説明

2−イミノ−4−チアゾリジノン誘導体及び2,4−チアゾリジンジオン誘導体の製法

【課題】5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオン(一般名:ネトグリタゾン)を、工程数が少なく、かつ高収率で得ることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒドとを縮合反応させて、新規化合物の5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを得、この新規化合物を還元して、5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノンとし、これを加水分解することにより、5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下式で示される5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオン(一般名称:ネトグリタゾン)の製造法、及びその新規中間体に関する。
【化11】

【背景技術】
【0002】
前記化合物(V)は、優れたインスリン抵抗性改善作用を有しており、糖尿病治療薬として有用な物質である。
化合物(V)の製造方法は、いくつか開示されている。その中には、6−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドと2,4−チアゾリジンジオンとを、6−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドの水酸基を保護せずに脱水縮合させて5−(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)メチレン−2,4−チアゾリジンジオンとし、次いでこれを還元することにより5−(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)メチル−2,4−チアゾリジンジオンを得、これに2−フルオロベンジルクロイドを反応させて、目的の5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオンを得る方法が開示されている(特許文献1〜3)。
しかし、これらの方法は、還元に多量の金属触媒を使用する問題がある。また、従来のいずれの方法も、収率の点で満足とは言い難い。
【0003】
【特許文献1】特許第4023697号公報
【特許文献2】特許第2845743号公報
【特許文献3】特開平2003−40877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、糖尿病治療薬として有用な5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオンを、工程数が少なく、かつ高収率で得ることができる製造方法、そのために有用な新規合成中間体である5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンと5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン及びそれらの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、新規化合物である5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを得、これを合成中間体として使用することにより、所期の目的を達成することができることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明によれば、
[1]式(I)
【化12】

で表わされる6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒドと、式(II)
【化13】

で表わされる2−イミノ−4−チアゾリジノンとを反応させて、式(III)
【化14】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する方法、
[2]式(III)
【化15】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン、
[3]式(III)
【化16】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを還元して、式(IV)
【化17】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する方法、
[4]式(IV)
【化18】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン、
[5]式(III)
【化19】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを還元して、式(IV)
【化20】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノンとし、これを加水分解することにより式(V)
【化21】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオンを製造する方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明で使用する新規中間体(III)は、ベンジリデン部位の二重結合の還元が容易であり、選択的に還元できる。したがって、本発明によれば、廃液処理が困難な金属化合物を多量に用いる必要がない。
また、本発明において新規中間体(III)を用いることにより、工程数が少なく、かつ収率よく化合物(V)を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン(III)の製造
本発明において6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒド(I)と2−イミノ−4−チアゾリジノン(II)との縮合反応は、通常適当な溶媒中で適当な塩基の存在下に行なわれる。適当な溶媒としては、たとえばアルコール類(例、メタノ−ル,エタノ−ル,プロパノ−ル,2−プロパノ−ル,ブタノ−ル,イソブタノ−ル,2−メトキシエタノ−ルなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなど)、ベンゼン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ピリジン、酢酸などの溶媒、あるいは水もしくは水とそれらの混合溶媒が用いられる。一方、適当な塩基としては、アミン類(例、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミンなど)、ナトリウムアルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、もしくは酢酸などのカルボン酸類とアミン類(例、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミンなど)との塩類などが用いられる。また、これらの塩基は適宜の割合で混合して用いても良い。化合物(II)は化合物(I)1モルに対して通常1〜4モル、好ましくは1〜1.5モルを用いる。塩基の使用量は化合物(I)1モルに対し0.05〜1.5モル、好ましくは0.3〜1.0モルである。本縮合反応は通常室温〜還流温度、好ましくは還流温度で行なわれ、反応時間は通常0.5〜50時間である。
化合物(III)には、ベンジリデン炭素・炭素二重結合部位での立体配置によりシス体(Z体)、トランス体(E体)の幾何異性体が存在する。
また、2−イミノ−4−チアゾリジノン及びその類似化合物に認められるような、互変異性体も存在する。
【0009】
5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)の製造
前記のようにして得られた化合物(III)を還元して化合物(IV)を製造することができる。本還元反応は、通常適当な溶媒中で適当な触媒の存在下に接触還元することにより行われる。適当な溶媒としては、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、エ−テル類(例えば、ジオキサン,ジメトキシエタン,テトラヒドロフランなど)、有機酸類(例えば、蟻酸、酢酸, プロピオン酸、ブタン酸など)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、あるいはこれらの混合溶媒などが用いられる。一方、触媒としては、担持された、又はされていない、いわゆる不均一系の遷移金属を主成分とする触媒(例えば、パラジウム黒、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−炭酸バリウム、酸化白金、白金−炭素、ロジウム炭素、ルテニウム炭素、ラネーニッケルなど)が用いられる。還元反応における反応温度は、通常0〜200℃、好ましくは室温〜80℃である。還元反応における反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜48時間である。還元反応は、常圧でも進行するが、反応促進のために15.0MPa 以下、さらに0.2〜1.0MPaの加圧下に行うことが好ましい。また、還元反応は無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸など)、有機酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸類など)の存在下に行ってもよい。この際に使用する酸類の量は、化合物(III)に対して、通常0.5〜5倍モル、好ましくは0.5〜2.0倍モルである。
また、化合物(IV)は結晶多形が存在し、それぞれ異なった結晶形として単離することができる。
なお、生成した化合物(IV)は、単離することなく次工程の化合物(V)を得るための加水分解工程に導いてもよい。
【0010】
5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオン(V)の製造
前記のようにして得られた化合物(IV)の加水分解反応は、特に困難なく、通常の方法により行うことができる。たとえば、化合物(IV)の加水分解反応は通常適当な溶媒中で適当な鉱酸あるいは適当な有機酸類の存在下に行なわれる。適当な溶媒としては、たとえばアルコール類(例、メタノ−ル,エタノ−ル,プロパノ−ル,2−プロパノ−ル,ブタノ−ル,イソブタノ−ル,2−メトキシエタノ−ルなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなど)、有機酸類(例、蟻酸、酢酸, プロピオン酸、ブタン酸など)、ベンゼン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリルなどの溶媒、あるいは水もしくは水とそれらの混合溶媒が用いられる。一方、適当な鉱酸としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸などが用いられる。さらに、有機酸類(例、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸類など)また、これらの鉱酸あるいは有機酸類は適宜の割合で混合して用いても良い。本加水分解反応は通常20℃〜還流温度、好ましくは50℃〜120℃で行なわれ、反応時間は通常0.5〜20時間である。
本発明に係る化合物(V)は、通常の分離精製方法(例えば、中和、濃縮、抽出、晶析、再結晶、クロマトグラフィーなど)により単離精製することができる。
【0011】
後述の実施例1で使用する6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒド(I)及び2−イミノ−4−チアゾリジノン(化合物(II))は、それぞれ下記文献に記載の方法を参考にして製造した(参考例1)。
化合物(I):特許第2845743号公報
化合物(II):オーガニック シンセシス,合冊版 第3巻(Org. Synth., Coll. Vol.3)p.751−752.
【0012】
[参考例1]
6−ヒドロキシ−2−ナフチルアルデヒド(10.33g)および炭酸カリウム(8.3g)をアセトニトリル(100mL)に懸濁し、エタノール(15mL)を加えた。さらに、2−フルオロベンジルクロライド(8.67g)を加え、加熱撹拌下に7時間還流した。室温まで冷却後、ろ過し、減圧濃縮した。残留物を酢酸エチル(150mL)に溶解し、5%炭酸カリウム水溶液で洗浄、次いで水洗した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を酢酸エチルに溶解し、ヘキサンを加えて結晶を析出させた後、結晶を濾取した。得られた結晶を乾燥することにより6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒド(I)の結晶(16.0g:収率95.1%)を得た。
mp 82〜84℃
IR(ペースト法)cm−1: 1693、1626、1269、1174,750
H−NMR(CDCl:TMS)δppm:5.27(2H、s)、7.13(1H、m)、7.19(1H、m)、7.27−7.38(3H、m)、7.54(1H、m)、7.80(1H、d)、7.90(1H、d)、7.92(1H、dd)、8.25(1H、s)、10.09(1H、s)
【実施例】
【0013】
[実施例1]
メタノール(200mL)に2−イミノ−4−チアゾリジノン(4.1g)を懸濁し、6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒド(8.4g)およびピペリジン(2.5g)を加えた混合物を攪拌下に12時間加熱還流した。室温まで冷却し、一夜攪拌した後、析出した結晶を濾取し、メタノールで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン(II)の結晶(10.8g:収率95.1%)を得た。
mp 298〜303℃
IR(ペースト法)cm−1: 3207、3043、1672、1493、1282、745、503
H−NMR(DMSO−d:TMS)δppm:5.30(2H、s)、7.25−7.34(3H、m)、7.46(1H、m)、7.56(1H、d)、7.62−7.69(2H、m)、7.74(1H、s)、7.92−7.98(2H、m)、8.08(1H、d)、9.22(1H、bs)、9.40(1H、bs)
MS m/z[(M−1)]:377
【0014】
[実施例2]5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)
メタンスルホン酸(2.02g、0.021mol)のギ酸(70mL)溶液に5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン(5.68g、0.015mol)を溶解し、10%パラジウム炭素(50%含水)(3g)加えた混合物を、0.7MPa〜0.8MPaの水素加圧下、40℃で24時間接触還元反応をおこなった。反応終了後、触媒を濾去し、更にエタノールで触媒を洗浄した。濾液と洗液を合わせて濃縮し、残留物を70%含水エタノール(100mL)に加熱溶解した。次いで、28%アンモニア水で中和して晶析させ、さらに懸濁液を加熱攪拌した後、析出した結晶を濾取し、含水エタノールで洗浄した。その後、乾燥することにより5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)の白色結晶(4.2g:収率73.6%)を得た。
mp 228〜 231℃
IR(ペースト法)cm−1:3115、1673、1493、1286,1232、853,743,631,482
H−NMR(DMSO−d:TMS)δppm:3.03(1H、dd)、3.52(1H,dd)、4.68(1H、dd)、5.25(2H、s)、7.19−7.32(3H、m)、7.38(1H、dd)、7.41−7.48(2H、m)、7.60−7.66(1H、m)、7.68(1H、d)、7.74−7.81(2H、m)、8.72(1H、s)、8.96(1H、s)
MS m/z[(M−1)]:379
【0015】
[実施例3]5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)
メタンスルホン酸(1.45g、0.015mol)のギ酸(80mL)溶液に5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン(5.68g、0.015mol)を溶解し、10%パラジウム炭素(50%含水)(3g)加えた混合物を、0.7MPa〜0.8MPaの水素加圧下、40℃で24時間接触還元反応をおこなった。反応終了後、触媒を濾去し、更にエタノールで触媒を洗浄した。濾液と洗液を合わせて濃縮し、残留物を70%含水エタノール(100mL)に加熱溶解した。次いで、28%アンモニア水で中和して晶析させ、さらに懸濁液を加熱攪拌した後、析出した結晶を濾取し、含水エタノールで洗浄した。その後、乾燥することにより5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)の白色結晶(5.2g:収率91.1%)を得た。
mp 226〜 228℃
H−NMR(DMSO−d:TMS)δppm:3.03(1H、dd)、3.52(1H,dd)、4.68(1H、dd)、5.25(2H、s)、7.19−7.32(3H、m)、7.38(1H、dd)、7.41−7.48(2H、m)、7.60−7.66(1H、m)、7.68(1H、d)、7.74−7.81(2H、m)、8.72(1H、s)、8.96(1H、s)
MS m/z[(M−1)]:379
【0016】
[実施例4]5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)
メタンスルホン酸(2.6g、0.027mol)のギ酸(70mL)溶液に5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン(5.68g、0.015mol)を溶解し、10%パラジウム炭素(50%含水)(3g)加えた混合物を、0.7MPa〜0.8MPaの水素加圧下、40℃で12時間接触還元反応をおこなった。反応終了後、触媒を濾去し、更にエタノールで触媒を洗浄した。濾液と洗液を合わせて濃縮し、残留物を70%含水エタノール(100mL)に加熱溶解した。次いで、28%アンモニア水で中和して晶析させ、さらに懸濁液を加熱攪拌した後、析出した結晶を濾取し、含水エタノールで洗浄した。その後、乾燥することにより5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)の白色結晶(4.1g:収率71.8%)を得た。
【0017】
[実施例5]5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジン(V)
ジオキサン(30mL)に5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(4g)及び2N−塩酸水溶液(20mL)を加え、加熱撹拌下に11時間還流した。その後、減圧濃縮してジオキサンを留去し、残留物に酢酸エチルを加えて撹拌溶解した。分層して有機層を分離し、有機層を水洗した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をトルエンで再結晶し、得られた結晶を乾燥することにより、5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオン(V)の微黄白色の結晶(3.8g:収率94.9%)を得た。
HPLC純度:99.1%
mp 150− 152℃
IR(ペースト法)cm−1: 3243、3136、1760、1673、1607、1492、1229、1177、1016、856、759、519、475
H−NMR(DMSO−d:TMS)δppm:3.26(1H、dd)、3.53(1H、dd)、5.01(1H、dd)、5.26(2H、s)、7.20−7.32(3H、m)、7.39(1H、dd)、7.41−7.49(2H、m)、7.63(1H、m)、7.70(1H、d)、7.77−7.83(2H、m)、12.1(1H、s)
MS m/z[(M−1)]:380
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、公知化合物6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒド(I)から、新規化合物の5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン(III)と5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン(IV)を経て、糖尿病治療薬として有用な5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオン(V)(ネトグリタゾン)を、工業的に有利に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表わされる6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチルアルデヒドと、式(II)
【化2】

で表わされる2−イミノ−4−チアゾリジノンとを反応させて、式(III)
【化3】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する方法。
【請求項2】
式(III)
【化4】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノン。
【請求項3】
式(III)
【化5】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを還元して、式(IV)
【化6】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノンを製造する方法。
【請求項4】
式(IV)
【化7】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノン。
【請求項5】
式(III)
【化8】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチレン−2−イミノ−4−チアゾリジノンを還元して、式(IV)
【化9】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2−イミノ−4−チアゾリジノンを加水分解することにより式(V)
【化10】

で表わされる5−[6−(2−フルオロベンジルオキシ)−2−ナフチル]メチル−2,4−チアゾリジンジオンを製造する方法。

【公開番号】特開2009−234930(P2009−234930A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79441(P2008−79441)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】