説明

2−ジハロアシル−3−アミノ−アクリル酸エステルおよび3−ジハロメチル−ピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法

【化1】


本発明は式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルの製造方法に関する。該方法は、式(II)の酸ハロゲン化物を水−非混和性有機溶媒中で塩基の存在下に式(III)のジアルキルアミノアクリル酸エステルと反応させることを特徴とし、ここでR、R、R、X、XおよびHalは明細書に引用されている通りに定義される。本発明は、また、式(I)の新規な2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステル、3−ジハロメチル−ピラゾールを製造するためのそれらの使用、3−ジハロメチル−ピラゾールの製造方法、並びに新規な3−ジハロメチル−ピラゾールにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸ハロゲン化物をジアルキルアミノアクリル酸エステルと反応させることによる新規な2−ジハロアシル−3−アミノ−アクリル酸エステルの新規な製造方法、3−ジハロメチルピラゾールを製造するためのそれらの使用、3−ジハロメチルピラゾールの製造方法、並びに新規な3−ジハロメチルピラゾール類に関する。
【背景技術】
【0002】
適当なクロロアクロレイン類を置換されたアミンと反応させる時にトリハロアシル化されたアミノアクリル酸エステルが得られることは既知である。出発物質として必要なクロロアクロレイン類は対応するトリハロアセト酢酸エステルからフィルスマイヤー反応により得られる。この方法の一つの欠点はフィルスマイヤー方法においてフォスフォラスオキシドトリクロリド(phosphorus oxide trichloride)を使用しなくてはならないことであり、そして他の欠点は工業規模での全体的収率が満足のいかないことである(非特許文献1参照)。
【0003】
トリハロアセト酢酸エステルをジアルキルホルムアミドアセタールと反応させることによりトリハロアシルアミノプロペン酸エステルが得られることも既知である(特許文献1参照)。ここでの欠点は、脱アシル化された化合物が副生物として生じそして所望する生成物から除去しなければならないことである。
【0004】
3−アミノアクリル酸エステルを無水ペルハロアルキルカルボン酸と反応させることにより2−ペルハロアシル−3−アミノアクリル酸誘導体が得られることも既知である(特許文献2参照)。この方法は、α−水素がある時には塩化水素がトリエチルアミンの存在下で除去されるため、ジハロアシル−置換されたアミノアクリル酸誘導体を製造するためには適していない。生じるジハロケテン類は、重合する傾向がある非常に不安定な化合物である(非特許文献2参照)。
【0005】
2−(ジフルオロアセチル)−3−アルコキシアクリル酸エステルを非プロトン性溶媒中でヒドラジン類と反応させる時に3−ジフルオロメチルピラゾール誘導体が得られうる(特許文献3参照)。望ましくない異性体ピラゾール類が高い割合で製造されそして所望する異性体の単離においてさらなる損失が生ずるため、この方法の収率は遺憾な点が少しある。そのような方法の工業的用途は従って経済的理由のためにほとんど不可能である。
【0006】
アルコキシアクリル酸エステル類とヒドラジン誘導体との閉環反応においては、(88%までの)高い割合の望ましくない5−ハロアルキルピラゾール−4−カルボン酸が製造される(非特許文献3参照)。
【0007】
ジハロメチルアルコキシアクリル酸エステルはジハロアセト酢酸エステルから製造される。ジハロアセト酢酸エステルは工業的に入手可能でなく且つ複雑な技術(ケテン類の使用)を必要とする。そのような化合物は従って経済的な方法で製造することができない。
【0008】
特許文献2は、2−ペルハロアシル−3−アミノアクリル酸誘導体がヒドラジン類と反応して3−ペルハロ−置換されたピラゾール類を与えうることを開示している。非プロトン性溶媒の使用が望ましくない異性体の生成を減ずるが、本発明のジハロ化合物への応用の場合には依然として相当な量である(比較例3)。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1000926号明細書
【特許文献2】国際公開第03/051820号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,498,624号明細書
【非特許文献1】Tetrahedron Lett.1996,37,8751−8754
【非特許文献2】J.Org.Chem.1968,33,816
【非特許文献3】J.Het.Chem.1987,24,693
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、それ故、2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルを高い全体的収率および高い純度で得ることができそして所望する3−ジハロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルに高い選択率で転化することができる新規な経済的方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、それ故、
a)式(II)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、
Halは弗素、塩素または臭素であり、そして
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素である]
の酸ハロゲン化物を水−非混和性有機溶媒中で塩基の存在下に式(III)
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、R、RおよびRは各々独立してC−C−アルキルである]
のジアルキルアミノアクリル酸エステルと反応させることを特徴とする式(I)
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、
R、RおよびRは各々独立してC−C−アルキルであり、そして
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素である]
の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルの製造方法を提供するものである。
【0017】
驚くべきことに、式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノ−アクリル酸エステルを本発明の条件下で良好な収率で高い純度で製造することができ、それにより、本発明の方法は同様な現存する製造方法の上記の欠点を克服する。特に、ピリジンまたはピリジン誘導体を用いると、他の第三級アミン、例えばトリエチルアミンとは異なり、ジハロケテン生成が抑制されそして特に高い収率がそれにより得られることが驚くべきことに見出された。
【0018】
使用される出発物質が塩化ジクロロアセチルおよびジメチルアミノアクリル酸エチルでありそして使用される塩基が水酸化ナトリウムである時には、本発明に従う方法(a)は下記のスキームにより説明することができる。
【0019】
【化4】

【0020】
本発明に従う方法(a)を行う時に出発物質として使用される酸ハロゲン化物は一般的に式(II)により定義される。この式において、Halは好ましくは弗素または塩素、より好ましくは塩素である。Xは好ましくは弗素または塩素である。
【0021】
式(II)の酸ハロゲン化物は既知の合成化学物質である。
【0022】
本発明に従う方法(a)を行う時にこれも出発物質として使用されるジアルキルアミノアクリル酸エステルは一般的に式(III)により定義される。この式において、R、RおよびRは各々独立してメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルである。Rはより好ましくはメチルまたはエチルであり、RおよびRはより好ましくは各々独立してメチルまたはエチルであり、最も好ましくは各々メチルである。
【0023】
式(III)のジアルキルアミノアクリル酸エステルは既知の合成化学物質である。
【0024】
本発明に従う方法(a)は水−非混和性有機溶媒の存在下で行われる。これらは好ましくは、脂肪族、脂環式または芳香族の炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化された炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタンを包含する。トルエン、キシレン、クロロベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンの使用が特に好ましく、トルエンまたはキシレンが非常に特に好ましい。
【0025】
本発明に従う方法(a)は塩基の存在下に行われる。無機水性塩基、ピリジンまたはピリジン誘導体がこの目的に特に適する。アルカリ土類金属もしくはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムまたは炭酸水素ナトリウムの使用が好ましい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムの使用が特に好ましく、水
酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが非常に特に好ましい。無機塩基は好ましくは水溶液状で10〜40%の間の濃度で使用される。ピリジン、2−、3−もしくは4−メチルピリジン、2−メチル−5−エチル−ピリジン、2,4,6−コリジン、2−もしくは4−n−プロピルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、キノリンまたはキナルジン、より好ましくはピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,4,6−コリジン、キノリンまたはキナルジンも塩基として好ましく使用される。
【0026】
本発明に従う方法(a)を行う時には、比較的狭い温度範囲内で行うことが必要である。一般的に、実施温度は−20℃〜+50℃、好ましくは−10℃〜+30℃である。
【0027】
本発明に従う方法(a)は一般的に大気圧で行われる。しかしながら、例えば揮発性の弗化または塩化ジフルオロアセチルが使用される時には、高められた圧力で行うことも可能である。
【0028】
反応時間は厳密なものでなくそしてバッチ寸法によって比較的広い範囲内で選択しうる。
【0029】
本発明に従う方法(a)を行う時には、1モルの式(II)の酸ハロゲン化物に対して、一般的に0.5モル〜3モルの間の、好ましくは0.5モル〜1.5モルの間の、より好ましくは0.9モル〜1.0モルの間の式(III)のジアルキルアミノアクリル酸エステルが使用される。塩基は一般的に式(II)の酸ハロゲン化物と等モル量で使用される。
【0030】
溶媒中に溶解させた式(II)の酸ハロゲン化物を最初に充填しそして式(III)のジアルキルアミノアクリル酸エステルを加えることが好ましい。しかしながら、逆の順序も可能である。引き続き、使用される塩基が計量添加される。
【0031】
反応の完了時に、ピリジン誘導体のハロゲン化水素酸塩を溶液中に水と共に加えることができまたは存在する水相を相分離により除去することもできる。式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルをその後の反応段階(ピラゾール合成)においてさらなる精製なしに残存している有機相の中で、場合により例えば溶媒を初期蒸留することにより乾燥した後に使用することができる。
【0032】
本発明に従う方法(a)により製造できる式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルは新規でありそして同様に本出願の主題の一部を構成する。
【0033】
式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルは、活性な殺菌・殺カビ成分の前駆体を構成するジハロメチル−置換されたピラゾールカルボン酸誘導体の製造のための価値ある中間体である(国際公開第03/070705号パンフレット参照)。
【0034】
本出願は従って同様に、式(V)の3−ジハロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エステルを製造するための式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルの使用も提供する。これらのエステルは場合により酸に加水分解されてもよくそして場合により対応する酸ハロゲン化物にさらに誘導化されてもよい。酸および酸ハロゲン化物を次に殺菌・殺カビ活性カルボキサミド類に転化することができる(国際公開第03/070705号パンフレット参照)。
【0035】
本発明は同様に、
b)式(I)
【0036】
【化5】

【0037】
[式中、
R、RおよびRは各々独立してC−C−アルキルであり、そして
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素である]
の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルを−50℃〜0℃の温度において非プロトン性溶媒の存在下に式(IV)
−NH−NH (IV)
[式中、RはC−C−アルキル、ヒドロキシ−C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル;各場合とも1〜5個のハロゲン原子を有するC−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−ハロアルコキシ−C−C−アルキルであるか;またはフェニルである]
のヒドラジン誘導体と反応させることを特徴とする式(V)
【0038】
【化6】

【0039】
[式中、
RはC−C−アルキルであり、
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素であり、
はC−C−アルキル、ヒドロキシ−C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル;各場合とも1〜5個のハロゲン原子を有するC−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−ハロアルコキシ−C−C−アルキルであるか;またはフェニルである]
の3−ジハロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法も提供する。
【0040】
先行技術によると、式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルは典型的には、溶媒としてのエタノール中でヒドラジン誘導体と反応せしめられる(米国特許第5,498,624号明細書参照)。これは不適切なピラゾール異性体(1−メチル−5−ジフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸)も相当な程度(適切/不適切な異性体比65:35)で与え、それは蒸留により除去することができる。所望する異性体の収率は理論値の46.8%だけである。国際公開第03/051820号パンフレットの条件を本発明のジハロメチル誘導体に適用しても同様に約68:32だけの異性体比を与える(比較例3)。
【0041】
式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルと式(IV)のヒドラジン誘導体との(特にメチルヒドラジンとの)反応において、温度、計量および溶媒の選択により所望するピラゾール対望ましくないピラゾールの異性体比を調節しそして最少にしうることが驚くべきことに今回見出された。
【0042】
2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルおよびメチルヒドラジンが出発物質として使用される時には、本発明に従う方法(b)の工程は下記のスキームにより説明することができる。
【0043】
【化7】

【0044】
本発明に従う方法(b)を行う時に出発物質として必要な式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルは同様に本発明の一部を構成しそして本発明に従う方法(a)により製造することができる(上記参照)。
【0045】
本発明に従う方法(b)を行う時にこれも出発物質として必要なヒドラジン誘導体は一般的に式(IV)により定義される。この式において、Rは好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、1〜5個の弗素、塩素および/または臭素原子を有するC−C−ハロアルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニル、より好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピルまたはtert−ブチル、最も好ましくはメチルである。
【0046】
式(IV)のヒドラジン誘導体は既知の合成化学物質である。
【0047】
本発明に従う方法(b)において、ピラゾールへの閉環は非プロトン性溶媒の存在下に行われる。これらは好ましくは、脂肪族、脂環式または芳香族の炭化水素、例えば石油エーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはデカリン、およびハロゲン化された炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン、エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、メチルtert−アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンまたはアニソール;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−もしくはイソブチロニトリルまたはベンゾニトリル;ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノン;アミド類、例えバN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドンまたはヘキサメチルホスホルアミド;スルホキシド類、例えばジメチルスルホキシド、或いはスルホン類、例えばスルホラン、を包含する。トルエン、キシレン、クロロベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンの使用が特に好ましく、トルエンまたはキシレンが非常に特に好ましい。
【0048】
本発明に従う方法(b)において、ピラゾールへの閉環では比較的狭い温度範囲内で行うことが必要である。温度が低ければ低いほどより良い。しかしながら、過度に低い温度
は経済的観点から不経済である。一般的に、実施温度は−50℃〜+20℃、好ましくは−30℃〜0℃、より好ましくは−20℃〜0℃である。
【0049】
本発明に従う方法(b)において、ピラゾールへの閉環は一般的には大気圧で行われる。しかしながら、高められたまたは低められた圧力で行うことも可能である。
【0050】
本発明に従う方法(b)において、ピラゾールへの閉環では式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルまたはヒドラジン誘導体のいずれかを最初に充填することができる。しかしながら、所望するピラゾール誘導体を高い収率および選択率で得るためには、先行技術とは対照的に最初にヒドラジン誘導体を充填しそして式(I)のエステル中に計量添加することが有利である。
【0051】
反応の完了時に、抽出を最初に水を用いて行い、有機相を除去しそして溶媒を蒸留により除去する。不適切な異性体(1−メチル−5−ジフルオロメチルピラゾール−4−カルボン酸)は多くの場合に結晶化により除去することができる。最初に酸に加水分解しそして引き続き再結晶化することも可能である。
【0052】
本発明はまた、式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルを本発明に従う方法(a)により最初に製造しそしてこれらを単離後にまたは直接さらに反応させ、そして本発明に従う方法(b)において式(IV)のヒドラジン誘導体と環化させることを特徴とする式(V)の3−ジハロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エステルの全体的な製造方法も提供する。
【0053】
本発明に従う方法(b)により得られうる3−ジハロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エステルのあるものは新規である。本出願は同様に、式(V−a)
【0054】
【化8】

【0055】
[式中、
RはC−C−アルキルであり、
11およびX22は各々塩素であり、
はC−C−アルキル、ヒドロキシ−C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル;各場合とも1〜5個のハロゲン原子を有するC−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−ハロアルコキシ−C−C−アルキルであるか;またはフェニルである]
の3−ジハロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エステルも提供する。
【0056】
式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアルキル酸エステルの本発明の製造、並びに式(V)の3−ジハロメチル−置換されたピラゾール−4−カルボン酸エステルを製造するためのそれらの使用は以下の実施例に記載されており、それらは以上の記述をさらに説明するものである。しかしながら、実施例は限定方式で解釈すべきでない。
【実施例】
【0057】
製造実施例
実施例1
【0058】
【化9】

【0059】
71.6g(0.5モル)のジメチルアミノアクリル酸エチルを150mlのトルエン中に溶解させそして混合物を0℃に冷却する。引き続き、73.7g(0.5モル)の塩化ジクロロアセチル(50mlのトルエン中に溶解させた)を0−3℃において30−40分以内に撹拌しながら溶液に滴下する。次に、同じ温度において、200gの10%水酸化ナトリウム溶液を20分以内に滴下し、その間に黄色乳化液が生成する。混合物を0−3℃においてさらに3時間にわたり撹拌しそして室温に放冷する。相を分離する。水相を100mlのトルエンで抽出しそして一緒にした有機相を100mlの水で洗浄する。トルエン相を初期蒸留により乾燥しそして次の段階で使用する(実施例4参照)。
【0060】
トルエンを蒸留除去することにより生成物を単離することができる。101.9g(理論値の80.2%)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルが得られる。
H NMR(CDCN):δ=7.93(s,1H)、7.22(s,1H)、4.15−4.19(m,2H)、3.32(s,3H)、2.85(s,3H)、1.25−1.29(t,3H)ppm。
【0061】
実施例2
【0062】
【化10】

【0063】
57.6gのジメチルアミノアクリル酸メチルを実施例1と同様な方法で反応させて95.2g(理論値の79.3%)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸メチルを得る。
【0064】
実施例3
【0065】
【化11】

【0066】
71.6g(0.5モル)のジメチルアミノアクリル酸エチルを150mlのトルエン中に溶解させそして0−3℃において撹拌しながら73.7g(0.5モル)の塩化ジクロロアセチルの50mlのトルエン中溶液に滴下する。次に、同じ温度において、200gの10%水酸化ナトリウム溶液を20分以内に滴下し、その間に黄色乳化液が生成する。混合物を0−3℃においてさらに3時間にわたり撹拌しそして室温に放冷する。相を分離する。水相を100mlのトルエンで抽出しそして一緒にした有機相を100mlの水で洗浄する。トルエン相を初期蒸留により乾燥しそして次の段階で使用する(実施例4参照)。
【0067】
トルエンを蒸留除去することにより生成物を単離することができる。106.7g(理論値の84%)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルが得られる。
【0068】
実施例4
【0069】
【化12】

【0070】
239.3gの2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルの940mlのトルエン中溶液を撹拌しながら且つ保護気体下で0℃において45分以内に940mlのトルエン中の44.26gのメチルヒドラジンに滴下する。混合物を0℃において3時間にわたり撹拌し、室温に放冷しそして20−25℃においてさらに2時間にわたり撹拌する。200mlの水を加えた後に、トルエン相を除去しそして水相を各回とも200mlのトルエンでさらに2回抽出する。一緒にしたトルエン相を300mlの水で洗浄しそして初期蒸留する。
【0071】
3−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル(収率、理論値の77.5%)が望ましくない異性体[5−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル]との81.4:18.6の比の混合物(GC−MS分析)状で得られる。純粋な3−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルは41℃で融解する。
【0072】
実施例5〜8は実施例4と同様な方法で実施される。各場合とも、溶媒、反応温度および加えられる反応物の順序が変えられる。反応条件の選択によって、異なる異性体比が得られる。これらの実施例の結果を以下の表1にまとめる。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例9
【0075】
【化13】

【0076】
14.7g(0.1モル)の塩化ジクロロアセチルの25mlのトルエン中溶液を撹拌しながら0℃において75mlのトルエン中の14.3g(0.1モル)のジメチルアミノアクリル酸エチルおよび9.5g(0.1モル)の98%2−メチルピリジンに滴下する。混合物を室温に放冷しそしてさらに30分間にわたり撹拌する。100mlの水を加えた後に、相を分離し、水相を50mlのトルエンで抽出しそして一緒にした有機相を50mlの水で洗浄する。トルエン相を初期蒸留により乾燥しそして次の段階で使用する(実施例4参照)。
【0077】
トルエンを蒸留除去することにより生成物を単離することができる。23.2g(理論値の91.3%)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチル(融点71−72℃)が得られる。
【0078】
実施例10
【0079】
【化14】

【0080】
7.4g(0.05モル)の塩化ジクロロアセチルの15mlのトルエン中溶液を撹拌しながら0℃において40mlのトルエン中の6.9g(0.05モル)の93%ジメチルアミノアクリル酸メチルおよび4.7g(0.05モル)の98%2−メチルピリジン
に滴下する。混合物を室温に放冷しそしてさらに30分間にわたり撹拌する。50mlの水を加えた後に、相を分離し、水相を50mlのトルエンで抽出しそして一緒にした有機相を50mlの水で洗浄する。トルエン相を初期蒸留により乾燥しそして次の段階で使用する(実施例11参照)。
【0081】
トルエンを蒸留除去することにより生成物を単離することができる。10.4g(95%強度、理論値の82.3%)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸メチルが得られる。
【0082】
実施例11
【0083】
【化15】

【0084】
15.2g(0.06モル)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸メチルの60mlのトルエン中溶液を撹拌しながら且つ保護気体下で−50℃において45分以内に60mlのトルエン中の2.8g(0.06モル)のメチルヒドラジンに滴下する。混合物を−50℃において30分間にわたり撹拌し、室温に放冷しそしてさらに2時間にわたり撹拌する。60mlの水を加えた後に、相を分離し、水相を30mlのトルエンで抽出し、そして有機相を一緒にしそして30mlの水で洗浄する。
【0085】
トルエンを蒸留除去した後に、12.6g(理論値の83%)の3−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸メチルが望ましくない異性体[5−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸メチル]との93.8:6.2の比の混合物(GC−MS分析)状で得られる。
【0086】
生成物をジイソプロピルエーテルから再結晶化することができる(融点115℃)。
【0087】
実施例12
【0088】
【化16】

【0089】
200mlのトルエン中の32.5gのジメチルアミノアクリル酸エチルを撹拌しながら且つ保護気体下で0℃において200mlのトルエン中の26gの塩化ジフルオロアセチルに滴下する。引き続き、90.85gの10%水酸化ナトリウム溶液を滴下する。混合物を0℃において3時間にわたり撹拌しそして室温に放冷する。相を分離する。水相を80mlのトルエンで抽出しそして一緒にした有機相を80mlの水で洗浄する。トルエン相を初期蒸留により乾燥しそして次の段階で使用する(実施例11参照)。
【0090】
トルエンを蒸留除去することにより生成物を単離することができる。37.2g(理論値の74%)の2−(ジフルオロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルが得られる。
H NMR(CDCN):δ=7.88(s,1H)、6.47、6.61および6.74(t,1H)、4.13−4.19(m,2H)、3.32(s,3H)、2.85(s,3H)、1.25−1.28(t,3H)ppm。
【0091】
実施例13
【0092】
【化17】

【0093】
125.3gの2−(ジフルオロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルの400mlのトルエン中溶液を撹拌しながら且つ保護気体下で−20℃において45分以内に600mlのトルエン中の31.2gのメチルヒドラジンに滴下する。混合物を0℃において3時間にわたり撹拌し、室温に放冷しそして20−25℃においてさらに2時間にわたり撹拌する。500mlの水を加えた後に、トルエン相を除去し、そして水相を各回とも100mlのトルエンで2回抽出する。一緒にしたトルエン相を300mlの水で洗浄しそして初期蒸留する。3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル(収率、理論値の89.7%)が望ましくない異性体[5−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル]との89.2:10.8の比の混合物(GC−MS分析)状で得られる。
【0094】
実施例14
【0095】
【化18】

【0096】
50mlのトルエン中の30.4g(0.2モル)の塩化ジクロロアセチルを室温において15分以内に28.9g(0.2モル)のジメチルアミノアクリル酸エチルおよび24.7g(0.2モル)の5−エチル−2−メチルピリジンの150mlのトルエン中溶液に滴下する。生じた黄色懸濁液を同じ温度において2時間にわたり撹拌する。200mlの水を加えた後に、相を分離し、水相を50mlのトルエンで抽出し、そして一緒にした有機相を50mlの水で洗浄し、乾燥し、濃縮しそして高真空中で「脱気」する。
【0097】
47.6g(理論値の92.1%)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチル(融点73℃)が得られる。
【0098】
比較例1(米国特許第5,498,624号明細書、4および5欄からの実施例と同様)
【0099】
【化19】

【0100】
1.3g(0.028モル)のメチルヒドラジンの5mlのエタノール(無水)中溶液を保護気体下で且つ撹拌しながら0℃において40分以内に35mlのエタノール(無水)中の7.1g(0.028モル)の2−ジクロロアセチル−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルに滴下する。混合物を2時間にわたり加熱還流し、室温に放冷し、そして溶液をさらに2時間にわたり撹拌する。エタノールを蒸留除去した後に、50mlの水および50mlのジクロロメタンを加え、相を分離し、水相を30mlのジクロロメタンで抽出し、そして有機相を一緒にしそして30mlの水で洗浄する。
【0101】
ジクロロメタンを蒸留除去した後に、6.5g(理論値の37.5%)の3−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルが望ましくない異性体との40.3:59.7の比の混合物状で得られる。
【0102】
比較例2(国際公開第03/051820号パンフレットからの実施例3と同様)
【0103】
【化20】

【0104】
16.2g(0.11モル)の塩化ジクロロアセチルの25mlのトルエン中溶液を撹拌しながら−10℃〜−5℃において75mlのトルエン中の14.3g(0.1モル)のジメチルアミノアクリル酸エチルおよび11.1g(0.11モル)のトリエチルアミンに滴下し、そして混合物を引き続き50℃に加熱する。100mlの水を加えた後に、相を分離し、水相を50mlのトルエンで抽出しそして一緒にした有機相を50mlの水で洗浄する。
【0105】
トルエンを蒸留除去した後に、23.7gの濃色油が得られ、それは47.8%の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチル(理論収率の44.6%に相当する)を含有する。
【0106】
比較例3(国際公開第03/051820号パンフレットの実施例4と同様)
【0107】
【化21】

【0108】
2.3g(0.05モル)のメチルヒドラジンの10mlのトルエン中溶液を0℃において50mlのトルエン中の12.7g(0.05モル)の2−(ジクロロアセチル)−3−(ジメチルアミノ)アクリル酸エチルに滴下した。引き続き、混合物をそのままさらに1時間にわたり攪拌した。トルエンを減圧下(<100ミリバール)および最高45℃の温度で蒸留除去した。生成物は水を用いて結晶化しなかった。ジクロロメタンを用いて抽出を2回行い、そして一緒にした有機相を水で洗浄しそして濃縮した。
【0109】
11.1gの3−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルが赤色油として望ましくない異性体[5−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチル]との67.9:32.1の比の混合物(GC−MS分析)状で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】

[式中、
Halは弗素、塩素または臭素であり、そして
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素である]
の酸ハロゲン化物を水−非混和性有機溶媒中で塩基の存在下に式(III)
【化2】

[式中、R、RおよびRは各々独立してC−C−アルキルである]
のジアルキルアミノアクリル酸エステルと反応させることを特徴とする式(I)
【化3】

[式中、
R、RおよびRは各々独立してC−C−アルキルであり、そして
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素である]
の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルの製造方法。
【請求項2】
使用される塩基がピリジン、ピコリン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,4,6−コリジン、キノリンまたはキナルジンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)
【化4】

[式中、
R、RおよびRは各々独立してC−C−アルキルであり、そして
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素である]
の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステル。
【請求項4】
式(V)
【化5】

[式中、
RはC−C−アルキルであり、
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素であり、
はC−C−アルキル、ヒドロキシ−C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル;各場合とも1〜5個のハロゲン原子を有するC−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−ハロアルコキシ−C−C−アルキルであるか;またはフェニルである]
の3−ジハロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エステルを製造するための式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルの使用。
【請求項5】
式(I)
【化6】

[式中、
R、RおよびRは各々独立してC−C−アルキルであり、そして
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素である]
の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルを−50℃〜0℃の温度において非プロトン性溶媒の存在下に式(IV)
−NH−NH (IV)
[式中、
はC−C−アルキル、ヒドロキシ−C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル;各場合とも1〜5個のハロゲン原子を有するC−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−ハロアルコキシ−C−C−アルキルであるか;またはフェニルである]
のヒドラジン誘導体と反応させることを特徴とする式(V)
【化7】

[式中、
RはC−C−アルキルであり、
およびXは各々独立して弗素、塩素または臭素であり、
はC−C−アルキル、ヒドロキシ−C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル;各場合とも1〜5個のハロゲン原子を有するC−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−ハロアルコキシ−C−C−アルキルであるか;またはフェニルである]
の3−ジクロロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
式(I)の2−ジハロアシル−3−アミノアクリル酸エステルが請求項1に記載の方法により製造されることを特徴とする、請求項5に記載の式(V)の3−ジクロロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
式(V−a)
【化8】

[式中、
RはC−C−アルキルであり、
11およびX22は各々塩素であり、
はC−C−アルキル、ヒドロキシ−C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル;各場合とも1〜5個のハロゲン原子を有するC−C−ハロアルキル、C−C−ハロアルキルチオ−C−C−アルキル、C−C−ハロアルコキシ−C−C−アルキルであるか;またはフェニルである]
の3−ジクロロメチルピラゾール−4−カルボン酸エステル。

【公表番号】特表2007−509850(P2007−509850A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535992(P2006−535992)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011376
【国際公開番号】WO2005/042468
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】