説明

2−置換5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジンの調製方法

2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン類を効率的かつ高収率で生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン類の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン類は、ある種の新しい殺虫剤の調製に有用な中間体である。例えば、米国公開特許公報第2005/0228027号を参照されたい。2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン類を効率的かつ高収率で生産することは、有利となろう。
【発明の概要】
【0003】
(発明を実施するための形態)
【0004】
本発明の1つの態様は、2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン(I)
【0005】
【化1】

(式中、RおよびRは、独立にH、C〜Cアルキルを表すか、RまたはRの一方がRと一緒になって4〜6員の飽和環を表すか、あるいはRがRと一緒になって、場合によりOまたはN原子によって置換された3〜6員の飽和環を表し、
はC〜Cアルキルを表すか、あるいはRはRまたはRの一方と一緒になって4〜6員の飽和環を表し、
はC〜CアルキルまたはC〜Cハロアルキルを表す。)の調製方法であって、
a)置換エノン(II)
【0006】
【化2】

(式中、Rは、前記の定義に倣い、
およびRは、独立にC〜Cアルキルを表す。)
をエナミン(III)
【0007】
【化3】

(式中、R、RおよびRは、前記の定義に倣い、
およびRは、独立にC〜Cアルキルを表すか、あるいはRおよびRは、Nと一緒になって飽和または不飽和の5員環を表す。)
と縮合すること;
b)2,3,5−置換ピリジン(IV)
【0008】
【化4】

(式中、R、R、R、RおよびRは、前記の定義に倣う。)を製造するために、アンモニアまたはアンモニアを生成できる試薬の存在下で、ステップa)からの反応混合物を環化すること;および
c)2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン(I)を得るために、前記2,3,5−置換ピリジン(IV)を鹸化し、脱カルボキシル化すること;を含む方法に関する。この方法はRがCFを表す化合物を調製する場合に特に適している。
【0009】
本発明のもう1つの態様は、式(IV)のニコチン酸中間誘導体
【0010】
【化5】

(式中、RおよびRは、独立にH、C〜Cアルキルを表すか、RまたはRの一方がRと一緒になって4〜6員の飽和環を表すか、あるいはRがRと一緒になって、場合によりOまたはN原子によって置換された3〜6員の飽和環を表し、
はC〜Cアルキルを表すか、あるいはRはRまたはRの一方と一緒になって4〜6員の飽和環を表し、
はC〜CアルキルまたはC〜Cハロアルキルを表し、
はHまたはC〜Cアルキルを表す。)に関する。
【0011】
特に別に制限されていない限り、本明細書で使われる用語「アルキル」(「ハロアルキル」等の派生語も含む)には、直鎖、分岐鎖および環状の基が含まれる。したがって、代表的なアルキル基は、メチル、エチル、1−メチルエチル、プロピル、1,1−ジメチルエチルおよびシクロプロピルである。用語「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。用語「ハロアルキル」には、1から可能な最大数までの任意の個数のハロゲン原子で置換されたアルキル基が含まれる。
【0012】
本発明の1つの態様は、2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン(I)
【0013】
【化6】

(式中、RおよびRは、独立にH、C〜Cアルキルを表すか、RまたはRの一方がRと一緒になって4〜6員の飽和環を表すか、あるいはRがRと一緒になって、場合によりOまたはN原子によって置換された3〜6員の飽和環を表し、
はC〜Cアルキルを表すか、あるいはRはRまたはRの一方と一緒になって4〜6員の飽和環を表し、
はC〜CアルキルまたはC〜Cハロアルキルを表す。)の調製方法であって、
a)置換エノン(II)
【0014】
【化7】

(式中、Rは、前記の定義に倣い、
およびRは、独立にC〜Cアルキルを表す)をエナミン(III)
【0015】
【化8】

(式中、R、RおよびRは、前記の定義に倣い、
およびRは、独立にC〜Cアルキルを表すか、あるいはRおよびRは、Nと一緒になって飽和または不飽和の5員環を表す。)で縮合すること;
b)2,3,5−置換ピリジン(IV)
【0016】
【化9】

(式中、R、R、R、RおよびRは、前記の定義に倣う。)を製造するために、アンモニアまたはアンモニアを生成できる試薬の存在下で、ステップa)からの反応混合物を環化すること;および
c)2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン(I)を得るために前記2,3,5−置換ピリジン(IV)を鹸化し、脱カルボキシル化すること;を含む方法に関する。
【0017】
置換エノン(II)出発物質は、市販品を入手するか、または対応するケトエステル基質およびアルキルオルトホルメート類から調製することが可能である。一般に、アセトアセテート類をトリアルキルオルトホルメート類で縮合することにより、(II)の型の化合物が得られる。エナミン(III)の出発物質は、適切な溶媒の有無に関わらず、吸水物質の存在下で、適切に置換されたアルデヒド類に適切な置換アミンを添加することにより、都合よく調製することが可能である。一般に、適切に置換されたプロピオンアルデヒドを、無水炭酸カリウム等の乾燥剤の存在下において、−20℃〜20℃で無水二置換アミンと反応させ、その生成物を蒸留により単離する。
【0018】
ステップa)およびb)では、処理に、置換エノン(II)とエナミン(III)とアンモニアがほぼ等モル量必要となるが、多くの場合、アンモニアまたはアンモニア前駆体が2〜4倍過剰にある方が好ましい。
【0019】
アンモニアを生成できる代表的な試薬としては、例えば、1)酸、好ましくは有機酸のアンモニウム塩、2)ホルムアミド、または3)酸または酸性塩を伴うホルムアミドが挙げられる。いかなる脂肪族または芳香族の有機酸のアンモニウム塩でも使用できるが、処理の便宜上、好ましいのはC〜Cアルカン酸類のアンモニウム塩である。ギ酸アンモニウムおよび酢酸アンモニウムが好ましい。
【0020】
ステップa)は、水と混和性のある極性高沸点溶媒中で、例示的に(illustratively)実施される。好ましい溶媒としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、(2−メトキシ)エタノール等のアルコール類およびアセトニトリルを含むアルキルニトリル類が挙げられる。
【0021】
反応は−20℃〜150℃の温度で行われる。好ましい温度範囲は0℃〜80℃である。
【0022】
生成物はシリカゲルクロマトグラフィーまたは分留などの従来の技法を用いて単離される。
【0023】
典型的な反応では、置換エノン(II)およびエナミン(III)を−5℃〜20℃で、極性溶媒に溶解し、置換エノン(II)およびエナミン(III)が消費されるまで振とうする。次いで、ステップb)で、有機酸のアンモニウム塩を添加し、反応が完了するまで、混合物を50℃〜150℃で加熱する。非水混和性溶媒に溶解し、水および任意選択で塩水で洗浄した後、2,3,5−置換ピリジン(IV)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーまたは真空蒸留により単離する。
【0024】
ステップc)では、塩基、好ましくは水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物を使って、テトラヒドロフラン等の水混和性の極性溶媒の中で、0℃〜50℃で、よく知られた手順により、2,3,5−置換ピリジン(IV)を鹸化する。得られたピリジンカルボン酸塩を中和した後、例えば、ダウサムA(The Dow Chemical Companyから入手可能)等の高沸点溶媒中で、場合によっては、銅粉を使って、150℃〜250℃の温度で加熱する等のよく知られた手順により、脱カルボキシル化し、2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン(I)を得、これはシリカゲルクロマトグラフィーまたは真空蒸留などの従来法を用いて単離できる。
【0025】
以下の実施例は、本発明を説明するために提示するものである。
実施例
【実施例1】
【0026】
5−(1−メチルチオエチル)−2−トリフルオロメチルピリジンの調製
【0027】
【化10】

【0028】
ステップ1 1−(3−メチルチオブテ−1−エニル)ピロリジンの調製
【0029】
【化11】

【0030】
機械攪拌機、窒素導入口、添加漏斗および温度計を備え、乾燥した5000ミリリットル(mL)の丸底フラスコに、乾燥した粒状炭酸カリウム591g(4.27mol)および無水ピロリジン1428ml(17.1mol)を充填した。混合物を窒素雰囲気下で攪拌し、氷浴で4℃に冷却し、その後、温度を10℃未満に維持する速度で3−メチルチオブチルアルデヒド1050ml(8.9mol)を添加した。添加を完了したとき、冷却浴を除去し、反応物が室温に到達できるようにした。次いで反応内容物を焼結ガラス製フィルター漏斗で濾過し、固体を除去し、固体を無水エチルエーテル200mlで洗浄した。濾液をロータリエバポレーターで真空下で濃縮し、ピロリジンをすべて除去し、赤色の液体として1−(3−メチルチオブテ−1−エニル)ピロリジン1,519gを得た。1H NMR CDCl3δ1.36(d,3H)、1.85(m,4H)、2.02(s,3H)、3.02(m,4H)、3.26(q,1H)、3.98(dd,1H)、6.25(d,1H)。
【0031】
ステップ2 5−(1−メチルチオエチル)−2−トリフルオロメチル−ニコチン酸エチルエステルの調製
【0032】
【化12】

【0033】
磁気攪拌機、窒素導入口、添加漏斗および温度計を備え、乾燥した50mLの丸底フラスコに、1−(3−メチルチオブテ−1−エニル)ピロリジン(5.0g、0.0291mol)および乾燥したアセトニトリル100mLを充填した。2−[1−エトキシメチリデン]−4,4,4−トリフルオロ−3−オキソ酪酸エチルエステル(7.0g、0.0291mol)を滴下で添加し、室温で1時間、反応物を攪拌した。一定分量をガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、残存している出発物質がないことが示された。暗赤色の溶液に、酢酸アンモニウム(5.0g、0.058mol)を添加し、反応物を30分間加熱還流した。ロータリエバポレーターで真空下で冷却および濃縮し、この粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、5%酢酸エチル、95%ヘキサンから50%酢酸エチル、50%ヘキサンの勾配を付けて、20分かけて精製し、薄黄色の油として表題化合物2.5gを得た。1H NMR(CDCl3):δ1.42(t,3H)、1.62(d,3H)、1.96(s,3H)、3.94(q,1H)、4.43(q,2H)、8.08(s,1H)、および8.71(s,1H)。
【0034】
ステップ3 5−(1−メチルチオエチル)−2−トリフルオロメチルニコチン酸の調製
【0035】
【化13】

【0036】
磁気攪拌機および窒素導入口を備え、乾燥した50mLのガラスバイアルに、5−(1−メチルチオエチル)−2−トリフルオロメチルニコチン酸エチルエステル0.5g(0.00170mol)およびテトラヒドロフラン(THF)10mLを充填した。溶液を0℃に冷却し、5.1mLの1N水酸化リチウム水溶液(0.00511mol)をシリンジでゆっくりと添加した。反応物を0℃で1時間攪拌した後、周囲温度で一晩攪拌した。一定分量を薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、反応が基本的に完了したことが示された。この混合物を1Mの塩酸水溶液でpH=2に酸性化し、酢酸エチル50mLの3分量で抽出した。抽出物を無水硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥、濾過し、ロータリエバポレーターで真空下で濃縮し、黄褐色の固体として表題化合物0.410gを得た。1H NMR(CDCl3):δ1.66(d,3H)、1.96(s,3H)、3.98(q,1H)、8.01(bs,1H)、8.30(s,1H)、および8.80(s,1H)。
【0037】
ステップ4 5−(1−メチルチオエチル)−2−トリフルオロメチルピリジンの調製
【0038】
【化14】

【0039】
磁気攪拌機、窒素導入口、温度計および還流冷却器を備え、乾燥した50mLの丸底フラスコに、5−(1−メチルチオエチル)−2−トリフルオロメチルニコチン酸0.35g(0.00132mol)、銅粉0.17g(0.00264mol)およびダウサムA10mLを充填した。反応物を240℃で1時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物を酢酸エチル50mLの3等分の分量で抽出し、水50mLおよび飽和塩化ナトリウム水溶液50mLで洗浄した。有機抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、ロータリエバポレーターで真空下で濃縮した。こうして得た粗製生成物に対し、100%ヘキサンから50%酢酸エチル、50%ヘキサンの勾配を付けて、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行った。純粋な分画を合わせて、ロータリエバポレーターで真空下で濃縮し、薄黄色の油として表題化合物0.13gを得た。1H NMR(CDCl3):δ1.62(d,3H)、1.94(s,3H)、3.93(q,1H)、7.68(d,1H)、7.90(d,1H)、および8.66(s,1H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−置換−5−(1−アルキルチオ)−アルキルピリジン(I)
【化15】

(式中、RおよびRは、独立にH、C〜Cアルキルを表すか、RまたはRの一方がRと一緒になって4〜6員の飽和環を表すか、あるいはRがRと一緒になって、場合によりOまたはN原子によって置換された3〜6員の飽和環を表し、
はC〜Cアルキルを表すか、あるいはRはRまたはRの一方と一緒になって4〜6員の飽和環を表し、
はC〜CアルキルまたはC〜Cハロアルキルを表す。)
の調製方法であって、
a)置換エノン(II)
【化16】

(式中、Rは、前記の定義に倣い、
およびRは、独立にC〜Cアルキルを表す。)
をエナミン(III)
【化17】

(式中、R、RおよびRは、前記の定義に倣い、
およびRは、独立にC〜Cアルキルを表すか、あるいはRおよびRは、Nと一緒になって飽和または不飽和の5員環を表す。)
と縮合すること;
b)2,3,5−置換ピリジン(IV)
【化18】

(式中、R、R、R、RおよびRは、前記の定義に倣う。)
を製造するために、アンモニアまたはアンモニアを生成できる試薬の存在下で、ステップa)からの反応混合物を環化すること;および
c)2−置換−5−(1−アルキルチオ)アルキルピリジン(I)を得るために、前記2,3,5−置換ピリジン(IV)を鹸化し、脱カルボキシル化すること;
を含む方法。
【請求項2】
がCFを表す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がH原子を表し、RがCHを表し、RがCHを表す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(IV)
【化19】

(式中、RおよびRは、独立にH、C〜Cアルキルを表すか、RまたはRの一方がRと一緒になって4〜6員の飽和環を表すか、あるいはRがRと一緒になって、場合によりOまたはN原子によって置換された3〜6員の飽和環を表し、
はC〜Cアルキルを表すか、あるいはRはRまたはRの一方と一緒になって4〜6員の飽和環を表し、
はC〜CアルキルまたはC〜Cハロアルキルを表し、
はHまたはC〜Cアルキルを表す。)の化合物。
【請求項5】
がCFを表す請求項4に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−518077(P2010−518077A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549057(P2009−549057)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003779
【国際公開番号】WO2008/097234
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】