説明

2種の活性鎖を有する多標的干渉RNAならびにそれらの設計および使用方法

異なる遺伝子の情況で1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子に存在する複数の結合配列に対する特異性をもつ干渉RNA分子が今や設計かつ製造され、そして、該標的配列の発現を調節するのに使用される。該多標的干渉RNA分子は、1種若しくはそれ以上の予め選択されたRNA分子上の複数の標的部位を標的とする2鎖を有する。こうした多標的干渉RNAのアプローチは、遺伝子調節のための強力なツールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、各々、2005年11月21日に出願された米国仮特許出願番号60/738,441及び2005年11月21日に出願された同60/738,640の利益を請求し、その全ては参照することによりここに包含される。
【0002】
本発明は遺伝子発現の調節において有用な方法および試薬に関する。とりわけ、本発明は、それらのそれぞれが1種若しくはそれ以上の予め選択されたRNA分子上の1個若しくはそれ以上の部位を標的とする2本の鎖を有する1種の多標的干渉RNA分子を使用して遺伝子発現を調節することに関する。
【背景技術】
【0003】
一および二本鎖RNAが、多数の機構により標的RNA分子の発現を調節若しくはそのプロセシングを改変し得ることが今や既知である。数種のこうした機構は調節(すなわち干渉)RNAと標的RNAの間に必要とされる配列相補性の量の変動を許容する。ある種のミクロRNAは、該ミクロRNAと約6ヌクレオチドの相補性を有する標的mRNAを翻訳的に抑制し得る。例えば疾患関連遺伝子の発現を抑制するために二本鎖RNAを使用するRNA干渉剤の開発は現在、熱心な研究活動の一領域である。
【0004】
長さ19〜23塩基の二本鎖RNAは、該RNAのエフェクター鎖(若しくは「ガイド鎖」)が負荷されているRNA干渉サイレンシング複合体(RISC)により認識される。このガイド鎖は、トランスクリプトームに存在する高度に相補性の配列の認識および破壊のための鋳型として作用する。あるいは、より低い相補性のRNA配列の認識および結合により、干渉RNAはmRNA分解を伴わずに翻訳抑制を誘導しうる。こうした翻訳抑制が、内因性ミクロRNA(分化および発生に関与する短い非コードRNAの一群)の作用機序であると思われる。
【0005】
干渉RNAを治療的に応用のための開発での試みはこれまで、それぞれ特定の一標的転写物に対する完全な相補性をもつ特異的二本鎖RNAを製造することに集中していた。こうした二本鎖RNA(dsRNA)は、単一の適する標的を同定し得る場合に潜在的に有効であり得る。しかしながら、dsRNA、とりわけ1標的に対し設計されたものは、回避若しくは最小化されることが必要である、少なくとも2つの範疇の、標的を外れた副作用を有しうる。望ましくない副作用は、自然免疫反応経路(例えば、Toll様受容体3、7および8、ならびにいわゆるインターフェロン応答)、ならびに(RNA分解、翻訳抑制若しくは他の機構のいずれかによる)関係する若しくは無関係の転写物からのタンパク質発現の偶然の阻害により生じ得る。偶然の副作用は、二重鎖のパッセンジャー鎖が負荷されかつ推定のガイド鎖により標的とされるものと異なるRNA種の抑制を生成する場合に、得られることができる。負荷バイアスは十分に理解されており、そして、大部分の設計方法は、意図されるガイド鎖のみがそれから負荷されることができるRNAi二重鎖の配列を選択するのみである。従って、数種の生物情報学および/若しくは実験的アプローチが、オフターゲット効果を最小化することを試みるために開発された。in silicoハイブリダイゼーションのためのアルゴリズムが既知であり、そして、有効性を維持しつつ副作用を排除若しくは最小化するための試みにおいて標的接近可能性および負荷バイアスを予測するための他者が開発された。
【0006】
ウイルスおよびウイルス以外の起源のヒト疾患を潜在的に処置するための数種の二本鎖RNA分子が開発の多様な段階にある。該疾患は、加齢性黄斑変性、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびRSウイルス(RSV)感染症を包含する。これらのRNA分子は、しかしながらRNA配列中の単一部位を標的とするのみである。RNA干渉は、特定の遺伝子産物のノックダウンを得ることにおいて有用かつ強力でありうるとは言え、多くの疾患は存在論的に無関係の遺伝子産物間の複雑な相互作用を伴う。従って、単一遺伝子ターゲ
ッティングのアプローチの使用は、単一の若しくは優勢な病態生理学的経路を同定かつ中断し得る場合を除き成功しないかも知れない。
【0007】
事実、多くの推定の標的が大多数の疾患について同定され得る。単一の標的を1つずつ阻害することが治療上価値があることを確認するための試みは期待はずれであった。事実、治療的有効性を得ることは、おそらく大部分のシグナル伝達経路の複数のレベルの冗長性のため、極めて困難であることが判明しつつある。例えば、癌、2型糖尿病およびアテローム硬化症のような多くの障害は複数の生化学的異常を特徴とする。加えて、数種の推定の標的は高められた突然変異率にさらされることがあり、それによりいかなるこうした標的に対する干渉RNAの効果を無効にする。
【0008】
例えば、ウイルス感染症に対する治療的アプローチは、農業ならびに動物およびヒトの健康における大きな課題であることを継続している。ウイルスの複製の性質は、それらを治療上非常に可塑性すなわち「動く標的」(構造、感染性および宿主プロファイルを変えることが可能)にする。重症急性呼吸器症候群(「SARS」)およびトリインフルエンザウイルス(「鳥インフル」)のようなウイルスの最近の出現はこれらの課題を例示する。後天的免疫不全症候群すなわちAIDSに関与するもの(例えばヒト免疫不全ウイルス、HIV−1およびHIV−2)のような十分に記述されたウイルスでさえ、進行中のウイルス突然変異および進化のため、処置およびワクチン接種での試みを寄せ付けないことを継続する。
【0009】
さらに、干渉RNAのような核酸治療薬は、部分的に、現代の迅速な遺伝子シークェンシング技術が、いかなるコードされる機能も評価され得る前でさえウイルスゲノム配列が決定されることを可能にするためにウイルス治療の候補であるとは言え、ウイルス、とりわけRNAウイルスの誤りがちな複製は、感染した集団で実質的なゲノム多様性が迅速に生じ得ることを意味している。これまで、核酸治療薬の開発のための戦略は、ウイルスゲノムの高度に保存された領域のターゲッティングに主として中心を置いていた。これらの構築物が、ウイルス感染の処置若しくは耐性ウイルスクローンの出現の予防で効率的であるかどうかは不明である。
【0010】
疾患の数種の重要な「駆動体」の制御のための1種の干渉RNAの設計および使用を伴う治療的アプローチが、従って望ましい。従って、複数のRNAを調節若しくは1種のRNA内の複数の部位を標的とし得る干渉RNAに対する必要性が存在する。こうした治療的多標的干渉RNAの設計および作成方法もまた必要とされる。新たなウイルス性病原体の単離および同定に際して迅速に開発され得かつ新たな耐性アイソタイプの出現を遅らせる若しくは予防さえするのに役立つように使用し得る抗ウイルス性干渉RNAもまた必要とされる。最後に、合成二重鎖の2本の鎖のそれぞれが複数の標的RNAの少なくとも1種を独立に標的とするこうしたRNAを有することが有用であるとみられる。
【発明の開示】
【0011】
[発明の要約]
異なる遺伝子の情況で1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子に存在する複数の結合配列に対する特異性をもつ干渉RNA分子が今や設計かつ製造され、そして標的配列の発現を調節するのに使用される。
【0012】
第一の態様において、本発明は、式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;式中、Sは第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一の
ヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;また、さらに、式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるかまたはあるヌクレオチド配列よりなり;式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;そして、式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYと少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNA分子に関する。
【0013】
本好ましい態様の1バージョンにおいて、X、X’、Y若しくはY’は独立に1個若しくはそれ以上のヌクレオチドよりなり、また、本態様の別の局面において、Xは、第一の結合配列の第二の部分に少なくとも部分的に相補的である第三のヌクレオチド配列よりなり、ここで第二の部分は第一の結合配列の前記第一の部分の3’端に隣接しかつそれに結合され、および、ここでX’は第三のヌクレオチド配列に実質的に相補的である第四のヌクレオチド配列よりなる。好ましくは、本局面において、XおよびX’は相互に完全に相補的である。Xが第一の結合配列の第二の部分に完全に相補的であることもまた好ましい。
【0014】
本第一の態様の別の局面において、Y’は、第二の結合配列の第二の部分に少なくとも部分的に相補的である第五のヌクレオチド配列よりなり、そして該第二の部分は第二の結合配列の前記第一の部分の3’端に隣接しかつそれに結合される。本局面において、Yは第五のヌクレオチド配列に実質的に相補的である第六のヌクレオチド配列よりなる。好ましくは、YおよびY’は相互に完全に相補的である。Y’が第二の結合配列の第二の部分に完全に相補的であることもまた好ましい。
【0015】
本第一の好ましい態様のなお他の局面において、SおよびS’は相互に完全に相補的である。XSが第一の結合配列の第一の部分および第二の部分に完全に相補的であることもまた好ましい。Y’S’が第二の結合配列の第一の部分および第二の部分に完全に相補的であることもまた企図している。さらに、XSYおよびY’S’X’は相互に完全に相補的であり得る。場合によっては、本発明の局面において、Sは約8ないし約15ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、かつ、XSYおよびY’S’X’は好ましくは約15ないし約29ヌクレオチドの長さを包含する。また好ましくは、XSYおよびY’S’X’のそれぞれは約19ないし約23ヌクレオチドの長さのものである。本態様のいくつかの局面において、多標的干渉RNA分子は1個若しくはそれ以上の末端オーバーハングを含んでなり、かつ、好ましくは、これらのオーバーハングは1ないし5ヌクレオチドよりなる。本態様の他の好ましい局面において、多標的干渉RNA分子は、最低1種の修飾リボヌクレオチド、普遍的塩基、非環式ヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド若しくは非リボヌクレオチドを含んでなり、かつ、より好ましくは、多標的干渉RNA分子は、最低1個の2’−O−メチルリボシル置換若しくはロック核酸リボヌクレオチドを含んでなる。
【0016】
本第一の態様のなおさらなる一局面において、多標的干渉RNA分子の第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で1種の予め選択された標的RNA分子に存在するか、若しくは、あるいは、第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低2種の予め選択された標的RNA分子に存在する。好ましくは、予め選択された標的RNA分子の最低1種は非コードRNA分子である。また好ましくは、予め選択された標的RNA分子の最低1種はメッセンジャーRNA(mRNA)である。さらなる好ましい一態様において、結合配列の最低1種はmRNA分子の3’非翻訳領域(3’UTR)に存在する。好ましくは、予め選択された標的RNA分子は生物学的系の疾患若しくは障害に関与し、また、該疾患若しくは障害は好ましくは動物若しくは植物のものである。好ましい動物は、限定されるものでないが、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ブタ、サルおよびヒトを挙げることができる。さらに、予め選択された標的RNA分子は、受容体、サイトカイン、転写因子、調節タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞骨格タンパク質、トランスポーター、酵素、ホルモンおよび抗原よりなる群から選択される分類の1タンパク質をコードする。好ましいタンパク質は、ICAM−1、VEGF−A、MCP−1、IL−8、VEGF−B、IGF−1、Gluc6p、Inppl1、bFGF、PIGF、VEGF−C、VEGF−D、β−カテニン、κ−ras−B、κ−ras−A、EGFRおよびTNFαよりなる群から選択されるものを包含し、そして、好ましくは、多標的干渉RNA分子は、発現系でのICAM−1、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、IL−8、bFGF、PIGF、MCP−1およびIGF−1のいずれかの組合せの発現を低下させる。また好ましくは、多標的干渉RNA分子は、発現系でのβ−カテニン、κ−rasおよびEGFRのいずれかの組合せの発現を低下させるか、若しくは発現系でのGluc6pおよびInppl1双方の発現を低下させる。あるいは,多標的干渉RNAはウイルスRNAを標的とする。好ましいウイルス標的は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、および重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを包含する。一例として、多標的干渉RNA分子は、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびTNFαをコードするRNA分子を標的とする。
【0017】
本態様のなおさらなる局面において、予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上は、好ましくは、第一の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子を含んでなる。あるいは、予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上は、第一の生物学的系に対し感染性である第二の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子を含んでなる。別の局面において、予め選択された標的RNA分子は、第一の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子、および第一の生物学的系に対し感染性である第二の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子を含んでなる。好ましくは、予め選択された標的RNA分子は、動物若しくは植物から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子、および該動物若しくは植物に対し感染性である微生物若しくはウイルスから選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子を含んでなる。予め選択される標的RNA分子は、好ましくは、ヒトタンパク質TNFα、LEDGF(p75)、BAF、CCR5、CXCR4、フリン、NFkB、STAT1をコードするRNA分子を含んでなる。
【0018】
本発明の多標的干渉RNA分子の例として、Sは、好ましくは、GUGACAGUCACU(配列番号2)、CUGGGCGAGGCAG(配列番号21)、GUGGAUGUGGAG(配列番号22)、AGAATCGCAAAACCAGC(配列番号34)、AGAATCGCAAAACCA(配列番号36)、CAGGGGAGU(配列番号46)、AGGGCUCCAGGCG(配列番号63)およびGCUGGCCGAGGAG(配列番号64)よりなる群から選択されるヌクレオチド配列より本質的になる。さらなる例において、S’は、AGTGACTGTCAC(配列番号1)、CUGCCUCGCCCAG(配列番号19)、CUCCACAUCCAC(配列番号20)、GCTGGTTTTGCGATTCT(配列番号33)、TGGTTTTGCGATTCT(配列番号35)、ACTCCCCTG(配列番号41)、CGCCTGGAGCCCT(配列番号61)およびCTCCTCGGCCAGC(配列番号62)よりなる群から選択されるヌクレオチド配列より本質的になる。
【0019】
なお他の態様において、多標的干渉RNA分子は、
【0020】
【化1】

【0021】
より本質的になる。
【0022】
本発明の別の態様において、本発明は、式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;式中、Sは第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、式中、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;ならびに、さらに、式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなり;式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;ならびに、式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYと少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNA分子を含んでなる生物学的系に関する。本発明において、好ましい生物学的系はウイルス、微生物、細胞、植物若しくは動物を包含する。
【0023】
本発明はさらに、本発明の多標的干渉RNA分子をコードするヌクレオチド配列を含ん
でなるベクターに関する。好ましいベクターはウイルスベクターを包含し、また、好ましいベクターは、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスおよびアルファウイルスよりなる群から選択されるものである。これらのベクターを含んでなる細胞もまた本発明で企図している。多標的干渉RNA分子が低分子ヘアピン型RNA分子である場合、これらの低分子ヘアピン型RNA分子をコードすることが可能なベクター、および本発明のそれらのベクター若しくは低分子ヘアピン型RNA分子を含有する細胞もまた企図している。
【0024】
本発明はさらに、許容できる担体と一緒に本発明の多標的干渉RNA分子を含んでなる製薬学的組成物に関する。他の製薬学的組成物は、許容できる担体と一緒に本発明のベクターを包含する。
【0025】
本発明のなお別の態様において、本発明は、ウイルス、微生物、細胞、植物若しくは動物のような生物学的系におけるRNA干渉の誘導方法に関する。これらの方法は、本発明の多標的干渉RNA分子をそれらの生物学的系に導入する段階を包含する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、a)1種若しくはそれ以上の標的RNA分子を選択する段階(該標的RNA分子の発現の調節が望ましく);b)該標的RNA分子のそれぞれの最低1種のヌクレオチド配列を得る段階;c)シード配列の長さn(ヌクレオチド)(n=約6若しくはそれ以上)を選択する段階;d)段階b)で得られた各ヌクレオチド配列から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、ならびに、該候補シードは段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上中に最低1回は存在し、かつ、その完全な相補物は段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上中に最低1回は存在し);e)候補シードおよびその完全な相補物の各存在について、所望の量の5’および3’隣接配列を収集することにより、候補シードおよびその完全な相補物のそれぞれの遺伝子の情況を決定する段階;f)候補シードの群から長さnのシードを選択する段階;g)段階b)で得られた配列から決定される、シード、およびシードに対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる第一のコンセンサス標的配列を選択する段階;h)段階b)で得られた配列から決定される、シードの完全な相補物、およびシードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる第二のコンセンサス標的配列を選択する段階;i)段階g)で選択された第一のコンセンサス標的配列、および、第一のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれと結合された、段階h)のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなる第一鎖配列を得る段階;j)段階h)で選択された第二のコンセンサス標的配列、および、第二のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれと結合された、段階g)のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなる第二鎖配列を得る段階、ならびに;k)段階i)の第一鎖配列を有する第一鎖および段階j)で得られた第二鎖配列を有する第二鎖を含んでなる多標的干渉RNA分子を設計する段階を含んでなる、多標的干渉RNA分子の設計方法を包含する。
【0027】
本態様の好ましい一局面において、本発明は、長さnの候補シード配列の集合物を得る段階、i)1)ヌクレオチド配列のそれぞれの末端で開始する段階;2)nのウィンドウサイズを使用してヌクレオチド配列を連続的に観察する段階;および3)1のステップサイズで該ヌクレオチド配列に沿ってステッピングする段階を含んでなる方法を使用して、上の段階b)で得られたヌクレオチド配列のそれぞれから長さnの配列の第一の集合物を生成する段階;ii)そのそれぞれが第一の集合物中の1配列に完全に相補的である配列の第二の集合物を生成する段階;ならびにiii)配列の第一および第二の集合物の検査から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、かつ、各候補シードおよびその完全な相補物は上で提供される方法の段階b)で得られたヌクレオチド配列中に最低1回存在する)をさらに含んでなる。
【0028】
この設計することの態様の別の好ましい局面において、長さnの候補シードの集合物を得る段階は、i)本設計方法の段階(b)で得られた各ヌクレオチド配列について完全に相補的な配列を得る段階;ii)段階b)で得られたヌクレオチド配列のそれぞれからの長さnの配列の第一の集合物、ならびに本方法で得られた完全に相補的な配列のそれぞれからの長さnの配列の第二の集合物を生成する段階を含んでなり、該生成する段階は、1)上の段階b)で得られたヌクレオチド配列のそれぞれ、若しくは本発明の本局面で得られた完全に相補的な配列のそれぞれのヌクレオチド配列の末端で開始すること;2)nのウィンドウサイズを使用してヌクレオチド配列を連続的に観察すること;および3)1のステップサイズで該ヌクレオチド配列に沿ってステッピングすることを含んでなり;また、本局面の生成する段階の後に、該方法は、iii)配列の第一および第二の集合物の検査から長さnの候補シードの集合物を得ること(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、また、候補シードのそれぞれは配列の第一および第二の集合物の双方に存在する)をさらに含んでなる。
【0029】
本態様の別の好ましい局面において、候補シードの一群を選択する段階は、i)5若しくはそれ以上の同一の単一ヌクレオチドの連続する列から構成されるか;ii)アデノシンおよびウラシルのみから構成されるか;iii)目的の非標的トランスクリプトーム中に許容できない高頻度を伴い存在することが予測されるか;iv)1種若しくはそれ以上の細胞成分の発現若しくは活性を望ましくなく調節する傾向を有することが予測されるか;v)i)ないしiv)のいずれかの組合せであるか;またはvi)パリンドロームである、長さnのいかなる配列も廃棄する段階を含んでなる。好ましくは、第一および第二のコンセンサス標的配列を選択する段階のそれぞれは、i)単一塩基のみから構成されるか;ii)アデノシンおよびウラシルのみから構成されるか;iii)シトシンである5個若しくはそれ以上の塩基の連続する列を有するか;iv)目的の非標的トランスクリプトーム中に許容できない高頻度で存在することが予測されるか;v)1種若しくはそれ以上の細胞成分の発現若しくは活性を望ましくなく調節する傾向を有することが予測されるか;またはvi)i)ないしv)のいずれかの組合せである、いかなる配列も廃棄する段階を含んでなる。
【0030】
本発明の設計方法は、i)多標的干渉RNA分子の第一および第二鎖のRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)への取り込みを向上させるか;ii)最低1種の標的RNA分子の発現の調節を増大若しくは減少させるか;iii)該多標的干渉RNA分子が被験体に投与される場合のストレス若しくは炎症応答を低下させるか;iv)発現系での半減期を変えるか;またはv)i)ないしiv)のいずれかの組合せのため、多標的干渉RNA分子を改変する段階をさらに含みうる。
【0031】
本発明の設計方法は、好ましくは、設計された多標的干渉RNA分子を作成する段階、および適する発現系でそれを試験する段階をさらに含んでなる。好ましくは、第一のコンセンサス標的配列を選択する段階は、シードに対するコンセンサス3’隣接配列が、本発明の設計する段階の段階b)で得られた最低1種の配列中のシードに対する3’隣接配列に少なくとも部分的に同一である配列を含んでなる、コンセンサス標的配列を設計することをさらに含んでなる。あるいは、シードに対するコンセンサス3’隣接配列は、本発明の設計方法の段階b)で得られた最低1種の配列中のシードに対する3’隣接配列に同一である配列を含み得る。さらに、第二のコンセンサス標的配列を選択する段階で、一局面において、シードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列は、段階b)で得られた最低1種の配列中のシードの完全な相補物に対する3’隣接配列に少なくとも部分的に同一である配列を含んでなる。他の態様において、シードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列は、段階b)で得られた配列中のシードに対する3’隣接配列に同一である配列を含んでなる。本設計方法に関するなお他の局面において、第一鎖配列を得
る段階において、コンセンサス3’隣接配列の相補物は、該設計方法の段階h)のコンセンサス3’隣接配列の完全な相補物である。若しくは、また好ましくは、第二鎖配列を得る段階において、コンセンサス3’隣接配列の相補物は、段階g)のコンセンサス3’隣接配列の完全な相補物である。さらなる一局面において、多標的干渉RNA分子を設計する段階において、第一鎖および第二鎖は、存在する場合はオーバーハングを除き相互に完全に相補的であるか、若しくは、多標的干渉RNA分子を設計する段階の別の局面において、第一鎖および第二鎖は相互に不完全に相補的である。
【0032】
本発明の別の態様において、本発明は、本発明の多標的干渉RNA分子を含んでなる製薬学的組成物の治療上有効な量を被験体に投与する段階を含んでなる、被験体の処置方法に関する。本発明の好ましい一局面において、該方法は、治療上有効な量の1種若しくはそれ以上の付加的な治療薬を前記被験体に投与することをさらに含んでなる。
【0033】
本発明のなお別の態様において、本発明は、本発明の最低1種の多標的干渉RNA分子を含んでなる製薬学的組成物の予防上有効な量を被験体に投与することを含んでなる、被験体における疾患若しくは状態の発症の阻害方法に関する。他の態様は、本発明の多標的干渉RNA分子および製薬学的に許容できる担体を混合することを含んでなる、製薬学的組成物の作成方法を包含する。
【0034】
本発明の他の局面は、本発明の多標的干渉RNAを使用する疾患若しくは障害の処置方法およびそれらの発症の阻害方法、ならびに本発明の多標的干渉RNAを含んでなる製薬学的組成物の作成方法を包含する。
【0035】
[発明の詳細な記述]
多様な刊行物、論文および特許が背景におよび本明細を通して引用若しくは記述され;これらの参考文献のそれぞれはそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。本明細に包含された文書、行為、物質、装置、物品などの論考は、本発明の情況を提供するという目的上である。こうした論考は、これらの事柄のいずれか若しくは全部が、開示若しくは特許請求されるいずれかの発明に関して従来技術の部分を形成することの承認ではない。
【0036】
別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される全部の技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されると同一の意味を有する。本発明ではある種の用語を頻繁に使用し、それらは後に続くとおり示されるところの意味を有する。これらの用語はまた、本明細で後により詳細に説明もされうる。
【0037】
以下は本明細で時折使用される略語である。
bp=塩基対
cDNA=相補DNA
CODEMIR=コンピュータ設計多標的干渉RNA(COmputationally−DEsigned,Multi−targeting Interfering RNA)
kb=キロベース;1000塩基対
kDa=キロダルトン;1000ダルトン
miRNA=ミクロRNA
ncRNA=非コードRNA
nt=ヌクレオチド
PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PCR=ポリメラーゼ連鎖反応
RISC=RNA干渉サイレンシング複合体
RNAi=RNA干渉
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
siRNA=低分子干渉RNA
shRNA=低分子ヘアピン型RNA
SNP=一塩基多形
UTR=非翻訳領域
VIROMIR=ウイルス標的を優先的に標的とする多標的干渉RNA
【0038】
本明細書および付随する請求の範囲で使用されるところの単数形の形態「ある(「a」、「an」)」および「該(the)」は、別の方法で文脈が明瞭に規定しない限り複数の参照を包含することに注目されなければならない。従って、例えば「ある細胞(a cell)」への言及は1個若しくはそれ以上の細胞への言及であり、そして当業者に既知のその同等物を包含する、など。
【0039】
ポリペプチド若しくは核酸の「活性」、「生物学的活性」若しくは「機能的活性」は、標準的技術に従ってin vivo若しくはin vitroで測定されるところのポリペプチド若しくは核酸分子により発揮される活性を指す。こうした活性は、標的RNA分子に対するiRNAのRNA干渉活性のような直接的活性、若しくはiRNAのRNA干渉活性により媒介される細胞シグナル伝達活性のような間接的活性であり得る。
【0040】
「生物学的系」は、限定されるものでないがヒト、動物、植物、昆虫、微生物、ウイルス若しくは他の供給源を挙げることができる生物学的供給源からの精製若しくは未精製の形態の物質を意味しており、該系は生物学的活性(例えば遺伝子発現の阻害)に必要とされる成分を含んでなる。「生物学的系」という用語は、例えば細胞、ウイルス、微生物、生物体、動物若しくは植物を包含する。
【0041】
「細胞」は、生物体を構成しうる(単細胞生物体の場合)か、または個々の細胞が特定の機能に特化かつ/もしくは分化されうる多細胞生物体のサブユニットでありうる、自律的自己複製単位を意味している。細胞は、大腸菌(E.coli)のような細菌細胞、酵母のような真菌細胞、トリ細胞、ヒト、ウシ、ブタ(porcine)、サル、ヒツジ、類人猿、ブタ(swine)、イヌ、ネコおよびげっ歯類起源の細胞株のような哺乳動物細胞、ならびにショウジョウバエおよびカイコ由来細胞株のような昆虫細胞、若しくは植物細胞を包含する原核生物若しくは真核生物であり得る。細胞は、体細胞若しくは生殖系列起源、分化全能性若しくはハイブリッド、分裂若しくは非分裂のものであり得る。細胞はまた、配偶子若しくは胚、幹細胞、または完全に分化した細胞にも由来し得るか若しくはそれらも含み得る。「細胞」という用語は特定の主題の細胞のみならずしかしまたこうした細胞の子孫若しくは潜在的子孫も指すことがさらに理解される。ある種の改変が突然変異若しくは環境の影響いずれかにより後に続く世代で発生し得るため、こうした子孫は実際は親細胞に同一でないかも知れないが、しかし本明細書で使用されるところの該用語の範囲内になお包含される。
【0042】
ポリヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオチド(これらの用語は本明細書で互換性に使用される)に関して本明細書で使用されるところの「相補的な」若しくは「相補性」という用語は、こうしたポリ若しくはオリゴヌクレオチドの個々の鎖の相互と会合する能力の尺度を指す。RNA中の2種の主要な基礎的相互作用はスタッキングおよび水素結合形成である。双方はオリゴヌクレオチドの会合のための自由エネルギー変化に寄与する。RNA−RNA相互作用は、標準的なワトソン−クリック対形成(AがU若しくはTに対しかつGがCに対する)およびワトソン−クリック以外の対形成(限定されるものでないがフーグスティーン縁(edge)および/若しくは糖縁による相互作用を挙げることができる)を包含する(例えば、Leontisら、2002、Nucleic Acids
Research、30:3497−3531を参照されたい)。別の配列に相補的である配列は、該他者の相補物ともまた称される。
【0043】
核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間の会合の効率および強さに対する有意の影響を有する。2種の核酸鎖配列間の「相補性」はらせん形成のための自由エネルギー変化に対応する。従って、核酸分子の結合自由エネルギーの測定は、RNAの三次元構造およびRNA−RNA会合の解釈、例えばRNAi活性、または遺伝子発現若しくは二本鎖オリゴヌクレオチドの形成の阻害を予測するのに有用である。こうした測定は当該技術分野で既知の方法を使用して行い得る(例えば、Turnerら、1987、Cold Spring Harb Symp Quant Biol.52:123−33;Frierら、1986、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 83:9373−9377;Turnerら、1987、J.Am.Chem.Soc.109:3783−3785を参照されたい)。
【0044】
当業者が認識するであろうとおり、相補性は、存在する場合、例えば鎖間の最低1個若しくはそれ以上の核酸塩基が基準の塩基対形成規則に従って対形成し得る場合に部分的であり得る。例えば、配列5’−CTGACAATCG−3’(配列番号68)、5’−CGAAAGTCAG−3’(配列番号69)は相互に部分的に相補的である(本明細書で「不完全に相補的」ともまた称される)。本明細書で使用されるところの「部分的相補性」若しくは「部分的に相補的」は、核酸配列の連続する残基のある比率のみが、第二の核酸配列中の同一数の連続する残基と反平行様式でワトソン−クリック塩基対形成を形成し得ることを示す。例えば、10ヌクレオチドを有する第二の核酸配列とワトソン−クリック塩基対形成を形成する第一のオリゴヌクレオチド中の合計10ヌクレオチドからの5、6、7、8、9若しくは10ヌクレオチドは、それぞれ50%、60%、70%、80%、90%および100%の相補性を表す。
【0045】
相補性はまた、一方の鎖の各およびすべての核酸塩基が、基準の塩基対形成規則に従って、別の反平行鎖中の対応する塩基と水素結合を形成することが可能である場合に全体的であり得る。例えば、配列5’−CTGACAATCG−3’(配列番号68)および5’−CGATTGTCAG−3’(配列番号70)は相互に完全に相補的(本明細書で「完全に相補的」ともまた称される)である。本明細書で使用されるところの「完全な相補性」若しくは「完全に相補的」は、核酸配列の全部の連続する残基が、第二の核酸配列中の同一数の連続する残基と反平行様式でワトソン−クリック塩基対形成を形成し得ることを示す。別の配列に完全に相補的である配列は該他者の完全な相補物ともまた称される。
【0046】
当業者は、反平行鎖中の対応する連続する塩基と十分に塩基対形成し得る塩基が存在しない場合に、該2鎖が相補性を有しないとみなすことができることを認識するであろう。本明細書のある態様において、2本の反平行鎖の少なくとも部分が相補性を有しないことができる。ある態様において、こうした部分は該2鎖の長さの大多数さえ含みうる。
【0047】
前述に加え、当業者は、完全に相補的である等しい長さの鎖ではそれらの鎖の全部の区分が相互に完全に相補的であることを認識するであろう。等しい長さのものでない、すなわち平滑でない一方若しくは双方の端を有するヌクレオチド二重鎖に存在する鎖は、完全に相補的であると当業者によりみなされうるが、しかしながら、塩基対形成する相対する鎖中に対応する塩基を有しないオーバーハング端(1個若しくは複数)(「オーバーハング」)中に1個若しくはそれ以上の塩基が存在することができる。不完全にすなわち部分的に相補的である鎖の場合、相互に完全に相補的である数個若しくはなお多くの連続する塩基が存在する鎖の部分若しくは区分、および完全未満の相補性を有する、すなわちそれらの区分が相互に部分的にのみ相補的である不完全に相補的な鎖の他の部分が存在しうることが理解されるべきである。
【0048】
第一のヌクレオチド配列と第二のヌクレオチド配列の間の相補性の比率は、第一のヌクレオチド配列と第二のヌクレオチド配列の相補物の間の配列同一性若しくは類似性により評価し得る。第二のヌクレオチド配列にX%相補的であるヌクレオチド配列は、該第二のヌクレオチド配列の相補物にX%同一である。「ヌクレオチド配列の相補物」は該ヌクレオチド配列に完全に相補的であり、その配列はワトソン−クリック塩基対形成の規則を使用して該ヌクレオチド配列から容易に推定可能である。
【0049】
「保存若しくは保存された」は、特定の配列が、該特定の配列の遺伝子の情況に関係なく、関係する標的配列の一群で表れることが見出される程度を示す。
【0050】
「遺伝子の情況」は、特定の同定された配列を取り囲み、かつ、当業者が一般に使用される配列の注釈若しくは他のマーカーに関してゲノム若しくはRNA分子内のその位置を決定することを可能にするのに十分に長い、隣接配列を指す。
【0051】
当該技術分野で既知のところの「配列同一性若しくは類似性」は、配列を比較することにより決定されるところの2種若しくはそれ以上のポリペプチド配列または2種若しくはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、同一性は、場合によっては、こうした配列の列間の一致により決定されるところのポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列間の配列の関係性の程度もまた意味している。2種のアミノ酸配列若しくは2種の核酸の同一性若しくは類似性パーセントを決定するため、配列を至適の比較の目的上整列する(例えば、第二のアミノ若しくは核酸配列との至適のアライメントのため、第一のアミノ酸若しくは核酸配列の配列中にギャップを導入し得る)。対応するアミノ酸位置若しくはヌクレオチド位置のアミノ酸残基若しくはヌクレオチドをその後比較する。第一の配列中の1位置が、第二の配列中の対応する位置と同一若しくは類似のアミノ酸残基若しくはヌクレオチドにより占有される場合には、該分子はその位置で同一若しくは類似である。2配列間の同一性若しくは類似性パーセントは、該配列により共有される同一若しくは類似の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数(例えば重なる位置)×100)。100%の配列同一性を共有する2配列は同一である。一態様において、該2配列は同一長さである。
【0052】
同一性および類似性の双方は容易に計算し得る。配列間の同一性若しくは類似性を決定するのに一般に使用される方法は、限定されるものでないがCarilloら、(1988)、SIAM J.Applied Math.48、1073に開示されるものを挙げることができる。同一性の好ましい決定方法は試験される配列間の最大の一致を与えるよう設計される。同一性および類似性の決定方法はコンピュータプログラムに体系化されている。
【0053】
2配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの制限しない一例は、Karlinら、(1993)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877でのとおり改変されたKarlinら、(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムは、Altschulら、(1990)、J.Mol.Biol 215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。比較の目的上ギャップを付けたアライメントを得るため、Altschulら、(1997)、Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記述されるところのGapped BLASTを利用し得る。あるいは、PSI−Blastを使用して、分子間の離れた関係を検出する反復検索を実施し得る。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI−Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用し得る。加えて、FASTA法(Atschulら、(1990)、J.Molec.Biol.215、403)もまた使用し得る。
【0054】
配列の比較に有用な数学的アルゴリズムの別の制限しない例は、Myersら、(1988)、CABIOS 4:11−17のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。
【0055】
一態様において、2配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanとWunsch(J.Mol.Biol.(48):444−453(1970))のアルゴリズムを使用して決定する。AccelrysのCGC GAPプログラムは、一致の数を最大にしかつギャップの数を最少にするように2個の完全な配列を整列する。
【0056】
別の態様において、2配列間の同一性パーセントは、AccelrysのGCGソフトウェアパッケージのBestFitプログラムに組み込まれているSmithとWaterman(J Mol Biol.1981、147(1):195−7)の局所相同性アルゴリズムを使用して決定する。BestFitプログラムは2配列間の類似性の最良のセグメントの至適のアライメントを行う。至適のアライメントは一致の数を最大にするようにギャップを挿入することにより見出される。
【0057】
実質的な程度の相補性を共有するヌクレオチド配列は、例えば塩基対を一致させることにより、相互と安定な相互作用を形成することができる。本明細書で使用されるところの2ヌクレオチド配列に関しての「安定な相互作用」という用語は、該2ヌクレオチド配列が二本鎖分子を形成するように十分な相補性を有しかつ相互と相互作用する天然の傾向を有することを示す。2ヌクレオチド配列は広範な配列相補性内で相互と安定な相互作用を形成し得る。一般に、相補性が高くなるほど相互作用はより強く若しくはより安定になる。相互作用の異なる強さは異なる過程に必要とされうる。例えば、in vitroで安定なヌクレオチド配列二重鎖を形成するという目的上の相互作用の強さは、in vivoでiRNAと結合配列の間で安定な相互作用を形成するという目的上のものと異なりうる。相互作用の強さは、適切なソフトウェアを用いて当業者により容易に決定若しくは実験的に予測され得る。
【0058】
ハイブリダイゼーションを使用して、2種のポリヌクレオチドが相互に実質的に相補的であるかどうかを試験しかつ該相互作用がどのくらい安定であるかを評価し得る。十分な程度の相補性を共有するポリヌクレオチドは、多様なハイブリダイゼーション条件下で相互にハイブリダイズすることができる。一態様において、高程度の相補性を共有するポリヌクレオチドは、従って強い安定な相互作用を形成し、そして緊縮性ハイブリダイゼーション条件下で相互にハイブリダイズすることができる。「緊縮性ハイブリダイゼーション条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)に記述されるところの当該技術分野で既知の意味を有する。例示的一緊縮性ハイブリダイゼーション条件は、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、次いで50〜65℃で0.2×SSCおよび0.1%SDS中の1回若しくはそれ以上の洗浄を含んでなる。
【0059】
本明細書で使用されるところの「不適正」という用語は、対応する鎖上に対応するヌクレオチドを有しない2本の相互作用する鎖のいずれかの鎖のヌクレオチド、若しくは相補的でない対応する鎖上に対応するヌクレオチドを有する2本の相互作用する鎖のいずれかの鎖のヌクレオチドを指す。
【0060】
本明細書で使用されるところの「一致」はヌクレオチドの相補対形成を指す。
【0061】
本明細書で使用されるところの「発現系」という用語は、標的RNA分子の発現および若しくは本発明の多標的RNA分子のRNAi活性を評価するのに使用し得るいかなるin vivo若しくはin vitroの系も指す。特定の態様において、「発現系」は、1種若しくはそれ以上の標的RNA分子、該標的RNA分子を標的とする多標的干渉RNA分子、ならびに標的RNA分子およびRNAiの発現を可能にする当業者に既知の細胞若しくはいずれかの型のin vitro発現系を含んでなる。
【0062】
本明細書で使用されるところの「RNA」という用語は、以下の塩基、すなわちアデニン、シトシン、グアニンおよびウラシル(それぞれA、C、GおよびUと略記される)の1種若しくはそれ以上の天然のヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、普遍的塩基、非環式ヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチドならびに非リボヌクレオチドを有するものを包含する最低1個のリボヌクレオチド残基を含んでなるいかなる分子も包含する。「リボヌクレオチド」はp−D−リボフラノース部分の2’位にヒドロキシル基をもつヌクレオチドを意味している。
【0063】
本明細書で使用されるところの「非標的トランスクリプトーム」若しくは「標的とされないトランスクリプトーム」という用語は、標的とされるRNA分子以外のトランスクリプトームを示す。例えば、多標的干渉RNAがウイルスRNAを標的とするよう設計される場合、標的とされないトランスクリプトームは宿主のものである。多標的干渉RNAが生物学的系中の所定のRNAを標的とするよう設計される場合は、標的とされないトランスクリプトームは、所定の標的とされるRNA以外の該生物学的系のトランスクリプトームである。
【0064】
修飾リボヌクレオチドは、例えば、2’デオキシ、2’デオキシ−2’−フルオロ、2’O−メチル、2’O−メトキシエチル、4’チオ若しくはロック(locked)核酸(LNA)リボヌクレオチドを包含する。多様な型のリボヌクレオチドアナログおよびヌクレオチド間結合(バックボーン)の修飾を伴うRNAの使用もまた本明細書で企図している。修飾ヌクレオチド間結合は、例えばホスホロチオエート修飾およびなお逆位結合(すなわち3’−3’若しくは5’−5’)を包含する。好ましいリボヌクレオチドアナログは、糖修飾および核酸塩基修飾リボヌクレオチドならびにそれらの組合せを包含する。好ましい糖修飾リボヌクレオチドにおいて、2’−OH基が、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR若しくはON(式中、RはC1−C6アルキル、アルケニル若しくはアルキニルであり、およびハロはF、Cl、Br若しくはIである)から選択される置換基により置換されている。好ましいバックボーン修飾リボヌクレオチドにおいて、隣接するリボヌクレオチドに結合するリン酸エステル基が、修飾基、例えばホスホロチオエート基により置換されている。上の修飾のいずれか若しくは全部を組合せうる。加えて5’末端はOH、リン酸、二リン酸若しくは三リン酸であり得る。核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち、天然に存在する核酸塩基が代わりに天然に存在しない核酸塩基、例えばS位で修飾されたウリジン若しくはシチジン(例えば5−(2−アミノ)プロピルウリジンおよび5−ブロモウリジン);8位で修飾されたアデノシンおよびグアノシン(例えば8−ブロモグアノシン);デアザヌクレオチド(例えば7−デアザアデノシン);O−およびN−アルキル化ヌクレオチド(例えばN6−メチルアデノシン)で置換されているリボヌクレオチドもまた、本明細書での使用に企図している。
【0065】
本明細書で使用されるところの「普遍的塩基」という用語は、それらの間の区別をほとんど伴わない天然のDNA/RNA塩基のそれぞれと塩基対を形成するヌクレオチド塩基アナログを指す。普遍的塩基の制限しない例は、当該技術分野で既知のところの、C−フ
ェニル、C−ナフチルおよび他の芳香族誘導体、イノシン、アゾールカルボキサミド、ならびに3−ニトロピロール、4−ニトロインドール、5−ニトロインドールおよび6−ニトロインドールのようなニトロアゾール誘導体を包含する(例えばLoakes、2001、Nucleic Acids Research、29、2437−2447を参照されたい)。
【0066】
本明細書で使用されるところの「非環式ヌクレオチド」という用語は、例えばリボース炭素のいずれか(C1、C2、C3、C4若しくはC5)が独立に若しくは組合せでヌクレオチドに存在しない非環式リボース糖を有するいかなるヌクレオチドも指す。
【0067】
RNA配列の一覧表に関して本明細書で使用されるところの、塩基チミジン(「T」)およびウリジン(「U」)は、配列情報の供給源(DNA若しくはRNA)に依存して頻繁に互換性である。従って、標的配列、シード配列、候補シード、標的RNA結合部位などの開示において、塩基「T」は塩基「U」と完全に互換性である。しかしながら、本発明の干渉RNA分子の特定の開示に関して、こうした配列について塩基「U」の使用が機能的様式で「T」で一般に置換され得ないことが理解されるべきである。しかしながら、RNA分子中の塩基「U」のある種の存在は、機能性に対する実質的に有害な影響なく「T」で置換され得ることが当該技術分野で既知である。例えば、3’端のUUオーバーハングのようなオーバーハング中のUの代わりのTの使用はサイレントであるかもしくは少なくとも許容できることが知られており、そして従って本明細書に提供される干渉RNA配列中で許容できる。従って、本発明および付随する請求の範囲の範囲内にある他の構造的に関連しかつ機能上同等な構造に到達するために、本明細書に開示される特定の干渉RNA配列でさえ変動させる方法を当業者が認識するであろうことを企図している。
【0068】
本明細書で使用されるところの「標的RNA分子」若しくは「予め選択された標的RNA分子」は、その発現若しくは活性が、発現系で本発明の干渉RNA分子により調節、例えば低下されることが望ましい、いかなるRNA分子も指す。「標的RNA分子」は目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA分子(mRNA)であり得る。メッセンジャーRNA分子は、典型的に、コーディング領域ならびにコーディング領域に先行(「5’UTR」)および後続する(「3’UTR」)非コーディング領域を包含する。「標的RNA分子」は、一過性低分子RNA(stRNA)、ミクロRNA(miRNA)、核低分子RNA(snRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、核小体小分子RNA(snoRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(rRNA)およびそれらの前駆体RNAのような非コードRNA(ncRNA)でもまたあり得る。ncRNAは機能若しくは調節の細胞過程に関与するため、こうした非コードRNAもまた標的RNA分子としてはたらき得る。疾患に至る異常なncRNA活性は、従って本発明の多標的干渉RNA分子により調節され得る。標的RNAは、さらに、ウイルス、例えばRNAウイルスのゲノム、若しくはいずれかの段階のいずれかのウイルスの複製中間体、ならびにこれらのいずれかの組合せであり得る。
【0069】
「標的RNA分子」は、生物学的系に対し内因性であるRNA分子、若しくは、その感染後に細胞中に存在する病原体例えばウイルスのRNA分子のような、生物学的系に対し外因性であるRNA分子であり得る。標的RNAを含有する細胞はいかなる生物体、例えば植物、動物、原生動物、ウイルス、細菌若しくは真菌にも由来し得るか若しくは含有され得る。植物の制限しない例は単子葉類、双子葉類若しくは裸子植物を包含する。動物の制限しない例は脊椎動物若しくは無脊椎動物を包含する。真菌の制限しない例はカビ若しくは酵母を包含する。
【0070】
本明細書で使用されるところの「標的RNA分子」は所望のRNA分子のいかなるバリアント若しくは多形も包含しうる。大部分の遺伝子は、低いがしかしにもかかわらず有意
の配列変動率が同一種の個体間である遺伝子で起こるために多形である。従って、RNA分子は複数の配列エントリと相関することがあり、それらのそれぞれはRNA分子のバリアント若しくは多形を表す。いずれかの遺伝子抑制ツールの設計において、コンピュータ支援設計で使用される選択された結合配列(1種若しくは複数)が比較的多くないアレルを含有しうるという危険が存在する。結果として、設計される活性の配列は、必要とされる利益を小さい比率の個体でのみ提供することが期待されうる。大部分のバリアント(しばしば一塩基多形(SNP)と称される)の頻度、性質および位置は、当業者に容易に到達可能である。この点に関して、高度に多形であることが既知である標的分子を含む配列を、生物情報学的スクリーニングの間の結合配列の選択で回避し得る。あるいは、いずれかの特定の標的に利用可能な無制限の数の配列を、アレルバリアントのターゲッティングが望ましい状況(すなわちアレルバリアントそれ自身が目的の疾患に関与する場合)を除き、標的とされる結合配列がアレルバリアントの大多数に存在することを確実にするために、本発明の干渉RNAの設計段階で使用しうる。
【0071】
「標的RNA分子」は、結合配列のガイド配列との安定な相互作用を可能にするように本発明の干渉RNA分子のガイド配列に十分に相補的である最低1種の標的とされる結合配列を含んでなる。該標的とされる結合配列は、所望の効果に基づき、転写物配列のいずれかの部分(例えば5’UTR、ORF、3’UTR)を包含するよう改良し得る。例えば転写抑制は3’UTRで作動する頻繁な機構である(例えばミクロRNAに関して)。従って、標的とされる結合配列は効果的な翻訳抑制のため3’UTR中の配列を包含し得る。
【0072】
「標的とされる結合配列」、「結合配列」若しくは「標的配列」は、全部、シード配列、およびシードの一方若しくは双方いずれかの端に隣接する配列を含んでなる標的RNA分子配列の一部分を意味しており、前記結合配列は、ガイド鎖と結合配列の間の相補性に基づき本発明の多標的干渉RNAの一鎖と安定な相互作用を形成することが予測される。
【0073】
本明細書で使用されるところの「シード」若しくは「シード配列」若しくは「シード領域配列」という用語は、干渉RNAの一鎖の一部分に完全に相補的である、標的RNAに存在する最低約6個の連続するヌクレオチドの配列を指す。6個若しくはそれ以上の連続する塩基が好ましいとは言え、「約6」という表現は、最低5個若しくはそれ以上の連続する塩基またはそれ以上のウィンドウがいくつかの場合に有用な候補を提供し得、かつ、有用な干渉RNAの設計に究極的につながり得るという事実を指す。従って、全部のこうしたシード配列を本発明の範囲内で企図している。
【0074】
本明細書で使用されるところの「干渉RNA」若しくは「iRNA」という用語は、例えばRNA干渉(「RNAi」)を配列特異的様式で媒介することにより標的RNA分子の存在、プロセシング、転写、翻訳若しくは半減期を調節する一若しくは二本鎖RNA分子を示すのに使用する。本明細書で使用されるところの「RNA干渉」若しくは「RNAi」という用語は、転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害若しくはエピジェネティクスのような配列特異的RNA干渉を記述するのに使用される他の用語と同等であること意味している。これは、例えば、RISCに媒介される分解若しくは翻訳抑制、ならびに転写サイレンシング、変えられたRNAエディティング、調節タンパク質への結合についての競合、およびmRNAスプライシングの変化を包含する。それはまた、限定されるものでないがナンセンス媒介型崩壊およびP体(P body)への転位置を挙げることができる、当該技術分野で既知の他の過程による標的RNAの分解および/若しくは不活性化も包含する。従って、本明細書で提供される干渉RNA(例えばCODEMIRおよびVIROMIR)は、単独で、または当該技術分野で既知の1種若しくはそれ以上の他のRNA調節手段と組合せで、前述の機構のいずれかを介してそれらの機能的効果を発揮しうる。本明細書で提供される干渉RNAを使用して、遺伝子刷り込み、転写、翻訳若しくは核酸プロセシング(例えばアミノ基転移、メチル化など)のような細胞過程に介入することにより、生物体若しくは細胞の遺伝子型若しくは表現型を操作する若しくは変えることができる。
【0075】
「干渉RNA」という用語は、配列特異的RNAiを媒介することが可能である核酸分子、例えば低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、ミクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉オリゴヌクレオチド、低分子干渉核酸、低分子干渉修飾オリゴヌクレオチド、化学修飾siRNA、転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)および他者を記述するのに使用される他の用語に同等であること意味している。
【0076】
「干渉RNA」は2種の別個のオリゴヌクレオチドから集成し得る。「干渉RNA」は、核酸に基づく若しくは核酸に基づかないリンカー(1種若しくは複数)によって連結された自己相補的領域を含んでなる単一オリゴヌクレオチドからもまた集成し得る。「干渉RNA」は、自己相補的領域を有する二重鎖、非対称二重鎖、ヘアピン若しくは非対称ヘアピン二次構造をもつポリヌクレオチドであり得る。「干渉RNA」は、1個若しくはそれ以上のループ構造、および自己相補的領域を含んでなるステムを有する一本鎖ポリヌクレオチド(例えば低分子ヘアピン型RNAすなわちshRNA)でもまたあり得、該ポリヌクレオチドは、RNA不活性化を媒介することが可能な1種若しくはそれ以上の二本鎖干渉RNA分子を生成するためにin vivo若しくはin vitroいずれでもプロセシングされ得る。二本鎖RNAを生成するための一本鎖RNAの自己対形成領域(1個若しくは複数)の切断はin vitro若しくはin vivoで発生し得、それらの双方を本明細書で使用に企図している。
【0077】
本明細書で使用されるところの「干渉RNA」はRNAのみを含有する分子に制限される必要はないが、しかし、上述されたもののような1種若しくはそれ以上の修飾リボヌクレオチドおよび非ヌクレオチドを有するものをさらに包含する。
【0078】
「干渉RNA」という用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え製造したRNAのような単離されたRNA、ならびに、1個若しくはそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/若しくは変更により天然に存在するRNAと異なる変えられたRNAを包含する。こうした変更は、多標的干渉RNAの端(一方若しくは複数)への、または内的に、例えば該RNAの1個若しくはそれ以上のヌクレオチドでのような、ヌクレオチド以外の物質の付加を包含し得る。本発明のRNA分子中のヌクレオチドは、天然に存在しないヌクレオチドまたは化学合成ヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのような標準的でないヌクレオチドもまた含み得る。これらの変えられたRNAは天然に存在するRNAのアナログ(1種若しくは複数)と称し得る。
【0079】
「多標的干渉RNA」ともまた称される本発明の干渉RNAは、その各鎖が異なる遺伝子の情況で1種若しくはそれ以上の標的RNA分子上に存在する結合部位と安定な相互作用を形成し得る干渉二本鎖RNAである。多標的干渉RNAの例は、CODEMIRすなわちコンピュータ設計多標的干渉RNA(COmputationally−DEsigned,Multi−targeting Interfering RNA)およびVIROMIRを包含し、ここで後者の多標的干渉RNA分子はウイルス標的に優先的に標的を向けられる。
【0080】
「配列」は、単量体がポリマー中に存在する直線的順序、例えばポリペプチド中のアミノ酸の順序若しくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序を意味している。
【0081】
本明細書で使用されるところの「被験体」は、本発明の核酸分子を投与し得る生物体を指す。被験体は、処置、観察若しくは実験の対象であった動物若しくは植物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒト、またはそのいかなる細胞でもあり得る。
【0082】
「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。1つの型のベクターは、付加的なDNAセグメントを挿入し得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の型のベクターは、付加的なDNAセグメントを挿入し得るウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノムに組込まれ、そしてそれにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターすなわち発現ベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指図することが可能である。
【0083】
本明細書で使用されるところの「RNA分子の発現を調節する(若しくは、その調節)」は、RNA分子のレベルおよび/若しくは生物学的活性のいかなるRNA干渉に媒介される調節も意味している。それは、標的RNA分子を切断すること、不安定化すること、若しくはそれらの翻訳を予防することによるような、いかなるRNAi関連の転写後遺伝子サイレンシングも包含する。一態様において、「調節する」という用語は「阻害する」を意味し得るが、しかし、「調節する」という語の使用はこの定義に制限されない。標的RNA分子の調節は、適する発現系で、例えばin vivoで、1個若しくはそれ以上の適する細胞で、または当該技術分野で既知であるような無細胞すなわちin vitro発現系で測定する。転写、翻訳、若しくはRNA分子に関する発現の他の局面のパラメータの慣例の測定方法は当該技術分野で既知であり、そしていかなるこうした測定も本明細書の使用に適する。
【0084】
標的RNA若しくはその発現に関してのところの「阻害する」、「下方制御する」、「低下する」または「減少する」もしくは「減少すること」により、遺伝子の発現または標的RNA分子のレベルおよび/若しくは生物学的活性が、本発明の核酸分子(例えば多標的干渉RNA)の非存在下で観察されるものより下に低下されることを意味している。一態様において、多標的干渉RNA分子での阻害、下方制御若しくは低下は、不活性若しくは減弱された分子の存在下で観察されるものより大きい。別の態様において、多標的干渉RNA分子での阻害、下方制御若しくは低下は、例えばスクランブル配列若しくは不適正をもつ多標的干渉RNA分子の存在下で観察されるものより大きい。別の態様において、本発明の核酸分子での遺伝子発現の阻害、下方制御若しくは低下は、該核酸分子の存在下でその非存在下でより大きい。
【0085】
標的RNA若しくはその発現に関してのところの「阻害する」、「下方制御する」、「低下する」若しくは「減少する」は、例えば、選択された発現系での標的RNAの転写若しくは翻訳の量若しくは速度の低下、標的RNAの活性の量若しくは速度の低下、および/または前述の組合せを包含する。当業者は、コードされる遺伝子産物の転写の総量、転写の速度、翻訳の総量、若しくは翻訳の速度、またはなお活性の減少がこうした減少を暗示することを認識するであろう。RNAの「活性」は、例えばそれ自身若しくは別のRNA分子の転写を高めること若しくは抑制することのような転写に対するいかなる影響も包含する、細胞若しくは発現系で該RNAが有しうるいかなる検出可能な影響も指す。所定のRNAの活性の発現若しくは測定の「減少」の測定は、in vitro若しくはin vivoで、こうした目的上既知の若しくは開発された、またはそれに適応可能ないずれの系でも実施し得る。好ましくは、特定の干渉RNAによる発現の「減少」の測定は、例えば干渉RNAを使用しない対照に関して行う。いくつかの比較の態様において、こうした測定は、何らかの他の干渉RNA若しくは干渉RNAの組合せを使用する対照に関して行う。最も好ましくは、減少のような変化は、統計学的有意性の一般に許容される検定に基づき統計学的に有意である。しかしながら、可能な尺度の多数、および候補干渉RNAを迅速にスクリーニングする能力に対する必要性のため、所定のRNAは、本明細書で使用されるところの「発現の減少」を示すとみなされるために1種のこうしたin vitro若しくはin vivoアッセイで算術的減少を示すことのみを必要とすることを、本明細書で企図している。
【0086】
より具体的には、多標的干渉RNAの生物学的調節活性は、それぞれsiRNAおよびミクロRNA遺伝子サイレンシングに関与する慣習的RISCタンパク質複合体による分解若しくは翻訳抑制に制限されないか、若しくは必ずしも頼らない。事実、低分子の二本鎖および一本鎖RNAは代替の機構を介して他の可能な配列特異的役割を有することが示された。例えば、低分子二本鎖RNA(dsRNA)種は、おそらく調節タンパク質への結合により分化/細胞活性の調節エフェクターとして作用しうる(Kuwabara,T.ら、(2004)、Cell、116:779−93)。あるいは、dsRNAは、AU豊富なエレメント(ARE)結合タンパク質の関与によりmRNAの分解につながりうる(Jing,Q.ら、(2005)、Cell、120:623−34)。さらに、dsRNAはエピジェネティックな転写サイレンシングもまた誘導しうる(Morris,K.V.ら、(2004)Science、305:1289−89)。mRNAのプロセシングはAからIへのエディティングおよび改変スプライシングによってもまた変えることができる。
【0087】
本明細書で使用されるところの「パリンドローム」若しくは「パリンドローム配列」は、ある核酸配列に同一である第二のヌクレオチド配列に完全に相補的である核酸配列、例えばUGGCCAを意味している。該用語は、パリンドローム配列である2種のヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子もまた包含する。
【0088】
本明細書で使用されるところの「表現型変化」は、本発明の核酸分子との接触若しくはそれでの処理に応答して発生する細胞若しくは生物体に対するいかなる検出可能な変化も指す。こうした検出可能な変化は、限定されるものでないが、当該技術分野で既知の方法によりアッセイし得るところの形状、大きさ、増殖、移動性、タンパク質発現若しくはRNA発現の変化、または他の物理的若しくは化学的変化を挙げることができる。検出可能な変化は、緑色蛍光タンパク質(GFP)のようなレポーター遺伝子/分子、または、発現されたタンパク質若しくはアッセイし得るいずれかの他の細胞成分を同定するのに使用される多様な標識の発現もまた包含し得る。
【0089】
本明細書で使用されるところの「治療上有効な量」という用語は、処置されている疾患若しくは障害を改善すること若しくはその症状の軽減を包含する、研究者、獣医師、医師若しくは他の臨床家により探求されている組織系、動物、ヒト若しくは植物での生物学的若しくは医学的応答を導き出す有効成分若しくは製薬学的剤の量を意味している。本製薬学的組成物の治療上有効な用量の決定方法は当該技術分野で既知である。
【0090】
「予防上有効な量」という用語は、研究者、獣医師、医師若しくは他の臨床家により探求されているところの障害の発症を被験体で阻害する有効成分若しくは製薬学的剤の量を指す。
【0091】
一般に、当業者に既知の干渉RNAは、標的に対しセンスおよびアンチセンスである2本の自己相補鎖を含んでなる二本鎖ポリヌクレオチド分子である。通常、アンチセンス(ガイド)鎖がRISCに優先的に負荷されかつ相補的塩基対形成後に標的ヌクレオチド配列のRISCに媒介される分解を誘導するようなiRNA二重鎖が設計される。センス(パッセンジャー)鎖は、RISC複合体への負荷の過程で、若しくは直後に、一本鎖RNAが高度に感受性であるエンドヌクレアーゼにより分解されうる。干渉RNAの2本の鎖の5’末端の相対的熱力学的特徴が、ある鎖がRNAiの間にパッセンジャー若しくはガイド鎖の機能を供するかどうかを決定する。
【0092】
本発明は、そのそれぞれが特定の標的配列に対し設計されている2本の鎖を含んでなる多標的干渉RNA分子を提供する。iRNA二重鎖は、各鎖がRISC複合体に負荷され得、そして従って双方の鎖が「ガイド」鎖として機能するような様式で設計される。好ましくは、双方の鎖はほぼ等しい程度までRISC複合体に負荷される。一方の鎖は、標的RNA結合配列の第一の部分に少なくとも部分的に相補的であり、シードともまた称される。他方の鎖は、完全でない場合には少なくとも部分的にシードに同一である配列を含んでなり、この配列は第二の標的RNA結合配列の第一の部分に少なくとも部分的に相補的である。前記第一および第二の標的結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在する。すなわち、複数の標的RNA結合部位が、同一の標的RNA分子、別個のRNA分子、若しくは双方に存在しうる。
【0093】
一般的な一局面において、本発明は、式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
を含んでなる多標的干渉RNA分子を提供する。
【0094】
式(I)中で、pはいずれかの鎖の5’端に存在若しくは非存在であり得る末端リン酸基よりなる。当業者に既知のいかなる末端リン酸基も使用し得る。こうしたリン酸基は、限定されるものでないが一リン酸、二リン酸、三リン酸、環状リン酸、若しくはリン酸エステル結合のようなリン酸の化学的誘導体を挙げることができる。
【0095】
式(I)中で、Sは、第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、また、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、また、SおよびS’は、相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでない。
【0096】
特定の態様において、SおよびS’は、それぞれ、最低2種の結合配列の第一の部分に少なくとも部分的に、好ましくは完全に相補的である、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20ヌクレオチドの長さを有する。一態様において、Sは、1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子に存在する配列に完全に相補的である。別の態様において、S’は1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子に存在する配列に完全に相補的である。特定の態様において、SおよびS’は相互に完全に相補的である。
【0097】
ある態様において、Sは、1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子に存在する1結合配列の第一の部分に部分的に相補的であり、Sの7個の連続するヌクレオチドのうち6個、8個のうち7個、9個のうち8個、10個のうち9個、11個のうち10個、12個のうち11個、13個のうち12個、14個のうち13個、15個のうち14個若しくは16個のうち15個のようなが、最低1種の標的RNA結合配列の第一の部分に完全に相補的である。他の態様において、S、および異なる結合配列の第一の部分は、完全に相補的な12ヌクレオチドのうち10、13のうち11、14のうち12、15のうち13若しくは16のうち14のようなより少ない全体的相補性を有する。同様に、ある態様において、S’は第二の結合部位の第一の部分に部分的に相補的である。
【0098】
式(I)中の多標的干渉RNAの2本の鎖の残存する配列(X、X’、YおよびY’)は、独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなる。特定の態様において、それらは標的RNA部位へのさらなる結合を生成するように開発する。一態様において、XおよびY’の配列は、それぞれ第一および第二の標的RNA結合配列の第二の部分に少なくとも部分的に相補的である。一態様において、配列X’およびYはそれぞれXおよびY’に完全に相補的であり、その結果XSYおよびY’S’X’は完全に相補的である。付加的な一態様において、X’およびYはそれぞれXおよびY’と不完全に相補的であり、その結果XSYおよびY’S’X’が不完全に相補的である。これは、例えば、より高いハイブリダイゼーションエネルギーをもつ末端の不適正の使用により干渉RNA二重鎖の負荷バイアスを変えることが必要である状況で必要とされうる。
【0099】
さらなる一態様において、配列XおよびY’は、複数の標的RNA結合部位の第一および第二の部分へのXSおよびY’S’の結合を最大にするように設計される。この状況で、複数の標的配列(例えばウイルス単離物)を、複数の標的RNA配列の第二の部分に対応する多数の同一性コンセンサス配列を生成するために検査し得る。これらの同一性コンセンサス配列は、標的RNA配列のアライメントを検査することにより手により生成し得る。あるいは、全部の可能な塩基配列若しくは推定のXSおよびY’S’配列の1サブセットをコンピュータアルゴリズムにより生成し得る。各推定のXSおよびY’S’配列をその後、RNAhybrid若しくは当業者に既知の類似のプログラムを使用してin silicoでハイブリダイズする。標的RNA結合部位の対応する第一および第二の部分を最良に結合することが予測される推定の配列をその後、4個以上の連続するC若しくはG塩基のような不都合な特徴を有する推定の配列を除外することを包含する次の設計期に優先する。
【0100】
好ましい一態様において、それらがそれぞれY’およびXに少なくとも部分的に相補的であるようなYおよびX’の配列をその後設計する。オーバーハングは、必要とされる場合は、単純に、UU、dTdTまたはいずれかの他の塩基若しくは修飾塩基のX’およびYへの付加でありうる。一態様において、オーバーハングの塩基は、それらのそれぞれのRNA標的へのXSYおよびY’S’X’の予測される結合をさらに増大させるように選択する。オーバーハングは、必要とされるとおり1、2、3、4若しくは5塩基でありうる。
【0101】
本発明の干渉RNAにおいて、好ましい一態様は、二重鎖の2本の鎖が、それらの対応する最低1種の標的配列に対する部分的若しくは完全のいずれかの相補性を独立に有しかつ該2本の鎖が存在する場合はオーバーハングを除き相互に完全に相補的であるものである。本発明の別の態様は、二重鎖の2本の鎖のそれぞれが、それらの対応する最低1種の標的配列に部分的若しくは完全のいずれかの相補性を独立に有しかつ該2本の鎖が相互に不完全に相補的であるものである。双方の鎖は、本発明の干渉RNA分子の機能の何らかの局面を高めるように改変かつ改良し得る。例えば、多様なファルマコフォア、色素、マーカー、リガンド、複合物、抗体、抗原、ポリマー、ペプチドおよび他の分子を本発明の分子に便宜的に連結し得る。干渉RNAは、5’−リン酸若しくは5’,3’−二リン酸のような1個若しくはそれ以上の5’末端リン酸基をさらに含み得る。これらは、細胞の取り込み、安定性、組織ターゲッティング若しくはそれらのいずれかの組合せを改良するのに有用でありうる。
【0102】
別の態様において、Xは第一の結合配列の第二の部分に少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド配列よりなり、前記第二の部分は第一の結合配列の前記第一の部分の3’端に隣接しかつそれに結合されており、また、X’はXに実質的に相補的である。特定の一態様において、XおよびX’は相互に完全に相補的である。別の特定の態様において、Xは第一の結合配列の第二の部分に完全に相補的である。
【0103】
なお別の態様において、Y’は、第二の結合配列の第二の部分に少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド配列よりなり、前記第二の部分は、第二の結合配列の前記第一の部分の3’端に隣接しかつそれに結合されており、また、YはY’に実質的に相補的である。特定の一態様において、YおよびY’は相互に完全に相補的である。別の特定の態様において、Y’は第二の結合配列の第二の部分に完全に相補的である。
【0104】
式(I)中で、XSYは、第一の結合配列とのXSYの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、また、Y’S’X’は、第二の結合配列との安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、ならびに、XSYおよびY’S’X’は、安定なiRNA二重鎖の形成を可能にするように相互に少なくとも部分的に相補的である。特定の一態様において、XSYは第一の結合配列に完全に相補的である。別の態様において、Y’S’X’は第二の結合配列に完全に相補的である。なお別の態様において、XSYおよびY’S’X’は相互に完全に相補的である。
【0105】
本発明の一態様において、本発明の多標的干渉RNA分子の各鎖は、独立に、長さ約17ないし約25ヌクレオチド、特定の態様においては長さ約17、18、19、20、21、22、23、24および25ヌクレオチドである。DicerおよびRNアーゼIIIのような酵素によるRNAのプロセシングによる複数の活性鎖の生成に対する必要性を伴わないより短い長さの干渉RNA分子を使用することは、例えば費用、製造およびオフターゲット効果の機会の低減における利点を提供する。
【0106】
2鎖間の相互作用は、細胞RISC複合体への双方の鎖の負荷を改良するように(Khvorovaら(2003)Cell、115:209−16;Schwarzら(2003)Cell、115:199−208)、若しくは干渉RNAの機能的局面を別の方法で改良するように調節し得る。当業者は、合成二重鎖のいずれかの鎖での1個若しくはそれ以上の塩基の付加、欠失若しくは置換による塩基対形成した鎖の強さおよび他の特性の慣例の変更方法が存在することを認識するであろう。とりわけ、一例として、これらの戦略は、二重鎖の予測される熱力学が所望の鎖の負荷に対し伝導性であることを確実にするように、二重鎖の末端の設計に適用し得る。これらの戦略は当業者に公知である。
【0107】
一本鎖RNA分子が、例えば、該分子が式(I)の二本鎖核酸の少なくとも一領域を形成するように自己対形成することを可能にするヘアピンループ若しくは類似の二次構造を含んでなることもまた、本明細書で企図している。
【0108】
当業者は、該二本鎖RNA分子が治療的応用での使用にある種の利点を提供することを認識するであろう。平滑端分子をある態様について本明細書で開示するとは言え、多様な他の態様において、例えば1〜5ヌクレオチドのオーバーハングがいずれか若しくは双方の末端に存在する。いくつかの態様において、オーバーハングは長さが2若しくは3塩基である。現在好ましいオーバーハングは、ある態様における3’末端UUオーバーハング(3’−UU)を包含する。本明細書で使用のため例示される他のオーバーハングは、限定されるものでないが3’−AA、3’−CA、3’−AU、3’−UC、3’−CU、3’−UG、3’−CC、3’−UA、3’−Uおよび3’−Aを挙げることができる。多様な長さおよび組成のなお他の5’若しくはより好ましくは3’いずれかのオーバーハングを、本明細書での使用のため、提供されるRNA分子上で企図している。
【0109】
ある態様において、本発明の多標的干渉RNA分子は、1個若しくはそれ以上の末端オーバーハング、例えば1ないし5ヌクレオチドでなるオーバーハングを含んでなる。他の態様において、本発明の多標的干渉RNA分子は、2’−O−メチルリボシル置換のような最低1個の修飾リボヌクレオチドを含んでなる。
【0110】
ある態様において、最低1種の標的RNA分子はmRNAである。より具体的には、いくつかの態様において、最低1種の標的は、受容体、サイトカイン、転写因子、調節タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞骨格タンパク質、トランスポーター、酵素、ホルモン若しくは抗原をコードする。であるから、細胞中のタンパク質標的の潜在的範囲は制限されないが、しかしながら、当業者は、ある種の標的が特定の疾患状態若しくは過程で価値があることがよりありそうであることを認識するであろう。加えて、当業者は、病原体(例えばウイルス)から発する標的RNA分子が、コーディングであれ調節であれ、本明細書に提供される多標的干渉RNAおよび方法で有用であることを認識するであろう。
【0111】
一態様において、結合配列の最低1種はmRNAの3’UTRにある。
【0112】
1種の標的若しくはそれ以上の標的の包含は、別の選択された標的を標的とするための特定の干渉RNAの使用若しくはそれに対する意図を排除しない。いずれかの付加的なRNA標的分子のこうしたターゲッティングは、発現系でより小さい、等しい若しくはより大きい効果をもたらしうる。前述にもかかわらず、本発明の多標的干渉RNAを、好ましくはオフターゲット効果、とりわけありそうであるものについてスクリーニングする。例えば、トランスクリプトーム全体への潜在的結合、若しくはその時点で既知であると同じ程度のそれを精査することは、こうしたスクリーニングへの有用なアプローチを提供する。例えば、ゲノムが完全にシークェンシングされている場合、当業者は、トランスクリプトーム全体をありそうなオフターゲット効果について便宜的にスクリーニングし得ることを認識するであろう。多標的干渉RNAの局所送達が予期される場合、完全なトランスクリプトームから生物情報学のアプローチにより同定される非標的転写物が、多標的干渉RNAを適用する組織に実際に存在しないことがあるため、特化した組織特異的トランスクリプトーム(例えば眼の応用について網膜)がより適切でありうる。
【0113】
一態様において、本発明の多標的干渉RNAの2鎖は、異なる遺伝子の情況で単一の標的RNA分子上に存在する最低2種の異なる標的とされる結合配列と安定な相互作用を形成し、そして従って該RNA分子の発現若しくは活性を調節する。単一標的RNA分子上の複数の結合部位を単一のiRNAで標的とすることは、該標的RNA分子のより効果的なRNAiを提供する。このアプローチは、突然変異率が高いウイルス遺伝子発現の調節にとりわけ有用である。
【0114】
別の態様において、本発明の多標的干渉RNAの2鎖は、異なる遺伝子の情況で複数の予め選択された標的RNA分子上に存在する最低2種の結合配列と安定な相互作用を形成して、そして従って複数の予め選択された標的RNA分子の発現若しくは活性を調節する。複数の標的RNA分子を単一のiRNAで標的とすることは、原型の1薬物1標的のアプローチに対する一代替を表す。生物学的系の複雑さの考慮において、複数の標的に対し選択的な薬物を設計することは、多様な疾患および障害のための新たなかつより効果的な医薬品につながるであろう。
【0115】
特定の態様において、生物学的系の疾患若しくは障害に関与するRNA分子は、予め選択され、かつ、本発明の多標的干渉RNA分子により標的とされる。生物学的系は、例えば植物、若しくはラット、マウス、イヌ、ブタ、サルおよびヒトのような動物であり得る。予め選択された標的RNA分子は、例えば、受容体、サイトカイン、転写因子、調節タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞骨格タンパク質、トランスポーター、酵素、ホルモンおよび抗原よりなる群から選択される1分類の1タンパク質をコードし得る。予め選択される標的RNA分子は、例えば、ICAM−1、VEGF−A、MCP−1、IL−8、VEGF−B、IGF−1、Gluc6p、Inppl1、bFGF、PIGF、VEGF−C、VEGF−D、β−カテニン、κ−ras−B、κ−ras−A、EGFRおよびTNFαよりなる群から選択される1タンパク質をコードし得る。従って、本発明の多標的干渉RNA分子は、動物のような生物学的系において、例えば、ICAM−1、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、IL−8、bFGF、PIGF、MCP−1およびIGF−1のいずれかの組合せ、ICAM−1、VEGF−AおよびIGF−1のいずれかの組合せ、β−カテニン、κ−rasおよびEGFRのいずれかの組合せ、ICAM−1およびVEGF−Aの双方、若しくはGluc6pおよびInppl1の双方の発現を調節し得る。
【0116】
予め選択される標的RNA分子は、ウイルスに必須のタンパク質をコードするウイルスRNAを包含するウイルスRNAでもまたあり得る。こうした必須タンパク質は、例えば該ウイルスの複製、転写、翻訳若しくはパッケージング活性に関与し得る。HIVウイルスの例示的必須タンパク質は、GAG、POL、VIF、VPR、TAT、NEF、REV、VPUおよびENVであり、それらの全部は本発明の予め選択される標的分子となり得る。本発明の多標的干渉RNAは、限定されるものでないがヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、および重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス若しくはそれらの組合せを挙げることができるウイルスRNAを調節するのに使用し得る。
【0117】
いくつかの態様において、本発明の多標的干渉RNAは、第一の生物学的系の1種若しくはそれ以上の標的RNA分子、および第一の生物学的系に対し感染性である第二の生物学的系の1種若しくはそれ以上の標的分子を標的とするように設計する。特定の態様において、本発明の多標的干渉RNAは、1種若しくはそれ以上の宿主RNA分子、およびウイルスすなわち宿主の病原体の1種若しくはそれ以上のRNA分子を標的とするよう設計する。本発明の特定の態様において、ウイルスRNAはHCV若しくはHIVであり、また、宿主標的RNAは、限定されるものでないがTNFα、LEDGE(p75)、BAF、CCR5、CXCR4、フリン、NFkB若しくはSTAT1を挙げることができる。
【0118】
本発明の特定の態様において、特定の多標的干渉RNA分子が特定の標的に対し機能的である実施例で提供される。これらのCODEMIRおよび/若しくはVIROMIRは、RNA、例えば、それらの意図している標的RNA分子の発現を減少させるのに有用であり、そして、該活性を裏付けるデータが本明細書に作業実施例でもまた提供される。こうした分子は、単一RNAの複数の部位または2種若しくはそれ以上のRNAの複数の部位を標的とし得、かつ、発現系でのこうした1種または好ましくは2種若しくはそれ以上のこうした標的とされたRNAの発現を低下させるのに有用であることを、当業者は認識するであろう。
【0119】
いくつかの態様において、所定の多標的干渉RNAは、数種の標的RNAの1種の発現の調節で別のものより有効であることができる。他の場合に、該多標的干渉RNAは、1種若しくはそれ以上の発現系で全部の標的に同様に影響を及ぼすことができる。多様な因子がサイレンシングすなわちRNAiの効率の変動を引き起こす原因となり得る。すなわち(i)一方の鎖をRISCに他方の鎖より効率的に進入させるRISCの集成の非対称;(ii)標的RNA分子上の標的とされるセグメントの到達不可能性;(iii)干渉RNAによる高程度のオフターゲット活性;(iv)RNAの天然のプロセシングの配列依存性の変動、ならびに(v)(i)ないし(iv)に記述される構造的および動的影響の均衡。Hossbachら(2006)、RNA Biology 3:82−89を参照されたい。本発明の多標的干渉RNA分子の設計において、特別の注意が、所定の標的RNA分子でのRNAi効率を増大若しくは低下させるための列挙される因子のそれぞれに払われ得る。
【0120】
本発明の別の一般的局面は多標的干渉RNAの設計方法である。本発明の方法は、異なる遺伝子の情況で1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子に存在する異なる結合配列を効果的に標的とする多標的干渉RNAに至る多様な手段を包含する。一態様において、多標的干渉RNAを、例えば標的配列およびそれらの相補物を比較すること、ならびに標的配列および標的配列の組の相補物に存在する長さnの配列を同定することによる、標的分子の配列の視覚的若しくはコンピュータの検査により設計し得る。別の態様において、多標的干渉RNAは、長さnの配列のおよび標的配列の組内のその完全な相補物の存在を見出すための標的分子の配列の視覚的若しくはコンピュータの検査により設計し得る。あるいは、予め選択された長さnの全部の可能な配列を、所定の長さまでの各ヌクレオチド位置に可能な各順列(4)、ならびにその後予め選択されたヌクレオチド配列およびそれらの相補物標的配列中のそれらの存在について検査することによって生成し得る。あるいは、予め選択された長さnの全部の可能な配列およびそれらの完全な相補物は、所定の長さまでの各ヌクレオチド位置に可能な各順列(4)、およびその後予め選択されたヌクレオチド配列中のそれらの存在について検査することによって生成し得る。
【0121】
一態様において、複数の標的配列が存在する場合、多標的干渉RNAは、標的分子の配列の視覚的若しくはコンピュータの検査により、例えば配列を整列すること、および設計のためのコンセンサス標的配列を視覚的に若しくはコンピュータで見出すことにより設計し得る。
【0122】
本発明の所定の多標的干渉RNA分子の双方の鎖が活性であるために、合理的設計方法は、該鎖のそれぞれが二重鎖を形成し得る他者に少なくとも十分に相補的であることを同時に必要としつつ、該鎖がその意図される標的の発現を調節することが可能である(すなわち、各鎖が例えばそれに対する少なくとも部分的な相補性を有することによりその標的RNAに対し「活性」である)ことを必要とする。本質的に、各鎖はガイド鎖およびパッセンジャー鎖双方としてはたらくため、単にガイド鎖若しくは単にパッセンジャー鎖である鎖は存在しない。当業者は、こうした分子を、例えば2本の別個の鎖よりなる二重鎖になるようにin vivoでプロセシングされ得るヘアピン構造をもつ一本鎖として設計し得ることもまた認識するであろう。
【0123】
一態様において、本発明は、
a)1種若しくはそれ以上の標的RNA分子を選択する段階(該標的RNA分子の発現の調節が望ましく);
b)該標的RNA分子のそれぞれの最低1種のヌクレオチド配列を得る段階;
c)シード配列の長さn(ヌクレオチド)(n=約6若しくはそれ以上)を選択する段階;
d)段階b)で得られた各ヌクレオチド配列から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、ならびに、該候補シードは段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上中に最低1回は存在し、かつ、その完全な相補物は段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上中に最低1回は存在し);
e)候補シードおよびその完全な相補物の各存在について、所望の量の隣接配列を収集することにより、候補シードおよびその完全な相補物のそれぞれの遺伝子の情況を決定する段階;
f)候補シードの群から長さnのシードを選択する段階;
g)段階b)で得られた配列から決定される、シード、およびシードに対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる第一のコンセンサス標的配列を選択する段階;
h)段階b)で得られた配列から決定される、シードの完全な相補物、およびシードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる、第二のコンセンサス標的配
列を選択する段階;
i)段階g)で選択された第一のコンセンサス標的配列、および、第一のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれと結合された、段階h)のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなる第一鎖配列を得る段階;
j)段階h)で選択された第二のコンセンサス標的配列、および、第二のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれと結合された、段階g)のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなる第二鎖配列を得る段階、ならびに;
k)段階i)の第一鎖配列を有する第一鎖および段階j)で得られた第二鎖配列を有する第二鎖を含んでなる多標的干渉RNA分子を設計する段階
を含んでなる、多標的干渉RNA分子の設計方法を提供する。
【0124】
該方法は、段階f)の候補シードの群から選択される長さnの各シードについて段階g)ないしk)を反復することをさらに含んでなる。
【0125】
該方法は、別の望ましいシード長さについて段階c)ないしk)を反復する段階をさらに含んでなる。一態様において、標的配列の第一の走査は、いずれのシード長さ(例えばn=9)で開始することもでき、そして、検索のその後の回は、(例えば以前の走査で戻されたシードの数に基づき)シード長さを増大若しくは減少のいずれもすることができる。当業者は、該シードの長さを減少させる際に候補シードの数が増大することができることを認識するであろう。
【0126】
当業者は、選択されたRNA配列の最低1種、および選択されたRNA配列の最低1種の相補物に存在する候補シードを見出すことが、選択されたRNA配列中の候補シードおよびその完全な相補物を見出すことの一代替であることを理解するであろう。
【0127】
当業者は、これらの設計段階は、同等な最終生成物を製造するために異なる順序で実施しうることを認識するであろう。また、当業者は、いくつかの段階が、実施例に示されるとおり広範に同等である代替手順で置換され得ることを認識するであろう。当業者は、式1の6要素(X、S、Y、X’、S’、Y’)を多数の方法で決定かつ集成し得ることを認識するであろう。
【0128】
しばしば、本発明の多標的干渉RNA分子を設計するための好みは、第一に、異なる遺伝子の情況で存在するシードおよびその相補物を同定すること;第二に、それらのそれぞれの標的RNA配列に結合するようにXSおよびY’S’を決定すること、ならびにその後、YがY’の相補物でありかつX’がXの相補物であるXSYおよびY’S’X’を決定することを必要とする。一例として、XSはシードの3’隣接領域の一部分の相補物(Xと同等とみなす)と一緒にシードの相補物(Sと同等とみなす)として決定しうる。同様に、Y’S’は、シードの相補物の3’隣接配列の一部分の相補物(Y’と同等とみなす)と一緒にシードの相補物の相補物(S’と同等とみなす)として決定しうる。複数の配列を標的とすることが望ましい場合は、複数の3’隣接配列を検査してコンセンサス3’隣接配列を生じうる。Xおよび/若しくはY’をその後、これらのコンセンサス3’隣接配列の相補物として決定し得る。さらなる改変を、本明細に記述されるとおり該分子に行い得る。
【0129】
好ましい標的RNA分子は、戦略的に選択された分子、例えば、疾患過程に関与するウイルス若しくは宿主RNA、ウイルスゲノム、とりわけ臨床上重要なものなどである。標的RNAの詳細な論考は上に提供され、そしてそっくりそのままここに明示されるかのように、本発明の本および他の局面に等しく当てはまる。標的RNA分子の選択の基礎は当業者により認識されるであろう。好ましい標的RNAは、該多標的干渉RNAの投与により制御することを願う疾患若しくは障害に関与するものである。
【0130】
選択された標的の配列を得る段階は、ワールドワイドウェブで利用可能な、国立生物工学情報センター(National Center For Biotechnology Information)(NCBI)(米国の国立保健研究所(NIH)を通じて)、欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratories)(欧州全域で欧州生物情報学研究所(European Bioinformatics Institute)を通じて)により提供されるデータベースのような公的に利用可能な供給源、若しくは有料データベースのような専有の供給源などから配列を得ることにより実施する。配列は直接決定によってもまた得ることができる。これは、臨床単離物若しくは未知の遺伝子が例えば疾患の過程に関与しているか若しくは目的のものである場合に望ましいかもしれない。標的RNA分子の完全若しくは不完全いずれの配列も、本発明の多標的干渉RNAの設計に使用し得る。
【0131】
段階a)で選択された1種若しくはそれ以上の標的RNA分子のそれぞれについて、複数の独立の標的ヌクレオチド配列を段階b)で得る方法もまた本発明で提供される。上述されたデータベースは、頻繁に、特定の標的に利用可能な複数の配列を有する。これは、遺伝的変異が自然により高い場合、例えばウイルス配列でとりわけ真実である。多様な態様において、複数の標的ヌクレオチド配列は、株の変異、アレルの変異、突然変異若しくは複数の種を表す。こうした複数の配列の数は、所定の標的について数種若しくは少ない倍数から多数、例えば数ダースまたはなお数百若しくは数千の配列までの範囲にわたることがある。ウイルス配列で作業する場合にこうした数の配列を有することがとりわけ可能である。
【0132】
選ばれた配列は、付加的な所望の、あるいは低い配列の複雑さ、乏しい配列の質の領域、またはベクター関連配列の包含のようなクローニング若しくはシークェンシングに関するアーチファクトを含有するもののような望ましくない特徴に基づきさらに制限し得る。さらに、広範囲に到達不可能な二次構造をもつ領域をこの段階で除去し得る。事実、LuoとChangは、ループのようなmRNA構造のsiRNAターゲッティング到達可能な領域が、ステムと整列されるものより効果的であることがよりありそうであったことを示した(LuoとChang、(2004)、Biochem.Biophys.Res.Commun.318:303−310)。選ばれた配列は、しかしながら、3’UTR配列若しくは低い二次構造の領域に制限される必要はない。
【0133】
シード配列のnヌクレオチド塩基の長さを選択する段階は、好ましくは、一見していずれかの特定の基礎若しくは理論を必要としない反復過程である。すなわち、出発シードの長さは約6より上の塩基のいずれの数でもありうる。シードに選ばれる長さが長いほど、それおよびその完全な相補物が最低1種の標的RNA、例えば1標的RNA配列中に出現することができることがより少なくありそうである。シード配列長さが短いほど、それは期待されるであろうとおりより頻繁に存在することができる。好ましくは、下述されるとおり候補シードの好ましい配列を見出すのに反復過程を使用する。従って、nの特定の値を使用して長さnの候補シードを同定した後に、別の値(例えばn+1、n−1)を使用することができ、そして該過程を反復して長さn+1、n−1などの候補シード配列を同定し得る。
【0134】
シードは、本明細書で「シード候補」ともまた称される「候補シード」のプールから選択する。シード候補は、そのそれぞれおよびその完全な相補物がパリンドロームでない、とりわけ望ましい若しくは選択された長さの配列を包含し、また、候補シードは段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上に最低1回は存在し、かつ、その完全な相補物は段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上に最低1回は存在する。候補シードは、好ましくは、例えば所望の若しくは選択されたシード長さの「
ウィンドウ」(固定された数の連続するヌクレオチドに関して表現される)で標的配列に沿って段階的に動かすことによりコンピュータにより生成する。好ましくは各段階は単一塩基の前進であり、従って各標的配列を連続的に見る選択された長さの「移動ウィンドウ」を生成する。他のステップ距離を企図しているが、しかしながら、当業者は、1ヌクレオチドのステップのみが全部の可能なシード配列の生成を可能にすることができることを認識するであろう。
【0135】
とりわけ、長さnの候補シードの集合物は、
i)1)ヌクレオチド配列のそれぞれの末端で開始する段階;
2)nのウィンドウサイズを使用してヌクレオチド配列を連続的に観察する段階;および3)1のステップサイズで該ヌクレオチド配列に沿ってステッピングする段階
を含んでなる方法を使用して、標的分子について選ばれたヌクレオチド配列のそれぞれから長さnの配列の第一の集合物を生成する段階;
ii)そのそれぞれが第一の集合物中の1配列に完全に相補的である配列の第二の集合物を生成する段階;ならびに
iii)配列の第一および第二の集合物の検査から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、かつ、候補シードおよびその完全な相補物のそれぞれは標的分子のヌクレオチド配列中に最低1回存在する)
により得ることができる。
【0136】
別の態様において、長さnの候補シードの集合物は、
i)標的分子について選ばれた各ヌクレオチド配列について完全に相補的な配列を得る段階;
ii)1)標的分子について選ばれたヌクレオチド配列のそれぞれ、若しくは段階(i)で得られた完全に相補的な配列のそれぞれのヌクレオチド配列の末端で開始する段階;
2)nのウィンドウサイズを使用してヌクレオチド配列を連続的に観察する段階;および3)1のステップサイズで該ヌクレオチド配列に沿ってステッピングする段階
を含んでなる方法を使用して、標的分子について選ばれたヌクレオチド配列のそれぞれからの長さnの配列の第一の集合物、および段階(i)で得られた完全に相補的な配列のそれぞれからの長さnの配列の第二の集合物を生成する段階;ならびに
iii)配列の第一および第二の集合物の検査から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、また、候補シードのそれぞれは配列の第一および第二の集合物の双方に存在する)
により得ることができる。
【0137】
一態様において、該方法は、シード若しくはその完全な相補物のいずれかが、標的ヌクレオチド配列中に少なくとも予め決められた最低頻度で存在しない候補シード配列を廃棄する段階をさらに含んでなる。
【0138】
好ましくは、最終的に選ばれる方法は、これらの段階の1個若しくはそれ以上またはそれらの全部を必要とされるとおり包含することができる。例えば、一態様において、該方法は、単一塩基のみから構成される、AおよびUからのみ構成される、5個若しくはそれ以上のCまたは5個若しくはそれ以上のGの連続する列を有する、目的の非標的トランスクリプトームに許容できない頻度で存在することが予測される;1種若しくはそれ以上の細胞成分の発現若しくは活性を望ましくなく調節する(すなわち外来核酸の細胞センサーを望ましくなく活性化する)傾向を有することが予測される、またはそれらのいずれかの組合せであるいかなる候補シード配列も廃棄する段階をさらに含んでなる。
【0139】
シードをその後、シードが1種の遺伝子の情況で存在しかつその完全な相補物が異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的配列に存在するものとして、候補配列のプ
ールから選択する。遺伝子の情況は、候補シード配列の各存在について所望の量の5’および3’隣接配列を収集することにより決定する。シードの相補物の遺伝子の情況は類似の様式で決定する。
【0140】
本発明の多標的干渉RNAの例示的一作成方法において、一方若しくは双方の鎖がそれぞれ複数のRNA配列を標的とするのに必要とされる場合(例えば複数のウイルス単離物)、「コンセンサス標的配列」が干渉RNAの一方若しくは双方の鎖について選択される。
【0141】
「コンセンサス標的配列」という用語は、標的分子(1種若しくは複数)上の複数の結合配列を模倣する唯一の最良の配列が存在することを示唆せず、むしろ、1種若しくはそれ以上の代替配列の一集団が全部コンセンサス標的配列でありうる。
【0142】
iRNAの第一鎖の第一のコンセンサス標的配列は、シード配列、および標的分子の選ばれた配列の最低1種中の該シードに対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる。iRNAの第二鎖の第二のコンセンサス標的配列は、シードの完全な相補物、および標的分子の選ばれた配列の最低1種中の該シードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる。
【0143】
シ―ドの「コンセンサス3’隣接配列」は、視覚的検査、または生物情報学的ツール若しくは計算の使用により、標的分子の配列中のシード配列のそれぞれの存在の遺伝子の情況の検査から容易に派生する。コンセンサス標的配列のシード部分は、標的とされる結合部位のそれぞれの対応する一部分に対する完全な同一性を有する一方、コンセンサス3’隣接配列は、標的配列の1種若しくはそれ以上のシードの3’端に隣接する配列(1種若しくは複数)に完全に同一である必要はないがしかし同一であり得る。同様に、シードの相補物の「コンセンサス3’隣接配列」は、視覚的検査、または生物情報学的ツール若しくは計算の使用により、シードの相補物の各存在の遺伝子の情況の検査から容易に派生する。コンセンサス標的配列のシード部分の相補物は、標的とされる結合部位のそれぞれの対応する一部分に対する完全な同一性を有する一方、コンセンサス3’隣接配列は、シードの相補物の3’端に隣接する配列(1種若しくは複数)に完全に同一である必要はないがしかし同一であり得る。
【0144】
好ましくは、コンセンサス標的配列は、1種若しくはそれ以上の細胞成分の発現若しくは活性を望ましくなく調節する傾向を有することが予測されるいかなる配列も包含しない。
【0145】
コンセンサス標的配列は眼若しくはアルゴリズムにより決定しうる。例えば、コンピュータアルゴリズムを使用して、配列が異なる位置の対形成ヌクレオチドの全部の可能な順列を評価し得る。これは、標的配列がシードを超えて何らかの同一性を有するがしかし眼によるアライメントが困難と判明している場合にとりわけ有用である。この方法は、コンセンサス標的配列(1種若しくは複数)を決定、若しくは、あるいは、候補の多標的干渉RNAの鎖を直接設計するのに使用し得る。
【0146】
多数の標的配列を考慮することが必要である場合(例えば、ウイルス単離物の多数のヌクレオチド配列をスクリーニングする場合)にとりわけ有用である代替の一アプローチは、必要とされる長さまでのシードからのおよび/若しくは必要とされる長さまでのシードの完全な相補物の伸長の全部の可能な順列を生成して、それにより、式(I)の推定のY’S’および/若しくはXSを生成し、ならびに、in silicoで目的の標的配列に対し各推定のXSおよびY’S’をハイブリダイズして標的へのハイブリダイゼーションに関して最も好都合な特性を示すものを決定することである。
【0147】
(典型的には<−20kcal/molの平均自由エネルギーを有する)強い結合を示す配列は、多標的干渉RNAにとりわけ興味深い。設計の流路に関係なく、候補XSおよびY’S’をその後、これに基づき試験するためのみならずしかしまた多標的干渉RNAの機能性に重要でありうる他の特徴も考慮に入れるために(例えば適切なペナルティ項の使用により)優先する。これは、単一塩基のみから構成される、AおよびUからのみ構成される、実質的な分子内塩基対形成に関与することが予測される、Gである5個若しくはそれ以上の塩基の連続する列を有する、目的の非標的トランスクリプトームに反平行の向きで許容できない頻度で存在することが予測される;外来核酸の細胞センサーを活性化する傾向を有することが予測される、またはそれらのいずれかの組合せの推定のXSおよびY’S’配列を廃棄することを伴いうる。
【0148】
いくつかの場合には、それらのそれぞれの標的配列に相補的でない、推定のXS若しくはY’S’の5’端への1若しくは2ヌクレオチドの付加を考慮する。これは、それ以外は有用なXS若しくはY’S’が5’端でG/C豊富である場合にとりわけ適切であり、そして、これは他の鎖に関して負荷を嫌うことが予測される。G/C豊富なXS若しくはY’S’の5’末端への1若しくは2個のA/Uヌクレオチドの付加は、最もありそうには多標的RNAの至適の活性に必要とされる均衡の取れた負荷を促進することができる。多標的干渉RNAは大部分の場合に位置1および2の不適正を許容するため、対応する標的配列に相補的である必要がないこの付加的な領域の付加は、設計の柔軟性をさらに増大させる。最後に、当業者は、相対する鎖の負荷をさらに高めるために、二重鎖の熱力学的により弱い端に存在する鎖の5’端で、鎖負荷を嫌う改変を使用し得ることを認識するであろう。こうした改変はオーバーハングの長さおよび組成の操作もまた包含する。また、対応する鎖中のCの代わりのUの使用は、CとGの間の対形成より弱いUとGの間に存在するゆらぎ塩基対形成によって、XS若しくはY’S’の5’末端近くにGが存在する場合に鎖負荷を少なくとも部分的に調整することができる。2’F、2’−O−メチルおよびLNA修飾リボヌクレオチドのような化学修飾塩基での置換は、一致する塩基をもつヌクレオチドのハイブリダイゼーションのエネルギーを増大させる。従って、化学修飾塩基をもつ熱力学的により弱い端での二重鎖のハイブリダイゼーションを強化することの代替の戦略もまた、本発明で予見される。
【0149】
連続するグアノシンの伸長をもつDNA配列は、mRNAのターゲッティングに関係しない付加的な効果を生じさせることが既知である。RNAの場合の状況はより少なく明瞭であるとは言え、大部分の製造者は、Gの長い一続きを含有するdsRNA二重鎖を彼らの実験に選択しないことを推奨する。4個以上の連続するGは対応するCODEMIRの活性を大きく低下したことが本発明で見出された(データは示されない)。従って、多くのシードは、5個若しくはそれ以上のCに対する要件が適用される場合に排除し得る。当業者は、シード中の5個若しくはそれ以上のCの存在が本発明の完全に相補的なRNA分子中の5個若しくはそれ以上のGに対応することができることを認識するであろう。
【0150】
別の態様において、該方法は、単一塩基のみから構成される、AおよびUからのみ構成される、Cである5個若しくはそれ以上の塩基の連続する列を有する、目的の非標的トランスクリプトーム中に許容できない頻度で存在することが予測される、1種若しくはそれ以上の細胞成分の発現若しくは活性を望ましくなく調節する傾向を有することが予測される、またはそれらのいずれかの組合せのいかなるコンセンサス標的配列も廃棄する段階をさらに含んでなる。
【0151】
オフターゲット効果の予測のため目的のトランスクリプトームに対しコンセンサス標的配列を走査すること、および目的のトランスクリプトームに対する許容できないオフターゲット効果を有することが予測されるいかなる配列も除外することはまた、コンセンサス
標的配列の数を減少させる有用な方法でもあり、そして前述のいずれも該方法に一段階として追加しうる。実務において、特異的な設計した多標的干渉RNA、例えばCODEMIR、VIROMIRなどを、予見されないがしかし問題のオフターゲット効果による細胞傷害性について慣例にスクリーニングすることが良識的である。
【0152】
治療的RNAのいかなる望ましくない特性も、当業者により理解されるであろうとおり、どの候補シード配列、コンセンサス結合部位、若しくは提案された多標的干渉RNAを廃棄するかの基礎として使用し得る。
【0153】
候補シードおよびシードと同様、コンセンサス標的配列は、本発明の多標的干渉RNAの設計における中間体である。とりわけ、該コンセンサス標的配列は、本発明の多標的干渉RNAの第一および第二の鎖の配列を生成するのに使用する。第一鎖の配列は、第一のコンセンサス標的配列、および第一のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれに結合されている第二のコンセンサス標的配列のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなるよう設計する。特定の一態様において、第一鎖は、第二のコンセンサス標的配列のコンセンサス3’隣接配列の完全な相補物を用いて第一のコンセンサス標的配列を5’の方向に伸長することにより設計する。第二鎖の配列は、第二のコンセンサス標的配列、および第二のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれに結合されている第一のコンセンサス標的配列のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなるよう設計する。特定の一態様において、第二鎖は、第一のコンセンサス標的配列のコンセンサス3’隣接配列の完全な相補物を用いて第二のコンセンサス標的配列を5’の方向に伸長することにより設計する。
【0154】
大部分の場合、オーバーハング(必要とされる場合)をハイブリダイゼーション過程の一部とみなす。ハイブリダイゼーションは、典型的に、RNAhybridソフトウェア(Rehmsmeierら、2004、RNA、10:1507−17)若しくは類似のアルゴリズムを使用して、熱力学的観点から検査する。
【0155】
特定の態様において、式(I)中のXおよびY’はそれらのそれぞれの標的部位に完全に相補的である。XおよびY’が、それらのそれぞれの標的部位に単に相補的であることによって、2端で非常に異なるG/C豊富さをもたらす場合には、負荷バイアスは、熱力学的均衡に依存してX’若しくはYいずれかの不適正をいずれか生じさせることにより低下することが必要である。あるいは、数種の化学修飾(例えばLNA、2’O−メチルおよび2’Fを、負荷の均衡を改良するために二重鎖の「弱い」端に導入し得る。また、実施例に示されるとおり、オーバーハングの長さを変動させることを、二重鎖の2鎖の負荷の均衡を制御するのに使用しうる。
【0156】
本発明の二本鎖多標的干渉RNAの場合に、双方の鎖の類似の鎖負荷を確実にすることが、該分子の効力に関して有益であるのみならず、しかしまたマルチターゲッティング活性を得るのにも必要とされることが、当業者により容易に認識されるであろう。好ましい一態様において、双方の鎖が等しく負荷し得るように負荷バイアスが存在しないような多標的干渉RNAを設計する。
【0157】
多様な段階を、意図している目的上作用することがありそうにない配列の数を減少させるため、RNAの有効性を増大させるため、オフターゲット効果を低下させるため、などのような、合理的RNA設計方法を進めるために、個別に若しくは組合せで場合によっては追加し得る。これらの段階の多くは自動化し得るか、若しくは操作者からの制限された量の入力、しかし当業者が認識するであろうとおり該方法を容易にすることができる生物情報学的コンピュータシステムの使用のみを必要とし得る。
【0158】
外来DNAの細胞センサーを活性化する高い傾向を有する特定の配列が存在することが今や認識されているアンチセンスの状況と同様、他の受容体は特定のRNA配列を検出しかつストレス応答を生じうる(例えば、Sioud,M.(2005)、J Mol Biol 348、1079−1090を参照されたい。増大された炎症応答と関連する特異的「モチーフ」(Hornung,V.ら(2005)Nat Med 11、263−270;Judge,A.D.ら(2005)Nat Med 11、263−270)を容易に除外し得る。
【0159】
特定の態様において、式(I)の情況の以下の配列を廃棄する:
・XSY若しくはY’S’X’中の4個以上の連続するGの存在
・負荷バイアスが同等化されることが可能であることがありそうにないためのXおよびY領域の大きく異なるG/C頻度(二重鎖の機能による、これはX’およびY’もまた意味している)
・単一塩基のみから構成されるか、若しくはAおよびUからのみ構成されるか、若しくは目的の非標的トランスクリプトーム中に許容できない頻度で存在することが予測されるXS若しくはY’S’。
・鎖のいずれかが強い分子内塩基対形成に関与することが予測される場合。
・二重鎖が、外来核酸の細胞センサーを活性化する傾向を有することが予測されるか若しくは既知である要素を含んでなる場合。
【0160】
ある態様において、設計された多標的干渉RNA分子は、例えば、i)RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)への多標的干渉RNA分子の鎖の実際の若しくは予測される負荷を向上させるため;ii)最低1種の標的RNA分子の発現の調節を増大若しくは減少させるため;iii)多標的干渉RNA分子を被験体に投与する場合のストレス若しくは炎症応答を低下させるため;iv)発現系での半減期を変えるため;またはv)i)ないしiv)のいずれかの組合せのため改変し得る。
【0161】
当業者は、実験室で若しくは好ましくはin silicoのいずれかでRNA分子を改変する方法を理解するであろう。好ましい態様において、該改変する段階は、最低1個の不適正塩基対、ゆらぎ塩基対、若しくは末端オーバーハングを創製するため、またはRISCに媒介されるプロセシングを増大させるために、1個若しくはそれ以上のヌクレオチド塩基を変更、欠失若しくは導入することの1つ若しくはそれ以上を含んでなる。それを行うための技術は当該技術分野で既知である。好ましくは、該改変は少なくとも当初はin silicoで実施し、また、こうした改変の影響は、干渉RNA生成物の改良された特性をどれが提供するかを決定するため、実験的パラメータに対し容易に試験し得る。
【0162】
最低1種の設計された干渉RNAを適する細胞発現系で実際に作成かつ試験する段階をさらに含んでなる方法もまた本明細書で提供される。これは、標的RNA分子に対する必要とされる若しくは十分な活性を有する、または必要とされる表現型をモデル系(例えば癌細胞の死、血管新生の阻害、病変形成の抑制、加速された創傷治癒など)で生じる干渉RNAを同定するように必要であることができる。
【0163】
現在好ましい一態様において、該方法は、RNAを実際に作成する段階まで完全にin
silicoで若しくは視覚的検査および測定により実施する。一態様において、該方法は、シード長さnについて新たな値を選ぶ段階、および残存する段階のそれぞれを反復する段階をさらに含んでなる。該方法が革新的であり得ることが明瞭であり、そしてこうした目的上のコンピュータの利益は公知である。
【0164】
認識されるであろうとおり、多数のシードおよびそれにより潜在的多標的干渉RNAを
、上の方法論を使用して生成し得る。上の規則は望ましくない特性に基づき潜在的候補を除外するのに使用し得る一方、当業者は、ハイスループットスクリーニングの方法論への到達、ならびにRNA合成への質、費用および到達の最近の改良で、活性の多標的干渉RNAの開発でさらに補助するために多数の候補の試験を容易に実施し得ることを認識するであろう。多数の多標的干渉RNAの試験は所望の応用に対し最大の有効性をもつ分子を同定するのに必要とされうる一方、分子生物学の当業者は、この作業が不必要な実験に達しないことを認識するであろう。従って、アルゴリズム設計に単に基づく数種の候補の優先順位を付けることと対照的に、かなりの数の候補をスクリーニングすることが時折好ましい。候補の生物学的試験と一緒の慎重なin silico設計の組合せを使用して、優れた活性をもつ候補を効率的様式で同定し得る。
【0165】
候補のハイスループット評価に考慮し得るスクリーニングは、レポーターアッセイ、多重ELISA、ウイルスレプリコン系、ドットブロットアッセイ、RT−PCRなどを包含する。
【0166】
候補の多標的干渉RNAは、19bpの相補性および3’の2ヌクレオチドのオーバーハングを伴う二本鎖RNA分子として慣例に合成する。該オーバーハングは、例えばdTdT若しくはUUのようないかなるヌクレオチド若しくはそれらのアナログでもあり得る。しかしながら、二重鎖を「平滑端」にし得るような、他の型および長さのオーバーハングもまた考慮し得る。好ましい一態様において、オーバーハングは、対応するXおよびY’よりも必要とされるオーバーハングの長さだけより長いYおよびX’を有することにより、設計に直感的に組み込まれる。
【0167】
ベクター若しくはプラスミドのような発現系により産生される場合、複数の多標的干渉RNAを単一の治療的生成物に集成することが可能である。当業者は、複数の多標的干渉RNAを、限定されるものでないが複数の発現ベクター(プラスミド若しくはウイルス)からの個別の多標的干渉RNAの発現、単一ベクター内に含有される複数の発現カセット(各発現カセットがプロモーター、単一の多標的干渉RNAおよびターミネーターを含有する)からの発現を挙げることができる数種の戦略により共発現し得ることを理解するであろう。複数の多標的干渉RNAは、一連の多標的干渉RNAを含有する単一のポリシストロン性転写物によってもまた生成し得る。
【0168】
多標的干渉RNAは、連続して(センス/介在ループ/アンチセンス)発現し得るか、または、直接に若しくは介在ループ/スペーサー配列で結合された、5’から3’に連続に連結された各多標的干渉RNAのセンス配列、次いで5’から3’に連続に連結された各多標的干渉RNAのアンチセンス配列を伴い発現し得る。
【0169】
第一の例において、多標的干渉RNAは、典型的に、標的とされる組織を代表する適切な細胞株を使用して細胞培養物中で試験する。使用される特定の条件を特定の実施例に概説する。標的RNAの発現の低下に至る多標的干渉RNAをその後さらに研究し得る。とりわけ、標的RNAの発現の調節が分解により媒介されることがありそうであるかどうかを確立するために標的RNAの半定量的RT−PCRを実施しうる。一般に、細胞は、培地中で5〜40nMの濃度の多標的干渉RNAでトランスフェクトし、そして48時間後に洗浄し、トリプシン処理し、そしてRNeasyキット(Qiagen)を使用して全RNAについて収集する。RT−PCRをその後、標的RNAに特異的なプライマー組を使用して実施する。
【0170】
オフターゲット効果を評価するためにプロテオミックおよびマイクロアレイ実験を使用しうる。同様に、自然免疫応答の活性化の傾向をほとんど伴わない活性の多標的干渉RNAを選択するために、IFN応答のマーカー(例えばSTAT1、IFNb、IL−8、
ホスホEIFなど)の分析を、処理した細胞で実施し得る。
【0171】
好ましくは、候補の多標的干渉RNAを、例えば細胞傷害性の直接アッセイにより非特異的毒性効果について試験する。あるいは、癌のようないくつかの場合には、細胞傷害性は望ましい結果であり、そして重要な発癌シグナル伝達経路の成功裏の抑制を反映しうる。多標的干渉RNAは、加えて、特異的標的タンパク質の産生を抑制するそれらの能力について評価する。この点に関して有効性を示す多標的干渉RNAをその後、非標的タンパク質産生の停止およびプロテインキナーゼR(PKR)媒介性応答の活性化を包含するオフターゲット効果の付加的な証拠について評価する。
【0172】
該RNA分子はベクターに挿入された転写ユニットから発現しうる。ベクターは組換えDNA若しくはRNAベクターであることができ、また、DNAプラスミド若しくはウイルスベクターを包含する。多標的干渉RNA分子を発現するウイルスベクターは、限定されるものでないが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス若しくはアルファウイルスに基づき構築し得る。
【0173】
好ましくは、ベクターは哺乳動物細胞中での発現に適する発現ベクターである。
【0174】
当業者に公知である方法を使用して、多標的干渉RNA分子をコードする配列を含有する発現ベクターを構築し得る。これらの方法は、in vitro組換えDNA技術、合成技術およびin vivo組換え若しくは遺伝子組換えを包含する。こうした技術は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning,A Laboraoty manual、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州プレインビュー、およびAsubel F Mら(1989)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨークに記述されている。本発明の製薬学的組成物の適する投与経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜若しくは腸投与;筋肉内、静脈内および皮下注入を包含する非経口送達を包含しうる。
【0175】
あるいは、製薬学的組成物は、例えば、しばしばデポー若しくは徐放製剤で、髄内、くも膜下、直接脳室内、腹腔内若しくは眼内注入のような直接に標的器官若しくは組織への製薬学的組成物の注入を介して、全身よりはむしろ局所の様式で投与しうる。膀胱内滴注および鼻内/吸入送達が、皮膚若しくは冒された領域への直接塗布がそうであるように局所投与の他の可能な手段である。ex vivo適用もまた予見される。
【0176】
さらに、本発明の製薬学的組成物は、標的を定めた送達系で、例えば標的細胞特異的抗体で被覆したリポソーム中で送達しうる。該リポソームは標的細胞を標的としかつそれにより選択的に取り込まれることができる。他の送達戦略は、限定されるものでないが、RNAのデンドリマー、ポリマー、ナノ粒子およびリガンド複合物を挙げることができる。
【0177】
本発明の多標的干渉RNA分子は、標的細胞若しくは組織に直接添加するか、または陽イオン性脂質と複合体形成、リポソーム内に充填、若しくは別の方法で送達し得る。核酸若しくは核酸複合体は、生体高分子へのそれらの取り込みを伴う若しくは伴わない注入(injection)、注入(infusion)ポンプ若しくはステントにより、適切な組織にex vivo若しくはin vivoで局所投与し得る。
【0178】
別の局面において、本発明は、本発明の1種若しくはそれ以上の多標的干渉RNA分子を含有する生物学的系を提供する。該生物学的系は、例えばウイルス、微生物、植物、動物若しくは細胞であり得る。本発明は、本発明の多標的干渉RNA分子をコードするヌクレオチド配列を含んでなるベクターもまた提供する。特定の態様において、該ベクターは
、例えばアデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスおよびアルファウイルスよりなる群から選択されるウイルス由来のウイルスである。多標的干渉RNAは、本発明のベクターから発現させ得る低分子ヘアピン型RNA分子であり得る。本発明はさらに、本発明の多標的干渉RNA分子および許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物を提供する。特定の態様において、該製薬学的組成物は、本発明の多標的干渉RNA分子のベクターを含んでなる。
【0179】
別の一般的局面において、本発明は、本発明の多標的干渉RNA分子を生物学的系に導入する段階を含んでなる、生物学的系でのRNA干渉の誘導方法を提供する。
【0180】
本発明はさらに、本発明の多標的干渉RNA分子を含んでなる製薬学的組成物の治療上有効な量を被験体に投与する段階を含んでなる被験体の処置方法を含んでなる。本発明は、本発明の多標的干渉RNA分子を含んでなる製薬学的組成物の予防上有効な量を被験体に投与することを含んでなる、被験体における疾患若しくは状態の発症の阻害方法もまた提供する。本製薬学的組成物の治療上および予防上有効な用量の決定方法は当該技術分野で既知である。
【0181】
本明細書に例示される組成物および方法は、単一遺伝子特異的治療薬が病態生理学的シグナル伝達経路中の複数の冗長性により不利な立場にありうる複雑な多遺伝子性疾患の処置で有用である。大きく増大された治療能力を生成するために、重要なシグナル伝達タンパク質/経路を単一の剤で同時に標的とし得る意識的かつ計算されたアプローチが提供される。
【0182】
いくつかの場合には、目的の標的は、共通の「マスター調節因子」により少なくとも部分的に制御されうる。これは通常転写因子である。例えば、IL−8およびMCP−1の下方制御は核因子NFκβを標的とすることにより達成可能でありうる。しかしながら、一例として、この経路は、ストレスの時に網膜色素上皮細胞(RPE)の生存にもまた関与し、そしてこうした細胞生存因子の下方制御は病的な眼でのRPEの増大された死に繋がることがありそうであるとみられる。従って、本明細書に開示される新規アプローチは、適する標的の「上流の」多面的制御物質を同定することを必要とせず、目的の特定の標的の調節の影響を受けやすいという利点を有する。
【0183】
細胞の不均一性を特徴とする疾患の処置にもまた応用が存在する。例えば、充実性腫瘍において、変異された遺伝子および活性化された経路の存在は、同一腫瘍内で、同一患者の腫瘍間で、ならびに異なる患者の類似の組織学の腫瘍間で広範に変動しうる。こうした例において、数種の重要な経路に対し活性のRNA分子の開発は、これらの標的とされた経路のいくつかに依存する細胞に対する相乗的活性を派生しうる。しかしながら、腫瘍細胞のより大きな比率に対する活性はまた、本発明のRNA分子の「多標的」の性質によることがありそうであることができる。さらに、数種の重要な経路のターゲッティングは、患者集団のより多くを「包括する」であろう。これゆえに、本明細書に例示若しくは提供されるRNA分子を用いる処置で、改良された臨床転帰がありそうである。
【0184】
RISCが作用機序に関与する場合に、本発明の単一の多標的干渉RNA分子(例えばCODEMIR若しくはVIROMIR)での複数の疾患関連転写物のターゲッティングは、好ましくは、利用可能な細胞内機構をいくつかの場合に飽和させ得る複数のsiRNA分子の投与と対照的に、利用可能なRISCの完全な使用を可能にする。
【0185】
同一RNA標的配列内の複数の部位を標的とすることは、本明細書に提供される組成物および方法でもまた達成され得る。癌およびウイルス感染症を包含する多くのヒト疾患は高変異率を表すRNA標的を特徴とする。これは、標的RNAの突然変異によりこれらの
疾患で生じる核酸治療薬に対する耐性の見込みを増大させる。最低2個の同時の突然変異が耐性に必要とされるとみられるため、標的RNA内の複数の部位を標的とすることは、生じるこうした耐性の見込みを低下させる。この例で、従って、多標的干渉RNA(例えばCODEMIR若しくはVIROMIR)のマルチターゲッティングのアプローチは、エスケープ変異体を予防するために、単一の標的RNAに対する複数のヒットの生成に向けられる。(例えばRNAウイルスの場合のような)同一転写物内の複数の部位のターゲッティングは、ウイルス増殖の阻害に対する相乗効果もまた生じうる。さらに、標的RNAとの部分的相補性のみを必要とする機構(1種若しくは複数)を使用することは、点突然変異により耐性を発生させる可能性を低下させることにおける利点を有する。
【0186】
いずれかの疾患の実体の所望の標的は、限定されるものでないが文献からの検証された薬物標的および特許の標的発見方法を挙げることができる1アプローチ若しくはアプローチの混合物に基づき同定しうる。標的遺伝子をその後、目的の疾患過程でのそれらの産物の重要な役割を裏付ける証拠に基づき、優先順位を付ける。
【0187】
いくつかの場合には、配列の正確さおよび/若しくは目的の疾患に対する関連性に特段の注意を払うことが必要であるかもしれない。例えば、癌のターゲッティングにおいて突然変異の「ホットスポット」を回避することが適切である。また、いくつかの態様において、特異的スプライスバリアント若しくはアイソフォームの選択的ターゲッティングが望ましいことがあり、そして、従って、こうした態様においては、多標的干渉RNAの設計で使用される標的配列が、好ましくは病的な組織にのみ存在するアイソフォーム若しくはバリアントに制限される。
【0188】
標的RNA(1種若しくは複数)の配列は、好ましくは、公的な若しくは専有のデータベースからダウンロードするか、またはシークェンシング実験から生成する。
【0189】
[実施例]
【実施例1】
【0190】
VEGF−AおよびICAM−1に対するCODEMIR
CODEMIRでのICAM−1およびVEGF−Aのマルチターゲッティングの設計のためのアプローチを考慮した。
【0191】
VEGF−AおよびICAM−1のそれぞれの全mRNA配列を使用した。これらの配列を検索して、1標的のコーディング鎖および別の配列のコーディング鎖の相補物に存在する配列を見出した。ここでは、配列5’−AGTGACTGTCAC−3’(配列番号1)が、ICAM−1コーディング配列、およびVEGF−Aコーディング配列の相補物の双方で同定された。この配列を使用して、標的RNAの少なくとも1種を標的とするように、CODEMIRの各鎖を使用して複数の標的に対し活性のCODEMIRを設計した。上で同定された配列およびその相補物をCODEMIR二重鎖の中央に配置される部分として使用した。この中央二重鎖の各鎖を、対応する標的に対する完全な相補性を提供するように5’の方向に伸長した一方、各鎖は、CODEMIR二重鎖の鎖中のその相対する鎖に相補的であるように3’の方向に伸長した。
【0192】
当業者は、CODEMIRを合理的に設計することが、双方の鎖の部分を(二重鎖として)一緒に設計すること、および該二重鎖を徐々に延長すること、ならびに改良して設計を完了することを必要とすることを認識するであろう。該合理的設計方法は二重鎖がほぼ完成した後に継続し得る。端を改変するため、または負荷若しくは機能性の他の局面を改良するために不適正若しくはゆらぎ対形成を創製するために改良をなしうるためである。
【0193】
この中央領域(12nt)の長さが、残存する必要とされる配列がシードを取り囲む2配列にどのように分割されるかに依存して、3’二重オーバーハングをもつ2種の可能な21塩基の二重鎖に至る。それらのCODEMIRのそれぞれを表1−1に示す(CODEMIR−16および−17)。
【0194】
これらのCODEMIRが、シードの相補物である配列を含んでなることが、当業者により認識されるであろう。本実施例で、CODEMIR中の相補配列はGUGACAGUCACU(配列番号2)である。
【0195】
CODEMIR−16および−17を、RPE細胞中でVEGF−AおよびICAM−1双方の標的に対する活性について試験した。培養物中のRPE細胞を使用して、上述されたとおり設計した抗血管新生CODEMIRをスクリーニングした。ヒト細胞株APRE−19を使用した。ARPE−19細胞を、10%ウシ胎児血清および10mMグルタミンを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で増殖させた。目的の分泌型タンパク質のELISA検出、若しくはin situ細胞表面抗原免疫染色のため、ARPE細胞をウェルあたり4×10細胞で96ウェル組織培養プレートに播種した。FACS分析のためには、ARPE−19細胞をウェルあたり2.5×10細胞で24ウェル組織培養プレートに播種した。細胞は、20pmolのCODEMIR RNA二重鎖若しくは対照siRNAあたり1μLのリポフェクタミンの比でリポフェクタミン(InVitrogen)を使用して、播種24時間後にトランスフェクトした。大部分の研究で、培地をトランスフェクション24時間後に交換し、その時点で、デフェロキサミン(130μM)若しくはIL−1β(1ng/ml)をそれぞれVEGF−AおよびICAM−1実験に添加した。実験は三重で実施しかつ最低2回反復した。
【0196】
ARPE−19細胞をアッセイしてVEGF−AおよびICAM−1双方の産生を確認した。VEGF−Aは、商業的に入手可能なELISAアッセイ(R&D Systems)を製造元の説明書に従って使用して上清でアッセイした。細胞表面ICAM−1は、免疫染色、次いで蛍光標示式細胞分取(FACS)、比色検出を使用する96ウェルプレートでの細胞表面ICAM−1のin situ免疫染色、若しくは、あるいは商業的sICAM ELISAキット(R&D Systems)を使用する細胞ライセートのELISAのいずれかによりアッセイした。
【0197】
結果を図1に示す。双方のCODEMIRは複数の標的の活性の調節物質であった。CODEMIR−16はVEGF−Aの調節においてより活性であり、また、CODEMIR−17は、見たところ設計の対称性の結果としてICAM−1に対しより活性であった。これは、変えられた鎖負荷バイアスによることがありそうである。
【0198】
負荷バイアスは、例えば二重鎖の末端にゆらぎG:U塩基対を導入すること、若しくは対称的末端をもつ22塩基の二重鎖に該CODEMIRを伸長することにより調節し得る。これらの型のそれぞれの変形を探求した。CODEMIR−26は、二重鎖の2末端のそれぞれに4個の同一の結合ヌクレオチド対を有する22塩基の二重鎖である。図1に示されるとおり、CODEMIR−26はCODEMIR−16のものに比較して大きく増大されたICAM−1ターゲッティングを表した。従って、配列に対する調節が、CODEMIR−16で観察された負荷バイアスを是正することが可能であった。
【0199】
CODEMIR−27および−28(表1−1を参照されたい)を、二重鎖領域の一端の破壊する強いG:C対もまたCODEMIR16で観察された負荷バイアスを成功裏に克服することができるかどうかを試験するように設計した。図1の結果から見ることができるとおり、VEGF−Aを標的とするガイド鎖の3’末端領域のUでのCの置換は、バイアスの変化において成功裏であった(例えばCODEMIR−27)。CODEMIR
−28は、変更をCODEMIRの他端で行ったCODEMIR−27に類似の活性を有した。
【0200】
鎖負荷バイアスおよび標的活性の双方を、不適正を導入して、不十分に負荷されかつ同時に標的へのハイブリダイゼーションを増大させる二重鎖の端を破壊することにより制御し得ることもまた、本明細書で予見された。例えば、CODEMIR−16の1バリアント、CODEMIR−36では、双方の鎖をそれぞれの標的配列に完全に相補的であるように設計し、生じる不完全に相補的な二重鎖は、ICMA−1ガイド鎖の5’末端のいくつかの不適正を特徴とする。CODEMIR−36の結果(表1−1を参照されたい)を図1に示す。
【0201】
本明細書に開示される多標的干渉RNA(CODEMIR)は、眼の複数の血管新生性疾患で有効であることが期待されるとみられる。これは、分泌型VEGF−Aがこれらの疾患の全部で大きな役割を演じているからである(Witmerら(2003)Prog
Retin Eye Res、22、1−29)とは言え、ICAM−1の過剰発現は、とりわけ糖尿病性網膜症および黄斑浮腫の初期の開始事象でありうる(Funatsuら、(2005)Ophthalmology、112、806−16;Joussenら(2002)Am J Pathol、160、501−9;Luら(1999)Invest Ophthalmol Vis Sci、40、1808−12。われわれは、数種のCODEMIRが、ヒト網膜上皮細胞(ARPE−19細胞株)によるVEGF−AおよびICAM−1双方の産生を抑制することが可能であることを示した。これらの細胞は、これらの眼血管新生性疾患におけるこれらのタンパク質の産生への主要な寄与体である(Matsuokaら、(2004)Br J Ophthalmol、88、809−15、Yehら(2004)、Invest Ophthalmol Vis Sci、45、2368−73)。RPE細胞は眼の外来核酸の主取り込み部位でもまたあり、そしてこれら2つの理由から、眼科における抗血管新生CODEMIRの評価の適切な細胞モデルである。2種のオリゴヌクレオチド薬物のin vivo活性は、培養物中のRPE細胞に対するそれらの活性と相関し(Garrettら(2001)J Gene Med、3、373−83;Rakoczyら(1996)、Antisense Nucleic Acid Drug Dev、6、207−13)、この細胞培養物モデルの価値を示す。この細胞株の一利点は、眼のRPE層を模倣する分極した単層をそれが形成する(Dunnら、(1996)、Exp Eye Res、62、155−69)ことである。
【0202】
【表1】

【0203】
【表2】

【実施例2】
【0204】
Gluc6PおよびInppl1に対するCODEMIR
CODEMIRは2型糖尿病のような複雑な代謝性疾患の処置にもまた適しうる。この疾患の処置のための2種の潜在的遺伝子標的はグルコース−6−ホスファターゼおよびInppl1である。完全な転写物の配列を検査した。最良の連続する同一の領域からの候補CODEMIRを各場合について表2−1に示す。
【0205】
2標的間の相補的領域を見出し、そして2種の同定されたシード(表2−1:CUGCCUCGCCCAG(配列番号19)およびCUCCACAUCCAC)(配列番号20)を2種の可能なCODEMIR二重鎖の中央モチーフとして使用した。後者のシードおよびその相補物をそれらの5’端で伸長して、各鎖が標的配列の1種に対する5’相補性を有する二重鎖を生成した(図2A)。CODEMIR二重鎖の双方の鎖がエフェクターであり、かつ、その標的との各鎖の増大された同一領域が5’末端に伸長されることが必要である一方、より少なく重要な3’端はより少ない相補性を必要とするため、これは重要である(図2A)。CODEMIR二重鎖のハイブリダイゼーションを調整してそれにより負荷バイアスに影響を及ぼすために、CODEMIRの何らかの改変を実施し得る。不適正の導入はこれを達成する1つの方法であり(例えば、Ohnishiら(2005)Biochem Biophys Res Commun.329:516−21を参照されたい)、そしてこれらの不適正は、それらのそれぞれの標的転写物へのエフェクター鎖の3’領域の結合を増大されるそれらの能力のためにもまた選ぶことができる(図2B)。この状況で、CODEMIR二重鎖はその後、CODEMIR−36に同様に、完全な相補性をもつ2鎖からもはや構成されない。
【0206】
多標的干渉RNA分子(CODEMIR)がシードの相補物に対応する配列を含んでなることができることが当業者により認識されるであろう。本実施例では、これらの相補配列はCUGGGCGAGGCAG(配列番号21)およびGUGGAUGUGGAG(配列番号22)である。
【0207】
【表3】

【実施例3】
【0208】
HIVゲノム内の複数の部位を標的とするVIROMIR
本発明は、慢性の形態の疾患で変異されることがありそうである目的のタンパク質を標的とするのに使用し得る。突然変異は、薬剤耐性の形態がしばしば進化する癌およびウイルス性疾患でとりわけ優勢でありうる。本実施例では、VIROMIRをヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複数の部位を標的とするよう設計した。こうしたVIROMIRの効果を克服するためのいくつかの部位での同時の突然変異に対する要件は、耐性のウイルスクローン若しくは擬似種の出現に対する高い遺伝子の障害物を提供することがありそうである。HIV I血清型B(GenBank受託K03455)のHXB2株のゲノムを目的の主配列として使用し、そして、1以上の場所に存在するシードを見出すためのこの応用で、別の場所に詳述される生物情報学的方法を用いて検査した。GAG、ENV、POL、TAT、VIF、VPR、VPUおよびNEF遺伝子のいずれかの完全な配列を含有する、2005年8月1日時点のLANLデータベース中の全HIV IクレードB単離物をこれらの分析で使用した。
【0209】
下に示されるところの、17塩基シードおよびその完全な相補物が、HIV参照株ゲノム中で見出された:
【0210】
【化2】

【0211】
ここでK03455rは参照株ゲノムの相補物の部分配列である。
【0212】
上述されたクレードB単離物の集団で、シード(GCTGGTTTTGCGATTCT
)(配列番号33)は単離物の76%で見出された一方、その相補物(AGAATCGCAAAACCAGC)(配列番号34)はそれぞれ単離物の4%で見出された。
【0213】
究極的には、本発明の有効なRNA治療薬は、冒された集団の広範な包括を提供するはずであり、そして、この患者集団で高度に表される配列を標的とすることが明らかに望ましい。従って、上で提示されるシードは該集団の十分な比率を包括しないかも知れない。にもかかわらず、その独特の大きさにより、それを本発明の例示でさらに考慮した。
【0214】
しかしながら、このシードに関して保存が改良されることが必要であるとすれば、当業者は、このシードの下位セグメントを使用することが改良された保存をもたらし得ることを認識するであろう。例えば、以下でのとおり、2塩基を除去する場合に、
【0215】
【化3】

【0216】
フォワードの保存は76%で留まる一方、リバースの保存は35%に実質的に増加する。
【0217】
候補VIROMIRに優先順位を付けかつそれらを検査するためには、意図している標的配列と適合性であるスクリーニング方法を有することが重要である。pNL4.3アッセイは、HIVで活性の薬物の貴重な検証されたスクリーニングとしてHIV研究の分野で広範に使用され、そして候補VIROMIRを試験するためにわれわれにより使用された。しかしながら、pNL4.3プラスミドのHIV成分の配列と、該VIROMIRの設計で使用した参照HIV株(K03455)のものの間に若干の差違が存在する。従って、参照株の配列およびpNL4.3プラスミドの配列の比較を実施して、前述のVIROMIRが該試験系にもまた存在する配列を標的としていたことを確認した。とりわけ攻撃アッセイ、融合レポーター、ウイルス偽粒子のような他の試験系(それぞれは治療上関連する若しくは無関係の配列のいかなる数の多さも表す)を等しく考慮し得る。
【0218】
これら2種のシード部位を標的とするVIROMIR二重鎖の一例(VM011)は:
【0219】
【化4】

【0220】
である。
【0221】
該二重鎖の端を分析して、一方の端での他方に関してより大きいG/C含量を考えれば、該2鎖が等しく負荷することがありそうにないとみられることが当業者に明らかであることができ、従って、本発明の別の場所で論考されるとおり、さらなる至適化から利益を得ることがありそうであるとみられる。
【0222】
HIVは、一般にin vivoウイルス感染源をもつ慢性感染を引き起こす。結果、HIVを標的とするVIROMIRは、潜在部位からの再出現を予防するための継続的治療的保護に対する必要性により、合成RNA二重鎖よりむしろ細胞で発現される低分子ヘアピン型RNA(shRNA)として治療上有効であることが最もありそうである。
【0223】
VM011の配列をshRNAの設計で使用した。BamHI制限部位、Gイニシエーター、VIROMIRパッセンジャー、Xhoループ配列(ACTCGAGA)、VIR
OMIRガイド鎖、polIIIターミネーターおよびHindIII制限部位に対応する連続するDNA配列を集成し、そしてdsDNAとして製造した。それらをその後、H1プロモーターの制御下にpSILベクターにクローン化した。VM011を模倣するshRNA VIROMIRをコードするよう設計した、生じる二本鎖DNA挿入物を下に示す(ループ配列をカッコ内に、およびターミネーターは斜体):
【0224】
【化5】

【0225】
当業者は、転写される場合に、該コードされるRNAが、細胞のDroshaおよびDiccrタンパク質により修飾されて活性のVIROMIR RNA二重鎖(1種若しくは複数)を生成するヘアピン構造にフォールディングすることを認識するであろう。当業者はまた、該shRNA構築物の設計の多数の変動を考慮し得ることも認識するであろう。これらは、限定されるものでないが、shRNA二重鎖成分(ガイド鎖、パッセンジャー鎖、前駆体)の長さ、配列および向き、ループの長さおよび配列、プロモーターの選択、イニシエーターおよびターミネーターの配列、ならびに最終構築物に集成するのに使用されるクローニング戦略を挙げることができる。
【0226】
このshRNA構築物を、pNL4.3プラスミドとコトランスフェクトすることによりHEK−293細胞中で試験した。具体的には、HEK−293細胞を2×10^5細胞の密度で12ウェルプレート中ウェルあたり1mlのOptimem培地中に播種した。細胞を24時間後に200μLのDNA:Lipofectamine混合物(Optimem中で2.7μLのLipofectamine 2000と複合体形成した、100μL中の200ngのpNL4.3プラスミド、67ngのVIROMIR pSIL構築物)でトランスフェクトした。24時間後に培地を変えた後、さらなる24時間のインキュベーション後の上清の収集によりp24の産生をアッセイした。
【0227】
p24の産生は、空の対照プラスミドでトランスフェクトした細胞からの産生のパーセントとして表した。VM011はこのアッセイでいかなる認識できる活性も有さず(データは示されない)、おそらく該二重鎖の端の分析から予測されるとおり同等な負荷の欠如を反映する。にもかかわらず、当業者は、他の設計戦略(例えばシードおよびその相補物からの鎖の代替伸長、若しくは上述されたところのshRNA構築物の変形)を、上で使用されたもののような適切なスクリーニングと組合せる場合に有用な治療薬を同定するのに使用し得るこの設計の活性のVIROMIRの開発に考慮し得ることを認識するであろう。
【実施例4】
【0228】
HCVおよびTNFaの二重ターゲッティング
感染性疾患のいくつかの場合、多標的干渉RNAを、感染性病原体のゲノムおよび該疾患の1種若しくはそれ以上の重要な宿主「駆動体」双方を標的とするのに利用し得る。例えば、TNF−αは、C型肝炎ウイルス感染およびその続発症における主要な疾患関連因子と考えられる。HCVのゲノムおよびTNF−α mRNAの検討に着手した。
【0229】
HCVおよびTNFa中の9塩基シードおよびそれらの完全な相補物の検索に際して、目的の以下のシードすなわち5’ACTCCCCTG3’(配列番号41)が同定された数種のうち1種であった。
【0230】
このシードは、それが遺伝子型1aおよび1bの155種の単離物中94%という保存を伴いHCVゲノムに存在するために選択した。このシードは実際にはHCV中で2部位
に存在する。われわれは、その後、どの部位を二重鎖の設計で主に考慮すべきかを確立するために、このシードから3’の方向のヌクレオチドを考慮した。該部位の伸長された配列(3’端へ+6塩基)は以下に続くとおりであった:
【0231】
【化6】

【0232】
第一の部位でのシードの存在率は第二のものでよりはるかにより高い(92%対7%)ことが見出された。従って、多標的干渉RNAのさらなる設計を、第一の部位の配列を考慮してのみ実施した。
【0233】
遺伝子の情況の条件で、該シードはHCVの5’NTRおよびTNFαの3’UTRにある。下に、HCV配列およびTNFαの反平行配列中のシードの場所を示す:
【0234】
【化7】

【0235】
該シードは9merであるため、必要とされる長さ(例えば19)の二重鎖のため必要とされる伸長は、例えば、該シードが通常二本鎖の二重鎖の中央にある(オーバーハングを除く)ため、標的の3’の方向に5塩基および5’の方向に5塩基である。それを中央に置くことにより、生じる2鎖は、下に概説される方法に従う場合にそれらのそれぞれの標的と完全に相補的な同等な一部分を有することができる。これは、生じる2鎖の結合が比較可能であるはずであることを確実にする。例えば10ヌクレオチドのシードで、各側での5の伸長は20の二重鎖を創製するとみられる一方、4+5若しくは5+4の伸長は19ヌクレオチドの二重鎖を生じるとみられる。他の順列は、シードおよび所望の二重鎖の長さに依存して等しく許容できる。
【0236】
本実施例で、二重鎖の鎖の一方を生成する手段は、後に続くとおりである:
・標的のシードの相補物で通常の方向に出発すること(すなわちHCV)は、以下の配列、5’CAGGGGAGU3’(配列番号46)を生じる。
・その後、シードの3’端でHCV配列の次の5塩基の相補物を採用することにより、その5’方向にこの配列をさらに伸長する。これは5’CCUCACAGGGGAGU3’(配列番号47)を生じる。
・これに次いで、反平行の方向にある第二の標的(すなわちTNFa)の次の5塩基の相補物を付加して、5’−CCUCACAGGGGAGUUGUGU−3’(配列番号48)の第一鎖配列を生じる。
・相対する鎖(TNFa)はその場合、第一のガイド鎖の相補物、すなわち5’−ACACAACUCCCCUGUGAGG−3’(配列番号49)である。
その結果、該二重鎖は:
【0237】
【化8】

【0238】
である。
【0239】
該2種のガイド鎖は:
【0240】
【化9】

【0241】
の2標的への予測される結合を有する。
【0242】
負荷の同等性を改良するため、該二重鎖を、HCV配列へのさらなる相補性を伴い伸長し得る。おそらく:
【0243】
【化10】

【0244】
これは、該二重鎖の端での弱い(A:U)および強い塩基(G:C)対のより均衡の取れた表示を生じるという効果を有する。
【0245】
あるいは、TNFaターゲッティング鎖が変異されるがしかしなお標的に結合することが可能でありかつ対応する鎖が一致するように変更されている二重鎖は:
【0246】
【化11】

【0247】
であり得る。
【0248】
この状況で、該二重鎖の最初の5塩基対は、下に示されるところの標的への結合を認識可能に損なうことなく2端で等しく均衡が取られる(TNFaターゲッティング鎖とのゆらぎ塩基対に注目されたい)。
【0249】
【化12】

【0250】
必要とされる場合はオーバーハングを付加し得る。尾部領域の改良された結合を高めるように、意図している標的に対しそれらを相補的にすることが有益でありうる。付加される塩基は、標的RNA中の指定されるさらなる領域への予測される結合を提供するように選択しうる。例えば、上のin silico結合の結果で、大きなバルジがHCV標的RNAへの第一のガイド鎖の結合から形成されることが予測される。オーバーハングの選択は、そのバルジの長さを短縮するという希望により導かれ得る。他の代替は、in silicoで示される結合の伸長を提供するように標的に相補的な塩基を付加することである。従って、一例として、上で生成された二重鎖は、必要とされる塩基をさらに定義するためのin silicoハイブリダイゼーションからの情報を使用してさらに伸長し得る。
【0251】
【化13】

【0252】
あるいは、該配列は、UUを付加することにより経験的に伸長し得る:
【0253】
【化14】

【0254】
合成多標的干渉RNA二重鎖が、シードおよびその対応する相補物(5’CAGGGGAGU3’)(配列番号46)を含んでなることができることが、当業者により認識されるであろう。
【0255】
さらなる検討におそらく値する他のシードは、5’CGCCTGGAGCCCT3’(配列番号61)および5’CTCCTCGGCCAGC3’(配列番号62)である。
【0256】
合成多標的干渉RNA二重鎖が、シードおよびその対応する相補物:
(5’AGGGCUCCAGGCG3’(配列番号63)若しくは5’GCUGGCCGAGGAG3’)(配列番号64)
を含んでなることができることが、当業者により認識されるであろう。
【実施例5】
【0257】
鎖負荷を改良するための改変
平滑端CODEMIRの低下された活性のありそうな説明は、RISC負荷が3’オーバーハングの非存在で損なわれることである。われわれは、CODEMIRの一鎖の負荷
を予防するための単一平滑端の使用(ガイド鎖の負荷を促進するために潜在的に有用である技術)を検討した。この研究のため、われわれは、ICAMを標的とするガイド鎖の負荷に対する強い好みを有するCODEMIR−17のバリアントを設計した。該バリアントCODEMIR−103(表5−1)は、ICAM−1ガイド鎖の5’端に平滑端を包含するよう設計した。このCODEMIRは、増大されたVEGF抑制活性、および変えられた鎖負荷と矛盾しない低下されたICAM−1抑制活性を示した(図3)。
【0258】
本実施例で、ARPE−19細胞を40nMの二重鎖RNAでトランスフェクトし、そしてVEGF(ELISA)若しくはICAM(FACS)発現をトランスフェクション48時間後にアッセイした。図3の各棒は3検体のサンプルの平均を表す。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0259】
【表4】

【実施例6】
【0260】
in vivoでのCODEMIRおよびVIROMIRの活性
本発明のCODEMIRおよび他の多標的干渉RNAの活性は、当業者に既知の多様な前臨床モデルで試験し得る。制限しない一例として、CODEMIR−26〜28を未熟児網膜症モデルで試験し得る。このモデルは眼血管新生の分野で研究している者に公知であり、そして目的の疾患(AMD、糖尿病性網膜症など)に対し活性の薬物の開発のためのいくつかのモデルの1つとして広範に使用されている。該試験は、処置群に等しく分割された適する数のマウス若しくはラットの新生仔より構成し得る。処置群はベヒクルのような陰性対照、無関係な若しくはスクランブル配列対照および多数の多標的RNAを包含
し得る。既知の競合体として、VEGFに対するsiRNAを包含することもまた考慮し得る。
【0261】
このモデルで、生命の第1日に開始して、同腹子を低酸素の周期、次いで数日の室空気に曝露する。注入は、4日の正常酸素期間の前の周期の最後の日に実施し得る。数日後に動物にFITCデキストランを注入しかつ殺し得る。網膜のフラットマウントの蛍光画像を使用して、各動物での血管新生の程度を推定し得る。加えて、標的RNA分子若しくはそれらのコードされるタンパク質(この場合はVEGFおよびICAM)の産生量の測定値を、均質化したサンプルの分析により、若しくは、あるいはin situハイブリダイゼーションで行い得る。
【0262】
さらなる制限しない一例として、CODEMIRは、あるいは、ラット若しくは霊長類のレーザー誘発性脈絡叢血管新生(CNV)モデルを使用して、疾患に関係する血管新生の阻害についてin vivoで評価し得る。このモデルでは、全身麻酔下の動物にそれらの瞳孔を散大させかつ網膜の写真を撮影する。脈絡叢血管新生(CNV)をクリプトンレーザー光凝固により誘導する。これは、全処置群からの各動物の左、若しくは、あるいは右眼いずれかへのスリットランプによるレーザー照射を使用して実施する。合計6〜11回のレーザー燃焼を、後極の視神経を取り囲む各眼に全般に適用する。
【0263】
レーザー傷害後の適する時点で、多標的干渉RNAを冒された眼に注入する。該適する時間はレーザー誘導の翌日であり得るか、または確立したCNVに対する評価のためには、傷害数日若しくは数週後に該注入を実施し得る。オリゴヌクレオチドの硝子体内注入は、硝子体中に30若しくは32ゲージ針を挿入することにより実施する。挿入および注入は、手術用顕微鏡により実施し得かつ直接見ることができる。水晶体若しくは網膜を傷害しないよう注意を払う。理想的には、試験化合物を硝子体腔の上および周辺に置く。処置後定期的に、画像化および/若しくは直接サンプリング(例えば組織学、免疫組織化学)いずれかにより血管新生を評価する。全部の場合で、CNVの評価は、情報の記録の偏りの欠如を確実にするために、実際の処置に対し盲検化した熟練した操作者により最良に実施される。
【0264】
直接画像化法の一例はカラー眼底撮影法(CFP)である。再度、上述されたところの麻酔下で瞳孔を散大させる。眼底をその後、適切なフィルムを使用してカメラで写真撮影する。
【0265】
あるいは、若しくは好ましくはCFPに加えて、フルオレセイン血管造影を使用して、網膜中の血管および血管漏出の領域を画像化する。これは、フルオレセインナトリウムの腹腔内若しくは静脈内注入後に動物の全部で実施する。網膜脈管構造をその後、CFPに使用されると同一のカメラを使用して、しかしフルオレセイン血管造影のためのバリアフィルターを追加して写真撮影する。単一の写真を、フルオレセインナトリウムの投与直後に0.5〜1分間隔で撮影し得る。フルオレセイン漏出の程度を、訓練を積んだ操作者により点数を付ける。時間点のそれぞれからの平均重症度スコアを適する統計学的解析により比較し、そしてp<0.05で差違を有意とみなす。加えて、各病変スコアの頻度を計数し、表にしかつグラフで表す。
【0266】
あるいは、若しくは加えて、ラットを処置後の選択された時点(例えば注入7、14および28日後)に安楽死させ得、そして、眼を慣習的組織病理学により検査し得る。病変の数および重症度の低下が、本発明の活性オリゴヌクレオチドにより処置したサンプルで見られることが期待される。
【0267】
他の制限しない例は、当業者に公知であるもののような他の前臨床モデルでの本発明の
多標的RNAを試験することを包含する。網羅的でない一覧は、肺線維症(ブレオマイシン誘発性)、足の炎症(カラギーナン)、関節炎、糖尿病、ウイルス感染症、腫瘍異種移植などを包含する。
【0268】
前述の明細は、具体的説明の目的上提供される実施例とともに本発明の原理を教示する一方、本発明の実務は、以下の請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にあるところの通常の変形、翻案および/若しくは改変の全部を包含することが理解されるであろう。全部の参考文献は、ここに、そっくりそのまま本出願に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】CODEMIR二重鎖の双方の鎖を使用するVEGF−AおよびICAM−1のマルチターゲッティング。12ntのシード領域を、2種の標的転写物を分析することにより同定した。シードの周囲でCODEMIRを位置決めする多様な順列を検討し、そして生じる配列を表1−1に列挙する。A:未トランスフェクト細胞;B:無関係なsiRNA対照;C:ICAM−1およびVEGF特異的siRNA;D:CODEMIR−16;E:CODEMIR−17;F:CODEMIR−26;G:CODEMIR−27;H:CODEMIR−28およびI:CODEMIR−36。ICAM−1(白棒)およびVEGF−A(黒棒)に対するこれらのCODEMIRの活性を、RPE細胞を使用して測定した。CODEMIR−27および−28は、負荷バイアスを調節するための二重鎖の末端へのゆらぎ塩基対の導入を除き、それぞれCODEMIR−16および−17の二重鎖に対応する。CODEMIR−36は、CODEMIR16およびCODEMIR17により標的とされるVEGF−AおよびICAM−1 mRNAの領域に完全に相補的であるガイド鎖を伴い形成される不完全な相補二重鎖の一例である。
【図2】図A:CODEMIR二重鎖の鎖が相互に完全に相補的でありうるCODEMIR二重鎖の双方の鎖を使用するマルチターゲッティングのさらなる例示。存在するいずれのオーバーハングも、相補的塩基対形成を伴わないことができる。図B:CODEMIRの2本の活性鎖の間の不完全な相補性を示すCODEMIRの一例。こうした不完全な相補性は、例えば、そのそれぞれの標的に完全に相補的若しくはほぼ完全に相補的である各鎖によって駆動し得る。
【図3】VEGFおよびICAMを標的とするCODEMIRのこれら2種のタンパク質の抑制活性に対する単一平滑端の影響。A:未トランスフェクト細胞;B:擬似トランスフェクト;C:無関係な対照siRNA;D:CODEMIR−17およびE:CODEMIR−103。ARPE−19細胞を40nMの二重鎖RNAでトランスフェクトし、そしてVEGF(黒棒)若しくはICAM(白棒)発現をトランスフェクション48時間後にアッセイした。各棒は3検体のサンプルの平均を表す。エラーバーは平均の標準偏差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;
式中、Sは、第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;
式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなり;
式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;
式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYに少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNA分子。
【請求項2】
X、X’、Y若しくはY’が独立に1個若しくはそれ以上のヌクレオチドよりなる、請求項1に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項3】
Xが、第一の結合配列の第二の部分に少なくとも部分的に相補的である第三のヌクレオチド配列よりなり、前記第二の部分は第一の結合配列の前記第一の部分の3’端に隣接しかつそれと結合され、および、X’が第三のヌクレオチド配列に実質的に相補的である第四のヌクレオチド配列よりなる、請求項1若しくは請求項2に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項4】
XおよびX’が相互に完全に相補的である、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項5】
Xが、第一の結合配列の第二の部分に完全に相補的である、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項6】
Y’が第二の結合配列の第二の部分に少なくとも部分的に相補的である第五のヌクレオチド配列よりなり、前記第二の部分は第二の結合配列の前記第一の部分の3’端に隣接しかつそれと結合され、および、Yが第五のヌクレオチド配列に実質的に相補的である第六のヌクレオチド配列よりなる、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項7】
YおよびY’が相互に完全に相補的である、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項8】
Y’が第二の結合配列の第二の部分に完全に相補的である、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項9】
SおよびS’が相互に完全に相補的である、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項10】
XSが第一の結合配列の第一の部分および第二の部分に完全に相補的である、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項11】
Y’S’が、第二の結合配列の第一の部分および第二の部分に完全に相補的である、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項12】
XSYおよびY’S’X’が相互に完全に相補的である、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項13】
Sが約8ないし約15ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなる、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項14】
XSYおよびY’S’X’のそれぞれが約15ないし約29ヌクレオチドの長さのものである、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項15】
XSYおよびY’S’X’のそれぞれが約19ないし約23ヌクレオチドの長さのものである、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項16】
1個若しくはそれ以上の末端オーバーハングを含んでなる、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項17】
オーバーハングが1ないし5ヌクレオチドよりなる、請求項16に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項18】
最低1個の修飾リボヌクレオチド、普遍的塩基、非環式ヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド若しくは非リボヌクレオチドを含んでなる、請求項1ないし17のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項19】
最低1個の2’−O−メチルリボシル置換若しくはロック核酸リボヌクレオチドを含んでなる、請求項1ないし18のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項20】
第一および第二の結合配列が、異なる遺伝子の情況で1種の予め選択された標的RNA分子に存在する、請求項1ないし19のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項21】
第一および第二の結合配列が、異なる遺伝子の情況で最低2種の予め選択された標的RNA分子に存在する、請求項1ないし19のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項22】
予め選択された標的RNA分子の最低1種が非コードRNA分子である、請求項1ないし21のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項23】
予め選択された標的RNA分子の最低1種がRNA分子である、請求項1ないし22のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項24】
結合配列の最低1種がmRNA分子の3’非翻訳領域(3’UTR)に存在する、請求項1ないし23のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項25】
予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上が生物学的系の疾患若しくは障害に関与する、請求項1ないし24のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項26】
予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上が、動物若しくは植物の疾患若しくは障害に関与する、請求項25に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項27】
動物が、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ブタ、サルおよびヒトよりなる群から選択される、請求項26に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項28】
予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上が、受容体、サイトカイン、転写因子、調節タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞骨格タンパク質、トランスポーター、酵素、ホルモンおよび抗原よりなる群から選択される分類の1タンパク質をコードする、請求項1ないし27のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項29】
予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上が、ICAM−1、VEGF−A、MCP−1、IL−8、VEGF−B、IGF−1、Gluc6p、Inppl1、bFGF、PIGF、VEGF−C、VEGF−D、β−カテニン、κ−ras−B、κ−ras−A、EGFRおよびTNFαよりなる群から選択される1タンパク質をコードする、請求項1ないし28のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項30】
発現系でのICAM−1、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、IL−8、bFGF、PIGF、MCP−1およびIGF−1のいずれかの組合せの発現を低下させる、請求項1ないし29のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項31】
発現系でのICAM−1、VEGF−AおよびIGF−1のいずれかの組合せの発現を低下させる、請求項1ないし30のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項32】
発現系でのICAM−1およびVEGF−A双方の発現を低下させる、請求項1ないし31のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項33】
発現系でのβ−カテニン、κ−rasおよびEGFRのいずれかの組合せの発現を低下させる、請求項1ないし29のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項34】
発現系でのGluc6pおよびInppl1双方の発現を低下させる、請求項1ないし29のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項35】
予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上がウイルスRNAをコードする、請求項1ないし29のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項36】
ウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、および重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスよりなる群から選択される、請求項35に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項37】
ウイルスがC型肝炎ウイルス(HCV)であり、かつ、予め選択された標的RNA分子がTNFαをコードする、請求項36に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項38】
予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上が、第一の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子を含んでなる、請求項1ないし37のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項39】
予め選択された標的RNA分子の1種若しくはそれ以上が、第一の生物学的系に対し感染性である第二の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子を含んで
なる、請求項1ないし37のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項40】
予め選択された標的RNA分子が、第一の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子、および、第一の生物学的系に対し感染性である第二の生物学的系から選択される1種若しくはそれ以上の予め選択された標的RNA分子を含んでなる、請求項1ないし37のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項41】
予め選択された標的RNA分子が、動物若しくは植物から選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子、および、該動物若しくは植物に対し感染性である微生物若しくはウイルスから選択される1種若しくはそれ以上のRNA分子を含んでなる、請求項40に記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項42】
予め選択された標的RNA分子が、ヒトタンパク質TNFα、LEDGF(p75)、BAF、CCR5、CXCR4、フリン、NFkB、STAT1をコードするRNA分子を含んでなる、請求項41に記載の多標的干渉RNA。
【請求項43】
Sが、GUGACAGUCACU(配列番号2)、CUGGGCGAGGCAG(配列番号21)、GUGGAUGUGGAG(配列番号22)、AGAATCGCAAAACCAGC(配列番号34)、AGAATCGCAAAACCA(配列番号36)、CAGGGGAGU(配列番号46)、AGGGCUCCAGGCG(配列番号63)およびGCUGGCCGAGGAG(配列番号64)よりなる群から選択されるヌクレオチド配列より本質的になる、請求項1ないし17のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項44】
Sが、AGTGACTGTCAC(配列番号1)、CUGCCUCGCCCAG(配列番号19)、CUCCACAUCCAC(配列番号20)、GCTGGTTTTGCGATTCT(配列番号33)、TGGTTTTGCGATTCT(配列番号35)、ACTCCCCTG(配列番号41)、CGCCTGGAGCCCT(配列番号61)およびCTCCTCGGCCAGC(配列番号62)よりなる群から選択されるヌクレオチド配列より本質的になる、請求項1ないし17のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項45】
【化1】

より本質的になる、請求項1ないし17のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項46】
式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;
式中、Sは第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;
式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなり;
式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;
式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYに少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNA分子を含んでなる生物学的系。
【請求項47】
ウイルス、微生物、細胞、植物若しくは動物である、請求項46に記載の生物学的系。
【請求項48】
式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;
式中、Sは第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;
式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなり;
式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;
式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYに少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNA分子をコードするヌクレオチド配列を含んでなるベクター。
【請求項49】
ウイルスベクターである、請求項48に記載のベクター。
【請求項50】
アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスおよびアルファウイルスよりなる群から選択されるウイルス由来である、請求項49に記載のベクター。
【請求項51】
ベクターが、式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;
式中、Sは第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;
式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなり;
式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;
式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYに少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNA分子をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、該ベクターを含んでなる細胞。
【請求項52】
分子が低分子ヘアピン型RNA分子である、請求項1ないし44のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子。
【請求項53】
低分子ヘアピン型RNA分子が、式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;
式中、末端リン酸基の最低1個が非存在であり、かつ、鎖XSYが3’から5’若しくは5’から3’にリンカーを介して鎖Y’S’X’に連結されており;
式中、Sは第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;
式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなり;
式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;
式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYに少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNAである、低分子ヘアピン型RNA分子のベクター。
【請求項54】
請求項53に記載のベクターを含んでなる細胞。
【請求項55】
請求項1ないし45のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子および許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項56】
請求項48ないし50のいずれか1つに記載のベクターおよび許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項57】
請求項53に記載のベクターおよび許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項58】
請求項1ないし45のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子を生物学的系に導入する段階(該RNA分子が標的RNAに接触しかつ標的RNAの活性を阻害する)を含んでなる、生物学的系におけるRNA干渉の誘導方法。
【請求項59】
a)1種若しくはそれ以上の標的RNA分子を選択する段階(該標的RNA分子の発現の調節が望ましく);
b)該標的RNA分子のそれぞれの最低1種のヌクレオチド配列を得る段階;
c)シード配列の長さn(ヌクレオチド)(n=約6若しくはそれ以上)を選択する段階;
d)段階b)で得られた各ヌクレオチド配列から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、ならびに、該候補シードは段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上中に最低1回は存在し、かつ、その完全な相補物は段階b)で得られたヌクレオチド配列の1種若しくはそれ以上中に最低1回は存在し);
e)候補シードおよびその完全な相補物の各存在について、所望の量の5’および3’隣接配列を収集することにより、候補シードおよびその完全な相補物のそれぞれの遺伝子の情況を決定する段階;
f)候補シードの群から長さnのシードを選択する段階;
g)段階b)で得られた配列から決定される、シード、およびシードに対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる第一のコンセンサス標的配列を選択する段階;
h)段階b)で得られた配列から決定される、シードの完全な相補物、およびシードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列を含んでなる第二のコンセンサス標的配列を選択する段階;
i)段階g)で選択された第一のコンセンサス標的配列、および第一のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれと結合された段階h)のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなる、第一鎖配列を得る段階;
j)段階h)で選択された第二のコンセンサス標的配列、および第二のコンセンサス標的配列の5’端に隣接しかつそれと結合された段階g)のコンセンサス3’隣接配列の相補物を含んでなる、第二鎖配列を得る段階、ならびに;
k)段階i)の第一鎖配列を有する第一鎖および段階j)で得られた第二鎖配列を有する第二鎖を含んでなる多標的干渉RNA分子を設計する段階
を含んでなる、多標的干渉RNA分子の設計方法。
【請求項60】
長さnの候補シードの集合物を得る段階が、
i)1)ヌクレオチド配列のそれぞれの末端で開始する段階;
2)nのウィンドウサイズを使用してヌクレオチド配列を連続的に観察する段階;および3)1のステップサイズで該ヌクレオチド配列に沿ってステッピングする段階
を含んでなる方法を使用して、請求項59に記載の段階b)で得られたヌクレオチド配列のそれぞれから長さnの配列の第一の集合物を生成する段階;
ii)そのそれぞれが第一の集合物中の1配列に完全に相補的である配列の第二の集合物を生成する段階;ならびに
iii)配列の第一および第二の集合物の検査から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、かつ、各候補シードおよびその完全な相補物は請求項59に記載の段階b)で得られたヌクレオチド配列中に最低1回は存在する)
を含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
長さnの候補シードの集合物を得る段階が、
i)請求項59に記載の段階(b)で得られた各ヌクレオチド配列について完全に相補的な配列を得る段階;
ii)1)請求項59に記載の段階b)で得られたヌクレオチド配列のそれぞれ、若しくは段階(i)で得られた完全に相補的な配列のそれぞれのヌクレオチド配列の末端で開始する段階;
2)nのウィンドウサイズを使用してヌクレオチド配列を連続的に観察する段階;および3)1のステップサイズで該ヌクレオチド配列に沿ってステッピングする段階
を含んでなる方法を使用して、請求項59に記載の段階b)で得られたヌクレオチド配列のそれぞれからの長さnの配列の第一の集合物、および段階(i)で得られた完全に相補的な配列のそれぞれから長さnの配列の第二の集合物を生成する段階;ならびに
iii)配列の第一および第二の集合物の検査から長さnの候補シードの集合物を得る段階(候補シードおよびその完全な相補物はパリンドロームでなく、また、候補シードのそれぞれは配列の第一および第二の双方の集合物に存在する)
の段階を含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
候補シードの一群を選択する段階が、
i)5若しくはそれ以上の同一の単一ヌクレオチドの連続する列から構成されるか;
ii)アデノシンおよびウラシルのみから構成されるか;
iii)目的の非標的トランスクリプトーム中に許容できない高頻度を伴い存在することが予測されるか;
iv)1種若しくはそれ以上の細胞成分の発現若しくは活性を望ましくなく調節する傾向を有することが予測されるか;
v)i)ないしiv)のいずれかの組合せであるか;または
vi)パリンドロームである
長さnのいかなる配列も廃棄する段階を含んでなる、請求項59ないし61のいずれか1つに記載の方法。
【請求項63】
第一および第二のコンセンサス標的配列を選択する段階のそれぞれが、
i)単一塩基のみから構成されるか;
ii)アデノシンおよびウラシルのみから構成されるか;
iii)シトシンである5個若しくはそれ以上の塩基の連続する列を有するか;
iv)目的の非標的トランスクリプトーム中に許容できない高頻度で存在することが予測されるか;
v)1種若しくはそれ以上の細胞成分の発現若しくは活性を望ましくなく調節する傾向を有することが予測されるか;または
vi)i)ないしv)のいずれかの組合せである
いかなる配列も廃棄する段階を含んでなる、請求項59ないし62のいずれか1つに記載の方法。
【請求項64】
i)多標的干渉RNA分子の第一および第二鎖のRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)への取り込みを向上させるか;
ii)最低1種の標的RNA分子の発現の調節を増大若しくは減少させるか;
iii)該多標的干渉RNA分子が被験体に投与される場合のストレス若しくは炎症応答を低下させるか;
iv)発現系での半減期を変えるか;または
v)i)ないしiv)のいずれかの組合せ
のため、多標的干渉RNA分子を改変する段階をさらに含んでなる、請求項59ないし63のいずれか1つに記載の方法。
【請求項65】
請求項59の段階c)ないしk)を、nの新たな値で反復することをさらに含んでなる、請求項59ないし64のいずれか1つに記載の方法。
【請求項66】
設計された多標的干渉RNA分子を作成する段階、および発現系でそれを試験する段階をさらに含んでなる、請求項59ないし65のいずれか1つに記載の方法。
【請求項67】
第一のコンセンサス標的配列を選択する段階で、シードに対するコンセンサス3’隣接配列が、請求項59に記載の段階b)で得られた最低1種の配列中のシードに対する3’隣接配列に少なくとも部分的に同一である配列を含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
シードに対するコンセンサス3’隣接配列が、請求項59に記載の段階b)で得られた最低1種の配列中のシードに対する3’隣接配列に同一である配列を含んでなる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
第二のコンセンサス標的配列を選択する段階で、シードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列が、請求項59に記載の段階b)で得られた最低1種の配列中のシードの完全な相補物に対する3’隣接配列に少なくとも部分的に同一である配列を含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項70】
シードの完全な相補物に対するコンセンサス3’隣接配列が、請求項59に記載の段階b)で得られた配列中のシードに対する3’隣接配列に同一である配列を含んでなる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
第一鎖配列を得る段階で、コンセンサス3’隣接配列の相補物が、請求項59に記載の段階h)のコンセンサス3’隣接配列の完全な相補物である、請求項59に記載の方法。
【請求項72】
第二鎖配列を得る段階で、コンセンサス3’隣接配列の相補物が、請求項59に記載の段階g)のコンセンサス3’隣接配列の完全な相補物である、請求項59に記載の方法。
【請求項73】
多標的干渉RNA分子を設計する段階で、第一鎖および第二鎖が、存在する場合はオーバーハングを除き相互に完全に相補的である、請求項59に記載の方法。
【請求項74】
多標的干渉RNA分子を設計する段階で、第一鎖および第二鎖が相互に不完全に相補的である、請求項59に記載の方法。
【請求項75】
請求項1ないし45のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子を含んでなる製薬学的組成物の治療上有効な量を被験体に投与する段階を含んでなる、被験体の処置方法。
【請求項76】
治療上有効な量の1種若しくはそれ以上の付加的な治療薬を前記被験体に投与することをさらに含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
請求項1ないし45のいずれか1つに記載の最低1種の多標的干渉RNA分子を含んでなる製薬学的組成物の予防上有効な量を被験体に投与することを含んでなる、被験体における疾患若しくは状態の発症の阻害方法。
【請求項78】
請求項1ないし45のいずれか1つに記載の多標的干渉RNA分子および製薬学的に許容できる担体を混合することを含んでなる、製薬学的組成物の作成方法。
【請求項79】
i)式(I):
5’−p−X S Y −3’
3’−X’S’Y’−p−5’
式中、pは独立に存在若しくは非存在である末端リン酸基よりなり;
式中、Sは第一の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第一のヌクレオチド配列よりなり、および、S’は、第二の結合配列の第一の部分に完全に相補的である約5ないし約20ヌクレオチドの長さの第二のヌクレオチド配列よりなり、前記第一および第二の結合配列は、異なる遺伝子の情況で最低1種の予め選択された標的RNA分子に存在し、ならびに、SおよびS’は相互に少なくとも実質的に相補的であるがしかしパリンドロームでなく;
式中、X、X’、Y若しくはY’は独立に非存在であるか若しくはあるヌクレオチド配列よりなり;
式中、XSYは、それとの安定な相互作用を可能にするように第一の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり;
式中、Y’S’X’は、それとの安定な相互作用を可能にするように第二の結合配列に少なくとも部分的に相補的であり、かつ、それらと安定な二重鎖を形成するようにXSYに少なくとも部分的に相補的である、
を含んでなる多標的干渉RNA分子を生成する段階;ならびに
ii)該多標的干渉RNA分子を細胞と接触させる段階
を含んでなる、式(I)を含んでなる多標的干渉RNA分子の細胞への導入方法。
【請求項80】
多標的干渉RNAがDNAによりコードされる、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
RNAがDNA若しくはRNAベクターによりコードされる、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
接触させる段階が、RNA分子、またはDNA若しくはRNAベクターによりコードされるRNA分子を細胞に導入する段階をさらに含んでなる、請求項79に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−516518(P2009−516518A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541543(P2008−541543)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001750
【国際公開番号】WO2007/056829
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(500116797)ジヨンソン・アンド・ジヨンソン・リサーチ・ピーテイワイ・リミテツド (2)
【Fターム(参考)】