添加することによって同時に導入される。
【0009】
しかしながら、三酸化クロム等の有毒酸化剤の存在下における最終段階の酸化条件は、クロマトグラフィーカラムによって精製される生成物を生じさせ、形成されるラクトンの部分的な異性化が、使用される酸性媒体と、当該異性化において助けとなるクロム塩の存在とにより起こる。
【0010】
EP918791B1号は上記の欠点を示し、ひとつの解決策として、臭素酸ナトリウムの存在下で触媒量の三塩化ルテニウムを用いることにより、最終テトラオール中間体の酸化条件を緩和することを提案する。これらの条件下で、5−β−ヒドロキシ誘導体:
【化4】

は中間体として単離され、制御された条件下、酸性媒体中でヒドロキシル基を取り除き、その結果イソラクトンの出現を防止することにより、最終ドロスピレノンを生じさせる。
【0011】
これらの条件下で、クロマトグラフィー純度はまだ93%であるドロスピレノンが単離され、より高い純度の生成物を得るためにはクロマトグラフィー技術を使用する必要性があることが記載されている。
【0012】
US2005/192450号も、その酸化によって、または、予め下記ラクトール誘導体を単離することによって、直接最終ドロスピレノンを得るために、テトラオール中間体を用いている。
【化5】

【0013】
たとえば二酸化マンガン、オッペナウアー酸化条件、TEMPO等の存在下における次亜塩素酸ナトリウムの使用など様々な酸化条件が記載されている。これらにおいて得られるドロスピレノンもまたカラムクロマトグラフィーによって単離される。
【0014】
酸化条件下でテトラオール中間体の部分的または完全酸化という同様の手法に従うその他の特許または特許出願には、たとえばEP1828222B1号およびEP1746101B1号がある。
【0015】
以上のように、合成の最終段階としてラクトン基を導入する、すべての合成のための提案されている手法は、ドロスピレノンを得るためにその後酸性媒体中で脱離されるテトラオール中間体の完全または部分酸化反応である。すべての場合、最終段階の最終条件は、目的生成物の精製を複雑化させる酸化剤、およびラクトンの分解に由来する不純物、たとえばイソラクトン等の生成を可能にする酸性媒体中における脱離条件を伴う。
【0016】
したがって、当技術分野に属する知られた方法に関するすべての又は一部の課題を克服する、スピロラクトン機能を有するステロイド誘導体を得る代替方法を開発することが必要である。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、ステロイド、特にドロスピレノンを調製する方法を提供するという課題に向けられたものである。この方法は、好ましくは最終合成段階として、17位にラクトン基を導入することを許容し、加えて、最終精製を複雑化させる酸化剤、またはたとえばイソラクトンの生成を伴う目的生成物の分解を助ける酸性条件の使用を抑制する。
【0018】
本発明により提供される解決手段は、本発明者等が、驚くべきことに、[以下に定義される]式(III)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17−β−ヒドロキシ−17−α−カルボキシアルキル−エチニルステロイドの誘導体を生じさせるために、アルキニルエステル、特にプロパルギルエステルを、[以下に定義される]式(IV)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17−カルボニルステロイドの誘導体の17位に導入することによって、非酸化的方法で、ラクトン基を導入することが可能となるということに気づいた、という事実に基づく。
【0019】
本発明によって提供される方法は多数の利点を有している。それは、その後にスピロラクトンを作り出すために必要な、エステルの形でカルボキシル基を有する側鎖が、単一の合成ステップで導入されるからである。
【0020】
それゆえ、本発明は、ステロイド、特にドロスピレノンの合成において有用な合成中間体となる、式(III)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17−ヒドロキシ−17−カルボキシ−アルキルエチニルステロイドの誘導体またはその溶媒和物を得る効率的な方法を提供する。
【0021】
したがって、ある側面において、本発明は式(III)の化合物:
【化6】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルであり、かつ
は、水素原子またはヒドロキシル保護基である)
またはその溶媒和物に関する。
【0022】
別の側面において、本発明は、式(III)の化合物を得る方法に関し、該方法は、式(IV)の化合物:
【化7】

を、式(V)のプロパルギルエステル:
【化8】

(式中、RおよびRは、上記のとおり定義される)と、塩基の存在下で反応させることを含んでなる。
【0023】
別の側面において、本発明は、ドロスピレノン(I):
【化9】

を得る方法に関し、該方法は、
式(III)の化合物を用意し、そして
上記式(III)の化合物を、
1) 任意に、Rがヒドロキシル保護基である場合、3位のヒドロキシル基を脱保護し、
2) 3位のヒドロキシル基を酸化し、式(II)の化合物を生じさせ、
【化10】

(式中、Rは式(III)の化合物に関して既に定義されたものである)、そして
上記式(II)の化合物を、シーケンスA、B、およびCから選ばれる一連の反応に付すことを含んでなり、ここで、
シーケンスAは、以下の工程を含み:
a1) 式(II)の化合物を脱離反応または脱離/鹸化反応に付し、式(IIa)の中間体を生じさせ、
【化11】

(式中、Rは、水素原子、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルである)
a2) 上記式(IIa)の化合物を、白金またはパラジウム触媒の存在下で、水素化反応に付し、式(IIc)の中間体を生じさせ、
【化12】

(式中、Rは、既に定義されたものである)、そして
a3) 上記式(IIc)の化合物を酸性条件下で処理して、ドロスピレノン(I)を生じさせ、
ここで、工程a2)およびa3)は選択的にワンポットで行われるものであり、
シーケンスBは、以下の工程を含み:
b1) 式(II)の化合物をパラジウム触媒の存在下で水素化反応に付し、式(IIb)の中間体を生じさせ、
【化13】

そして
b2) 上記式(IIb)の化合物を白金触媒の存在下で水素化反応に付し、ドロスピレノン(I)を生じさせ、
ここで、工程b1)およびb2)は選択的にワンポットで行われるものであり、
並びに、
シークエンスCは、以下の工程を含み:
c1) 式(II)の化合物を、白金触媒の存在下で水素化反応に付し、式(IId)および/または(IIe)の中間体を生じさせ、
【化14】

(式中、Rは既に定義されたものである)
そして、
c2) 式(IId)および/または(IIe)の化合物を、酸性条件下で処理し、ドロスピレノン(I)を生じさせ、
ここで、工程c1)およびc2)は選択的にワンポットで行われるものである。
【0024】
別の側面において、本発明は、ドロスピレノン(I):
【化15】

を得る方法に向けられたものであり、該方法は、
既に定義したとおりの式(III)の化合物を用意し、
その後、
d1) 上記式(III)の化合物を、金属触媒の存在下で水素化反応に付し、式(VI)の中間体を生じさせ、
【化16】

(式中、Rは、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルである)
d2) Rが保護基の場合、上記式(VI)の化合物の3位のヒドロキシル基を脱保護化し、その後エステル交換反応を行って、式(VII)の化合物を生じさせ、
【化17】

d3) 式(VII)の化合物を酸化させ、式(IId)の化合物を生じさせ、
【化18】

そして、
d4) 式(IId)の化合物を脱離反応に付し、ドロスピレノン(I)を生じさせる。
【0025】
別の側面において、本発明は、以下のリストから選ばれる化合物またはその溶媒和物に関する:
【化19】

(式中、R、R、Rは、上で定義されたものである)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の文脈において、次の用語は以下に詳述される意味を有する。
【0027】
用語「C−Cアルキル」は、1〜8の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルカン由来のラジカルを示し、好ましくは1〜6の炭素原子を含み(「C−Cアルキル」)、単結合によってその分子の残りに結合している。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンテル、およびヘキシルが挙げられる。
【0028】
本明細書において、用語「C−Cシクロアルキル」は、3〜8の炭素原子を含むシクロアルカン由来のラジカルを示し、好ましくは3〜6の炭素原子を含む(「C−Cシクロアルキル」)。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピルおよびシクロブチルが挙げられる。
【0029】
本明細書において、用語「アリール」は、6〜14の炭素原子を含む芳香族炭化水素由来のラジカルを示し、好ましくは6〜10の炭素原子を含み、たとえばフェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。
【0030】
本明細書において、用語「ヒドロキシル保護基」は、ヒドロキシル基を保護することができるすべての官能基を含む。上記ヒドロキシル保護基の具体例は、Green T.W.et al.の「Protective groups in Organic Synthesis」第3版(1999),Ed.John Wiley &Sonsにおいて記述されている。ヒドロキシル基保護基の例としては、シリルエーテル、エーテル、エステル、スルホン酸塩、スルフェン酸塩、スルフィン酸塩、炭酸塩、カルバミン酸塩が挙げられる。ヒドロキシル基保護基は、好ましくは式Si(R)(R)(R)のシリルラジカルであり、ここで、R、R、Rは、互いに独立して、C−CアルキルまたはC−Cシクロアルキルを表す。
【0031】
同様に、本発明において記載された化合物は、遊離の化合物または溶媒和物(たとえば、水和物)として結晶の形態であることができ、双方の形態が本発明の範囲内にあると理解される。溶媒和の方法は当技術分野において一般に知られている。適切な溶媒和物は薬学的に許容できる溶媒和物である。
【0032】
式(III)の化合物
一つの側面において、本発明は、式(III)の化合物:
【化20】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルであり、かつ
は、水素原子またはヒドロキシル保護基である)
またはその溶媒和物に関する。
【0033】
一つの特定の実施形態において、Rは、C−Cアルキルであり、好ましくはC−Cアルキルであり、より好ましくはエチルである。
【0034】
別の特定の実施形態において、Rは、水素、シリル化ヒドロキシル保護基から選ばれる。好ましくは、Rは、水素、トリメチルシリルおよびt−ブチルジメチルシリルから選ばれる。
【0035】
別の特定の実施形態において、Rは直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであり、Rは水素およびシリル化ヒドロキシル保護基から選ばれる。別のさらに特定の実施形態において、Rはエチルであり、Rは好ましくは水素、トリメチルシリル、およびt−ブチルジメチルシリルから選ばれる。
【0036】
特定の実施形態によれば、式(III)の化合物は下記から選ばれるものまたはその溶媒和物である。
【化21】

【0037】
式(III)の化合物を得る方法
別の側面において、本発明は、式(III)の化合物またはその溶媒和物を得るための方法(以下「本発明の方法」という)に関し、
【化22】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルであり、かつ
は、水素またはヒドロキシル保護基である)
この方法は、式(IV)の化合物:
【化23】

(式中、Rは既に定義したものである)を、式(V)のプロパルギルエステル:
【化24】

(式中、Rは既に定義したものである)と、塩基の存在下で反応させる工程を含んでなる。
【0038】
本発明の方法は、式(IV)の化合物を、塩基とプロパルギルエステル(V)との反応によって生成されるプロパルギルエステルのアニオンと反応させることを含む。
【0039】
本発明の方法を実施するために、種々のプロパルギルエステル、特に、エチルプロピオラート(プロピオール酸エチル)、メチルプロピオラート、t−ブチルプロピオラート、イソブチルプロピオラートおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるものを用いることができる。特定の、かつ好ましい実施形態において、プロパルギルエステルはエチルプロピオラートである。
【0040】
本発明の方法において使用される塩基は、プロパルギルエステルのプロトンを受け取ることができる任意の有機または無機塩基であることができる。使用され得る有機または無機塩基の説明に役立つ非制限的な例としては、たとえば、リチウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(HMDSLi)、リチウムアミド、ナトリウムアミド等のアミド、たとえば、ブチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキライドリチウム;水素化ナトリウム、水素化リチウム、またはその他プロパルギルエステルのプロトンを受け取ることができると考えられる類似の任意の無機塩基が挙げられる。1または2以上の有機および/または無機塩基が使用され得る。本発明の特定の実施形態において、有機塩基は、リチウムジエチルアミド、HMDSLi(リチウムヘキサメチルジシラジド)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)およびこれらの混合物から選ばれ、無機塩基は、リチウムアミド、ナトリウムアミドおよびこれらの混合物から選ばれる。より好ましくは、塩基はリチウムアミドである。
【0041】
特定の実施形態において、式(IV)の化合物とプロパルギルエステル(V)との反応は、ある適切な有機溶媒、たとえば、非環式エーテル(たとえば、ジイソプロピルエーテル)もしくは環式エーテル(たとえば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等)などのエーテル、たとえばジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤、中で、またはたとえばトルエン等の芳香族溶剤中で、行われる。
【0042】
本発明の方法の付加反応は、好ましくは過剰の塩基の存在下で行われる。たとえば、トルエン中でリチウムアミドを用いる場合、式(IV)のステロイドの1当量に対し2から20当量の間の塩基、好ましくは4から14当量の間の塩基の使用が要求される。
【0043】
プロパルギルエステル(V)の量は、式(IV)のステロイドに対し、広い範囲において、通常は1から6当量の間で、好ましくは1.2から2当量の間で、変化することができる。
【0044】
見出された背景技術の文書は、たとえばプロパルギルエステルから獲得されたリチウムアニオンは−78℃超の温度で容易に分解するということを示唆するが(たとえば、J.Org.Chem.,45,28,1980;J.Am..Chem.Soc.,122,10033,2000;Fieser and Fieser‘s Reagents for Organic Synthesis,vol8,p.259,Wiley Interscience and Synthesis,679,1977参照)、本発明者等は、驚くべきことに、塩基とのプロパルギルエステルのアニオンの形成、およびそれのその後のステロイドへの付加の双方が、ある特定の化合物のこのような分解を伴うことなく、より高い温度で行うことができるということを見出した。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法が行われる温度は−10℃から60℃の間に及び、通常−76℃といった先行技術に記載されているような厳しい冷却条件下で反応を行う必要がない。本発明の方法は、驚くべきことに、室温以上で触媒を用いて反応させた後のトリマーおよび他のプロパルギルエステルの誘導体の形成を記述する先行技術(J.Am.Chem.Soc.,83,2944,1961参照)に記載されている欠点を克服するものである。
【0045】
反応速度は温度および使用される溶剤双方に依存し、温度が−10℃から60℃の間では、反応は15分から12時間の間の期間に、通常30分から6時間の間に起こる。
【0046】
特定の実施形態において、溶剤としてテトラヒドロフランを、および塩基としてリチウムアミドを用いて反応が行われた場合、一般的な反応温度は0℃から5℃の間であり、反応時間は約2から3時間である。
【0047】
別の特定の実施形態によれば、溶剤としてテトラヒドロフラン/ジメチルホルムアミド(THF/DMF)混合物を、および塩基としてナトリウムアミドを用いた場合、一般的な反応温度は0℃から5℃の間であり、反応時間は約3から4時間である。
【0048】
別の特定の実施形態によれば、溶剤としてトルエンを、および塩基としてリチウムアミドを用いた場合、反応温度は約25℃であり、反応時間は約2から4時間である。
【0049】
別の特定の実施形態によれば、溶剤としてトルエンを、および塩基としてリチウムアミドを用いた場合、反応温度は約40℃であり、反応時間は約1から3時間である。
【0050】
別の特定の実施形態によれば、溶剤としてトルエンを、および塩基としてHMDSLiを用いた場合、反応温度は約0℃であり、反応時間は約0.5から3時間である。
【0051】
これらの場合のいずれにおいても、反応温度における顕著な増加は、不純物、主に、プロパルギルエステルの重合に由来する不純物の増加、および最終収率の減少を伴うおそれがある。
【0052】
本発明の方法は、高度の純度および高収率(通常約80%以上)で式(III)の化合物を得ることを可能とする。
【0053】
得られる式(III)の化合物は直接に用ることができ、また、従来の且つ工業的に許容される方法により、たとえば晶析プロセス等により、精製することができる。上記晶析のための適切な溶剤の具体的かつ非制限的な例としては、エチルアセテート(酢酸エチル)、トルエン、ヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル、ジクロロメタン(DCM)等およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、上記溶剤は酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン、ヘプタンおよびこれらの混合物から選ばれる。
【0054】
特定の実施形態において、式(III)の化合物において、Rがエチル基で、かつ、Rがt−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基の場合、生成物はトルエンまたはトルエン/ヘプタン中で精製することができ、対応するトルエン半溶媒和物を生じさせる。
【0055】
別の特定の実施形態によれば、式(III)の化合物において、Rがエチル基で、かつ、Rが水素の場合、生成物はDCMまたはDCM/ヘプタン中で精製することができる。
【0056】
特定の実施形態によれば、RがTBDMS基である式(IV)の化合物と、Rがエチル基である式(V)の化合物との、トルエン中で、8当量のリチウムアミドを用いる式(III)の化合物の生成反応は、式(III)の化合物に相当する化合物を生じさせ、それはトルエン半溶媒和物の形で、80%超の収率で単離される。
【0057】
別の特定の実施形態によれば、式(III)の化合物の生成反応は、RがTBDMS基である式(IV)の化合物と、Rがエチル基である式(V)の化合物とを、トルエン中で、2当量のHMDSLiを用いる反応によって行われ、式(III)の化合物に相当する化合物を生じさせ、それは約77%の収率で単離される。
【0058】
が水素である式(IV)の出発物質は、たとえば、以下の合成スキームに記載される、17位におけるケト誘導体の取得を記載するUS4416985号、US4435327号またはEP1828222号に述べられる様な従来技術として知られる方法によって得ることができる。
【化25】

【0059】
がヒドロキシル保護基である式(IV)の化合物は、順に、Rが水素である式(IV)の化合物から、ヒドロキシル基を保護する従来技術として知られる方法により、たとえばGreen T.W.et al.の「Protective groups in Organic Synthesis」第3版(1999),Ed.John Wiley &Sons(ISBN 0−471−16019−9)により説明される方法等により、ヒドロキシル基を保護するによって、得ることができる。
【0060】
特定の実施形態において、RがTBDMS基またはTMS(トリメチルシリル)基である式(IV)の化合物は、Rが水素である式(IV)の化合物と、塩化t−ブチルジメチルシリルまたは塩化トリメチルシリルとの、それぞれDMF中で、たとえばトリエチルアミン等の塩基の存在下での、反応によって得ることができる。これらの化合物はDMF/水中で結晶化させられ得る。
【0061】
別の側面において、本発明は、17位にスピロラクトン基を有するステロイドの合成において、好ましくはドロスピレノン(I)の合成において、有用な中間体としての、上記式(III)のステロイドまたはその溶媒和物の使用に関する。
【0062】
ドロスピレノン(I)を得る方法
本発明の別の側面は、ドロスピレノン(I)を得る方法に関し、
【化26】

この方法は、
−式(III)の化合物またはその溶媒和物を用意し、
【化27】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールおよびベンジルから選ばれるものであり、かつ
は、水素およびヒドロキシル保護基から選ばれる)、そして
−上記式(III)の化合物を、
1) 任意に、Rがヒドロキシル保護基である場合、3位のヒドロキシル基を脱保護し、
2) 3位のヒドロキシル基を酸化し、式(II)の化合物を生じさせ、
【化28】

(式中、Rは既に定義されたものである)、および
−上記式(II)の化合物を、シーケンスA、B、およびC(下記)から選ばれる一連の反応に付すことを含んでなる。
【0063】
特定の実施形態において、Rは直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであり、好ましくはC−Cアルキルであり、より好ましくはエチルである。
【0064】
別の特定の実施形態において、Rは水素またはシリル化ヒドロキシル保護基であり、好ましくは、より特定の実施形態において、Rは水素、トリメチルシリル、またはt−ブチルジメチルシリルである。
【0065】
別の特定の実施形態において、Rは直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであり、かつ、Rは水素またはシリル化ヒドロキシル保護基である。好ましくは、より特定の実施形態において、Rはエチルであり、かつ、Rは水素、トリメチルシリル、またはt−ブチルジメチルシリルである。
【0066】
本発明の特定の実施形態は、式(III)の化合物であって、
Rがエチルであり、かつ、Rが水素であるか、
Rがエチルであり、かつ、Rがt−ブチルジメチルシリルであるか、または
Rがエチルであり、かつ、Rがトリメチルシリルである、式(III)の化合物の使用を包含する。
【0067】
必要であれば、上記ヒドロキシル基脱保護反応1)は、公知の方法によって、たとえば、Green T.W.et al.の「Protective groups in Organic Synthesis」第3版(1999),Ed.John Wiley &Sons(ISBN 0−471−16019−9)により説明される複数の方法のいずれかに従って行われ得る。
【0068】
式(III)の化合物における保護基Rがシリル基である場合、それは、たとえばフッ化物塩、エタノール中の塩酸等の無機酸、テトラヒドロフラン中のギ酸またはp−トルエンスルホン酸等の有機酸、および、場合によっては、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(DDQ)等の酸化媒体を用いて、容易に脱離させることができる。
【0069】
とりわけ、上記保護基Rがトリメチルシリル(TMS)またはt−ブチルジメチルシリル(TBDMS)である場合、フッ化ピリジニウム、フッ化カリウムまたはフッ化アンモニウム等のフッ化物塩が当該保護基の脱離のために使用され得る。室温で、テトラヒドロフラン等の溶剤中のフッ化テトラブチルアンモニウムが、より好ましく使用され、得られる生成量(収率)は定量的またはほぼ定量的なものである。
【0070】
工程1)後に得られる式(III)の化合物は直接使用することができ、あるいは、従来の且つ工業的に許容される方法によって、たとえば晶析プロセス等によって、精製することができる。上記晶析のための適切な溶剤の具体的かつ非制限的な例としては、ジクロロメタン、ヘプタン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテルおよびこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、上記溶剤は、ジクロロメタンおよびジクロロメタン/ヘプタンから選ばれる。特定の実施形態において、Rがエチル基の場合、式(III)の化合物はジクロロメタンおよびジクロロメタン/ヘプタン中で晶析され得る。
【0071】
あるいは、式(III)の化合物における保護基Rが、たとえばメトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテルまたは2−メトキシ−エトキシメチルエーテル等のエーテル誘導体である場合、それらは酸性媒体を用いることによって脱離させることができる。
【0072】
式(III)の化合物における保護基Rが、たとえばフェニルエステル等のエステル誘導体である場合、それはフッ化テトラブチルアンモニウムまたはメタノリック水酸化ナトリウム等のフッ化物塩を用いることによって脱離させられ得る。
【0073】
式(III)の化合物における保護基Rがトリハロ酢酸塩、特にトリフルオロ酢酸塩である場合、それは弱塩基性条件下で脱離させることができる。
【0074】
が水素である式(III)の化合物は、酸化反応によって、式(II)の中間体に変換され得る(工程2):
【化29】

(式中、Rは既に定義されたものである)。
【0075】
この工程は、たとえばUS4416985号、US6121465号、EP1571153号、EP1828222号に記載される方法に従い、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシド(TEMPO)、次亜塩素酸カルシウム、トリクロロイソシアヌル酸またはこれらの混合物などの試薬を用いることによって、ヒドロキシル基をカルボニル基に変化させることを許す、任意の酸化反応によって行うことができる。
【0076】
特定の実施形態において、Rがエチルである式(III)の化合物の、その対応する式(II)のケトンへの変換は、室温で、TEMPOの存在下で、ジクロロメタン/テトラヒドロフラン、および水/炭酸水素ナトリウムまたはカリウムの混合物により形成される二相系で、トリクロロイソシアヌル酸の使用によって行われる。
【0077】
得られる式(II)の化合物は直接用いることができ、または、従来の且つ工業的に許容される方法により、たとえば晶析プロセス等により、精製することができる。上記晶析のための適切な溶剤の具体的かつ非制限的な例として、ジクロロメタン、ヘプタン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテルおよびこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、上記溶剤はジクロロメタン、トルエンおよびこれらの混合物から、ヘプタンとともに、選ばれる。特定の実施形態によれば、Rがエチル基の場合、式(II)の化合物は、ジクロロメタン(DCM)、トルエン、DCM/ヘプタンまたはトルエン/DCM中での晶析によって精製され得る。
【0078】
得られる式(II)の化合物は、その後、以下に詳述されるシーケンスA、B、およびCから選ばれる一連の反応によって、ドロスピレノン(I)へ変換することができる。
【0079】
シーケンスAは以下の工程を含み、
a1) 式(II)の化合物を、脱離または脱離/鹸化反応に付し、式(IIa)の化合物を生じさせ、
【化30】

(式中、Rは、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルである)
a2) 上記式(IIa)の化合物を、白金またはパラジウム触媒の存在下で、水素化反応に付し、式(IIc)の中間体を生じさせ、
【化31】

(式中、Rは既に定義されたものである)、そして
a3) 上記式(IIc)の化合物を、酸性条件下で処理して、ドロスピレノン(I)を生じさせ、
ここで、工程a2)およびa3)は選択的にワンポットで行われる。
【0080】
本発明によれば、最初の離脱反応[工程a1)]は、
a)たとえばTHF、酢酸エチル、エタノールまたはジクロロメタン等の溶剤中に、たとえばp−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウム等の有機または無機酸を触媒量または等モル量で含む酸性媒体中で、これらの条件下では、反応は室温(約18℃から25℃)で好ましく生じ、
あるいは
b)THF、メチル−THF、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール、トルエンまたは水等の溶媒中に、たとえば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を1から3当量で含む塩基性媒体中で、これらの条件下では、反応は0℃から室温で生じる。
【0081】
工程a1)の最初の段階で、C5位のヒドロキシルの脱離が起こり、酸(R=水素)またはエステル(R=水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジル)であり得る、式(IIa)の中間体が提供される。
【0082】
以下に示すとおり、反応が塩基性媒体を用いて行われ、かつ、撹拌状態が維持される場合、第2段階として、Rが水素である式(IIi)の酸性中間体を生じさせるエステル(IIa)の鹸化が起こる。
【化32】

【0083】
一つの特定の実施形態において、Rがエチル基の場合、脱離反応a1)は、
− エステル(IIa)を生じさせるために、室温で、硫酸水素カリウムまたはp−トルエンスルホン酸を用いて、テトラヒドロフラン中で、または、
− 酸(IIi)を生じさせるために、室温で、水酸化リチウムを用いて、水中で、または、
− エステル(IIa)を生じさせるために、0℃で、炭酸ナトリウムを用いて、メタノール中で、行われる。
【0084】
必要に応じて、工程a1)で得られる式(IIa)の中間体は、水素化工程a2)で直接用いることができ、または、その代わりに、トルエン、酢酸エチルおよびこれらの混合物等の溶剤を、ヘプタンとともに用いて、再結晶化または析出によって単離および精製することができる。
【0085】
水素化反応[工程a2)]は、式(IIc)の化合物を生じさせるために、大気圧下で、かつ、エタノール、酢酸エチル等の溶剤の存在下で、かつ、好ましくは室温で、触媒として白金またはパラジウムを用いることによって行われる。
【0086】
水素化反応において、直接ドロスピレノン(I)を得ることも、またはドロスピレノン(I)とラクトン化されていない中間体(IIc)との混合物を得ることも可能であり、ここで後者は、酸性媒体中で同時にまたは後処理で、工程a3)に従ってドロスピレノン(I)に変換され得る。工程a3)における酸性条件は、たとえばp−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウム等の有機および無機酸の双方を、通常触媒量で用いることによって整えられ得る。当該反応は室温で起こり得る。
【0087】
また、工程a2)およびa3)は、たとえばテトラヒドロフラン、酢酸エチルまたはエタノール等の溶媒中で、式(IIa)の化合物に、好ましくは触媒的に、有機または無機酸を加え、その後、大気圧下、水素化条件下で、Pt/C(白金炭素)またはPd/C(パラジウム炭素)等の触媒の添加を含む酸処理によって、選択的にワンポットで行われる。
【0088】
シーケンスBは、以下の工程を含み、
b1) 式(II)の化合物を、パラジウム触媒の存在下で、水素化反応に付し、式(IIb)の中間体を生じさせ、
【化33】

そして、
b2) 上記(IIb)の化合物に、白金触媒の存在下で、水素化反応に付し、ドロスピレン(I)を生じさせ、
ここで、工程b1)およびb2)は選択的にワンポットで行われる。
【0089】
シーケンスBによれば、式(II)の化合物は、選択された触媒の種類に依存する触媒水素化プロセスによって、ドロスピレノン(I)を直接生成することができる。
【0090】
したがって、式(II)の化合物が、最初にパラジウム触媒、好ましくはパラジウム炭素の存在下で、その後、白金触媒、好ましくは白金炭素が添加される第二工程で水素化条件にさらされた場合、ドロスピレノン(I)が直接得られる。ここで、双方の工程は大気圧下で行われる。
【0091】
特定の実施形態において、このプロセスは、最初にパラジウム触媒およびその後白金触媒が加えられるワンポット・プロセスの形態で行われ得る。
【0092】
また、パラジウムを用いる水素化における中間体として得られる中間体(IIb)は、最初に、たとえば濾過によって単離され、その後、白金触媒の存在下でドロスピレノン(I)に変換させることができる。ここで、双方の工程において、同じ溶剤または別の異なる溶剤が使用され得る。
【0093】
中間体(IIb)は、必要であれば、たとえばDMF/水を用いて、任意に、単離および精製されることができ、その後、ドロスピレノン(I)を生じさせるために、白金炭素の存在下で触媒水素化に付すことができる。
【0094】
特定の実施形態において、式(II)の化合物の水素化反応が、大気圧下で、パラジウム炭素を用いて、酢酸エチルまたはエタノール等の溶剤中で行われる場合、5位のヒドロキシル基の脱離、およびアルキンの部分的還元が起こり、対応するアルケン誘導体を生じさせ、それが分子内エステル交換プロセスによって、不飽和ラクトン(IIb)を生じさせる。これらの反応条件で、白金触媒の後添加は不飽和ラクトン(IIb)を還元させ、飽和ラクトン(I)またはドロスピレノンとすることを可能にするために要求される。
【0095】
これらの条件下では、酸化および酸性条件双方は、ドロスピレノン(I)を得ながら回避される。
【0096】
シーケンスCは以下の工程を含み、
c1) 式(II)の化合物を、白金触媒の存在下で、水素化反応に付し、式(IId)および/または(IIe)の中間体を生じさせ、
【化34】

(式中、Rは既に定義されたものである)
そして、
c2) 式(IId)および/または(IIe)の化合物を、酸性条件下で、処理して、ドロスピレノン(I)を生じさせ、
ここで、工程c1)およびc2)は選択的にワンポットで行われる。
【0097】
特定の実施形態において、これらの2つの工程[c1)およびc2)]は、触媒を脱離することなく、ワンポット・プロセスで行うことができる。
【0098】
あるいは、シーケンスCは2つの工程で行うことができ、すなわち、水素化が起こった時点で、反応混合物は触媒を回収するために濾過に付し、その後、ドロスピレノン(I)を生じさせるために酸処理される。
【0099】
水素化反応[工程c1)]は、好ましくは、大気圧下で、触媒として白金炭素を用いて、かつ、エタノールまたは酢酸エチル等の溶剤を用いて行われる。この工程c1は好ましくは室温で行われる。
【0100】
水素化反応[工程c1)]の間、式(IIe)の中間体を生じさせるためにプロパルギルエステルの還元が、そして式(IId)のラクトンを得るために後者(式(IIe)の中間体)の部分的エステル変換が観察される。双方の中間体は水素化プロセスの終わりに様々な比率で存在する。
【0101】
双方の中間体の混合物は、ドロスピレノン(I)への変換のために、式(IId)の中間体については、ヒドロキシル基の脱離によって、そして式(IIe)の中間体については、ラクトンを生じさせるために、ヒドロキシル基の脱離および分子内エステル変換によって、酸性条件下で処理に付される[工程c2)]。
【0102】
酸性条件を整えるために、たとえばp−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウム等の有機および無機酸双方が、触媒量または等モル量で使用され得る。たとえばテトラヒドロフラン、酢酸エチル、エタノールまたはジクロロメタン等の溶剤が使用され得る。そして反応は好ましくは室温で起こる。
【0103】
好ましい実施形態において、本発明はドロスピレノン(I)を得るための方法を提供し、この方法は、
a) 式(IVa)の化合物:
【化35】

を保護して、式(IVb)の化合物を生じさせ、
【化36】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)
b) 上記式(IVb)の化合物を式(Va)の化合物:
【化37】

と反応させ、式(IIIb)の化合物を生じさせ、
【化38】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)
c) 上記式(IIIb)の化合物の3位の保護されたヒドロキシル基を脱保護し、式(IIIc)の化合物を生じさせ、
【化39】

d) 上記式(IIIc)の化合物の3位のヒドロキシル基を酸化種の存在下で酸化させ、式(IIf)の化合物を生じさせ、
【化40】

e) 式(IIf)の化合物を脱離反応に付し、式(IIg)の中間体を生じさせ、
【化41】

f) 式(IIg)の化合物を白金触媒の存在下で水素化反応に付し、式(IIh)の中間体を生じさせ、
【化42】

そして、
g) 式(IIh)の化合物を酸の存在下で処理し、ドロスピレノン(I)を生成する。
【0104】
本発明によれば、特定の実施形態において、工程a)の保護反応は、塩基および有機溶剤の存在下で、TBDMSトリフラートまたはハライドを用いて行われる。好ましい実施形態において、当該塩基は有機塩基、好ましくはアミンであり、当該溶剤はエーテル、ハロゲン化溶剤またはDMF等の適切な有機溶剤である。より特定の実施形態において、当該反応は、塩基としてトリエチルアミンおよび溶剤としてDMFを用い、塩化TBDMSの存在下で起こる。
【0105】
工程b)のための反応条件は、本発明の方法[つまり、式(IV)の化合物を式(V)のプロパルギルエステルと反応させることによって、式(III)の化合物を得る方法]に関して上述した反応条件と同一である。特定の実施形態において、当該反応は、塩基としてのリチウムアミドまたはHMDSLi、および芳香族溶剤、好ましくはトルエンの存在下で行われる。
【0106】
工程c)は、フッ化ピリジニウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムまたはフッ化テトラブチルアンモニウム等のフッ化物塩を用いて行われ得る。特定の実施形態において、当該反応は、たとえばエーテル、好ましくはテトラヒドロフラン等の溶剤中で、フッ化テトラブチルアンモニウムを用いて行われる。
【0107】
ヒドロキシル基の酸化[工程d)]は、好ましくは、TEMPO、次亜塩素酸カルシウム、トリクロロイソシアヌル酸またはこれらの混合物等の酸化剤の存在下で行われる。特定の実施形態において、当該反応は、TEMPOの存在下で、トリクロロイソシアヌル酸、並びにジクロロメタン/テトラヒドロフランおよび水/炭酸水素ナトリウムの混合物により形成される二相系を用いて行われる。
【0108】
脱水工程[工程e)]は、たとえばp−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウム等の酸性媒体中で、たとえばテトラヒドロフラン、酢酸エチル、エタノールまたはジクロロメタン等の有機溶剤の存在下で、好ましく起こる。特定の実施形態において、当該反応はテトラヒドロフランを含む媒体中で、p−トルエンスルホン酸を用いて行われる。
【0109】
特定の実施形態において、水素化反応[工程f)]は、酢酸エチルの存在下で、水素雰囲気下で、好ましくは超過気圧、たとえば0.1bar(10Pa)の超過気圧で、触媒として白金炭素を用いて行われる。
【0110】
最後に、ドロスピレノン(I)を生じさせるための式(IIh)の化合物の処理[工程g)]は、特定の実施形態において、たとえばテトラヒドロフラン、酢酸エチル、エタノールまたはジクロロメタン等の有機溶剤の存在下で、p−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウムを用いて行われ得る。より特定の実施形態において、当該反応は酢酸エチルを含む媒体中で、p−トルエンスルホン酸を用いて行われる。
【0111】
別の好ましい実施形態において、本発明はドロスピレノン(I)を得る方法を提供し、この方法は、
a) 式(IVa)の化合物:
【化43】

を保護し、式(IVb)の化合物を生じさせ、
【化44】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)
b) 式(IVb)の化合物を式(Va)の化合物:
【化45】

と反応させ、式(IIIb)の化合物を生じさせ、
【化46】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)
c) 上記式(IIIb)の化合物の3位の保護されたヒドロキシル基を脱保護し、式(IIIc)の化合物を生じさせ、
【化47】

d) 上記式(IIIc)の化合物の3位のヒドロキシル基を酸化種の存在下で酸化し、式(IIf)の化合物を生じさせ、
【化48】

e) 式(IIf)の化合物を脱離および鹸化反応に付し、式(IIi)の中間体を生じさせ、
【化49】

f) 式(IIi)の化合物を、白金またはパラジウム触媒の存在下で水素化反応に付し、式(IIj)の中間体を生じさせ、
【化50】

そして、
g) 式(IIj)の化合物を酸の存在下で処理し、ドロスピレノン(I)を生成させる。
【0112】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式(IVb)の化合物を生じさせるための式(IVa)の化合物の保護反応[工程a)]は、特定の実施形態において、塩基および有機溶剤の存在下で、TBDMSトリフラートまたはハライドを用いて行われる。好ましい実施形態において、当該塩基は有機塩基、好ましくはアミンであり、当該溶剤はエーテル、ハロゲン化溶剤またはDMF等の適切な有機溶剤である。特定の実施形態において、当該反応は塩基としてトリエチルアミンおよび溶剤としてDMFを用い、塩化TBDMSの存在下で起こる。
【0113】
工程b)において、式(IIIb)の化合物を生じさせるための式(IVb)の化合物と式(Va)の化合物との反応条件は、式(III)の化合物を得るための本発明の方法[つまり、式(IV)の化合物を式(V)のプロパルギルエステルと反応させることによって、式(III)の化合物を得る方法]に関して上述した反応条件と同一である。特定の実施形態において、当該反応は、HMDSLiおよび芳香族溶剤、好ましくはトルエンの存在下で行われる。
【0114】
式(IIIc)の化合物を生じさせるための、式(IIIb)の化合物の3位のヒドロキシル基の脱保護[工程c)]は、フッ化ピリジニウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムまたはフッ化テトラブチルアンモニウム等のフッ化物塩を用いて行われ得る。特定の実施形態において、当該反応は、エーテル溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン中で、フッ化テトラブチルアンモニウムを用いて行われる。
【0115】
式(IIf)の化合物を生じさせるための、式(IIIc)の化合物の3位のヒドロキシル基の酸化[工程d)]は、好ましくは、たとえばTEMPO、次亜塩素酸カルシウム、トリクロロイソシアヌル酸またはこれらの混合物等の酸化剤の存在下で行われる。特定の実施形態において、当該反応は、TEMPOの存在下で、トリクロロイソシアヌル酸、並びにジクロロメタン/テトラヒドロフランおよび水/炭酸水素ナトリウムの混合物により形成される二相系を用いて行われる。
【0116】
式(IIi)の中間体を生じさせるための、式(IIf)の化合物の脱水工程[工程e)]は、たとえば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム(たとえば、水酸化リチウム一水和物)等の塩基性媒体中で、たとえばテトラヒドロフラン、メチル−テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール、トルエンまたは水等の溶媒の存在下で起こる。特定の実施形態において、当該反応は、水を含む媒体中で、水酸化リチウム一水和物を用いて行われる。
【0117】
式(IIj)の中間体を生じさせるための、式(IIi)の化合物の水素化反応[工程f)]は、特定の実施形態において、酢酸エチルの存在下で、水素雰囲気下で、好ましくは超過気圧、たとえば0.1bar(10Pa)の超過気圧で、触媒としてパラジウム炭素または白金炭素、好ましくは白金炭素を用いて行われる。
【0118】
最後に、ドロスピレノン(I)を生じさせるための、式(IIj)の化合物の処理[工程g)]は、特定の実施形態において、たとえばテトラヒドロフラン、酢酸エチル、エタノールまたはジクロロメタン等の有機溶剤の存在下で、p−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウムを用いて行われ得る。より特定の実施形態において、当該反応は、酢酸エチルを含む媒体中で、p−トルエンスルホン酸を用いて行われる。
【0119】
別の側面において、本発明はドロスピレノン(I)を得る方法に関し、この方法は、
先に定義した式(III)の化合物を用意し、
続いて、
d1) 上記式(III)の化合物を金属触媒の存在下で水素化反応に付し、式(VI)の中間体を生じさせ、
【化51】

(式中、Rは、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルである)
d2) Rが保護基の場合、上記式(VI)の化合物の3位のヒドロキシル基を脱保護し、その後、エステル交換反応によって式(VII)の化合物を生じさせ、
【化52】

d3) 式(VII)の化合物を酸化し、式(IId)の化合物を生じさせ、
【化53】

そして、
d4) 式(IId)の化合物を脱離反応に付し、ドロスピレノン(I)を生成する工程を含んでなる。
【0120】
特定の実施形態において、式(III)の化合物において、RはC−Cアルキルである。別の特定の実施形態において、Rは直鎖状または分岐状のC−Cアルキル、好ましくはC−Cアルキル、より好ましくはエチルである。
【0121】
別の特定の実施形態において、式(III)の化合物において、Rは水素である。別の特定の実施形態において、式(III)の化合物において、Rは、たとえばシリル基、特にt−ブチルジメチルシリル基もしくはトリメチルシリル基;エーテルまたはエステル等のヒドロキシル保護基を表す。特定の実施形態において、式(III)の化合物において、Rは、水素およびシリル化ヒドロキシル保護基から選ばれ、好ましくは、水素、トリメチルシリルまたはt−ブチルジメチルシリルである。
【0122】
別の特定の実施形態において、Rは直鎖状または分岐状のC−C8アルキルであり、Rは水素およびシリル化ヒドロキシル保護基から選ばれる。好ましくは、RはC−C3アルキルであり、Rは水素、トリメチルシリルおよびt−ブチルジメチルシリルから選ばれる。
【0123】
本発明の特定の実施形態は、式(III)の化合物であって、
Rがエチルであり、かつ、Rが水素であるか、
Rがエチルであり、かつ、Rがt−ブチルジメチルシリルであるか、または
Rがエチルであり、かつ、Rがトリメチルシリルである、式(III)の化合物の使用を包含する。
【0124】
特定の実施形態において、水素化反応d1)は、パラジウムまたは白金触媒の存在下で行われ、パラジウム炭素または白金炭素触媒が好ましく用いられる。
【0125】
好ましい実施形態において、水素化反応d1)は、エタノールまたは酢酸エチル等の溶剤を用いて、大気圧下で、触媒としてパラジウム炭素を用いて、および、好ましくは室温で、行われる。
【0126】
得られる式(VI)の化合物は、次の工程で直接使用することができ、または、その代わりに、酢酸エチル、トルエンまたはこれらの混合物等の溶剤を、ヘプタンとともに、用いて、産業的観点から実現可能な方法により、たとえば結晶化または析出技術により、単離もしくは精製され得る。特定の実施形態によれば、Rがエチル基で、かつ、RがTBDMS基である式(VI)の中間体は、酢酸エチル/ヘプタン中で、結晶化によって精製される。
【0127】
が水素である式(VI)の化合物は、酸性媒体中での処理により、直接式(VII)の化合物へ変換させることができ、この場合、対応するラクトンを生じさせるために分子内エステル変換反応が生じる。
【0128】
酸性条件を整えるため、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エタノールまたはジクロロメタン等の溶剤を用いて、たとえばp−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウム等の有機および無機酸双方を、触媒量または等モル量で使用することができ、この場合、当該反応は室温で好ましく起こる。
【0129】
d2)で得られた式(VII)の化合物は、たとえばDMF/水混合物を用いて、晶析または析出技術によって、単離または精製され得る。
【0130】
が保護基、たとえばシリル誘導体の場合、酸性媒体またはフッ化物塩を用いることによる工程d2)におけるその先行脱離は、さらに、式(VII)の化合物を生じさせるためにラクトンの同時形成を引き起こす。
【0131】
特定の実施形態において、Rがシリル保護基である場合、脱保護工程d2)はフッ化物塩、エタノール中の塩酸等の無機酸、テトラヒドロフラン中のギ酸またはp−トルエンスルホン酸等の有機酸を用いて行われる。
【0132】
特に、保護基Rがトリメチルシリル(TMS)またはt−ブチルジメチルシリル(TBDMS)である場合、フッ化ピリジニウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム等のフッ化物塩がその(当該保護基の)脱離のために使用され得る。
【0133】
式(IId)の化合物を提供する酸化反応d3)は、たとえばUS4416985号、US6121465号、EP1571153号、EP1828222号に記載される方法に従い、TEMPO、次亜塩素酸カルシウムまたはトリクロロイソシアヌル酸等の試薬を用いる、ヒドロキシル基をカルボニル基に変化させることを許す任意の酸化反応によって、順に行われ得る。
【0134】
特定の実施形態において、式(VII)の化合物の、その対応する式(IId)のケトンへの変換は、室温で、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシド(TEMPO)の存在下で、ジクロロメタン/テトラヒドロフランおよび水/炭酸水素ナトリウムまたはカリウムの混合物により形成される二相系で、トリクロロイソシアヌル酸の使用を通じて行われる。
【0135】
得られる式(IId)の化合物は、直接用いることができ、または、従来の且つ工業的に許容される方法によって、たとえば晶析プロセス等によって、精製することができる。上記晶析のために適切な溶剤の具体的かつ非制限的な例として、ジクロロメタン、ヘプタン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテルまたはこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、上記溶剤は、ジクロロメタン、トルエンおよびこれらの混合物から、ヘプタンとともに、選ばれる。特定の実施形態において、式(IId)の化合物は、DCMまたはDCM/ヘプタン中で晶析され得る。
【0136】
式(IId)の化合物をドロスピレノンへ変換させるための工程d4)は、US6933395号およびEP1746101号に記載される条件を用いることにより行うことができる。
【0137】
本発明の別の側面は、ドロスピレノン(I)の合成における以下の中間化合物またはその溶媒和物に関する:
【化54】

(式中、R、RおよびRは既に定義されたものである)。
【0138】
特定の実施形態において、当該中間化合物は以下から選ばれる化合物またはその溶媒和物である:
【化55】

【0139】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明を限定するものとして考慮されるべきではない。
【実施例】
【0140】
実施例1
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVb)の合成
【化56】

67.5ml(0.48モル)のトリエチルアミンおよび68.5g(0.45モル)のt−ブチルジメチルシリルクロライドを、室温で、撹拌しながら、100g(0.30モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β−ジヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVa)および500mlのジメチルホルムアミドにより形成された混合物に加え、得られた混合物を45分間撹拌しながら維持した。その後、当該反応混合物に2000mlの水を加え、30分間撹拌しながら維持し、得られた懸濁液をろ過し、別の1000mlの水で洗浄した。ろ過後の固体を乾燥させ、132.9gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVb)を得た(収率98.8%)。当該生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0141】
H−NMR(400MHz,75℃,DMSO−d,δ):0.05(3H,s,CH−Si),0.07(3H,s,CH−Si),0.40−1.70(18H,m),0.79(3H,s),0.84(3H,s),0.90(9H,s,CH−C_Si),2.00−2.20(2H,m),3.75(1H,broad s),4.05(1H,broad s)
【0142】
13C−NMR(100MHz,40℃,DMSO−d,δ):−5.2(CH−Si),−5.0(CH−Si),10.2,13.1,17.1,17.6,18.6,19.8,21.3,22.1,25.3,25.6(3×CH−C−Si),25.8,28.1,33.1,34.9,42.2,44.1,51.6,68.5,72.2,214.0(C=O)
【0143】
実施例2
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−トリメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVc)の合成
【化57】

6.8ml(0.048モル)のトリエチルアミンおよび5.7g(0.045モル)のトリメチルクロロシランを、室温で、撹拌しながら、10g(0.03モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β−ジヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVa)および50mlのジメチルホルムアミドにより形成された混合物に加え、得られた混合物を45分間撹拌しながら維持した。その後、当該反応混合物に200mlの水を加え、30分間撹拌しながら維持し、得られた懸濁液をろ過し、別の100mlの水で洗浄した。ろ過後の固体を乾燥させ、12gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−トリメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVc)を得た(収率98.5%)。当該生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0144】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.10(9H,s,CH−Si),0.40−1.00(3H,m),0.78(3H,s(CH),0.823H,s(CH),1.00−1.80(15H,m),1.90−2.20(3H,m),3.85(1H,broad s),3.97(1H,broad s)
【0145】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d,δ):0.1(3×CH−Si),13.3,17.1,18.3,19.7,21.5,22.2,25.3,33.2,35.0,42.1,44.9,51.8,68.2,71.9,215.0(C=O)
【0146】
実施例3
プロピオール酸エチルの添加。6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIb)の合成
【化58】

【0147】
a)直接付加による
37.4g(1.63モル)のリチウムアミドを、室温で、かつ、不活性雰囲気中で、50g(0.11モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVb)および1000mlのトルエンにより形成された撹拌溶液に加え、そして別途15分後、13.7ml(0.13モル)のプロピオール酸エチルを加え、その反応混合物を別途4時間撹拌しながら維持した。その後、30mlの水を加え、最終容量が250mlになるまで、減圧下で溶剤を蒸留した。その後、750mlの酢酸エチルおよび1000mlの水を加え、得られた混合物を30分間撹拌しながら維持した。得られた2相を分離し、水相を250mlの酢酸エチルで再度抽出した。得られた有機相をプールし、引き続き1000mlおよび500mlの水で洗浄した。一部の溶剤を最終容量が150mlになるまで減圧下で除去し、500mlのヘプタンを加え、当該一部の溶剤を最終容量が150mlになるまで減圧下で再度除去した。得られた懸濁液を5℃で冷却し、ろ過し、冷ヘプタンで洗浄した。得られた固体を乾燥させ、51.7gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17β−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIb)を、トルエン半溶媒和物の形で、得た(収率78.1%)。
【0148】
酢酸エチル中で先に得られた半溶媒和物を溶解させ、溶媒を蒸発させて乾燥させることにより、脱溶媒和された生成物を得ることができた。したがって、無溶媒の形を提供するために、得られた固体はオーブンで乾燥させられる。得られた生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0149】
トルエン半溶媒和物:H−NMR(400MHz,40℃,DMSO−d,δ):0.02(3H,s,CH−Si),0.04(3H,s,CH−Si),0.20−0.30(1H,m),0.35−0.45(1H,m),0.50−0.80(3H,m),0.74(6H,s,CH 18+CH 19),0.84(9H,s,3×CH−C−Si),0.95−1.15(6H,m),1.20(3H,t,J=8.0 Hz,CH Et),1.25−1.70(8H,m),1.75−1.85(1H,m),2.00−2.10(1H,m),3.87(IH,s,OH),4.01(1H,m,H3),4.15(2H,q,J=8.0 Hz,CH Et),5.95(1H,s,OH)
【0150】
脱溶媒和された生成物:H−NMR(400MHz,40℃,DMSO−d,δ):0.02(3H,s,CH−Si),0.04(3H,s,CH−Si),0.20−0.30(1H,m),0.35−0.45(1H,m),0.50−0.80(3H,m),0.74(6H,s,CH 18+CH 19),0.84(9H,s,3×CH−C−Si),0.95−1.15(6H,m),1.20(3H,t,J=8.0 Hz,CH Et),1.25−1.70(8H,m),1.75−1.85(1H,m),2.00−2.10(1H,m),3.87(IH,s,OH),4.01(1H,m,H3),4.15(2H,q,J=8.0 Hz,CH Et),5.95(1H,s,OH)
【0151】
13C−NMR(100MHz,40℃,DMSO−d,δ):−5.2(CH−Si),−4.9(CH−Si),8.8,10.8,11.2,13.9,14.2,16.6,17.6,18.7,19.7,22.1,22.6,25.6(3×CH−C−Si),26.4,28.2,29.0,33.6,34.1,38.5,42.5,44.3,53.3,61.8,68.6,72.1,76.8,78.3(C≡),91.4(C≡),153.1(C=O)
【0152】
b)逆付加による
0.5g(0.001モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVb)を、室温で、かつ、不活性雰囲気下で、0.37g(0.016モル)のリチウムアミドおよび10mlのトルエン中0.14ml(0.0013モル)のプロピオール酸エチルにより形成された撹拌溶液に加え、4時間同一温度で撹拌しながら維持した。当該反応のプロセシングは、直接添加が用いられた上記実施例において説明されたことに従って行われ、トルエン半溶媒和物の形で、0.5gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17β−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIb)を得た。
【0153】
実施例3a
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIb)の合成
【化59】

10mlのトルエン中1.0g(22mmol)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVb)により形成された溶液を0から5℃の間の温度で冷却し、0.46mlのプロピオール酸エチルを加え、当該反応混合物を撹拌しながら維持した。その後、当該撹拌溶液に4.5mlのHMDSLi(44mmol)(1MTHF溶液)を加えた。反応が終了したら(約30分)、5mlの水および20mlの酢酸エチルを加えた。得られた2相を分離した。溶剤を減圧下で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.77gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17β−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIb)を得た(収率76.9%)。
【0154】
実施例4
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β,17β−トリヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIc)の合成
【化60】

0.1g(0.006モル)のリチウムアミドを、室温で、かつ、不活性雰囲気下で、0.1g(0.003モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β−ジヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVa)および2mlのトルエンにより形成された撹拌溶液に加えた。15分後、0.06ml(0.0013モル)のプロピオール酸エチルを加え、反応混合物を4時間撹拌しながら維持した。反応が終了したら、0.1mlの水を加え、溶剤を減圧下で蒸留した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.05gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β,17β−トリヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIc)を得た(モル収率45%)。生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0155】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.20−0.30(1H,m),0.74(6H,s,CH 18+CH 19),1.21(3H,t,J=8.0Hz,CH3 Et),0.55−1.75(17H,m),1.75−1.85(1H,m),2.00−2.10(1H,m),3.81(1H,broad s,OH),4.16(2H,q,J=8.0Hz,CH Et),4.30(1H,broad s,OH),4.78(1H,broad s,OH),5.93(1H,broad s,OH)
【0156】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d,δ):8.8,10.9,13.9,14.3,16.6,18.1,18.8,22.0,26.4,28.0,34.1,38.5,42.5,43.8,53.0,61.9,66.0,72.5,76.8,78.3(C≡),91.4(C≡),153.1()
【0157】
実施例5
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β,17β−トリヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIc)の合成
【化61】

0.75g(0.03モル)のリチウムアミドを、室温で、かつ、不活性雰囲気下で、1g(0.002モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−トリメチルシリルオキシ−5β−ヒドロキシ−アンドロスタン−17−オン(IVc)および20mlのトルエンにより形成された撹拌溶液に加え、別途15分後、0.27ml(0.003モル)のプロピオール酸エチルを加え、反応混合物を4時間撹拌しながら維持した。反応が終了したら、0.1mlの水を加え、減圧下で溶剤を蒸留した。残渣をテトラヒドロフラン(10ml)中で再溶解させ、フッ化テトラブチルアンモニウムのTHF(0.002モル)中の1M 溶液2mlを加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌しながら維持し、引き続き10mlの水を加え、有機溶剤を減圧下で蒸留により除去し、得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、0.74gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β,17β−トリヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIc)を得た(モル収率70%)。
【0158】
実施例6
(IIIb)の脱保護による、6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β,17β−トリヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIc)の合成
【化62】

70mlのフッ化テトラブチルアンモニウム(0.07モル)(1MTHF溶液)を、トルエン半溶媒和物の形で37.5g(0.064モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIb)および375mlのTHFにより形成された溶液に添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌しながら維持し、引き続き375mlの水を加え、有機溶剤を減圧下で蒸留により除去し、375mlの塩化メチレンを加え、得られた2相を分離した。有機相を375mlの水で洗浄し、ヘプタンの添加により溶剤を交換して蒸留した。得られた懸濁液を室温で撹拌しながら維持し、固体をろ過により単離し、より多くのヘプタンで洗浄した。生成物をオーブンで乾燥させ、27.14gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β,17β−トリヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIc)を得た(収率99.4%)。生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0159】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.20−0.30(1H,m),0.35−0.45(1H,m),0.74(6H,s,CH 18+CH 19),1.21(3H,t,J=8.0 Hz,CH Et),0.55−1.75(17H,m),1.75−1.85(1H,m),2.00−2.10(1H,m),3.81(1H,broad s,H3),4.16(2H,q,J=8.0 Hz,CH Et),4.30(1H,broad s,OH),4.78(1H,broad s,OH),5.93(1H,broad s,OH)
【0160】
実施例7
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)の合成
【化63】

375mlの水中で37.5gの炭酸水素ナトリウムにより形成された溶液を、室温で、かつ、撹拌しながら、25g(0.058モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β,17β−トリヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIc)、425mlの塩化メチレンおよび100mlのTHFにより形成された溶液に添加した。その後、0.55g(0.0035モル)の2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシド(TEMPO)および17.4g(0.075モル)のトリクロロイソシアヌル酸(TCCA)を一部2相混合物に加えた。反応混合物を1時間撹拌しながら維持し、2相を分離し、水相を50mlの塩化メチレンでもう一度抽出し、プールされた有機相を375mlの7%メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液375mlと水375mlとで洗浄した。溶剤を最終容量が75mlになるまで減圧下で蒸留により除去し、125mlのヘプタンを加え、溶剤混合物を最終容量が75mlになるまで再度除去した。得られた懸濁液をろ過し、ヘプタンで洗浄した。21.8gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)を得た(収率86.6%)。また、得られた生成物をトルエンで再結晶化させた。生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0161】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.25−0.35(1H,m),0.40−0.55(1H,m),0.60−0.85(3H,m),0.77(3H,s,CH),0.78(3H,s,CH),0.95−1.20(3H,m),1.21(3H,t,J=8.0 Hz,CH Et),1.30−1.70(8H,m),1.90−2.05(2H,m),2.10−2.25(2H,m),3.01(1H,d,J=8.0 Hz,H4a),4.15(2H,q,J=8.0 Hz,CH Et),4.52(1H,broad s,OH),5.96(1H,broad s,OH)
【0162】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d,δ):8.8(CH),12.0(CH),13.8(CH),15.6(CH),16.5(CH),17.5(CH),18.0(CH),21.6(CH),24.1(CH),26.4(CH),33.9(CH),34.0(CH),36.1(CH),38.2(CH),39.6(CH),42.6(C),45.4(CH),52.5(C),53.8(CH),61.8(CH),75.0(C),76.8(C),78.3(≡C),91.4(≡C),153.1(COO),210.2(C=O,C3)
【0163】
実施例8
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIg)の合成
【化64】

3.9g(0.02モル)のp−トルエンスルホン酸を、室温で、175mlのテトラヒドロフラン中、17.5g(0.041モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)により形成された溶液に加えた。得られた混合物を2時間撹拌しながら維持し、その後2.8ml(0.02モル)のトリエチルアミンで中和した。溶剤を減圧下で蒸留により除去し、175mlのトルエンおよび175mlの水を形成された残渣に加えた。得られた2相を分離し、有機相を最終容量が105mlになるまで蒸留し、その後175mlのヘプタンを加えた。溶剤を最終容量が105mlになるまで蒸留し、生成物をヘプタンの添加により沈殿させた。室温で1時間撹拌しながら維持し、ヘプタンでろ過し、洗浄した。生成物をオーブンで乾燥させ、18.2gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIg)を、トルエン溶媒和物の形で、得た(収率75.4%)。単離された生成物は以下の分光学的特定を有していた。
【0164】
トルエン溶媒和物:H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.30−0.40(1H,m),0.81(3H,s,CH 18),0.75−0.85(2H,m),0.90−1.05(2H,m),1.00(3H,s,CH 19),1.05−1.15(3H,m),1.20(3H,t,J=8.0 Hz,CH Et),1.40−1.70(7H,m),1.70−1.80(1H,m),1.90−1.95(1H,m),2.10−2.25(1H,m),2.27(3H,s,CH Tol),2.40−2.55(1H,m),4.15(2H,q,J=8.0 Hz,CH Et),5.87(1H,s,H4),6.00(1H,broad s,OH),7.10−7.25(5H,H Ar,Tol)
【0165】
13C−NMR(75MHz,DMSO−d,δ):9.5(CH),14.5(CH),16.2(CH),16.9(CH),17.8(CH),18.6(CH),19.1(CH),20.1(CH),21.4(CH),21.7(CH),27.0(CH),34.3(CH),34.7(CH),37.1(CH),37.6(CH),38.7(C),43.0(C),52.0(CH),53.0(CH),62.5(CH),77.5(≡C),78.9(≡C),91.7(C 17),125.6(C4),125.9(CH Ar,Tol),128.8(2× CH Ar,Tol),128.5(2× CH Ar,Tol),138.0(C Ar,Tol),153.7(C5),171.9(COO),197.0(C3)
【0166】
生成物は脱溶媒和物の形で得ることができる。そのためには、溶媒和物は酢酸エチル中で1時間撹拌され、酢酸エチルでろ過および洗浄される。
【0167】
実施例8a
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIg)の合成
【化65】

室温で、60mlのメタノール中、10.0g(0.024モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)により溶液を形成させた。その溶液を0/5℃まで冷却し、4.5g(0.043モル)の炭酸ナトリウムを撹拌しながら当該溶液に加えた。
【0168】
得られた混合物を2時間撹拌しながら維持し、その後1M塩酸溶液でpH7に調整した。その溶液を減圧下で蒸留により除去し、50mlのジクロロメタンを加えた。
【0169】
得られた2相を分離し、その後水相を1M塩酸溶液でpH3に調整し、ジクロロメタンで2回抽出した。
【0170】
有機相を蒸留し、50mlのトルエンを加えた。懸濁液を0℃まで冷却し、撹拌しながら維持し、トルエンでろ過し、洗浄した。
【0171】
生成物(IIg)をトルエン溶媒和物の形で得た(収率54%)。
【0172】
実施例8b
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−カルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIi)の合成
【化66】

室温で、60mlの水中、10.0g(0.024モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)により懸濁液を形成した。2.0g(0.048モル)の水酸化リチウム一水和物を撹拌しながらその懸濁液に加えた。
【0173】
得られた混合物を15時間撹拌しながら維持し、その後1M塩酸溶液でpH1に調整し、60mlの酢酸エチルを加えた。得られた2相を分離した。有機相を分離し、60mlのトルエンを加えた。トルエン相を30mlまで蒸留した。懸濁液を0℃まで冷却させ、撹拌しながら維持し、トルエンでろ過および洗浄した。
【0174】
生成物(IIi)をトルエン溶媒和物の形で得た(収率96%)。
【0175】
H−NMR(400MHz),δ:0.32(1H,q,J=8.0 Hz),0.80(3H,s,H18),0.75−0.85(2H,m),1.00(3H,s,H19),0.90−1.05(2H,m),1.05−1.25(2H,m),1.40−1.70(1H,m),1.70−1.80(1H,m),1.94(1H,dd,J=2.0,8.0 Hz),2.15(1H,d,J=16.0 Hz,H2),2.40−2.60(1H,m,H2),5.87(1H,s,H4),5.92(1H,broad s,OH),13.5(1H,broad s,COOH),トルエンピーク:2.26(3H,m,3H),7.05−7.25(5H,m,H−Ar)
【0176】
13C−NMR(100MHz),δ:8.9(CH2),16.2(CH),17.1(CH3 C19),18.5(CH2),18.6(CH),19.6(CH2),20.7(CH),26.4(CH),33.7(CH2),34.1(CH),36.5(C,C18),37.0(CH2),38.0(CH2,C2),42.3(C,C19),51.3(CH),52.2(CH),78.0(≡C),78.1(≡C),89.8(C,C17),124.9(CH,C4),154.4(C,C5),171.3(C,COOH),196.4(C,C3)
【0177】
MS(m/z):381(M+1,100%)
【0178】
実施例9
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトン(ドロスピレノン(I))の合成
【化67】

0.45gの5%白金炭素(含水量50%)を、9g(0.018モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIg)および180mlの酢酸エチルにより形成された溶液に添加した。本システムは、最初に窒素で、その後水素で清浄され、水素雰囲気下で、0.1barという超過気圧で、75分間撹拌された。触媒をろ過により取り除き、180mlの酢酸エチルで洗浄した。0.9g(0.0036モル)のp−トルエンスルホン酸を6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIh)のろ液に加え、1時間室温で撹拌しながら維持した。0.63ml(0.0036モル)のトリエチルアミンの添加により中和し、その後30mlの水を加え、2相を得て、その後デカントした。溶剤を減圧下で除去し、最終容量が45mlになるまで酢酸イソプロピルで交換した。0/5℃まで冷却し、酢酸イソプロピルでろ過および洗浄した。4.5gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトン(ドロスピレノン)(I)を得た。得られた生成物は99%超の純度を有していた。酢酸イソプロピル中で再結晶化させることにより、得られた生成物の純度を高めることができた。
【0179】
実施例9a
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトン(ドロスピレノン(I))の合成
【化68】

0.5gの5%白金炭素(含水量50%)を、5g(0.01モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−カルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIi)および100mlの酢酸エチルにより形成された溶液に添加した。本システムは、最初に10分窒素で、その後水素で清浄され、水素雰囲気下で、0.15barという超過気圧で、4時間撹拌された。触媒をろ過により取り除き、100mlの酢酸エチルで洗浄した。0.05g(0.0002モル)のp−トルエンスルホン酸を6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−カルボニル)−エチル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIj)のろ液に加え、1時間室温で撹拌しながら維持した。0.05ml(0.0003モル)のトリエチルアミンの添加により中和し、その後15mlの水を加えた;2相を得て、その後デカントした。溶剤を減圧下で除去し、イソプロピルアルコールで交換した。0から5℃の間の温度まで冷却し、イソプロピルアルコールでろ過および洗浄した。3.0gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトン(ドロスピレノン)(I)を得た。
【0180】
実施例10
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4,20−ジエン−21,17−カルボラクトン(20Δ−ドロスピレノン(IIb))の合成
a)6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)からの出発
【化69】

0.1gの5%パラジウム炭素(50%含水量)を、1gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)および20mlの酢酸エチルにより形成された溶液に加えた。本システムは、最初に窒素で、その後水素で清浄され、水素雰囲気下で、0.1barという超過気圧で、1時間撹拌しながら維持された。触媒をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。0.05g(0.0002モル)のp−トルエンスルホン酸を6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ジヒドロキシ−17α−(2−カルボニル)−エチル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIj)のろ液に加え、1時間室温で撹拌しながら維持した。溶剤を蒸発させて、乾燥させ、得られた残渣を3mlのジメチルホルムアミド中で再溶解させ、その後生成物を10mlの水の添加により沈殿させた。得られた懸濁液を水でろ過および洗浄し、0.6gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4,20−ジエン−21,17−カルボラクトン(20β−ドロスピレノン)(IIb)(収率:70%)を得た。単離された生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0181】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.45−0.60(1H,m),0.70−1.00(3H,m),0.91(3H,s,CH),1.01(3H,s,CH),1.00−1.30(6H,m),1.30−1.80(5H,m),2.10−2.20(1H,m),2.30−2.35(1H,m),5.90(1H,s,H4),6.12(1H,d,J=8.0 Hz),7.93(1H,d,J=8.0 Hz)
【0182】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d,δ):9.0,16.4,17.0,18.4,18.5,19.3,20.1,20.6,20.8,33.6,36.6,36.9,41.1,51.2,98.1,118.2,125.0,159.8,171.1,172.2,196.4
【0183】
b)6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIg)からの出発
【化70】

0.1gの5%パラジウム炭素(50%含水量)を、トルエン溶媒和物の形で1gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−17β−ヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスト−4−エン−3−オン(IIg)および20mlの酢酸エチルにより形成された溶液に加えた。本システムは、最初に窒素で、その後水素で清浄され、水素雰囲気下で、0.1barという超過気圧で、1時間撹拌しながら維持された。触媒を酢酸エチルでろ過し、洗浄した。溶剤を蒸発させて、乾燥させ、得られた残渣を3mlのジメチルホルムアミド中で再溶解させ、その後生成物を10mlの水の添加により沈殿させた。得られた懸濁液を水でろ過および洗浄し、0.65gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグン−4,20−ジエン−21,17−カルボラクトン(20Δ−ドロスピレノン)(IIb)(収率:89%)を得た。
【0184】
実施例11
20Δ−ドロスピレノン(IIb)由来ドロスピレノン(I)の合成
【化71】

0.1gの5%白金炭素(50%含水量)を、20mlの酢酸エチル中、1g(0.003モル)の20Δ−ドロスピレノン(IIb)により形成された溶液に加えた。本システムは、最初に窒素で、その後水素で清浄され、水素雰囲気下で、0.1barという超過気圧で、1時間撹拌された。触媒を酢酸エチルでろ過し、洗浄した。溶剤を蒸発させて、乾燥させ、0.9gのドロスピレノン(I)(収率90%)を得た。
【0185】
実施例12
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチル−アンドロスタン(VIb)の合成
【化72】

1.5gの5%パラジウム炭素(50%含水量)を、トルエン半溶媒和物の形で15g(0.026モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン(IIIb)および150mlの酢酸エチルにより形成された溶液に加えた。本システムは、最初に窒素で、その後水素で清浄され、水素雰囲気下で、0.1barという超過気圧で、1時間撹拌された。触媒をろ過し、固体を酢酸エチルで洗浄し、溶剤を残渣に至るまで蒸発させた。12.4gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチル−アンドロスタン(VIb)を得た(収率90%)。単離された生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0186】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.02(3H,s,CH−Si),0.04(3H,s,CH−Si),0.35−0.45(1H,m),0.55−0.65(1H,m),0.74(6H,s,2×CH),0.87(9H,s,CH−C−Si),0.70−0.90(4H,m),1.16(3H,t,J=8.0 Hz,CH Et),1.00−1.80(18H,m),2.05−2.15(1H,m),3.84(1H,broad s,OH),4.02(2H,q,J=8.0 Hz,CH Et),4.28(1H,broad s,OH)
【0187】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d,δ):−5.3(CH−Si),−5.0(CH−Si),7.9,14.1,14.3,15.8,17.6,18.7,19.3,22.0,25.6,27.9,29.1,32.2,34.1,36.4,42.2,44.0,52.6,59.6,68.6,72.3,80.2,173.8
【0188】
実施例13
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β−ジヒドロキシ−17α−プレグナノ−21,17−カルボラクトン(VII)の合成
【化73】

22ml(0.022モル)のフッ化テトラブチルアンモニウム(1MTHF溶液)を、室温で、11g(0.02モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β−t−ブチルジメチルシリルオキシ−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチル−アンドロスタン(VIb)および220mlのTHFにより形成された溶液に添加し、反応混合物を少なくとも1時間撹拌しながら維持した。反応が終了したら、220mlの水を加え、有機溶剤を減圧下で蒸留により除去し、その後220mlの塩化メチレンを加え、形成された2相をデカントにより分離した。有機相を残渣まで蒸留し7.6gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β−ジヒドロキシ−17α−プレグナノ−21,17−カルボラクトン(VII)を生じさせた(収率87.5%)。単離された生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0189】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.25−0.50(2H,m),0.55−0.70(2H,m),0.75(3H,s,CH),0.77(3H,s,CH),0.80−1.50(10H,m),1.50−1.75(4H,m),1.75−1.80(1H,m),1.95−2.05(2H,m),2.25−2.60(4H,m),3.81(1H,broad s),4.33(1H,broad s),4.80(1H,broad s)
【0190】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d,δ):9.9,10.9,14.1,16.5,18.7,19.6,21.7,23.7,27.8,28.9,30.0,33.6,36.6,39.8,41.2,44.0,45.1,51.4,65.9,72.6,95.8,176.4
【0191】
実施例14
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−5β−ヒドロキシ−17α−プレグナノ−21,17−カルボラクトン(IId)の合成
【化74】

100mlの水中、10gの炭酸水素ナトリウムの溶液を、7g(0.016モル)の6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3β,5β−ジヒドロキシ−17α−プレグナノ−21,17−カルボラクトン(VII)、120mlの塩化メチレンおよび28mlのテトラヒドロフランにより形成される溶液に加え、0.15g(0.00096モル)の2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシド(TEMPO)および4.84g(0.021モル)のトリクロロイソシアヌル酸(TCCA)を一部加えながら、2相が室温で混合される程度に十分撹拌しながら維持した。反応混合物を少なくとも別途1時間撹拌しながら維持し、2相をデカントし、引き続き有機相を100mlのメタ重亜硫酸ナトリウムおよび100mlの水からなる7%水溶液で洗浄した。得られた有機相を最終容量が20mlになるまで減圧下で蒸留し、その後70mlのヘプタンを加え、懸濁液を形成し、ろ過し、得られた固体をヘプタンで洗浄し、乾燥させ、5.6gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−5β−ヒドロキシ−17α−プレグナノ−21,17−カルボラクトン(IId)を得た(収率、80%)。単離された生成物は以下の分光学的特性を有していた。
【0192】
H−NMR(400MHz,DMSO−d,δ):0.35−0.45(1H,m),0.45−0.60(1H,m),0.60−0.75(2H,m),0.78(3H,s,CH),0.81(3H,s,CH),1.00−1.20(3H,m),1.25−1.75(8H,m),1.90−2.10(3H,m),2.10−2.20(2H,m),2.30−2.50(3H,m),2.50−2.60(1H,m),2.97(1H,d,J=8.0 Hz),4.50(1H,broad s,OH)
【0193】
13C−NMR(100MHz,DMSO−d,δ):10.2,12.7,15.8,17.0,18.1,20.3,22.0,24.4,24.9,29.5,30.7,34.2,34.4,36.8,37.1,41.9,45.8,51.6,54.4,75.8,96.4,177.0,210.7
【0194】
実施例15
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−5β−ヒドロキシ−17α−プレグナノ−21,17−カルボラクトン(IId)の合成
【化75】

US6933395号のカラム6における実施例に既に記載されている条件を用いて、5位のヒドロキシル基を脱離させることにより、ドロスピレノン(I)を得た。
【0195】
実施例16
6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)由来ドロスピレノン(I)の合成
【化76】

0.2gの5%白金炭素(50%含水量)を、1gの6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17β−ジヒドロキシ−17α−(2−エトキシカルボニル)−エチニル−アンドロスタン−3−オン(IIf)および20mlの酢酸エチルにより形成される溶液に加えた。本システムは、最初に窒素で、その後水素で清浄され、水素雰囲気下で、0.1barという超過気圧で、1時間撹拌しながら維持された。触媒をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。0.1gのp−トルエンスルホン酸を、(IIe)および(IId)それぞれ約50%により形成される混合物からなる得られた溶液に加え、少なくとも30分間撹拌した。0.1mlのトリエチルアミンを加え、溶剤を蒸発、乾燥させて、0.74gのドロスピレノン(I)を得た。収率:86%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)の化合物またはその溶媒和物:
【化1】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルであり、かつ
は、水素またはヒドロキシル保護基である)。
【請求項2】
以下の化合物群から選ばれる、請求項1に記載の化合物:
− Rが水素、またはトリメチルシリルおよびt−ブチルジメチルシリルから選ばれるシリル化ヒドロキシル保護基である、式(III)の化合物、
− Rが直鎖状または分岐状のC−Cアルキルである、式(III)の化合物、および
− Rが直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであり、かつ、Rが水素、またはトリメチルシリルおよびt−ブチルジメチルシリルから選ばれるシリル化ヒドロキシル保護基である、式(III)の化合物。
【請求項3】
下記から選ばれる化合物またはその溶媒和物である、請求項1または2に記載の化合物:
【化2】

【請求項4】
下記式(III)の化合物またはその溶媒和物を得る方法であって:
【化3】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、またはベンジルであり、かつ
は、水素またはヒドロキシル保護基である)、
該方法が、式(IV)の化合物:
【化4】

(式中、Rは既に定義したものである)を、式(V)のプロパルギルエステル:
【化5】

(式中、Rは既に定義したものである)と、塩基の存在下で反応させる工程を含んでなるものである、方法
【請求項5】
塩基が、リチウムジメチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、ヘキサメチルジシラジンリチウム、リチウムアミド、ナトリウムアミド、水素化リチウム、水素化ナトリウムおよびこれらの混合物から選ばれるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(IV)の化合物と式(V)の化合物との反応が、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタンおよびトルエンから選ばれる有機溶剤の存在下で行われる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ドロスピレノン(I)を得る方法であって:
【化6】

該方法が、
−式(III)の化合物:
【化7】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールおよびベンジルから選ばれ、
は、水素およびヒドロキシル保護基から選ばれる)
またはその溶媒和物を用意し、そして
−上記式(III)の化合物を、
1)任意に、Rがヒドロキシル保護基である場合、3位のヒドロキシル基を脱保護し、および
2)3位のヒドロキシル基を酸化し、式(II)の化合物とし:
【化8】

(式中、Rは既に定義されたものである)、
そして、
−上記式(II)の化合物を、下記シーケンスA、B、およびCから選ばれる一連の反応に付すことを含んでなり、ここで、
シーケンスAは以下の工程を含み:
a1) 式(II)の化合物を、脱離または脱離/鹸化反応に付し、式(IIa)の化合物を生じさせ、
【化9】

(式中、Rは水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルである)、
a2) 上記式(IIa)の化合物を、白金またはパラジウム触媒の存在下で、水素化反応に付し、式(IIc)の中間体を生じさせ、
【化10】

(式中、Rは既に定義されたものである)、そして
a3) 上記式(IIc)の化合物を、酸性条件下で処理し、ドロスピレノン(I)を生じさせ、
ここで、工程a2)およびa3)は、選択的にワンポットで行われるものであり、
シーケンスBは以下の工程を含み:
b1) 式(II)の化合物を、パラジウム触媒の存在下で、水素化反応に付し、式(IIb)の中間体を生じさせ、
【化11】

そして、
b2) 上記(IIb)の化合物を、白金触媒の存在下で、水素化反応に付し、ドロスピレン(I)を生じさせ、
ここで、工程b1)およびb2)は選択的にワンポットで行われるものであり、
並びに、
シーケンスCは以下の工程を含み:
c1) 式(II)の化合物を、白金触媒の存在下で水素化反応に付し、式(IId)および/または(IIe)の中間体を生じさせ、
【化12】

(式中、Rは既に定義されたものである)、
そして
c2) 式(IId)および/または(IIe)の化合物を、酸性条件下で処理し、ドロスピレノン(I)を生じさせ、
ここで、工程c1)およびc2)は選択的にワンポットで行われるものである、方法。
【請求項8】
a) 式(IVa)の化合物:
【化13】

を保護して、式(IVb)とし、
【化14】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)、
b) 上記式(IVb)の化合物を、式(Va)の化合物:
【化15】

と反応させ、式(IIIb)の化合物を生じさせ、
【化16】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)
c) 上記式(IIIb)の化合物の3位の保護されたヒドロキシル基を脱保護し、式(IIIc)の化合物を生じさせ、
【化17】

d) 上記式(IIIc)の化合物の3位のヒドロキシル基を酸化種の存在下で酸化させ、式(IIf)の化合物を生じさせ、
【化18】

e) 式(IIf)の化合物を脱離反応に付し、式(IIg)の中間体を生じさせ、
【化19】

f) 式(IIg)の化合物を白金触媒の存在下で水素化反応に付し、式(IIh)の中間体を生じさせ、
【化20】

そして、
g) 式(IIh)の化合物を酸の存在下で処理して、ドロスピレノン(I)を生じさせる工程
を含んでなる、請求項7に記載のドロスピレノン(I)を得る方法。
【請求項9】
a) 式(IVa)の化合物:
【化21】

を保護して、式(IVb)の化合物を生じさせ、
【化22】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)
b) 式(IVb)の化合物を式(Va)の化合物:
【化23】

と反応させ、式(IIIb)の化合物を生じさせ、
【化24】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリルである)
c) 上記式(IIIb)の化合物の3位の保護ヒドロキシル基を脱保護し、式(IIIc)の化合物を生じさせ、
【化25】

d) 上記式(IIIc)の化合物の3位のヒドロキシル基を酸化種の存在下で酸化し、式(IIf)の化合物を生じさせ、
【化26】

e) 式(IIf)の化合物を脱離および鹸化反応に付し、式(IIi)の中間体を生じさせ、
【化27】

f) 式(IIi)の化合物を白金またはパラジウム触媒の存在下で水素化反応に付し、式(IIj)の中間体を生じさせ、
【化28】

そして、
g) 式(IIj)の化合物を酸の存在下で処理して、ドロスピレノン(I)を生じさせる工程
を含んでなる、請求項7に記載のドロスピレノン(I)を得る方法:
【請求項10】
下記ドロスピレノン(I)を得る方法であって:
【化29】

該方法が、式(III)の化合物またはその溶媒和物を用意し、
【化30】

(式中、
RはC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルであり、かつ
は水素またはヒドロキシル保護基である)
続いて、
d1) 上記式(III)の化合物を金属触媒の存在下で水素化反応に付し、式(VI)の中間体を生じさせ、
【化31】

(式中、Rは、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルである)
d2) Rが保護基の場合、上記式(VI)の化合物の3位のヒドロキシル基を脱保護し、その後、エステル交換反応によって式(VII)の化合物を生じさせ、
【化32】

d3) 式(VII)の化合物を酸化させ、式(IId)の化合物を生じさせ、
【化33】

そして、
d4) 式(IId)の化合物を脱離反応に付して、ドロスピレノン(I)を生じさせる工程を含んでなる、方法。
【請求項11】
ヒドロキシル基脱保護工程が、フッ化物塩の存在下で行われる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
酸化工程が、酸化種の存在下で行われる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
離脱反応が、p−トルエンスルホン酸、硫酸水素カリウムまたは炭酸ナトリウムの存在下で行われ、かつ、離脱反応および鹸化反応が水酸化リチウムの存在下で行われる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
酸性条件下での処理工程が、p−トルエンスルホン酸または硫酸水素カリウムを用いて行われる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
パラジウム触媒がパラジウム炭素であり、かつ、白金触媒が白金炭素である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
下記式からなる群から選ばれる化合物またはその溶媒和物:
【化34】

(式中、
Rは、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルであり、
は、水素またはヒドロキシル保護基であり、そして
は、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリールまたはベンジルである)。
【請求項17】
下記式からなる群から選ばれる化合物:
【化35】

またはその溶媒和物である、請求項16に記載の化合物。

【公表番号】特表2012−530104(P2012−530104A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515457(P2012−515457)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058358
【国際公開番号】WO2010/146042
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511305427)
【氏名又は名称原語表記】CRYSTAL PHARMA,S.A.U.
【Fターム(参考)】