説明

2光子吸収光記録媒体

【課題】再生ピックアップが共焦点系である場合に、簡単な構成で、記録再生時の信号変動の小さい2光子吸収光記録媒体を提供すること。
【解決手段】共焦点系再生ピックアップで再生可能な、基板上に記録層単位を1単位以上含む2光子吸収光記録媒体であって、該記録層単位は同時2光子吸収により情報を記録可能な記録層に用いられる記録材料に少なくとも(1)2光子吸収化合物、(2)重合開始剤、(3)重合性化合物、(4)高分子バインダーを含む有機記録層と無機中間層とであり、該無機中間層の膜厚が10nm以上95nm以下であり膜厚変動が5nm以下である2光子吸収光記録媒体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2光子吸収を用いて記録した多層反射型の光記録媒体に関するもので、2光子吸収で記録ピットを記録形成し、それらの記録ピットの再生反射光強度変動を小さくすることができるようにした、2光子吸収光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機化合物の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても「2光子吸収」とは「非共鳴2光子吸収」を指す。また、「同時2光子吸収」の「同時」を略して単に「2光子吸収」と記すこともある。
【0003】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
【0004】
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。
したがって、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて重合を起こすことができれば、3次元空間の任意の場所に重合を起こせ、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体や、微細3次元光造形材料等への応用も可能となる。
【0005】
2006年、DVDに代わる第3世代光ディスクとして、ブルーレイディスク(BD)とHD DVDのレコーダーが国内の電機メーカーから相次いで発売された。ともに高品位(High-Definition)ビデオ映像を1枚のディスクに2時間半以上記録できる容量を実現することが目的で開発された。ハードディスクのカバー層を0.1ミリメートルまで薄くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくして大容量化することに主眼を置くソニーや松下電器などのBDと、従来のDVDとの互換性を優先した東芝、NECなどのHD DVDの2つの規格がある。
【0006】
BDとHD DVDの次にくる光ディスク技術もすでに研究・開発が始まっている。テラ(1012バイトクラス(現在はギガ=10バイトレベル))の容量を持つディスクを実現するために、ホログラフィー方式、多層化/2光子吸収技術、ニア・フィールド記録、スーパーRENS、SVODなどの光ディスク記録分野において、研究・開発が国内の大学や企業で進められている。
【0007】
その中で2光子吸収光記録媒体は、ホログラフィー技術と並んで大容量化の可能性がある。さらに、例えば特開2007−293970号公報(特許文献1)で示されるような多層化技術等をうまく用いることで、2光子吸収光記録媒体は着色した記録層が無いために20層以上の層構成が可能であるので、現行のブルーレイドライブ等の仕様に合わせることの可能性もみえてきた。(BD−Rは8層が限界)
しかし2光子吸収光記録は、記録のために従来に比べて非常に強いレーザーを必要とするため、コスト高になる等の問題があった。これに対し、特開2004−292475号公報(特許文献2),特開2004−346238号公報(特許文献3)の方式では、高感度の2光子吸収化合物と、上に述べた非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて重合を起こす方式とを採用し、(1)2光子吸収化合物、(2)重合開始剤、(3)重合性化合物、(4)高分子バインダーを含む有機記録層を用いた多層反射型記録媒体で記録ピットを記録することで、3次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で重合を起こすことが可能となり、従来より100倍以上の高感度の記録材料が見いだされ、その結果、記録用にも安価なレーザーが使用できるようになると期待されている。
【0008】
【特許文献1】特開2007−293970号公報
【特許文献2】特開2004−292475号公報
【特許文献3】特開2004−346238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献2,3記載の(1)2光子吸収化合物、(2)重合開始剤、(3)重合性化合物、(4)高分子バインダーを含む有機記録層を用いた多層反射型光記録媒体で記録ピットを記録した場合、記録ピット再生時の反射光強度変動を小さくすることが困難であり、十分にその特性を生かせていなかった。
【0010】
一方、特許文献1に記載されている多層化技術では、有機記録層、溶融防止層、有機中間層が基板側からこの順に形成された記録層単位を採用しているが、記録層の感度が低く、また、記録層単位が3層からなるので反射構成が複雑になり、また製造工程にも手間がかかるという問題があった。
ところで、数十層の多層の再生信号処理では、狙いの層以外の上下層のクロストークが大きくなり反射強度に影響を及ぼす。そのためそのため検知器を共焦点系にする必要がある。(図3)共焦点系検知器では、観察物を通った光をレンズで再度集光させ、焦点深さ近傍の光が透過するようにピンホールを配置することで、焦点位置の光は100%透過させる一方でピンボケ光を遮断している。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点を解決した2光子吸収光記録媒体、すなわち、再生ピックアップが共焦点系である場合に、簡単な構成で、記録再生時の信号変動の小さい2光子吸収光記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らの鋭意検討の結果、(1)2光子吸収化合物、(2)重合開始剤、(3)重合性化合物、(4)高分子バインダーを含む有機記録層を用いた多層反射型光記録媒体で記録ピットを記録し、記録ピット再生時の反射光強度変動を小さくするためには、無機中間層と有機記録層の積層という膜構成を採用し、無機中間層の膜厚変動を制御すること、さらには無機中間層の厚さを特定の厚さに設定することが適していることが分かり、本発明に至った。
すなわち、本発明は下記のとおりのものである。
1.共焦点系再生ピックアップで再生可能な、基板上に記録層単位を1単位以上含む2光子吸収光記録媒体であって、該記録層単位は同時2光子吸収により情報を記録可能な記録層に用いられる記録材料に少なくとも(1)2光子吸収化合物、(2)重合開始剤、(3)重合性化合物、(4)高分子バインダーを含む有機記録層と無機中間層とであり、該無機中間層の膜厚が10nm以上95nm以下であり膜厚変動が5nm以下である2光子吸収光記録媒体。
2.前記無機中間層の膜厚が40nm以上60nm以下である上記1.記載の2光子吸収光記録媒体。
3.前記無機中間層の膜厚変動が3nm以下である上記1.又は2.記載の2光子吸収光記録媒体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の2光子吸収光記録媒体は、記録層単位が無機中間層と有機記録層の積層という簡単な層構成でありながら、再生ピックアップが共焦点系の場合に、記録後の記録ピット再生時の再生レーザー光の反射強度変動が少なくなり、安定な再生信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の2光子吸収光記録媒体について詳しく説明する。
本発明の2光子吸収光記録媒体は、同時2光子吸収により情報を記録可能な記録層が、用いられる記録材料に少なくとも(1)2光子吸収化合物、(2)重合開始剤、(3)重合性化合物、(4)高分子バインダーを含む有機記録層であり、樹脂基板上に基板側から順に無機中間層、有機記録層を積層した記録層単位を1単位以上含んだものとなっている。
本発明は、再生ピックアップが共焦点系の場合に、従来試みられていない、無機中間層、有機記録層を積層した記録層単位という簡単な層構成で、無機中間層についてその膜厚が10nm以上95nm以下であり膜厚変動が5nm以下の範囲に構成することで、記録ピット再生時の反射光強度変動を小さくすることができることを見出したものである。
【0015】
本発明の2光子吸収光記録媒体の1単位以上の記録層単位は、図1に示すように薄膜無機中間層と有機記録層で構成される。
その際、共焦点系の検知器をつかうと、再生時には光学的に有機記録層の膜厚の影響を考えなくて良い。なぜなら焦点位置からずれた距離にあるぼけ部分を除去するからである。共焦点系検知器では、観察物を通った光をレンズで再度集光させ、焦点深さ近傍の光が透過するようにピンホールを配置することで、焦点位置の光は100%透過させる一方で、ピンボケ光は遮断する。(図3)
したがって、再生時の反射光はフォーカスの合う有機記録層と無機中間層と接している面(界面)からの反射光だけを考える(図1参照)ことで済む。
一方、記録レーザーのフォーカスは無機中間層と有機色素層の界面に合うため、無機中間層を介してその両面に記録ピットが形成される(図2参照)。
そのため、無機中間層の膜厚が変動すると、有機記録層が記録されて記録ピットとなる部分が無機中間層の膜厚変動の影響を受け、それが記録部の反射光強度に影響して、反射光強度が変動すると考えた。
そこで鋭意検討した結果、本発明の層構成では、無機中間層の膜厚変動を少なくして5nm以下とすることで反射光強度への影響が少なくなったが、それだけでは十分でなく、無機中間層の膜厚を10nm以上95nm以下に薄膜化することも、記録ピットの再生反射光強度の変動に大きく寄与していることを見出した。
【0016】
〔有機記録層〕
本発明に係る2光子吸収光記録媒体では、有機記録層において<2光子吸収化合物>が2光子記録光照射により2光子を吸収して生成した2光子吸収化合物励起状態が、電子移動またはエネルギー移動により<重合開始剤>を活性化して、重合性基を有する色素及び色素部分を有さない<重合性化合物>の重合を起こし、その際、光照射部では重合性基を有する色素及び色素部分を有さない重合性化合物が主に移動し、光未照射部に<高分子バインダー>が主に追いやられることによる屈折率変調により、記録ピットを記録する。
【0017】
共焦点系検知器では、先にも説明したように、観察物を通った光をレンズで再度集光させ、焦点深さ近傍の光が透過するようにピンホールを配置することで、焦点位置の光は100%透過させる一方で、ピンボケ光を遮断する。(図3)
そのため有機記録層の膜厚は、共焦点検知器でピントがぼやける厚さ以上であれば好ましい。なぜならそのような系では、有機色素層の厚さは無限大と仮定することができ、再生反射光は色素層の膜厚の影響をうけず、焦点部分の反射だけを考えれば良くなる。
【0018】
<2光子吸収化合物>
本発明の2光子吸収光記録媒体の有機記録層に含まれる2光子吸収化合物について説明する。
本発明に用いられる2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収(化合物の線形吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象)を行う化合物である。
【0019】
本発明に用いる2光子吸収化合物は好ましくは有機化合物である。
なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくてもよいことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でもよい。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でもよく、置換されていても置換されていなくてもよい。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でもよく、置換フェニル基でもよい。
【0020】
本発明に用いられる2光子吸収化合物はメチン色素であることが特に好ましい。なおここで色素とは可視光領域(400〜700nm)または近赤外領域(700〜2000nm)に吸収の一部を有する化合物に対する総称である。
本発明におけるメチン色素としてはいかなるものでもよい。が、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、ポリエン色素等が挙げられる。
【0021】
メチン色素としてより好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、が挙げられ、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、またはオキソノール色素である。
【0022】
これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds−Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」第2版.第IV巻,partB,1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.(New York))社刊などに記載されている。
【0023】
シアニン色素、メロシアニン色素またはオキソノール色素の具体例としては、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons(New York、London)社1964年刊に記載のものが挙げられる。
【0024】
シアニン色素、メロシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21及び22頁の(XI)、(XII)に示されているもの(ただしn12、n15の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは0〜4の整数)とする)が好ましい。
【0025】
本発明に用いられる2光子吸収化合物の好ましい例として、下記一般式(3)にて表されるシアニン色素、一般式(4)にて表されるメロシアニン色素、および一般式(5)にて表されるオキソノール色素を挙げることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
すなわち、本発明に用いられる2光子吸収化合物がシアニン色素の時、好ましくは一般式(3)にて表わされる。
【0028】
一般式(3)中、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わす。形成される5員または6員の含窒素複素環として好ましくは炭素原子数(以下C数という)3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−メチルオキサゾリル、2−3−エチルオキサゾリル、2−3,4−ジエチルオキサゾリル、2−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−メチルチオエチルベンゾオキサゾリル、2−3−メトキシエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−(3−ナフトキシエチル)ベンゾオキサゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾオキサゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾオキサゾリル)、C数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−メチルチアゾリル、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−スルホブチルチアゾリル、2−3,4−ジメチルチアゾリル、2−3,4,4−トリメチルチアゾリル、2−3−カルボキシエチルチアゾリル、2−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−ブチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3−(1−ナフトキシエチル)ベンゾチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−6−ヨード−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−1,3−ジメチルイミダゾリル、2−1−メチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,4−トリエチルイミダゾリル、2−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,5−トリメチルベンゾイミダゾリル、2−6−クロロ−1,3−ジメチルベンゾイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3−ジスルホプロピル−5−シアノ−6−クロロベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、C数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチルインドレニン)、C数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−メチルキノリル、2−1−エチルキノリル、2−1−メチル6−クロロキノリル、2−1,3−ジエチルキノリル、2−1−メチル−6−メチルチオキノリル、2−1−スルホプロピルキノリル、4−1−メチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、4−1,8−ジエチルキノリル、4−1−メチル−6−メチルチオキノリル、4−1−スルホプロピルキノリルなどが挙げられる)、C数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、C数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることができる。
【0029】
これら複素環は置換されてもよく、置換基として好ましくは例えば、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(好ましくはC数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくはC数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、カルバモイルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)、であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0030】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0031】
Za及びZaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、イミダゾール核、インドレニン環であり、最も好ましくはオキサゾール核である。
【0032】
Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)であり、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0033】
Ma〜Maはそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していてもよく、(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Maは無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma〜Maは互いに連結して環を形成してもよく、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0034】
na及びnaは0または1であり、好ましくは共に0である。
【0035】
kaは0〜3の整数を表わし、より好ましくはkaは1〜3を表し、さらに好ましくはkaは1または2を表す。
kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよい。
【0036】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0037】
また、本発明に用いられる2光子吸収化合物がメロシアニン色素の時、好ましくは一般式(4)で表わされる。
【0038】
一般式(4)中、Zaは5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZa、Zaと同じ)、これらは置換されてもよく、(好ましい置換基の例はZa、Za上の置換基の例と同じ)、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
【0039】
Zaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、インドレニン環である。
【0040】
Zaは5員または6員環を形成する原子群を表わす。Zaから形成される環は一般に酸性核と呼ばれる部分であり、James 編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。Zaとして好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a 〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドンなどの核が挙げられる。
Zaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくは、ピラゾリジン−3,5−ジオン、インダン−1,3−ジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはピラゾリジン−3,5−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。
【0041】
Zaから形成される環は置換されてもよく、(好ましい置換基の例はZa上の置換基の例と同じ)置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0042】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0043】
Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基であり(以上好ましい例はRa1、Raと同じ)、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0044】
Ma〜Ma11はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していてもよく、(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Ma11は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma〜Ma11は互いに連結して環を形成してもよく、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0045】
naは0または1であり、好ましくは0である。
【0046】
kaは0〜8の整数を表わし、好ましくは0〜4の整数を表し、より好ましくは2〜4の整数を表す。
kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
【0047】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0048】
そして、本発明に用いられる2光子吸収化合物がオキソノール色素の時、好ましくは一般式(5)で表わされる。
【0049】
一般式(5)中、Za及びZaは各々5員または6員環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZaと同じ)、これらは置換されてもよく、(好ましい置換基の例はZa上の置換基の例と同じ)、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
Za及びZaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリン−2,4−ジオンであり、さらに好ましくはバルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはバルビツール酸である。
【0050】
Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わし、置換基を有していてもよく、(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、カルボキシ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
Ma12〜Ma14は無置換メチン基であることが好ましい。
Ma12〜Ma14は互いに連結して環を形成してもよく、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0051】
kaは0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2までの整数を表し、より好ましくは1または2を表し、最も好ましくは2を表す。
kaが2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
【0052】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0053】
また、本発明に用いられる化合物は一般式(1)にて表されることも好ましい。
【0054】
【化2】

【0055】
一般式(1)において、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)である。
、R、R、Rとして好ましくは水素原子またはアルキル基である。R、R、R、Rのうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、RとRが結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
【0056】
一般式(1)において、nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n、m同時に0となることはない。
nおよびmが2以上の場合、複数個のR、R、RおよびRは同一でもそれぞれ異なってもよい。
【0057】
およびXは独立に、アリール基[好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa〜Maの置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成してもよく、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。]、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していてもよく、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または一般式(2)で表される基を表す。
【0058】
【化3】

【0059】
一般式(2)中、Rは水素原子または置換基(好ましい例はR〜Rと同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR〜Rと同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
【0060】
は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、ピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環である。
により形成されるヘテロ環は置換基を有してもよく、(好ましい置換基の例はZa、Za上の置換基の例と同じ)、置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0061】
およびXとして好ましくはアリール基または一般式(2)で表される基で表され、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(2)で表される基で表される。
【0062】
本発明に用いられる2光子吸収化合物は水素結合性基を分子内に有することも好ましい。ここで水素結合性基とは、水素結合における水素を供与する基または水素を受容する基を表し、そのどちらの性質も有している基がより好ましい。
また本発明には水素結合性基を有する2光子吸収化合物を用いることも好ましく、そのような化合物は溶液または固体状態にて水素結合性基同士の相互作用により会合的相互作用することが好ましく、分子内相互作用でも分子間相互作用でもよい。が、分子間相互作用である方がより好ましい。
【0063】
そのような化合物の水素結合性基としては、好ましくは、−COOH、−CONHR11,−SOH,−SONHR12,−P(O)(OH)OR13,−OH,−SH,−NHR14、−NHCOR15,−NR16C(O)NHR17のいずれかで表される。ここで、R11,R12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数(以下C数という)1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、−COR18または−SO19を表し、R13〜R19はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す(以上好ましい例はR11、R12と同じ)。
【0064】
11として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基−SO19基を表し。その際R18、R19としてはアルキル基またはアリール基が好ましい。
11としてより好ましくは水素原子、アルキル基、−SO19基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
12として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基−SO19基を表し。その際R18、R19としてはアルキル基またはアリール基が好ましい。
12としてより好ましくは水素原子、アルキル基、−COR18基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
13として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基を表し、より好ましくは水素原子を表す。
14として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
15として好ましくはアルキル基、アリール基を表す。
16として好ましくは水素原子を表し、R17として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
【0065】
水素結合性基としてより好ましくは、−COOH、−CONHR11,−SONHR12、−NHCOR15,−NR16C(O)NHR17のいずれかであり、さらに好ましくは−COOH、−CONHR11,−SONHR12のいずれかであり、最も好ましく−COOH、−CONHのいずれかである。
【0066】
本発明に用いられる2光子吸収化合物はモノマー状態で用いてもよい。が、会合状態で用いてもよい。
ここで、色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。
本発明の2光子吸収化合物は、分子間会合状態で用いても、2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて2光子吸収を行う状態で用いてもよい。
【0067】
参考のため、以下に会合体の説明を行う。会合体については、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章、第218〜222頁、及び小林孝嘉著「J会合体(J−Aggregates)」ワールド・サイエンティフィック・パブリッシング社(World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd.)、1996年刊)などに詳細な説明がなされている。
モノマーとは単量体を意味する。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
【0068】
会合体の構造の観点では、レンガ積み会合体において、会合体のずれ角が小さい場合はJ会合体と呼ばれるが、ずれ角が大きい場合はH会合体と呼ばれる。レンガ積み会合体については、ケミカル・フィジックス・レター(ChemicalPhysics Letters),第6巻、第183頁(1970年)に詳細な説明がある。また、レンガ積み会合体と同様な構造を持つ会合体として梯子または階段構造の会合体がある。梯子または階段構造の会合体については、Zeitschrift fur Physikalische Chemie,第49巻、第324頁(1941年)に詳細な説明がある。
【0069】
また、レンガ積み会合体以外を形成するものとして、矢はず(Herringbone)構造をとる会合体(矢はず会合体と呼ぶことができる)などが知られている。
矢はず(Herringbone)会合体については、チャールズ・ライヒ(Charles Reich)著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)第18巻、第3号、第335頁(1974年)に記載されている。矢はず会合体は、会合体に由来する2つの吸収極大を持つ。
【0070】
会合状態を取っているかどうかは、前記の通りモノマー状態からの吸収(吸収λmax、ε、吸収形)の変化により確認することができる。
本発明に用いられる化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでもよい。が、J会合体を形成することがより好ましい。
【0071】
化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。
例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10−4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10−3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合、または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
分子間会合に関与する化合物数は2個であっても、非常に多くの化合物数であってもよい。
【0072】
以下に、本発明で用いられる2光子吸収化合物の好ましい具体例としてD−1〜D−111を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化4】

【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
【化8】

【0078】
【化9】

【0079】
【化10】

【0080】
【化11】

【0081】
【化12】

【0082】
【化13】

【0083】
【化14】

【0084】
<重合開始剤>
次に、本発明に用いる2光子吸収光記録媒体における重合開始剤について説明する。
本発明に用いる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(電子を与えるまたは電子を受ける)を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、重合性化合物の重合を開始することができる化合物のことである。
本発明に用いる重合開始剤は好ましくは、ラジカルを発生して重合性化合物のラジカル重合を開始することができるラジカル重合開始剤と、ラジカルを発生することなく酸のみ発生して重合性化合物のカチオン重合のみを開始することができるカチオン重合開始剤と、ラジカル及び酸を両方発生して、ラジカル及びカチオン重合両方を開始することができる重合開始剤のいずれかである。
【0085】
本発明に用いる重合開始剤としては好ましくは、以下の14種の系が挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0086】
1)ケトン系重合開始剤
2)有機過酸化物系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
8)ホウ酸塩系重合開始剤
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
14)スルホン酸エステル系重合開始剤
【0087】
以下に好ましい上記の系について具体的に説明していく。
1)ケトン系重合開始剤
ケトン系重合開始剤としては、好ましくは芳香族ケトン、芳香族ジケトン等が挙げられる。
好ましい例としては例えば、ベンゾフェノン誘導体(例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン)、ベンゾイン誘導体(例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン)、アセトイン誘導体(アセトイン、ピバロイン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、アシロインエーテル誘導体(例えばジエトキシアセトフェノン)、α−ジケトン誘導体(ジアセチル、ベンジル、4,4´−ジメトキシベンジル、ベンジルジメチルケタール、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロ−3,4−フラン酸(イミダゾールトリオン))、キサトン誘導体(例えばキサントン)、チオキサントン誘導体(例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン)、ケトクマリン誘導体等が挙げられる。
【0088】
市販品としては例えば、チバガイギー社より上市されている下記式で表されるイルガキュアー184、651、907等が挙げられる。
【0089】
【化15】

【0090】
また、好ましい例としてキノン系重合開始剤(例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−t−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファ−スルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、レテネキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、並びに1,2,3,4−テトラヒドロベンズ(a)アンスラセン−7,12−ジオン)も挙げられる。
【0091】
2)有機過酸化物系重合開始剤
好ましい例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、特開昭59−189340号公報および特開昭60−76503号公報記載の3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0092】
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
ビスイミダゾール系重合開始剤にて好ましいのは、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール誘導体であり、例えばビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー(CDM−HABI)、1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′5,5′−テトラフェニル(o−Cl−HABI)、1H−イミダゾール、2,5−ビス(o−クロロフェニル)−4−〔3,4−ジメトキシフェニル〕−ダイマー(TCTM−HABI)などが挙げられる。
【0093】
ビスイミダゾール系重合開始剤は水素供与体と共に用いられることが好ましい。水素供与体として好ましくは、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、などが挙げられる。
【0094】
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(11)にて表される。
【0095】
【化16】

【0096】
一般式(11)中、R21、R22、R23はそれぞれ独立にハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子を表す。R24、R25はそれぞれ独立に水素原子,−CR212223、置換基を表す(好ましい例はZa上の置換基と同じ)。R24は好ましくは−CR212223を、より好ましくは−CCl基を表し、R25は好ましくは,−CR212223、アルキル基、アルケニル基、またはアリール基である。
【0097】
トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシ−1’−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが例示される。好ましい例として、英国特許第1388492号明細書および特開昭53−133428号公報記載の化合物も挙げられる。
【0098】
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
ジアゾニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(12)にて表される。
【0099】
【化17】

【0100】
26はアリール基またはヘテロ環基を表し(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
27は置換基を表し(好ましい例はZa上の置換基と同じ)、a21は0〜5の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。a21が2以上の時、複数のR27は同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
21は、HX21がpKa4以下(水中、25℃)、好ましくは3以下、より好ましくは2以下の酸となる陰イオンで、好ましくは例えば、クロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレートなどである。
【0101】
ジアゾニウム系重合開始剤の具体例としては例えば、ベンゼンジアゾニウム、4−メトキシジアゾニウム、4−メチルジアゾニウムの上記X21塩などが挙げられる。
【0102】
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(13)にて表される。
【0103】
【化18】

【0104】
一般式(13)中、X21は一般式(12)と同義である。R28、R29はそれぞれ独立に置換基を表し(好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
a22、a23はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、好ましくは0〜1の整数を表す。a21が2以上の時、複数のR28、R29は同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
【0105】
ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウム、4,4’−t−ブチルジフェニルヨードニウム、3,3’−ジニトロジフェニルヨードニウム、フェニル(p−メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p−シアノフェニル)ヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート塩などが挙げられる。
また、「マクロモレキュールス(Macromolecules)」、第10巻、p1307(1977年)に記載の化合物、特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特願平3−5569号に記載されているようなジアリールヨードニウム塩類も挙げられる。
【0106】
7)スルホニウム塩系重合開始剤
スルホニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(14)にて表される。
【0107】
【化19】

【0108】
一般式(14)中、X21は一般式(12)と同義である。R30、R31、R32はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)を表し、好ましくは、アルキル基、フェナシル基、またはアリール基を表す。
【0109】
スルホニウム塩系重合開始剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジメチルフェナシルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウムなどのスルホニウム塩のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート塩などが例示される。
【0110】
8)ホウ酸塩系重合開始剤
ホウ酸塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(15)にて表される。
【0111】
【化20】

【0112】
一般式(15)中、R33、R34、R35、R36はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基を表し(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくはアルキル基またはアリール基である。ただし、R33、R34、R35、R36の全てが同時にアリール基となることはない。X22は陽イオンを表す。
より好ましくはR33、R34、R35は全てアリール基であり、かつR36がアルキル基であり、最も好ましくはR33、R34、R35はフェニル基であり、かつR36はn−ブチル基である。
【0113】
ホウ酸塩系重合開始剤の具体例としては、テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムsec−ブチルトリフェニルボレートなどが挙げられる。
【0114】
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(16)にて表される。
【0115】
【化21】

【0116】
一般式(16)中、R28、R29、a22、a23は一般式(13)と同義であり、R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。
【0117】
ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤の具体例としては以下に示すI−1〜I−3が挙げられる。
【0118】
【化22】

【0119】
さらに、特開平3−704号公報記載のジフェニルヨードニウム(n−ブチル)トリフェニルボレートなどのヨードニウム有機ホウ素錯体も好ましい例として挙げられる。
【0120】
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
スルホニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(17)にて表される。
【0121】
【化23】

【0122】
一般式(17)中、R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。R37、R38、R39はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基であり(以上好ましい例はZa上の置換基に同じ)、より好ましくはアルキル基、フェナシル基、アリール基、アルケニル基である。R37、R38、R39は互いに連結して環を形成してもよい。R40は酸素原子もしくは孤立電子対を表す。
【0123】
スルホニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤の具体例としては以下に示すI−4〜I−10が挙げられる。
【0124】
【化24】

【0125】
さらに、特開平5−255347号、特開平5−213861号記載のスルホニウム有機ホウ素錯体も好ましい例として挙げられる。
【0126】
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
本発明の重合開始剤がカチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤の場合は、そのカチオン性2光子吸収化合物が本発明の2光子吸収化合物の役割を行ってもよい。
カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤は好ましくは一般式(18)にて表される。
【0127】
【化25】

【0128】
一般式(18)中、(Dye−1)は非共鳴2光子吸収を行いかつカチオン性の化合物であり、好ましい例としては先述した通りである。R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。
【0129】
カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤の具体例としては例えば、以下に示すI−11、I−12、I−13、I−14等が挙げられる。
【0130】
【化26】

【0131】
また、特開昭62−143044号、同62−150242号公報に記載の陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体も具体例として挙げられる。
【0132】
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
本発明の重合開始剤がアニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤の場合は、そのアニオン性2光子吸収化合物が本発明の2光子吸収化合物の役割を行ってもよい。
アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤は好ましくは一般式(19)にて表される。
【0133】
【化27】

【0134】
一般式(19)中、(Dye−2)―は非共鳴2光子吸収を行いかつアニオン性の化合物であり、好ましい例としては先述した通りである。X23は一般式(12)のジアゾニウム塩のカチオン部分、一般式(13)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分、一般式(14)のスルホニウム塩のカチオン部分を表し(いずれも好ましい例は先述した通り)、好ましくは一般式(13)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分または一般式(14)のスルホニウム塩のカチオン部分である。
【0135】
アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤の具体例としては例えば、以下に示すI−15〜I−32等が挙げられる。
【0136】
【化28】

【0137】
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
金属アレーン錯体系重合開始剤としては、金属は鉄またはチタンが好ましい。具体的には、特開平1−54440号、ヨーロッパ特許第109851号、ヨーロッパ特許第126712号および「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の鉄アレーン錯体、「オルガノメタリックス(Organometallics)」、第8巻、第2737頁(1989年)記載の鉄アレーン有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載されるチタセノン類、などが好ましい例として挙げられる。
【0138】
14)スルホン酸エステル系重合開始剤
スルホン酸エステル系重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル等を挙げられる。
【0139】
具体例としてはベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、o−ニトロベンジルトシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド、α−シアノベンジリデントシルアミン、p−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられる。
【0140】
15)その他の重合開始剤
前記1)〜14)以外の重合開始剤としては、4,4’−ジアジドカルコンのような有機アジド化合物、N−フェニルグリシンなどの芳香族カルボン酸、ポリハロゲン化合物(CI、CHI、CBrCI)、フェニルイソオキサゾロン、シラノールアルミニウム錯体、特開平3−209477号公報に記載されるアルミナート錯体などが挙げられる。
【0141】
ここで、本発明の重合開始剤は、
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤
b)カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤
c)ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤
に分類することができる。
【0142】
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(2光子吸収化合物に電子を与えるまたは2光子吸収化合物から電子を受ける)を行うことによりラジカルを発生し、重合性化合物のラジカル重合を開始することができる重合開始剤のことである。
前記の中では、以下の系がラジカル重合を活性化することができる重合開始剤系である。
1)ケトン系重合開始剤
2)有機過酸化物系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
8)ホウ酸塩系重合開始剤
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
【0143】
ラジカル重合を活性化できる重合開始剤としてより好ましくは、
1)ケトン系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
が挙げられ、さらに好ましくは、
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
が挙げられる。
【0144】
カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルを発生することなく酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、酸により重合性化合物のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
【0145】
前記の系の中では、以下の系がカチオン重合のみを活性化することができる重合開始剤系である。
14)スルホン酸エステル系重合開始剤
なお、カチオン重合開始剤としては、例えば「UV硬化;科学と技術(UVCURING;SCIENCE AND TECHNOLOGY)」23〜76頁、S.ピーター・パーパス(S.PETER PAPPAS)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(A TECHNOLOGY MARKETING PUBLICATION)]及び「コメンツ・インオーグ.ケム.(Comments Inorg.Chem.)」[B.クリンゲルト、M.リーディーカー及びA.ロロフ(B.KLINGERT、M.RIEDIKER and A.ROLOFF)、第7巻、3号、109−138頁(1988)]などに記載されているものを用いることもできる。
【0146】
ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を同時発生し、発生するラジカルにより重合性化合物のラジカル重合を、また発生する酸により重合性化合物のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
【0147】
前記の系の中では、以下の系がラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤系である。
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
【0148】
ラジカル重合とカチオン重合を活性化できる重合開始剤として好ましくは、
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
を挙げることができる。
【0149】
<重合性化合物>
次に本発明の2光子吸収光記録媒体における重合性化合物について説明する。
本発明の重合性化合物とは、2光子吸収化合物と重合開始剤に光を照射することにより発生したラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)により、付加重合を起こしてオリゴマーまたはポリマー化が可能な化合物のことである。
本発明の重合性化合物としては、単官能性でも多官能性でもよく、一成分でも多成分でもよく、モノマー、プレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー)でもこれらの混合物でもいずれでもよい。
また、その形態は、液状であっても固体状であってもよい。
【0150】
本発明の重合性化合物は、ラジカル重合可能な重合性化合物とカチオン重合可能な重合性化合物に大別される。
【0151】
本発明のラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する化合物が好ましく、具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0152】
まず、非ハロゲン系脂肪族系化合物を例示する。具体的には、単官能型として、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和酸化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、などのアルキル(メタ)アクリレート型、メトキシジエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート型、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ピナニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレート型、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアミン型(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの官能基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0153】
次に、多官能型として、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビス(メタクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドR−167、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドHXシリーズなどのアルキル型(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−811、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−851、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−911などのアルキレングリコール型(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドR−604、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:サートマーSR−454、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:日本化薬製TPA−310、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:長瀬産業DA(M)−321などのトリメチロールプロパン型(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート:東亜合成アロニックスM−233、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート類:日本化薬製カヤラッドD−310,320,330など、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート類:日本化薬製カヤラッドDPCA−20,30,60,120などのペンタエリスリトール型(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−314、トリグリセロールジ(メタ)アクリレートなどのグリセロール型(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート:山陽国策パルプCAM−200などの脂環式(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート:東亜合成アロニックスM−315、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート型(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0154】
また、脂肪族基からのみ構成される重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物の内、硫黄原子をさらに分子内に含有する化合物を例示する。例えば、単官能型として、メトキシジエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、エトキシジエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールチオ(メタ)アクリレート型、シクロヘキシルチオ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリルチオ(メタ)アクリレート、イソボルニルチオ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルチオ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルチオ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルチオ(メタ)アクリレート、ピナニルチオ(メタ)アクリレートなどの脂環式チオ(メタ)アクリレート型などが挙げられる。
【0155】
次に、多官能型として、1,3−プロパンジオールジチオ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジチオ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジチオ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレート、ビス(チオアクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビス(チオメタクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジチオ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレートなどのアルキル型チオ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロレングリコールジチオ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコール型チオ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジチオ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレートなどのトリメチロールプロパン型チオ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリチオ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラチオ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジチオ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタチオ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリチオ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリチオ(メタ)アクリレート類などペンタエリスリトール型チオ(メタ)アクリレート、グリセロールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリチオ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジチオ(メタ)アクリレートなどのグリセロール型チオ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジチオ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルジチオ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジチオ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジチオ(メタ)アクリレートなどの脂環式チオ(メタ)アクリレート、トリス(チオアクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(チオメタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(チオアクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(チオメタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート型チオ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して用いてもよい。
【0156】
エチレン性不飽和基を有する化合物の内、分子内に芳香族環または(および)ハロゲン原子を有する化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、4−メ(エ)トキシスチレンなどのスチレン類、フェニル(メタ)アクリレート、4−フェニルエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシカルボニルフェニル(メタ)アクリレート、4−エトキシカルボニルフェニル(メタ)アクリレート、4−ブトキシカルボニルフェニル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェノキシジエチレングルコール(メタ)アクリレート、4−フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、4−ビフェニリル(メタ)アクリレート、芳香族ポリヒドロキシ化合物、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール等のジあるいはポリ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレートなどの芳香族基を有する(メタ)アクリレート化合物、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、p−クロロフェノキシエチル(メタ)アクレート、p−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクレート、トリクロロフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートなどの塩素以上の原子量を持つハロゲン原子で置換された芳香族基を有するスチレン類および(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルカルバゾール、3−メ(エ)チル−N−ビニルカルバゾールなどのヘテロ芳香族基を有するビニル化合物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン原子で置換された(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0157】
また、分子内に芳香族環または(および)ハロゲン原子と、さらに硫黄原子を分子内に有する化合物として、フェニルチオ(メタ)アクリレート、4−フェニルエチルチオ(メタ)アクリレート、4−メトキシカルボニルフェニルチオ(メタ)アクリレート、4−エトキシカルボニルフェニルチオ(メタ)アクリレート、4−ブトキシカルボニルフェニルチオ(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルフェニルチオ(メタ)アクリレート、ベンジルチオ(メタ)アクリレート、4−フェノキシジエチレングルコールチオ(メタ)アクリレート、4−フェノキシテトラエチレングリコールチオ(メタ)アクリレート、4−フェノキシヘキサエチレングリコールチオ(メタ)アクリレート、4−ビフェニリルチオ(メタ)アクリレート、芳香族ポリヒドロキシ化合物、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール等のジチオあるいはポリチオ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールAジチオ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールAジチオ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジチオ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールFジチオ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジチオ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールSジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジチオ(メタ)アクリレートなどの芳香族基を有するチオ(メタ)アクリレート化合物、トリクロロフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性チオ(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性チオ(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレートなどの塩素以上の原子量を持つハロゲン原子で置換された芳香族基を有するチオ(メタ)アクリレート化合物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルチオ(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルチオ(メタ)アクリレート、2,3−ジクロロプロピルチオ(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピルチオ(メタ)アクリレートなどのハロゲン原子で置換されたチオ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0158】
また、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、開環シグマ結合開裂を経て重合する付加重合可能な化合物も挙げられる。このような化合物は、K.J.IvinおよびT.サエグサ編、Elsevier,New York、1984年中の、第1章“General Thermodynamics andMechanistic Aspects ofRing−Opening Polymerization”第1頁〜第82頁、および第2章“Ring Opening Polymerization via Carbon−Carbon Sigmabond Cleavage”第83頁〜第119頁、W.J.BaileyらのJ.Macromol.Sci.−Chem.,A21巻、第1611頁〜第1639頁、1984年、およびI.ChoおよびK.−D.AhnのJ.Polym.Sci.,Polym.Lett.Ed.第15巻、第751頁〜第753頁、1977年に記載されている。具体例としては、ビニルシクロプロパン、例えば1,1−ジシアノ−2−ビニルシクロプロパン、1,1−ジクロロ−2−ビニルシクロプロパン、ジエチルー2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート(EVCD)、エチル−1−アセチル−2−ビニル−1−シクロプロパンカルボキシレート(EAVC)、エチル−1−ベンゾイル−2−ビニル−1−シクロプロパンカルボキシレート(EBVC)などが挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して用いてもよいし、前記(メタ)アクリル化合物あるいはビニル化合物と混合して用いてもよい。
【0159】
また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としてはメチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0160】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報に記載された1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、一般式CH=C(R)COOCHCH(R′)OH(式中R、R′は水素或いはメチル基を表す。)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0161】
また、特開昭51−37193号公報に記載されたウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報にそれぞれ記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
【0162】
さらに、日本接着協会誌第20巻、第7号、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0163】
その他、燐を含むモノマーとしてはモノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドフォスフェート(商品名:ライトエステルPA、共栄社油脂化学工業(株)製)、モノ(2−メタクリロイキエチル)アシッドフォスフェート(商品名:ライトエステルPM、共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられ、またエポキシアクリレート系である商品名:リポキシVR−60(昭和高分子(株)製)、商品名:リポキシVR−90(昭和高分子(株)製)等が挙げられる。
【0164】
また、商品名:NKエステルM−230G(新中村化学工業(株)製)、商品名:NKエステル23G(新中村化学工業(株)製)も挙げられる。
トリアクリレート類、東亜合成化学工業(株)製、商品名、アロニックス M−315、東亜合成化学工業 (株)製、商品名、アロニックス M−325、また、2,2′−ビス(4−アクリロキシ・ジエトキシフェニル) プロパン(新中村化学 (株)製、商品名、NKエステル A−BPE−4 )、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(新中村化学 (株)製、商品名、NKエステル A−TMMT)等が挙げられる。
【0165】
また、重合可能なウレタンアクリレート樹脂としてTSR−1920B、TSR−1938(帝人(株)製)、SCR−500(日本合成ゴム(株)製)も熱特性、機械特性の点で好ましい。
【0166】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、2光子吸収化合物とカチオン重合開始剤により発生した酸により重合が開始される化合物で、例えば「ケムテク・オクト・(Chemtech.Oct.)」[J.V.クリベロ(J.V.Crivello)、第624頁、(1980)]、特開昭62−149784号公報、日本接着学会誌[第26巻、No.5,第179−187頁(1990)]などに記載されているような化合物が挙げられる。
【0167】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物として好ましくは、オキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基部位を分子中に少なくとも1個以上有する化合物であり、より好ましくはオキシラン環部位を有する化合物である。
具体的には以下のカチオン重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0168】
オキシラン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては、グリセロールジグリシジルエーテル、グルセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールモノグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、p−ブロモスチレンオキサイド、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−F−ジグリシジルエーテルなどの化合物が挙げられる。
【0169】
また、HS−681(旭電化工業(株)製)、SOMOS8100(DMS−SOMOS社製)、SCR−8100シリーズ(日本合成ゴム(株)製)、SL−7540(Vantico製)SCR−701(ディーメック社製、日本合成ゴム(株)製)も重合可能なエポキシ系樹脂として挙げられる。
【0170】
オキセタン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては、前記のオキシラン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例のオキシラン環をオキセタン環に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0171】
ビニルエーテル基部位を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては例えば、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、エチレングリゴールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルグリコール、ネオペンチルグリコールモノビニルグリコール、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジグリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、アリルビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)プロパンジビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)トリフルオロプロパンジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4−ビニルエーテルスチレン、ハイドロキノンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、フェノキシエチレンビニルエーテル、p−ブロモフェノキシエチレンビニルエーテルなどの化合物が挙げられる。
【0172】
<色素モノマー>
本発明の2光子吸収記録材料は、重合性基を有する色素を重合性化合物として少なくとも1種以上含んでも良い。ここで、本発明の色素モノマーにおける「色素」とは、波長300〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかを吸収する化合物のことを称し、より好ましくは波長330〜700nmの紫外光または可視光を吸収する化合物のことを称し、さらに好ましくは400〜700nmの可視光を吸収する化合物のことを称す。その際その領域のモル吸光係数としては5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が最も好ましい。
【0173】
本発明に係る2光子吸収記録材料は、重合性基を有する色素に加えて、少なくとも2光子吸収化合物、重合開始剤、及び高分子バインダーを有し、色素部分を有さない重合性化合物をさらに有することが好ましい。ここで、色素部分を有さない重合性化合物の少なくとも1個が沸点100℃以上の液体であることがより好ましい。
【0174】
本発明の2光子吸収記録材料では、再生波長における屈折率が、バインダーよりも重合性基を有する色素の方が大きいことが好ましい。
一般に、色素の屈折率は、吸収極大波長(λmax)付近からそれより長波長な領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な領域において非常に高い値を取り、色素によっては2を超え、さらには2.5を超えるような高い値をとる。
一方で、バインダーポリマー等の色素ではない有機化合物は通常1.4〜1.6程度の屈折率である。
したがって、本発明の2光子吸収記録材料では、屈折率変調に屈折率の大きい色素を用いるため、高感度化の点で有利である。また、高感度化のためには、重合性基を有する色素は、好ましくは吸収スペクトルにおいて、ホログラム再生波長よりも10〜200nm短波長であるλmaxを有し、より好ましくは30〜130nm短波長であるλmaxを有し、εが10000以上であり、より好ましくは20000以上であることが好ましい。
【0175】
さらに本発明の2光子3次元記録材料において、色素部分を有さない重合性化合物を用いる場合も、再生波長における屈折率が、バインダーよりも色素部分を有さない重合性化合物の方が大きいことが好ましい。
その際、色素部分を有さない重合性化合物が、少なくとも1個以上のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことがより好ましい。
【0176】
本発明における重合反応は、重合反応がラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれかであることが好ましく、ラジカル重合またはカチオン重合であることが好ましい。
【0177】
その際、重合性基を有する色素、色素部分を有さない重合性化合物の重合性基が、重合がラジカル重合の時は、重合性基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基部分を有し、好ましくはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有し、重合がカチオン重合またはアニオン重合の時は重合性基としてオキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、N-ビニルカルバゾール部位のいずれかを有し、好ましくはオキシラン環またはオキセタン環を有することが好ましい。
【0178】
次に、本発明に用いる重合性基を有する色素について詳しく説明する。
本発明に用いる重合性基を有する色素のうち、色素の部分として好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、フタロシアニン色素、アザポルフィリン色素、ポルフィリン色素、縮環芳香族系色素、ペリレン色素、アゾメチン色素、アントラキノン色素、金属錯体色素、アゾ色素等が挙げられ、より好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、フェノチアジン色素、縮環芳香族系色素、アゾ色素が挙げられ、さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、アゾ色素が挙げられる。
【0179】
その他に「色素ハンドブック」(大河原信他編 講談社 1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編 シーエムシー 1981年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編 シーエムシー 1986年)に記載される色素および染料も本発明の色素部分として用いることができる。
【0180】
本発明に用いる重合性基を有する色素について、重合性基については前述した通りである。重合性基としては色素のどの部分に置換していても良い。
【0181】
以下に本発明に用いる重合性基を有する色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0182】
【化29】

【0183】
【化30】

【0184】
【化31】

【0185】
【化32】

【0186】
【化33】

【0187】
<高分子バインダー>
本発明の記録材料には、一般に高分子バインダーと呼ばれる記録や保存に関わるモノマーや光重合開始剤を保持するための高分子化合物が含まれる。高分子バインダーは、塗膜性、膜強度、および記録特性向上の効果を高める目的で使用されるものである。高分子バインダーとしては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独又は互いに組合せて使用することができ、以下のものが好ましい。
アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル,メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、適当なバインダーとして機能する酸含有重合体及び共重合体は、米国特許3,458,311中及び米国特許4,273,857中に開示されているものを包含する。ポリスチレン重合体、並びに例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニル及び共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH2)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸及びテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸、(3)テレフタル酸及びセバシン酸、(4)テレフタル酸及びイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、並びに(5)該グリコール及び(i)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸及び(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸及びアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾール及びその共重合体、並びにH.カモガワらによりJournal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition,18巻、9〜18頁(1979)中開示されているようなカルバゾール含有重合体。
【0188】
また、フッ素原子含有高分子もバインダーとして好ましい。好ましいものとしては、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その重量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。
【0189】
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1からC18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2からC8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用しても良く、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
【0190】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
【0191】
<3次元マトリックス高分子バインダー>
本発明の高分子バインダーとしては3次元架橋構造を有するマトリックス高分子バインダーも好ましい。3次元マトリックス高分子バインダーとしては、熱硬化性化合物、触媒などを使用して光照射により硬化する光硬化性化合物を用いることができるが、熱硬化性化合物が特に好ましい。
熱硬化性マトリックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるウレタン樹脂やオキシラン化合物から形成されるエポキシ化合物、メラミン化合物、フォルマリン化合物、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等の不飽和酸のエステル化合物やアミド化合物を重合して得られる重合体などが挙げられる。中でもイソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるポリウレタンマトリックスが好ましく、記録の保持性から考えて、多官能イソシアネートと多官能アルコールから形成される3次元ポリウレタンマトリックスが最も好ましい。
以下に、ポリウレタンマトリックスを形成することができる、多官能イソシアネートおよび多官能アルコールについて具体例を述べる。
前記多官能イソシアネートとしては、具体的には、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1−メトキシフェニレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、シクロブチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,3−ビス(メチルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ドデカメチレン−1,12−ジイソシアネート、フェニル−1,3,5−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−2,4’,4”−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,2’,4’−テトライソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,2’,5’−テトライソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリイソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、3,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−2,4,2’−トリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4,4’−トリイソシアネートリジンジイソシアネートメチルエステル、またはこれらの有機イソシアネート化合物の化学量論的過剰量と多官能性活性水素含有化合物との反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー、などが挙げられる。これらの中でも、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多官能アルコールとは、多官能アルコール単独であってもよく、他の多官能アルコールと混合状態であってもよい。多官能アルコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、またはこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、などが挙げられる。
本発明の2光子吸収光記録媒体における前記マトリックス形成成分の含有量は、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましく、50%〜90%が更に好ましい。
【0192】
<上記以外の構成成分>
本発明の2光子吸収記録材料は、必要により連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を適宜用いることができる。
【0193】
本発明の2光子吸収記録材料には連鎖移動剤を用いる方が好ましい場合がある。好ましい連鎖移動剤としてはチオール類であり、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4,4−チオビスベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、チオシアヌル酸、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、p−トルエンチオールなど、また、USP第4414312号や特開昭64−13144号記載のチオール類、特開平2−291561号記載のジスルフィド類、USP第3558322号や特開昭64−17048号記載のチオン類、特開平2−291560号記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類なども挙げられる。
特に重合開始剤が2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーの場合は連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤の使用量は、組成物全体に対して1.0〜30質量%が好ましい。
【0194】
本発明の2光子吸収記録材料には、保存時の重合を防止し、保存安定性を保つ目的で熱安定剤(熱重合禁止剤)を添加することができる。
有用な熱安定剤にはハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。Pazos氏の米国特許第4,168,982号明細書中に述べられた、ジニトロソダイマ類もまた有用である。
熱安定剤は不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.001から5質量部の範囲で添加されるのが好ましい。
【0195】
本発明の2光子吸収記録材料に用いることのできる可塑剤は2光子重合性組成物の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために用いられる。可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0196】
さらに、本発明の2光子吸収記録材料には、助剤として重合反応を促進する目的で、酸素除去剤(oxygen scavenger)を添加することもできる。前記酸素除去剤としては、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト、第1銀塩、又は酸素により容易に酸化されるその他の化合物が挙げられ、具体的には、N−フエニルグリシン、トリメチルパルビツール酸、N,N−ジメチル−2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリン酸が挙げられる。さらに、チオール類、チオケトン類、トリハロメチル化合物、ロフィンダイマー化合物、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類、有機過酸化物、アジド類等も重合促進剤として有用である。
【0197】
本発明の2光子吸収光記録媒体の有機記録層を形成するための組成物は通常の方法で調製されてよい。例えば上述の必須成分および任意成分をそのままもしくは必要に応じて溶媒を加えて調製することができる。
溶媒としては例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒が挙げられる。
有機記録層用組成物は基体上に直接塗布することも、スピンコートすることもできるし、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基体にラミネートすることもできる。使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。
【0198】
〔無機中間層〕
以下、本発明の2光子吸収光記録媒体の無機中間層について説明する。
無機中間層を作成の際、例えば下記に記述しているような方法でスパッタ条件を変えて、稠密な膜で界面変動を抑えることができれば、記録ピット再生時の反射光強度変動を小さくすることができるのではないかと考えたが、それだけでは十分でなく、膜厚も再生時の反射光強度変動に大きく寄与していることを見出し、本発明に到達した。
単に無機中間層の膜厚変動を少なくして5nmとしただけでは、記録ピットの再生反射光強度の変動量は大きかった(比較例22参照:膜厚110nm)。しかし、無機中間層をより薄膜化する(10nm以上95nm以下)ことで、無機中間層の膜厚変動が5nm以下であると、記録ピットの再生反射光強度の変動量を小さくできることを見出した(実施例1、実施例11〜21、比較例21,23,11、実施例2〜5、比較例3,4、参照)。
すなわち、記録ピット再生時の反射光強度変動を小さくするためには、無機中間層の膜厚は10nm以上95nm以下の範囲であることが好ましい。40nm以上60nm以下の範囲であれば、反射光強度変動をより小さくでき、さらに好ましい。
また、無機中間層の膜厚変動は5nm以下であることが好ましく、3nm以下であればさらに好ましい。
【0199】
無機中間層を構成する材料としては、再生レ−ザー波長で透明な膜であれば何でも良く、種々の材料を使用することが可能で、例えば、Mg、Al、La、Li、Na、Ca、Nd、Ce,Pb、Na−Al、Zr、Hf、Si、Ta、Y、Mg、Th、Sn、La、In、Nd、Sb、Ce、Ti、Bi、Gd、In―Sn、In―Zn、Cr、Al、Ti、Au、Au合金、Ag、Ag合金、Pt、Zn、Se等を少なくとも1種含有した材料を挙げられ、これら1以上を含むフッ化物、酸化物、窒化物等も使用することができる。安定化合物である無機酸化物が好ましい。
【0200】
無機中間層の作製方法は、塗布(バーコート、スピンコート、ラミネート、グラビアコート、ブレードコート等)、スパッタ、蒸着等色々あるが、製膜精度を上げやすいスパッタによる方法が好ましい。さらにRFスパッタよりアルゴン以外のガスを入れる反応性スパッタリングの方が緻密な無機中間層を作るのに好ましい。
スパッタリングによる成膜時の圧力は1〜1×10-3Paとすることが好ましく、レート(スパッタ速度)は1〜10nm/secとすることが好ましい。ガスの種類はAr等を使用することが可能で、ガス流量は1〜50sccm(1〜50ml/min)とすることが好ましい。スパッタ電力は0.5〜8kWとすることが好ましく、0.7〜7kWとすることがより好ましく、1〜5kWとすることがさらに好ましい。
【0201】
反応性ガスは透明な材料が出来れば何でもいいが安定な化合物が出来る酸素が好ましい。
酸素流量は10〜100sccmの範囲が好ましく(10sccm未満だと酸素不足できちんとしたアモルファスSiOにならない。100sccmより多いとスパッタが遅かったり、スパッタしなくなったりする。)、30〜80sccmがさらに好ましい。
【0202】
膜厚変動を抑えるには、以下の方法を適宜用いることができる。
1.ガス流量を制御する。(今回はアルゴンと酸素)
2.製膜時の圧力
3.スパッタするターゲットの形状
4.連続的にスパッタする。
5.スパッタ電力
6.基板を回転させる。
これらの方法で膜厚変動を抑えるには、1.アルゴンガスの流量より酸素流量を大きくする。2.製膜時の圧力は上記の範囲で圧力変動を1ケタ以内にする(例 1×10-2〜1×10-3Pa)3.スパッタのターゲット径はスパッタ装置で決まることが多いが、可能であればスパッタ基板より5cm以上大きくするか、基板を回転させる。スパッタ時のターゲットの収縮を抑えるためバッキングプレートに銅ではなくモリブデンを使う。4.スパッタ条件が安定するまで連続スパッタを行う。5.スパッタ電力は、低い方がいいが低すぎるとスパッタリングが安定しなくなるので製膜時の圧力とガス流量を考慮して決める、等が考えられる。しかし、具体的な条件はスパッタリング装置によって異なっている。
【0203】
〔基板〕
基板は、透明基板で複屈折がなければ何でも良く、無機基板であればガラス、石英、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が好ましく、有機基板であれば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルアクリレート、ポリクロロトリフルオロエチレン等が好ましい。
【実施例】
【0204】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0205】
〔2光子吸収光記録媒体用重合組成物の調製〕
調液1
暗室下でヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名:タケネートT-700)6.4g、ポリプロピレンオキサイドトリオール(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名:タケネートMN-300)5.21g、ポリエチレングリコール(東京化成工業(株)製)、4.64g、硬化アミン触媒U-CAT 410(サンアプロ(株)製)、0.20g、2光子吸収色素例示化合物D-77 0.03g、下記の光重合開始剤I-54 0.05g、下記の重合性化合物(重合性モノマー)M-1 1.86g、及び下記の連鎖移動剤I-57 0.07gを窒素気流下で混合し、2光子吸収光記録媒体用重合組成物を調製した。
【0206】
【化34】

【0207】
調液2
暗室中で2光子吸収色素例示化合物D-77 0.02g、上記の重合開始剤I-54 0.03g、上記の重合性化合物(重合性モノマー)M-1 1.15g、バインダー:セルロースアセテートブチレート 1.25g、上記の連鎖移動剤I-57 0.045gを溶剤ジクロロメタン 3.7gに溶解して2光子吸収光記録媒体用重合組成物を調製した。
【0208】
〔2光子吸収光記録媒体の作製法1〕(実施例1,実施例11〜21,比較例11,21〜23)
暗室下で厚み1.1mm直径120mmのポリカーボネート板(帝人社製)上に表1,3に記載した2光子吸収光記録媒体用重合組成物(調液1又は調液2)を窒素雰囲気下中バーコーターで塗布した。厚さは5〜10μmであった。その後80℃で6時間放置後、DCスパッタ機(sprinterユナクシス社製)でモリブデンを使用したバッキングプレート上のSiターゲットをスパッタ電力5kW,酸素雰囲気下(流量60sccm)、アルゴン流量20sccmでディスクを回しながら(10回転/分)、表1,3の膜厚になるように製膜時間を変えてスパッタした。その後2光子吸収光記録媒体用重合組成物(調液1又は調液2)を窒素雰囲気下中バーコーターで塗布した。厚さは5〜10μmであった。その後6時間放置後、DCスパッタ機(sprinterユナクシス社製)でSiダーゲットをスパッタ電力5kW,酸素雰囲気下(流量60sccm)、アルゴン流量20sccmでディスクを回しながら(10回転/分)、表1,3の膜厚になるようにスパッタした。その後ポリカーボネート板(帝人社製)を該2光子吸収光記録媒体用重合組成物上に空気を巻き込まないように重ね合わせて、こちら側を基板とした、2枚のポリカーボネート板間に有機記録層と無機中間層とからなる記録層単位が2単位づつ挟まれた、実施例1〜4の2光子吸収光記録媒体(表1〜3)、及び実施例11〜19,比較例11〜13の2光子吸収光記録媒体(表3)を作製した。
【0209】
〔2光子吸収光記録媒体の作製法2(比較例1)〕
暗室下でプレパラートガラス上に2光子吸収光記録媒体用重合組成物(調液2)をバーコート塗布し、溶剤乾燥後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを載せ、比較例1の2光子吸収光記録媒体(表1)を作製した。記録層の厚さは5〜10μmであった。
【0210】
〔2光子吸収光記録媒体の作製法3(比較例2)〕
厚さ1.1mmのポリカーボネート基板に、界面活性剤(変性シリコーンオイル)を微量(0.15%)加え、ぬれ性を良くしたペルオキソチタン(Ti25(OH)2)の水溶液を回転数2000rpmで数回塗布を繰り返し、100nmのアモルファスTiO2膜を形成した。続いてアクリレート系紫外線硬化樹脂を回転数3000rpmでスピンコートにより4μm塗布して中間層とし、その後ポリメチルメタアクリレートを20%含有したシス−1,2−ジシアノ−1,2−ビスエテン(cis-1,2-Dycyano-1,2-bis ethene)を回転数3000rpmでスピンコートにより100nm形成して記録層とした。さらに前述のペルオキソチタン水和物水溶液、紫外線硬化樹脂を上と同等のスピンコートによってそれぞれ10nm,4μm形成し比較例2の2光子吸収光記録媒体(表1)を作製した。
【0211】
〔2光子吸収光記録媒体の作製法4〕(実施例2〜5、比較例3,4)
作製法1でディスクを回さずにSiターゲットを表2に示すスパッタ電力、酸素流量、アルゴン流量を変え、膜厚50nmになるようにして連続で10枚スパッタし、その中から膜厚変動値の小さいものを選別して、実施例2〜5、比較例3,4の2光子吸収光記録媒体(表2)を作成した。
【0212】
〔2光子吸収光記録媒体への記録と再生〕
本発明の2光子吸収光記録媒体への情報記録再生には、第4図に示す構成の光学系を作成した。
記録に使用したTi:Sapphireレーザー波長780nmは(パルス幅:100fs、繰返し80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、該レーザー光をNA=0.6のレンズで集光して該2光子吸収光記録媒体に基板の反対側から照射し、情報記録を行った。具体的には、XYZステージ上に固定した該2光子吸収光記録媒体を一定速度で移動させながら、一定周期で発光するレーザー光パルスを該2光子吸収光記録媒体上に照射して記録を行った。
情報の再生プロセスでは、窒素/色素(N2/Dye)レーザー(米国フォトンテクノロジー社製GL-3300とGL-301の組み合わせ)を用いて表1〜4に示す波長で2光子吸収光記録媒体に基板の反対側から照射し、記録により発生した記録部と未記録部との屈折率差を再生光の反射光強度の差として読み出した。
【0213】
[膜厚測定]
エリプソメトリー(VASE ウーラム社製)を用いて各層塗布後の膜厚を測定した。中心から半径30mmの所の点を任意に選びその点を中心に左右斜め上下100μmの9点の膜厚を測定し、平均値を求めて膜厚とした。
[膜厚変動測定]
上記方法で半径30mmの所を中心に左右斜め上下100μmの9点の膜厚を測定し、最小値と最大値を求めた。その差を膜厚変動とした。
【0214】
[反射光強度変動量の測定]
2光子吸収光記録媒体に、上記記載の方法でレーザー光照射により情報を記録し、記録終了直後に記録部分を反射光強度の変動を中心反射強度により割ることによって変動量を求めた。この値が0.3より大きいと再生信号が30%より大きく変動していることになるので変調度等の信号データの品質を測定できない。
【0215】
条件、測定結果等を表1〜4に示す。
【0216】
【表1】

【0217】
本発明の2光子吸収光記録媒体の実施例(実施例1)では、再生反射光強度の変動量は11%と光記録媒体として充分満足できるものを得ることができた。実施例1と同じ材料を使っても、比較例1では再生反射光強度の変動量は82%もあり、光記録媒体として実用的でなかった。また、比較例2では、記録材料の感度が低く、上記した記録方法では、光記録媒体としての記録ができなかった。
【0218】
【表2】

【0219】
膜厚変動が6nm以上で急激に反射光強度変動量が大きくなる(比較例3,4)が、5nm以内のものは、反射光強度の変動量は11%以内であり(実施例2〜5)、さらに膜厚変動が3nm以内のもの(実施例4,5)では、反射光強度の変動量は5%と極めて小さく、良好なものが得られた。
【0220】
【表3】

【0221】
無機中間層の膜厚が10nm以上95nm以下の範囲(実施例1、実施例11〜21)である場合、その反射光強度の変動量は30%以内であり、一応満足できるものが得られた。無機中間層の膜厚がこの範囲外である、5nm(比較例11)や100nm以上(比較例21〜23)のものでは、無機中間層の膜厚変動が5nmでも、反射光強度の変動は30%を超えてしまい、変調度等の信号データの品質が測定できない程度のものであった。
また、無機中間層の膜厚が40nm以上60nm以下の範囲(実施例1、実施例15〜17)である場合、その反射光強度の変動量は12%以内であり、光記録媒体として充分満足できるものを得ることができた。
【0222】
【表4】

【0223】
実施例1と同様にして作製した2光子吸収光記録媒体を、再生レーザー(窒素/色素レーザー)の波長を450nmから660nm、680nm、780nmと変えて再生した(実施例31〜34)ところ、780nm以下であれば、問題なく再生できた。再生波長が短くなるほど反射光強度の変動量は少なかった。
【0224】
以上の結果より、本発明の2光子吸収光記録媒体は、無機中間層の膜厚変動を5nm以下、95nm以下にすることで、再生信号の安定性の安定性を向上したものを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】本発明の2光子吸収光記録媒体の層構成を示す図である。
【図2】本発明の2光子吸収光記録媒体への記録ビット形成を示す図である。
【図3】共焦点の原理の説明図である。
【図4】本発明の2光子吸収光記録媒体への情報記録再生光学系の構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共焦点系再生ピックアップで再生可能な、基板上に記録層単位を1単位以上含む2光子吸収光記録媒体であって、該記録層単位は同時2光子吸収により情報を記録可能な記録層に用いられる記録材料に少なくとも(1)2光子吸収化合物、(2)重合開始剤、(3)重合性化合物、(4)高分子バインダーを含む有機記録層と無機中間層とであり、該無機中間層の膜厚が10nm以上95nm以下であり膜厚変動が5nm以下である2光子吸収光記録媒体。
【請求項2】
前記無機中間層の膜厚が40nm以上60nm以下である請求項1記載の2光子吸収光記録媒体。
【請求項3】
前記無機中間層の膜厚変動が3nm以下である請求項1又は2記載の2光子吸収光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−245566(P2009−245566A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94142(P2008−94142)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】