説明

2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法

【課題】2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の新たな製造方法等を提供すること。
【解決手段】下式(1)で示される化合物を加水分解する工程(A);並びに工程(A)で得られた式(2)で示される化合物と、式(3)で示される化合物又はその塩とを反応させる工程(B)を有することを特徴とする式(4)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法。


(式中、X、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、Arは、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド等の2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物は、例えば、農業用殺菌剤の製造中間体として有用である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法として、例えば、特許文献2には、2,5−ジメチルフェノールと2−(クロロメチル)ベンザルクロリドとを反応させ、得られた2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドとナトリウムメトキシドとを反応させてジメチルアセタールとした後、このジメチルアセタールを硫酸水溶液と混合することにより、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドを得る方法が記載されている。また、特許文献3には、2,5−ジメチルフェノールと2−(クロロメチル)ベンザルクロリドとを反応させ、得られた2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドとエチレングリコールとを炭酸カルシウムの存在下に反応させて環状アセタールとした後、この環状アセタールを濃塩酸と混合することにより、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−95462号公報
【特許文献2】特開2009−215286号公報
【特許文献3】特開2009−298746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の新たな製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕 式(1)
【0009】
【化1】

(式中、X、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。)
で示される化合物を加水分解する工程(A);
並びに
工程(A)で得られた式(2)
【0010】
【化2】

(式中、X、Q、Q、Q及びQはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される化合物と、式(3)
【0011】
【化3】

(式中、Arは、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
で示される化合物又はその塩とを反応させる工程(B)
を有することを特徴とする式(4)
【0012】
【化4】

(式中、Ar、Q、Q、Q及びQはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法。
〔2〕 工程(A)が、硫酸の存在下、式(1)で示される化合物を加水分解する工程である前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 工程(A)が、式(1)で示される化合物と、84.5質量%以上の硫酸とを混合し、得られた混合物と、水とをさらに混合することにより行われる前記〔1〕記載の製造方法。
〔4〕 工程(B)を行う前に、工程(A)で得られた式(2)で示される化合物を中和する前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の製造方法。
〔5〕 工程(B)を行う前に、工程(A)で得られた式(2)で示される化合物と、重合禁止剤及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種とを混合する前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の製造方法。
〔6〕 工程(B)が、相間移動触媒の存在下で、工程(A)で得られた式(2)で示される化合物と、式(3)で示される化合物又はその塩とを反応させる工程である前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の新たな製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
式(1)、(2)及び(4)において、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表わす。Q、Q、Q及びQで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。Q、Q、Q及びQは、好ましくは水素原子である。
【0016】
式(1)において、X、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。X及びXは、好ましくは同一の原子であり、X、X及びXは、経済性の面から好ましくはいずれも塩素原子である。式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、好ましくは塩素原子である。
【0017】
式(3)及び(4)において、Arは、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。フェニル基が有する置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;フッ素原子及び塩素原子等のハロゲン原子が例示される。フェニル基が置換基を有する場合、その置換基の数は限定されず、好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1個又は2個であり、さらに好ましくは2個である。
【0018】
置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、
【0019】
2−(n−プロピル)フェニル基、3−(n−プロピル)フェニル基、4−(n−プロピル)フェニル基、2,4−ジ(n−プロピル)フェニル基、2,5−ジ(n−プロピル)フェニル基、2,6−ジプロピルフェニル基、2,4,6−トリ(n−プロピル)フェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−イソプロピルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2−(n−ブチル)フェニル基、3−(n−ブチル)フェニル基、4−(n−ブチル)フェニル基、2,4−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,5−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,6−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,4,6−トリ(n−ブチル)フェニル基、
【0020】
2−イソブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、2,4−ジイソブチルフェニル基、2,5−ジイソブチルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4,6−トリイソブチルフェニル基、2−(tert−ブチル)フェニル基、3−(tert−ブチル)フェニル基、4−(tert−ブチル)フェニル基、2,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,4−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,6−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,4,6−トリ−(tert−ブチル)フェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基及びペンタクロロフェニル基が挙げられる。
【0021】
Arで表される置換基を有していてもよいフェニル基は、好ましくは、フェニル基、2−メチルフェニル基又は2,5−ジメチルフェニル基であり、より好ましくは2−メチルフェニル基又は2,5−ジメチルフェニル基であり、さらに好ましくは2,5−ジメチルフェニル基である。
【0022】
本発明は、式(1)で示される化合物(以下、「化合物(1)」と記すことがある)を加水分解する工程(A)、並びに、工程(A)で得られた式(2)で示される化合物(以下、「化合物(2)」と記すことがある)と、式(3)で示される化合物又はその塩(以下、「化合物(3)」と記すことがある)とを反応させる工程(B)を有することを特徴とする。工程(A)並びに工程(B)を行うことにより、式(4)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物(以下、「化合物(4)」と記すことがある)が製造される。
まず、工程(A)について説明する。
【0023】
工程(A)に用いられる化合物(1)としては、例えば、2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)ベンザルクロリド、2−(ヨードメチル)ベンザルクロリド、2−(クロロメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(ヨードメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(クロロメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(ヨードメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(クロロメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(ヨードメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(クロロメチル)−6−クロロベンザルクロリド、
【0024】
2−(ブロモメチル)−6−クロロベンザルクロリド、2−(ヨードメチル)−6−クロロベンザルクロリド、2−(クロロメチル)−4−ブロモベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)−4−ブロモベンザルクロリド、2−(ヨードメチル)−4−ブロモベンザルクロリド、2−(クロロメチル)−4−ヨードベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)−4−ヨードベンザルクロリド、2−(ヨードメチル)−4−ヨードベンザルクロリド、2−(クロロメチル)ベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)ベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)ベンザルブロミド、2−(クロロメチル)−3−クロロベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)−3−クロロベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)−3−クロロベンザルブロミド、
【0025】
2−(クロロメチル)−4−クロロベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)−4−クロロベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)−4−クロロベンザルブロミド、2−(クロロメチル)−5−クロロベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)−5−クロロベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)−5−クロロベンザルブロミド、2−(クロロメチル)−6−クロロベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)−6−クロロベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)−6−クロロベンザルブロミド、2−(クロロメチル)−4−ブロモベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)−4−ブロモベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)−4−ブロモベンザルブロミド、2−(クロロメチル)−4−ヨードベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)−4−ヨードベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)−4−ヨードベンザルブロミド、
【0026】
2−(クロロメチル)ベンザルヨージド、2−(ブロモメチル)ベンザルヨージド、2−(ヨードメチル)ベンザルヨージド、2−(クロロメチル)−3−クロロベンザルヨージド、2−(ブロモメチル)−3−クロロベンザルヨージド、2−(ヨードメチル)−3−クロロベンザルヨージド、2−(クロロメチル)−4−クロロベンザルヨージド、2−(ブロモメチル)−4−クロロベンザルヨージド、2−(ヨードメチル)−4−クロロベンザルヨージド、2−(クロロメチル)−5−クロロベンザルヨージド、2−(ブロモメチル)−5−クロロベンザルヨージド、2−(ヨードメチル)−5−クロロベンザルヨージド、2−(クロロメチル)−6−クロロベンザルヨージド、2−(ブロモメチル)−6−クロロベンザルヨージド、2−(ヨードメチル)−6−クロロベンザルヨージド、2−(クロロメチル)−4−ブロモベンザルヨージド、2−(ブロモメチル)−4−ブロモベンザルヨージド、2−(ヨードメチル)−4−ブロモベンザルヨージド、2−(クロロメチル)−4−ヨードベンザルヨージド、2−(ブロモメチル)−4−ヨードベンザルヨージド及び2−(ヨードメチル)−4−ヨードベンザルヨージドが挙げられる。
【0027】
化合物(1)は、好ましくは、2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、2−(クロロメチル)ベンザルブロミド、2−(ブロモメチル)ベンザルクロリド又は2−(ブロモメチル)ベンザルブロミドであり、より好ましくは2−(クロロメチル)ベンザルクロリドである。
【0028】
化合物(1)は、市販のものであってもよく、例えば、特開2006−335737号公報等に記載される方法に準じて製造されたものであってもよい。
【0029】
加水分解は、有機溶媒の存在下又は有機溶媒の非存在下で行われ、好ましくは有機溶媒の非存在下で行われる。
【0030】
工程(A)は、好ましくは、硫酸の存在下で行われ、具体的には例えば、化合物(1)と、84.5質量%以上の硫酸とを混合し、得られた混合物と、水とをさらに混合することにより行われる。本発明では、化合物(1)と、84.5質量%以上の硫酸とを混合することを「工程A−1」と記すことがある。また、工程(A−1)を経て得られた混合物と、水とをさらに混合することを、「工程A−2」と記すことがある。本発明において「水」とは、特に断らない限り水および水性媒体(水に可溶な物質を水中に溶解した水溶液)を含む意味を示す。
【0031】
工程(A−1)で用いられる硫酸の濃度は、より好ましくは85%質量以上、96質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上、96質量%以下である。硫酸の量は、化合物(1)1モルに対して1モル以上であることが好ましく、2モル以上であることがより好ましい。硫酸の量の上限はないが、化合物(1)1モルに対して4モル以下であることが実際的である。硫酸の量が、化合物(1)1モルに対して1モル以上であると、化合物(1)と硫酸との反応が円滑に進行する点で好ましい。
【0032】
工程(A−1)における反応温度としては、特に限定されるものではないが、15℃以上の温度では反応の速度が十分に維持され好ましい。この反応温度は、生成した化合物(2)の安定性の点で、25℃以下であることが好ましい。反応時間に特に制約はないが、工業的な生産において現実的な範囲を考慮すれば、15時間以下であることが好ましく、8時間以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、3時間以上であることが実際的である。
【0033】
工程(A−1)を実施する方法に制限はないが、好ましくは、上記濃度の硫酸中に好ましくは滴下する方法により行われる。また、反応初期に誘導期が見られることから、化合物(1)の一部を滴下し、化合物(1)と84.5質量%以上の硫酸との反応が始まるのを確認した後、残りの化合物(1)を加える方法を採用することもできる。
【0034】
本実態様においては、工程(A−1)に用いられる硫酸が、化合物(1)1モルに対して1モル未満の水を含む場合であっても、工程(A−2)において、工程(A−1)を経て得られた混合物と、水とをさらに混合することにより加水分解反応を完結することができる。すなわち、加水分解反応は工程(A−1)で進むものであっても、工程(A−2)を経て完結するものであってもよい。工程(A−1)に用いられる硫酸は、化合物(1)1モルに対して0.4モル以上の水を含むことが好ましく、0.8モル以上の水を含むことがより好ましく、1モル以上の水を含むことがより一層好ましい。硫酸に含まれる水量の上限は特にないが、化合物(1)1モルに対して、2モル以下であることが実際的である。
【0035】
工程(A−1)で得られた混合物は、反応液内で均一に混合した状態で存在しているが、その混合物と水とをさらに混合する工程(A−2)を行うことにより、化合物(2)を得ることができ、また、化合物(2)を含む有機化合物成分を有機層として回収することにより、該有機化合物成分と、水及びそこに溶解した成分とを含む水層とを分離することができる。ここで、前記有機化合物成分には、原料化合物である化合物(1)と、生成物である化合物(2)とが共存している場合がある。両有機化合物成分の分離は通常容易ではなく、化合物(2)が分解しやすい化合物であるため、加熱による精製処理等を行うことは実際的ではない。換言すれば、上記化合物(2)の生成反応の段階において、高収率で化合物(2)を生成させることが重要である。
【0036】
工程(A−2)で使用する水の量は、工程(A−2)を経て得られる混合物中の硫酸濃度が70質量%以下になるように加えることが、得られる有機層と水層との分液を良好に行い、化合物(2)を単離する点で好ましい。水の使用量の上限はないが、必要以上に用いることは経済性において不利となる。水を加える温度は、化合物(2)の安定性を考慮して、30℃以下で行うことが好まく、水の凝固点を考慮すると5℃以上30℃以下の範囲内で、より低い温度がさらに好ましい。有機層と水層とを分液する場合、その温度は、分液性の点で、好ましくは15℃〜30℃の範囲である。
【0037】
化合物(2)を単離及び/又は精製する際、水との分離性を向上させるために、水に非混和性の有機溶媒を用いることができる。かかる有機溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン及びベンゼン等の芳香族溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。有機溶媒は、好ましくは、芳香族溶媒であり、より好ましくは、キシレン又はトルエンである。有機溶媒の使用量は特に制限されず、経済性の観点から、化合物(2)1重量部に対して、例えば20重量部以下である。化合物(2)を単離及び/又は精製する際に有機溶媒を用いた場合、化合物(2)は有機溶媒の溶液として得られる。かかる有機溶媒の溶液は、必要に応じて濃縮処理に付されてもよい。
【0038】
回収された有機層に含まれる化合物(2)は、その収率が高く、高い濃度の化合物(2)を工程(B)に提供することができる。本実施態様においては、化合物(2)の濃度[η化合物(2)]、つまり化合物(1)のモル量[M化合物(1)]と化合物(2)のモル量[M化合物(2)]との総量に対する化合物(2)のモル量[M化合物(2)]の比率[η化合物(2)]=[M化合物(2)]/([M化合物(2)]+[M化合物(1)])を高くすることが好ましい。化合物(2)濃度[η化合物(2)]を、95%以上とすることが好ましく、98%以上とすることがより好ましい。上限は特にないが、例えば工程(A)における反応時間を延長することを考慮すれば、100%以下として規定することも可能である。このように高い濃度の化合物(2)を得ることにより、化合物(1)を少量に抑えた良質の原料とすることができる。
【0039】
工程(A)で得られた化合物(2)は、工程(B)を行う前に、好ましくは中和される。中和は、化合物(2)又は化合物(2)を含む混合物と、アルカリ性の水溶液(好ましくはアルカリ緩衝剤を含む水溶液)とを混合することにより行われる。このとき、化合物(2)又は化合物(2)を含む混合物のpHを測定し、pH6〜8に調整することが好ましい。中和に用いられるアルカリの種類に制限はないが、リン酸水素二ナトリウム等の緩衝効果を有するアルカリ性pH調整剤を用いることが好ましい。なお、本発明においてpHとは特に断らない限り実施例で示した方法で測定した値をいう。
【0040】
さらに、工程(B)を行う前に、好ましくは、工程(A)で得られた化合物(2)と、重合禁止剤及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、安定剤と記すことがある)とを混合する。安定剤としては、たとえば、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(以下、BHTと記すことがある)、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、フェノチアジン、メタノール、キノパワー(登録商標)、MnCl2、CuCl2、TEMPOなどを挙げることができるが、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(BHT)、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン及びフェノチアジンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、フェノチアジン、BHTがより好ましく、BHTがさらに好ましい。安定剤の使用量は、化合物(2)に対して質量基準で50〜500ppm(安定剤/化合物(2))が好ましく、より好ましくは100〜200ppm用いられる。その使用量が50ppmより少ない場合や500ppmよりも多い場合は、化合物(2)の安定性が、安定剤と混合していない化合物(2)の安定性と比べて向上しないことがある。
【0041】
かくして得られた化合物(2)としては、例えば、2−(クロロメチル)ベンズアルデヒド、2−(ブロモメチル)ベンズアルデヒド、2−(ヨードメチル)ベンズアルデヒド、2−(クロロメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(ブロモメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(ヨードメチル)−3−クロロベンズ、2−(クロロメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(ブロモメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(ヨードメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(クロロメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(ブロモメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(ヨードメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(クロロメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(ブロモメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(ヨードメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(クロロメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(ブロモメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(ヨードメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(クロロメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド、2−(ブロモメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド及び2−(ヨードメチル)−4−ヨードベンズアルデヒドが挙げられる。なかでも、2−(クロロメチル)ベンズアルデヒド又は2−(ブロモメチル)ベンズアルデヒドが好ましく、2−(クロロメチル)ベンズアルデヒドがより好ましい。
【0042】
次いで、工程(B)について説明する。
【0043】
工程(B)で用いられる化合物(3)としては、例えば、フェノール、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,4−ジエチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2,5−ジイソプロピルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール及び2,4,6−トリフルオロフェノールが挙げられる。化合物(3)は、好ましくは、2−メチルフェノール又は2,5−ジメチルフェノールであり、より好ましくは2,5−ジメチルフェノールである。
【0044】
化合物(3)は、市販のものであってもよいし、例えば、J.Am.Chem.Soc.,128,10694(2006)、Tetrahedron Letters,30,5215(1989)、特開2002−3426号公報等に記載される公知の方法により製造されたものであってもよい。
【0045】
化合物(3)の塩としては、例えば、化合物(3)のリチウム塩、化合物(3)のナトリウム塩及び化合物(3)のカリウム塩等の化合物(3)のアルカリ金属塩;化合物(3)のカルシウム塩等の化合物(3)のアルカリ土類金属塩が挙げられる。化合物(3)の塩は、好ましくは、化合物(3)のアルカリ金属塩であり、より好ましくは、化合物(3)のナトリウム塩である。化合物(3)の塩は、化合物(3)と後述する塩基とを混合することにより、調製されたものであってもよい。
【0046】
化合物(3)又はその塩の使用量は、化合物(2)1モルに対して、例えば0.1モル〜10モルの範囲であり、好ましくは1モル〜3モルの範囲である。
【0047】
工程(B)は、塩基の存在下又は塩基の非存在下で行われる。化合物(2)と化合物(3)とを反応させる場合、工程(B)は、好ましくは塩基の存在下で行われ、化合物(2)と化合物(3)の塩とを反応させる場合、塩基の存在下で行ってもよく、塩基の非存在下で行ってもよい。
【0048】
工程(B)で用いられる塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン等の三級アミン;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びカリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化リチウム等の水素化アルカリ金属化合物;水素化カルシウム等の水素化アルカリ土類金属;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸リチウム等の炭酸アルカリ金属化合物;炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ土類金属化合物;並びに、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウム等の炭酸水素アルカリ金属化合物が挙げられる。塩基は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。かかる塩基は、市販のものをそのまま用いてもよく、水や後述する溶媒と混合されたものであってもよい。
【0049】
塩基の使用量は、化合物(2)と化合物(3)とを反応させる場合、化合物(3)1モルに対して、例えば0.5モル〜10モルの範囲であり、好ましくは0.8モル〜3モルの範囲である。また、塩基の使用量は、化合物(3)と塩基とを混合することにより化合物(3)の塩を調製する場合、化合物(3)1モルに対して、例えば0.5モル〜10モルの範囲であり、好ましくは0.8モル〜3モルの範囲である。
【0050】
工程(B)は、溶媒の存在下及び溶媒の非存在下のいずれの条件下でも行われる。かかる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン及びベンゼン等の芳香族溶媒、並びに、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒が挙げられる。これら溶媒は、単独であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。溶媒は、芳香族溶媒が好ましく、キシレン又はトルエンがより好ましい。溶媒の使用量は特に制限されず、経済性の観点から、化合物(2)1重量部に対して、例えば100重量部以下である。
【0051】
工程(B)は、好ましくは、相間移動触媒の存在下に実施される。かかる相間移動触媒としては、例えば、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、塩化トリブチルメチルアンモニウム(Aliquat(登録商標)175)及び塩化トリオクチルメチルアンモニウム(Aliquat(登録商標)336)等の四級アンモニウム塩;臭化メチルトリフェニルホスホニウム及び臭化テトラフェニルホスホニウム等のホスホニウム塩;並びに、18−クラウン−6及びポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物が挙げられる。相間移動触媒は、好ましくは、四級アンモニウム塩であり、より好ましくは、塩化トリブチルメチルアンモニウム(Aliquat(登録商標)175)又は臭化テトラn−ブチルアンモニウムである。相間移動触媒の使用量は、化合物(2)1モルに対して、例えば0.01モル以上であり、好ましくは、0.05モル〜1モルの範囲である。
【0052】
工程(B)は、例えば、化合物(2)と化合物(3)と塩基と、必要に応じて相間移動触媒とを混合する方法により行われ、また、例えば、化合物(2)と化合物(3)の塩と、必要に応じて相間移動触媒とを混合する方法により行われ、また、例えば、化合物(3)と塩基とを混合し、得られる混合物を化合物(2)と相間移動触媒との混合物に加える方法により行われる。好ましくは、化合物(3)と塩基とを混合し、得られる混合物を化合物(2)と相間移動触媒との混合物に加える方法により行われる。
【0053】
工程(B)は、化合物(2)と化合物(3)又はその塩との反応を円滑に進行させる点で、ヨウ素化合物の存在下で行うこともできる。かかるヨウ素化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム及びヨウ化リチウム等のアルカリ金属ヨウ化物、並びにヨウ素が挙げられる。ヨウ素化合物は、好ましくは、アルカリ金属ヨウ化物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。ヨウ素化合物は、例えば、市販のものであってもよく、任意の公知の方法により製造したものであってもよい。ヨウ素化合物の使用量は、化合物(2)1モルに対し、例えば0.01モル以上であり、好ましくは0.05モル〜1モルの範囲である。
【0054】
工程(B)における反応温度は、例えば−5℃以上、溶媒の沸点以下の範囲から選択され、好ましくは、10℃〜100℃の範囲から選択される。反応時間は、反応温度等によって異なるが、例えば1〜15時間の範囲である。工程(B)は、常圧下で行われてもよく、加圧下で行われてもよい。化合物(3)と塩基とを混合し、得られる混合物を化合物(2)と相間移動触媒との混合物に加える方法においては、化合物(3)と塩基との混合は、−5℃以上、溶媒の沸点以下の温度から選択される温度で行われ、好ましくは、10℃〜100℃の範囲から選択される温度で行われる。この場合、化合物(3)と塩基とを混合する時間は、温度等によって異なるが、例えば1時間〜15時間の範囲である。
【0055】
反応の進行度合いは、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により、確認することができる。
【0056】
得られた化合物(4)は、水又はpH調整液と接触させることにより、pH6〜8に調整されることが好ましい。pH6〜8に調整することにより、化合物(4)の保存安定性が向上する。
【0057】
pH調整液は、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸、ホウ酸及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも一種と水とから調製されたものであり、好ましくは、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸水溶液である。
【0058】
工程(B)で得られた化合物(4)を、水又はpH調整液と接触させることにより、化合物(4)をpH6〜8に調整した後、得られた混合物を、例えば、分液処理に付すことにより、化合物(4)を回収することができる。かかる分液処理時における化合物(4)と水との分離性を向上させるために、工程(B)で用いられる溶媒を、適宜加えてもよく、化合物(4)は、溶液として回収することもできる。回収された化合物(4)を、さらに再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の精製手段により精製することもできる。
【0059】
化合物(4)としては、例えば、2−(フェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(3−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−エチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−t−ブチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−t−ブチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,6−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(3,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、
【0060】
2−(2,4−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,6−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,6−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4,6−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(3,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、
【0061】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2−エチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド等があげられる。
【0062】
化合物(4)は、好ましくは、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド又は2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドであり、より好ましくは2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドである。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0064】
<実施例1>
500mLフラスコに、96%硫酸146.1g(1.43mol)と水9.9g(0.55mol)とを仕込み、得られた混合物を25℃まで冷却した。そこへ、2−クロロメチルベンザルクロリド115.2g(0.55mol)を加え、25℃で5時間撹拌した。得られた混合物に水48.3gを温度30℃以下で滴下し、その後分液処理した。得られた油層を水85.0gで洗浄し、分液処理を行うことで、2−クロロメチルベンズアルデヒドを主成分とする油状物83.7g得た。該油状物を高速液体クロマトグラフィー絶対検量線法にて分析したところ、2−クロロメチルベンズアルデヒドの含量は88.7重量%であった。収率:87.3%(2−クロロメチルベンザルハライド基準)。
更に該油状物を10%リン酸水素二ナトリウム水溶液83.7gと混合して、得られた混合物をpH6〜8に調整し、分液処理した後、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(BHT)0.008g(2−クロロメチルベンズアルデヒドを主成分とする油状物に対して100ppm)を添加した。
【0065】
500mLフラスコに、2,5−ジメチルフェノール63.8g(0.52mol)と20重量%水酸化ナトリウム水溶液110.0g(0.55mol)とを仕込み、得られた混合物を60℃まで昇温し、同温度で3時間攪拌した。500mLフラスコ中で、臭化テトラブチルアンモニウム8.9g(0.03mol)と上記2−クロロメチルベンズアルデヒドを主成分とする油状物83.7g(0.47mol)とを混合し、温度を60℃に保ちながら、上記の2,5−ジメチルフェノールと20重量%水酸化ナトリウム水溶液とから調製された混合物を3時間で滴下した。滴下終了後、得られた混合物を同温度で2時間攪拌した。得られた反応混合物を60℃にて分液処理し、油層に10%リン酸二水素ナトリウム水溶液130.0gを混合した。得られた混合物をpH6〜7に調整し、分液処理を行うことで2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドを主成分とする油状物135.6gを得た。該油状物を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの含量は78.5重量%であった。
収率:80.6%(2−クロロメチルベンザルハライド基準)
【0066】
<実施例2>
500mLフラスコに、96%硫酸146.1g(1.43mol)と水9.9g(0.55mol)とを仕込み、得られた混合物を25℃まで冷却した。そこへ、2−クロロメチルベンザルクロリド115.2g(0.55mol)を加え、25℃で5時間撹拌した。得られた混合物に水48.3gを温度30℃以下で滴下し、その後分液処理した。得られた油層を水85.0gで洗浄し、分液処理を行うことで、2−クロロメチルベンズアルデヒドを主成分とする油状物83.7g得た。該油状物を高速液体クロマトグラフィー絶対検量線法にて分析したところ、2−クロロメチルベンズアルデヒドの含量は88.7重量%であった。収率:87.3%(2−クロロメチルベンザルハライド基準)。
更に該油状物を10%リン酸水素二ナトリウム水溶液83.7gと混合して、得られた混合物をpH6〜8に調整し、分液処理した後、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(BHT)0.008g(2−クロロメチルベンズアルデヒドを主成分とする油状物に対して100ppm)を添加した。
【0067】
500mLフラスコに、2,5−ジメチルフェノール67.2g(0.55mol)と20重量%水酸化ナトリウム水溶液104.5g(0.52mol)とを仕込み、得られた混合物を60℃まで昇温し、同温度で3時間攪拌した。別の500mLフラスコにAliquat(登録商標)175:6.5g(0.03mol)、上記2−クロロメチルベンズアルデヒドを主成分とする油状物全量を仕込んだ。そこに上記の2,5−ジメチルフェノールと20重量%水酸化ナトリウム水溶液とから調製された混合物を4時間で滴下した。該フラスコ内容物の内温は滴下3時間目までを45℃に保ち、以降55℃に加熱した。滴下終了後、得られた混合物を55℃で2時間攪拌した。得られた反応混合物を分液処理し、油層に10%リン酸二水素ナトリウム水溶液130.0gを混合した。得られた混合物をpH6〜7に調整し、分液処理を行うことで2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの粗製物129.1gを得た。該粗製物を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの含量は85.8重量%であった。
収率:83.8%(1−ジクロロメチル−2−クロロメチルベンゼン基準)
【0068】
<試験例1> 2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの安定性試験
実施例1で得た2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドを主成分とする油状物20gをガラス容器に量り取り、密閉し、70℃の恒温槽に静置して、所定時間経過毎に油状物中の2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド含量を、高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析した。70℃の恒温槽に静置する前(試験前)、静置48時間後、静置1週間後、静置2週間後の油状物中の2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド含量を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
<試験例2> 2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの安定性試験
実施例1と同様の操作で得た2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドを主成分とする反応混合物を分液処理し、得られた油層を3分割した。3分割した油層それぞれから、10%リン酸二水素ナトリウム水溶液を用いた洗浄により該混合物をpH6〜7とし分液した油層、5%塩酸水溶液で洗浄、分液後、更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて該混合物をpH8〜9とし分液した油層及び未処理油層(分液前水層pH11)を得た。更に得られた油層の重量に対して30重量%のキシレンを加え均一溶液とし、70℃の恒温槽にて保存した。所定時間経過毎に2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドのキシレン溶液中の2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの含量を、高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析した。分析結果を表2に示す。2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドを主成分とする反応混合物を分液処理し、洗浄によりその混合物をpH6〜7に調製した油層は、2週間は純度の低下がなかったが、pH8〜9およびpH11の混合物を分液処理した油層では徐々に純度低下が認められた。
【0071】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0072】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド等の2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物は、例えば、農業用殺菌剤の製造中間体として有用であることが知られている。本発明は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の新たな製造方法等として産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、X、X及びXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。)
で示される化合物を加水分解する工程(A);
並びに
工程(A)で得られた式(2)

(式中、X、Q、Q、Q及びQはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される化合物と、式(3)

(式中、Arは、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)
で示される化合物又はその塩とを反応させる工程(B)
を有することを特徴とする式(4)

(式中、Ar、Q、Q、Q及びQはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項2】
工程(A)が、硫酸の存在下、式(1)で示される化合物を加水分解する工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(A)が、式(1)で示される化合物と、84.5質量%以上の硫酸とを混合し、得られた混合物と、水とをさらに混合することにより行われる請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
工程(B)を行う前に、工程(A)で得られた式(2)で示される化合物を中和する請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
工程(B)を行う前に、工程(A)で得られた式(2)で示される化合物と、重合禁止剤及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種とを混合する請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
工程(B)が、相間移動触媒の存在下で、工程(A)で得られた式(2)で示される化合物と、式(3)で示される化合物又はその塩とを反応させる工程である請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−6805(P2013−6805A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141533(P2011−141533)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】