説明

2´−シアノ−2´−デオキシ−N4−パルミトイル−1−ベータ−D−アラビノフラノシルシトシンの合成に有用な中間体の調製

本発明は式682−4の化合物の調製方法に関し、前記方法は以下のステップを含む:(i)式682−1の化合物を式682−2´の化合物へと変換すること;(ii)前記式682−2´の化合物を式682−3の化合物へと変換すること;及び(iii)前記式682−3の化合物を式682−4の化合物へと変換すること。本発明のさらなる態様は、癌の治療及び/又は予防において治療上有用なピリミジンヌクレオシドである2´−シアノ−2´−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの調製における上の方法の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療及び/又は予防において治療上有用なピリミジンヌクレオシドである、2´−シアノ−2´−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの合成に有用な中間体の調製に関する。特に本発明は、2´−シアノ−2´−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの調製方法の改善を提供する。
【背景技術】
【0002】
増殖性疾患の治療におけるピリミジンヌクレオシドの治療的使用は、当技術分野において多く記録されている。例を挙げれば、市販のピリミジン系抗腫瘍剤には、5−フルオロウラシル(Duschinsky, R., et al., J. Am. Chem. Soc., 79, 4559 (1957))、テガフール(Hiller, SA., et al., Dokl. Akad. Nauk USSR, 176, 332 (1967))、UFT(Fujii, S., et al., Gann, 69, 763 (1978))、カルモフール(Hoshi, A., et al., Gann, 67, 725 (1976))、ドキシフルリジン(Cook, A. F., et al., J. Med. Chem., 22, 1330 (1979))、シタラビン(Evance, J. S., et al., Proc. Soc. Exp. Bio. Med., 106. 350 (1961))、アンシタビン(Hoshi, A., et al., Gann, 63, 353, (1972))及びエノシタビン(Aoshima, M., et al., Cancer Res., 36, 2726 (1976))が含まれる。
【0003】
欧州公開特許公報第536936号(Sankyo Company Limited社)は、有用な抗腫瘍活性を示すことが示された、1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの様々な2´−シアノ−2´−デオキシ−誘導体を開示している。欧州公開特許公報第536936号に開示の特定の化合物の1つは、2´−シアノ−2´−デオキシ−N−パルミトイル−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(以下では、「682」又は「CYC682」と呼ぶ)であり、この化合物をここでさらに検討する。
【0004】
CYC682は、1−(2−C−シアノ−2−ジオキシ−β−D−アラビノ−ペントフラノシル)−N−パルミトイルシトシンとしても知られ(Hanaoka, K., et al, Int. J. Cancer, 1999:82:226-236; Donehower R, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2000: abstract 764; Burch, PA, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2001: abstract 364)、ヌクレオシドCNDAC、1−(2−C−シアノ−2−デオキシ−β−D−アラビノ−ペンタフラノシル)−シトシンの経口投与される新規2´−デオキシシチジン抗代謝プロドラッグである。
【0005】
【化1】

【0006】
CYC682は、自発的DNA鎖切断作用を有し、様々な細胞株、異種移植及び転移性癌モデルにおいて強力な抗腫瘍活性をもたらす点で、ゲムシタビン等の他のヌクレオシド代謝物と異なる独特の作用機序を有する。
【0007】
CYC682は、経口での生物学的利用能並びに固形腫瘍での前臨床データでゲムシタビン(主要な市販ヌクレオシド類似体)及び5−FU(広範に用いられている抗代謝薬)より活性が向上していることを鑑み、多くの研究で注目されてきた。CYC682が結腸癌のモデルにおいて強力な抗癌活性を示したことを、最近研究者が報告している。同じモデルにおいてCYC682は、生存率を高める点において、さらには結腸癌転移の肝臓への拡大を予防する点においても、ゲムシタビン又は5−FUのどちらよりも優れていることが見出された(Wu M, et al, Cancer Research, 2003:63:2477-2482)。現在までのところ、様々な癌の患者の第I相データが示唆するのは、CYC682は人間における耐容性が良く、用量制限毒性として骨髄抑制を伴うということである。
【0008】
さらに近年の研究は、CYC682の様々な結晶形態に注目し(例えば、Sankyo Company Limited社出願の国際公開公報第02/064609号参照)、安定性の向上を示してより容易な処理を可能とするCYC682含有処方を最適化してきた(例えば、Cyclacel Limited社出願の国際公開公報第07/072061号参照)。
【0009】
欧州公開特許公報第536936号に記載のCYC682の調製(以下の模式図1参照)は、シチジン[1]をDMF中でパルミチン酸無水物と反応させてN−パルミトイルシチジン[2]を形成し、引き続いて1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(CIPS)で保護して中間体[3]を形成することを伴う。ジクロロメタン中でピリジニウムジクロマート/無水酢酸で[3]を酸化させて中間体ケトン[4]を作製し、しかるのちにそれをエチルアセテート中でシアン化ナトリウム及びリン酸2水素ナトリウム2水和物と反応させてシアノヒドリン[5]を形成する。しかるのちに中間体[5]をN,N−ジメチルアミノピリジン、フェノキシチオカルボニルクロリド及びトリエチルアミンと反応させて中間体[6]を形成し、引き続いてそれをトルエン中でAIBN及びトリブチルスズヒドリドと反応させて中間体[7]を得る。THF中で酢酸及びテトラブチルアンモニウムフルオリドで[7]を脱保護し、所望の産物であるCYC682を得る。
【0010】
【化2】

【0011】
上述の経路をさらに修正したものが、日本国公開特許公報第07053586号(Sankyo Company Limited社)に開示されている。特に日本国公開特許公報第07053586号は、酸化のステップが2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)、NaOCl及びアルカリ金属ハロゲン化物を用いて達成されうることを開示している(下の模式図2の[3a]から[4a]への変換を参照)。さらに、ケトン[4a]からシアノヒドリン中間体[5a]への変換は、[4a]をNaCNの代わりにアセトンシアノヒドリンで処理することにより達成されうる。結果として生じたシアノヒドリン[5a]をしかるのちに2−ナフチルクロロチオホルメートで処理し、中間体[6a]を得ることができる。
【0012】
【化3】

【0013】
しかしながら、これら修正にもかかわらず、上述の経路は比較的低い収量及び/又は高度の可変性と関連付けられており、それゆえ改良された合成法の必要性が強調される。
【0014】
したがって本発明は、CYC682の調製方法の改良を提供することを目的とする。より具体的には本発明は、CYC682の収量の向上をもたらす合成経路及び/又はこの化合物の大量調製に適する合成経路を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州公開特許公報第536936号
【特許文献2】国際公開公報第02/064609号
【特許文献3】国際公開公報第07/072061号
【特許文献4】日本国公開特許公報第07053586号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Duschinsky, R., et al., J. Am. Chem. Soc., 79, 4559 (1957)
【非特許文献2】Hiller, SA., et al., Dokl. Akad. Nauk USSR, 176, 332 (1967)
【非特許文献3】Fujii, S., et al., Gann, 69, 763 (1978)
【非特許文献4】Hoshi, A., et al., Gann, 67, 725 (1976)
【非特許文献5】Cook, A. F., et al., J. Med. Chem., 22, 1330 (1979)
【非特許文献6】Evance, J. S., et al., Proc. Soc. Exp. Bio. Med., 106. 350 (1961)
【非特許文献7】Hoshi, A., et al., Gann, 63, 353, (1972)
【非特許文献8】Aoshima, M., et al., Cancer Res., 36, 2726 (1976)
【非特許文献9】Hanaoka, K., et al, Int. J. Cancer, 1999:82:226-236
【非特許文献10】Donehower R, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2000
【非特許文献11】Burch, PA, et al, Proc Am Soc Clin Oncol, 2001
【非特許文献12】Wu M, et al, Cancer Research, 2003:63:2477-2482
【発明の概要】
【0017】
本発明の第1の態様は、式682−4の化合物の調製方法に関する。
【0018】
【化4】

【0019】
前記方法は以下のステップを含む:
(i)式682−1の化合物を式682−2´の化合物へと変換すること;
(ii)前記式682−2´の化合物を式682−3の化合物へと変換すること;及び
(iii)前記式682−3の化合物を式682−4の化合物へと変換すること。
【0020】
【化5】

【0021】
有益なことに、−NH保護基よりも前にCIPS保護基を組み込むために合成の最初の2つのステップを逆転させることで、より良質の中間体物質682−4がもたらされ、この物質はCYC682の調製において、引き続くシアノヒドリンとの反応のための基質を形成する。
【0022】
本発明の第2の態様は、式682−9又は式682の化合物の調製方法に関する。
【0023】
【化6】

【0024】
前記方法は以下のステップを含む:
(A)上述の通り式682−4の中間体を調製すること;
(B)前記式682−4の化合物を式682−9の化合物へと変換すること;及び
(C)任意で前記式682−9の化合物を式682の化合物へと変換すること。
【0025】
本発明の第3の態様は、式682−5の化合物の調製方法に関し、前記方法は、式682−4の化合物をヘプタン中でアセトンシアノヒドリン及びNEtで処理することを含む。
【0026】
【化7】

【0027】
有益なことに、ヘプタン中のアセトンシアノヒドリン及びNEtの使用により、以前に当技術分野において知られていた反応条件と比較して、中間体682−5の収量の向上及びより容易な精製がもたらされる。
【0028】
本発明の第4の態様は、式682−9又は式682の化合物の調製方法に関する。
【0029】
【化8】

【0030】
前記方法は以下のステップを含む:
(A″)上述の通り式682−5の中間体を調製すること;
(B″)前記式682−5の化合物を式682−9の化合物へと変換すること;及び
(C″)任意で前記式682−9の化合物を式682の化合物へと変換すること。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上述の通り、本発明の第1の態様は式682−4の化合物の調製方法に関し、前記方法は以下のステップを含む:
(i)式682−1の化合物を式682−2´の化合物へと変換すること;
(ii)前記式682−2´の化合物を式682−3の化合物へと変換すること;及び
(iii)前記式682−3の化合物を式682−4の化合物へと変換すること。
【0032】
有益なことに、最初にステップ(i)でCIPS保護基を組み込むことにより固体産物682−2´が得られるのであり、望ましくない副産物及び過剰なCIPS保護基試薬を除去するため、この産物を(例えば、洗浄により)より容易に精製することができる。一度精製されれば、しかるのちにこのように作製された固体682−2´中間体をアシル化して中間体682−3が得られ、引き続いてこの中間体を酸化させることで中間体682−4が得られる。682−2´を固形で精製することが可能となることで、方法の引き続くステップにおける使用のためのより良質の物質がもたらされ、より高い収量と再現性の向上がもたらされる。さらに特筆すべきは、上述の経路によってより上質な中間体682−4がもたらされることであり、かかる中間体はCYC682の合成において引き続くシアノヒドリン反応の基質である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、ステップ(i)は、前記式682−1の化合物をピリジン中で1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(CIPS)で処理することを含む。この反応のさらなる詳細については、Org. Process Dev., ,4., 172 (2000); 米国特許公報第6,531,584号B1(2003); Org. Lett., .8., 55 (2006)に報告されている。
【0034】
本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、ステップ(ii)は、前記式682−2´の化合物をEtOH中で無水酢酸で処理することを含む。或いは、DMFを溶剤として用いてもよい[Angew. Chem.Int.Ed, 43, 3033 (2004)参照]。
【0035】
ステップ(iii)において化合物682−3を682−4へと変換する酸化剤は、当業者によく知られている。例を挙げれば、この変換はDess-Martinペルヨージナン酸化[Helv. Chim. Acta, 85, 224 (2002) 及び J. Org. Chem., 55, 5186 (1990)に記載の方法と類似]、Swern酸化[Org. Process Res. Dev., 4, 172 (2000) 及び J. Med Chem., 48, 5504 (2005)]、ピリジニウムジクロマートでの酸化又は2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)及びNaOClでの酸化により達成されうる。
【0036】
本発明の特に好ましい実施形態の1つにおいて、ステップ(iii)は、前記式682−3の化合物をアルカリ金属ハロゲン化物及びNaOCl存在下で2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)で酸化させることを含む。この反応のさらなる詳細については、日本国公開特許公報第07053586号(Sankyo Company Limited社)に記載されている。
【0037】
本発明のまた別の態様は、式682−9又は式682の化合物の調製方法に関し、前記方法は以下のステップを含む:
(A)上述の通り式682−4の中間体を調製すること;
(B)前記式682−4の化合物を式682−9の化合物へと変換すること;及び
(C)任意で前記式682−9の化合物を式682の化合物へと変換すること。
【0038】
好ましい実施形態の1つにおいて、ステップ(B)は以下のステップを含む:
【0039】
【化9】

【0040】
(B1)前記式682−4の化合物を式682−5の化合物へと変換すること;
(B2)前記式682−5の化合物を式682−6の化合物へと変換すること;
(B3)前記式682−6の化合物を式682−7の化合物へと変換すること;及び
(B4)前記式682−7の化合物を式682−9の化合物へと変換すること。
【0041】
好ましい実施形態の1つにおいて、ステップ(B1)は、前記式682−4の化合物をHO/EtOH中でNaCN/NaHCOで処理することを含む。
【0042】
また別の好ましい実施形態において、ステップ(B1)は、前記式682−4の化合物をエチルアセテート中でNaCN/NaHPO.2HOで処理することを含む。この反応のさらなる詳細については、欧州公開特許公報第536936号(Sankyo Company Limited社)に見出されるであろう。
【0043】
また別の好ましい実施形態において、ステップ(B1)は、前記式682−4の化合物をジクロロメタン中でアセトンシアノヒドリン/KHPOで処理することを含む。この反応のさらなる詳細については、日本国公開特許公報第07053586号(Sankyo Company Limited社)に見出されるであろう。
【0044】
特に好ましい実施形態の1つにおいて、ステップ(B1)は、前記式682−4の化合物をヘプタン中でアセトンシアノヒドリン及びNEtで処理することを含む。この反応のさらなる詳細については、下の本発明の第2の態様に記載されている。
【0045】
さらにまた別の好ましい実施形態において、ステップ(B1)は、前記式682−4の化合物をジクロロメタン中でTMSCN及びAlClで処理することを含む。この反応のさらなる詳細については、Tet, 60, 9197 (2004)に記載されている。
【0046】
好ましくは、ステップ(B2)は、前記式682−5の化合物をNEt及びジメチルアミノピリジンの存在下で2−ナフチルクロロチオホルメートで処理することを含む。この反応のさらなる詳細については、日本国公開特許公報第07053586号(Sankyo Company Limited社)に記載されている。
【0047】
或いは、ステップ(B2)は、前記式682−5の化合物をNEt及びジメチルアミノピリジンの存在下でフェノキシルチオカルボニルクロリドで処理することを含む。この反応のさらなる詳細については、欧州公開特許公報第536936号(Sankyo Company Limited社)に見出されるであろう。
【0048】
好ましくは、ステップ(B3)は、前記式682−6の化合物をトルエン中でトリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)で処理することを含む。この試薬の使用のさらなる詳細については、J Org. Chem., 53, 3641 (1988)及びTett. Lett., 44, 4027 (2003)に見出されるであろう。
【0049】
或いは、ステップ(B3)は、欧州公開特許公報第536936号(Sankyo Company Limited社)に記載のように、前記式682−6の化合物をトルエン中でトリブチルスズヒドリド及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)で処理することを含む。
【0050】
ステップ(B4)における前記式682−7の化合物からのCIPS保護基の除去及び引き続く遊離塩基682−9の遊離は、当業者によく知られた方法を用いて達成されるであろう。好ましくは、ステップ(B4)は、前記式682−7の化合物をHCl/MeOHで処理し、しかるのちにそのようにして作製された中間体を塩基で処理して式682−9の化合物を形成することを含む。この反応のさらなる詳細については、欧州公開特許公報第536936号(Sankyo Company Limited社)に見出されるであろう。
【0051】
好ましくは、ステップ(C)は、前記式682−9の化合物をHO/ジオキサンの混合液中でパルミチン酸無水物で処理することを含む。この変換に適した他の条件は、当業者によく知られている。
【0052】
本発明のさらなる態様は、式682−5の化合物の調製方法に関し、前記方法は式682−4の化合物をヘプタン中でアセトンシアノヒドリン及びNEtで処理することを含む。
【0053】
【化10】

【0054】
有益なことに、ヘプタン中でのアセトンシアノヒドリン及びNEtの使用は、当技術分野で以前に知られていた反応条件と比較して、中間体682−5の収量の向上及びより容易な精製をもたらす。
【0055】
先行技術におけるこの変換の条件は、典型的には2相反応混合液(例えば、水/エチルアセテート)中でのNaCN又はアセトンシアノヒドリン、及びトリエチルアミンの使用を伴い、ケトン出発物質682−4と2つの可能なシアノヒドリン異性体との間の平衡をもたらす。対照的に、ヘプタン中でのシアノヒドリン及びNEtの使用は、2つの可能なシアノヒドリン産物のうちの一方のみの形成に有用である;所望のシアノヒドリン産物はヘプタンに溶けず、溶液から沈殿する一方で、他方の異性体及び出発ケトン682−4は溶液中に残る。この沈殿がLe Chatelierの原理に従い平衡を完成へと推進し、そのことで所望のシアノヒドリンの収量の向上をもたらす。さらに、固体の形成は中間体682−5の作製をより容易にする。
【0056】
好ましい実施形態の1つにおいて、方法はさらに式682−3の化合物から前記式682−4の化合物を調製するステップを含む。
【0057】
【化11】

【0058】
適切な酸化条件は、上で本発明の第1の態様に関して述べた通りである。より好ましくは、方法は式682−3の化合物を2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)及びNaOClと反応させることを含む。
【0059】
好ましい実施形態の1つにおいて、方法はさらに式682−2の化合物から前記式682−3の化合物を調製するステップを含む。
【0060】
【化12】

【0061】
より好ましくは、方法は前記式682−2の化合物をピリジン中で1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(CIPS)と反応させることを含む。この変換に適した条件は、上で本発明の第1の態様に関して述べた通りである。
【0062】
好ましい実施形態の1つにおいて、方法はさらに式682−1の化合物から前記式682−2の化合物を調製するステップを含む。
【0063】
【化13】

【0064】
より好ましくは、方法は前記式682−1の化合物をEtOH中でAcOと反応させることを含む。この変換に適した条件は、上で本発明の第1の態様に関して述べた通りである。
【0065】
好ましい実施形態の1つにおいて、方法はさらに式682−2´の化合物から前記式682−3の化合物を調製するステップを含む。
【0066】
【化14】

【0067】
より好ましくは、方法は前記式682−2´の化合物をEtOH中でAcOと反応させることを含む。
【0068】
好ましい実施形態の1つにおいて、方法はさらに式682−1の化合物から前記式682−2´の化合物を調製するステップを含む。
【0069】
【化15】

【0070】
より好ましくは、方法は式682−1の化合物をピリジン中で1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(CIPS)と反応させることを含む。
【0071】
本発明のさらなる態様は、式682−9又は式682の化合物を調製する方法に関する。
【0072】
【化16】

【0073】
前記方法は以下のステップを含む:
(A″)上述の通り式682−5の中間体を調製すること;
(B″)前記式682−5の化合物を式682−9の化合物へと変換すること;及び
(C″)任意で前記式682−9の化合物を式682の化合物へと変換すること。
【0074】
好ましくは、この実施形態に関して、ステップ(B″)は以下のステップを含む:
【0075】
【化17】

【0076】
(B2″)前記式682−5の化合物を式682−6の化合物へと変換すること;
(B3″)前記式682−6の化合物を式682−7の化合物へと変換すること;及び
(B4″)前記式682−7の化合物を式682−9の化合物へと変換すること。
【0077】
好ましくは、ステップ(B2″)は、前記式682−5の化合物をNEt及びジメチルアミノピリジンの存在下で2−ナフチルクロロチオホルメートで処理することを含む。このステップに適した条件は、上で本発明の第1の態様に関して述べた通りである。
【0078】
好ましくは、ステップ(B3″)は、前記式682−6の化合物をトルエン中でトリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)で処理することを含む。このステップに適した条件は、上で本発明の第1の態様に関して述べた通りである。
【0079】
好ましくは、ステップ(B4″)は、前記式682−7の化合物をHCl/MeOHで処理し、しかるのちにそのようにして作製された中間体を塩基で処理して式682−9の化合物を形成することを含む。これらステップに適した条件は、上に本発明の第1の態様に関して述べた通りである。
【0080】
好ましくは、ステップ(C″)は、前記式682−9の化合物をHO/ジオキサンの混合液中でパルミチン酸無水物で処理することを含む。
【0081】
本発明はさらに、本発明を限定しない実施例及び以下の図への言及により記述される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、先行技術の手順を修正したものである、経路1を介するCYC682の合成を示す。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態の1つに従った、経路1aを介するCYC682の合成を示す。
【実施例1】
【0083】
ステップ1:682−1→682−2´
【0084】
【化18】

【0085】
Org. Process Dev., 4, 172 (2000); 米国特許公報第6531584号B1 (2003); Org.Lett., 8, 55 (2006)。
【0086】
シチジン(8.0g、32.89mmol)をピリジン(2×15ml)で共沸混合することにより予備乾燥し、しかるのちにピリジン(22ml)及びアルゴンでパージされた容器中に懸濁させた。1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(12.0ml、35.40mmol)を室温で20分間にわたり滴下した。32℃までの緩やかな発熱が観察された。白い沈殿物が徐々にフラスコの底に沈殿した。この沈殿物は、よく攪拌することにより拡散し、結果として生じた懸濁液を一晩攪拌した。この混合液を水(200ml)に注ぎ込み、EtOAc(3×200ml)で抽出した。有機相を洗浄し(ブライン)、乾燥し(MgSO)、濾過し蒸発させて白い固体を得た。これをヘプタンと共に粉砕し、濾過してヘプタン(100ml)、続いて軽石油エーテル(2×50ml)で洗浄した。13.46g(84%)が得られた。処理の最後の段階で、ヘプタンを酢酸イソプロピルに置き換えてもよい。
【実施例2】
【0087】
ステップ2:682−2´→682−3
【0088】
【化19】

【0089】
682−2´(10.0g、20.59mmol)をエタノール(200ml)中に懸濁させ、無水酢酸(6.9ml、72.06mmol)を滴下した(発熱なし)。混合液を2時間加熱した(油浴65℃―内部温度50〜53℃)。Tlc(7% MeOH/DCM)によって、産物が微量の出発物質のみを有することが示された。さらに3mlの無水酢酸を付加し(発熱なし)、加熱をさらに1.5時間続けた。Tlcによって出発物質は一切検出されなかった。混合液を室温まで冷却し、EtOHをRV上で蒸発させた。5% NaHCO(100ml)を付加し(CO↑)、混合液を1:1 TBDME/ヘプタン(3×100ml)で抽出した。有機相を洗浄し(ブライン)、乾燥させ(MgSO)、濾過し蒸発させて白い泡(10.43g、96%)を得た。
【実施例3】
【0090】
ステップ3:682−3→682−4
【0091】
【化20】

【0092】
682−3(8.0g、15.15mmol)をDCM(120ml)中に溶解させ、氷浴中で10℃まで冷却した。Dess-Martinペルヨージナン(12.58g、28.78mmol)を少量ずつ付加し、付加漏斗をDCM(20ml)ですすいだ。結果として生じた濁った溶液を冷却しながら10分間、しかるのちに室温で一晩攪拌した。混合液をEtO(450ml)で希釈し、Na.5HO(38.5g)が溶解されたaq NaHCO(200ml)で洗浄した。水相をEtO(200ml)で抽出した。有機相を洗浄し(sat NaHCO、続いてブライン)、乾燥させ(MgSO)、濾過し蒸発させて硬いが砕けやすい白い泡を得た。NMRにより、出発物質の約7.5%が残存していることが示された。粗産物をDCM(150ml)中に再溶解させ、さらに2.5g(5.89mmol)のDess-Martinペルヨージナンで前と同じように処理した。反応混合液を前と同じように(9g Na.5HOを用いて)処理し、所望の産物7.54g(95%)を白い泡として得た。
【実施例4】
【0093】
ステップ4:682−4→682−5
【0094】
【化21】

【0095】
682−4(700mg、1.33mmol)の一部をヘプタン(7ml)中に溶解させ、濁った溶液を得た。アセトンシアノヒドリン(0.25ml、2.66mmol)を絶え間なく付加し、続いてトリエチルアミン(19μl、0.13mmol)を滴下した。混合液を室温で攪拌すると、徐々に濁ってきた。約20分後には、反応混合液は濃いペースト状の懸濁液となった。1時間後のLCMSにより、出発物質が存在しないことが示された。混合液を氷浴で冷却して濾過した。収集した白い固体を冷たいヘプタン(約15ml)で、続いて軽石油エーテル(約5ml)で洗浄した。産物を真空下40℃で乾燥させた。673mg(91%)が得られた。
【実施例5】
【0096】
ステップ5:682−5→682−6
【0097】
【化22】

【0098】
トルエン中の2−ナフチルクロロチオホルメート溶液(2−NTF)(25%溶液、1.82kg/kg 682−5)を、ジクロロメタン(10L/kg 682−5)中の682−5及び4−ジメチルアミノピリジン(0.22kg/kg 682−5)に、5℃以下で付加する。トリエチルアミン(0.22kg/kg 682−5)を0〜10℃で、10℃以下の温度を維持する速さで反応混合液にゆっくりと付加する。混合液を0〜10℃に維持し、HPLCでモニターする。反応を、682−5の含有量が52.0%になるまで継続させる。反応の完了後、1%w/wリン酸2水素ナトリウム水溶液(10kg/kg 682−5)を、10〜25℃の温度を維持する速さで付加する。相が分離し、水相をさらなるジクロロメタン(4.5L/kg 682−5)で抽出する。分相後、有機相を1回分の低パイロジェン水(low pyrogen water)(10L/kg 682−5)で洗浄し、併せてジクロロメタンライン洗浄(dichloromethane line wash)での蒸留のために移す。有機相を減圧下30℃以下で濃縮する。メタノール(3L/kg 682−5)を加え、濃縮を継続させる。さらにメタノールを加え(10L/kg 682−5)、産物を少なくとも1時間、5℃以下で顆粒化させる。産物を2つまでのロードで遠心分離により単離する。それぞれのロードを0〜5℃の冷たいメタノール(1.5L/kg 682−5)で洗浄し、その後真空下45℃までの温度で乾燥させて一定重量とする。
【実施例6】
【0099】
ステップ6:682−6→682−7
【0100】
【化23】

【0101】
ラジカル開始剤Vazo67(2,2´−アゾビス[2−メチルブチロニトリル])(0.05kg/kg 682−6)及びトリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)(0.41kg/kg 682−6)を、トルエン(4.5L/kg 682−6)中の中間体682−6に付加する。反応混合液を70℃まで加熱し、65〜75℃で少なくとも1時間攪拌し、その後モニターする。混合液をHPLCでモニターする。反応を、682−6含有量が×2.0%になるまで継続させる。もし必要であれば、さらなる開始剤及びTTMSSを付加することもできる。反応完了後、混合物をエチルシクロヘキサン(20L/kg 682−6)に65℃〜75℃でゆっくり付加する。反応混合液を少なくとも2.5時間かけて0〜5℃まで冷却し、この温度で維持する。結果として生じた固体を3つまでのロードで遠心分離により単離する。それぞれのロードを0〜5℃の冷たいエチルシクロヘキサン(1L/kg 682−6)で洗浄する。産物を真空下45℃までの温度で乾燥させて一定重量とする。
【実施例7】
【0102】
ステップ7:682−7→682−8
【0103】
【化24】

【0104】
加水分解を達成するために、682−7をメタノール(2.34L/kg 682−7)及び塩酸(36%、0.48L/kg 682−7)に48〜52℃で溶解させる。682−9(5g/kg 682−7)をメタノール(140mL/kg 682−7)中で塩酸(29mL/kg 682−7)で処理することにより682−8シードを調製し、その後反応混合液に補充する。反応混合液を53〜60℃で少なくとも2時間加熱し、HPLCでモニターする。反応を、保持時間約5.25におけるピークが512.0%になるまで継続させる。反応完了時に、混合液を少なくとも100分かけて10〜15℃まで冷却する。エチルアセテート(10L/kg 682−7)を10〜15℃で少なくとも25分かけて付加し、混合液を少なくとも30分かけて0〜5℃まで冷却する。混合液を5℃未満で少なくとも1時間顆粒化させる。産物を2つまでのロードで遠心分離により単離し、それぞれのロードをメタノール(0.38L/kg 682−7)とエチルアセテート(1.11L/kg 682−7)との0〜5℃の冷たい混合液で洗浄する。産物を真空下45℃までの温度で乾燥させて一定重量とする。
【実施例8】
【0105】
ステップ8:682−8→682−9
【0106】
【化25】

【0107】
15〜30℃のメタノール(3.9L/kg 682−8):ジクロロメタン(10L/kg 682−8)混合液中に682−8を懸濁させたものにトリエチルアミン(0.41kg/kg 682−8)を付加することにより、塩酸塩682−8を中性化する。溶解がトリエチルアミンの付加で生じる。反応混合液を15〜30℃で少なくとも10分間攪拌し、水での希釈後に試料のpHを確認する。pH9〜9.5の範囲であることが期待される。中間体682−9は高pHで異性化を起こしうる。酢酸(0.25kg/kg 682−8)を攪拌しながらゆっくり、30℃未満の温度を維持する速さで付加し、pHの範囲を4.0〜4.5に調節して結晶化を誘発する。もし必要であれば、さらなる酢酸を付加してもよい。しかるのちに混合液をジクロロメタン(25L/kg 682−8)で希釈し、0〜5℃まで冷却する。混合液を0〜5℃で少なくとも1時間攪拌し、産物を2つまでのロードで遠心分離により単離する。それぞれのロードを、メタノール(0.63L/kg 682−8)及びジクロロメタン(4.4Ukg 682−8)の冷たい混合液で洗浄する。産物を真空下45℃までの温度で乾燥させて一定重量にする。
【実施例9】
【0108】
ステップ9:682−9→682
【0109】
【化26】

【0110】
682は、欧州公開特許公報第536936号の実施例1〜4に開示の方法に従って得ることができる。中間体682−9はCYC682に変換され、最初はメタノール溶媒和物である形態Kとして単離される。形態Kは、懸濁形態変化反応(a suspension form change reaction)により半水化物である形態Bへと変換される。形態K又は形態Bはさらに、再結晶化により精製されうる。再結晶化により形態Kが得られ、しかるのちにこの形態Kは形態Bへと変換又は再変換される。
【0111】
(i)682:形態K
パルミチン酸無水物(3.53kg/kg 682−9)を1,4−ジオキサン(20L/kg 682−9)及び低パイロジェン水(low pyrogen water)(1.0L/kg 682−9)中の682−9の混合液に付加し、反応混合液を80〜90℃(標的温度80〜85℃)まで加熱する。反応をHPLCによりモニターし、682−9含有量が52.0%になるまで継続させる。反応完了時に、混合液を熱濾過し、フィルターを70〜90℃の1,4−ジオキサン(10L/kg 682−9)で洗浄する。結果として生じた濾液を併せ60℃以下(標的内部温度45〜55℃以下)で元の体積(7.3L/kg 682−9)の30%未満にまで濃縮する。水含有量をKarl Fischer滴定で確認する。もし水含有量が<2%であれば、さらなるジオキサンを付加し、蒸留を繰り返す。もし必要であれば、1,4−ジオキサンを付加し、混合液を元の体積の30%まで希釈する。エチルシクロヘキサン(48.3L/kg 682−9)及び1,4−ジオキサン(3.66L/g 682−9)を付加し、温度を43〜47℃の範囲に調節する。メタノール(3.23L/kg 682−9)を40〜45℃で少なくとも5分間かけて付加する。
【0112】
別の反応器中で、CYC682種結晶(形態B)(10g/kg 682−9)を、エチルシクロヘキサン(1333mL/kg 682−9)、1,4−ジオキサン(177mL/kg 682−9)及びメタノール(89mL/kg 682−9)(15:2:1 v/v/v)の混合液に付加する。結果として生じた混合液を、20〜25℃で少なくとも1時間攪拌し、しかるのちに40〜45℃の粗反応溶液に付加する。形態Kの結晶化が生じたのち、反応混合液を40〜45℃で少なくともさらに30分間攪拌する。反応混合液を20〜23℃まで少なくとも120分間かけて冷却し、20〜23℃の範囲で少なくとも1時間維持する。結果として生じた固体を2つまでのロードで遠心分離により単離し、それぞれのロードをエチルシクロヘキサン(7.5L/kg 682−9)、1,4−ジオキサン(1.0L/kg 682−9)及びメタノール(0.5Ukg 682−9)の0〜5℃の混合液で洗浄する。産物を真空下35〜40℃で乾燥させて一定重量とし、CYC682(形態K)を得る。
【0113】
(ii)682:形態B
CYC682(形態K)を、約1.5〜2%低パイロジェン水(169.3mUkg CYC682)を含有するメチルアセテート(8.9L/kg CYC682)中に懸濁させる。懸濁液を20〜25℃(標的温度22〜24℃)で1.5時間攪拌し、形態変換を引き起こす。産物をNutsche濾過で単離し、メチルアセテート(2.2L/kg CYC682)及び低パイロジェン水(42.3mUkg CYC682)の20〜25℃の混合液で洗浄する。産物を真空下40℃以下で乾燥させて一定重量とし、CYC682(形態B)を得る。
【0114】
CYC682(形態K又はB)の再結晶化
CYC682(形態K又はB)を1,4−ジオキサン(3.33L/kg CYC682)及びエチルシクロヘキサン(25L/kg CYC682)の混合液中に懸濁させ、混合液を43〜47℃の範囲に調節する。メタノール(1.66L/kg CYC682)を40〜50℃で少なくとも5分間かけて付加し、溶解を達成する。CYC682形態Bの溶解を達成するため、さらに過熱して60℃とすることが必要とされてもよい。
【0115】
別の反応器中で、CYC682種結晶(4〜15g/kg CYC682)を、エチルシクロヘキサン、1,4ジオキサン及びメタノール(15:2:1 v/v/v)の混合液に上の(i)節に記載のように付加する。結果として生じた混合液を20〜25℃で少なくとも1時間攪拌し、しかるのちに粗反応溶液に40〜45℃で付加する。形態Kの結晶化が生じたのち、反応混合液を40〜45℃で少なくともさらに30分間攪拌する。反応混合液を20〜23℃にまで少なくとも120分間かけて冷却し、20〜23℃の範囲で少なくとも1時間維持する。結果として生じた固体を2つまでのロードで遠心分離により単離し、それぞれのロードを、エチルシクロヘキサン(3.852L/kg CYC682)、1,4−ジオキサン(0.514L/kg CYC682)及びメタノール(257mL/kg CYC682)の0〜5℃の混合液で洗浄する。産物を真空下35〜40℃で乾燥させて一定重量とし、CYC682(形態K)を得る。
[比較例]
【0116】
比較研究
出願人による研究は、本願請求の方法ステップが以前に当技術分野において用いられていた方法に対し、収量の向上をもたらすことを示してきた。例を挙げれば、下の表1は、経路1(図1参照;先行技術の方法)及び経路1a(図2参照;本発明に沿う)におけるそれぞれのステップの収量を比較している。
【0117】
【表1】

【0118】
表1が示すのは、合成における最初の2つのステップの逆転(経路1a、すなわち、アシル化ステップの前にCIPS保護基を組み込むこと)と、シアン化ステップにおけるアセトンシアノヒドリン/ヘプタンの使用とにより、中間体682−5が高収量でもたらされるということである。比較すれば、CIPS保護基を組み込む前のアシル化の実施(経路1)と、当技術分野に知られた標準的なシアン化条件(例えば、HO/EtOAC中のNaCN、NaHCO)の使用とにより、はるかに低い収量の682−5(38%)がもたらされる。全体として2つの経路を比較すると、経路1では19.9%のCYC682が得られるのに対し、経路1aでは39.8%のCYC682が得られる。
【0119】
本発明に記載の態様の様々な修正やバリエーションは、本発明の範囲と趣旨から逸脱することなく、当業者にとって明らかである。本発明が具体的な好ましい実施形態との関連で記載されているとはいえ、本願請求項記載の発明がかかる具体的実施形態に不当に限定されるべきでないことは理解されるべきである。実際、本発明を実施する記載の方法の、当業者にとって自明である様々な修正が、本願請求項の範囲内であると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式682−4の化合物の調製方法であって、
【化1】


以下のステップを含む方法:
(i)式682−1の化合物を式682−2´の化合物へと変換すること;
(ii)前記式682−2´の化合物を式682−3の化合物へと変換すること;及び
(iii)前記式682−3の化合物を式682−4の化合物へと変換すること。
【化2】

【請求項2】
ステップ(i)が式682−1の化合物をピリジン中で1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(CIPS)で処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(ii)が式682−2´の化合物をEtOH中で無水酢酸で処理することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(iii)が式682−3の化合物を酸化剤で処理することを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
式682−3の化合物を2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)及びNaOClで処理することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式682−9又は式682の化合物の調製方法であって、
【化3】


以下のステップを含む方法:
(A)請求項1〜5のいずれかの記載に従い、式682−4の中間体を調製すること;
(B)前記式682−4の化合物を式682−9の化合物へと変換すること;及び
(C)任意で前記式682−9の化合物を式682の化合物へと変換すること。
【請求項7】
ステップ(B)が以下のステップを含む、請求項6に記載の方法:
【化4】


(B1)式682−4の化合物を式682−5の化合物へと変換すること;
(B2)前記式682−5の化合物を式682−6の化合物へと変換すること;
(B3)前記式682−6の化合物を式682−7の化合物へと変換すること;及び
(B4)前記式682−7の化合物を式682−9の化合物へと変換すること。
【請求項8】
ステップ(B1)が式682−4の化合物をHO/EtOH中でNaCN/NaHCOで処理することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(B1)が式682−4の化合物をヘプタン中でアセトンシアノヒドリン及びNEtで処理することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(B2)が式682−5の化合物をNEt及びジメチルアミノピリジンの存在下で2−ナフチルクロロチオホルメートで処理することを含む、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(B3)が式682−6の化合物をトルエン中でトリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)で処理することを含む、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ステップ(B4)が式682−7の化合物をHCl/MeOHで処理し、しかるのちにそのようにして作製された中間体を塩基で処理して式682−9の化合物を形成することを含む、請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(C)が式682−9の化合物をHO/ジオキサンの混合液中でパルミチン酸無水物で処理することを含む、請求項6〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
式682−4の化合物をヘプタン中でアセトンシアノヒドリン及びNEtで処理することを含む、式682−5の化合物の調製方法。
【化5】

【請求項15】
式682−3の化合物から式682−4の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【化6】

【請求項16】
式682−3の化合物を2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)及びNaOClと反応させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式682−2の化合物から式682−3の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項15又は16に記載の方法。
【化7】

【請求項18】
式682−2の化合物をピリジン中で1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(CIPS)と反応させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式682−1の化合物から式682−2の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
【化8】

【請求項20】
式682−1の化合物をEtOH中でAcOと反応させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式682−2´の化合物から式682−3の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
【化9】

【請求項22】
式682−2´の化合物をEtOH中でAcOと反応させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式682−1の化合物から式682−2´の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項21又は22に記載の方法。
【化10】

【請求項24】
式682−1の化合物をピリジン中で1,3−ジクロロ−1,1,4,4−テトライソプロピルジシロキサン(CIPS)と反応させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式682−9又は式682の化合物の調製方法であって、
【化11】


以下のステップを含む方法:
(A″)請求項14〜24のいずれかの記載に従い、式682−5の中間体を調製すること;
(B″)前記式682−5の化合物を式682−9の化合物へと変換すること;及び
(C″)任意で前記式682−9の化合物を式682の化合物へと変換すること。
【請求項26】
ステップ(B″)が以下のステップを含む、請求項25に記載の方法:
【化12】


(B2″)式682−5の化合物を式682−6の化合物へと変換すること;
(B3″)前記式682−6の化合物を式682−7の化合物へと変換すること;及び
(B4″)前記式682−7の化合物を式682−9の化合物へと変換すること。
【請求項27】
ステップ(B2″)が式682−5の化合物をNEt及びジメチルアミノピリジンの存在下で2−ナフチルクロロチオホルメートで処理することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(B3″)が式682−6の化合物をトルエン中でトリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)で処理することを含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(B4″)が式682−7の化合物をHCl/MeOHで処理し、しかるのちにそのようにして作製された中間体を塩基で処理して式682−9の化合物を形成することを含む、請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
ステップ(C″)が式682−9の化合物をHO/ジオキサンの混合液中でパルミチン酸無水物で処理することを含む、請求項25〜29のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−519907(P2011−519907A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507983(P2011−507983)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001134
【国際公開番号】WO2009/136158
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(506138030)サイクラセル リミテッド (21)
【Fターム(参考)】