説明

2眼式IPカメラ

【課題】一台のカメラで異なる方向を同時に撮影可能な新規なIPカメラを提供すること
【解決手段】この2眼式IPカメラは、異なる方向を撮影可能な2個のカメラ部分と、前記2個のカメラ部分の各々の映像信号を合成する信号処理手段とを備え、前記2個のカメラ部分は、同期を取って撮影し、前記信号処理手段は、同期を取って映像信号を合成処理する。前記2個のカメラ部分は、各々、カメラ本体部分に対して観音開きで展開可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2眼式IPカメラに関し、更に具体的には、1台のカメラで2眼式機能を備えて異なる方向を同時に撮影可能なIPカメラ(インターネットカメラともいう。)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のIPカメラは、一方向のみ撮影可能な1眼式であり、撮影方向を変えるにはカメラ自体を旋回させていた。このような旋回可能なIPカメラでは、異なる方向を同時に撮影することは出来なかった。
【0003】
本発明者の調査した範囲では、通常のIPカメラに関する特許文献又は非特許文献は存在するものの、以下に説明する2眼式IPカメラを開示する特許文献又は非特許文献は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、一台のカメラで異なる方向を同時に撮影可能な新規なIPカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的に鑑みて、本発明に係る2眼式IPカメラは、異なる方向を撮影可能な2個のカメラ部分と、前記2個のカメラ部分の各々の映像信号を合成する信号処理手段とを備え、前記2個のカメラ部分は、同期を取って撮影し、前記信号処理手段は、同期を取って映像信号を合成処理する。
【0006】
上記2眼式IPカメラでは、前記2個のカメラ部分は、各々、カメラ本体部分に対して観音開きで展開可能としてもよい。
【0007】
上記2眼式IPカメラでは、前記信号処理手段は、前記2個のカメラ部分からの映像データを合成してメモリに記録するための信号処理とイーサネットコントローラへ送るための信号処理とを実行してもよい。
【0008】
本発明に係るコンピュータシステムは、上記2眼式IPカメラと、前記2眼式IPカメラにインターネット回線を介して接続可能な端末装置とを備え、前記端末装置から前記2眼式IPカメラを操作可能であり、該2眼式IPカメラからの映像が該端末装置のモニタに表示される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一台のカメラで異なる方向を同時に撮影可能な新規なIPカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る2眼式IPカメラの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同じ要素に対しては、同じ符号を付して、重複した説明を省略する。
【0011】
ここで、本発明に係る2眼式IPカメラは、1台のカメラが2眼式になっており、同期を取って、異なる方向を撮影、2つの映像を合成処理、更に映像再生できる点に特徴を有するため、これらの点に関しては詳しく説明する。一方、利用者が端末装置(PC)からインターネット回線を介して、この合成映像データをオンラインで監視又は後日閲覧できる点は通常のIPカメラの技術の利用であり、この点に関しては簡単に説明する。
【0012】
[2眼式IPカメラ]
(2眼式IPカメラの外形形態)
図1は、2眼式IPカメラ10の外形形態を示す斜視図であり、例えば天井に取り付けた状況を示している。なお、2眼式IPカメラ10の設置は、任意の状態で可能である。2眼式IPカメラ10は、カメラA部分20と、カメラB部分30と、本体部分2とからなる。カメラA部分20はレンズ5を有し、カメラB部分30はレンズ6を有している。カメラA部分20は本体部分2と枢軸3により開閉自在に接続され、カメラB部分30は本体部分と枢軸4により開閉自在に接続され、両カメラ部分は観音開き(即ち、左右のカメラ部が中央から両側に開く)構造になっている。更に、図示していないが、2眼式IPカメラ10は、ソーラーバッテリを備え、外部からの給電無しで作動することができる。
【0013】
図2は、2眼式IPカメラ10の側面図であり、各カメラの撮影方向が180度展開可能な様子を説明する図である。ここでは、カメラA部分20は、図1の閉じた状態から約45度展開し、カメラA部分30は、図1の閉じた状態から約90度展開した状態を示している。このように、カメラA部分20及びカメラB部分30は、別個独立に撮影方向を設定できる。なお、カメラ本体部分2の裏面側には、カメラ三脚用のネジ穴が設けられ、ユニバーサル三脚(図示せず。)を利用すれば、2眼式IPカメラ10を任意の角度に設定できる。
【0014】
(2眼式IPカメラの回路ブロック)
図3は、2眼式IPカメラ10の回路ブロックを示す図である。2眼式IPカメラ10の回路は、カメラAモジュール20と、カメラBモジュール30と、これらのモジュールからの映像信号を処理する信号処理装置DSP(例えば、FPGA)40と、処理された映像信号を記録するメモリ(例えば、SDRAM)76と、処理された映像信号をイーサネット上に送信するイーサネットコントローラ80とを備えている。
【0015】
更に、2眼式IPカメラ10は、FPGA40その他を制御するCPU70と、その作業用及びプログラム記録用のメモリRAM、ROM78を備えている。
【0016】
更に、2眼式IPカメラ10は、FPGA40その他に給電のための給電コントローラ60を備え、この給電コントローラ60に対して、太陽エネルギを利用したソーラーバッテリ64と、雨天の場合などソーラーバッテリが有効に機能しない場合のバックアップ電源(例えば、リチウムイオンバッテリ)66とが接続され、ソーラーバッテリ64が有効に機能しているとき、これを表示するLED62が取り付けられている。更に、適当なDC電源(図示せず。)から給電できるようにしてもよい。
【0017】
更に、2眼式IPカメラ10は、映像データをカメラ側で記録するためのCFカード型メモリ74やHDD(例えば、4Gバイトの容量)72を備えていてもよい。更に、映像データに撮影時間(年、月、日、曜日、時間)を表示するためタイマ68を備えていてもよい。
【0018】
FPGA40は、映像信号を記録用メモリ(例えば、SDRAM)に記録するための画像データ生成の処理、並びにイーサーネットへ送出し或いはイーサーネットを介して受け取るカメラ操作命令の処理を行う。
【0019】
このため、FPGA40は、カメラAモジュール20からの映像信号を処理するカメラAコントローラ44と、カメラBモジュール30からの映像信号を処理するカメラBコントローラ46と、両カメラ20,30及び両コントローラ44,46に対して同期を取って撮影し且つ映像信号を処理させるためのタイミング・ジェネレータ42と、映像データを画像圧縮するJPEGと、両コントローラ44,46からの映像データを合成して一時的に記録するFIFOメモリ52と、FIFOメモリ52に記録された映像データをSDRAM76へ記録するためのSDRAMコントローラ56と、イーサネット・パラメータを記録するイーサネット・パラメータ用レジスタ48とを有している。映像データの合成では、図7に示すように全てのフレームに対してカメラAの映像データとカメラBの映像データとを並置した状態にする処理である。或いは、所望により、連続するフレームを一定の間隔(例えば、数秒おき)でカメラA及びBの画像で交代に生成するようにしてもよい。
【0020】
図4は、図3のカメラAモジュール20及びカメラBモジュール30を詳細を説明する図である。カメラAモジュール20及びカメラBモジュール30は並列に構成され、タイミングジェネレータ42から送られた同一のタイミングで同期して動作している。カメラA(20)で説明すると、被写体21をCCDに結像させるための光学系レンズ22及び絞り機構23と、撮像デバイスであるCCD/CMOSイメージセンサ24と、CCD/CMOSイメージセンサから得られたビデオ信号に含まれるリセットノイズ(低周波)を除去するための相関二重サンプリング回路及びビデオ信号を増幅して一定のレベルの大きさにコントロールするための自動利得制御回路(CDS/AGC)25と、このアナログ・ビデオ信号をデジタル・ビデオ信号に変換するA/D変換回路26とを有し、デジタル化された映像データはFPGA40に送られる。カメラB(30)に関しても、カメラA(20)と同様である。
【0021】
再び図3を参照すると、カメラAコントローラ44及びカメラBコントローラ46は、各々、A−D変換手段26,36でデジタル信号に変換された映像データを、カラー信号補正処理手段でRGBの補間処理を行い、カラー補正手段で色再現性を良くするためのRGB信号のマトリクス演算によるカラー補正をしてホワイト・バランスをとっている。
【0022】
更に、カメラAコントローラ44及びカメラBコントローラ46は、各々、SDRAM76に記録するための信号処理とイーサネットコントローラ80へ送るための信号処理とを行い、映像データをFIFOメモリ52に送って記録する。これらの各手段は、CPU70の制御の下に実行される。両コントローラ44,46は、並列に構成され、タイミングジェネレータ42から送られた同一のタイミングで同期して動作している。
【0023】
図5は、図3の回路ブロックのイーサネットコントローラ80の詳細を説明する図である。イーサネットコントローラ80は、ARM(CPU)82と、SDメモリ84と、TC IPコントローラとを有し、OSはLinaxを使用したマイコンを形成している。この出力はコネクタ(例えば、RJ45)を介して公衆回線に接続される。
【0024】
図6は、インターネットを介して利用者により操作される2眼式IPカメラ10を簡単に説明する図である。2眼式IPカメラ10からの映像データは、公衆回線90及びインターネット回線92を介してWeb.上のサーバ94に蓄積される。利用者は、適当なブラウザを利用したPC96から、公衆回線90及びインターネット回線92を介してWebサーバ94に接続し、カメラA及びB20,33が撮影したシーンを、オンライン(ライブ画像)で又は後で見ることができる。更に、利用者は、PC96から公衆回線90及びインターネット回線92を介して2眼式IPカメラ10に対して、カメラパラメータの設定・変更等の指令を送ることができる。
【0025】
図7は、利用者が観るPCモニタ上に表示されるカメラA及びBの映像を示す図である。図2で示したようにカメラA,Bは同時に異なる方向を同期を取って撮影することができ、これらの映像信号は同じタイミングで処理され、PC96のモニタ97に左右に同時に表示し観ることができる。画面上部には、タイマ68からの撮影時間情報が表示される。
【0026】
(2眼式IPカメラの動作)
図8は、2眼式IPカメラの動作を説明する図である。図の左半分にはカメラ側の動作を示し、右半分にはPC側の動作を示し、相互に対応する動作に対しては破線矢印を付している。
【0027】
カメラ側の動作に関して説明する。
【0028】
ステップ100で、カメラを起動する。2眼式IPカメラ10の各種の回路モジュールが起動される。
【0029】
ステップ102で、カメラA及びBの撮影方向が設定される。この設定は、ステップ100の前に行ってもよい。
【0030】
ステップ104で、PC側からのカメラパラメータの指令(ステップ154)に応じて、カメラのパラメータを設定する。
【0031】
ステップ106で、PC側から両画像の選択が指令された場合(ステップ156)、カメラA及びBの両方の画像を選択する。なお、カメラA又はBの片方が選択された場合はステップS108に進み、CFカードやHDDへの記録が選択された場合はS110に進む。これらに関しては後述する。
【0032】
ステップ112で、カメラA及びBの両方の画像データにアクセスする。
【0033】
ステップ118で、カメラA及びBの両方の画像データを合成する。この合成の意味はは、図7に示したように、一画面にカメラA及びBの両方の画像を並置して表示するためである。或いは、一定の間隔(例えば、数秒おき)にカメラA及びBの画像を交代に表示するようにしてもよい。
【0034】
ステップ120で、合成された画像データを、送信のためにエンコーダにて符号化する。
【0035】
ステップ122で、符号化された画像データを、パケット送信のためにパケット化する。
【0036】
ステップ124で、パケット化された画像データを送信する。
【0037】
ステップ126で、終了か否か判断され、是なら終了し、否ならステップS104に戻る。
【0038】
PC側からカメラA又はBの片方が選択された場合(ステップS156)はステップS108に進み、指令に沿って画像を選択し、ステップ114で、選択された画像にアクセスし、ステップS120に進む。
【0039】
PC側からCFカードやHDDへの記録が選択された場合(ステップ156)はS110に進み、指令に沿ってCFカード等を選択し、ステップ116でCFカード等に記録し、その後ステップS126に進む。
【0040】
PC側の動作に関して説明する。
【0041】
ステップS150で、PC96を起動する。
【0042】
ステップS152で、インターネット上のWeb.に接続する。
【0043】
ステップS154で、カメラの各種パラメータを指令する。カメラ・パラメータとしては、例えば、カメラサイズ、映像取り込み時間、映像取り込み間隔等である。
【0044】
ステップS156で、カメラA及びBの両方の画像を見るのか、カメラA又はBの任意の片方の画像かを見るのか、カメラA及びBを一定間隔で交代する映像を見るのか或いはCFカードメモリに記録するのか、画像選択を指令する。
【0045】
ステップS158で、カメラ側から(ステップS124で)送信された画像データを受信する。
【0046】
ステップS160で、終了か否か判断され、是なら終了し、否ならステップS154に戻る。
【0047】
[本実施形態の利点・効果]
本実施形態によれば、以下の利点・効果が有る。
【0048】
(1)1台のカメラにより、同期を取って、異なる2撮影方向を撮影し、この合成映像をオンライン(ライブ画像)で見たり、後で再生できる。
【0049】
例えば、自動車の室内又は運転手の操作状況と、自動車前方の状況とを同時に撮影できれば、運転手の技量の判断、事故発生時の原因究明に役立つ。或いは、店舗に於いて、一方のカメラを会計のレジに向け、他方のカメラを店内に向けることで、セキュリティの面で役立つ。或いは、長い廊下等では、長さ方向中間点に設置することで、長さ方向の端に設置した場合に比較して、一層鮮明な画像を得ることができる。
【0050】
(2)ソーラーバッテリを備えることで、カメラに対する給電設備が不要となる。
[変形例その他]
以上、2眼式IPカメラの実施形態に関して説明したが、これらは例示であって、これに限定されない。本発明は、上記実施形態に対して当業者が日常的になしえる追加・削除・変更・改良等を含むものである。
【0051】
本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、2眼式IPカメラの外形形態を示す斜視図であり、例えば天井に取り付けた状況を示している。
【図2】図2は、2眼式IPカメラの側面図であり、各カメラの撮影方向が180度展開可能な様子を説明する図である。
【図3】図3は、2眼式IPカメラの回路ブロックを示す図である。
【図4】図4は、図3のカメラAモジュール及びカメラBモジュールを詳細を説明する図である。
【図5】図5は、図3の回路ブロックのイーサネットコントローラの詳細を説明する図である。
【図6】図6は、インターネットを介して利用者により操作される2眼式IPカメラを説明する図である。
【図7】図7は、利用者が観るPCモニタ上に表示されるカメラA及びBの映像を示す図である。
【図8】図8は、2眼式IPカメラの動作を説明する図である。図の左半分にはカメラ側の動作を示し、右半分にはPC側の動作を示し、相互に対応する動作に対しては破線矢印を付している。
【符号の説明】
【0053】
2:本体部分、 3,4:枢軸、 5,6:レンズ、 9:三脚用ねじ穴、 10:2眼式IPカメラ、 20:カメラA部分,カメラAモジュール、 21,31:被写体、 22,32:光学系レンズ、 23,33:絞り機構、24,34:CCD/CMOSイメージセンサ、 25,35:CDS/AGC、 26,36:A/D変換回路、 30:カメラB部分,カメラBモジュール、 40:信号処理装置,DSP,FPGA、 44:カメラAコントローラ、 46:カメラBコントローラ、 52:FIFOメモリ、 60:給電コントローラ、 62:LED、 64:ソーラーバッテリ、 66:バックアップ電源,リチウムイオンバッテリ、 68:タイマ、 72:HDD、 74:CFカード型メモリ、 76:メモリ,SDRAM、 70:CPU、 78:メモリ,ROM,RAM、 80:イーサネットコントローラ、 90:公衆回線、 92:インターネット回線、 96:PC,端末装置、 97:モニタ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる方向を撮影可能な2個のカメラ部分と、
前記2個のカメラ部分の各々の映像信号を合成する信号処理手段とを備え、
前記2個のカメラ部分は、同期を取って撮影し、
前記信号処理手段は、同期を取って映像信号を合成処理する、2眼式IPカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の2眼式IPカメラにおいて、
前記2個のカメラ部分は、各々、カメラ本体部分に対して観音開きで展開可能である、2眼式IPカメラ。
【請求項3】
請求項1に記載の2眼式IPカメラにおいて、
前記信号処理手段は、前記2個のカメラ部分からの映像データを合成してメモリに記録するための信号処理とイーサネットコントローラへ送るための信号処理とを実行する、2眼式IPカメラ。
【請求項4】
請求項1の2眼式IPカメラと、
前記2眼式IPカメラにインターネット回線を介して接続可能な端末装置とを備え、
前記端末装置から前記2眼式IPカメラを操作可能であり、該2眼式IPカメラからの映像が該端末装置のモニタに表示される、コンピュータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−243273(P2007−243273A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59053(P2006−59053)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(304017867)株式会社アートレイ (6)
【Fターム(参考)】