説明

2個のシースを備えた自己拡張型ステント搬送システム

【課題】2個のシースが医療装置搬送システムの先端上に搭載され、かつ医療装置を被覆保護する医療装置搬送システムを提供すること。
【解決手段】 医療装置搬送システムは、拡張可能な医療装置と、先端領域及び基端領域を有し、かつ、前記拡張可能な医療装置をその周囲に搭載するために、前記先端領域に医療装置搭載領域を有する内管124と、内管124に固定して取り付けられるとともに医療装置搭載領域の少なくとも一部の周囲に配置される先端側内シース140と、医療装置搭載領域の少なくとも一部の周囲に配置される先端側外シース144と、先端側外シースから前記医療装置搬送システムの基端に延びる外シース後退装置148とを備え、先端側内シース140はミシン目137付剥ぎ取り式シースからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮経管腔冠状血管形成(PTCA)術で使用される種類などのステント搬送カテーテルシステムに関する。詳細には、自己拡張型ステント、バルーン補助型拡張可能ステントまたはバルーン拡張可能ステントを解放するために後退させられる2個の後退可能シースを用いるステント搬送カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なPTCA術においては、ガイドカテーテルを患者の心臓血管系内に経皮挿入し、先端が所望の冠状動脈の孔に位置するまで、大動脈内を前進させる。次に、X線透視法を用いて、ガイドカテーテルを介して、ガイドワイヤを冠状動脈内の処置されるべき部位を横切って前進させる。オーバ・ザ・ワイヤ(OTW)バルーンカテーテルをガイドワイヤ上において治療部位まで前進させる。次に、バルーンを拡張させて、動脈を再開口させる。OTWカテーテルは、カテーテルと同じ長さのガイドワイヤ管腔を有するか、ガイドワイヤ管腔がカテーテルより実質的に短い迅速交換カテーテルであってもよい。これに代わって、固定ワイヤバルーンカテーテルを使用し得る。この装置は、カテーテルに取り付けられ、取り外し不能であるガイドワイヤを特徴とする。
【0003】
動脈閉鎖の防止、切開部の修復、または再狭窄の防止を助けるため、医師は、病変部における動脈内側の脈管の開通性を維持するための脈管内プロテーゼ、すなわちステントを挿入し得る。該ステントは、自己拡張型ステントでも、バルーン補助型拡張可能ステントでも、バルーン拡張可能ステントでもよい。後者のタイプでは、大抵、ステントはバルーン上において搬送され、バルーンはステントを拡張するために用いられる。自己拡張型ステントは、ニチノールなどの記憶材料から形成されるか、あるいは通常の金属で構成されるが自己拡張特性を示す形状に構成され得る。
【0004】
特定の公知のステント搬送カテーテルでは、ステントと任意選択のバルーンとは、カテーテルの先端において、コア管腔の周囲に配置される。ステント及びバルーンは、シースまたはスリーブによって保持され、被覆される。先端部が目標脈管の所望の位置にあるとき、シースまたはスリーブを後退させて、ステントを露出させる。シースを除去した後、ステントは、自由に自己拡張するか、またはバルーンによって拡張される。
【0005】
後退可能シースを利用する冠状ステント留置システムにおいて遭遇する1つの問題は、シースの後退時におけるシースとステントとの相互作用である。一般的には、シースがステントから摺動して外れる際、ステントがシースによる潜在的な損傷に晒される。この問題は、シースを軟質材料で形成することにより、最小限に抑えられる一方で、多くの場合において、係る材料は、長期保存により内シースのクリープ変形を生じる自己拡張型ステントと併用することは望ましくない。
【0006】
医療装置のための非損傷性保護用内シースを提供し、医療装置を短時間保持可能であり、かつ、医療装置を長時間保持可能である付加的な外シースを内シース上にさらに有し、それにより、該医療装置が適当な貯蔵寿命を有することを可能にする医療装置搬送システムを提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、内シース及び外シースの2個のシースが医療装置搬送システムの先端上に搭載される医療装置を被覆する、医療装置搬送システムを提供することにある。より詳細には、本発明は、内シースが剥ぎ取り式シースであり、外シースが後退可能シースである医療装置搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を解決するために、請求項1に記載の発明は、基端及び先端を有する医療装置搬送システムであって、拡張可能な医療装置と、先端領域及び基端領域を有し、かつ、前記拡張可能な医療装置をその周囲に搭載するために、同先端領域に医療装置搭載領域を有する内管と、同内管に固定して取り付けられるとともに同医療装置搭載領域の少なくとも一部の周囲に配置される先端側内シースと、同医療装置搭載領域の少なくとも一部の周囲に配置される先端側外シースと、同先端側外シースから同医療装置搬送システムの基端に延びる外シース後退装置と、を備えるシステムにおいて、同先端側内シースはミシン目付剥ぎ取り式シースであることを特徴とする医療装置搬送システムを提供する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、外シースがクリープ耐性を有するよう構成されることをその要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、内シースが外シースよりも低いクリープ耐性を有するよう構成されることをその要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、外シースが内シースよりも厚い材料から形成されることをその要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、後退装置がプルワイヤが取り付けられたプルカラーから成ることをその要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、後退装置が、先端を有する基端側外管と、基端及び先端を有する折りたたみ式シースと、折りたたみ式シースの基端が基端側外管の先端から延びることと、基端及び先端を有する先端側外管と、先端側外管の基端が折りたたみ式シースの先端から延びることと、先端側外シースから基端方向に延びる摺動可能なプルワイヤと、プルワイヤを基端方向に摺動させると後退装置の先端が基端方向に移動することと、から成ることをその要旨とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、内シースが内管に面する内周面と外シースに面する外周面とを有し、外シースが内シースに面する内周面と外部に面する外周面とを有し、2つのシース間の摩擦力を低減するために、内シースの外周面または外シースの内周面の少なくとも一方の少なくとも一部に潤滑剤が塗布されることをその要旨とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、内シース及び外シースの少なくとも一方が多孔質材料から形成されることをその要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、同拡張可能な医療装置は、拡張可能なステント、拡張可能な移植片及び格調可能な大静脈フィルタの内から選択され、同拡張可能な医療装置が医療装置搭載領域上に搭載されることをその要旨とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の医療装置搬送システムにおいて、同拡張可能な医療装置が拡張可能なステントであることをその要旨とする。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の医療装置搬送システムにおいて、同拡張可能なステントが自己拡張可能であることをその要旨とする。
【0015】
本発明によると、外シースは、内シースよりも高いクリープ耐性を有するように構成されることが望ましい。外シースは、内側の材料よりも高いフープ強度を有する材料から形成され得る。内側の材料は、該材料が後退させられるか、または該材料の破損により開放する前の少なくとも短時間の間、医療装置を搬送システム上の所定位置に保持できなければならない。外シースは、医療装置が妥当な貯蔵寿命を有し得るように、より長期間にわたって医療装置を保持できなければならない。
【0016】
このため、本発明は、搬送システムの基端にマニホールドを有する医療装置搬送システムを提供する。マニホールドから先端方向には内管が延びている。内管の先端には、医療装置をその上に同軸を有して搭載するための医療装置搭載領域を有する。内管の先端領域において内管に取り付けられる先端側内シースは、医療装置搭載領域を少なくとも部分的に被覆している。先端側内シースは、内管の周囲に同軸を有して配置されている。医療装置搬送システムは、内管の周囲に同軸を有して配置される先端側外シースも備える。先端側外シースの少なくとも一部は内シースの少なくとも一部の周囲に配置される。
【0017】
本発明の一実施態様において、先端側内シースは剥ぎ取り式シースであり、かつ先端側外シースは、外シース後退装置によって後退可能である。外シース後退装置は、マニホールドから先端方向に延びる。先端側外シースは該後退装置の先端から延びる。
【0018】
本発明の別の実施態様において、先端側内シースは内シース後退装置によって後退可能である。内シース後退装置はマニホールドから先端方向に延びている。先端側内シースは、内シース後退装置の先端から延びている。同様に、外シースは、外シース後退装置によって後退可能である。外シース後退装置はマニホールドから先端方向に延びている。先端側外シースは、外シース後退装置の先端から延びている。
【0019】
本発明の別の実施態様において、先端側内シースは、内シース後退装置によって後退可能である。内シース後退装置は、マニホールドから先端方向に延びる。先端側内シースは、内シース後退装置の先端から延びる。先端側外シースは内シースと接し、内管の先端領域から基端方向に延びる。先端側外シースは、装置の体内への挿入に先立って除去される。
【0020】
すべての実施態様において、搬送システムは、医療装置搭載領域上に搭載される医療装置をさらに備える。本システムと共に使用するために企図された医療装置にはステント及び移植片が含まれる。ステントは自己拡張式、またはバルーン補助式拡張可能ステントであることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、剥ぎ取り式内シースの存在により、外シースが摺動して除去される際に、医療装置が損傷されないよう保護され、外シースを除去後、拡張可能な医療装置の拡張力により剥ぎ取り式内シースが開放され、医療装置搬送システムの回収と同時に同内シースが体内から除去されるので、非常に簡単な構成にて、医療装置を搬送時まで保持及び保護することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は多数の異なる形態にて実施可能であるが、本願では本発明の特定の好ましい実施態様を詳細に説明する。本記載は本発明の原理の例証であり、図示した特定の実施態様に本発明を限定するものではない。
【0023】
本発明は、医療装置が内シース及び外シースの双方によって収容、及び/または包囲、及び/または保護される医療装置搬送システムを提供する。
実施態様のいくつかにおいて、内シースは剥ぎ取り式シースである。剥ぎ取り式内シースの存在により、外シースが摺動して除去される際に、医療装置が損傷されないよう保護される。外シースを除去した後、内側の剥ぎ取り式シースは、もはや外シースによって収容されておらず、自己拡張式、バルーン補助式またはバルーン拡張可能医療装置の拡張力の結果として開放する。
【0024】
図を参照すると、図1は、概して符号110で示される本発明の医療装置搬送システムの一実施態様を示す。医療装置搬送システム110は、基端と先端とを有し、搬送システム110の基端に位置するマニホールド120を備える。マニホールド120から先端方向には、先端領域128と基端領域132とを有する内管124が延びている。内管124の先端領域には、医療装置をその上に同軸を有して搭載するための医療装置搭載領域136が存在する。搬送システム110は、先端領域128において内管124に取り付けられる先端側内シース140をさらに備える。先端側内シース140は、内管124の周囲に同軸を有して配置され、医療装置を医療装置搭載領域の周囲に保持するため、医療装置搭載領域136の少なくとも一部を、望ましくはその実質的な部分を、より望ましくはその全体を被覆する。内シース140は医療装置搬送システムに固定的に取り付けられ、望ましくは内管に搭載される。図2に示されるように、先端側内シース140は、ミシン目137または刻み目を有する剥ぎ取り式シースである。先端側外シース144は内管124の周囲に同軸を有して配置され、先端側外シース144の少なくとも一部は、先端側内シース140の少なくとも一部の周囲に配置される。前記装置は、マニホールド120から先端方向に延びる外シース後退装置148をさらに備える。先端側外シース144は、外シース後退装置148の先端から延びていることが分かる。
【0025】
様々な外シース後退装置が本発明の実施に使用され得るが、図1及び図3に示されるように、好ましい外シース後退装置148は、基端側外管152と、基端側外管152の先端から延びる折りたたみ式シース156と、先端側外管160とから成る。先端側外管160の基端は折りたたみ式シース156の先端から延びる。摺動可能なプルワイヤ164は、マニホールド120から先端側外シース144に延びる。使用時、プルワイヤ164を基端方向に摺動させると、後退装置148の先端は基端方向に移動し、それによって先端側外シース144を後退させる。次に、拡張可能な医療装置の拡張力の結果、剥ぎ取り式内シース140が開放することが可能である。剥ぎ取り式内シースは医療装置搬送システムに固定的に取り付けられているため、医療装置搬送システムが回収されると、剥ぎ取り式内シースは体内から抜去される。
【0026】
ステント搬送システムは、医療装置搭載領域136上に搭載される医療装置を任意にさらに備え得る。様々な医療装置が企図されるが、図1及び図2に示される実施態様においては、医療装置は自己拡張型ステント168である。
【0027】
本発明の別の実施態様においては、図4に示されるように、概して符号210で示される搬送システムは、前述の実施態様と同様に、マニホールド220と、先端領域228、基端領域232、及び医療装置をその上に同軸を有して搭載するための医療装置搭載領域236を有する内管224とから成る。同様に、前述の実施態様のように、搬送システム210は、先端側内シース240をさらに備える。先端側内シース240は内管224の周囲に同軸を有して配置され、医療装置搭載領域236の少なくとも一部を被覆する。前述の実施態様とは異なり、搬送システム210は、先端及び基端を有する内シース後退装置241をさらに備える。内シース後退装置241は、内シース240の先端の基端上に搭載されるプルカラー243と、マニホールド220からプルカラー243へ先端方向に延びるプルワイヤ245とから構成される。
【0028】
前述の実施態様と同様に、先端側外シース244は内管224の周囲に同軸を有して配置されている。先端側外シース244の少なくとも一部は、先端側内シース240の少なくとも一部の周囲に配置される。また、本装置は、図1〜図3の実施態様で説明したように、基端側外管252と、折りたたみ式シース256と、先端側外管260とから成る外シース後退装置248を備える。この医療装置搬送システムの折りたたみ式シース部は図3に示されるものと似ているが、内シースに協働する摺動可能なプルワイヤに相当する付加的なワイヤが存在する点のみにおいて異なっている。摺動可能なワイヤ264は、マニホールド220から先端側外シース244に延び、使用時、外シース後退装置は、前述の外シース後退装置に関して説明されたのと同様に作動する。これに代わって、図4には示されていないが、外シース244を後退させるために使用される後退装置248と同様の折りたたみ式後退装置によって、内シース240を後退させてもよい。
【0029】
また、医療装置搭載領域236上に搭載される自己拡張型ステント268の形態にある任意の医療装置も示されている。
別の実施態様においては、本発明は、図5に概して符号310で示される医療装置搬送システムから成る。医療装置搬送システム310は、前述の実施態様と同様に、マニホールド320と、先端領域328、基端領域332、及び医療装置をその上に同軸を有して搭載するための医療装置搭載領域336を有する内管324とから成る。搬送システム310は、先端側内シース340をさらに備える。先端側内シース340は内管324の周囲に同軸を有して配置され、医療装置搭載領域336の少なくとも一部を被覆する。図4の実施態様と同様に、搬送システム310は、先端及び基端を有する内シース後退装置341をさらに備える。内シース後退装置341は、内シース340の先端の基端上に搭載されるプルカラー343と、マニホールド320からプルカラー343へ先端方向に延びるプルワイヤ345とから構成される。
【0030】
前述の実施態様と同様に、先端側外シース344(靴下の形状)は内管324の周囲に同軸を有して配置されている。先端側外シース344の少なくとも一部は、先端側内シース340の少なくとも一部の周囲に同軸を有して配置される。前述の実施態様のいずれとも異なり、先端側外シース344は内管の先端から基端方向に延びるとともに、先端側外シースを先端方向に摺動させることにより取り外し可能である。先端側外シース344は先端側内シース340と接している。外管360は、プルワイヤを保持するとともに、内管の周囲に同軸を有して搭載される。先端側外シース344は、図5では、先端において閉鎖しているように示されているが、先端において任意に開放してもよい。使用時、先端側外シース344は、医療装置伝達システムを体内に挿入する前に除去される。アンダーソン(Anderson)らに付与された米国特許第5,800,517号に開示されているような取り外し可能なシースを使用してもよく、当該特許は参照によりその全容が本願に援用される。
【0031】
また、医療装置搭載領域336上に搭載される自己拡張型ステント368の形態にある任意の医療装置も示される。
図示しない別の実施態様において、医療装置搬送システムは図5に図示されるものとほぼ同様であるが、内シースを後退させるための後退装置が図1及び図3に示されるような折りたたみ式シースである点のみにおいて異なっている。
【0032】
本発明の様々な実施態様において、当業で公知である適当なマニホールドを使用し得る。2個の後退可能シースを有する実施態様においては、マニホールドは2個の後退機構を収納できなければならない。1個の後退装置が用いられる別の実施態様においては、マニホールドは、1個の後退装置を収納できなければならない。
【0033】
様々な実施態様において使用される内管は、当業において公知であるような適当な材料から形成され得る。内管は、ポリマーに包まれたブレードまたはコイルなどの可撓性であるが、非圧縮性である構造物からなることが望ましい。係る構造物は当業においては公知である。ブレード/コイルは、テフロン(商標)の内層を備えたポリイミドなどのポリマー内に収容されたステンレス鋼からなり得る。
【0034】
後退可能シースに取り付けられるプルカラーとしては、ロクタイト4011(Loctite 4011)、すなわちシアノアクリレートなどの適当な接着剤によって後退可能シースの内部に取り付けられたステンレス鋼製のリング状部材が適当である。プルカラーは金などのX線不透過性素材から形成されることが望ましい。
【0035】
外シースは、ステントの非拡張形状にある自己拡張型ステントを収容するのに充分な強度を有する材料から形成されることが望ましい。外シースは、クリープ耐性を有するように構成されることが望ましい。また、内シースは外シースよりも低いクリープ耐性を有するように構成されることが非常に望ましい。
【0036】
本発明の利点のいくつかは、外シースが内シースよりも厚い材料から形成されるシステムにおいても実現される。
マニホールドに延びる後退装置によって外シースが後退可能である実施態様に関して、外シースに適した材料は、ポリイミド、ピーバックス(Pebax)、ポリエチレン、ナイロン、及び金属である。靴下状の先端側外シースに適した材料は、ポリイミド、ピーバックス(Pebax)、ポリエチレン、ナイロン、及び金属である。先端側内シースに適した材料は、剥ぎ取り式の実施態様及び後退可能な先端側内シースの実施態様に関して、PTFE、ピーバックス(Pebax)、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリイミドである。
【0037】
本発明は、内シース及び外シースに多孔質材料を使用することも企図し、それによって医療装置搭載領域への体液の流入を可能にする。これは、医療医装置の該領域において空気を強制排出することにより医療装置を準備する上で有用である。適当な多孔質材料は、延延加工されたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエステル及びシリコーンである。該材料は、0.01mmから5.0mmの範囲のポアサイズを有することが望ましい。
【0038】
剥ぎ取り式シースは、拡張する医療装置の力によって機械的に解放されるように説明してきたが、本発明は、加水分解によって解放される剥ぎ取り式シースの使用も企図する。該シースは生体適合水溶性材料を介して「接着」封止される。次にシースは、「接着剤」を溶解するためにシースに水を供給することにより、開放され得る。接着剤は、体温と同じ温度の流体の存在下では安定しているが、42℃の温度の水などの若干高温の流体に晒されると溶解するように任意に選択される。これに代わって、該シースは、シースに供給される紫外線放射またはガンマ線放射などの光化学作用エネルギーによって解放可能な材料により接着封止され得る。
【0039】
先端側内シース及び外シースは、メタクリル樹脂またはウレタン接着剤であるH.B.フラー3507(H.B.Fuller3507)のほか、シアノアクリレートであるロクタイト4011を含む適当な接着剤の使用によって、内管及び/または後退装置に接着され得る。他の適当な接着方法としては、圧接、加熱溶接及びレーザ溶接がある。
【0040】
本発明は、外シースの後退または除去時に内シース及び外シースの相対移動を容易にするため、内シース及び外シースの一方ないし双方の少なくとも一部上に様々な潤滑剤を使用することも企図する。図2に見られるように、先端側内シース140は、内管に面する内周面と、先端側外シース144に面する外周面138とを有する。同様に、先端側外シース144は、先端側内シース140に面する内周面と、外部に面する外周面とを有する。潤滑剤は、2つのシース間の摩擦力を低減するため、内シース140の外周面138または外シース144の内周面146の少なくとも一方の少なくとも一部に塗布される。潤滑剤は、これらの面に選択的に塗布されるか、あるいは、面全体に塗布されてもよい。
【0041】
潤滑剤が塗布される内周面及び外周面は図2において強調されているが、本発明では、他の実施態様でも、内シースの外周面と外シースの内周面への係る潤滑剤が同様に使用されることが理解される。
【0042】
上記実施態様のすべてにおいて、潤滑剤は、内壁及び/または外壁の少なくとも一部に任意に塗布され得る。適当な潤滑剤は、シリコーン、PVP(ポリビニルピロリドン)、PPO(酸化ポリプロピレン)及びPEOを含む。さらにサイメッド(SciMed)製のバイオスライド(BioSlide、商標)コーティングも使用され得る。バイオスライド(商標)とは、アゾビスイソブチロニトリルなどの光開始剤の存在下、水及びイソプロピルアルコールの溶液内において重合された酸化ポリエチレンとネオペンチルグリコールジアクリレートから成る親水性潤滑コーティング剤である。
【0043】
折りたたみ式シース、特に内シースに隣接する装置の部分を使用する本発明の医療装置搬送システムにおける実施態様の形状のさらなる詳細は、セント・ジャーメイン(St.Germain)及びオルソン(Olson)に付与された米国特許第5,534,007号に開示された様々な実施態様に見られ、参照によりその全容が本願に援用される。
【0044】
外シースを後退させるための折りたたみ式シース後退装置の使用に加え、本発明は、同時係属中の公に譲渡された、1996年9月27日に出願された米国特許出願第08/722,834号と、1998年5月1日に出願された一部継続の出願第09/071,484号に記載されるような摺動可能に封止された後退可能シース及びミッドシャフトシールを含む、当業で公知であるような他の適当な後退手段の使用も企図する。両出願は、参照によりその全容が本願に援用される。他の企図される後退手段は、1998年5月27日に出願された米国特許出願第09/071,484号に記載されているようなプルカラーによって直接作動されるシースと、ヘイン(Heyn)らに付与された米国特許第5,201,757号に記載されるようなネジ状後退装置とを含み、これらすべては、参照によりその全容が本願に援用される。
【0045】
図に示される医療装置はすべて自己拡張型ステントとして示されているが、バルーン拡張式ステントを含む、機械的に拡張可能な他のステントも使用し得る。適当な1つのステントの斜視図を図6に符号668にて示す。本搬送システムによる導入に適した他の医療装置は、移植片及び大静脈フィルタなどのインプラントである。適当な移植片は図7に符号768にて示され、適当な大静脈フィルタは図8に符号868にて示される。
【0046】
図に示されるように、医療装置搬送システムは、バンパ172,272,372,472及びマーカ176,276,376,476などの当業で公知であるような他の任意の機能をさらに備え得る。バンパ172〜472はポリエチレンから形成され、H.B.フラー3507などの接着剤によって内管124に取り付けられる。マーカバンド176〜476は、ステンレス鋼などの他の材料も使用され得るが、好ましくは、金などのX線不透過性材料から形成される。マーカは、位置決めを容易にするために備えられ、ロクタイト4011などの接着剤によって内管124に取り付けられ得る。
【0047】
本発明のいくつかの特定の実施態様を説明してきたが、本発明は、固定ワイヤカテーテル、オーバ・ザ・ワイヤカテーテル、迅速交換カテーテルを含む、本願に具体的に説明されていない任意の他の適当なカテーテルのデザインに2個のシースを備えることに広く関する。
【0048】
固定ワイヤ型の場合、ガイドワイヤは医療装置搬送システムに固定的に取り付けられる。固定ワイヤ搬送システムはユーテニュアー(Euteneuer)らに付与された米国特許題5,702,364号に記載され、参照によりその全容が本願に援用される。前記固定ワイヤ搬送システムは、本発明の医療装置搬送システムと共に使用するために適当に変更され得る。
【0049】
オーバ・ザ・ワイヤの実施態様では、内管がマニホールドに向かって基端方向に延び、ガイドワイヤが基端から内管内に挿通され得、ガイドワイヤはシステムの先端に延びている。次に、医療装置搬送システムがガイドワイヤ上に搭載され得る。
【0050】
同様に、迅速交換搬送システムはセント・ジャーメイン(St.Germain)らに付与された米国特許第5,534,007号に記載され、参照によりその全容が本願に援用される。前記迅速交換搬送システムは、本発明の医療装置搬送システムと共に使用するために適当に変更され得る。詳細には、迅速交換型のものは、ガイドワイヤをその内部に挿入させるために、システムの基端の先端側のシステムに沿った位置におけるガイドワイヤポートにおいて、内管を終結させることにより実現される。迅速交換の実施態様では、医療装置搬送システムの一部のみがガイドワイヤ上に搭載される。一般的には、医療装置搬送システムの使用可能な長さは約135cmである。迅速交換医療装置搬送システムでは、ガイドワイヤが内管に接する地点から先端の頂点までの距離は約5cm〜35cmである。
【0051】
以上の例及び開示は例証を目的とし、全てを網羅するものではない。以上の例及び説明は、同業者に多くの変更及び代替案を示唆する。すべての代替案及び変更は本願の特許請求の範囲内に含まれる。当業者は、本願に記載された特定の実施態様に対する別の均等物を認識し得、該均等物は本願の特許請求の範囲によって包含されることも意図される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の医療装置搬送システムの一実施態様の長手方向断面図。
【図2】図1の実施態様の先端の部分破断斜視図。
【図3】図1の医療装置搬送システムにおける領域3の拡大図。
【図4】本発明の医療装置搬送システムの一実施態様の長手方向断面図。
【図5】本発明の医療装置搬送システムの一実施態様の長手方向断面図。
【図6】本発明の医療装置搬送システムと併用されるステントの斜視図。
【図7】本発明の医療装置搬送システムと併用される移植片の斜視図。
【図8】本発明の医療装置搬送システムと併用される大静脈フィルタの側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端及び先端を有する医療装置搬送システムであって、
拡張可能な医療装置と、
先端領域及び基端領域を有し、かつ、前記拡張可能な医療装置をその周囲に搭載するために、前記先端領域に医療装置搭載領域を有する内管と、
前記内管に固定して取り付けられるとともに前記医療装置搭載領域の少なくとも一部の周囲に配置される先端側内シースと、
前記医療装置搭載領域の少なくとも一部の周囲に配置される先端側外シースと、
前記先端側外シースから前記医療装置搬送システムの基端に延びる外シース後退装置と、を備え、前記先端側内シースはミシン目付剥ぎ取り式シースである、医療装置搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、外シースがクリープ耐性を有するよう構成される医療装置搬送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、内シースが外シースよりも低いクリープ耐性を有するよう構成される医療装置搬送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、外シースが内シースよりも厚い材料から形成される医療装置搬送システム。
【請求項5】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、前記後退装置が、プルワイヤが取り付けられたプルカラーから成る医療装置搬送システム。
【請求項6】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、前記後退装置が、
先端を有する基端側外管と、
基端及び先端を有する折りたたみ式シースと、折りたたみ式シースの基端が基端側外管の先端から延びることと、
基端及び先端を有する先端側外管と、先端側外管の基端が折りたたみ式シースの先端から延びることと、
先端側外シースから基端方向に延びる摺動可能なプルワイヤと、
プルワイヤを基端方向に摺動させると、後退装置の先端が基端方向に移動することとから成る医療装置搬送システム。
【請求項7】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、内シースが内管に面する内周面と外シースに面する外周面とを有し、外シースが内シースに面する内周面と外部に面する外周面とを有し、2つのシース間の摩擦力を低減するために、内シースの外周面または外シースの内周面の少なくとも一方の少なくとも一部に潤滑剤が塗布される医療装置搬送システム。
【請求項8】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、内シース及び外シースの少なくとも一方が多孔質材料から形成される医療装置搬送システム。
【請求項9】
請求項1に記載の医療装置搬送システムにおいて、前記拡張可能な医療装置は、拡張可能なステント、拡張可能な移植片及び格調可能な大静脈フィルタの内から選択され、同拡張可能な医療装置が医療装置搭載領域上に搭載される医療装置搬送システム。
【請求項10】
請求項9に記載の医療装置搬送システムにおいて、前記拡張可能な医療装置が拡張可能なステントである医療装置搬送システム。
【請求項11】
請求項10に記載の医療装置搬送システムにおいて、前記拡張可能なステントが自己拡張可能である医療装置搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−6173(P2009−6173A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250579(P2008−250579)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願2000−593147(P2000−593147)の分割
【原出願日】平成12年1月11日(2000.1.11)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】