説明

2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸及びイミダゾリノン系除草剤の製造におけるその使用

式(I)


[ここで、Zは、水素又はハロゲンであり;Zは、水素、ハロゲン、シアノ又はニトロであり;Rは、C〜Cアルキルであり;Rは、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルであるか、又はRとRは、それらが結合されているその原子と一緒になって、メチルで置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、Rは、水素、又は、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、銅、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、銀、ニッケル、アンモニウム及び有機アンモニウムからなる群から選択されるカチオンである]で表される2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸は、イミダゾリノン系除草剤の合成に有用な中間体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸、そのような化合物の調製、及びイミダゾリノン系除草剤(例えばイマザモックス)の製造におけるその使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
イマザモックス(2−[(RS)−4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル]−5−メトキシメチルニコチン酸)、
【化1】

【0003】
等の、2−(2−イミダゾリン−2−イル)ニコチン酸の誘導体は、ALS−阻害物質として作用する有用な選択性除草剤であり、発芽前及び発芽後の用途に用いられ得る。
【0004】
文献から、これらの化合物を合成するための様々な方法が知られている。例えば、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)又は(非特許文献1)を参照されたい。
【0005】
工業スケールでの合成はこれらの方法によって行われているが、具体的には、全体収率の改善あるいはある種の溶媒又は試薬を避けることのような、経済的及び環境的側面の点で、まだ改善の余地がある。
【0006】
(特許文献1)には、5−クロロメチル−2,3−ピリジンジカルボン酸無水物をα−アミノ−α−メチルバレルアミドと反応させ、さらにこの化合物を、NaOCHと反応させ、続いて酸性化することによってイマザモックスに変換させることによる2−[(1−カルバモイル−1,2−ジメチルプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸の合成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0322616号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0747360号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0933362号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Q. Bi et al, Modern Agrochemicals 6(2)(2007) 10-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、イミダゾリノン系除草剤を合成するための新規な有用な中間体、及びその調製方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、イマザモックス等のイミダゾリノン系除草剤の、改善された製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸がイミダゾリノン系除草剤の製造における有用な中間体であることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
欧州特許出願公開第0184027号明細書及び欧州特許出願公開第0144595号明細書には、ピリジン−2,3−ジカルボン酸無水物を2−アミノ−2,3−ジメチル−ブチロニトリルと反応させ、さらにイミダゾリノン系除草剤に変換させることが記載されているが、5−クロロメチル置換化合物についての例は開示されていない。
【0012】
つまり、本発明の1つの態様で、式(I)
【化2】

【0013】
[ここで、
Zは、水素又はハロゲンであり;
は、水素、ハロゲン、シアノ又はニトロであり;
は、C〜Cアルキルであり;
は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルであるか、又はRとRは、それらが結合されている原子と一緒になって、メチルで置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、及び
は、水素、又は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、銅、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、銀、ニッケル、アンモニウム及び有機アンモニウムからなる群から好ましくは選択されるカチオンである]
で表される2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸が提供される。
【0014】
本発明のもう1つの態様で、式(I)で表される2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸の調製方法が提供されるが、その方法には、次のステップ
(i)式(II)
【化3】

【0015】
[ここで、Z、Zは、式(I)の通りである]
で表される5−クロロメチル−ピリジン−2,3−ジカルボン酸無水物を2−アミノアルカンカルボニトリル(III)
N−CR−CN (III)
[ここで、R及びRは、式(I)の通りである]
と反応させるステップ
が含まれる。
【0016】
本発明のさらなる態様で、式(IV)
【化4】

【0017】
[式中、
Z、Z、R、R、Rは、式(I)で定義した通りである]
で表されるイミダゾリノン系除草剤を調製するための式(I)の化合物の使用が提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様で、式(IV)で表されるイミダゾリノン系除草剤の調製方法が提供されるが、その方法には、
次の各ステップ:
(i)式(I)で表されるニトリルを加水分解させて、式(V)
【化5】

【0019】
[ここで、
Z、Z、R、R、Rは、式(I)において定義されている通りである]
で表されるアミドを得るステップ;及び
(ii)化合物(V)をCHOM又はMOH/CHOH(ここで、Mは、アルカリ金属、好ましくはNa又はKである)と反応させ、場合によりそのあと酸性化することによって、そのイミダゾリノン系除草剤(IV)を生成させるステップ;
が含まれる。
【0020】
この新規な中間体(I)をイミダゾリノン系除草剤の合成に用いると、アミド(V)調製の収率改善、したがって、合成方法の全体収率の改善がもたらされる。無水物の開化の位置選択性は、欧州特許出願公開第0144595号明細書で推奨されている窒素塩基の添加なしでも、優れている。
【0021】
式(I)において、各記号は、好ましくは、以下の意味を有している:
Zは、好ましくは、水素である;
は、好ましくは、水素でる;
は、好ましくは、C〜Cアルキルである;
は、好ましくは、C〜Cアルキルである;
は、好ましくは、水素、アルカリ金属又はNR(ここで、Rは水素又はRであって、RはC〜Cアルキルである)である。
【0022】
好ましいのは、すべての記号がその好ましい意味を有している式(I)で表される化合物である。
【0023】
特に好ましい式(I)で表される化合物は、化合物(Ia):
【化6】

【0024】
並びにその塩である。
【0025】
化合物(I)は、好ましい化合物(Ia)の合成:
【化7】

【0026】
で例示されるように、無水物(II)をアミノニトリル(III)と反応させることによって調製され得る(R及びRは、式(III)において定義されている通りである)。
【0027】
アミノニトリル(III)は、市販されている、又は当技術分野で知られている方法によって調製され得る。化合物(II)の1当量あたり、一般的には、0.8〜1.2当量のアミノニトリル(III)が用いられるが、好ましくは0.95〜1.1が用いられる。
【0028】
反応は溶媒中で行われるが、その溶媒は、好ましくは、芳香族炭化水素(好ましくは、トルエン、メシチレン)、塩素化芳香族炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン)、塩素化脂肪族炭化水素(例えば、1,2−ジクロロエタン及びジクロロメタン)、酢酸、及びこれらの混合物から選択される。
【0029】
主溶媒として酢酸が用いられない場合は、0.5〜10当量、好ましくは1〜3当量(化合物(II)を基準とする)を添加するのが有利である。
【0030】
開環反応の選択性(2位対3位)を改善するさらなる有利な添加剤が米国特許第4,562,257号明細書に列挙されており、ピリジン、4−ピコリン、2−ピコリン及びキノリンが包含される。しかしながら、そのような添加剤は、用いてもよいが、本発明によれば、そのような添加剤を用いる必要がなく、1つの実施形態では、反応混合物にはその列挙されている添加剤は存在していない。
【0031】
反応は、一般的には、約40〜約120℃、好ましくは約60〜約100℃の範囲内の温度で行われる。反応時間は、一般的には、約1〜約3時間である。
【0032】
好ましい実施形態では、化合物(II)は溶媒に溶解され、反応温度にされ、そしてアミノニトリル(III)が少しずつ加えられる。反応が完了し、冷却された後、ニトリル化合物(I)は、標準的な方法によって単離され得る。
【0033】
さらに好ましい実施形態では、しかしながら、化合物(I)は単離されず、反応混合物が、その後のニトリルの加水分解に直接用いられる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、化合物(I)の調製で用いられる無水物(II)は、次の各ステップ
(i)式(VI)、
【化8】

【0035】
[式中、各記号は、式(I)において記載されている意味を有している]
で表される化合物を、場合によりラジカル開始剤の存在下に、ハロゲン化炭化水素類、好ましくはジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン及びテトラクロロメタンから選択される溶媒中で塩素化剤と反応させるステップ、
及び
(ii)ステップ(i)で生成させた化合物(II)を、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、トルエン、キシレン類、メシチレン類、アルキルアセタート(例えばエチルアセタート、ブチルアセタート、メチルアセタート)、メチルtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びこれらの混合物から選択される溶媒から結晶化させるステップ、
が含まれる方法によって得られる。
【0036】
式(V)で表される化合物及びその調製は、例えば欧州特許出願公開第0933362号明細書で、公知である。
【0037】
適する塩素化剤としては、塩素、塩化スルフリル、N−クロロスクシンイミド、及びトリクロロイソシアヌル酸が挙げられる。好ましい塩素化剤は、塩素及び塩化スルフリル(SOCl)である。
【0038】
ピリジン化合物(VI)対塩素化剤の比は、一般的には、1:0.5〜1.5、好ましくは1:0.7〜1.2、より好ましくは1:0.8〜1.1の範囲内にある。
【0039】
反応を開始させるのに適しているフリーラジカル発生剤は、選択された反応温度で分解するもの、すなわち、それ自体で分解するもの、及び、レドックス系の存在下で分解するものである。好ましい開始剤の例は、アゾ化合物、パーオキサイド等のフリーラジカル発生剤である。しかしながら、レドックス系、特にハイドロパーオキサイドをベースにしたもの(例えばクメンハイドロパーオキサイド)を用いることもあり得る。開始剤を添加しない光誘起塩素化もあり得る。
【0040】
本発明の方法で用いるのに適しているラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−ペンタンニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、有機及び無機パーオキサイド、例えばジラウロイルパーオキサイド、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及びジラウロイルパーオキサイドが好ましく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが特に好ましい。
【0041】
好ましくは、開始剤は、反応の全過程にわたって連続的に加えられる。
【0042】
開始剤対塩素化剤のモル比は、好ましくは、0.001〜0.1:1、より好ましくは0.002〜0.05の範囲内にある。
【0043】
ステップ(i)のための有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素、好ましくは塩素化炭化水素、より好ましくは塩素化脂肪族又は芳香族炭化水素である。特に好ましいのは、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン及びテトラクロロメタンから選択される溶媒であり、好ましくは1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン及びクロロベンゼンである。クロロベンゼンは、特に好ましい。本明細書で使われている用語「溶媒」には、上記化合物の2種又はそれ以上の混合物も包含される。加えて、この用語には、20重量%までの、好ましくは10重量%までの、特には5重量%までの、ハロゲン化炭化水素ではないさらなる溶媒を含有している溶媒も包含される。
【0044】
有機溶媒の量は大きく変化し得る。好ましくは、化合物(V)1モル当たり250g〜1500g(より好ましくは500g〜1000g)の有機溶媒が用いられる。
【0045】
(塩素化剤が液体である)1つの好ましい実施形態では、ステップ(i)は、有機溶媒に化合物(VI)を溶解させ、加熱し、そして開始剤の塩素化剤中溶液をゆっくり加える。反応が完了した後、溶媒を一部又は全部留去させ、そしてこの混合物をゆっくり冷やして、生成物を沈殿させる。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、化合物(VI)は、溶媒に溶解され、そして塩素ガスが反応容器に投入されるか又は溶液の中に通される。反応が完了した後、溶媒は、少なくとも一部留去されて、過剰塩素及びHCl等の気体副生成物が除去される。反応混合物がこの後冷却されると、化合物(II)が沈殿する。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、反応(ステップ(i))は連続運転で行われる。
【0048】
塩素化剤として塩素が用いられる場合、反応は、一般的には、約0℃〜約160℃、好ましくは約60℃〜約140℃、特に好ましくは約80℃〜約120℃の温度で行われる。
【0049】
液体塩素化剤(特には塩化スルフリル)が用いられる場合、反応は、一般的には、約0℃〜約140℃、好ましくは約50℃〜約120℃、特に好ましくは約70℃〜約90℃の温度で行われる。
【0050】
反応は、大気圧下、又は6barまでの(好ましくは2barまでの)加圧下で行われ得る。塩素化剤として塩素が用いられる場合は、加圧することが好ましい。
【0051】
(ステップ(i)の)反応時間は、反応パラメーターによって異なるが、一般的には、5min〜300hである。連続反応のケースでは、反応容器中での滞留時間は、好ましくは2〜10分の範囲内、特には約5分である。
【0052】
反応のステップ(ii)では、化合物(II)は、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン、トルエン、キシレン類、メシチレン類、エチルアセタート、ブチルアセタート、メチルアセタート、メチルtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、及びこれらの混合物から選択される溶媒から結晶化される。
【0053】
本明細書で使われている用語「溶媒」には、溶媒混合物が包含される。
【0054】
クロロベンゼン及びその各ジクロロベンゼンが好ましく、クロロベンゼンが特に好ましい。
【0055】
結晶化に用いられる溶媒が、90重量%までの、好ましくは10〜80重量%の、特には20〜60重量%の逆溶媒、すなわち、式(I)で表される化合物が実質的に不溶である液体、例えばn−ヘキサン、ヘキサン類、又はシクロヘキサンのような、脂肪族炭化水素から構成され得る。
【0056】
結晶化は、約−40℃〜30℃、好ましくは約0℃〜約20℃の範囲内の温度で一般的には行われる。化合物(I)が結晶化される溶媒における化合物(I)の濃度は、一般的には、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲内である。
【0057】
結晶化は、標準的な方法によって、例えば、化合物(II)の飽和溶液を冷却させることによって、純粋化合物(I)でシード添加することによって、逆溶媒を加えることによって、あるいはこれらの方法の組み合わせによって行われ得る。
【0058】
本発明によれば、化合物(II)は、少なくとも一度、上記に列挙した溶媒のうちの1つ又はそのような溶媒の2つもしくはそれ以上の混合物から結晶化されなければならない。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、ステップ(i)の塩素化は、ステップ(ii)の結晶化に用いられ得る溶媒中で行われる。好ましくは、化合物(II)は、この後、ステップ(i)が完了した後の反応混合物から結晶化される。
【0060】
場合によっては、元の溶媒は一部(又は全部)留去させてもよいし、また、例えば、留去された溶媒を補うために、さらなる溶媒を加えてもよい。
【0061】
さらに、生成物の純度を高めるために、化合物(II)を一度又はそれ以上(好ましくは一度)再結晶化させることが好ましい。再結晶化は、通常、最初の溶媒と同じ溶媒中で行われるが、当然、前記列挙した群からの異なる溶媒又は溶媒混合物も用いられ得る。
【0062】
収量ロスを最小限にするため、再結晶化の母液は、好ましくは、最初の結晶化ステップにリサイクルされる。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ステップ(i)の塩素化は、ステップ(ii)の結晶化に用いられる溶媒とは異なる溶媒中で行われる。この実施形態では、ステップ(i)の溶媒は除去されて、原料の化合物(I)がステップ(ii)の溶媒に溶解され、結晶化される。同じ溶媒又は異なる各溶媒で1回又はそれ以上再結晶化させるステップは当然あり得るし、母液も、上述したようにリサイクルされ得る。
【0064】
同じ溶媒がステップ(i)及び(ii)で用いられることが好ましく、特にはクロロベンゼン又はジクロロベンゼンが好ましい。
【0065】
HPLCによって(検体をメタノールでクエンチした後に)測定される、再結晶化の後の化合物(I)の純度は、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0066】
(再)結晶化の後の化合物(II)の単離は、標準的な方法、例えば濾過、適する溶媒での洗浄、そして乾燥によって行われ得る。
【0067】
上述したようにして調製される化合物(II)は、その純度により、本発明の中間体(I)の合成に特に有用である。したがって、好ましい実施形態では、化合物(I)の調製方法には、次の各ステップ
(i−1)式(VI)
【化9】

【0068】
[式中、各記号は、式(I)に記載されている意味を有している]
で表される化合物を、場合によりラジカル開始剤の存在下に、ハロゲン化炭化水素類から選択される溶媒中で塩素化剤と反応させるステップ、
及び
(i−2)ステップ(i)で生成させた化合物(II)を、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、トルエン、キシレン類、メシチレン類、アルキルアセタート(例えばエチルアセタート、ブチルアセタート、メチルアセタート)、メチルtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びこれらの混合物から選択される溶媒から結晶化させて、無水物(II)を得るステップ、及び
(i−3)無水物(II)を2−アミノアルカンカルボニトリル(III)
N−CR−CN (III)
[ここで、R及びRは、式(I)の通りである]
と反応させるステップ、
が含まれる。
【0069】
式(I)で表される化合物は、イミダゾリノン系除草剤(IV)の合成で有用な中間体である。
【0070】
第1のステップでは、好ましい化合物(Ia)及び(Va):
【化10】

【0071】
で例示されているように、ニトリル官能が加水分解されて、それぞれのアミド(V)がもたらされる。
【0072】
典型的な手順では、若干過剰(例えば、(I)を基準にして1.1〜1.5当量)の強無機酸(好ましくは、硫酸(好ましくは30〜98%の濃度の)+水(例えば、2〜10当量))が、一般的には約30℃〜120℃(好ましくは50℃〜90℃)の範囲内の温度で加えられる。この混合物は、さらに、完全に変換されるまで撹拌される。反応時間は、一般的には、1〜8時間(好ましくは1〜5時間)である。
【0073】
後処理及び単離は、水溶液からの沈殿(例えば、そのアンモニウム塩として)のような、標準的な方法によって達成され得る。好ましい実施形態では、反応混合物は、直接、その次の反応ステップに用いられる。
【0074】
本発明のさらなる方法で、除草剤イミダゾリノン化合物(IV)が、次のステップ
(i)式(V)で表されるアミド化合物を調製するステップ;及び
(ii)化合物(V)をCHOM又はMOH/CHOH(ここで、Mは、アルカリ金属、好ましくはNa又はKである)と反応させ、続いて酸性化することによって、イミダゾリノン系除草剤(IV)を生成させるステップ;
が含まれる方法によって調製される。
【0075】
1つの実施形態では、ステップ(ii)において、好ましくはアンモニウム塩(RがHNR)の形態にあるアミド化合物(V)が、アルカリ金属メトキシド(好ましくはNaOCH/メタノール)と、欧州特許第0322616号明細書の実施例11と同じようにして反応される。得られた懸濁液は、全部が変換されるまで、還流下に保持される。冷却させた後、混合物は酸性化されて、化合物(IV)が、そのアンモニウム塩(約pH4に酸性化)として又はその遊離酸(pH≦2に酸性化)として得られる。
【0076】
さらに好ましい実施形態では、ステップ(ii)において、ステップ(i)からの反応混合物は、メタノール((V)を基準にして一般的には2〜100当量)と、塩基水溶液((V)を基準にして一般的には3〜100当量)の存在下に反応され、塩基は、好ましくはMOH及びMOCH(ここで、Mは、アルカリ金属、好ましくはNa又はK、特にはNa、である)から選択される。
【0077】
反応は、20〜120℃(好ましくは40〜90℃)の範囲内の温度で行われる。反応は、大気圧又は加圧下で行われ得るが、好ましくは所望の反応温度で形成される圧力下で行われ得る。反応時間は、一般的には1〜8時間である(好ましくは1〜5時間)。
【0078】
イミダゾリノン生成物(IV)の単離は、標準的な方法で達成され得る。好ましい実施形態では、水が加えられ、有機溶媒が留去される。残留物は、水に取り込まれ、酸性化されると、化合物(IV)が沈殿され得る。濾過の後、この粗製の生成物は、例えば水と撹拌することにより又は再結晶化させることにより、さらに精製され得る。
【0079】
本発明のさらなる実施形態では、次のステップ
(i)化合物(I)を、MOH及びMOCH(ここで、Mは、アルカリ金属である)から選択される塩基+(水溶液)H/メタノールと反応させ、場合によりその後に酸性化させるステップ;
が含まれる式(IV)で表されるイミダゾリノン系除草剤の調製方法が提供される。
【化11】

【0080】
反応は、欧州特許出願公開第0144595号明細書に記載されている手順と同様に行われ得る。
【実施例】
【0081】
以下の実施例によって本発明を説明するが、これによって、本発明は限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
2−[(1−シアノ−1,2−ジメチルプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸(Ia)の合成
【化12】

【0083】
9.6g(48mmol)の5−クロロメチル−ピリジン−2,3−カルボン酸無水物(IIa)、40.0g(435mmol)のトルエン及び6.7g(112mmol)の酢酸を反応器に投入し、69℃まで加熱した。7.2g(51mmol)のα−アミノ−1,2−ジメチル−ブチロニトリルを温度72℃〜76℃で25分かけて加えた。この混合物を75℃でさらに90min間撹拌した。冷却させた後、この混合物は、前記ニトリルの加水分解に直接用いられ得る。
【0084】
(実施例2)
イマザモックス(IVa)の合成
【0085】
(a)2−[(1−カルバモイル−1,2−ジメチルプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸(Va)の合成
【化13】

【0086】
14.9g(48mmol)のニトリル(Ia)(実施例1から)に、6.0g(59mmol)の硫酸(98%)を69℃〜80℃で5min以内で加えた。70℃〜78℃で4.1g(228mmol)の水を加え、撹拌を69℃で5時間続けた。この新生の生成物は、トルエン不溶油状物を形成する。この反応混合物を、後処理することなく、次の段階で用いた。
【0087】
(b)イマザモックス(IVa)の合成
【化14】

【0088】
65℃にて15.7g(48mmol)のアミド化合物(Va)(段階(a)からの反応混合物)に94g(2.94mol)のメタノールを加え、続いて42g(525mmol)のNaOH(50%/水)を加えた。この溶液は、懸濁液に変わったので、撹拌をさらに90min間続けた。
【0089】
80gの水を加え、溶液を50℃及び80〜8mbarで除去した。残留物を水に溶解させ、その塩基性溶液を29gの硫酸(98%)で酸性化した。pH4に達したときイマザモックスが沈殿した。この懸濁液を室温にて濾過し、100ml水で洗浄した。
【0090】
収量:16.5g(82%純度、44mmol、92%)。
【0091】
この粗製の生成物を水で撹拌することによって純度を>95%(HPLC)まで高めた。
【0092】
(実施例3)
5−クロロメチル−2,3−ピリジンジカルボン酸無水物(IIa)の合成
【化15】

【0093】
106.8g(0.65mol)の5−メチル−2,3−ピリジンジカルボン酸無水物を427gクロロベンゼンに溶解させ、85℃まで加熱した。溶液0.64g(0.004mol)のAIBN/99.0g(0.66mol)のSOClを45min間加えた。混合物を85℃でさらに90min間撹拌した。クロロベンゼンを一部留去させ、溶液を10時間の傾斜を経て10℃まで冷却させた。沈殿物を濾別し、クロロベンゼン/ヘキサンで洗浄した。
【0094】
収量:85.0g(0.40mmol、60%)(このうち58.1g(0.27mmol)を、沈殿の後、単離することができた)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[ここで、
Zは、水素又はハロゲンであり;
は、水素、ハロゲン、シアノ又はニトロであり;
は、C〜Cアルキルであり;
は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルであるか、又はRとRは、それらが結合されている原子と一緒になって、メチルで置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基を表し;
は、水素又はカチオンである]
で表される2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸。
【請求項2】
Z及びZがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がCH(CHであり、
がCHである、
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Z及びZがHであって
がCH(CHであり;
がCHであり、
がHである、
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)で表される2−[(1−シアノプロピル)カルバモイル]−5−クロロメチルニコチン酸の調製方法であって、以下
(i)式(II)
【化2】

[式中、Z、Zは、請求項1〜4のいずれかにおける式(I)の通りである]
で表される5−クロロメチルピリジン−2,3−ジカルボン酸無水物を2−アミノアルカンカルボニトリル(III)
N−CR−CN (III)
[ここで、R及びRは、請求項1〜4のいずれかにおける式(I)の通りである]
と反応させるステップ、
が含まれる、前記方法。
【請求項6】
無水物(II)対アミノニトリル(III)の比が、1:0.8〜1.2である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
芳香族炭化水素、塩素化芳香族炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素、酢酸、及びこれらの混合物から選択される溶媒中で行われる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
酢酸が溶媒であるか、又は、0.5〜10当量の酢酸((II)を基準とする)が溶媒に加えられる、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
反応が、40〜120℃の範囲内の温度で行われる、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
反応混合物が、実質的にピリジン、ピコリン及びキノリンを含まない、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれかに記載の方法であって、以下
(i−1)式(VI)
【化3】

[ここで、各記号は、請求項1〜4のいずれかにおける式(I)での意味を有している]
で表される化合物を、場合によりラジカル開始剤の存在下に、ハロゲン化炭化水素類から選択される溶媒中で塩素化剤と反応させるステップ、
(i−2)ステップ(i)で生成した化合物(II)を、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、トルエン、キシレン類、メシチレン類、アルキルアセタート類(例えばエチルアセタート、ブチルアセタート、メチルアセタート)、メチルtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びこれらの混合物から選択される溶媒から結晶化させて、無水物(II)を得るステップ、及び
(i−3)無水物(II)を、2−アミノアルカンカルボニトリル(III)
N−CR−CN (III)
[ここで、R及びRは、請求項1〜4のいずれかにおける式(I)の通りである]
と反応させるステップ、
が含まれる、前記方法。
【請求項12】
式(IV)
【化4】

[ここで、
Z、Z、R、R、Rは、請求項1〜4のいずれかにおける式(I)で定義した通りである]
で表されるイミダゾリノン系除草剤を調製するための請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)で表される化合物の使用。
【請求項13】
式(V)
【化5】

[ここで、
Z、Z、R、R、Rは、請求項1〜4のいずれかにおける式(I)で定義した通りである]
で表されるアミドの製造方法であって、以下
(i)式(I)で表されるニトリルを加水分解して、式(V)で表されるアミドを得るステップ、
が含まれる、前記方法。
【請求項14】
式(IV)
【化6】

[ここで、Z、Z、R、R、Rは、請求項1〜4のいずれかにおける式(I)で定義した通りである]で表されるイミダゾリノン系除草剤化合物の調製方法であって、以下
(i)請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)で表されるニトリルを加水分解して、請求項13に記載の式(V)で表されるアミドを得るステップ、
及び
(ii)化合物(V)を、CHOM又はMOH/CHOH(ここで、Mは、アルカリ金属である)と反応させ、場合によりそのあと酸性化して、イミダゾリノン系除草剤(IV)を生成させるステップ、
が含まれる、前記方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、以下
(i−1)請求項5に記載の式(II)で表される無水物を、請求項5に記載のアミノニトリル(III)と反応させることによって、請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)で表される化合物を調製するステップ、及び
(i−2)そのようにして得られた式(I)で表される化合物を加水分解して、請求項13に記載の式(V)で表されるアミド化合物を得るステップ、
が含まれる、前記方法。

【公表番号】特表2012−508709(P2012−508709A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535961(P2011−535961)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064495
【国際公開番号】WO2010/054952
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】