説明

2液型シリコーンゴム組成物

【課題】 長期保管後も、粘度変化が小さく、得られるシリコーンゴムの物理的特性の変化が小さい2液型シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】 混合して、(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、(C)炭酸カルシウム粉末、(D)石英、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸マグネシウム、およびカーボンブラックからなる群より選ばれる一種または2種以上の無機粉末、および(E)ヒドロシリル化反応用触媒からなるシリコーンゴム組成物を形成する、(A)成分、(C)成分、および(E)成分を含み、(B)成分を含まない組成物(I)と、(A)成分、(B)成分、および(D)成分を含み、(C)成分および(E)成分を含まない組成物(II)からなる2液型シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化する2液型シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物は、炭酸カルシウム粉末が不純物としてアルカリ成分を含むため、貯蔵中に前記組成物の硬化剤として含まれているケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと反応して水素ガスを発生するという問題があった。この問題を解決するため、例えば、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、白金族金属系触媒、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物で表面処理された炭酸カルシウム粉末からなるシリコーンゴム組成物(特許文献1参照)、あるいは、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、実質的にジオルガノポリシロキサンで表面処理された炭酸カルシウム粉末、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、白金族金属系触媒からなるシリコーンゴム組成物(特許文献2、3参照)が提案されている。
【0003】
また、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物を2液型として貯蔵し、使用時に2液を混合して硬化させることは慣用技術であり、特許文献3には、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物においても2液型とすることが提案されており、特許文献1には、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、白金族金属系触媒、およびテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物で表面処理された炭酸カルシウム粉末からなる組成物と、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンからなる組成物の2液型とすること、また、特許文献2には、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと実質的にジオルガノポリシロキサンで表面処理された炭酸カルシウム粉末からなるシリコーンゴムベースと、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、白金族金属系触媒、更に必要により接着性付与剤を別途混練した混練物からなる2液型とすることが提案されている。
【0004】
しかし、表面処理された炭酸カルシウム粉末を含むシリコーンゴム組成物を、通常のヒドロシリル化反応により硬化するシリコーンゴム組成物と同様に単に2液型とした場合、2液の粘度を合わせようと硬化剤を含む組成物中に表面処理された炭酸カルシウム粉末を配合すると、貯蔵中に著しいチクソ性が発現したり、著しい粘度上昇が起こり、スタティックミキサー等の静止型混合器を使用して体積比1:1で均一に混合することが難くなったり、また、貯蔵後に2液を混合して得られるシリコーンゴムが、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を示さなくなるという問題があった。また、上記提案のような炭酸カルシウム粉末を含む組成物と硬化剤を含む組成物の2液型とした場合でも、2液の粘度が著しく異なるためにスタティックミキサー等の静止型混合器を使用して体積比1:1で均一に混合することが難しく、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性が得られないという問題があった。
【特許文献1】特開平10−60281号公報
【特許文献2】特開2002−38016号公報
【特許文献3】特開2002−285130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化する2液型シリコーンゴム組成物において、2液を長期に保管しても、硬化剤を含む組成物の粘度変化が小さく、これらをスタティックミキサー等の静止型混合器により体積比1:1で均一に混合することができ、かつ、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を得ることができる2液型シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の2液型シリコーンゴム組成物は、組成物(I)と組成物(II)とからなり、これらを混合することにより、
(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
100重量部、
(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量}、
(C)炭酸カルシウム粉末 1〜200重量部、
(D)石英、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸マグネシウム、およびカーボンブラックからなる群より選ばれる一種または2種以上の無機粉末 1〜200重量部、および
(E)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)
から少なくともなるシリコーンゴム組成物を形成し、前記組成物(I)が前記(A)成分、前記(C)成分、および前記(E)成分を含み、前記(B)成分を含まず、前記組成物(II)が前記(A)成分、前記(B)成分、および前記(D)成分を含み、前記(C)成分および前記(E)成分を含まないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2液型シリコーンゴム組成物は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応による硬化する2液型シリコーンゴム組成物において、2液を長期に保管しても、硬化剤を含む組成物の粘度変化が小さく、これらをスタティックミキサー等の静止型混合器により体積比1:1で均一に混合することができ、かつ、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を得ることができるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の2液型シリコーンゴム組成物を詳細に説明する。
本発明の2液型シリコーンゴム組成物は、組成物(I)と組成物(II)とからなり、これらを混合することにより、
(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
100重量部、
(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量}、
(C)炭酸カルシウム粉末 1〜200重量部、
(D)石英、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸マグネシウム、およびカーボンブラックからなる群より選ばれる一種または2種以上の無機粉末 1〜200重量部、および
(E)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)
から少なくともなるシリコーンゴム組成物を形成する。
【0009】
(A)成分は上記シリコーンゴム組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンである。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。(A)成分の分子構造は実質的に直鎖状であるが、本発明の目的を損なわない範囲で分子鎖の一部が多少分岐していてもよい。(A)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100〜1,000,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100〜500,000mPa・sの範囲内である。
【0010】
このような(A)成分のジオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、これらのジオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したジオルガノポリシロキサン、これらのジオルガノポリシロキサンのビニル基の一部または全部をアリル基、プロペニル基等のアルケニル基で置換したジオルガノポリシロキサン、およびこれらのジオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。
【0011】
(B)成分のオルガノポリシロキサンは上記シリコーンゴム組成物の硬化剤であり、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有することを特徴とする。(B)成分の分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状、または三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。(B)成分中のケイ素原子に結合している有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基である。このような(B)成分の25℃における粘度は限定されないが、1〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0012】
このような(B)成分のオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物が例示される。
【0013】
上記シリコーンゴム組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル数の比が0.01〜20の範囲内となる量であり、好ましくは、0.1〜10の範囲内となる量であり、特に好ましくは、0.1〜5の範囲内となる量である。これは、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が上記範囲の下限未満であるシリコーンゴム組成物は十分に硬化しなくなる傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えるシリコーンゴム組成物は、得られるシリコーンゴムの物理的特性が低下する傾向があるからである。
【0014】
(C)成分は上記シリコーンゴム組成物のシリコーンゴムに対する接着性を向上させるための炭酸カルシウム粉末である。(C)成分のBET比表面積は特に限定されないが、好ましくは、5〜50m2/gの範囲内であり、特に好ましくは、10〜50m2/gの範囲内である。このような(C)成分の炭酸カルシウム粉末としては、乾式粉砕(または重質)炭酸カルシウム粉末、沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末、これらの炭酸カルシウム粉末を脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した粉末が例示され、好ましくは、沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末であり、特に好ましくは、脂肪酸や樹脂酸等の有機酸で表面処理した沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末である。
【0015】
上記シリコーンゴム組成物において(C)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して1〜200重量部の範囲内であり、好ましくは、5〜200重量部の範囲内であり、特に好ましくは、10〜100重量部の範囲内である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンゴム組成物のシリコーンゴムに対する接着性が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、均一なシリコーンゴム組成物を調製することが困難となるからである。
【0016】
(D)成分は、石英、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸マグネシウム、およびカーボンブラックからなる群より選ばれる一種または2種以上の無機粉末である。(D)成分の形状は特に限定されず、例えば、球状、平板状、不定形状が挙げられる。また、(D)成分の粒径も限定されず、好ましくは、その平均粒径が0.1〜50μmの範囲内である。
【0017】
上記シリコーンゴム組成物において(D)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して1〜200重量部の範囲内であり、好ましくは、5〜200重量部の範囲内であり、特に好ましくは、10〜100重量部の範囲内である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンゴム組成物のシリコーンゴムに対する接着性が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、均一なシリコーンゴム組成物を調製することが困難となるからである。
【0018】
(E)成分は上記シリコーンゴム組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。(E)成分のヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、イリジウム系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。このような(E)成分として、具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末等の白金系触媒;式:[Rh(O2CCH3)2]2、Rh(O2CCH3)3、Rh2(C8152)4、Rh(C572)3、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX3[(R)2S]3、(R23P)2Rh(CO)X、(R23P)2Rh(CO)H、Rh224、HaRhb(En)cCld、またはRh[O(CO)R]3-n(OH)nで表されるロジウム系触媒(式中、Xは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、Yはメチル基、エチル基等のアルキル基、CO、C814、または0.5C812であり、Rはアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、R2はアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、またはアリールオキシ基であり、Enはオレフィンであり、aは0または1であり、bは1または2であり、cは1〜4の整数であり、dは2、3、または4であり、nは0または1である。);式:Ir(OOCCH3)3、Ir(C572)3、[Ir(Z)(En)2]2、または[Ir(Z)(Dien)]2で表されるイリジウム系触媒(式中、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはアルコキシ基であり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである。)が例示される。
【0019】
上記シリコーンゴム組成物において(E)成分の含有量は上記シリコーンゴム組成物の硬化を促進するに十分な量であれば特に限定されないが、好ましくは、(A)成分100万重量部に対して(E)成分中の金属原子が0.01〜1,000重量部の範囲内となる量であり、特に好ましくは、0.1〜500重量部の範囲内となる量である。
【0020】
本発明の2液型シリコーンゴム組成物は、前記(A)成分、前記(C)成分、および前記(E)成分を含み、前記(B)成分を含まない組成物(I)と、前記(A)成分、前記(B)成分、および前記(D)成分を含み、前記(C)成分および前記(E)成分を含まない組成物(II)とからなる。組成物(I)は、前記(D)成分を含んでも、含まなくてもよいが、好ましくは、前記(D)成分を含まない。
【0021】
また、組成物(I)および/または組成物(II)は、得られるシリコーンゴムの物理的特性を向上させるため、さらに(F)非晶質シリカ粉末を含有してもよい。この(F)成分の非晶質シリカ粉末としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、これらの非晶質シリカ粉末をオルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理した非晶質シリカ粉末が挙げられる。特に、得られるシリコーンゴムの物理的特性を十分に向上させるためには、(F)成分として、BET比表面積が50m2/g以上である非晶質シリカ粉末を用いることが好ましい。上記シリコーンゴム組成物において(F)成分の含有量は特に限定されないが、得られるシリコーンゴムの物理的特性を向上させるためには、(A)成分100重量部に対して0.1〜100重量部の範囲内であることが好ましく、さらには、0.1〜50重量部の範囲内であることが好ましい。
【0022】
なお、この(F)成分は、前記(A)成分と予め混合したベースコンパウンドとして組成物(I)および/または組成物(II)に配合することが好ましい。この際、オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物を添加して、(F)成分の表面を(A)成分中でin−situ処理してもよい。
【0023】
また、組成物(I)および/または組成物(II)には、その他任意の成分として、例えば、ウォラストナイト;タルク;アルミナイト;硫酸カルシウム;炭酸マグネシウム;カオリン等のクレー;水酸化アルミニウム;水酸化マグネシウム;グラファイト;バライト;マラカイト等の炭酸銅;ザラカイト等の炭酸ニッケル;ウィザライト等の炭酸バリウム;ストロンチアナイト等の炭酸ストロンチウム;フォーステライト、シリマナイト、ムライト、パイロフィライト、カオリナイト、バーミキュライト等のケイ酸塩;ケイ藻土;銀、ニッケル等の金属粉末等の非補強性の充填剤;これらの充填剤の表面を前記の有機ケイ素化合物で処理したものを含んでいてもよい。
【0024】
また、組成物(I)および/または組成物(II)には、シリコーンゴムの接着性を向上させるための接着付与剤として、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン等のアルキルアルケニルジアルコキシシラン;メチルビニルジオキシムシラン、エチルビニルジオキシムシラン等のアルキルアルケニルジオキシムシラン;メチルビニルジアセトキシシラン、エチルビニルジアセトキシシラン等のアルキルアルケニルジアセトキシシラン;メチルビニルジヒドロキシシラン、エチルビニルジヒドロキシシラン等のアルケニルアルキルジヒドロキシシラン;メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のオルガノトリアルコキシシラン;トリアリルイソシアヌレート、ジアリル(3−トリメトキシシリル)イソシアヌレート、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリプロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート化合物;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等のジルコニウム化合物を含んでいてもよい。これらの接着付与剤の含有量は限定されないが、上記のシリコーンゴム組成物中の(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
【0025】
さらに、組成物(II)には、上記シリコーンゴム組成物の硬化速度を調節し、取扱扱作業性を向上させるために、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等の1分子中にビニル基を5重量%以上有するオルガノシロキサン化合物;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類等の硬化抑制剤を含んでいることが好ましい。これらの硬化抑制剤の含有量は限定されないが、上記シリコーンゴム組成物中の(A)成分100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0026】
上記組成物(I)および組成物(II)は粘度の差は小さく、互いに流動性が良好であるので、これらをスタティックミキサー等の静止型混合器により体積比1:1で均一に混合することができる。なお、上記組成物(I)および組成物(II)の混合装置は、スタティックミキサー等の静止型混合器に限定されるものではなく、プラネタリーミキサー、パドルミキサー等の公知の混合機であってもよい。また、本発明の2液型シリコーンゴム組成物の硬化条件は特に限定されず、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化条件と同じでよく、例えば、常温でも十分硬化するが、必要に応じて加熱してもよい。
【実施例】
【0027】
本発明の2液型シリコーンゴム組成物を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の粘度は25℃における値であり、シリコーンゴムの特性は次にようにして測定した値である。
【0028】
[シリコーンゴムの物理的特性]
2液型シリコーンゴム組成物の2液を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、これを25℃で1日間静置して硬化させることによりシリコーンゴムを作製した。このシリコーンゴムの硬さをJIS K 6253に規定のタイプAデュロメータにより測定した。また、このシリコーンゴム組成物を25℃で1日間静置することによりJIS K 6251に規定のダンベル状7号形に準じた形状で試験片つかみ部を広くしたダンベル状試験片を作製した。このダンベル状試験片の引張強さ、および伸びをJIS K 6251に規定の方法により測定した。
【0029】
[シリコーンゴムに対する接着力]
2液型シリコーンゴム組成物の2液を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、このシリコーンゴムに対する接着力をJIS K6854に規定の方法に準じて、次のようにして測定した。
すなわち、2液型シリコーンゴム組成物の2液を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、これを幅50mmで、30g/m2のシリコーンゴムによって被覆されたナイロン基布上に塗布し、前記組成物の厚さが0.7mmとなるように前記シリコーンゴム被覆ナイロンテープを貼り合わせ、25℃で1日間放置することにより前記組成物を硬化させて試験片を作製した。次に、シリコーンゴム被覆ナイロンテープを200mm/分の引張速度でT形剥離試験することにより、シリコーンゴムに対する接着力を測定した。
【0030】
[実施例1]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100重量部、およびBET比表面積200m2/gのヒュームドシリカ粉末(日本アエロジル株式会社製のRDX200)41重量部を均一に混合した後、減圧下、170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
【0031】
次に、このベースコンパウンド37重量部(ヒュームドシリカ粉末の含有量として10重量部)に、表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(神島化学工業株式会社製のCalseeds−TR)70重量部、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン49.2重量部、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトン)チタンとメチルトリメトキシシランの重量比1:1の混合物1重量部、および白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(上記ベースコンパウンド中のジメチルポリシロキサン100万重量部に対して本触媒中の白金金属が30重量部となる量)からなる組成物(I)を調製した。
【0032】
また、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン18.6重量部、粘度12,500mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100.7重量部(上記ベースコンパウンドに含まれているジメチルポリシロキサン中のビニル基に対する、本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.64となる量)、粘度170mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(一分子中に平均7個のケイ素原子結合水素原子を有する。)1.68重量部(上記ベースコンパウンドに含まれているジメチルポリシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子水素原子のモル比が0.16となる量)、BET比表面積200m2/gのヒュームドシリカ粉末(日本アエロジル株式会社製のRDX200)10重量部、石英粉末(株式会社龍森製のCRYSTALITE VX−S2)70重量部からなる組成物(II)を作製した。該組成物(II)の粘度を測定し、表1に示した。
【0033】
前記組成物(I)と前記組成物(II)を体積比が1:1(重量比も1:1)となるようにスタティックミキサーにより混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(II)をそれぞれ50℃で2週間加熱エージングした。加熱エージング後の組成物(II)の粘度を測定した。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(II)を体積比が1:1(重量比も1:1)となるようにスタティックミキサーにより混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0034】
[比較例1]
実施例1において、組成物(II)中の石英粉末の替わりに、表面が脂肪酸で処理されたBET比表面積18m2/gの沈降炭酸カルシウム粉末(神島化学工業株式会社製のCalseeds−TR)を用いた以外は実施例1と同様にして組成物(III)を調製した。該組成物(III)の粘度を測定し、表1に示した。実施例1で調製した組成物(I)と前記組成物(III)を体積比が1:1(重量比も1:1)となるようにスタティックミキサーにより混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(III)をそれぞれ50℃で2週間加熱エージングした。加熱エージング後の組成物(III)の粘度を測定した。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(III)を体積比が1:1(重量比も1:1)となるようにスタティックミキサーにより混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0035】
[比較例2]
実施例1において、組成物(II)中の石英粉末の替わりに、表面が未処理の重質炭酸カルシウム粉末(東洋ファインケミカル株式会社製のWhiton P−30)を用いた以外は実施例1と同様にして組成物(IV)を調製した。実施例1で調製した組成物(I)と前記組成物(IV)を体積比が1:1(重量比も1:1)となるようにスタティックミキサーにより混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。また、前記組成物(I)と前記組成物(IV)をそれぞれ50℃で1週間加熱エージングした。次に、加熱エージング後の組成物(I)と組成物(IV)を体積比が1:1(重量比も1:1)となるようにスタティックミキサーにより混合してシリコーンゴム組成物を調製した。このシリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの物理特性および接着力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の2液型シリコーンゴム組成物は、炭酸カルシウム粉末を含み、ヒドロシリル化反応により硬化する2液型シリコーンゴム組成物において、2液を長期に保管しても、硬化剤を含む組成物の粘度変化が小さく、これらをスタティックミキサー等の静止型混合器により体積比1:1で均一に混合することができ、かつ、当初設計の通りのシリコーンゴムの物理的特性やシリコーンゴムに対する接着性を得ることができるので、例えば、シリコーンゴムが含浸および/または被覆された基布の被覆面同士を重ね合わせ、周縁部相互を接着あるいは縫製して袋状に形成されるエアバッグにおいて、その基布同士を重ね合わせ、接着または縫製する箇所の接着剤または目止め剤として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物(I)と組成物(II)とからなり、これらを混合することにより、
(A)一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
100重量部、
(B)一分子中に少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量}、
(C)炭酸カルシウム粉末 1〜200重量部、
(D)石英、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸マグネシウム、およびカーボンブラックからなる群より選ばれる一種または2種以上の無機粉末 1〜200重量部、および
(E)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)
から少なくともなるシリコーンゴム組成物を形成し、前記組成物(I)が前記(A)成分、前記(C)成分、および前記(E)成分を含み、前記(B)成分を含まず、前記組成物(II)が前記(A)成分、前記(B)成分、および前記(D)成分を含み、前記(C)成分および前記(E)成分を含まないことを特徴とする2液型シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(C)成分が沈降(または軽質)炭酸カルシウム粉末であることを特徴とする、請求項1記載の2液型シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(C)成分が脂肪酸または樹脂酸で表面処理された炭酸カルシウム粉末であることを特徴とする、請求項1記載の2液型シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
さらに、組成物(I)および/または組成物(II)が(F)非晶質シリカ粉末{(A)成分100重量部に対して0.1〜100重量部}を含むことを特徴とする、請求項1記載の2液型シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(F)成分が、(A)成分中に予め加熱混合されていることを特徴とする、請求項4記載の2液型シリコーンゴム組成物。


【公開番号】特開2006−117823(P2006−117823A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308039(P2004−308039)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】