説明

2種以上のガス種の検出法

本発明は、ガス感応電極と対向電極ユニットより成るガス電極/対向電極系を有する電界効果に基づくガスセンサを用いて、ガス種混合物中の2種以上のガス種を検出する方法に関する。複数のガス種を検出することができるように、種々の周波数を有する交流電圧又は交流電流が印加され、それによって、ガス感応電極はガス種に感応するようになる。生じる交流電流又は生じる交流電圧は、その際、ガス電極/対向電極系で測定され、かつガス種の存在及び/又は濃度は、生じる交流電流又は生じる交流電圧から定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果に基づくガスセンサを用いて2種以上のガス種を検出する方法に関する。
【0002】
従来技術
電界効果に基づくガスセンサのガス感応性は−抵抗性ガスセンサとは対照的に−ガス感応層の伝導性の変化ではなく、ガス感応層より作り出された電場の変化に拠る。この種類のガスセンサに属するのは、例えば、電界効果トランジスタ−ガスセンサ、半導体ダイオードセンサ−ガスセンサ、金属−絶縁体−半導体−ガスセンサ(MIS、"metal insulator semiconductor")又は、ガス感応電極と、対向電極と、それらの電極間にある誘電体とを有する容量構造−ガスセンサ(Kapazitaetsstruktur−Gassensoren)である。
【0003】
電界効果に基づくガスセンサは、複数のガス種に感応性であり得、それというのも、原則的に、多数の異なったガス種が、電界効果に基づくガスセンサのガス感応電極と相互作用し得るからである。
【0004】
ガス感応電界効果トランジスタ(ChemFET)の場合、ガス環境の様々な変化がチャネルの伝導性の変化をもたらし、ひいてはソース電極からドレイン電極へと流れる電流の変化をもたらす可能性がある。ガス感応電界効果トランジスタは、例として、刊行物US5,698,771に記載される。
【0005】
ガスセンサのガス感応性を変化させるために、様々な試みが追求される:
例として、ガス感応電極の構造及び組成の変化によって、ガスセンサの感応性は変えられることができる。これは、例として、出版物"Gas response dependence on gate metal morphology of field effect devices",I.Lundstroem他、Sensors and Actuators B 80(2001)の中で第183頁〜192頁に記載される。ガスセンサ内での様々なガス感応素子の組合せによって、特定のガス種に対する選択性が得られることができる。
【0006】
更に別の試みは、種々の温度での複数のガス感応素子の作動である。これは、例として、出版物"Modulated operating temperature for MOSFET gas sensors−hydrogen recovery time reduction and gas discrimination" Lundstroem他、Sensors and Actuators B 93(2003)の中で第276頁〜285頁に記載される。その代替案として、個々のガス感応素子の作動温度を変化させてもよい。そうして、様々の温度での種々の選択性が、選択性を際立たせるために利用されることができる。
【0007】
従来の方法では、電界効果に基づくガスセンサは直流電圧で作動される。その際、直流電圧の高さの変動が、ガス感応性に影響を及ぼし得る。これは、例として、出版物"Influence of gate bias of MISiC−FET gas sensor device on the sensing properties",A.L.Spetz他、Sensors and Acutuator B 108(2005)の第501頁〜507頁に記載される。従来の方法では、電界効果に基づくガスセンサは交流電圧で作動される。
【0008】
発明の開示
本発明の対象は、ガス感応電極と対向電極ユニットを有するガス電極/対向電極系を有する、少なくとも1つの、例として1つの電界効果に基づくガスセンサを用いて、ガス種混合物中の2種以上のガス種を検出する方法であり、かつ該方法は、次の工程段階:
a)ガス感応電極が第一のガス種に感応する第一の周波数を有する第一の交流電圧又は第一の交流電流を、ガス電極/対向電極系に印加し、かつ
第一の生じる交流電流又は第一の生じる交流電圧を、ガス電極/対向電極系で測定し、かつ
第一の生じる交流電流又は第一の生じる交流電圧から第一のガス種の存在及び/又は濃度を測定、殊に計算する工程;及び
b)ガス感応電極が第二のガス種に感応する第二の周波数を有する第二の交流電圧又は第二の交流電流を、ガス電極/対向電極系に印加し、かつ
第二の生じる交流電流又は第二の生じる交流電圧を、ガス電極/対向電極系で測定し、かつ
第二の生じる交流電流又は第二の生じる交流電圧から第二のガス種の存在及び/又は濃度を測定、殊に計算する工程
を包含する。
【0009】
検出されるガス種に対する、電界効果に基づくガスセンサのガス感応電極の選択性は周波数に依存することが明らかとなり、その際、周波数はまた、様々のガス種に様々に影響を及ぼす。この効果は、本発明の範囲において、周波数の適切な選択によって定められたガス種が有利には測定されるか又はそれどころか選択的に測定される形で利用される。
【0010】
本発明による方法によって、選択性、感応性、応答挙動及び/又は電界効果に基づくガスセンサの安定性といった特性が好ましくは改善されることができる。
【0011】
その際、殊に、周波数に依存した個々のガス種の測定は、周波数の的確な選択によって、ガス種混合物中に存在する他のガス種に対する、あるガス種の横感度が補償され得るという利点を有する。これにより、様々に組み立てられたガス感応素子を必ずしも必要とせずに、ガスセンサのみを用いた様々なガス種の選択的な検出が可能となる。これにより、一方では、製造費、しかしながら、なかでも、研究費及び開発費が節約され、それというのも、煩雑な(たいてい経験則による)材料スクリーニングをなくすことができるか若しくは最小限にすることができるからである。そのうえ、本発明による方法のためのガスセンサは簡単に組み立てられていてよく、かつ長期寿命を有することができる。
【0012】
本発明による方法によって、2種以上のガス種を測定することができ、かつ全てのガス種についてデータを出力することができる。しかしながら、同じように、本発明による方法によって、たしかに、2種以上のガス種を測定することが可能であるが、その際、しかしながら、測定されたガス種の全体の数より少ないガス種の数のデータのみが出力される。殊に本発明による方法によって、2種以上のガス種を測定することができ、かつ1種以上の、殊に1種のガス種のデータを出力することができる。例として、工程段階a)では2種のガス種の和信号が、かつ工程段階b)では工程段階a)で測定された両方のガス種の一方の個別信号が測定され、そこからまた、工程段階a)で測定された両方のガス種の他方の個別信号が測定され、かつ出力されることができる。
【0013】
対向電極ユニットは、半導体ダイオード−ガスセンサ、金属−絶縁体−半導体−ガスセンサ又は容量構造−ガスセンサ(ガス感応電極と、対向電極と、それらの電極間にある誘電体とを有するガスセンサ)の場合でのように、対向電極であっても、電界効果トランジスタ−ガスセンサの場合でのように、例として、ソース電極、ドレイン電極と、それらの電極間にあるチャネルより成る電極装置であってもよい。
【0014】
工程段階a)及びb)に類似した、1つ以上の更に別の工程段階x)によって、好ましくは、3種以上のガス種がガスセンサを用いて検出されることができる。
【0015】
それゆえ、1つの実施形態の範囲において、方法は、工程段階b)の後に1つ以上の工程段階:
x)ガス感応電極が更に別のガス種に感応する更に別の違う周波数を有する更に別の交流電圧又は更に別の交流電流を、ガス電極/対向電極系に印加し、かつ
更に別の生じる交流電流又は更に別の生じる交流電圧を、ガス電極/対向電極系で測定し、かつ
更に別の生じる交流電流又は更に別の生じる交流電圧から更に別のガス種の存在及び/又は濃度を測定、殊に計算する工程
を包含する。
【0016】
印加された交流電圧と、相応する生じる交流電流との間の位相シフトから、若しくは印加された交流電流と、相応する生じる交流電圧との間の位相シフトから、物理的パラメータ、例えば容量、交流電流コンダクタンス誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部が測定、殊に計算されることができる。
【0017】
これらの物理的パラメータは、ある周波数にて様々のガス種によって様々に影響を受ける可能性がある。例えば、2種の異なるガス種は、ある周波数では第一の物理的パラメータに同様に影響を与える可能性があるが、しかしながら、同周波数で第二の物理的パラメータには違った形で影響を与えるか若しくは全く影響を与えない可能性がある。例えば、ある周波数にて容量は、2種の異なるガス種によって影響を受ける可能性があるが、その際、しかしながら、両方のガス種は、交流電流コンダクタンスには違った形で影響を与えるか若しくは影響を与えない可能性がある。例として、第一のガス種は交流電流コンダクタンスを高めるか又は下げる可能性があり、かつ第二のガス種は交流電流コンダクタンスに影響を及ぼさない可能性がある。そうして、容量から第一及び第二のガスの和信号と、交流電流コンダクタンスから第一のガス種の部分が和信号で突き止められることができ、これによりまた、和信号での第二のガス種の部分の測定、殊に計算が可能となる。
【0018】
加えて、物理的パラメータは、様々の周波数で様々に影響を受ける可能性がある。そうして、あるガス種は、ある周波数では物理的パラメータを高め、しかしながら、他の周波数では同物理的パラメータを低下させ、かつ更に別の周波数では同物理的パラメータに影響を与えない可能性がある。例として、あるガス種は、ある周波数では交流電流コンダクタンスを高め、しかしながら、他の周波数では同交流電流コンダクタンスを低下させ、かつ、更に別の周波数では交流電流コンダクタンスに影響を与えない可能性がある。
【0019】
前で記述した挙動の仕方は、殊に、ガス感応電極が、第一の周波数にて第一のガス種に感応であるだけでなく、若しくは第二の周波数にて第二のガス種に感応であるだけでなく、若しくは更に別の周波数にて更に別のガス種に感応であるだけでない場合に好ましくは利用されることができる。
【0020】
それゆえ、更に別の実施形態の範囲において、生じる交流電流及び/又は生じる交流電圧から、そのつど少なくとも2つの、例として少なくとも3つの物理的パラメータが測定、殊に計算され、かつガス種の存在及び/又は濃度の測定、殊に計算に取り込まれる。
【0021】
更に別の実施形態の範囲において、生じる交流電流及び/又は生じる交流電圧から、容量、交流電流コンダクタンス、誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部から成る群から選択された、そのつど少なくとも2つの、例として少なくとも3つの物理的パラメータが測定、殊に計算され、かつガス種の存在及び/又は濃度の測定、殊に計算に取り込まれる。
【0022】
例として、ガス電極/対向電極系の容量及び交流電流コンダクタンスと及び場合により少なくとも1つの、誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部から成る群から選択された更に別の物理的パラメータが測定、殊に計算されることができる。又は、ガス電極/対向電極系の容量及び少なくとも1つの、誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部から成る群から選択された更に別の物理的パラメータ、及び場合により交流電流コンダクタンスが測定、殊に計算されることができる。又は、ガス電極/対向電極系の交流電流コンダクタンス及び少なくとも1つの、誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部から成る群から選択された更に別の物理的パラメータ、及び場合により容量が測定、殊に計算されることができる。
【0023】
それゆえ、更に別の実施形態の範囲において、生じる交流電流及び/又は生じる交流電圧から、そのつど少なくともガス電極/対向電極系の容量が測定、殊に計算され、かつガス種の存在及び/又は濃度の測定、殊に計算に取り込まれる。
【0024】
それゆえ、更に別の実施形態の範囲において、生じる交流電流及び/又は生じる交流電圧から、そのつど少なくともガス電極/対向電極系の交流電流コンダクタンス(若しくは交流電流抵抗)が測定、殊に計算され、かつガス種の存在及び/又は濃度の測定、殊に計算に取り込まれる。
【0025】
更に別の実施形態の範囲において、生じる交流電流及び/又は生じる交流電圧から、誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部から成る群から選択された、そのつど少なくとも1つのガス電極/対向電極系の更に別の物理的パラメータが測定、殊に計算され、かつガス種の存在及び/又は濃度の測定、殊に計算に取り込まれる。
【0026】
周囲パラメータ、例えば周囲の温度、ガス流速、酸素分圧及び絶対圧も、ガス感応電極に影響を及ぼす可能性があるので、これらも、ガス種の存在及び/又は濃度の測定、殊に計算に取り込まれることが好ましい。
【0027】
それゆえ、更に別の実施形態の範囲において、工程段階a)及び/又はb)及び/又はx)で、さらに、周囲の温度、ガス流速、酸素分圧及び絶対圧から成る群から選択された少なくとも1つの第一の周囲パラメータが測定、殊に計算され、かつガス種の存在及び/又は濃度の測定、殊に計算に取り込まれる。
【0028】
重畳された直流電圧又は重畳された直流電流によって、好ましくは、ガス感応電極内の電子濃度、ひいてはガス感応電極の感度が個々の周波数にて付加的に変化させられることができる。
【0029】
それゆえ、更なる実施形態の範囲において、方法a)及び/又はb)及び/又はx)で、印加された交流電圧が直流電圧と重畳されるか、又は印加された交流電流が直流電流と重畳される。
【0030】
更なる実施形態の範囲において、電界効果に基づく少なくとも1つのガスセンサは、電界効果トランジスタ−ガスセンサ(ガス感応電界効果トランジスタ、ChemFET)、半導体ダイオードセンサ−ガスセンサ、金属−絶縁体−半導体−ガスセンサ及び容量構造−ガスセンサ(ガス感応電極と、対向電極と、それらの電極間にある誘電体とを有するガスセンサ)から成る群から選択されている。例として、電界効果に基づく少なくとも1つのガスセンサは、電界効果トランジスタ−ガスセンサ及び半導体ダイオードセンサ−ガスセンサから成る群から選択されていてよい。殊に、電界効果に基づく少なくとも1つのガスセンサは、電界効果トランジスタ−ガスセンサであってよい。
【0031】
方法は、ナノ構造化されたガス感応電極を有するガスセンサにとって殊に好ましい。このようなガス感応電極は、例として、刊行物WO2008/043781A1、WO2008/046785A2、EP1978132A2及びDE102007040726A1に記載される。
【0032】
電界効果トランジスタ−ガスセンサの場合、ガス感応電極はゲート電極であってよく、かつ対向電極ユニットは、ソース電極、ドレイン電極と、それらの電極間にあるチャネルより成るユニットであってよい。
【0033】
更に別の実施形態の範囲において、電界効果に基づく少なくとも1つのガスセンサは、電界効果トランジスタ−ガスセンサであり、その際、生じる交流電流又は生じる交流電圧は、電界効果トランジスタのチャネル電流の測定によって間接的に測定される。
【0034】
更なる実施形態の範囲において、工程段階a)、b)及び場合によりx)は、種々の時間で、電界効果に基づく唯一のガスセンサで実施される。殊に、工程段階a)及びb)及び場合によりx)は、互いに続けて又は時間的に間隔を空けて、唯一のガスセンサで実施される。それによって、好ましくは、ガスセンサのみを用いて様々のガス種が種々の時間で検出されることができる。
【0035】
更なる実施形態の範囲において、工程段階a)、b)及び場合によりx)は、少なくとも部分的に同時に、電界効果に基づく複数のガスセンサで実施される。例として、工程段階a)は第一のガスセンサで、かつ同時に工程段階b)は第二のガスセンサで、かつ場合により同時に工程段階x)は更に別のガスセンサで実施されることができる。こうすることで、同時に複数のガスが測定されることができる。基本的に、その際、ガスセンサは同じであるか又は異なっていてよい。例として、ガスセンサは、種々の材料より成るガス感応電極を包含してよく、かつ/又は別様に、例えば、電界効果トランジスタ−ガスセンサ、半導体ダイオードセンサ−ガスセンサ、金属−絶縁体−半導体−ガスセンサ及び容量構造−ガスセンサから成る群から選択されて形成されてよい。
【0036】
殊に本発明による方法は、例えば内燃機関の排ガスにおける、例として自動車の内燃機関エンジンにおける、例として、酸素、水素、窒素、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水、アンモニア及び窒素酸化物、例えば一酸化窒素及び/又は二酸化窒素から成る群から選択された2種以上のガス種を検出するために形成されていてよい。
【0037】
図面
本発明による対象の更なる利点及び好ましい実施態様を、図面によって具体的に示し、かつ以下の記載において詳述する。ここで、図面は説明上のものに過ぎず、かつ本発明を何らかの形で限定することを意図したものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】交流電圧又は交流電流の周波数とガス電極/対向電極系との関係を具体的に示したグラフである
【図2】ある一定の周波数における存在するガス種と容量及び交流電流コンダクタンスとの関係を具体的に示した図である
【0039】
図1は、周波数に依存した、窒素(N2)、一酸化窒素(NO)及び水素(H2)の存在下におけるガス電極/対向電極系の容量の測定を示す。図1は、ガス電極/対向電極系の容量が、印加された周波数とガス種に強く依存することを示す。周波数に依存した測定に際して使用した電界効果に基づくガスセンサは、この場合、100Hzの周波数にて、本質的に水素に感応である。10Hzにて、ガスセンサは、付加的に一酸化窒素に感応である。それゆえ、100Hzの周波数を有する交流電圧を用いた第一の測定と10Hzの周波数を有する交流電圧を用いた第二の測定の測定結果から、水素濃度と一酸化窒素濃度を測定することができる。
【0040】
ガス種、この場合、水素と一酸化窒素は、更に別の測定パラメータ、例えば交流電流コンダクタンスに様々に影響を及ぼし得るので、方法はさらに、容量と同時に更に別の測定パラメータ、例えば交流電流コンダクタンスを検知することによって改善されることができる。
【0041】
図2は、例として、一定の周波数における一酸化窒素、水素及び二酸化窒素が容量及び交流電流コンダクタンスに及ぼす影響を示す。図2は、選択された周波数にて、一酸化窒素が容量にも交流電流コンダクタンスにも影響を及ぼさないことを示す。これに対して、水素は、選択された周波数にて、容量も交流電流コンダクタンスも高める。これに対して、二酸化窒素は、選択された周波数にて、容量を高め、かつ交流電流コンダクタンスを下げる。図2はさらに、水素における容量及び交流電流コンダクタンスの変化が同じ徴候を有していることを示す。これに対して、二酸化窒素では、両方の信号極性は相異なる。これらの情報を一つにすることで、それをもって、測定されたガス種を逆に推測することができる。他の周波数では、個々のガス種と測定パラメータとの関係は異なっている可能性がある。それゆえ、種々の周波数での測定から、更に別の情報を取得することができ、かつ測定されたガス種を逆に推し量ることができる。
【0042】
測定の実施のために、電界効果に基づくガスセンサは測定装置として、電源供給ユニットに接続されており、該ユニットは、測定装置、ひいてはガスセンサに、プリセットされた周波数の作動電圧を加える。電源供給ユニットは、その際、制御装置により制御され、該装置は、測定されるガスに応じて、ガスセンサに、プリセットされた周波数の交流電圧を加える。この際、測定を実施するための測定プログラムが、有利には制御装置の記憶装置にメモリされている。そのうえ、ガスセンサの接続部に評価装置がアクセスし、該装置は、相応してガスセンサの測定結果を検知する。更に別の実施形態では、加えて、評価装置が電圧若しくは電流値並びにガスセンサに送られた制御信号の周波数を直接に検知できるように、インターフェースが、制御装置又は電源供給装置並びに測定装置の間に存在していてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス感応電極と対向電極ユニットを有するガス電極/対向電極系を有する、電界効果に基づく少なくとも1つのガスセンサを用いて、ガス種混合物中の2種以上のガス種を検出する方法であって、次の工程段階:
a)ガス感応電極が第一のガス種に感応する第一の周波数を有する第一の交流電圧又は第一の交流電流を、ガス電極/対向電極系に印加し、かつ
第一の生じる交流電流又は第一の生じる交流電圧を、ガス電極/対向電極系で測定し、かつ
第一の生じる交流電流又は第一の生じる交流電圧から第一のガス種の存在及び/又は濃度を測定する工程;及び
b)ガス感応電極が第二のガス種に感応する第二の周波数を有する第二の交流電圧又は第二の交流電流を、ガス電極/対向電極系に印加し、かつ
第二の生じる交流電流又は第二の生じる交流電圧を、ガス電極/対向電極系で測定し、かつ
第二の生じる交流電流又は第二の生じる交流電圧から第二のガス種の存在及び/又は濃度を測定する工程
を包含する検出法。
【請求項2】
前記方法が、前記工程段階b)の後に1つ以上の工程段階:
x)ガス感応電極が更に別のガス種に感応する更に別の違う周波数を有する更に別の交流電圧又は更に別の交流電流を、ガス電極/対向電極系に印加し、かつ
更に別の生じる交流電流又は更に別の生じる交流電圧を、ガス電極/対向電極系で測定し、かつ
更に別の生じる交流電流又は更に別の生じる交流電圧から更に別のガス種の存在及び/又は濃度を測定する工程
を包含することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生じる交流電流及び/又は前記生じる交流電圧から、そのつど少なくとも2つの物理的パラメータを測定し、かつ前記ガス種の存在及び/又は濃度の測定に取り込むことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記生じる交流電流及び/又は前記生じる交流電圧から、容量、交流電流コンダクタンス、誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部から成る群から選択された、そのつど少なくとも2つの物理的パラメータを測定し、かつ前記ガス種の存在及び/又は濃度の測定に取り込むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記生じる交流電流及び/又は前記生じる交流電圧から、そのつど少なくとも前記ガス電極/対向電極系の容量を測定し、かつ前記ガス種の存在及び/又は濃度の測定に取り込むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記生じる交流電流及び/又は前記生じる交流電圧から、そのつど少なくとも前記ガス電極/対向電極系の交流電流コンダクタンスを測定し、かつ前記ガス種の存在及び/又は濃度の測定に取り込むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記生じる交流電流及び/又は前記生じる交流電圧から、誘電率、位相角、損失角、散乱係数、複素インピーダンスの実部及び複素インピーダンスの虚部から成る群から選択された、そのつど少なくとも1つの前記ガス電極/対向電極系の更に別の物理的パラメータを測定し、かつ前記ガス種の存在及び/又は濃度の測定に取り込むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記工程段階a)及び/又はb)及び/又はx)において、さらに、周囲の温度、ガス流速、酸素分圧及び絶対圧から成る群から選択された少なくとも1つの第一の周囲パラメータを測定し、かつ前記ガス種の存在及び/又は濃度の測定に取り込むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記工程段階a)及び/又はb)及び/又はx)において、前記印加された交流電圧に直流電圧を重畳するか、又は前記印加された交流電流に直流電流を重畳することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記電界効果に基づく少なくとも1つのガスセンサを、電界効果トランジスタ−ガスセンサ、半導体ダイオードセンサ−ガスセンサ、金属−絶縁体−半導体−ガスセンサ及び、ガス感応電極と、対向電極と、それらの電極間にある誘電体とを有する容量構造−ガスセンサから成る群から選択していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記電界効果に基づく少なくとも1つのガスセンサが、電界効果トランジスタ−ガスセンサであり、その際、前記生じる交流電流又は前記生じる交流電圧を、該電界効果トランジスタのチャネル電流の測定によって間接的に測定することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記工程段階a)、b)及び場合によりx)を
− 種々の時間で、唯一の電界効果に基づくガスセンサで実施するか、又は
− 少なくとも部分的に同時に、電界効果に基づく複数のガスセンサで実施する
ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ガス電極/対向電極系、測定装置に交流電流を加えるための電源供給ユニット、制御装置にプリセットされた測定プログラムに依存して、プリセットされた電圧又はプリセットされた電流値並びにプリセットされた周波数を測定装置に加えることを引き起こす制御装置及び前記ガスセンサの測定結果を検知するための評価装置を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−519076(P2013−519076A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551523(P2012−551523)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070311
【国際公開番号】WO2011/095257
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】