説明

2段ロールストリップ鋳造の際に、鋳造サイクルを延長するための方法、並びにこの方法を実施するための設備

【解決手段】 本発明は、圧延機の少なくとも2つの連続的な圧延ユニット1、2内において、交換可能なワークロール5a、5b、6a、6bによって圧延される鋼ストリップの、インライン状の圧延でもっての鋼ストリップの2段ロールストリップ鋳造の際の鋳造サイクルを延長するための方法に関する。鋳造プロセスを、ロール交換に依存せずに構成するために、一方の圧延ユニット2のワークロール6a、6bが、鋳造の間、鋼ストリップ23の下方、もしくは上方に交換される。この方法を実施するための設備の場合、ストリップをロール交換の際に損傷しないために、ワークロール6a、6bが、持上げ装置17を用いて、鋼ストリップ23から持上げ可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機の少なくとも1つ有利には2つの連続的な圧延ユニット内において、交換可能なワークロールによって圧延される鋼ストリップのための、インライン状の圧延でもっての2段ロールストリップ鋳造の際の鋳造サイクルを延長するための方法に関する。本発明は、更に、この方法を実施するための設備に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延機のワークロールは、公知のように、作動状態において摩耗される。それ故、特に、圧延ユニットのワークロールを、最終ストリップ厚さ領域内において規則的に交換することは、最終ストリップの上での摩耗の痕跡が欠陥を誘起すること、もしくは、粗悪なストリップ表面が形成されることを回避するために、圧延作業内において必要である。
【0003】
従来の熱間圧延作動状態において、最後の圧延ユニットのワークロールは、ほぼ3作動時間毎に交換される。この交換は、その際、不連続の作業状態において、即ちこれら圧延状態の中間で行われる。
【0004】
インライン状の圧延でもっての、新規の2段ロールストリップ鋳造の場合、圧延温度は
約1000°C〜1200°Cの値、即ち従来の熱間圧延作動状態におけると同じくらいの温度である。ストリップ速度は、しかしながら、単に0.5〜2.0m/sであり、且つ従って、その場合に約20m/sの圧延速度でもって圧延される従来の作動状態におけるよりはるかに僅かである。その際、鋳造プロセス内において、10時間およびそれ以上の鋳造サイクルが達成しようとされる。
このような様式の装置に関して、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の根底をなす課題は、インライン状の圧延でもっての鋼ストリップの2段ロールストリップ鋳造の場合に、鋳造サイクルを延長することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明に従い、圧延機内において、一方の圧延ユニットのワークロールが、鋳造の間、鋼ストリップの下方、もしくは上方に交換されることによって解決される。この方法で、鋳造工程を、圧延工程に依存せずに適宜に継続することが可能である。何故ならば、鋳造サイクルが、圧延機のワークロールのロール表面の制限された耐久性によって、制限されないからである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、更に、ロール交換の間、他方の使用の状態にある圧延ユニットのワークロールでもって、ロール交換の以前より大きな、即ちこのユニットの減面割合に相応するストリップ厚さが形成される。
【0008】
選択的に、上記の目的のために、本発明により、ロール交換の間、使用の状態にある圧延ユニットのワークロールでもって、一時的に移行(Uebergang)無しに、同じストリップ厚さは、ロール交換の以前のように形成され、その際、+それに加えてこの圧延ユニットのこれらワークロールが、これら両方の圧延ユニットの全減面割合(Gesamtreduktionsrate)を引き受ける。従って、運ばれるストリップ厚さは、この交換工程の間じゅう不変のままである。
【0009】
移行相におけるストリップ厚さの差異を回避するために、本発明により、交換されるべきワークロールが弛緩される前に、先ず第一に、その都度運ばれるストリップ厚さが、使用の状態にある圧延ユニットのワークロールでもって制御される(angesteuert)。
【0010】
使用の状態にある圧延ユニットの作業を支援するために、本発明により、ロール交換の間、鋳造速度、及び/または溶湯面高さ、及び/または熱導出、及び/または導入される溶融鋼の温度のような、鋳造プロセス内において鋳造厚さに標準的に影響を及ぼすパラメータは変化される。このことによって、このロール交換の間、鋳造厚さを、作動の状態にある圧延ユニットの要件に従って変えることは可能である。
【0011】
本発明は、更に、本発明による方法を実施するための設備に関しており、この設備の圧延ユニットが、鋼ストリップの下方、もしくは上方に交換可能なワークロールを備えている。ロール交換の際に、ストリップの損傷を回避するために、上側のワークロールが、本発明により、持上げ装置を有しており、これら持上げ装置を用いて、これらワークロールが、鋼ストリップから持上げ可能である。
【0012】
この目的のために、本発明により、ワークロールが、持上げ装置によって持上げ可能であり、且つ、圧延機が、これらワークロールの手前および後方で、鋼ストリップのための持上げロールを備えている。合目的に、これら持上げロールは、旋回レバーの自由な端部に設けられている。
【0013】
ワークロールおよび鋼ストリップの相互に調和された持上げによって、この鋼ストリップとワークロールとの間に中間間隙が形成され、この中間間隙は、これら交換されるべきワークロールの間での、この鋼ストリップの非接触の通過を保障する。
【0014】
その際、簡単な作業方法の趣旨で、上側のワークロールが、このワークロールに所属して設けられたバックアップロールでもって持上げ可能である場合、有利である。
【0015】
交換工程を容易にすること、もしくは促進することのために、本発明により、ワークロールは、同行可能、及び/または、旋回入り込みもしくは脱出可能な案内部の上に支持可能である。
【0016】
これら交換されるべきワークロールの摩耗が異なる場合、これらワークロールは、その場合に、合目的に、個別に交換可能である。更に、両方のワークロールをペアで同時に交換することはしかしながら有利である。この場合、本発明により、これら交換されるべきワークロールが、共通の引抜き装置を備えている。
【0017】
次に、本発明を、実施例に基づいて、図を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1および2において図示された圧延機は、2つの連続的な圧延ユニット1および2から成り、それぞれの圧延ユニットが、ロールスタンド3もしくは4を、並びに、バックアップロール7a、7bもしくは8a、8bを有する圧延機のワークロール5a、5bもしくは6a、6bのペアを備えている。両方の圧延ユニットは、個々に、同一に構成されている。簡略化のために、従って、以下で、ただ圧延ユニット2だけを詳細に説明する。
【0019】
このユニットのワークロール6a、6bは、軸受ケーシング9、10もしくは11、12に軸受けされており、これら軸受ケーシングが案内支持体13もしくは14に支持されている。これら支持体の延長部に、これらロールの交換の際にこれらワークロール6a、6bを収容するための、更に別の案内部15、16が設けられている。
【0020】
案内支持体13、14、および従って、これら案内支持体の上に支持されたワークロール6a、6bは、液圧的な持上げ装置17を用いて持上げ可能であり、これら持上げ装置が、ワークロール6aもしくは6bと一緒に案内支持体13、14の支持ハウジング19もしくは20に対して作用的である。往復動方向は、図2内において、参照数字21、22でもって記号を付けられている。
【0021】
図示されていない2段ロール鋳造設備内において製造された鋼ストリップ23は、圧延ユニット1および2を通過し、且つ、圧延ユニット1および2の、ワークロール5a、5bもしくは6a、6bの手前および後方に配置されている、液圧的に持上げ可能な持上げロール24、25の上で支持されている。図3によるバリエーションにおいて、これら持上げロール24、25は、旋回レバー26もしくは27の自由な端部に設けられている。
【0022】
ワークロール6a、6bに、圧延区間の領域からのこれらロールの共通の引抜きのための、図示されていない引抜き装置が所属して設けられている。これらワークロールの引張り方向は、参照番号28でもって記号を付けられている。
【0023】
圧延ユニット2のワークロール6aおよび6bを交換するために、先ず第一に、即ち交換されるべきワークロール6a、6bが弛緩される前に、圧延ユニット1のワークロール5a、5bでもって、その都度運ばれるストリップ厚さが制御される。この方法のやり方によって、この圧延ユニット1でもって、一時的に移行無しに、引き続いて、同じストリップ厚さが以前と同じように両方の圧延ユニット1および2の共同で形成されるということが達せられ、その際、それに加えてこの圧延ユニット1が、これら両方の圧延ユニットの全減面割合を引き受ける。
【0024】
引き続いて、案内支持体13および14は、ワークロール6a、6bと共に、持上げ装置17を用いて持上げられる。同時に、これに伴って、同様に鋼ストリップ23が、持上げロール24、25を用いて持上げられる。
【0025】
この場合、ワークロールおよび鋼ストリップの往復動道程は、持上げの後、この鋼ストリップの上方、および下方で、鋼ストリップとワークロールとの間に、中間間隙が形成されているように寸法を設定されている。このことによって、ワークロールの交換の際に、これらワークロールが、如何なるストリップ表面の損傷も誘起しないことが保障される。
【0026】
同様に本発明の領域内において、持上げ装置17を、これら持上げ装置が直接的にワークロール6a、6bの案内支持体13、14に対して作用的であるように構成することは何の問題も無く可能である。この場合、上側のワークロール6aが、このワークロールに所属して設けられたバックアップロール8aとの協働で持上げられ、これに対して、下側のワークロール6bは、単独で持上げられる。
【0027】
ワークロール6aおよび6bの持上げの後、これらワークロールは、共に、矢印28の方向に、案内支持体13、14、およびこれら案内支持体に接続する案内部15、16の上に、圧延区間領域から引抜かれ、且つ、修理作業場へと搬出される。この工程を容易にするために、これら案内部15、16は、ワークロールと同行可能である。これら案内部は、同様に必要に応じて、旋回入り込みもしくは脱出され得る。
【0028】
新しいワークロールの組込みは、類似して、ただ逆の順序で行なわれるだけである。
【0029】
もちろん、本発明の領域内において、同様にワークロール6a、6bを個別に交換することも可能であり、その際、この場合に、それぞれのワークロールは、自己の引抜き装置を有していることは可能である。
【0030】
ワークロールの交換の場合、ロール交換の間、使用の状態にある圧延ユニットのワークロールでもって、比較的に大きな、即ちこのユニットの減面割合に相応するストリップ厚さが形成されるように動作することは同様に可能である。このことによって、圧延機の制御は、交換工程の間、簡略化される。
【0031】
この上記された方法は、もちろん、ワークロール5a、5bの交換のためにも、並びに、2つの連続的な圧延ユニットよりも多い圧延機の場合にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】側面図における、インライン圧延機を有する、2段ロール鋳造設備の圧延機の図である。
【図2】図1内における線II−IIに沿っての断面における、図1の圧延機の図である。
【図3】鋼ストリップのための持上げロールの1つの実施形態の変形を有する、図1の詳細部IIIの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機の少なくとも1つの、有利には2つの連続的な圧延ユニット(1、2)内において、交換可能なワークロール(5a、5b、6a、6b)によって圧延される鋼ストリップのための、インライン状の圧延でもっての2段ロールストリップ鋳造の際の鋳造サイクルを延長するための方法において、
一方の圧延ユニット(2)のワークロール(6a、6b)が、鋳造の間、鋼ストリップ(23)の下方、もしくは上方に交換されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ロール交換の間、他方の使用の状態にある圧延ユニット(1)のワークロール(5a、5b)でもって、ロール交換の以前より大きなストリップ厚さが形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ロール交換の間、使用の状態にある圧延ユニット(1)のワークロール(5a、5b)でもって、一時的に移行無しに、同じストリップ厚さは、ロール交換の以前のように形成され、その際、それに加えてこの圧延ユニットのこれらワークロールが、これら両方の圧延ユニット(1、2)の全減面割合を引き受けることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
交換されるべきワークロール(6a、6b)が弛緩される前に、先ず第一に、その都度運ばれるストリップ厚さが、使用の状態にある圧延ユニット(1)のワークロール(5a、5b)でもって制御されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ロール交換の間、鋳造速度、及び/または溶湯面高さ、及び/または熱導出、及び/または導入される溶融鋼の温度のような、鋳造プロセス内において鋳造厚さに標準的に影響を及ぼすパラメータは、使用の状態にある圧延ユニット(1)の支援の趣旨で変化されることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の方法を実施するための設備であって、
この設備の圧延ユニット(1、2)が、鋼ストリップ(23)の下方、もしくは上方に交換可能なワークロール(5a、5b、6a、6b)を備えている様式の上記設備において、
ワークロール(6a、6b)が、持上げ装置(17)を用いて、鋼ストリップ(23)から持上げ可能であるように構成されていることを特徴とする設備。
【請求項7】
ワークロール(6a、6b)は、持上げ装置(17)によって持上げ可能であり、且つ、圧延機が、これらワークロールの手前および後方で、鋼ストリップ(23)のための持上げロール(24、25)を備えていることを特徴とする請求項6に記載の設備。
【請求項8】
持上げロール(24、25)は、旋回レバー(26、27)の自由な端部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の設備。
【請求項9】
上側のワークロール(6a)は、このワークロールに所属して設けられたバックアップロール(8a)でもって持上げ可能であるように構成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の設備。
【請求項10】
ワークロール(6a、6b)は、同行可能、及び/または、旋回入り込みもしくは脱出可能な案内部(13、14、15、16)の上に支持可能であるように構成されていることを特徴とする請求項6から9のいずれか一つに記載の設備。
【請求項11】
ワークロール(6a、6b)は、個別に、またはペアで交換可能であるように構成されていることを特徴とする請求項6から10のいずれか一つに記載の設備。
【請求項12】
ペアで交換されるべきワークロール(6a、6b)は、共通の引抜き装置を備えていることを特徴とする請求項11に記載の設備。
【請求項13】
上側のワークロールは、このワークロールに所属して設けられた上側のバックアップロールと共に持上げ可能であり、及び/または、下側のワークロールが、このワークロールに所属して設けられた下側のバックアップロールと共に降下可能であるように構成されていることを特徴とする請求項6から12のいずれか一つに記載の設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501713(P2007−501713A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523002(P2006−523002)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009129
【国際公開番号】WO2005/018843
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【出願人】(502060577)メイン・マネジメント・インスピレーション・アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】