説明

2液型塗料組成物及び塗装方法

【課題】低公害で且つ、速乾性であって、金属素材に塗装した場合に、金属素材との付着性に優れ、さらに次工程の塗料との付着性に優れた塗膜を形成することができる2液型塗料組成物を提供する。
【解決手段】ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、非クロメート系防錆顔料及び体質顔料を含む主剤と、シランカップリング剤を含む添加剤とからなる2液型塗料組成物及び上記防錆顔料がトリポリリン酸アルミニウムを亜鉛化合物で処理したものである2液型塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロメート系顔料を含まない2液型塗料組成物に関するものであって、金属素材への付着性や防錆性及び本発明の塗料組成物による塗膜上に各種上塗り塗料を塗り重ねたときの耐水性に優れる2液型塗料組成物及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種金属の表面に塗装して、一定の防錆力を付与し、次工程の塗料との密着性に優れた塗料として、ウォッシュプライマー又はエッチングプライマーと称するJIS K5633で規定された塗料がある。これは、ポリビニルブチラール樹脂を主なビヒクルとし、ジンククロメート系の防錆顔料及び付着性付与を目的としたリン酸を含む塗料である。ウォッシュプライマーは、速乾性で、金属への付着力や次工程の塗料との付着力に優れるため、広く使用されている。
【0003】
しかしながら、ウォッシュプライマーに含まれるジンククロメート系の防錆顔料は、亜鉛とクロムを主成分とするものであり、毒性が強い6価のクロムが溶出する可能性がある。そこで、クロメート系の防錆顔料を使用することなく、クロムフリーであって、上記ウォッシュプライマーと同等以上の塗膜性能を有する塗料の開発が求められている。
【0004】
特許文献1には、低公害でかつ、塗装ないし接着加工に適用した場合でも優れた耐水接着強度の発現に寄与しうるプライマー組成物として、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、亜リン酸塩化合物30〜300重量部、オルトリン酸アルミニウム20〜250重量部およびシランカップリング剤5〜80重量部を含有する主剤と、リン酸5〜50重量部を含有する添加剤とからなるプライマー組成物が開示されている。しかしながら特許文献1に開示のプライマー組成物による塗膜は、パテを上塗り塗装した場合に、十分な付着性が得られない問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−302272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、クロメート系防錆顔料を含有することがなく、金属素材への付着性や防錆性及び本発明の塗料組成物による塗膜上に各種上塗り塗料を塗り重ねたときの耐水性に優れる2液型塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
1.ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、非クロメート系防錆顔料及び体質顔料を含む主剤と、シランカップリング剤を含む添加剤とからなる2液型塗料組成物。
2.上記非クロメート系防錆顔料が、リン酸、亜リン酸、縮合リン酸のいずれか1種とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛のいずれか1種との化合物を含む顔料である1項に記載の2液型塗料組成物、
3.上記非クロメート系防錆顔料がトリポリリン酸アルミニウムを亜鉛化合物で処理した顔料である1項に記載の2液型塗料組成物、
4.上記シランカップリング剤がアミノ基を含有するものである1〜3項のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物、
5.上記エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂であって、そのエポキシ当量が450〜500の範囲内である1〜4項のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物、
6.ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して、防錆顔料及び体質顔料の固形分合計量が15〜250質量部の範囲内である1〜5項のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物、
7.基材に1〜6項のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物を塗装して得られた塗膜上にプライマーサーフェサーを塗装して得られた塗膜上にさらに上塗り塗料を塗装する塗装方法、
8.基材に1〜6項のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に補修用パテを塗装し、得られた塗膜上にプライマーサーフェサーを塗装して得られた塗膜上にさらに上塗り塗料を塗装する塗装方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の2液型塗料組成物は、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、非クロメート系防錆顔料及び体質顔料を含む主剤と、シランカップリング剤を含む添加剤とからなるものであり、クロメートによる環境汚染がなく、速乾性であって、金属素材に塗装した場合に、金属素材との付着性に優れ、さらに次工程の塗料との付着性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の2液型塗料組成物は、主剤にポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、非クロメート系防錆顔料及び体質顔料を含む。ポリビニルブチラール樹脂とは、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸触媒の存在下で反応させて水酸基の一部をブチラール化した樹脂である。
【0010】
上記ポリビニルブチラール樹脂としては、特に制限なく従来公知のものが使用可能であり、特に乾燥性や金属素材への付着性の点から、ブチラール化度が58〜77mol%、
好ましくは58〜71mol%の範囲で、重量平均分子量は3万〜30万、好ましくは3万〜20万の範囲且つ水酸基量が好ましくは21〜40の範囲内、より好ましくは22〜37の範囲内のものであることが好ましい。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー株式会社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー株式会社社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0011】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、種々のものを使用することが出来る。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ノニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多価エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0012】
本発明においては特に、エポキシ当量が450〜500の範囲内のビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが、前記ポリビニルブチラール樹脂との相溶性や塗装作業性の点から好ましい。さらに、低公害型という点では、PRTR制度に該当しない常温で粉体状のビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが望ましい。本明細書において、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(G/eq)を意味する。
【0013】
本発明の塗料組成物においては、ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂との比率は、相溶性や塗装作業性、さらに乾燥性の点から、固形分質量部として、前者/後者の比率として、95/5〜45/55の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは70/30〜50/50の範囲内である。
【0014】
本発明における非クロメート系防錆顔料としては、例えばリン酸亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、リン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウム、酸化亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウムなどそれ自体公知のものを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。本発明において防錆顔料は、表面処理を施したものや金属酸化物や金属塩で変性したものを使用してもよい。
【0015】
本発明の2液型塗料組成物においては、上記防錆顔料の中でもリン酸、亜リン酸、縮合リン酸のいずれか1種とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛のいずれか1種との化合物を含む顔料を使用することが、金属素材への付着性の点から好ましく、特に表面を亜鉛化合物で処理したトリポリリン酸二水素アルミニウムを使用することが金属素材への付着性の点から好ましい。
【0016】
本発明において上記防錆顔料の配合量は、ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して、防錆顔料の固形分が5〜30質量部の範囲内であることが、金属素材への付着性の点から好ましく、より好ましくは、10〜25質量部の範囲内である。
【0017】
本発明の体質顔料としては、通常、平均粒径が0.01〜30μmであるものが好ましく、0.5〜10μmのものがさらに好ましい。平均粒径が30μmより大きい場合、薄膜塗装時に外観不良になる恐れがあり、0.1μmより小さい場合は表面の活性が高く凝集して分散が困難になる恐れがある。そしてその最大粒径は200μm以下が好ましく、50μm以下のものがさらに好ましい。
【0018】
上記体質顔料は、ビヒクル形成成分との親和性を高めることを目的として、表面処理を行なったものを使用しても良い。表面処理としては、脂肪酸とその塩,樹脂酸,その他のカルボン酸とその塩及び界面活性剤などによる単独又は併用処理や、チタネート系やシラン系のカップリング剤による処理、無機酸,アルカリ、シリカ、アルミナ、亜鉛化合物等による表面処理を挙げることができる。
【0019】
本発明の体質顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、含水珪酸マグネシウム(タルク)、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム(石膏)、珪藻土、マイカ(雲母粉)、クレー(カオリン)、シリカ等を使用することができる。
【0020】
本発明においては、塗料の貯蔵性及び塗装して得られた塗膜の耐水性の点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、含水珪酸マグネシウム(タルク)の中から1種以上を選択して使用することが好ましく、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0021】
上記体質顔料の含有量は、特に限定されないが、塗料の貯蔵性や塗膜の平滑性の点から、ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して5〜170質量部の範囲内であることが好ましく、40〜130質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、上記防錆顔料と体質顔料の合計量は、金属素材への付着性、塗料の貯蔵性や塗膜の平滑性の点から、ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して15〜250質量部の範囲内であることが好ましく、80〜200質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明において、防錆顔料と体質顔料との配合比は、貯蔵性、塗装作業性や塗装して得られた塗膜の耐水性の点から、前者/後者の比率として、10/90〜90/10の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは70/30〜30/70の範囲内である。
【0024】
本発明において主剤にさらに着色顔料を含んでいてもよい。該着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、カーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等を挙げることができる。本発明においては、例えば、着色力が高い酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等を好ましく使用することができる。
【0025】
本発明において着色顔料を使用する場合、その配合量は、着色力の点から上記ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して、0.5〜100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量部の範囲内である。
【0026】
本発明において、着色顔料を使用する場合、前述の防錆顔料及び体質顔料との合計量は、金属素材への付着性、塗料の貯蔵性や塗膜の平滑性の点から、ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して15〜250質量部の範囲内とすることが好ましく、80〜200質量部の範囲内とすることがさらに好ましい。
【0027】
本発明においては、上記体質顔料の配合量は、貯蔵性、塗装作業性や塗装して得られた塗膜の耐水性の点から、全顔料の配合量に対して、50〜70質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは55〜65質量%の範囲内である。
【0028】
本発明において主剤にさらに必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒や、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤などを適宜配合することができる。
【0029】
本発明において上記主剤は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。また、分散混合の効率や貯蔵安定性の点から、固形分含有率を12〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、さらに好ましくは15〜30質量%の範囲内である。
【0030】
次に、本発明の2液型塗料組成物における添加剤について説明する。本発明における添加剤は、シランカップリング剤を含有する。本発明においては、シランカップリング剤としては、次工程の塗料による塗膜との付着性の点からアミノ基含有シランカップリング剤を使用することが好ましい。具体例としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどが挙げられる。
【0031】
上記シランカップリング剤の配合量は、次工程の塗料による塗膜との付着性や仕上がり性の点から上記ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して、0.5〜100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量部の範囲内、特に好ましくは1.5〜8質量部の範囲内である。
【0032】
本発明において添加剤にさらに必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒を適宜配合することができる。
【0033】
本発明においては、主剤及び添加剤の固形分は、主剤と添加剤を所定の比率で混合せしめたときに、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、防錆顔料、体質顔料及びシランカップリング剤の質量が前述した量となる範囲内において、有機溶剤等の溶媒を適宜配合して調整することができる。
【0034】
本発明の塗装方法は、基材に前記2液型塗料組成物を塗装し、得られた塗膜上にプライマーサーフェサーを塗装して得られた塗膜上にさらに上塗り塗料を塗装する。
【0035】
上記基材は、各種金属や、該素材に各種塗料が塗装された塗膜面及び損傷した塗膜面を意味する。本発明の塗装方法は、自動車外板部に塗装された電着層を含む下塗り塗膜、さらに中塗り塗膜、クリヤー層を含む上塗り塗膜などからなる複層塗膜が損傷し、金属面が露出した基材に適用することができる。
【0036】
本発明においては、上記基材にケレン処理を行ない、さらに溶剤脱脂や水洗等を行った後に上記2液型塗料組成物を塗装することができる。塗装方法としては従来公知の塗装方法を用いることができるが、塗膜の仕上がり性の点からスプレー塗装を行なうことが好ましい。塗装後の乾燥は、常温で放置しても良いが、加熱乾燥、強制乾燥によって、常温例えば20〜100℃の温度条件で、5〜60分間させることが、作業時間を短縮する上で好ましい。膜厚は、基材の状態に応じて適宜調整できるが、一般には乾燥膜厚として、5〜50μm、特に10〜30μmの範囲内に調整することが、複層塗膜の防食性や耐水性の点から好ましい。
【0037】
本発明の塗装方法においては、前記2液型塗料組成物による塗膜上に、プライマーサーフェサーを塗装する。
【0038】
プライマーサーフェサーとは、プラサフと呼称されることもある補修用下塗り塗料であって、基材の表面粗度調整、色の隠蔽及び後述する上塗り塗料と基材との付着力を高めるために塗装されるものであり、特に制限されるものではなく、本発明方法においては、従来公知の溶剤系、水系等のプライマーサーフェサーを用いることができるものである。
【0039】
プライマーサーフェサーの塗装方法としては従来公知の塗装方法を用いることができるが、塗膜の仕上がり性の点からスプレー塗装を行なうことが好ましい。塗装後の乾燥は、常温で放置しても良いが、加熱乾燥、強制乾燥によって、常温例えば20〜100℃の温度条件で、5〜60分間させることが、作業時間を短縮する点から好ましい。膜厚は、基材の状態に応じて適宜調整できるが、一般には乾燥膜厚として、5〜50μm、特に10〜30μmの範囲内に調整することが、基材の表面粗度を調整可能であって且つ塗膜の付着性を確保する点から好ましい。塗膜の乾燥は、前記2液型塗料組成物による塗膜と同様に行なうことができる。乾燥後には、塗膜の仕上がり性の点から、研磨によって表面を平滑にした後に後述する上塗り塗料を塗装することができる。研磨する方法としては、サンドペーパーを使用した手作業による方法や、ディスクサンダー等の電動工具を使用する方法をあげることができる。研磨した場合には、水洗や溶剤脱脂によって、研磨時のゴミやブツを除去してから、後述する上塗り塗料を塗装することができる。また、プライマーサーフェサーを塗装後に、表面平滑性に問題がない場合には、特に処理を行なうことなく後述する上塗り塗料を塗装してもよい。
【0040】
本発明の塗装方法においては、前記2液型塗料組成物による塗膜上に、上記プライマーサーフェサーを塗装する前に、補修用パテを塗装し、補修用パテによる塗膜上に前記プライマーサーフェサーを塗装することができる。補修用パテとは、基材が損傷した自動車外板等のように凹凸を有している場合において、平滑にするために塗装されるものであって、鈑金パテや樹脂パテとして市販されているものであれば特に制限されるものではないが、具体的には、硝化綿系、アクリル樹脂系、エポキシアクリレ−ト樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系の補修用パテを挙げることができる。補修用パテの塗装方法は、特に制限されるものではないが、作業性や仕上がり性の点から各種のコテやヘラを使用して塗装することができる。補修用パテを塗装後には、仕上がり性の点から研磨することができる。研磨する方法としては、サンドペーパーを使用した手作業による方法や、ディスクサンダー等の電動工具を使用する方法をあげることができる。研磨作業は、通常補修用パテが硬化乾燥後に行なうことができる。補修用パテによる塗膜の乾燥は、前記2液型塗料組成物による塗膜と同様に行なうことができる。乾燥後には、水洗や溶剤脱脂によって、研磨時のゴミやブツを除去してから、前記プライマーサーフェサーを塗装することができる。
【0041】
本発明の塗装方法は、プライマーサーフェサーを塗装して得られた塗膜上にさらに上塗り塗料を塗装する。上塗り塗料による塗装には、メタリック顔料及び/又は着色顔料を配合してなるベース塗料のみを使用する1コート仕上げ、あるいは該ベース塗料とクリヤー塗料とを使用する2コート仕上げなど従来公知の塗装があり、求める色や質感によって適宜決定することができる。本発明の塗装方法においては、上塗り塗料としては、アクリルラッカ−、ウレタン硬化型塗料、フッ素樹脂系塗料などの通常自動車補修用に使用されている有機溶剤系、水系等の上塗り塗料が特に制限なく使用できる。
の点から好ましい。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
(1)混合溶剤の調製
プロビレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを質量比1:1:1となるように混合し、混合溶剤を調製した。
(2)分散ペースト1〜10の調製
225ml容マヨネーズビンに、エスレックB BM−1(商品名、ポリビニルブチラール樹脂、ブチラール化度65±3mol%、重量分子量40000、水酸基量34mol%、固形分100%、積水化学社製)12部、混合溶剤84部、、TITANIX JR−605(商品名、二酸化チタン、テイカ社製)8部、タルクMS(商品名、含水珪酸マグネシウム、日本タルク社製)24部、K−WHITE108(トリポリリン酸二水素アルミニウムと酸化亜鉛の混合物、テイカ社製)8部を投入し、攪拌混合後、さらに1.5mm径のガラスビーズ130質量部を投入して密栓し、DASH2000−K Disperser(商品名、LAU社製、振とう型ペイントコンディショナー)を使用して60分間分散した。分散後100メッシュの金網濾過を行なってガラスビーズを除去して、分散ペースト1を得た。さらに表1に示す配合にて、分散ペースト1と同様にして分散ペースト2〜10を得た。得られた分散ペーストについて、顔料粗粒子の粒径が10μm以下であることをJIS K5400に定められたツブゲージA法で確認した。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例及び比較例)
(1)主剤の調製
ステンレス製ビーカー内に、分散ペースト1を345部、エスレックB BM−1を30部、jER1001(商品名、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、固形分100%、エポキシ当量475、ジャパンエポキシレジン社製)40部、混合溶剤90部を投入し、回転攪拌機を使用して、混合し、実施例1に使用する固形分40%の主剤を得た。さらに、表2に示した配合にて、実施例2〜14及び比較例に使用する主剤を得た。
(2)貯蔵性試験
(1)で得られた主剤を金属容器に入れて密栓し、40℃温度の恒温室で2ヶ月保存した後に開栓し、容器内における状態を下記の基準で評価した。評価結果は表2に示した。
4:変化なし
3:わずかに沈降(手攪拌で均一になる)
2:著しい沈降(電気式回転攪拌機を使用して均一になる)
1:固化(攪拌しても均一にならない)
【0045】
【表2】

【0046】
(3)試験板の作成
亜鉛めっき鋼板(新日本製鐵社製;商品名シルバーアロイ、板厚0.5mm、幅75mm×長さ150mm)及びアルミニウム合金板(アルミニウム合金JIS A 6063S―T5、板厚0.5mm、幅75mm×長さ150mmの押出形材)及び冷延鋼板(SPCC−SB)のそれぞれに以下に示す手順にて塗装して、試験板を作成した。
1)素地調整
素材表面を#120の耐水サンドペーパーで水研し、常温乾燥後にKARシリコンオフ(商品名、脱脂剤、関西ペイント社製)を使用して脱脂洗浄して基材とした。
2)塗装
主剤及び添加剤を表2に示す比率(質量比)にて混合し、希釈剤(アセトン/n−ブチルアルコール/酢酸nブチル=9/5/3:質量比)を主剤100質量部に対して50質量部添加し、攪拌混合した混合物をエアスプレーにて塗装し、室温にて5分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉を使用して、60℃で10分間加熱し、乾燥膜厚12μmの塗膜を得た。その後SUウレタンプラサフA(商品名、プライマーサーフェサー、関西ペイント社製)を乾燥膜厚として50μmとなるようにエアスプレーにて塗装した。室温にて10分間放置した後で、熱風循環式乾燥炉を使用して60℃で30分間加熱した。乾燥した塗膜表面を#600の耐水サンドペーパーで水研し、常温乾燥後にKARシリコンオフを使用して脱脂洗浄した。次いでレタンPGハイブリッドエコ#202サンメタリックベース(商品名、1液型自動車補修用上塗塗料、関西ペイント社製)を乾燥膜厚として15μmになるようにエアスプレーにて塗装した。塗装後室温にて5分間放置した未硬化の塗膜上に、レタンPGエコHX(Q)クリヤー(商品名、自動車補修用トップクリヤー塗料、関西ペイント社製)を乾燥膜厚として40μmとなるようにエアスプレーにて塗装した。室温にて10分間放置後に熱風循環式乾燥炉を使用して60℃で20分間加熱して、試験板を得た。
3)仕上がり性の評価
上記1)で作成した基材に、主剤及び添加剤を表2に示す比率(質量比)にて混合し、希釈剤(アセトン/n−ブチルアルコール/酢酸nブチル=9/5/3:質量比)を主剤100質量部に対して50質量部添加し、攪拌混合した混合物をエアスプレーにて塗装し、室温にて5分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉を使用して、60℃で10分間加熱し、乾燥膜厚12μmの塗膜を得た後に、目視にて仕上がり性を評価した。
4:表面が平滑且つ均一である。
3:表面が均一であるが粗度が大きくざらついている。
2:表面が不均一且つざらついている。
1:連続した塗膜に仕上がらない。
4)耐水性
上記2)にて作成した試験板(亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合金板)を、40℃の温水に7日間浸漬した後、室内にて1時間放置後に付着性試験を行なって評価した。付着性試験にはJIS K5600に準拠した碁盤目試験を用いた。具体的には、塗膜上に縦横に2mmの間隔で碁盤目状に素材に達する100個の切れ目を入れ、密着力(120gf/10mm)の接着テープを貼りつける。そしてこの接着テープを剥ぎ取り、剥離して接着テープに付着した塗膜片の数量を調べて下記の基準にて評価した。評価結果は表2に示した。
4:剥離なし
3:剥離数10%未満
2:剥離数10%以上70%未満
1:剥離数70%以上
5)防食性
上記にて作成した試験板(冷延鋼板)を、JIS K 5600に従い、塩水噴霧試験を行った。240時間の試験後、一般部の状態及びカット部のからのさびの侵入(最大値)を下記の基準にて評価した。評価結果は表2に示した。
4:カット部からのさびが発生していない
3:カット部からのさびの浸入が1mm未満
2:カット部からのさびの侵入が1mm以上10mm未満
1:カット部からのさびの侵入が10mm以上且つ一般部にもさびが発生
4)補修用パテ塗装時の塗膜性能
冷延鋼板(SPCC−SB)を#120の耐水サンドペーパーで水研し、常温乾燥後にKARシリコンオフ(商品名、脱脂剤、関西ペイント社製)を使用して脱脂洗浄した基材に、主剤及び添加剤を表1に示す比率(質量比)にて混合し、希釈剤(アセトン/n−ブチルアルコール/酢酸nブチル=9/5/3:質量比)を主剤100質量部に対して50質量部添加し、攪拌混合した混合物をエアスプレーにて塗装し、室温にて5分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉を使用して、60℃で10分間加熱し、乾燥膜厚12μmの塗膜を得た。その後にLUCポリパテ(商品名、ポリエステル系補修用パテ、関西ペイント社製)を硬化塗膜として200μmとなるように、ヘラを使用して塗装し、室温にて30分間放置した後に塗膜表面を#400の耐水サンドペーパーでから研ぎし、脱脂洗浄後にさらに、SUウレタンプラサフA(商品名、プライマーサーフェサー、関西ペイント社製)を乾燥膜厚として50μmとなるようにエアスプレーにて塗装した。室温にて10分間放置した後で、熱風循環式乾燥炉を使用して60℃で30分間加熱した。乾燥した塗膜表面を#600の耐水サンドペーパーで水研し、常温乾燥後にKARシリコンオフを使用して脱脂洗浄した。次いでレタンPGハイブリッドエコ#202サンメタリックベース(商品名、1液型自動車補修用上塗塗料、関西ペイント社製)を乾燥膜厚として15μmになるようにエアスプレーにて塗装した。塗装後室温にて10分間放置した未硬化の塗膜上に、レタンPGエコHX(Q)クリヤー(商品名、自動車補修用トップクリヤー塗料、関西ペイント社製)を乾燥膜厚として40μmとなるようにエアスプレーにて塗装した。室温にて10分間放置後に熱風循環式乾燥炉を使用して60℃で20分間加熱して、試験板を得た。得られた試験板の初期及び40℃×10日間没水後の付着性試験を行なった。試験方法はJIS K5600に規定された耐屈曲性(円筒型マンドレン法)に準拠して行なった(折り曲げ試験装置タイプ1、直径6mm)。折り曲げ部の塗膜状態を観察して評価し、結果を表2に示した。
4:異常なし
3:基材から僅かに剥離
2:基材から大きく剥離
1:ほとんど欠落
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の塗料組成物及び塗装方法は、自動車、鉄道車両などの補修塗装に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、非クロメート系防錆顔料及び体質顔料を含む主剤と、シランカップリング剤を含む添加剤とからなる2液型塗料組成物。
【請求項2】
上記非クロメート系防錆顔料が、リン酸、亜リン酸、縮合リン酸のいずれか1種とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛のいずれか1種との化合物を含む顔料である請求項1に記載の2液型塗料組成物。
【請求項3】
上記非クロメート系防錆顔料がトリポリリン酸アルミニウムを亜鉛化合物で処理した顔料である請求項1に記載の2液型塗料組成物。
【請求項4】
上記シランカップリング剤がアミノ基を含有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物。
【請求項5】
上記エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂であって、そのエポキシ当量が450〜500の範囲内である請求項1〜4のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物。
【請求項6】
ポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の固形分合計100質量部に対して、防錆顔料及び体質顔料の固形分合計量が15〜250質量部の範囲内である請求項1〜5のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物。
【請求項7】
基材に請求項1〜6のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物を塗装して得られた塗膜上にプライマーサーフェサーを塗装して得られた塗膜上にさらに上塗り塗料を塗装する塗装方法。
【請求項8】
基材に請求項1〜6のいずれか1項に記載の2液型塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に補修用パテを塗装し、得られた塗膜上にプライマーサーフェサーを塗装して得られた塗膜上にさらに上塗り塗料を塗装する塗装方法。

【公開番号】特開2010−168524(P2010−168524A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60808(P2009−60808)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】