説明

2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法

【課題】2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物を製造できる新たな方法を提供すること。
【解決手段】有機酸と有機酸塩との存在下、下式(1)で示される化合物を加水分解する工程を有することを特徴とする式(2)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法。


(式中、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド等の2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物は、例えば、農業用殺菌剤の製造中間体として有用であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒドの製造方法として、例えば、特許文献2には以下の方法が記載されている。まず、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドとナトリウムメトキシドとを反応させた後、生成したアセタール化合物をキシレンで抽出する。次いで、分液後に得られた有機層を硫酸水溶液と混合することによりアセタール化合物を加水分解し、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−95462号公報
【特許文献2】特開2009−215286号公報(実施例5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物を製造できる新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 有機酸と有機酸塩との存在下、式(1)
【0008】
【化1】

(式中、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
で示される化合物を加水分解する工程を有することを特徴とする式(2)

(式中、Q、Q、Q、Q及びArはそれぞれ上記で定義した通り。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法。
〔2〕 前記工程が、さらに相間移動触媒の存在下、前記式(1)で示される化合物を加水分解する工程である前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 前記有機酸が炭素数2〜6のカルボン酸であり、前記有機酸塩が炭素数2〜6のカルボン酸のアルカリ金属塩である前記〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物を製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
式(1)において、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。X及びXは、好ましくは同一の原子であり、経済性の点でより好ましくは共に塩素原子である。
【0012】
式(1)及び式(2)において、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。Q、Q、Q及びQで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。Q、Q、Q及びQは、好ましくは水素原子である。
【0013】
式(1)及び(2)において、Arは、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。フェニル基が有する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;フッ素原子及び塩素原子等のハロゲン原子が例示される。フェニル基が置換基を有する場合、その置換基の数は限定されず、好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1個又は2個であり、さらに好ましくは2個である。
【0014】
Arで表される置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、
【0015】
2−(n−プロピル)フェニル基、3−(n−プロピル)フェニル基、4−(n−プロピル)フェニル基、2,4−ジ(n−プロピル)フェニル基、2,5−ジ(n−プロピル)フェニル基、2,6−ジプロピルフェニル基、2,4,6−トリ(n−プロピル)フェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−イソプロピルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2−(n−ブチル)フェニル基、3−(n−ブチル)フェニル基、4−(n−ブチル)フェニル基、2,4−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,5−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,6−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,4,6−トリ(n−ブチル)フェニル基、
【0016】
2−イソブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、2,4−ジイソブチルフェニル基、2,5−ジイソブチルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4,6−トリイソブチルフェニル基、2−(tert−ブチル)フェニル基、3−(tert−ブチル)フェニル基、4−(tert−ブチル)フェニル基、2,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,4−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,6−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,4,6−トリ−(tert−ブチル)フェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基及びペンタクロロフェニル基が挙げられる。
【0017】
Arで表される置換基を有していてもよいフェニル基は、好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基又は2,5−ジメチルフェニル基であり、より好ましくは2−メチルフェニル基又は2,5−ジメチルフェニル基であり、さらに好ましくは2,5−ジメチルフェニル基である。
【0018】
本発明の製造方法は、有機酸と有機酸塩との存在下、式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)を加水分解する工程を有することを特徴とする。以下、有機酸と有機酸塩との存在下、化合物(1)を加水分解する工程を本反応と記すことがある。本反応により、化合物(1)は、式(2)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物(以下、化合物(2)と記すことがある)に変換される。
【0019】
本反応に用いられる化合物(1)としては、例えば、2−(フェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(4−メチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(4−イソプロピルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,4,6−トリメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(3,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、
【0020】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−6−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−6−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、
【0021】
2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−6−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルブロミド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルヨージド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンザルブロミド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンザルブロミド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−ブロモベンザルブロミド及び2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンザルヨージドが挙げられる。
【0022】
化合物(1)は、好ましくは、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドである。
【0023】
化合物(1)は、例えば、式(3)

(式中、X、X、Q、Q、Q及びQはそれぞれ上記で定義した通りであり、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(3)と記すことがある)と、式(4)

(式中、Arは上記で定義した通り。)
で示される化合物(以下、化合物(4)と記すことがある)とを塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0024】
化合物(1)の製造に用いられる化合物(3)としては、例えば、2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)ベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)ベンザルヨージド、3−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、4−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、4−ブロモ−(ブロモメチル)ベンザルブロミド、4−ヨード−2−(ヨードメチル)ベンザルヨージド、5−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、5−ブロモ−(ブロモメチル)ベンザルブロミド、5−ヨード−2−(ヨードメチル)ベンザルヨージド及び6−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリドが挙げられる。入手性の点から2−(クロロメチル)ベンザルクロリドが好ましい。化合物(3)は、市販のもであってもよく、例えば、オルトキシレン化合物を、ラジカル開始剤の存在下あるいは光照射下において、ハロゲンを反応させる方法(例えば特開2006−335737号公報参照)等の方法に準じて製造したものであってもよい。
【0025】
化合物(1)の製造に用いられる化合物(4)としては、例えば、フェノール、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−メチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2、5−ジイソプロピルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール及び2,4,6−トリフルオロフェノールが挙げられる。なかでも、2,5−ジメチルフェノールが好ましい。化合物(4)は、市販のものであってもよく、例えば、J.Am.Chem.Soc.,128,10694(2006)、Tetrahedron Letters,30,5215(1989)、特開2002−3426号公報等に記載される方法に準じて製造したものであってもよい。
【0026】
化合物(3)の使用量及び化合物(4)の使用量は特に限定されず、いずれか一方を、他方1モルに対して10モル以上用いてもよい。化合物(3)1モルに対する化合物(4)の使用量は、例えば0.1モル〜10モルの範囲であり、好ましくは1モル〜3モルの範囲である。
【0027】
化合物(1)の製造に用いられる塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の三級アミン;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等の水素化アルカリ金属化合物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸アルカリ金属化合物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等の炭酸水素アルカリ金属化合物;等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。かかる塩基は、例えば、市販のものをそのまま用いることができる。また、水や後述する溶媒で希釈して用いてもよく、濃縮して用いてもよい。塩基の使用量は、化合物(3)及び化合物(4)のうち、使用量が少ない方1モルに対して、例えば1モル以上であり、好ましくは1モル〜3モルの範囲である。
【0028】
化合物(3)と化合物(4)との反応は、溶媒の存在下で行うことができる。かかる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;tert−ブチルメチルケトン等のケトン溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;水;等が挙げられる。これら溶媒は、単独であってもよくし、二種以上であってもよい。水と芳香族溶媒とを用いることが好ましく、水とトルエンとを用いることがより好ましい。溶媒の使用量は特に限定されないが、経済性の観点から、化合物(3)1重量部に対して、例えば100重量部以下である。
【0029】
化合物(3)と化合物(4)との反応は、相間移動触媒の存在下に行われることが好ましい。かかる相間移動触媒としては、例えば、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;臭化トリフェニルホスフィン等のホスホニウム塩;18−クラウン−6、ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物;等が挙げられる。なかでも、四級アンモニウム塩が好ましく、臭化テトラn−ブチルアンモニウムがより好ましい。相間移動触媒の使用量は、化合物(3)及び化合物(4)のうち、使用量が少ない方1モルに対し、例えば0.01モル以上であり、好ましくは0.05モル〜1モルの範囲である。
【0030】
化合物(3)と化合物(4)との反応は、ヨウ素化合物の存在下で行うことにより、該反応をスムーズに進行させることができる。かかるヨウ素化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム等のアルカリ金属ヨウ化物や、ヨウ素等が挙げられる。ヨウ素化合物は、アルカリ金属ヨウ化物が好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。ヨウ素化合物は、市販のものであってもよく、任意の公知の方法により製造したものであってもよい。ヨウ素化合物の使用量は、化合物(3)及び化合物(4)のうち、使用量が少ない方1モルに対し、例えば0.01モル以上であり、好ましくは0.05モル〜1モルの範囲である。
【0031】
化合物(3)と化合物(4)との反応における反応温度は、例えば−5℃以上、溶媒の沸点以下の範囲から選択され、好ましくは10℃〜100℃の範囲から選択され、より好ましくは50℃〜90℃の範囲から選択される。かかる反応は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。かかる反応の進行度合いは、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により、確認することができる。
【0032】
化合物(3)と化合物(4)との反応は、化合物(3)と化合物(4)と塩基とを混合することにより行うことができ、それらの混合順序は特に限定されない。例えば、化合物(3)、化合物(4)及び塩基を混合した後に、得られた混合物を所定の反応温度に調整する方法;所定の反応温度条件下で化合物(3)、化合物(4)及び塩基を混合する方法;所定の反応温度に調整した化合物(3)と化合物(4)とを含む混合物中に、塩基を加える方法;所定の反応温度に調整した化合物(3)と塩基とを含む混合物中に、化合物(4)を加える方法;所定の反応温度に調整した化合物(4)と塩基とを含む混合物を、化合物(3)に加える方法等が挙げられる。なかでも、所定の反応温度に化合物(4)と塩基とを含む混合物を、化合物(3)に加える方法が好ましい。
【0033】
化合物(3)と化合物(4)との反応後、化合物(1)が得られる。化合物(1)を、そのまま本反応に供してもよく、後処理した後に本反応に供してもよい。かかる後処理としては、例えば、中和処理、分液処理等が挙げられる。後処理により得られた混合物を、そのまま本反応に供してもよく、例えば、濃縮、晶析、濾過等の手段により化合物(1)を単離してから本反応に供してもよい。また、単離された化合物(1)を、さらに再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の精製手段により精製してから本反応に供してもよい。
【0034】
本反応に用いられる有機酸としては、例えば、有機スルホン酸及びカルボン酸が挙げられる。有機スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族有機スルホン酸;並びにベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸が挙げられる。カルボン酸としては、メタン酸(ギ酸)、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)及びオクタン酸(カプリル酸)等の脂肪族カルボン酸;並びにベンゼンカルボン酸(安息香酸)等の芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、好ましくはカルボン酸であり、より好ましくは炭素数2〜6のカルボン酸であり、さらに好ましくは酢酸である。有機酸の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは1〜20モルの範囲であり、より好ましくは5〜10モルの範囲である。
【0035】
本反応に用いられる有機酸塩としては、例えば、有機スルホン酸のアルカリ金属塩、有機スルホン酸のアルカリ土類金属塩、カルボン酸のアルカリ金属塩及びカルボン酸のアルカリ土類金属塩が挙げられる。有機スルホン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、上述した有機スルホン酸のリチウム塩、上述した有機スルホン酸のナトリウム塩及び上述した有機スルホン酸のカリウム塩が挙げられ、有機スルホン酸のアルカリ土類金属塩としては、例えば、上述した有機スルホン酸のカルシウム塩及び上述した有機スルホン酸のマグネシウム塩が挙げられ、カルボン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、上述したカルボン酸のリチウム塩、上述したカルボン酸のナトリウム塩、上述したカルボン酸のカリウム塩及び上述したカルボン酸のセシウム塩が挙げられる。有機酸塩は、好ましくはカルボン酸のアルカリ金属塩及びカルボン酸のアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくは炭素数2〜6のカルボン酸のアルカリ金属塩であり、さらに好ましくは酢酸のアルカリ金属塩である。有機酸塩は、市販のものであってもよく、有機酸と塩基とから調製したものであってもよい。かかる塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム及び炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;並びに炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。有機酸塩の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは1〜10モルの範囲であり、より好ましくは1〜5モルの範囲である。
【0036】
本反応は、水の存在下で行われる。水の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、その上限は制限されない。水の使用量は、化合物(1)1モルに対して、より好ましくは1〜5モルの範囲である。水の使用量が化合物(1)1モルに対して1モル未満である場合、化合物(1)の収率が低下する傾向にある。
【0037】
本反応は、有機溶媒の非存在下で行ってもよく、有機溶媒の存在下で行ってもよいが、本反応は、好ましくは有機溶媒の非存在下で行われる。本反応を有機溶媒の存在下で行う場合、かかる有機溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;tert−ブチルメチルケトン等のケトン溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独であってもよくし、二種以上であってもよい。有機溶媒を用いる場合、その使用量は制限されず、本反応の容積効率を向上させる点で、化合物(3)1重量部に対して、例えば100重量部以下である。
【0038】
本反応は、好ましくは相間移動触媒の存在下で行われる。相間移動触媒としては、例えば、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム及び塩化トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;臭化トリフェニルホスフィン等のホスホニウム塩;並びに18−クラウン−6及びポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物が挙げられる。相間移動触媒は、好ましくは、四級アンモニウム塩であり、より好ましくは臭化テトラn−ブチルアンモニウムがより好ましい。相間移動触媒の使用量は、化合物(1)1モルに対し、例えば0.001モル以上であり、好ましくは0.001〜0.1モルの範囲であり、より好ましくは0.001〜0.05モルの範囲である。
【0039】
本反応における反応温度は、例えば40℃〜150℃の範囲から選択され、好ましくは100℃〜140℃の範囲から選択される。本反応は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
【0040】
本反応は、化合物(1)と、有機酸と、有機酸塩と、水と、必要に応じて相間移動触媒と、必要に応じて有機溶媒とを、所定の反応温度で混合することにより行うことができ、混合順序は制限されない。本反応は具体的には、例えば、有機酸と、有機酸塩と、水と、必要に応じて相間移動触媒と、必要に応じて有機溶媒とを混合した後に所定の反応温度に調整することにより行うこともできるし、有機酸と、有機塩基と、水と、必要に応じて相間移動触媒と、必要に応じて有機溶媒とを混合し、所定の温度に調整した後に、そこへ、必要に応じて有機溶媒で希釈した化合物(1)を加えることにより行うこともできるし、化合物(1)と、有機塩基と、水と、必要に応じて相間移動触媒と、必要に応じて有機溶媒とを混合し、所定の温度に調整した後に、そこへ必要に応じて有機溶媒で希釈した有機酸を加えることにより行うこともできるし、化合物(1)と、水と、必要に応じて相間移動触媒と、必要に応じて有機溶媒とを混合し、所定の温度に調整した後に、そこへ、必要に応じて有機溶媒で希釈した有機酸と有機塩基との混合物を加えることにより行うこともできるし、化合物(1)と、有機酸と、有機塩基と、必要に応じて相間移動触媒と、必要に応じて有機溶媒とを混合し、所定の温度に調整した後に。そこへ水を加えることにより行うこともできる。
【0041】
本反応の進行度合いは、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により、確認することができる
【0042】
本反応後、化合物(1)が加水分解され、化合物(2)が得られる。本反応後に得られる化合物(2)を、例えば、必要に応じて水に非混和性の有機溶媒と混合し、必要に応じて中和処理し、分液処理、濃縮処理等を行うことにより、化合物(2)を単離することができる。水に非混和性の有機溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル溶媒が挙げられる。単離した化合物(2)は、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の精製手段により精製することができる。
【0043】
かくして得られる化合物(2)としては、例えば、2−(フェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4,6−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(3,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、
【0044】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、
【0045】
2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0047】
<製造例1> 2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの製造
500mLフラスコに、2,5−ジメチルフェノール84.3g(0.69mol)と20重量%水酸化ナトリウム水溶液147.7g(0.74mol)とを仕込み、得られた混合物を80℃まで昇温し、同温度で3時間攪拌した後、60℃まで冷却した。別の500mLフラスコに2−(クロロメチル)ベンザルクロリド125.7g(0.60mol)と臭化テトラn−ブチルアンモニウム9.7g(0.03mol)とを仕込み、フラスコ内容物を60℃まで昇温した。該フラスコ内容物の内温を60℃に保ちながら、そこに、上記の2,5−ジメチルフェノールと20重量%水酸化ナトリウム水溶液とから調製した混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物の内温を60℃に保ちながら、当該混合物を5時間攪拌した。得られた反応混合物を60℃にて分液処理し、有機層を取得した。該有機層を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの含量は94.8重量%であった。
【0048】
<実施例1>
1000mLフラスコに、酢酸270.2g(4.50mol)、酢酸ナトリウム108.3g(1.32mol)、水13.0g(0.72mol)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム0.5g(0.002mol)及び製造例1で得た有機層192.6g(2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの含量:94.8重量%)を60℃で仕込み、得られた混合物を120℃に加熱し、8時間攪拌した。その後、得られた混合物を80℃に冷却し、そこに、水325gとキシレン325gとを加えて、60℃にて分液処理した。得られた有機層を減圧濃縮することにより、該有機層からキシレンを留去し、残渣を冷却することにより固形物143.5gを得た。該固形物を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの含量は81.3重量%であった。
収率:80.9%(2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド基準)
【産業上の利用可能性】
【0049】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド等の2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物は、例えば、農業用殺菌剤の製造中間体として有用であることが知られている。本発明は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法として産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸と有機酸塩との存在下、式(1)

(式中、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、Arは置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
で示される化合物を加水分解する工程を有することを特徴とする式(2)

(式中、Q、Q、Q、Q及びArはそれぞれ上記で定義した通り。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程が、さらに相間移動触媒の存在下、前記式(1)で示される化合物を加水分解する工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機酸が炭素数2〜6のカルボン酸であり、前記有機酸塩が炭素数2〜6のカルボン酸のアルカリ金属塩である請求項1又は2記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−10709(P2013−10709A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143888(P2011−143888)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】