説明

2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を伴う酸系高分子分散剤およびそれを含む分散体

【課題】本開示は、メチルエチルケトン(MEK)および酢酸ブチルのような有機溶媒中で金属酸化物ナノ粒子を分散させるための、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を含む酸系高分子分散剤に関係する。
【解決手段】本発明は、金属または金属酸化物粒子(例えば、ナノ粒子)を表面処理するための組成物に関係する。その組成物は、
i)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の比率の少なくとも一つの表面処理剤2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、および
ii)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の少なくとも一つの酸官能性高分子分散剤、
を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤(dispesant)または分散薬剤(dispesing agent)およびナノ粒子分散体(dispersion)を含む粒子分散体に関係する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物および金属ホウ化物のナノ粒子、特に、亜鉛、ジルコニウム、セリウム、チタニウム、アルミニウム、ランタン、インジウム、およびスズのもの、が重要な商用の用途を有する。ナノジルコニア、セリアおよびアルミナは、引っ掻き抵抗性のコーティング剤および伝熱流体に関して興味深い。加えて、アルミニウム酸化物の層で不動態化されたアルミニウム金属ナノ粒子は、エネルギー材料の開発に役立つ。インジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子は、透明な導電性コーティング剤、熱管理層、および静電気発散における用途がある。亜鉛酸化物およびチタニア(TiO2)は、サンスクリーン、衣料品およびコーティング剤を含むUVブロック用途に関して興味深い。金属酸化物ナノ粒子および/または金属酸化物表面を有するナノ粒子の他の用途は、磁性材料、不均一系触媒、トナー組成物およびセラミックスを含む。
【0003】
マスタバッチ用の分散体として、または完全に調合された組成物において、好都合な使い方をされるためのナノ粒子およびミクロ粒子を供給するために、これらの粒子は様々な液体および高分子マトリクスにおいて分散されなければならない。分散体の品質は意図する使用に釣り合ったものにすべきである。例えば、色やカスミの存在は、インクやコーティング剤を含む多くの用途で受け入れらない。加えて、分散体は、使用の直前に調製される必要はないが、調整後に貯蔵可能であるように、安定していることが好ましい。
【0004】
米国特許公報第2003/0032679号は、市販されている分散剤を用いた溶媒中のナノ粒子分散体について記載しており;この開示は本明細書に引用により取り込まれる。
【特許文献1】米国特許公報第2003/0032679号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸およびその誘導体を含む分散剤ならびに少なくとも一つの酸性の高分子分散剤で粒子表面を処理することにより、従来の分散体に関連する問題を解決する。これらの二つのタイプの分散剤は、有機溶媒と組み合わせたときに、安定で且つ透明な分散体をもたらす。加えて、この安定な分散体は、非常に良好な透明度を有する乾燥フィルムを生む調合物に調製され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属または金属酸化物粒子(例えば、ナノ粒子)を表面処理するための組成物に関係する。その組成物は、
i)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の比率の少なくとも一つの表面処理剤2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、および
ii)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の少なくとも一つの酸官能性高分子分散剤(acid functional polymeric dispersant)、
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、粒子の分散体を得るために少なくとも一つの溶媒と組み合わせることができる金属または金属酸化物粒子(例えば、ナノ粒子)を表面処理するための組成物に関係する。この分散体は、次々に他の材料に組み合わせられるかまたは組み込まれて、調合製品または最終使用製品を製造することができる。この組成物は、
i)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の比率の少なくとも一つの表面処理剤2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、および
ii)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の少なくとも一つの酸官能性高分子分散剤、
を含む。
【0008】
任意の好適な酸官能性高分子分散剤が採用され得るが、好適な高分子分散剤の例は、酸官能性高分子化合物のなかでも、酸性基を有するコポリマーまたは飽和リン酸ポリエステル(例えば、Disperbyk(登録商標)110、Disperbyk(登録商標)111)、顔料アフィニック(affinic)基を有する高分子ブロックコポリマーの溶液(例えば、Disperbyk(登録商標)174)からなる群から選択される少なくとも一部分を含む。本発明の一態様において、酸官能性高分子分散剤からできる少なくとも一つの脂肪酸誘導体が、他の酸官能性分散剤(例えば、Tego(登録商標)652)の代わりに、またはそれとともに使用される。
【0009】
任意の好適な溶媒またはそれらの組み合わせが採用され得るが、そのような溶媒の例は、メチルエチルケトン、トルエン、ブチルセロソルブアセテート(2−ブトキシエチルアセテート)および酢酸ブチルからなる群から選択される少なくとも一部分を含む。
【0010】
本発明の分散体は、最終使用製品または調合製品を製造するために、概して他の材料に組みこまれるかまたは組み合わせられる。調合製品中の分散体の量は、調合製品の約0.1wt%〜約80wt%の範囲をとり得る。本発明の分散体は、コーティング系を調合するあらゆる工程の間に添加され得る。
【0011】
本発明の分散体は、広範囲の調合製品で使用するために組みこまれ得る。このような調合製品の例は、製品のなかでも、接着剤、コーティング剤、複合材料、ラミネートを含む。
【0012】
これらの分散体に関する最終用途は、有機溶媒中に金属および金属酸化物ナノ粒子を含有する、比較的透明で且つカスミの少ないコーティング剤、結合剤、および表面処理剤用である。
【0013】
本発明の一態様において、本発明の分散体がコーティング剤を含む調合製品に添加される。このコーティング剤を利用して、下方にある基材に広範囲の特性を組みこむことができる。本発明の一態様において、このコーティング剤は、少なくとも一つのガラスおよびプラスチックを含む基材に適用される。このコーティング剤は、特性の中でも、改善された日照調整、帯電防止、導電性を与え得る。例えば、ITO粒子と酢酸ブチルを含む発明の分散体(例えば、後述する例2)は、窓フィルムの日照調整をもたらすために利用され得る。
【0014】
以下の例は、本発明の或る態様を説明するために提供され、そして添付される特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0015】
例1
2gの(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル酢酸塩(BCA)および5gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を、70gの酢酸ブチルで希釈した。攪拌しながら、25gのインジウムスズ酸化物ナノ粉末をゆっくりと加えた。混合物を1時間超音波処理し、次に1〜3時間、2500〜4200rpmのNetzsch社製ミルを通した。ミルの粉砕媒体は、0.1mmサイズのイットリアドープしたジルコニアであった。混合物は、平均初期粒子サイズZは30〜70nmであったが、安定しておらず、1時間で沈降(settle)した。
【0016】
例2
酸官能性高分子分散剤を粉砕の直後の混合物に添加したことを除いて、例1と同様の手順を行った。酢酸ブチルの場合、酸官能性高分子分散剤の量は、ITO固形物を基準として、10wt%超であった(例えば、ITO固形物を基準として、20wt%の酸官能性高分子分散剤)。平均粒子サイズZは30〜60nmであった。製品はダークブルーの分散体で、ITOの沈降はほとんどまたは全く見られなかった。
【0017】
例3
10gのDisperbyk110を酢酸ブチルに添加し、および攪拌しながらインジウムスズ酸化物ナノ粉末をゆっくり添加した。混合物を数分間超音波処理した。混合物はすぐに粘性が上昇しはじめ、そして分散プロセスは止まった。分散体は安定でなかった。
【0018】
例4
例1の分散体に、次に塩基官能性高分子分散剤(例えばByk(登録商標)9077 ポリエステル系コポリマー;Disperbyk(登録商標)2150;Disperbyk(登録商標)190;Disperbyk(登録商標)192;Disperbyk(登録商標)181;Disperbyk(登録商標)180;Disperbyk(登録商標)161;およびDisperbyk(登録商標)183)を添加すると、すぐに不安定な分散体をもたらすか、または数日以内に沈降/不安定化する分散体をもたらした。
【0019】
例5
酸官能性高分子分散剤を、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸とともに溶媒に添加したことを除いて、例1と同様の手順を行った。平均粒子サイズZは30〜60nmであった。製品はダークブルーの分散体で、ITOの沈降はほとんどまたは全く見られなかった。
【0020】
例6
(2−2−ブトキシエトキシ)エチル酢酸塩(BCA)を含めなかったことを除いて、例1と同様の手順を行った。平均粒子サイズZは30〜60nmであった。製品はダークブルーの分散体で、ITOの沈降はほとんどまたは全く見られなかった。
【0021】
例7
3.6gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を、70gの酢酸ブチルで希釈した。攪拌しながら、25gのインジウムスズ酸化物ナノ粉末をゆっくりと加えた。混合物は、「Rotostater」(IKA Labotechnik社, Ultra-Turrax, Model#SD45)を用いて、その液体レベルで横穴をカバーして、15分間、60ダイヤル速度で攪拌した。次に混合物を1時間、2500rpmで、次にもう1時間、4200rpmでNetzsch社製ミルを通した。ミルの粉砕媒体は、0.1mmサイズのイットリアドープしたジルコニアであった。次に、攪拌しながら0.93gのdisperbyk110と5.5gの(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル酢酸塩(BCA)を添加した。平均粒子サイズZは50〜80nmであった。製品はダークブルーの分散体で、ITOの沈降はほとんどまたは全く見られなかった。
【0022】
例8
4gの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を、72gのトルエンで希釈した(または代わりにメチルエチルケトンが溶媒として使用され得る)。攪拌しながら、25gの六ホウ化ランタンナノ粉末をゆっくりと加えた。混合物は、「Rotostater」(IKA Labotechnik社, Ultra-Turrax, Model#SD45)を用いて、その液体レベルで横穴をカバーして、15分間、60ダイヤル速度で攪拌した。次に、攪拌しながら2gのdisperbyk110と2gの(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル酢酸塩(BCA)を添加した。次に混合物を3時間、2500〜4200rpmでNetzsch社製ミルを通した。ミルの粉砕媒体は、0.1mmサイズのイットリアドープしたジルコニアであった。平均粒子サイズZは500〜1000nmであった。製品はダークパープルの分散体で、六ホウ化ランタンの沈降はほとんどまたは全く見られなかった。
【0023】
本発明は、本発明のいくつかの態様の説明であることを意図した実施例で開示した特定の実施態様によって範囲の制限をされることはなく、且つ機能的に同等であるあらゆる実施態様が本発明の範囲内である。実際に、本明細書に示されそして記載された本発明に加えて、本発明の種々の変更は、当業者に明らかであり、そして添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の比率の少なくとも一つの表面処理剤2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、および
ii)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の少なくとも一つの酸官能性高分子分散剤、
を含んでなる組成物。
【請求項2】
少なくとも一つの有機溶媒をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
有機溶媒が少なくとも一つのメチルエチルケトン、トルエン、ブチルセロソルブアセテート、および酢酸ブチルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一つの酸官能性高分子分散剤が、酸性基を有するコポリマーまたは飽和リン酸塩ポリエステルからなる群から選択される少なくとも一部分を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
i)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の比率の少なくとも一つの表面処理剤2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、および
ii)質量基準でナノ粒子に対して約1:10〜約5:1の少なくとも一つの酸官能性高分子分散剤、
iii)ナノ粒子、ならびに
iv)少なくとも一つの溶媒、
を含んでなる分散体。
【請求項6】
ナノ粒子が金属ナノ粒子を含んでなる、請求項5に記載の分散体。
【請求項7】
ナノ粒子が少なくとも一つの金属酸化物およびナノ粒子を含んでなる、請求項5に記載の分散体。
【請求項8】
金属酸化物ナノ粒子が、インジウムスズ酸化物ナノ粒子を含んでなる、請求項7に記載の分散体。
【請求項9】
溶媒が少なくとも一つのメチルエチルケトン、トルエン、ブチルセロソルブアセテート、および酢酸ブチルである、請求項8に記載の分散体。
【請求項10】
i)2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸;
ii)少なくとも一つの酸官能性高分子分散剤;
iii)少なくとも一つの有機キャリアー;
iv)ナノ粒子、
を含んでなる分散体であって、
ここで酸と分散剤の量が分散体を形成するのに十分である、分散体。

【公開番号】特開2008−303135(P2008−303135A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−113402(P2008−113402)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】