説明

2型ヒスタミン受容体タンパク質に結合し2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体

【課題】2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体及びその作製法の提供。
【解決手段】2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る、マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウス2型ヒスタミン受容体タンパク質に対するモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンは肥満細胞又は好塩基球内の分泌顆粒より放出され、炎症のケミカルメディエーターとして、種々の炎症に広く関与する。ヒスタミンはヒスタミンの標的細胞に発現し、ヒスタミンと結合し、情報を細胞内に伝達するタンパク質であるヒスタミン受容体に結合し作用する。ヒスタミン受容体には3種類の受容体サブタイプがある(H1、H2及びH3受容体)。このうちH2受容体(2型ヒスタミン受容体)は、アデニル酸シクラーゼと共役し、サイクリックAMPの蓄積を引き起こす受容体で、胃粘膜壁細胞、心房、リンパ球、好中球及び脳に存在し、胃において、壁細胞の胃酸分泌を仲介する。
【0003】
従来より、かかるヒスタミンによる炎症反応、特にI型アレルギー反応やかゆみを抑制するため、ヒスタミンのH1受容体に対し拮抗作用を有する薬剤の検討が行われてきた。また、マウス2型ヒスタミン受容体タンパク質のペプチドを抗原として作製されたポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体についての報告はあったが(非特許文献1等を参照)、これらの抗体は2型ヒスタミン受容体とリガンド(ヒスタミン)との結合を阻止する抗体ではなかった。
【0004】
【非特許文献1】M.Jutel et al, Nature 413:420-425, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体及びその作製法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体の作製方法について鋭意検討を行なった。本発明者らは、マウスヒスタミン2型受容体(mH2R)の遺伝子を単離し、これを大腸菌無細胞タンパク質合成系にてタグ付タンパク質として発現させて透析法を用いて合成し、タンパク質をアフィニティーカラムにて精製した。得られたタンパクを抗原としてラットを免疫し、免疫ラットから回収したリンパ球とマウスミエローマ細胞とを細胞融合した。得られたクローンについて、リコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体との結合活性、天然のヒスタミン2型受容体に対する結合活性、及びヒスタミン2型受容体とリガンド(ヒスタミン)との結合阻止活性を調べ、最終的に2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体を得た。
【0007】
リガンド(ヒスタミン)との結合を阻止できる、ヒスタミン2型受容体に対するモノクローナル抗体の確立は初めてである。精製タンパク質を抗原として用いたこと、天然の受容体を用いて抗体の結合活性及びリガンド(ヒスタミン)結合阻止活性を調べたことにより本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る、マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体。
[2] 2型ヒスタミン受容体に対するアンタゴニスト抗体である[1]のモノクローナル抗体。
[3] 受託番号FERM P-21164であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4、受託番号FERM P-21117であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2、受託番号FERM P-21118であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9及び受託番号FERM P-21119であるmouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4からなる群から選択されるハイブリドーマが産生する[1]又は[2]のモノクローナル抗体。
[4] 受託番号FERM P-21164であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4、受託番号FERM P-21117であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2、受託番号FERM P-21118であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9及び受託番号FERM P-21119であるmouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4からなる群から選択される、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
[5] [4]のハイブリドーマが産生する2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る、マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体。
【0009】
[6] 無細胞タンパク質合成系によりリコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体タンパク質を作製し、該受容体タンパク質を免疫原として用いてマウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体を作製する方法であって、マウス2型ヒスタミン受容体に結合するモノクローナル抗体の中から、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体を選択することを含む、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る、マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体を作製する方法。
[7] [1]〜[3]のいずれかのモノクローナル抗体又はその機能的断片からなるH2ブロッカー。
[8] [1]〜[3]のいずれかのモノクローナル抗体又はその機能的断片を有効成分として含むH2ブロッカー医薬組成物。
[9] [1]〜[3]のいずれかのモノクローナル抗体又はその機能的断片のH2ブロッカーとしての使用。
[10] [1]〜[3]のいずれかのモノクローナル抗体又はその機能的断片のH2ブロッカーの製造のための使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体は、2型ヒスタミン受容体にヒスタミンが結合することを阻止し得る抗体であり、2型ヒスタミンとヒスタミンとの相互作用の研究に用いることができる。さらに、2型ヒスタミンとヒスタミンとの結合により引き起こされる障害の予防又は治療に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のモノクローナル抗体の作製には、マウス2型ヒスタミン受容体(マウスH2受容体:mH2R)を免疫原として用いる。免疫原として用いるマウス2型ヒスタミン受容体は、高純度で精製されたものが好ましい。高純度のマウス2型ヒスタミン受容体を得るには、リコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体を用いることが好ましく、特に無細胞タンパク質合成系を用いて作製したものが好ましい。マウス2型ヒスタミン受容体を無細胞タンパク質合成系を用いて作製する際に、ヒスチジンタグ等のアフィニティータグを付けた状態で作製し、該タグを利用してアフィニティーカラムを利用して精製すればよい。
【0012】
配列番号1にマウス2型ヒスタミン受容体の塩基配列を、配列番号2にマウス2型ヒスタミン受容体のアミノ酸配列を示す。リコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体は、該配列情報に基づいて作製することが可能である。
【0013】
無細胞タンパク質合成は、公知の方法で行なうことができ、例えばKigawaらの方法(Kigawa ら、FEBS Letter 442:15-19, 1999. Kigawaら, J. Struct. Funct. Genomics 5: 63-68, 2004)に従って行なうことができる。
【0014】
無細胞タンパク質合成系とは、タンパク質の翻訳に必要なタンパク質因子を細胞抽出液として取り出し、試験管内でこの反応を再構成することで目的とするタンパク質を合成させる系である。さまざまな生物種に由来する抽出液を利用して無細胞系を構成することができ、例えば、大腸菌や好熱性細菌等の細菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、マウスL−細胞、エールリッヒ腹水癌細胞、HeLa細胞、CHO細胞及び出芽酵母等の、高いタンパク質合成活性の状態の真核細胞、及び原核細胞の抽出液を用いることができる(Clemens, M.J., Transcription and Translation - A Practical Approach, (1984), pp. 231-270, Henes, B.D. et al. eds., IRL Press, Oxford)。
【0015】
タンパク質合成反応を行う際には、上記細胞抽出液に転写/翻訳鋳型となるDNA又はRNA、基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、ATP再生系、核酸分解酵素阻害剤、tRNA、還元剤、ポリエチレングリコール、cAMP、葉酸類、抗菌剤、また鋳型としてDNAを用いる場合にはRNA合成の基質、及びRNAポリメラーゼ等を含むことができる。これらは目的タンパク質や、用いるタンパク質合成系の種類によって適宜選択して調製される。例えば、大腸菌のS30抽出液の場合は、Tris-酢酸、DTT、NTPs(ATP、CTP、GTP及びUTP)、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、少なくとも一種のアミノ酸(天然の20種類のアミノ酸の外それらの誘導体を含む。放射性同位元素でタンパク質を標識する場合には標識アミノ酸を除いた残りを添加する)、ポリエチレングリコール(PEG)、葉酸、cAMP、tRNA、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、グルタミン酸カリウム、及び至適濃度の酢酸マグネシウム等の一部あるいは全部を添加する。これらの補充的な混合液は、通常S30抽出液とは別に保存しておき、使用直前に混合するが、これらをS30抽出液とあらかじめ混合して凍結融解を行い、RNA分解酵素複合体を除去することもできる(国際公開WO0183805号パンフレット参照)。
【0016】
鋳型となるDNAは、適当な発現制御領域と、発現させたい所望のタンパク質をコードする遺伝子配列とを含む二本鎖DNAである。当該タンパク質の発現効率を上げるためには強力なプロモーターやターミネーターを用いて転写を促進すると共に、mRNAとリボソームとの親和性を上げて翻訳効率を高める必要がある。例えば、T7ファージに由来するT7RNAポリメラーゼは極めて強力な転写活性を有し、高いレベルで組換えタンパク質を生成することが知られている。さらにSD配列とも呼ばれるリボソーム結合配列(RBS)を導入することが翻訳効率を上げるために重要である。また、合成されたタンパク質を迅速に精製、若しくは検出するためにはアフィニティー標識(タグ)配列を組み込んだ融合タンパク質が合成できるように鋳型DNAを設計することもできる。
【0017】
また、無細胞タンパク質合成は、フロー法によっても行うことができる。フロー法とは、タンパク質合成に際して、反応系から枯渇しやすい物質であるATP、GTP等をポンプ等で連続的に供給し、かつ、タンパク質合成を阻害する反応副産物を除去することで、タンパク質合成を長時間行わせる方法である。フロー法は、Spirin et al., Science 242 1162-1164 [1988])、Kim and Choi, Biotechnol. Prog. 12 645-649等に記載の方法で行うことができる。
【0018】
また、無細胞タンパク質合成は、市販の無細胞合成キット又は装置を用いて行うこともでき、市販のキット又は装置として、東洋紡績株式会社製のPROTEIOSTM無細胞蛋白質合成キット、ポストゲノムインスティチュート社製のPURESYSTEM(登録商標)、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のRTSプロテオマスター等がある。
【0019】
リコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体を無細胞タンパク質合成系によりアフィニティータグ付きの状態で製造した後、アフィニティータグを利用したアフィニティークロマトグラフィーにより精製する。アフィニティータグ配列としては、例えば、2〜12個、好ましくは4個以上、さらに好ましくは4〜7個、さらに好ましくは5個若しくは6個のヒスチジンからなるポリヒスチジン配列が挙げられる。この場合、ニッケルをリガンドとしたニッケルキレートカラムクロマトグラフィーを利用することにより合成タンパク質を精製することができる。また、ポリヒスチジンに対する抗体をリガンドとして固定化したカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによっても精製することができる。その他、ヒスチジンを含む配列からなるHATタグ、HNタグ等も用いることができる。さらに、他のアフィニティータグとして、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV-Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09、CruzTag22、CruzTag41、Glu-Gluタグ、Ha.11タグ、KT3タグ等がある。
【0020】
アフィニティータグを利用したアフィニティークロマトグラフィーにより、タグ付きのリコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体を精製した後、タグを除去して免疫原として用いる。リコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体を設計する際に、アフィニティータグとマウス2型ヒスタミン受容体の間にプロテアーゼが認識して開裂する配列を含ませておくことにより、精製後プロテアーゼを作用させてアフィニティータグを除去することができる。このようなプロテアーゼが認識する配列及びプロテアーゼの組合せとして、例えばTEV認識配列とTEVプロテアーゼが挙げられる。
【0021】
免疫に用いる動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
【0022】
抗原を動物に免疫するには、公知の方法に従って行われる。例えば、一般的方法として、抗原を哺乳動物のフットパッド、腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望によりアジュバントを適量混合し、動物に4〜21日毎に数回投与する。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、TiterMAX gold(TierMax社)等が挙げられる。
【0023】
このように動物を免疫し、血清中の抗体レベルが上昇したのを確認した後に、動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に用いる。細胞融合に用いる免疫細胞は、リンパ節細胞又は脾細胞が好ましい。
【0024】
免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immnol.(1979)123, 1548-1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81, 1-7)、NS-1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976)6, 511-519)、MPC-11(Margulies. D.H. et al., Cell(1976)8, 405-415)、SP2/0(Shulman, M. et al., Nature(1978)276, 269-270)、FO(deSt. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods(1980)35, 1-21)、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med.(1978)148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature(1979)277, 131-133)等が好適に使用される。
【0025】
免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C.、Methods Enzymol.(1981)73, 3-46)等の公知の方法で行うことができる。
【0026】
具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、さらに融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加してもよい。また、エレクトロポレーション法により融合することもできる。
【0027】
免疫細胞とミエローマ細胞との細胞数比は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液等が挙げられる。また、この際、牛胎児血清(FCS)等の血清補助剤を用いてもよい。
【0028】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞とを培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度のPEGを用いることができる)を30〜60%(w/v)の濃度で添加し混合することによって行うことができる。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
【0029】
また、ヒトリンパ球をin vitroで抗原に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させることによりヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のすべてのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原を投与して抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からヒト抗体を取得することもできる(国際特許出願公開番号WO 94/25585号公報、WO 93/12227号公報、WO92/03918号公報、WO 94/02602号公報参照)。
【0030】
このようにして得られたハイブリドーマは、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)等の選択培養液で培養することにより選択される。HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。次いで、公知の限界希釈法により、目的とする抗体を産生するハイブリドーマをクローニングすればよい。
【0031】
スクリーニングは、精製マウス2型ヒスタミン受容体を抗原として用いたウエスタンブロッティング、ELISA、RIA等の免疫学的測定法により、マウス2型ヒスタミン受容体に対する結合活性を有する抗体を産生するハイブリドーマクローンを選択することにより行なう。このようにして選択したクローンの産生抗体について、さらに天然のマウス2型ヒスタミン受容体への結合性を確認し、結合性を有するものを選択する。天然のマウス2型ヒスタミン受容体への結合は、ヒスタミン2型受容体を発現している組織切片を用いた免疫組織化学的染色により行なえばよい。ヒスタミン2型受容体を発現している組織としては、胃粘膜組織、心房、リンパ球、好中球、脳等が挙げられる。免疫組織化学的染色は公知の方法で行なうことができる。
【0032】
さらに、本発明のマウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体は、ヒスタミン2型受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る抗体であり、このような抗体を得るためには、モノクローナル抗体のヒスタミン2型受容体とリガンドとの結合阻止活性を調べる必要がある。結合阻止活性は、例えば、マウス2型ヒスタミン受容体を発現している組織のマウス2型ヒスタミン受容体へのリガンドの結合を阻止し得るかどうかの結合阻止試験により行なうことができる。
【0033】
結合阻止試験は、マウス大脳組織抽出タンパク質等の2型ヒスタミン受容体を含む試料に試験しようとするモノクローナル抗体と2型ヒスタミン受容体のリガンドを加え、モノクローナル抗体が2型ヒスタミン受容体とリガンドとの結合をどの程度阻止するかを測定することにより行なう。この際、抗体を加えない場合の2型ヒスタミン受容体とリガンドとの結合活性を100として、結合阻止率を算出することができる。結合阻止試験において、用いるリガンドは2型ヒスタミン受容体に結合する物質であり、例えばチオチジン(tiotidine)が挙げられる。チオチジンは、3H等で標識して用いればよい。
【0034】
最終的に、ヒスタミン2型受容体とヒスタミンとの結合阻止活性を有するモノクローナル抗体を本発明のモノクローナル抗体として選択する。本発明のモノクローナル抗体は、好ましくは上記結合阻止試験における結合阻止率が約50%以上のモノクローナル抗体であり、さらに好ましくは約70%以上のモノクローナル抗体であり、さらに好ましくは約80%以上のモノクローナル抗体、さらに好ましくは約90%以上の抗体、特に好ましくはほぼ100%のモノクローナル抗体である。
【0035】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマを通常の方法に従って培養し、その培養上清として得ることができ、あるいはハイブリドーマを免疫適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、腹水として得ることもできる。
【0036】
本発明のモノクローナル抗体として、例えば2006年11月30日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託したハイブリドーマ(mouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2、mouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9及びmouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4)が産生するモノクローナル抗体3種類並びに2007年1月23日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託したハイブリドーマ(mouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4)が産生するモノクローナル抗体が挙げられる。以下に4種類のハイブリドーマの識別のための表示及び受託番号を示す。
mouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4 FERM P-21164
mouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2 FERM P-21117
mouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9 FERM P-21118
mouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4 FERM P-21119
【0037】
本発明の抗体は、組換え型抗体も含む。組換え型抗体は、抗体遺伝子を抗体産生ハイブリドーマから取得し、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させることができる(Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem.(1990)192, 767-775, 1990等)。すなわち、本発明の抗体を産生するハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを公知の方法で単離し、全RNAを調製する。
【0038】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを公知の方法で合成する。
得られたDNAをベクターDNAと連結して、組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入しクローニングにより本発明の抗体を産生し得る組換えベクターを調製する。得られた目的とする抗体のV領域をコードするDNAを、抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。この際、抗体遺伝子をプロモーター等の制御下で発現可能に発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523号公報参照)。
【0039】
また、トランスジェニック動物を使用して組換え型抗体を産生することもできる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得ることができる(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology(1994)12, 699-702)。
【0040】
さらに本発明の抗体には、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体も含まれる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0041】
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0042】
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。
【0043】
さらに本発明の抗体は、抗体の機能的断片又はその修飾物も包含する。例えば、抗体の機能的断片は、抗体の断片であって抗原に特異的に結合し得る断片である。機能的断片としては、Fab、F(ab')2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
【0044】
発現、産生された抗体の精製は、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えば、アフィニティークロマトグラフィー、その他のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0045】
本発明のモノクローナル抗体は、2型ヒスタミン受容体アンタゴニストとして作用し、2型ヒスタミン受容体にヒスタミンが結合することにより生じる障害を予防又は治療し得るヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)として用いることができる。2型ヒスタミン受容体にヒスタミンが結合することにより生じる障害としては、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等の消化器性潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、ゾリンジャー・エリスン(Zollinger-Ellison)症候群等が挙げられる。また、本発明のモノクローナル抗体を用いることにより、組織又は細胞上の2型ヒスタミン受容体の存在の有無を蛍光抗体法などの手法により検出、同定することができる。さらに、本発明のモノクローナル抗体は、2型ヒスタミン受容体の基質(リガンド)の結合を阻止することにより、2型ヒスタミン受容体の機能を調べることができる。
【0046】
本発明は、2型ヒスタミン受容体に対する抗体を含有する医薬組成物も包含する。抗体は、ヒト化抗体、ヒト型抗体が好ましい。このような医薬組成物は、好ましくは、抗体に加えて、生理学的に許容され得る希釈剤又はキャリアを含んでいる。適切なキャリアには、生理的食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水グルコース液、及び緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物は、種々の形態で投与することができ、それらの投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、又は、注射剤、点滴剤、坐薬等による非経口投与を挙げることができる。
【0047】
その投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜1000mgであり、これらを1回、又は数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、1回約0.01mg〜1000mgを皮下注射、筋肉注射又は静脈注射によって投与することができる。
【0048】
本発明は、本発明の抗体又は医薬組成物を用いた上記障害の予防又は治療法をも包含し、さらに本発明は本発明の抗体の上記疾患の予防又は治療剤の製造への使用をも包含する。
【実施例】
【0049】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
1.マウスヒスタミンH2受容体タンパク質の合成方法
マウスヒスタミンH2受容体タンパク質(mH2R)は、以下のような反応組成の大腸菌無細胞タンパク質合成系にて透析法を用いて合成した(Kigawa, T. et al., (1999) FEBS Lett. 442, 15-19; Kigawa, T. et al., (2004) J Struct Funct Genomics 5(1-2), 63-68; Ishihara, G. et al., (2005) Protein Expr. Purif. 41, 27-37)。
【0050】
(1)反応組成
合成反応用鋳型DNAプラスミドとしてはmH2RのN端側にヒスチジンアフィニティータグとTEVプロテアーゼ認識配列が付いたコンストラクトのものを用いた。図1に用いた発現プラスミドベクターのコンストラクトを示す。
【0051】
無細胞合成系における内液と外液の組成は以下の通りであった。
内液(9ml)
LMCPY-tRNA 3.36ml
tRNA 175μg/ml
アジ化ナトリウム 0.05%
酢酸マグネシウム 9.2mM
各種アミノ酸 1.5mM
クレアチンキナーゼ 0.25mg/ml
T7 RNA ポリメラーゼ 66.7μg/ml
S30抽出液 2.7ml
鋳型プラスミドDNA 4μg/ml
【0052】
外液(90ml)
LMCPY-tRNA 33.6ml
アジ化ナトリウム 0.05%
酢酸マグネシウム 9.2mM
各種アミノ酸 1.5mM
S30緩衝液 27ml
【0053】
反応方法
内液9mlを透析膜(Spectra/Por 7 MWCo:15,000, Spectrum)に入れ、タッパーウエアーに入れた10倍容(90ml)の外液に対しシェーカーで振とうすることにより透析しながら30℃で5時間合成反応を行った。
【0054】
2.mH2Rの精製方法
(1)ヒスチジンタグ付きmH2R
合成反応内液を16,000×gで20分間4℃で遠心し、上清を回収した。上清を21mlの20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0), 1M NaCl, 20mMイミダゾール, 0.05% N-Dodecyl-β-D-maltoside (DDM)(Anatrace)で希釈した後、HisTrapカラム(1ml)(GE Healthcare Bio-Sciences)にかけ、アフイニティー精製を行った。20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0), 500mM NaCl, 500mMイミダゾール, 0.05%DDM, 5%グリセロールを用いて目的タンパク質の溶出を行った。SDS-PAGEにより調べた溶出パターンを図2に示した。図2中F3からF10までのフラクションを回収し、サンプルとした。ヒスチジンタグ付きのmH2Rは、最終的には20mM Tris-HCl 緩衝液(pH8.0), 1M NaCl, 0.05%DDM, 5%グリセロールにバッファー交換した後、Amicon Ultra-4 (Millipore)を用いて約0.3mg/mlとなるまで濃縮した。100μlずつ分注して液体窒素で瞬時に凍結させた後、使用時まで-80℃で保存した。
【0055】
(2)ヒスチジンタグの除去
上記と同様の合成反応を行い、HisTrapカラムから溶出したヒスチジンタグ付きのmH2Rに対し100μlのTEVプロテアーゼを添加し、4℃で一晩反応させることによりタグ切断反応を行った。反応後の溶液をHisTrap カラム(1ml)(GE Healthcare Bio-Sciences)にかけ、20mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)、1M NaCl, 20mM imidazole, 0.05%DDM, 5%グリセロールで素通り画分に溶出されてきた目的物を回収した。図3にDS-PAGEにより調べた溶出パターンを示した。図3中、A2からB6までのフラクションを回収しサンプルとした。終濃度10%となるようにグリセロールを加えた後、タグなしmH2RはAmicon Ultra-4(Millipore)を用いて約2.84mg/mlとなるまで濃縮した。図4に精製・濃縮したマウス2型ヒスタミン受容体のSDS-PAGEの結果を示す。100μlずつ分注して液体窒素で瞬時に凍結させた後、使用時まで-80℃で保存した。
【0056】
3.モノクローナル抗体の作製
上記(2)で得られたヒスチジンタグを除去したタンパクを抗原として、アジュバントとしてTiter MAX gold(TierMax社)を用いてラットフットパッドに50μg/片足・回の量で初回免疫後7日後に2回目の免疫を行なうというスケジュールで2回免疫した。2回目の免疫3日後に、免疫ラットから鼠径リンパ節及び腸骨リンパ節を採取し、リンパ球を集めた。集めたリンパ球とマウスミエローマ細胞P3U1とを1:1の細胞数比でPEG法にて細胞融合した。融合細胞を1×107ミエローマ細胞/プレートの濃度で、96ウェルプレートに播いた。
【0057】
得られた約200個のクローンについて、上記(2)で得られた精製タンパク質を抗原としてELISA法にて結合活性を調べた。約66個の陽性クローンが得られた。
【0058】
その66個のハイブリドーマクローンの天然のヒスタミン2型受容体に対する結合活性を調べる目的で、ヒスタミン2型受容体を発現しているマウス胃粘膜組織(凍結切片)に対する結合を蛍光抗体法にて調べた。ハイブリドーマの産生するモノクローナル抗体がマウスヒスタミンH2受容体に結合するかどうかを蛍光色素アレクサ(alexa)594で標識されたマウス抗ラットIgG抗体を用いた免疫染色により調べた。
【0059】
約14個のクローンが陽性の結合を示した。その結果、2個のモノクローナル抗体(クローン3D1及び3F2)が強く結合を阻止した。また、別の2個は50%の結合阻止活性を示した。図5にラット抗マウスH2受容体血清をコントロールとして用いたマウス胃粘膜組織の免疫染色の結果を示す。図6に、ハイブリドーマクローン3D1及び3F2産生モノクローナル抗体を用いたときの結果を示す。図6中、左の2つが正常マウス胃粘膜組織を用いたときの結果を示し、右の2つがH2受容体欠損マウスの胃粘膜組織を用いたときの結果を示す。図に示すように、H2受容体欠損マウスの胃粘膜組織では染色は認められないが、H2受容体を発現している正常マウス胃粘膜組織では染色が認められる。
【0060】
図7にELISA法及び免疫染色の結果のまとめを示す。図中、LDは、限界希釈法(limiting dilution)を意味する。
【0061】
4.抗マウスH2受容体抗体のマウス大脳皮質における[3H]-チオチジン(tiotidine)の結合に対する影響
14個のクローンについて、ヒスタミン2型受容体とリガンド(ヒスタミン)との結合を阻止できる抗体があるかを、ヒスタミン2型受容体を発現しているマウス脳組織を用いて調べた。
マウス大脳皮質を集めPBS中でホモジナイズしたものをタンパク質サンプルとして本実施例で用いた。予備実験により、実験に用いるタンパク質サンプルの適切な量を200μgとした。
ヒスタミンH2受容体とリガンドとの結合試験およびモノクローナル抗体によるリガンド結合阻止実験を以下の方法で行なった。
【0062】
結合試験:
10匹のマウス大脳組織を集め、PBS(リン酸緩衝液)中に入れてホモゲナイザーを用いて細胞を完全につぶした。高速遠心(10,000回転/分、20分)にて上清(タンパク質)を回収した。次いで、大脳タンパク200μgに、種々の濃度(1-10nM)の基質[3H]-tiotidine (トリチウム標識チオチジン)、10μM ranitidine(ラニチジン)を加えて4℃で90分間インキュベートした。タンパク画分にとりこまれた基質の濃度を[3H] 値から測定した。横軸に[3H]-tiotidineの濃度、縦軸に比活性(タンパク1mgあたりのチオチジンの濃度、fmol/mg)をプロットした。得られたグラフから結合活性(Kd値)および結合速度(Bmax)を得た。
【0063】
抗体による阻止試験
大脳タンパク200μg、基質([3H]-tiotidine)にモノクローナル抗体を含むハイブリドーマ細胞の培養上清を100μl加えて同様に結合試験を行なった。抗体を含まないハイブリドーマの培養上清を加えた場合の結合活性をコントロール(100)として、抗体による基質(リガンド)の受容体への結合阻止率を測定した。
【0064】
図8に結合試験の結果を示す。Kd値は2.2nMであり、Bmaxは9.4fmol/mgであった。
図9に各モノクローナル抗体による2型ヒスタミン受容体とチオチジンと結合の阻止試験の結果をコントロールに対する%値で示す。
【0065】
図10に各モノクローナル抗体による2型ヒスタミン受容体とチオチジンと結合の阻止試験の結果をグラフにより示す。F9、H4及びE4は強い阻害活性を有していた。また、A2は50%の阻害を示した(図7中矢印を付した抗体)。
図10中F9、E4及びA2で表されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、それぞれ識別のための表示mouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9、mouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4及びmouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2で、2006年11月30日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託し、図10中H4で表されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、識別のための表示mouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4で、2007年1月23日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託した。
【0066】
それぞれの受託番号を以下に記す。
mouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4 FERM P-21164
mouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2 FERM P-21117
mouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9 FERM P-21118
mouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4 FERM P-21119
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のマウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体は、2型ヒスタミンとヒスタミンとの相互作用の研究分野で用いることができる。さらに、2型ヒスタミンとヒスタミンとの結合により引き起こされる障害の予防又は治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】マウス2型ヒスタミン受容体作製のための発現プラスミドベクターのコンストラクトを示す図である。
【図2】無細胞タンパク質合成系により作製したマウス2型ヒスタミン受容体(ヒスチジンタグ付き)のアフィニティーカラムの溶出パターンを示す図である。
【図3】無細胞タンパク質合成系により作製し、ヒスチジンタグを除去したマウス2型ヒスタミン受容体のアフィニティーカラムの溶出パターンを示す図である。
【図4】精製・濃縮したマウス2型ヒスタミン受容体のSDS-PAGEの結果を示す図である。
【図5】ラット抗マウスH2受容体血清を用いたマウス胃粘膜組織の免疫染色の結果を示す図である。
【図6】ハイブリドーマクローン3D1及び3F2産生モノクローナル抗体を用いたマウス胃粘膜組織の免疫染色の結果を示す図である。
【図7】マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体の作製におけるELISA法及び免疫染色の結果のまとめを示す図である。
【図8】マウス2型ヒスタミン受容体とリガンドとの結合試験の結果を示す図である。
【図9】得られたモノクローナル抗体による2型ヒスタミン受容体とチオチジンと結合の阻止試験の結果をコントロールに対する%値により示す図である。
【図10】得られたモノクローナル抗体による2型ヒスタミン受容体とチオチジンと結合の阻止試験の結果をグラフにより示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る、マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体。
【請求項2】
2型ヒスタミン受容体に対するアンタゴニスト抗体である請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
受託番号FERM P-21164であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4、受託番号FERM P-21117であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2、受託番号FERM P-21118であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9及び受託番号FERM P-21119であるmouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4からなる群から選択されるハイブリドーマが産生する請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
受託番号FERM P-21164であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4A10-H4、受託番号FERM P-21117であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:4E9-A2、受託番号FERM P-21118であるハイブリドーマmouse-rat hybridoma HrH2:6D4-F9及び受託番号FERM P-21119であるmouse-rat hybridoma HrH2:7G7-E4からなる群から選択される、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項5】
請求項4記載のハイブリドーマが産生する2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る、マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体。
【請求項6】
無細胞タンパク質合成系によりリコンビナントマウス2型ヒスタミン受容体タンパク質を作製し、該受容体タンパク質を免疫原として用いてマウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体を作製する方法であって、マウス2型ヒスタミン受容体に結合するモノクローナル抗体の中から、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得るモノクローナル抗体を選択することを含む、2型ヒスタミン受容体とヒスタミンとの結合を阻止し得る、マウス2型ヒスタミン受容体に対するモノクローナル抗体を作製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−167738(P2008−167738A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54674(P2007−54674)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第10回 日本ヒスタミン研究会 発表日:平成18年12月15日(金)16日(土) 発表場所:岡山大学創立五十周年記念館 講演予稿集発行日:平成18年12月発行 講演番号:演題12
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】